医療器具
【課題】手袋を着用した状態で保持しやすい医療器具を提供することを目的とする。
【解決手段】穿刺装置10は、左右の面14aには、板ばね対18、18が設けられている。板ばね対18は、面14aから斜め方向に突出し、対向する向きに設けられた一対の板ばね22、22からなる。一対の板ばね22、22は対称の同形状であって、端部22aは対向して隙間24を形成している。隙間24は、人体に対して接近させるX方向に延在している。板ばね対18、18によれば、手袋を着用した状態の指で押圧することにより弾性変形して互いに接近し、端部22a同士が手袋の一部を挟持することから、穿刺装置10が指から滑ることなく、保持しやすい。
【解決手段】穿刺装置10は、左右の面14aには、板ばね対18、18が設けられている。板ばね対18は、面14aから斜め方向に突出し、対向する向きに設けられた一対の板ばね22、22からなる。一対の板ばね22、22は対称の同形状であって、端部22aは対向して隙間24を形成している。隙間24は、人体に対して接近させるX方向に延在している。板ばね対18、18によれば、手袋を着用した状態の指で押圧することにより弾性変形して互いに接近し、端部22a同士が手袋の一部を挟持することから、穿刺装置10が指から滑ることなく、保持しやすい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穿刺装置、注射器及び血糖計等の医療器具に関し、特に、手で持ち上げ把持しながら操作を行う医療器具に関する。
【背景技術】
【0002】
医療機関では、穿刺装置、注射器及び血糖計等の多くの手で持って使用する医療器具が医療従事者等によって扱われている。これらの医療器具はそれぞれに個別の使用方法があるが、指先で把持しておき、針等の作用部を患者(ドナー等を含む)に向けて接近及び接触させるものが多い。例えば、穿刺装置については、先端部を患者の皮膚に適度に押圧しながら接触させておき、所定のトリガー操作を行って内部の針を一瞬突出させて穿刺を行う。このような医療器具では正確に操作することができるように、手で確実に把持できることが望ましい。操作のやり直し頻度が低減するとともに、操作が容易になるからである。このような背景から、特許文献1記載の注射器では、表面粗面加工部を設けている。
【0003】
【特許文献1】特開2001−187140号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の医療器具では、表面の滑りやすさについて十分な対応がなされてなく、操作しにくい場合がある。また、医療機関では所定の医療器具を扱う際には手袋着用を義務付けているが、従来の医療器具は手袋を着用した状態で特に滑りにくくなるような対応はなされていない。
【0005】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、手袋を着用した状態で保持しやすい医療器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る穿刺装置は、ハウジングと、前記ハウジングの外表面に一端が固定され、他端が自由端となる可撓性部材と、前記ハウジングの外表面に設けられ、前記可撓性部材の他端と対向する対向端部を備える突出部とを有し、前記可撓性部材が前記ハウジングの外表面に対して斜め方向に突出し、前記可撓性部材の他端と前記突出部の対向端部との間に隙間を形成していることを特徴とする。
【0007】
このような可撓性部材と突出部とによれば、手袋を着用した状態の指や手のひらで押圧することにより、少なくとも可撓性部材が弾性変形して突出部に接近し、手袋の一部を挟持することから、医療器具が指や手のひらから滑ることなく、保持しやすい。
【0008】
この場合、前記ハウジングを把持する際、前記可撓性部材が押圧されて前記ハウジング側に傾動し、前記隙間の幅が小さくなる構成であるとよい。可撓性部材は、指や手のひらによって押圧されるとよい。
【0009】
この場合、前記可撓性部材と前記突出部が、前記ハウジングの外表面に2組設けられ、前記可撓性部材と前記突出部の1組は他の1組に対して、前記ハウジングの外表面において反対側に位置していてもよい。このように反対側の2つの面にそれぞれ可撓性部材及び突出部が設けられると、2本の指による把持がしやすい。
【0010】
非変形時の前記表面から前記端面までの高さは、0.5mm〜2mmであってもよい。該高さが2mm以下であると十分に低くて扱いやすく、0.5mm以上であると手袋の一部を挟みやすい。
【0011】
前記隙間は、0.5mm〜2mmであってもよい。該隙間が0.5mm以上であると手袋の一部が挿入されやすく、2mm以下であると十分に狭くて手袋の一部を挟みやすい。
【0012】
さらに、前記突出部は、前記外表面に一端が固定された可撓性部材であり、前記対向端部は該可撓性部材の他端であってもよい。つまり、一対の可撓性部材の自由端同士が対向するように設けられ、バランスのよい構成となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る医療器具は板ばねと突出部とを所定の間隔をもって対抗する位置に備えており、手袋を着用した状態の指や手のひらで押圧することにより、少なくとも板ばねが弾性変形して突出部に接近し、手袋の一部を挟持することから、医療器具が指や手のひらから滑ることなく、保持しやすい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る医療器具について3つの実施の形態を挙げ、添付の図1〜図13を参照しながら説明する。以下、図1、図9及び図13の矢印X1方向を前方、先端とし、X2方向を後方、後端とする。
【0015】
なお、本発明の医療器具に設けられた可撓性部材として、以下、板ばねを例にして説明する。
【0016】
図1及び図2に示すように、第1の実施形態に係る医療器具は、穿刺装置10である。穿刺装置10は、糖尿病患者等の血糖値の計測に際して微量の血液を出すために穿刺を行う装置であり、穿刺をする針12と該針12を突出させる機構が一体となっており、単回使用のいわゆるディスポーザブル品である。
【0017】
穿刺装置10は、ハウジング14と、該ハウジング14内に設けられた針12と、ボタン16と、ハウジング14における上下の面(外表面)14a、14aに設けられた二対の板ばね対18、18とを有する。ハウジング14はやや薄い箱形状であり、板ばね対18が設けられた後方部分と、該後方部分よりもやや幅の狭い前方部分とからなる。ハウジング14は、指で把持しやすい適度に小さい形状である。ハウジング14の後端の上下にはフランジ20が設けられている。板ばね対18は、上下の面14aに直交する左右の面に設けられていてもよい。
【0018】
ボタン16はハウジング14の後方開口部から突出しており、穿刺に際して押し込まれ、内部の針突出機構(図示せず)を駆動して針12を一瞬突出させる。該針12は、突出機構の作用下に、ハウジング14の前方面中央の針開口孔14bから一瞬突出して穿刺が行われる。針12には滅菌状態を保持するキャップ(図示せず)が予め針開口孔14bを介して装着されており、使用時には該キャップを外して針開口孔14bから抜かれる。穿刺装置10は人体に対して接近させる方向(つまり、X方向)にやや長尺であり、操作をしやすい。
【0019】
図3に示すように、板ばね対18は、ハウジング14と一体構成で一対の板ばね(可撓性部材)22、22からなる。板ばね対18は簡便構成であって廉価であるとともに、ハウジング14と一体成型が可能であり、大量生産に適する。板ばね22の材料としては、金属やプラスチック等で可撓性を有する種々のものを用いることができる。2つの板ばね22は、それぞれ一端が面14aに固定され、他端が自由端となっている。面14aから斜め方向に突出し、お互いに対向する向きに設けられている。一対の板ばね22は、対称配置の同形状であって、自由端の端部22aは対向して細い隙間24がX方向に延在して形成されている。一対の板ばね22は同形状であることからバランスがよく把持しやすい。隙間24は、穿刺装置10の使用時に人体に対して接近させる長尺な方向に延在しており、適度な長さが確保されている。
【0020】
板ばね対18は、上方から押圧されることにより、互いに接近する方向に弾性的に撓み、ハウジング14側に傾動し、隙間24の幅が小さくなって、端部22a同士が接触可能であって、操作者の手袋を挟持できる。非変形時の面14aから端部22aまでの高さHは、2mm以下であると十分に低くて扱いやすく、把持するときの異物感や抵抗感が少ない。高さHが0.5mm以上であると手袋の一部を挟みやすくなる。隙間24の距離Lは、0.5mm以上であると手袋の一部が挿入されやすく、2mm以下であると十分に狭くて手袋の一部を挟みやすく、人体の皮膚を挟みにくくなる。板ばね22と面14aとのなす角度θは、3°〜15°程度が適当である。板ばね対18は、端部22a同士が接触可能であればよく、断面形状は設計条件に応じて決定すればよい。穿刺装置10における板ばね対18は、平板形状となっている。また、端部22a同士は完全に接触せず、挟まれる手袋32の厚さ分だけ離れていてもよい。
【0021】
次に、このように構成される穿刺装置10の作用について説明する。医療機関では所定の医療器具を扱う際には手袋着用を義務付けていることから、以下の説明では操作者は手袋を着用しているものとする。手袋は、例えばシリコーンゴムからなる薄地のもので弾性を有して指に密着するタイプであり、いわゆるディスポーザブル品である。なお、手袋32は指30に密着するタイプに限らず、多少の隙間が生じるタイプであってもよい。
【0022】
図4に示すように、ハウジング14を把持して先端面を皮膚70に当接させ、ボタン16をハウジング14内に向かって押し込む。このとき、例えば、人差し指と中指をフランジ20に引っかけるようにして、上下の面14aを把持し、親指でボタン16を押すとよい。ところで、上下の面14aにはそれぞれ板ばね対18が設けられており、人差し指と中指は該板ばね対18を押さえつけることになる。
【0023】
図5に示すように、指30は隙間24の箇所に当接し、この部分を押し下げる。これにより、板ばね対18を構成する2つの板ばね22は弾性変形して端部22a同士が接近し、手袋32を隙間24の間に挟み込むように作用する。隙間24は、原位置で0.5mm〜2mmに設定されており、手袋32だけを必要十分な長さ挟み込むことができる。
【0024】
当初の隙間24は適度に狭いことから、図6に示すように、端部22a同士はやがて手袋32の一部を介して当接し、該手袋32を挟持することになる。これにより指30(手袋32)と穿刺装置10との間にすべりがほとんど生じることがなく、該穿刺装置10を把持しやすい。挟み込まれた手袋32は板ばね対18と面14aとの間に進入するが、端部22aと面14aとの間の高さHは、0.5〜2mmが確保されており、適度な量の手袋32が進入可能である。
【0025】
このように把持をすると、穿刺装置10は手袋32に対して固定され、指30に対して滑りにくくなることから、皮膚70に接近させる操作を行いやすく、該皮膚70に対して適度な力で押圧した状態を維持し、ボタン16の操作も行いやすい。反対側を指向する上下の面14aに板ばね対18がそれぞれ設けられていることから、図4からも明らかなように、2本の指で2つの面14aを挟持したときに、それぞれの指の手袋が板ばね対18によって挟み込まれ、穿刺装置10を確実に把持することができる。穿刺装置10の操作が終了したときには、操作者は普通に指30を離せばよい。板ばね対18は弾性変形しているだけであることから、指30を離せば原位置(図3参照)に戻り、端部22aが離間して隙間24が発生し、手袋32は解放される。つまり、操作者は、穿刺装置10の操作に際して、特別な知識、技能、準備及び注意は不要である。
【0026】
なお、上記の例では、一対の板ばね22は、それぞれ弾性体であるが、対向する部分に隙間24が構成されるのであれば、いずれか一方が弾性体(つまり、板ばね)で、他方は実質的に弾性のない突出部であってもよい。このような例を図7を参照しながら説明する。
【0027】
図7に示すように、手袋32を挟み込むための機構は、1本の板ばね22と、端部22aに対向して隙間24を形成している壁部(対向端部)34とからなる構成である。壁部34は、平面視で板ばね22と略同形状の突出部35の一部であり、板ばね22の端部22aに対向している。このような板ばね22と壁部34によっても、図8に示すように、手袋32を着用した状態の指30で押圧することにより弾性変形して端部22aが壁部34に接近し、手袋32の一部を挟持することから、穿刺装置10が指から滑ることなく、把持がしやすい。このように板ばね22が弾性変形した状態では、該板ばね22と突出部35は面14aからの高さがほぼ等しくなり、略対称形状となるので、把持しやすい。
【0028】
図9に示すように、第2の実施形態の医療器具は、注射器100である。注射器100は、先端に針102を有するシリンジ104と、該シリンジ104の後方から挿入されているピストン体106と、シリンジ104の円筒側面に設けられた二対の板ばね対108とを有する。注射器100はピストン体106をシリンジ104内に押し込むことによって内部の薬液の注射をすることができる。
【0029】
二対の板ばね対108は、注射器100を把持するときに2本の指がかかる箇所で、具体的には、円筒部104aにおける中央よりやや基端側の位置で、対称位置(180°異なる位置)に設けられている。板ばね対108は、隙間が注射器100の長尺方向(X方向)となるように設けられており、把持しやすいとともに製造が容易である。
【0030】
図10に示すように、板ばね対108の板ばね110は、シリンジ104の円筒面に応じて、高さHが0.5mm〜2mmとなるような円弧形状となっている。このように、板ばね対108は、円筒の曲面上に好適に設けられ、穿刺装置10の板ばね対18と同様の効果が得られる。図11に示すように、板ばね110は、正面視で円弧形状であることから、弾性変形したときでも、シリンジ104の円筒面104bに干渉することがなく、手袋32を確実に挟持することができる。
【0031】
注射器100では、例えば、注射器100を使用する際、2つの板ばね対108を人差し指と中指で挟むことにより、安定した把持が可能であり、穿刺操作及び親指によるピストン体106の押圧操作を行いやすい。
【0032】
図12に示すように、注射器120において複数の板ばね対108をX方向に縦列して設けてもよい。これにより、把持の場所にかかわらずいずれかの板ばね対18が手袋32を挟み込んで安定した把持が可能になる。板ばね対108は適当な長さに分割されていることから、把持したときに手に接触した箇所だけが弾性変形するので、複数の板ばね対108がつながったものに比べて変形しやすい。この実施形態は、針102を血管に刺して血液を採取する場合に、注射器120を把持して支える上で特に好適である。
【0033】
図13に示すように、第3の実施形態の医療器具は採血具150である。採血具150は、先端に設けられた針152と、円筒側面に設けられた二対の板ばね対108とを有する。針152は両頭針であって、基端側にも針が突出している。採血具150には、真空採血管154が挿入され先端のゴム栓154aを針152の基端側が貫通して、内部に血液を吸引することが可能になる。
【0034】
板ばね対108は、このような採血具150にも好適に適用可能であり、手袋32を挟持して滑りを防止することができる。
【0035】
板ばね対18、108は、穿刺装置、注射器、採血具以外の手で持って使う医療器具(例えば、血糖計等)に設けてもよい。医療器具は必ずしも人体に対して使うものに限らず、例えば動物に対して使用するものであってもよい。
【0036】
また、可撓性部材としては、板ばねに限定されず、医療器具の外表面にヒンジを介して設けられた板状部材であってもよい。
【0037】
また、可撓性部材の形状は、板状に限定されず、例えば、棒状やブロック状であってもよい。
【0038】
本発明に係る医療器具は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】板ばね対を有する穿刺装置の斜視図である。
【図2】板ばね対を有する穿刺装置の正面図である。
【図3】穿刺装置における板ばね対の正面図である。
【図4】穿刺装置を皮膚に当接した状態の模式図である。
【図5】穿刺装置における板ばね対に手袋を装着した指を接近させた状態の正面図である。
【図6】穿刺装置における板ばね対に手袋を装着した指で押圧した状態の正面図である。
【図7】板ばねと壁部の正面図である。
【図8】板ばねと壁部に手袋を装着した指で押圧した状態の正面図である。
【図9】板ばね対を有する注射器の斜視図である。
【図10】注射器における板ばね対の正面図である。
【図11】注射器における板ばね対に、手袋を装着した指で押圧した状態の正面図である。
【図12】変形例に係る板ばね対を有する注射器の斜視図である。
【図13】板ばね対を有する採血具と真空採血管の斜視図である。
【符号の説明】
【0040】
10…穿刺装置(医療器具) 12、102、152…針
14…ハウジング 14a…面
16…ボタン 18、108…板ばね対
22、110…板ばね 22a…端部
24…隙間 30…指
32…手袋 34…壁部(対向端部)
35…突出部 100…注射器(医療器具)
104…シリンジ 150…採血具(医療器具)
【技術分野】
【0001】
本発明は、穿刺装置、注射器及び血糖計等の医療器具に関し、特に、手で持ち上げ把持しながら操作を行う医療器具に関する。
【背景技術】
【0002】
医療機関では、穿刺装置、注射器及び血糖計等の多くの手で持って使用する医療器具が医療従事者等によって扱われている。これらの医療器具はそれぞれに個別の使用方法があるが、指先で把持しておき、針等の作用部を患者(ドナー等を含む)に向けて接近及び接触させるものが多い。例えば、穿刺装置については、先端部を患者の皮膚に適度に押圧しながら接触させておき、所定のトリガー操作を行って内部の針を一瞬突出させて穿刺を行う。このような医療器具では正確に操作することができるように、手で確実に把持できることが望ましい。操作のやり直し頻度が低減するとともに、操作が容易になるからである。このような背景から、特許文献1記載の注射器では、表面粗面加工部を設けている。
【0003】
【特許文献1】特開2001−187140号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の医療器具では、表面の滑りやすさについて十分な対応がなされてなく、操作しにくい場合がある。また、医療機関では所定の医療器具を扱う際には手袋着用を義務付けているが、従来の医療器具は手袋を着用した状態で特に滑りにくくなるような対応はなされていない。
【0005】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、手袋を着用した状態で保持しやすい医療器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る穿刺装置は、ハウジングと、前記ハウジングの外表面に一端が固定され、他端が自由端となる可撓性部材と、前記ハウジングの外表面に設けられ、前記可撓性部材の他端と対向する対向端部を備える突出部とを有し、前記可撓性部材が前記ハウジングの外表面に対して斜め方向に突出し、前記可撓性部材の他端と前記突出部の対向端部との間に隙間を形成していることを特徴とする。
【0007】
このような可撓性部材と突出部とによれば、手袋を着用した状態の指や手のひらで押圧することにより、少なくとも可撓性部材が弾性変形して突出部に接近し、手袋の一部を挟持することから、医療器具が指や手のひらから滑ることなく、保持しやすい。
【0008】
この場合、前記ハウジングを把持する際、前記可撓性部材が押圧されて前記ハウジング側に傾動し、前記隙間の幅が小さくなる構成であるとよい。可撓性部材は、指や手のひらによって押圧されるとよい。
【0009】
この場合、前記可撓性部材と前記突出部が、前記ハウジングの外表面に2組設けられ、前記可撓性部材と前記突出部の1組は他の1組に対して、前記ハウジングの外表面において反対側に位置していてもよい。このように反対側の2つの面にそれぞれ可撓性部材及び突出部が設けられると、2本の指による把持がしやすい。
【0010】
非変形時の前記表面から前記端面までの高さは、0.5mm〜2mmであってもよい。該高さが2mm以下であると十分に低くて扱いやすく、0.5mm以上であると手袋の一部を挟みやすい。
【0011】
前記隙間は、0.5mm〜2mmであってもよい。該隙間が0.5mm以上であると手袋の一部が挿入されやすく、2mm以下であると十分に狭くて手袋の一部を挟みやすい。
【0012】
さらに、前記突出部は、前記外表面に一端が固定された可撓性部材であり、前記対向端部は該可撓性部材の他端であってもよい。つまり、一対の可撓性部材の自由端同士が対向するように設けられ、バランスのよい構成となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る医療器具は板ばねと突出部とを所定の間隔をもって対抗する位置に備えており、手袋を着用した状態の指や手のひらで押圧することにより、少なくとも板ばねが弾性変形して突出部に接近し、手袋の一部を挟持することから、医療器具が指や手のひらから滑ることなく、保持しやすい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る医療器具について3つの実施の形態を挙げ、添付の図1〜図13を参照しながら説明する。以下、図1、図9及び図13の矢印X1方向を前方、先端とし、X2方向を後方、後端とする。
【0015】
なお、本発明の医療器具に設けられた可撓性部材として、以下、板ばねを例にして説明する。
【0016】
図1及び図2に示すように、第1の実施形態に係る医療器具は、穿刺装置10である。穿刺装置10は、糖尿病患者等の血糖値の計測に際して微量の血液を出すために穿刺を行う装置であり、穿刺をする針12と該針12を突出させる機構が一体となっており、単回使用のいわゆるディスポーザブル品である。
【0017】
穿刺装置10は、ハウジング14と、該ハウジング14内に設けられた針12と、ボタン16と、ハウジング14における上下の面(外表面)14a、14aに設けられた二対の板ばね対18、18とを有する。ハウジング14はやや薄い箱形状であり、板ばね対18が設けられた後方部分と、該後方部分よりもやや幅の狭い前方部分とからなる。ハウジング14は、指で把持しやすい適度に小さい形状である。ハウジング14の後端の上下にはフランジ20が設けられている。板ばね対18は、上下の面14aに直交する左右の面に設けられていてもよい。
【0018】
ボタン16はハウジング14の後方開口部から突出しており、穿刺に際して押し込まれ、内部の針突出機構(図示せず)を駆動して針12を一瞬突出させる。該針12は、突出機構の作用下に、ハウジング14の前方面中央の針開口孔14bから一瞬突出して穿刺が行われる。針12には滅菌状態を保持するキャップ(図示せず)が予め針開口孔14bを介して装着されており、使用時には該キャップを外して針開口孔14bから抜かれる。穿刺装置10は人体に対して接近させる方向(つまり、X方向)にやや長尺であり、操作をしやすい。
【0019】
図3に示すように、板ばね対18は、ハウジング14と一体構成で一対の板ばね(可撓性部材)22、22からなる。板ばね対18は簡便構成であって廉価であるとともに、ハウジング14と一体成型が可能であり、大量生産に適する。板ばね22の材料としては、金属やプラスチック等で可撓性を有する種々のものを用いることができる。2つの板ばね22は、それぞれ一端が面14aに固定され、他端が自由端となっている。面14aから斜め方向に突出し、お互いに対向する向きに設けられている。一対の板ばね22は、対称配置の同形状であって、自由端の端部22aは対向して細い隙間24がX方向に延在して形成されている。一対の板ばね22は同形状であることからバランスがよく把持しやすい。隙間24は、穿刺装置10の使用時に人体に対して接近させる長尺な方向に延在しており、適度な長さが確保されている。
【0020】
板ばね対18は、上方から押圧されることにより、互いに接近する方向に弾性的に撓み、ハウジング14側に傾動し、隙間24の幅が小さくなって、端部22a同士が接触可能であって、操作者の手袋を挟持できる。非変形時の面14aから端部22aまでの高さHは、2mm以下であると十分に低くて扱いやすく、把持するときの異物感や抵抗感が少ない。高さHが0.5mm以上であると手袋の一部を挟みやすくなる。隙間24の距離Lは、0.5mm以上であると手袋の一部が挿入されやすく、2mm以下であると十分に狭くて手袋の一部を挟みやすく、人体の皮膚を挟みにくくなる。板ばね22と面14aとのなす角度θは、3°〜15°程度が適当である。板ばね対18は、端部22a同士が接触可能であればよく、断面形状は設計条件に応じて決定すればよい。穿刺装置10における板ばね対18は、平板形状となっている。また、端部22a同士は完全に接触せず、挟まれる手袋32の厚さ分だけ離れていてもよい。
【0021】
次に、このように構成される穿刺装置10の作用について説明する。医療機関では所定の医療器具を扱う際には手袋着用を義務付けていることから、以下の説明では操作者は手袋を着用しているものとする。手袋は、例えばシリコーンゴムからなる薄地のもので弾性を有して指に密着するタイプであり、いわゆるディスポーザブル品である。なお、手袋32は指30に密着するタイプに限らず、多少の隙間が生じるタイプであってもよい。
【0022】
図4に示すように、ハウジング14を把持して先端面を皮膚70に当接させ、ボタン16をハウジング14内に向かって押し込む。このとき、例えば、人差し指と中指をフランジ20に引っかけるようにして、上下の面14aを把持し、親指でボタン16を押すとよい。ところで、上下の面14aにはそれぞれ板ばね対18が設けられており、人差し指と中指は該板ばね対18を押さえつけることになる。
【0023】
図5に示すように、指30は隙間24の箇所に当接し、この部分を押し下げる。これにより、板ばね対18を構成する2つの板ばね22は弾性変形して端部22a同士が接近し、手袋32を隙間24の間に挟み込むように作用する。隙間24は、原位置で0.5mm〜2mmに設定されており、手袋32だけを必要十分な長さ挟み込むことができる。
【0024】
当初の隙間24は適度に狭いことから、図6に示すように、端部22a同士はやがて手袋32の一部を介して当接し、該手袋32を挟持することになる。これにより指30(手袋32)と穿刺装置10との間にすべりがほとんど生じることがなく、該穿刺装置10を把持しやすい。挟み込まれた手袋32は板ばね対18と面14aとの間に進入するが、端部22aと面14aとの間の高さHは、0.5〜2mmが確保されており、適度な量の手袋32が進入可能である。
【0025】
このように把持をすると、穿刺装置10は手袋32に対して固定され、指30に対して滑りにくくなることから、皮膚70に接近させる操作を行いやすく、該皮膚70に対して適度な力で押圧した状態を維持し、ボタン16の操作も行いやすい。反対側を指向する上下の面14aに板ばね対18がそれぞれ設けられていることから、図4からも明らかなように、2本の指で2つの面14aを挟持したときに、それぞれの指の手袋が板ばね対18によって挟み込まれ、穿刺装置10を確実に把持することができる。穿刺装置10の操作が終了したときには、操作者は普通に指30を離せばよい。板ばね対18は弾性変形しているだけであることから、指30を離せば原位置(図3参照)に戻り、端部22aが離間して隙間24が発生し、手袋32は解放される。つまり、操作者は、穿刺装置10の操作に際して、特別な知識、技能、準備及び注意は不要である。
【0026】
なお、上記の例では、一対の板ばね22は、それぞれ弾性体であるが、対向する部分に隙間24が構成されるのであれば、いずれか一方が弾性体(つまり、板ばね)で、他方は実質的に弾性のない突出部であってもよい。このような例を図7を参照しながら説明する。
【0027】
図7に示すように、手袋32を挟み込むための機構は、1本の板ばね22と、端部22aに対向して隙間24を形成している壁部(対向端部)34とからなる構成である。壁部34は、平面視で板ばね22と略同形状の突出部35の一部であり、板ばね22の端部22aに対向している。このような板ばね22と壁部34によっても、図8に示すように、手袋32を着用した状態の指30で押圧することにより弾性変形して端部22aが壁部34に接近し、手袋32の一部を挟持することから、穿刺装置10が指から滑ることなく、把持がしやすい。このように板ばね22が弾性変形した状態では、該板ばね22と突出部35は面14aからの高さがほぼ等しくなり、略対称形状となるので、把持しやすい。
【0028】
図9に示すように、第2の実施形態の医療器具は、注射器100である。注射器100は、先端に針102を有するシリンジ104と、該シリンジ104の後方から挿入されているピストン体106と、シリンジ104の円筒側面に設けられた二対の板ばね対108とを有する。注射器100はピストン体106をシリンジ104内に押し込むことによって内部の薬液の注射をすることができる。
【0029】
二対の板ばね対108は、注射器100を把持するときに2本の指がかかる箇所で、具体的には、円筒部104aにおける中央よりやや基端側の位置で、対称位置(180°異なる位置)に設けられている。板ばね対108は、隙間が注射器100の長尺方向(X方向)となるように設けられており、把持しやすいとともに製造が容易である。
【0030】
図10に示すように、板ばね対108の板ばね110は、シリンジ104の円筒面に応じて、高さHが0.5mm〜2mmとなるような円弧形状となっている。このように、板ばね対108は、円筒の曲面上に好適に設けられ、穿刺装置10の板ばね対18と同様の効果が得られる。図11に示すように、板ばね110は、正面視で円弧形状であることから、弾性変形したときでも、シリンジ104の円筒面104bに干渉することがなく、手袋32を確実に挟持することができる。
【0031】
注射器100では、例えば、注射器100を使用する際、2つの板ばね対108を人差し指と中指で挟むことにより、安定した把持が可能であり、穿刺操作及び親指によるピストン体106の押圧操作を行いやすい。
【0032】
図12に示すように、注射器120において複数の板ばね対108をX方向に縦列して設けてもよい。これにより、把持の場所にかかわらずいずれかの板ばね対18が手袋32を挟み込んで安定した把持が可能になる。板ばね対108は適当な長さに分割されていることから、把持したときに手に接触した箇所だけが弾性変形するので、複数の板ばね対108がつながったものに比べて変形しやすい。この実施形態は、針102を血管に刺して血液を採取する場合に、注射器120を把持して支える上で特に好適である。
【0033】
図13に示すように、第3の実施形態の医療器具は採血具150である。採血具150は、先端に設けられた針152と、円筒側面に設けられた二対の板ばね対108とを有する。針152は両頭針であって、基端側にも針が突出している。採血具150には、真空採血管154が挿入され先端のゴム栓154aを針152の基端側が貫通して、内部に血液を吸引することが可能になる。
【0034】
板ばね対108は、このような採血具150にも好適に適用可能であり、手袋32を挟持して滑りを防止することができる。
【0035】
板ばね対18、108は、穿刺装置、注射器、採血具以外の手で持って使う医療器具(例えば、血糖計等)に設けてもよい。医療器具は必ずしも人体に対して使うものに限らず、例えば動物に対して使用するものであってもよい。
【0036】
また、可撓性部材としては、板ばねに限定されず、医療器具の外表面にヒンジを介して設けられた板状部材であってもよい。
【0037】
また、可撓性部材の形状は、板状に限定されず、例えば、棒状やブロック状であってもよい。
【0038】
本発明に係る医療器具は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】板ばね対を有する穿刺装置の斜視図である。
【図2】板ばね対を有する穿刺装置の正面図である。
【図3】穿刺装置における板ばね対の正面図である。
【図4】穿刺装置を皮膚に当接した状態の模式図である。
【図5】穿刺装置における板ばね対に手袋を装着した指を接近させた状態の正面図である。
【図6】穿刺装置における板ばね対に手袋を装着した指で押圧した状態の正面図である。
【図7】板ばねと壁部の正面図である。
【図8】板ばねと壁部に手袋を装着した指で押圧した状態の正面図である。
【図9】板ばね対を有する注射器の斜視図である。
【図10】注射器における板ばね対の正面図である。
【図11】注射器における板ばね対に、手袋を装着した指で押圧した状態の正面図である。
【図12】変形例に係る板ばね対を有する注射器の斜視図である。
【図13】板ばね対を有する採血具と真空採血管の斜視図である。
【符号の説明】
【0040】
10…穿刺装置(医療器具) 12、102、152…針
14…ハウジング 14a…面
16…ボタン 18、108…板ばね対
22、110…板ばね 22a…端部
24…隙間 30…指
32…手袋 34…壁部(対向端部)
35…突出部 100…注射器(医療器具)
104…シリンジ 150…採血具(医療器具)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジングの外表面に一端が固定され、他端が自由端となる可撓性部材と、
前記ハウジングの外表面に設けられ、前記可撓性部材の他端と対向する対向端部を備える突出部と、
を有し、
前記可撓性部材が前記ハウジングの外表面に対して斜め方向に突出し、前記可撓性部材の他端と前記突出部の対向端部との間に隙間を形成していることを特徴とする医療器具。
【請求項2】
請求項1記載の医療器具において、
前記ハウジングを把持する際、前記可撓性部材が押圧されて前記ハウジング側に傾動し、前記隙間の幅が小さくなることを特徴とする医療器具。
【請求項3】
請求項1又は2記載の医療器具において、
前記可撓性部材と前記突出部が、前記ハウジングの外表面に2組設けられ、前記可撓性部材と前記突出部の1組は他の1組に対して、前記ハウジングの外表面において反対側に位置することを特徴とする医療器具。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の医療器具において、
非変形時の前記表面から前記端面までの高さは、0.5mm〜2mmであることを特徴とする医療器具。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の医療器具において、
前記隙間は、0.5mm〜2mmであることを特徴とする医療器具。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の医療器具において、
前記突出部は、前記外表面に一端が固定された可撓性部材であり、前記対向端部は該可撓性部材の他端であることを特徴とする医療器具。
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジングの外表面に一端が固定され、他端が自由端となる可撓性部材と、
前記ハウジングの外表面に設けられ、前記可撓性部材の他端と対向する対向端部を備える突出部と、
を有し、
前記可撓性部材が前記ハウジングの外表面に対して斜め方向に突出し、前記可撓性部材の他端と前記突出部の対向端部との間に隙間を形成していることを特徴とする医療器具。
【請求項2】
請求項1記載の医療器具において、
前記ハウジングを把持する際、前記可撓性部材が押圧されて前記ハウジング側に傾動し、前記隙間の幅が小さくなることを特徴とする医療器具。
【請求項3】
請求項1又は2記載の医療器具において、
前記可撓性部材と前記突出部が、前記ハウジングの外表面に2組設けられ、前記可撓性部材と前記突出部の1組は他の1組に対して、前記ハウジングの外表面において反対側に位置することを特徴とする医療器具。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の医療器具において、
非変形時の前記表面から前記端面までの高さは、0.5mm〜2mmであることを特徴とする医療器具。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の医療器具において、
前記隙間は、0.5mm〜2mmであることを特徴とする医療器具。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の医療器具において、
前記突出部は、前記外表面に一端が固定された可撓性部材であり、前記対向端部は該可撓性部材の他端であることを特徴とする医療器具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−95517(P2009−95517A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−270999(P2007−270999)
【出願日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
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