説明

医療処置仮説検定用のシステムおよび方法

医療処置の効果を評価するコンピュータ実行可能なシステムおよび方法であって、その方法は、患者記録データを受信し、評価のための関連する特徴を識別し、第1の処置を識別し、第2の処置を識別し、各患者の症例に重みを割り振り、割り振られた重みを用いて、第2の識別される処置と対比して、識別される処置が識別される効果をもたらす相対的な可能性を決定し、この推定された相対的な可能性を出力することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、後向きの医療データを統計的に解析するための方法およびシステムに関し、より詳細には、医療処置の効果を評価するための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
コホート研究を用いて医療処置の効果を解析するためのシステムおよび方法がある。これらのシステムおよび方法のほとんどは、特定の処置のランダム化比較試験に基づいている。十分な期間にわたって十分な数の被験者が与えられれば、ランダム化比較試験には、その処置を受けるグループと制御グループの全体に交絡因子(またはグループ間の差異)を一様に分布させることによって、この解析が簡略化されるという利点がある。ランダム化比較試験は、実行するのに費用がかかり、それらの精度はある程度は多数の被験者に依存し、処置の候補の間で典型的でない条件に起因する副次的な交互作用を識別するのにあまり効果的ではないため、これらのシステムおよび方法は制約を受ける。その上、ランダム化比較試験(これは前向きのコホート研究である)では、既存の患者記録データのより広範な集合で利用可能な多量の情報を、後向きのコホート研究で活用できるのと同じようには活かすことができない。
【0003】
他の既存のシステムおよび方法は、履歴の患者記録データを解析して特定の処置の効果を評価する。これらのシステムは、処置されたグループと未処置グループの全体にわたって履歴データの中に一様に分布していない交絡因子や患者の特徴に関する制御のために主として手操作によるモデリング処理を用いるため、これらのシステムも制約を受ける。これらの手操作による交絡因子の制御処理では偏りが生じる危険性が高いため、既存のシステムによって生み出される結果の質は、オペレータの熟練度に大きく依存する。その上、大きな既存のデータ集合中の多数の潜在的な交絡因子に付随する主要な効果や交互作用の効果により、手操作のモデリングはごく短期間に集中したものになり、人的ミスに影響されやすくなる。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、識別される処置を用いて治療されたときに患者が識別される効果を経験する相対的な可能性を評価する目的で患者の医療記録を統計的に解析するためのソフトウェア・コンポーネントのシステムおよび方法に関する。この解析方法により、どの処置を承認し、使用し、資金提供するかを決定する際に、識別される処置の効力や危険性を評価するために医療分野の意志決定者が依拠することができる結果が生み出される。
【0005】
いくつかの実施形態では、そのシステムは、2つの処置を評価して、第1の処置を受ける患者が、第2の処置を受ける患者と比較して識別される効果を経験する相対的な可能性を決定する。他の実施形態では、比較される複数の処置は、実際には同じ処置の複数の適用量である。さらに他の実施形態では、そのシステムは、いくつかの個々の比較を行っていくつかの異なる比率比を生成することにより第1の処置をいくつかの異なる第2の処置と比較する。その比率比のそれぞれは、第1の処置と別の処置との間のものとして識別される効果を患者が経験する相対的な可能性を表す。
【0006】
本発明の一実施形態により、医療処置の効果を評価するコンピュータ実行可能なシステムおよび方法が提供され、その方法は、患者記録データを受信し、評価のための関連する特徴を識別し、第1の処置を識別し、第2の処置を識別し、各患者の症例に重みを割り振り、割り振られた重みを用いて、第2の識別される処置と対比して、識別される処置が識別される効果をもたらす相対的な可能性を決定し、この推定された相対的な可能性を出力することを含む。
【0007】
別の実施形態では、本発明は、医療処置の効果を評価するためのシステムに関し、そのシステムは、ネットワーク・インタフェースと、ネットワークを介してアクセスされるサーバ上にある患者記録データベースと、患者記録データを受信し、評価のための関連する特徴を識別し、第1の処置を識別し、第2の処置を識別し、患者が被験グループのメンバーであろう可能性に基づいて各患者の症例に重みを割り振り、割り振られた重みを用いて、第2の識別される処置と対比して、識別される処置が識別される効果をもたらす相対的な可能性を決定し、この推定された相対的な可能性を出力するように構成されている解析サーバとを備える。
【0008】
別の実施形態では、本発明は、医療処置の効果を評価するためのサーバに関し、そのサーバは、プロセッサと、プロセッサに動作可能に連結され、内部にプログラミング命令を蓄積するメモリであって、プロセッサがプログラム命令を実行するように動作可能であるメモリとを備え、プログラム命令が、患者が被験グループのメンバーであろう可能性に基づいて各患者の症例に重みを割り振り、第2の識別される処置と対比して、識別される処置が識別される効果をもたらす相対的な可能性を決定する際に、割り振られた重みを用いる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】後向き観察のデータに基づいて医療処置の効果を比較するための、本発明の実施形態により構成された医療処置仮説検定システムの概略ブロック図である。
【図2】本発明の実施形態による図1の医療処置仮説検定システムのデータ選択コンポーネントによって実行されるステップの高レベルのフロー図である。
【図3】本発明の実施形態による図1の医療処置仮説検定システムの傾向スコアリング・コンポーネントによって実行されるステップの高レベルのフロー図である。
【図4】本発明の実施形態による図3の傾向スコアリング・コンポーネントの、テーブルのデータを準備するコンポーネントによって実行されるステップのフロー図である。
【図5A】本発明の実施形態によるテーブルのデータを準備する図4の処理の最初における例示的な患者症例データのテーブルの説明図である。
【図5B】本発明の実施形態によるテーブルのデータを準備する図4の処理のある時点における例示的な患者症例データのテーブルの説明図である。
【図5C】本発明の実施形態によるテーブルのデータを準備する図4の処理のある時点における例示的な患者症例データのテーブルの説明図である。
【図5D】本発明の実施形態によるテーブルのデータを準備する図4の処理のある時点における例示的な患者症例データのテーブルの説明図である。
【図5E】本発明の実施形態によるテーブルのデータを準備する図4の処理のある時点における例示的な患者症例データのテーブルの説明図である。
【図6】本発明の実施形態による、処置グループ内の患者についての重み付けされていない患者データと処置グループ内にない患者についての重み付けされた患者データとを比較するための例示的なテーブルの説明図である。
【図7】図1の回帰モデリング118用の例示的な患者症例データのテーブルの説明図であり、この説明図は図3で回帰ステップ用にデータをフォーマット312する間にフォーマットされたデータを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面は、あくまで説明のために本発明の実施形態を描いている。本明細書に記載された本発明の原理から逸脱することなく本明細書で説明される構造および方法の代替実施形態を採用できることが、当業者は以下の記述から容易に理解されよう。
【0011】
さて、図面に目を向けると、患者データ選択、傾向スコアリング、逆確率重み付け、および比率比の2重にロバストな推定を含む、本発明の実施形態が示されている。調査対象となる2つの識別される処置および識別される効果に基づいて、後向き観察の医療記録データがオペレータにより患者記録データベースから選択される。第1の識別される処置を受けなかった各患者には、その患者の個々の特徴に基づいて、第1の識別される処置を受けたグループにその患者がいたであろう可能性を表す傾向スコアが割り振られる。その割り振られた傾向スコアを用いて各患者のデータを重み付けし、第1の識別される処置を受けなかったグループ(即ち、第2の識別される処置を受けたグループ)の重み付けされたデータが第1の処置を受けたグループの重み付けされていないデータに近似するようにする。重み付けされたデータを用いて回帰を行って、第2の識別される処置を受ける患者と比べて第1の識別される処置を受ける患者が識別される効果を経験するであろう相対的な可能性を推定する。この推定値のことを比率比と呼ぶ。回帰を行う際に重み付けされたデータを用いることによって、比率比の推定は2重にロバストになる。
【0012】
図1は、後向き観察のデータに基づいて医療処置の効果を比較するための、本発明の実施形態により構成された医療処置仮説検定システムの概略ブロック図である。図1に示すように、そのシステムは、オペレータがネットワーク104を介して解析マシン106と患者データ・マシン108にアクセスするためのオペレータ端末102を備える。患者データ・マシン108により、オペレータが患者記録データベース110と補助データベース112にアクセスできる。解析マシン106は、プロセッサと、プロセッサに動作可能に連結され、内部にプログラミング命令や他のデータを蓄積するメモリであって、プロセッサがプログラム命令を実行するように動作可能であるメモリと、解析マシンが患者データ・マシン108や他の入力元からの入力を受信し、オペレータ端末102や他の出力先に結果を出力することを可能にするネットワーク接続とを備えてもよい。
【0013】
患者記録データベース110は、患者の識別番号、誕生日、性別、医療検査の結果といった患者の医療記録からの後向き観察の患者データ、医療提供者により記録された観察データ、および患者により医療提供者に提供された情報を蓄積する。補助データベース112は、どの記録が患者記録データベースから検索されたかやそれらがいつ検索されたかについての情報などの、システムの運用に関する情報、システム・データのフォーマット・ルール、および患者記録データの解析に関係する他のデータを蓄積する。
【0014】
解析マシン106により、データ選択コンポーネント114、傾向スコアリング・コンポーネント116、回帰モデリング・コンポーネント118およびデータ出力コンポーネント120を含むいくつかのソフトウェア・コンポーネントにオペレータはアクセスできる。これらのソフトウェア・コンポーネントは、コンピュータ・メモリに蓄積されコンピュータ・プロセッサにより実行されるコンピュータ命令の形をとってもよい。データ選択コンポーネント114は、関連する患者のデータや属性を患者記録データベース110から選択するためのインタフェースをオペレータに提示し、選択されたデータを検索しかつ傾向スコアリング・コンポーネント116用にフォーマットする。
【0015】
傾向スコアリング・コンポーネント116は、識別される処置を受ける患者のグループ内に(「処置グループ内に」)その患者がいる可能性を表す傾向スコアを決定し、その傾向スコアを各患者の記録に割り振る。さらに、傾向スコアリング・コンポーネント116は、傾向スコアを患者データに適用して患者記録のデータを重み付けし、処置グループ内にない患者のグループについての重み付けされたデータが処置グループ内の患者のグループについての重み付けされていないデータに近似するようにする。
【0016】
回帰モデリング・コンポーネント118により、第2の識別される処置を受ける患者(即ち、処置グループ内にない患者)に比べて第1の識別される処置を受ける患者が識別される効果を経験するであろう相対的な可能性を推定するためのモデルをオペレータが構築し検査するためのインタフェースが与えられる。回帰モデリング・コンポーネント118は、傾向スコアリング・コンポーネント116によって重み付けされた重み付けデータを受け取る。
【0017】
データ出力コンポーネント120により、解析マシンの結果を提示するためのフォーマットやスタイルをオペレータが選択することができるインタフェースが与えられる。いくつかの実施形態では、データ出力コンポーネント120は、解析マシンによって生成されたデータを選択しフォーマットするためのツールを含む。他の実施形態では、データ出力コンポーネント120内のツールにより、解析マシンの結果の解釈や理解を助けるための図表やグラフなどの色々な可視化ツールを、オペレータは選択したり操作することができる。
【0018】
図2は、本発明の実施形態による図1の医療処置仮説検定システムのデータ選択コンポーネント114によって実行されるステップの高レベルのフロー図である。図2に示すように、データ選択コンポーネント114は、最初に患者記録データベースへの接続を確立202して、オペレータが患者データにアクセスできるようにする。本発明の一実施形態によれば、データ選択コンポーネント114は、ODBCドライバを利用して、患者データ・マシン108上の患者記録データベース110にネットワーク104を介してデータ選択コンポーネント114を接続する。次いで、データ選択コンポーネント114はデータ選択インタフェースをオペレータに提供204して、解析マシン上での後続する解析用の適切な患者記録をオペレータが選択できるようにする。本発明の一実施形態によれば、データ選択インタフェースは、ウェブ・ブラウザ・アプリケーションで閲覧されるHTMLウェブページとして、オペレータに提示される。オペレータが所望のデータを選択した後に、システムはこの選択を受信し206、選択された記録を患者記録データベース110から検索208する。次いで、システムは、解析マシン用のデータを傾向スコアリング・コンポーネントによってフォーマット210し、フォーマットされたデータを解析マシン106上のメモリに蓄積212する。
【0019】
図3は、本発明の実施形態による図1の医療処置仮説検定システムの傾向スコアリング・コンポーネント116によって実行されるステップの高レベルのフロー図である。図3に描いたように、傾向スコアリング・コンポーネント116は初期データ準備ステップ302を実行するが、このステップは図4に関してより詳細に説明する。このデータ準備ステップ302では、解析マシンは、患者記録をテーブルの形で準備し、「初期値の」(initial ”seeding”)傾向スコアと各患者記録に付随する残差を識別し、選択されたデータ内に記載されている各患者の特徴について、各特性関数や特性関数の積のための列を作成し、それらを評価する。データ準備ステップ302の後、解析マシンは、いずれかの特性関数の列または特性関数の積の列と残差の列との間で最大の絶対相関を識別304する。以下の公式について、tは第1の識別される処置を受ける患者iの0/1指標を表し、pは患者iが第1の識別される処置を受けた推定確率であり、Iはj番目の特性関数であり、nは患者の人数である。最大の絶対相関を識別するために、いずれかの2つの列がどの程度まで相関しているかを決定するには、以下の公式を使用する:r=Sum((t−p)(Iji−mean(I))/((n−1)sd(t−p)sd(I))。残差の列に最も相関している列を識別した後で、解析マシンは、識別された列に基づいてすべての患者についての傾向スコアを調整306する。傾向スコアを調整する際には、以下の公式を使用する:p/(1−p)=p/(1−p)×exp((δ×sign(r2)×(Iji−1))。ここで、δは0.001などの小さな数に設定されるチューニング・パラメータである。次いで、調整処理の結果得られる新たな傾向スコアを用いて、解析マシンは、未処置の患者記録のそれぞれに適用する重みを決定308する。その重みは、以下の公式を用いて傾向スコアから計算される:w=p/(1−p)。
【0020】
解析マシンは、処置グループ内にない患者についての重み付けされたデータの総計を、処置グループ内の患者についてのデータの総計と比較309して、2つのデータ集合が十分に類似している(「最適に釣り合っている」)かどうかを決定310する。それらのデータ集合が最適に釣り合っていない場合には、解析マシンは、調整処理306で新たに割り振られた傾向スコアと新たに計算された(傾向スコアの変化によって調整された)残差を含むデータ・テーブルに戻る。次いで、新たな残差で最大の絶対相関を識別304し、患者の傾向スコアを調整306し、より新しい傾向スコアに基づいて新たな患者データの重みを決定308し、重み付けされた未処置データを重み付けされていない処置データと比較309して、データ集合が今度は最適に釣り合っているかどうかを決定310する処理を、解析マシンは繰り返す。この処理は、データ集合同士が十分に類似するまで繰り返され、その時点で解析マシンは回帰ステップ用にデータをフォーマット312する。
【0021】
図4は、本発明の実施形態による図3の傾向スコアリング・コンポーネントの、テーブルのデータを準備するコンポーネントによって実行されるステップのフロー図である。図4に描いたデータ準備ステップでは、選択された患者データを解釈し、相関に関する傾向スコアリング処理での後続するステップ304により解釈できるようにそのデータを整える。図4で詳述される上記のステップで記載されるデータ準備は、図5A〜図5Eにも例示的なテーブルで示している。図4に示すように、システムは、最初に、やはり図2で詳しく描いたデータ選択コンポーネント114の処理中に蓄積された患者症例データを検索402する。5人の例の患者に関する患者症例データを含む例示的なテーブルを、図5Aに示す。図5Aの説明図は、少なくとも、患者ID番号、その患者が処置グループのメンバーだったかどうかを識別するための処置指標、人種などの分類別の特徴に付随するデータ、および血圧などの計測数値を、初期段階での各患者の記録が含み得ることを示す。図4内で、処理中の次のステップは、「初期値の」傾向スコアを各患者に割り振る404ことである。本発明の一実施形態では、解析マシンが処置グループ内の患者の人数を患者記録の総数で割ることによって、この初期値の傾向スコアが計算される。データ準備処理での次のステップは、各患者記録についての残差を計算することである。本発明の実施形態では、各患者についての処置指標から傾向スコアを差し引くことによって、その残差が計算される。5人の例の患者のそれぞれに関する傾向スコアおよび残差のデータを含む例示的なテーブルを、図5Bおよび図5Cにそれぞれ示す。図4に戻って、一実施形態では、解析マシンは次に、データ内に記載された各患者の特徴についての特性関数を定義し、評価する。上記の特性関数が定義され付随する列が生成されていることが図5Dの例示的なテーブルで示されており、その図には各条件についての新たな列が示されているが、それは解析マシンが分類別の特徴と計測数値の両方をブール式で記載できるように定義されなければならない。別の実施形態では、公開された簡便なアルゴリズムを用いることによりすべての特性関数を評価することは回避され、この場合には、選択された特性関数だけが定義され、評価される。特性関数は、特性関数に含まれる条件が各患者記録について真かまたは偽かを決定することによって評価され、1または0を列に配置して真または偽を表す。図4の処理での次のステップは、各特性関数についてそれぞれ他の特性関数との積を定義し、評価410することである。特性関数の定義と同様に、システムは、各条件についての新たな列を生成し、各条件を評価して、その行で識別される患者が特性関数(この場合、各列の一番上にある1つまたは複数の特性関数の積)で識別される条件を満たすかどうかを示す0または1を付随する列に配置する。このステップで生成されたその列と患者記録の評価を、図5Eに示す。
【0022】
図6は、本発明の実施形態による、処置を受けた患者についての患者データと、処置を受けなかった患者についての重み付けされた患者データとを比較するための例示的なテーブルの説明図である。図6は、データが最適な釣り合いに到達したかどうかを決定310する際に図3の比較ステップ309で考慮されたデータを示す。図6の例示的なテーブル中のデータは、回帰用にデータを準備312するための重み付けの後で十分に釣り合っているデータ集合を示している。
【0023】
図7は、図1の回帰モデリング118用の例示的な患者症例データのテーブルの説明図である。この説明図は図3で回帰ステップ用にデータをフォーマット312する間にフォーマットされたデータを示す。この例では、観察された識別される効果についてのデータで、図5Aからの元々のデータが補われる。図7のテーブルは各患者についての2つの記録を示しており、1つは「処置前の期間」についてのもの、1つは「処置後の期間」についてのものである。図7の「期間」の列は1または0を含み、それぞれ、記録が「処置後」の期間と「処置前」の期間のどちらを記述しているかを示す。図7のテーブルは、観察期間中に患者が識別される効果を経験したかどうかを示す列/指標「Y」、および各患者についての観察期間の長さを記載した列/指標「E」も含む。図7のテーブルは、傾向スコアの重みについての列/指標「W」も含み、これは図3に描いて上述したシステム308により算出される。
【0024】
第2の処置を受ける患者に比べて第1の処置を受ける患者が識別される効果を経験する相対的な可能性は、比率比を推定することによって計算される。その比率比(「RRR」)は、処置前の期間に生じる識別されるイベントの、処置後の期間に生じる識別されるイベントに対する比率を、処置(第1の処置)グループおよび未処置(第2の処置)グループについて比較したものである。RRRを計算するための公式は、(比率(後,処置)/比率(前,処置))/(比率(後,未処置)/比率(前,未処置))である。計算後に、解析マシンは、この推定されたRRRを、オペレータ端末、または第1および第2の識別される処置に関係する効力や危険性を評価するのに用いることができる別の場所に出力する。医療分野の意志決定者は、解析マシンからの推定されたRRRの出力を利用して、特定の処置を患者や医療機構のために承認または推薦するかどうかを決定することができる。
【0025】
潜在的な交絡を調整するために、システムは、図1に示すような重み付けポアソン回帰モデル118を推定することによって、2重にロバストに調整された比率比を取得する。その推定値は、数式L(b,β)=Sum(Y−exp(f))を最大化することから導出され、ここでf=log(E)+b+b+bPeriod+bPeriod+β’Xである。結果として得られるexp(b)の値は、2重にロバストな調整された比率比である。
【0026】
計算後に、解析マシンは、2重にロバストな調整された比率比を、オペレータによる点検用にオペレータ端末に、または第1および第2の識別される処置に関係する効力や危険性を評価するのに用いることができる別の場所に出力する。医療分野の意志決定者は、解析マシンから出力されたこの2重にロバストな調整された比率比を利用して、特定の処置を患者や医療機構のために承認または推薦するかどうかを決定することができる。
【0027】
例示的な実施形態を用いることで本発明を説明してきたが、本明細書に添付された特許請求の範囲およびそれらの均等物により定められる本発明の範囲および精神の中に含まれる色々な修正を説明された実施形態に加えてもよいことが、当業者であれば理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療処置の効果を評価するコンピュータ実行可能な方法であって、
患者記録データを受信し、
評価のための関連する特徴を識別し、
第1の処置を識別し、
第2の処置を識別し、
各患者の症例に重みを割り振り、
割り振られた前記重みを用いて、第2の識別される処置と対比して、識別される処置が識別される効果をもたらす相対的な可能性を決定し、
この推定された相対的な可能性を出力する
ことを含む方法。
【請求項2】
各患者の症例に割り振られた前記重みが、前記患者が被験グループのメンバーであろう可能性に基づいている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
各患者の症例に割り振られた前記重みが、前記患者の特色および特色の組み合わせを目標の母集団に整合させることによって計算される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記相対的な可能性を決定する際に回帰が行われる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ポアソン回帰が行われる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
整合させた前記特色のうちの少なくともいくつかが前記回帰で共変量として用いられる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
医療処置の効果を評価するためのシステムであって、
ネットワーク・インタフェースと、
ネットワークを介してアクセスされるサーバ上にある患者記録データベースと、
患者記録データを受信し、評価のための関連する特徴を識別し、第1の処置を識別し、第2の処置を識別し、前記患者が被験グループのメンバーであろう可能性に基づいて各患者の症例に重みを割り振り、割り振られた前記重みを用いて、第2の識別される処置と対比して、識別される処置が識別される効果をもたらす相対的な可能性を決定し、この推定された相対的な可能性を出力するように構成されている解析サーバと
を備えるシステム。
【請求項8】
医療処置の効果を評価するための解析サーバであって、
プロセッサと、
前記プロセッサに動作可能に連結され、内部にプログラミング命令を蓄積するメモリであって、前記プロセッサがプログラム命令を実行するように動作可能であるメモリとを備え、
前記プログラム命令が、
患者記録データを受信し、
評価のための関連する特徴を識別し、
第1の処置を識別し、
第2の処置を識別し、
前記患者が被験グループのメンバーであろう可能性に基づいて各患者の症例に重みを割り振り、
割り振られた前記重みを用いて、第2の識別される処置と対比して、識別される処置が識別される効果をもたらす相対的な可能性を決定し、
この推定された相対的な可能性を出力する
ことを含む解析サーバ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−530300(P2012−530300A)
【公表日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−515224(P2012−515224)
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【国際出願番号】PCT/US2010/038561
【国際公開番号】WO2011/014308
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(511302035)コンソリデイティド リサーチ,インコーポレイティド (1)
【Fターム(参考)】