説明

医用装置

【課題】被検体が楽な姿勢で撮影を受けることができるようにする。
【解決手段】クレードルに複数の支持部材40を備える。支持部材40は、クレードルの収容部に収容される。収容部には、支持部材40の高さを調整するための空気袋33が備えられている。クレードル支持台には、空気袋33に供給される空気量を制御する空気制御部35が備えられている。空気制御部35は、被検者がクレードルに寝た後に、各支持部材40に加わる圧力が均一になるように、空気袋33に供給される空気量を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検者を支持するクレードルを有する医用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージング装置を用いて被検者を撮影する場合、被検者をクレードルに載置し、マグネットのボアに搬送する。被検者は、撮影中、クレードル上で横になっているので、撮影時間が長くなると、被検者は苦痛を感じることがある。そこで、被検者の苦痛を和らげるために、クレードルと被検者との間にマットを敷くことが行われている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平08−191809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、マットを敷いても、被検者の体格などによっては、苦痛を十分に和らげることが難しい場合がある。特に、背骨が曲がってしまった被検者は、クレードルに寝るときに、撮影時の一般的な姿勢である仰臥位を維持することができず、側臥位で撮影を行わざるを得ないことがある。そこで、被検体がクレードルに寝たときに、被検体が感じる苦痛を和らげることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様は、被検者をスキャンする医用装置であって、
前記被検者を載置するための載置面を有するクレードルであって、前記載置面が変形可能に構成されたクレードルと、
前記クレードルに加わる圧力に基づいて、前記載置面の形状を調整する調整手段と、を有する医用装置である。
【0006】
本発明の第2の態様は、被検者をスキャンする医用装置であって、
前記被検者を載置するための載置面を有するクレードルであって、前記載置面が変形可能に構成されたクレードルと、
前記被検者をスキャンすることにより得られた前記被検者の体格に関する情報に基づいて、前記載置面の形状を調整する調整手段と、を有する医用装置である。
【発明の効果】
【0007】
クレードルの載置面は、変形可能に構成されている。したがって、被検体がクレードルに寝たときに、被検体が感じる苦痛を和らげることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1の形態の磁気共鳴イメージング装置の概略図である。
【図2】テーブル3の動きの説明図である。
【図3】クレードル31の斜視図である。
【図4】クレードル31から支持部材40を1個取り外したときの様子を示す図である。
【図5】支持部材40の説明図である。
【図6】基体42の説明図である。
【図7】内側基体43の説明図である。
【図8】外側基体44の説明図である。
【図9】内側基体43が外側基体44にどのように取り付けられているかを説明する図である。
【図10】基体42の斜視図および断面図である。
【図11】支持部材40の斜視図および断面図である。
【図12】収容部30に支持部材40が収容される前の状態のクレードル31の斜視図である。
【図13】図12のA−A断面図およびB−B断面図である。
【図14】収容部30に支持部材40が収容された後の状態のクレードル31の斜視図である。
【図15】図14のA−A断面図およびB−B断面図である。
【図16】テーブル3の斜視図である。
【図17】図16のA−A断面図である。
【図18】図16のB−B断面図である。
【図19】空気袋33に空気が供給されたときのテーブル3の斜視図である。
【図20】図19のA−A断面図である。
【図21】図19のB−B断面図である。
【図22】空気袋33に空気が更に供給されたときのテーブル3の斜視図である。
【図23】図22のA−A断面図である。
【図24】図22のB−B断面図である。
【図25】被検者を撮影するときのフローを示す図である。
【図26】図25のフローを開始する前のテーブル3およびマグネット2を示す図である。
【図27】全ての支持部材の高さHを、H=hに揃えた後の状態を示す図である。
【図28】被検者12をテーブル3に寝かせた後の支持部材40a〜40hの空気袋33の圧力分布PDを概略的に示す図である。
【図29】圧力を調整した後の支持部材の高さを示す図である。
【図30】補助モードの説明図である。
【図31】受信コイル14が内蔵された支持部材40a〜40hを示す図である。
【図32】支持部材の別の配列パターンの一例を示す図である。
【図33】支持部材の別の形状の一例を示す図である。
【図34】支持部材40がマットで覆い隠されたクレードル31′を示す図である。
【図35】支持部材40を上昇させたときのマットの形状を示すである。
【図36】第2の形態のテーブル13の斜視図である。
【図37】図36のA−A断面図である。
【図38】被検者に合わせて支持部材40の高さを調整したときの様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、発明を実施するための形態について説明するが、本発明は、以下の形態に限定されることはない。
【0010】
(1)第1の形態
図1は、本発明の第1の形態の磁気共鳴イメージング装置の概略図である。
【0011】
磁気共鳴イメージング装置(以下、「MRI装置」と呼ぶ。MRI:Magnetic Resonance Imaging)100は、マグネット2、テーブル3、受信コイル4などを有している。
【0012】
マグネット2は、被検者12が収容されるボア21を有している。また、マグネット2は、超伝導コイル、勾配コイル、およびRFコイルを内蔵している。
【0013】
テーブル3は、被検者12を支持するように構成されている。テーブル3は、被検者12がテーブル3に寝たときに感じる苦痛を和らげる機能を有している。この機能については、後で詳しく説明する。
受信コイル4は、被検者12からの磁気共鳴信号を受信する。
【0014】
MRI装置100は、更に、シーケンサ5、送信器6、勾配磁場電源7、受信器8、中央処理装置9、操作部10、および表示部11を有している。
【0015】
シーケンサ5は、中央処理装置9の制御を受けて、被検者12を撮影するための情報を送信器6および勾配磁場電源7に送る。
【0016】
送信器6は、シーケンサ5から送られた情報に基づいて、RFコイルを駆動する駆動信号を出力する。
【0017】
勾配磁場電源7は、シーケンサ5から送られた情報に基づいて、勾配コイルを駆動する駆動信号を出力する。
【0018】
受信器8は、受信コイル4で受信された磁気共鳴信号を信号処理し、信号処理により得たれたデータを中央処理装置9に出力する。
【0019】
中央処理装置9は、シーケンサ5および表示部11に必要な情報を伝送したり、受信器8から受け取ったデータに基づいて画像を再構成するなど、MRI装置100の各種の動作を実現するように、MRI装置100の各部の動作を制御する。中央処理装置9は、例えばコンピュータ(computer)によって構成される。
【0020】
また、中央処理装置9は、基準圧力値決定手段91および再構成手段92などを有している。基準圧力値決定手段91は、後述する基準圧力値Pref(図28参照)を決定する。再構成手段92は、受信器8から得られたデータに基づいて、画像を再構成する。中央処理装置9は、基準圧力値決定手段91の一例であり、所定のプログラムを実行することにより、この手段として機能する。
【0021】
操作部10は、オペレータにより操作され、種々の情報を中央処理装置9に入力する。表示部11は種々の情報を表示する。
MRI装置100は、上記のように構成されている。
【0022】
図2は、テーブル3の動きの説明図である。
図2(a)は、被検者12がボア21に搬入される前の様子を示す図、図2(b)は、被検者12がボア21に搬入された後の様子を示す図である。
【0023】
テーブル3は、クレードル31と、クレードル31を支持するクレードル支持台32とを有している。クレードル31は、被検者12を載置するための載置面311を有している。クレードル31をz方向に移動させることによって、被検者12をボア21に搬入することができる。次に、クレードル31の構造について説明する。
【0024】
図3は、クレードル31の斜視図である。
クレードル31の載置面311は、変形可能に構成されている。載置面311をどのようにして変形させるかについては、後述する。クレードル31は、被検者12を支持するための複数の支持部材40を有している。第1の形態では、支持部材40は、z方向にn個並べられており、x方向にm個並べられている。したがって、クレードル31は、n×m個の支持部材40を有している。図3では、説明の便宜上、1個の支持部材にのみ符号「40」を付してある。
【0025】
図4は、クレードル31から支持部材40を1個取り外したときの様子を示す図である。
クレードル31は、支持部材40の各々を収容するための収容部30を有している。図4では、支持部材40を1個取り外したときの様子が示されているので、収容部30も1個のみが示されている。収容部30に支持部材40を収容することによって、クレードル31が構成される。
次に、支持部材40の構造について説明する。
【0026】
図5は、支持部材40の説明図である。
図5(a)は支持部材40の斜視図、図5(b)は支持部材40の分解図である。
支持部材40は、クッション41と基体42とを有している。
【0027】
クッション41は、被検者12がクレードル31に乗ったときに、被検者12がクレードル31から受ける圧力を低減するための部材であり、低反発部材などの衝撃を吸収する部材や、弾力を持つ部材で構成されている。
【0028】
基体42は、後述する空気袋33(例えば、図15参照)を収容するように構成されている。次に、基体42の構造について説明する。
【0029】
図6は、基体42の説明図である。
図6(a)は、基体42の斜視図、図6(b)は、基体42の分解斜視図である。
基体42は、内側基体43および外側基体44を有している。内側基体43は、外側基体44の内側に設けられている。次に、内側基体43および外側基体44の構造について順に説明する。
【0030】
図7は、内側基体43の説明図である。
図7(a)は、内側基体43の斜視図、図7(b)は、図7(a)のA−A断面図、図7(c)は、図7(a)のB−B断面図である。
【0031】
内側基体43は、後述する空気袋33(例えば、図13参照)を収容するための収容空間43aが設けられている。また、内側基体43の外面には、2つの歯車43bが回転自在に軸支されている。更に、内側基体43の外面には、溝43cが形成されており、溝43cの下端には、段差43dが設けられている。
内側基体43は、上記のように構成されている。次に、外側基体44について説明する。
【0032】
図8は、外側基体44の説明図である。
図8(a)は、外側基体44の斜視図、図8(b)は、図8(a)のA−A断面図、図8(c)は、図8(a)のB−B断面図である。
【0033】
外側基体44は、内側基体43(図7参照)を収容するための収容空間44aが設けられている。外側基体44の内面には、2つのレール44bが形成されている。レール44bは、内側基体43の歯車43b(図7参照)に咬合するように形成されたレールである。また、外側基体44の内面の上端には、ストッパー44cが設けられている。ストッパー44cは、内側基体43が外側基体44から脱落することを防止するために設けられている。
【0034】
また、外側基体44の外面には、2つの歯車44dが回転自在に軸支されている。更に、外側基体44の外面には、溝44eが形成されており、溝44eの下端には、段差44fが設けられている。
【0035】
外側基体44は、上記のように構成されている。内側基体43を外側基体44に取り付けることによって、基体42が得られる。
【0036】
図9は、内側基体43が外側基体44にどのように取り付けられているかを説明する図である。
【0037】
内側基体43の歯車43bを、外側基体44のレール44bに咬合させ、外側基体44のストッパー44cを、内側基体43の溝43cに位置決めする。このようにして、内側基体43が外側基体44に取り付けられ、基体42が得られる。
【0038】
図10は、基体42の斜視図および断面図である。
図10(a)は、基体42の斜視図、図10(b)は図10(a)のA−A断面図、図10(c)は図10(a)のB−B断面図である。
【0039】
内側基体43の歯車43bは、外側基体44のレール44bに咬合している(図10(b)参照)。また、外側基体44のストッパー44cは、内側基体43の溝43cに位置決めされている(図10(c)参照)。
【0040】
基体42は、上記のように構成されている。クッション41および基体42によって、支持部材40が構成される(図11参照)。
【0041】
図11は、支持部材40の斜視図および断面図である。
図11(a)は、支持部材40の斜視図、図11(b)は図11(a)のA−A断面図、図11(c)は図11(a)のB−B断面図である。
基体42の内側基体43にクッション41を固定することによって、支持部材40が構成される。
【0042】
上記のように構成された支持部材40が、クレードル31の収容部30に収容される(図12および図13参照)。
【0043】
図12および図13は、収容部30の構造の説明図である。
図12は、収容部30に支持部材40が収容される前の状態のクレードル31の斜視図、図13は、図12のA−A断面図およびB−B断面図である。
【0044】
収容部30の壁面には、図13(a)に示すように、外側基体44の歯車44d(例えば、図11(b)参照)に咬合するレール30aが形成されている。また、収容部30の壁面の上端には、図13(b)に示すように、ストッパー30bが設けられている。ストッパー30bは、支持部材40が収容部30から脱落することを防止するために設けられている。
【0045】
また、収容部30には、空気袋33が収容されている。空気袋33の下には、空気袋33のホース33aが挿入されるホース挿入孔30cが形成されている。
【0046】
上記のように構成された収容部30に、支持部材40が収容される(図14および図15参照)。
【0047】
図14は、収容部30に支持部材40が収容された後の状態のクレードル31の斜視図、図15は、図14のA−A断面図およびB−B断面図である。
【0048】
支持部材40の歯車44dは、収容部のレール30aに咬合している。また、収容部のストッパー30bは、支持部材40の溝44eに位置決めされている。
【0049】
上記のようにして、支持部材40が収容部30に取り付けられる。支持部材40の中には、空気袋33が備えられている。空気袋33は、支持部材40の高さを調整するために設けられている。次に、空気袋33によって、支持部材40の高さをどのように調整しているかについて説明する。
【0050】
図16はテーブル3の斜視図、図17は図16のA−A断面図、図18は図16のB−B断面図である。尚、図17および図18には、クレードル支持台32に内蔵されているポンプ34などが概略的に示してある。
【0051】
クレードル支持台32には、ポンプ34と、空気制御部35と、複数の圧力センサ36とが内蔵されている。
【0052】
ポンプ34は、空気制御部35に空気を送る。
空気制御部35は、ポンプ34から空気袋33に供給される空気量を制御する。
圧力センサ36は、空気袋33のホース33aに接続されており、空気袋33内の圧力を検出する。また、圧力センサ36は、空気制御部35と空気袋33との間の空気の経路を開放、遮断するための空気弁の役割を有している。
【0053】
空気制御部35が、空気袋33に供給される空気量を制御することにより、支持部材40の高さを自在に調整することができる。支持部材40を高くする場合、空気袋33に空気が供給される(図19、図20、および図21参照)。
【0054】
図19は空気袋33に空気が供給されたときのテーブル3の斜視図、図20は図19のA−A断面図、図21は図19のB−B断面図である。
【0055】
空気袋33に空気が供給されると、図20および図21に示すように、空気袋33は膨らみ、クッション41を押し上げる力Fが作用する。クッション41は、内側基体43に固定されているので、内側基体43には上向きの力Fが作用する。このとき、内側基体43の歯車43bが正回転運動をする。歯車43bは、外側基体44のレール44bに咬合しているので、歯車43bが正回転運動をすると、この正回転運動は、内側基体43を上昇させるための直線運動に変換される。したがって、支持部材40を高くすることができる。図19〜図21では、支持部材40の高さHは、H=h1に調整されている。
【0056】
尚、内側基体43の上昇量が一定量に到達すると、内側基体43の段差43dが、外側基体44のストッパー44cに引っ掛かる(図21参照)。したがって、内側基体43の脱落を防止することができる。
【0057】
空気制御部35が空気袋33に更に空気を供給すると、支持部材40は更に高くなる(図22、図23、および図24参照)。
【0058】
図22は、空気袋33に空気が更に供給されたときのテーブル3の斜視図、図23は図22のA−A断面図、および図24は図22のB−B断面図である。
【0059】
空気袋33に空気が更に供給されると、図23および図24に示すように、空気袋33は更に膨らみ、クッション41を押し上げる力F11が作用する。クッション41は、内側基体43に固定されているので、内側基体43には上向きの力F12が作用する。更に、内側基体43の段差43dは、外側基体44のストッパー44cに引っ掛かっているので(図24参照)、外側基体44に上向きの力F13が作用する。このとき、外側基体44の歯車44d(図23参照)が正回転運動をする。歯車44dは収容部のレール30aに咬合しているので、歯車44dが正回転運動をすると、この正回転運動は、外側基体44を上昇させるための直線運動に変換される。したがって、支持部材40を更に高くすることができる。図22〜図24では、支持部材40の高さHは、H=h2に調整されている。
【0060】
尚、外側基体44の上昇量が一定量に到達すると、外側基体44の段差44fが、収容部のストッパー30bに引っ掛かる(図24参照)。したがって、外側基体44の脱落を防止することができる。
【0061】
支持部材40を下降させるには、空気袋33から空気を抜けばよい。空気袋33から空気が抜かれると、支持部材40の重さによって、内側基体43および外側基体44が下降する。したがって、支持部材40を元の高さに(図16〜図18参照)に戻すことができる。
【0062】
上記のようにして各支持部材40の高さを調整することにより、クレードル31の載置面311の形状を調整することができる。クレードル31の載置面311の形状を調整することによって、被検者12を撮影するときに、被検者12ができるだけ苦痛を感じないように被検者12の姿勢を調整することができる。以下に、被検者12を撮影するときのフローについて、具体的に説明する。
【0063】
図25は、被検者を撮影するときのフローを示す図、図26は、図25のフローを開始する前のテーブル3およびマグネット2を示す図である。
【0064】
フローを開始する前は、図26に示すように、全ての支持部材の高さHは、最も低い高さhに設定されているとする。尚、説明の便宜上、テーブル3が有する支持部材の数は、8個(40a〜40h)であるとする。
【0065】
図25に示すフローが開始されると、ステップST1に進む。
ステップST1では、被検者をクレードルに寝かせる前に、テーブル3の全ての支持部材40a〜40hの高さHを、H=h(>h)に揃える(図27参照)。
【0066】
図27は、全ての支持部材の高さHを、H=hに揃えた後の状態を示す図である。
空気制御部35は、各支持部材40a〜40hの高さHがH=hになるまで、空気袋33に空気を供給する。各支持部材40a〜40hの高さHをH=hにするのに必要な空気量Vは予め決められており、空気制御部35は、各支持部材40a〜40hの空気袋33に一定の空気量Vを供給する。したがって、全ての支持部材40a〜40hの高さHを、H=hに揃えることができる。図27の下側には、支持部材40a〜40hの高さHがH=hになったときの支持部材40a〜40hの空気袋33の圧力分布PDが示されている。H=hにおける空気袋33の圧力Pは、P=Psであるとする。
【0067】
全ての支持部材40a〜40hの高さHを、H=hに揃えた後、ステップST2に進む。
【0068】
ステップST2では、オペレータは、被検者12をテーブル3に寝かせる。そして、被検者12をテーブル3に寝かせた後の空気袋33の圧力Pを検出する(図28参照)。
【0069】
図28は、被検者12をテーブル3に寝かせた後の支持部材40a〜40hの空気袋33の圧力分布PDを概略的に示す図である。
【0070】
本形態では、支持部材40a〜40hが一定の高さhsになるまで空気袋33を膨らませているので(図27参照)、被検者12がテーブル3に寝ると、被検者12の重さによって空気袋33が押されて変形し、空気袋33の圧力が変化する。したがって、圧力センサ36で支持部材40a〜40hの空気袋33の圧力を検出することにより、被検者12に加わる圧力の分布を知ることができる。図28の圧力分布PDを参照すると、被検者12に接触していない支持部材40aおよび40hは、P=Pのままであるが、被検者12に接触している支持部材40b〜40gは、被検者12に押されるので、P=Pよりも大きくなっている。特に、支持部材40dおよび40gは、大きな圧力Pが加わっていることがわかる。一般的に、被検者12は、一部の部位に大きな圧力が加わると、苦痛を感じやすいので、被検者12に加わる圧力はできるだけ分散させることが好ましい。そこで、本形態では、被検者12に加わる圧力をできるだけ分散させるために、支持部材40a〜40hの高さを調整する。支持部材40a〜40hの高さを調整するために、ステップST3に進む。
【0071】
ステップST3では、基準圧力値決定手段91(図1参照)が、圧力センサ36で検出された圧力Pに基づいて、支持部材40a〜40hの高さを調整するときの基準となる基準圧力値Pref(図28参照)を決定する。第1の形態では、被検者12に接触している支持部材40b〜40gの圧力の平均値を、基準圧力値Prefとする。基準圧力値Prefを決定した後、ステップST4に進む。
【0072】
ステップST4では、空気制御部35は、支持部材の圧力が基準圧力値Prefになるように、空気袋33の空気量を制御する。例えば、支持部材40b、40c、および40eの圧力Pは基準圧力値Prefよりも小さいので、空気制御部35は、支持部材40b、40c、および40eの圧力Pが基準圧力値Prefになるまで空気を供給する。一方、支持部材40d、40f、および40gの圧力Pは基準圧力値Prefよりも大きいので、空気制御部35は、支持部材40d、40f、および40gの圧力Pが基準圧力値Prefになるまで空気を抜き取る。このようにして、支持部材の圧力を調整する。尚、被検者に接触していない支持部材40aおよび40hは、圧力値をPsのままにしておく。
【0073】
図29は、圧力を調整した後の支持部材の高さを示す図である。
図29を参照すると、圧力を調整することによって、支持部材40b、40c、および40eは、高さhよりも低くなり、一方、支持部材40d、40f、および40gは、高さhよりも高くなっていることがわかる。このように支持部材の高さを調整することによって、被検者12に加わる圧力が分散されるように、クレードルの載置面の形状を調整することができる。したがって、被検者12にとって楽な姿勢を実現することができる。圧力を調整したら、ステップST5に進む。
【0074】
ステップST5では、被検者12をマグネット2に搬入し、スキャンを行う。スキャンが終了したら、被検者12をマグネット2から搬出する。被検者12をマグネットから搬出したら、ステップST6に進む。
【0075】
ステップST6では、被検者12がテーブル3から起き上がるときの動作を補助するための補助モードを実行する(図30参照)。
【0076】
図30は、補助モードの説明図である。
空気制御部35は、被検者12がテーブル3から起き上がるときの動作を補助するための補助モードを実行する。具体的には、空気制御部35は、支持部材40fがΔHfだけ高くなり、支持部材40gがΔHgだけ高くなるように、支持部材40fおよび40gに更に空気を供給する。支持部材40fおよび40gを高くしているので、被検者12の上半身が自動的に持ち上がる。したがって、被検者12は、テーブル3から楽に起き上がることができる。
【0077】
尚、ステップST4において、支持部材40b〜40gの圧力を基準圧力値Prefに一致させている。しかし、被検者12の身体情報(例えば、身長、体重)に基づいて、支持部材ごとに、別の基準圧力値k・Pref(k:支持部材ごとに決まる重み付け係数)を設定してもよい。支持部材ごとに、別の基準圧力値k・Prefを設定することによって、被検者の姿勢を更に細かく調整することができる。
【0078】
また、第1の形態では、支持部材40の基体42は、内側基体43と外側基体44との組み合わせによって、伸縮することができるように構成されている(例えば、図20参照)。このように、基体42を伸縮できるように構成することによって、支持部材40の高さの調整可能な範囲を広げることができる。尚、被検体の姿勢を十分に調整することができるのであれば、基体42は必ずしも伸縮できるように構成する必要はなく、基体42の長さを固定値としてもよい。
【0079】
更に、第1の形態では、被検者12の撮影部位に受信コイル4を設置し、磁気共鳴信号を受信している(図1参照)。しかし、各支持部材に受信コイルを内蔵し、支持部材に内蔵された受信コイルを用いて磁気共鳴信号を受信してもよい(図31参照)。
【0080】
図31は、受信コイル14が内蔵された支持部材40a〜40hを示す図である。
支持部材40a〜40hに受信コイル14を内蔵することによって、オペレータは、被検者12に受信コイルを設置する作業が不要となり、オペレータの作業負担を軽減することができる。
【0081】
更に、被検者をスキャンしている間、一定時間おきに、支持部材の圧力を検出してもよい。被検者が動くと、支持部材の圧力が変化するので、支持部材の圧力を検出することによって、被検者が動いたか否かを判断することができる。被検者が動いたと判断した場合、支持部材の高さを調整することによって、被検者の姿勢を元に戻すことができ、体動アーチファクトを低減することが可能となる。
【0082】
尚、第1の形態では、支持部材40は、互いに隣接するように配列されている(図3参照)。しかし、支持部材40は、図3に示す配列パターンに限定されることはなく、別の配列パターンでもよい(図32参照)。
【0083】
図32は、支持部材の別の配列パターンの一例を示す図である。
図32では、支持部材40が配置される位置と、支持部材40が配置されない位置とを交互に設けている。このように支持部材を配置することによって、少ない数の支持部材で、被検者の姿勢を調整することが可能となる。
【0084】
また、支持部材の形状も種々の形状が可能である(図33参照)。
図33は、支持部材の別の形状の一例を示す図である。
図33では、支持部材40は、x軸方向に伸びる横長の形状を有している。このように、支持部材の形状は、種々の形状が可能である。
【0085】
更に、第1の形態では、支持部材は、外側から見えるように配列されているが、支持部材をマットで覆い隠してもよい(図34参照)。
【0086】
図34は、支持部材40がマットで覆い隠されたクレードル31′を示す図である。
図34(a)はクレードル31′の斜視図、図31(b)は図31(a)のA−A断面図である。尚、図31では、z方向にn個の支持部材が並んでおり、x方向にm個の支持部材が並んでいるが、説明の便宜上、1つの支持部材にのみ、符号「40」を付している。
【0087】
クレードル31′は、全ての支持部材40を覆い隠すマット37を有している。マット37は、伸縮素材で構成されている。クレードル31′は、マット37の表面が、被検者が載置される載置面311となる。
【0088】
図35は、支持部材40を上昇させたときのマットの形状を示すである。
図35(a)は、支持部材40を上昇させる前のマットを示す図、図35(b)は、支持部材40を上昇させた後のマットを示す図である。
【0089】
マット37は伸縮素材で構成されているので、支持部材40を上昇させると、支持部材40の高さに応じてマット37が伸縮する。したがって、隣り合う支持部材40の間に段差38が生じても、マット37が段差38を覆っているので、段差38によって被検者が感じる不快感を低減することができる。また、段差38はマット37で隠されるので、クレードル31′の美感も損なわないようにすることができる。
【0090】
尚、第1の形態において、空気袋33、ポンプ34、空気制御部35、および圧力センサ36を組み合わせたものが、調整手段に相当する。
【0091】
(2)第2の形態
第2の形態のMRI装置は、テーブルを除いて、第1の形態のMRI装置と同じである。したがって、第2の形態のMRI装置については、テーブルについて主に説明する。
【0092】
図36は、第2の形態のテーブル13の斜視図、図37は、図36のA−A断面図である。
【0093】
第2の形態のテーブル13は、第1の形態のテーブル3と比較すると、以下の点が異なっている。

(1)第1の形態のテーブル3は、支持部材40の高さを調整するための空気袋33を有しているが、第2の形態のテーブル13は、空気袋33の代わりに、支持部材40の高さを調整するためのリンク機構51を有している。
(2)第2の形態のテーブル13は、支持部材40に加わる圧力を検出するための圧力センサ52を有している。圧力センサ52は、支持部材40のクッション41の裏側に取り付けられている。圧力センサ52は、例えば、エアパック式のセンサを用いることができる。
(3)第1の形態のテーブル3は、ポンプ34、空気制御部35、および複数の圧力センサ36を有しているが、第2の形態のテーブル13は、ポンプ34等の代わりに、電源71と、リンク機構制御部72とを有している。リンク機構制御部72は、電源71から電力を受け取り、受け取った電力を、リンク機構51を昇降させる動力に変換する。
【0094】
次に、第2の形態において支持部材の高さを調整する方法について説明する(図35参照)。
図38は、被検者に合わせて支持部材40の高さを調整したときの様子を示す図である。
【0095】
被検者12がテーブルに寝ると、被検者の重みによって、圧力センサ52の検出する圧力値が変化する。したがって、第1の形態と同様に、圧力分布が得られる(図28参照)。リンク機構制御部72は、圧力センサ52の検出する圧力が基準圧力値Prefになるように、リンク機構54を昇降させる。これによって、被検者の姿勢を調整することができる。
【0096】
尚、第2の形態において、リンク機構51、圧力センサ52、電源71、およびリンク機構制御部72を組み合わせたものが、調整手段に相当する。
【0097】
第1および第2の形態では、クレードルに加わる圧力に基づいて、クレードルの載置面の形状を調整している。しかし、クレードルに加わる圧力に基づいてクレードルの載置面の形状を調整する代わりに、別の方法を用いて、クレードルの載置面の形状を調整してもよい。例えば、被検者をスキャンし、スキャンにより得られたデータに基づいて被検者の体形に関する情報を取得し、この情報に基づいて、被検者の体形に合うようにクレードルの載置面の形状を調整してもよい。被検者の体形に合うようにクレードルの載置面の形状を調整することによって、被検者が楽に感じるように、被検者の姿勢を調整することができる。被検者の体形に関する情報は、例えば、被検者の骨格情報である。被検者の体形に関する情報に基づいてクレードルの載置面の形状を調整する場合、圧力分布(図28参照)を求めなくても、クレードルの載置面の形状を調整することができるので、支持部材ごとに圧力センサを備える必要がなく、コストの削減が図られる。
【0098】
また、第1および第2の形態では、支持部材の高さを調整するための高さ調整部材として、空気袋やリンク機構を用いている。しかし、支持部材の高さを調整することができるのであれば、空気袋やリンク機構以外の部材を、高さ調整部材として用いてもよい。
【0099】
更に、第1および第2の形態では、MRI装置について説明したが、本発明は、MRI装置だけでなく、テーブルを有する他の医用装置(CT装置、PET装置など)にも適用することができる。
【符号の説明】
【0100】
2 マグネット
3 テーブル
4 受信コイル
5 シーケンサ
6 送信器
7 勾配磁場電源
8 受信器
9 中央処理装置
10 操作部
11 表示部
12 被検者
21 ボア
30 収容部
31 クレードル
33 空気袋
40 支持部材
41 クッション
42 基体
43 内側基体
44 外側基体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者をスキャンする医用装置であって、
前記被検者を載置するための載置面を有するクレードルであって、前記載置面が変形可能に構成されたクレードルと、
前記クレードルに加わる圧力に基づいて、前記載置面の形状を調整する調整手段と、を有する医用装置。
【請求項2】
前記クレードルは、前記被検者を支持するための複数の支持部材を有し、
前記調整手段は、前記複数の支持部材の高さを調整することによって、前記載置面の形状を調整する、請求項1に記載の医用装置。
【請求項3】
前記調整手段は、
前記複数の支持部材の高さを調整するための高さ調整部材と、
前記高さ調整部材を制御する制御部と、
を有する請求項2に記載の医用装置。
【請求項4】
前記高さ調整部材は空気袋であり、
前記制御部は、前記空気袋に供給される空気量を制御する、請求項3に記載の医用装置。
【請求項5】
前記調整手段は、前記空気袋の圧力を検出する第1の圧力センサを有し、
前記制御部は、前記第1の圧力センサの検出値に基づいて、前記空気袋に供給される空気量を制御する、請求項4に記載の医用装置。
【請求項6】
前記高さ調整部材はリンク機構であり、
前記制御部は、前記リンク機構の昇降量を制御する、請求項3に記載の医用装置。
【請求項7】
前記調整手段は、前記支持部材に加わる圧力を検出するための第2の圧力センサを有し、
前記制御部は、前記第2の圧力センサの検出値に基づいて、前記リンク機構の昇降量を制御する、請求項6に記載の医用装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前記被検者がクレードルから起き上がるときの動作を補助するための補助モードを実行する、請求項3〜7のうちのいずれか一項に記載の医用装置。
【請求項9】
前記支持部材は、
前記高さ調整部材を収容する基体を有する、請求項3〜8のうちのいずれか一項に記載の医用装置。
【請求項10】
前記基体は、伸縮自在に構成されている、請求項9に記載の医用装置。
【請求項11】
被検者をスキャンする医用装置であって、
前記被検者を載置するための載置面を有するクレードルであって、前記載置面が変形可能に構成されたクレードルと、
前記被検者をスキャンすることにより得られた前記被検者の体格に関する情報に基づいて、前記載置面の形状を調整する調整手段と、を有する医用装置。
【請求項12】
前記クレードルは、前記被検者を支持するための複数の支持部材を有し、
前記調整手段は、前記複数の支持部材の高さを調整することによって、前記載置面の形状を調整する、請求項11に記載の医用装置。
【請求項13】
前記調整手段は、
前記複数の支持部材の高さを調整するための高さ調整部材と、
前記高さ調整部材を制御する制御部と、
を有する請求項12に記載の医用装置。
【請求項14】
前記高さ調整部材は空気袋であり、
前記制御部は、前記空気袋に供給される空気量を制御する、請求項13に記載の医用装置。
【請求項15】
前記高さ調整部材はリンク機構であり、
前記制御部は、前記リンク機構の昇降量を制御する、請求項13に記載の医用装置。
【請求項16】
前記制御部は、
前記被検者がクレードルから起き上がるときの動作を補助するための補助モードを実行する、請求項13〜15のうちのいずれか一項に記載の医用装置。
【請求項17】
前記支持部材は、
前記高さ調整部材を収容する基体を有する、請求項13〜16のうちのいずれか一項に記載の医用装置。
【請求項18】
前記基体は、伸縮自在に構成されている、請求項17に記載の医用装置。
【請求項19】
前記被検者の体格に関する情報は、骨格情報である、請求項11〜18のうちのいずれか一項に記載の医用装置。
【請求項20】
前記支持部材はコイルを有している、請求項2〜19のうちのいずれか一項に記載の医用装置。
【請求項21】
前記支持部材は、
前記被検者が前記クレードルから受ける圧力を低減するためのクッションを有している、請求項2〜20のうちのいずれか一項に記載の医用装置。
【請求項22】
前記医用装置は、磁気共鳴イメージング装置、又はCT装置である、請求項1〜121のうちのいずれか一項に記載の医用装置、

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【公開番号】特開2012−245209(P2012−245209A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120166(P2011−120166)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(300019238)ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー (1,125)
【Fターム(参考)】