説明

医療施設用の抗菌剤

【課題】医療施設の環境へ使用することができ、かつ細菌、真菌並びにウイルスに対し十分な抗菌活性並びに抗ウイルス活性を有し、人体に対し安全である新規な医療施設用の抗菌剤を提供することである。
【解決手段】(A)炭素数8〜22の脂肪酸又はその塩を15〜45重量%、(B)炭素数8〜18の脂肪酸とグリセリンからなるモノ、ジ又はトリ脂肪酸グリセリンエステルを20〜50重量%、(C)スルホコハク酸エステルを10〜30重量%、(D)エタノール、プロパノール又はイソプロパノールから選ばれる1種又は2種以上のアルコールを0〜10重量%、(E)水が0〜55重量%、を少なくとも含む溶液1重量部に対し、水性基剤を1〜500重量部の比率で混合してなる医療施設用の抗菌剤を創成するに至った。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療施設用の抗菌剤、詳細には抗菌活性及び抗ウイルス活性を有する医療施設用の抗菌剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、微生物による汚染や腐敗の防止や、病原性微生物あるいはウイルスによる感染予防及び治療を目的として、種々の抗菌剤並びに抗ウイルス剤が様々な分野において使用されている。例えば、食品分野においては食品の腐敗防止の為に防腐剤が使用され、飲食品の製造行程や包装、外食産業における調理加工場等の除菌を目的に抗菌・除菌剤が使用されている。医療分野や化粧品分野においても同様に、製品(医薬品、化粧品)や医療器具や機器の防腐あるいは消毒、医療環境あるいは医薬品類や化粧品類の生産施設等の消毒や殺菌を目的に抗菌剤が使用されている。特に医療分野においては、微生物及びウイルスによる院内感染が重大な問題となることから、特に微生物及びウイルスの消毒・除菌については徹底されている。
【0003】
医療分野では院内感染や患者からの細菌・ウイルスの伝播を予防するために、厳密な感染管理マニュアルで、機具や機器の洗浄方法、熱や紫外線等を用いる物理的消毒法の実施方法や条件、消毒薬を用いる化学的消毒法の実施方法や、使用条件、使用する消毒薬の種類や性質等が詳細に設定され、運用されている。このなかで特に消毒薬を用いた化学的消毒法が重視されており、用途別に様々な消毒薬が使い分けられている。具体的には、金属器具等に対しては、タンパク質の凝固性が強く生体には使用できないが非常に高い抗菌性及び抗ウイルス活性を有するグルタールアルデヒド製剤やオルトフタルアルデヒド製剤等の高水準消毒薬や使用される。一方、創傷部位や手術部位に対しては、生体への安全性に優れる第4級アンモニウム塩やクロルヘキシジン、両性界面活性剤等の低水準消毒薬が使用される。一般に消毒に使用される高濃度エタノールや高濃度イソプロパノールは、中水準消毒薬に分類され、医師や看護師の手指の消毒や医療器具の消毒に使用するものと定められている。(非特許文献1)
【0004】
前記用途以外に消毒が必要な用途としては、医療施設内の受付や待合室、廊下やトイレ、給湯室等といった環境への使用であり、これらの用途では金属腐食性を有する消毒薬の使用や、可燃性並びに高い揮発性を有するエタノール等のアルコール類の消毒薬を噴霧して使用することは禁じられ、前記の低水準消毒薬を使用することと定められている。しかしながら、低水準消毒薬は、一般細菌や緑膿菌、MRSA等には効果的な抗菌性を示すが、真菌には効果が得られにくく、ウイルスに対しては無効とされている。一方、高水準消毒剤や中水準消毒剤は真菌やウイルスにも消毒の効果が得られるが、環境への使用は禁忌とされている(非特許文献1)。そのため、医療施設の環境内での細菌、真菌並びにウイルスの感染予防は、前記低水準消毒剤による徹底した環境の消毒と医師や患者自身のマスク装着や手指の消毒に依存するものである。しかしながら、これだけで感染を完全に防止することは実質困難であり、例えばインフルエンザの病院内、特に多種多様の患者が集合する待合室等における院内感染等が発生する場合がある。そのため、医療施設の環境に広範囲で使用することができ、かつ細菌、真菌並びにウイルスについても抗菌性を有する抗菌剤の開発が要望されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、解決しようとする課題点は、医療施設の環境へ使用することができ、かつ細菌、真菌並びにウイルスに対し十分な抗菌活性並びに抗ウイルス活性を有し、人体に対し安全である新規な医療施設用の抗菌剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、(A)炭素数8〜22の脂肪酸又はその塩を15〜45重量%、(B)炭素数8〜18の脂肪酸とグリセリンからなるモノ、ジ又はトリ脂肪酸グリセリンエステルを20〜50重量%、(C)スルホコハク酸エステルを10〜30重量%、(D)エタノール、プロパノール又はイソプロパノールから選ばれる1種又は2種以上のアルコールを0〜10重量%、(E)水が0〜55重量%、を少なくとも含む溶液1重量部に対し、水性基剤を1〜500重量部の比率で混合してなる組成物が優れた抗菌活性及び抗ウイルス活性、詳細には大腸菌、シュードモナス属、スタフィロコッカス属及びバシルス属であるグラム陰性菌群、アスペルギルス属及びカンジダ属である不完全菌類及び半子嚢菌類、及びインフルエンザウイルス、ヘルペスウイルスに対する抗菌活性及び抗ウイルス活性を有することを見いだし、本発明である医療施設用の抗菌剤を創成するに至った。
【0007】
本発明である医療施設用の抗菌剤の構成成分に関しては、多価アルコール系抗菌物質としてグリセリン脂肪酸エステルが記載され、緑膿菌に対し殺菌効果を有することが示されている他(特許文献1)、グリセリン脂肪酸エステルの類似化合物であるポリグリセリン脂肪酸エステルが食品用抗菌剤として用いられる(特許文献2)。また、炭素数6〜10の中鎖脂肪酸がペニシリウム属、アスペルギルス属、フザリウム属、セファロスポリウム属、サッカロミケス属、カンジダ属並びに他の不完全菌類及び半子嚢菌類(酵母)、大腸菌、サルモネラ種、シゲラ種のようなグラム陰性菌、並びに他のグラム陰性菌(バシルス属、スタフィロコッカス属、エンテロコッカス属、シュードモナス属、ラクトバシルス属)に対して抗菌活性を有することが示されている(特許文献3)。また、スルホコハク酸類の主たる用途として界面活性剤としての使用が示されている他(特許文献4)、動物用抗菌液剤に溶解補助剤としてジオクチルスルホコハク酸塩を使用することが示される他(特許文献5)、有機酸とスルホコハク酸アルキル類を含む抗菌組成物が開示されている(特許文献6)。しかしながら、本発明の医療施設用の抗菌剤を構成し、かつ細菌、真菌並びにウイルスに対しても抗菌活性を示すものであることについては、何ら記載あるいは示唆はない。
【発明の効果】
【0008】
本発明の医療施設用の抗菌剤は、大腸菌、シュードモナス属、スタフィロコッカス属及びバシルス属であるグラム陰性菌群、アスペルギルス属及びカンジダ属である不完全菌類及び半子嚢菌類、及びインフルエンザウイルス、ヘルペスウイルスに対して優れた抗菌活性を有する。また、本発明の医療施設用の抗菌剤は、全て医薬品や医薬部外品、化粧品、食品並びに日常雑貨品等で従来から汎用されてきた成分で構成されるものであって、人体への安全性に関しては殊更優れるものである。そして、金属への腐食性はなく、また高濃度のアルコールを含まない、広範囲な医療環境への使用に適するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【非特許文献1】大阪大学病院感染管理マニュアル,2005年10月1日改訂
【特許文献1】特開2009−161518号公報
【特許文献2】特開平10−225281号公報
【特許文献3】特表2003−535894号公報
【特許文献4】特開平5−9496号公報
【特許文献5】特開平6−263642号公報
【特許文献6】特表2005−530857号公報
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明である医療施設用の抗菌剤は、第一に、少なくとも(A)炭素数8〜22の脂肪酸又はその塩を15〜45重量%、(B)炭素数8〜18の脂肪酸とグリセリンからなるモノ、ジ又はトリ脂肪酸グリセリンエステルを20〜50重量%、(C)スルホコハク酸エステルを10〜30重量%、(D)エタノール、プロパノール又はイソプロパノールから選ばれる1種又は2種以上のアルコールを0〜10重量%、及び(E)水が0〜55重量%を含む溶液を必須とする。
【0011】
(A)の炭素数8〜22の脂肪酸は、置換基を有していてもよい炭素数8〜22の直鎖状又は分岐状の飽和あるいは不飽和脂肪酸であれば特に限定はされないが、具体的には、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、イソパルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、エルカ酸、ベヘニン酸から選択される。脂肪酸の塩は、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩から選択される。特に、融点が低い脂肪酸が性状の安定性や製造の簡便性から好ましく、カプリル酸、カプリン酸、パルミトレイン酸及びオレイン酸とそれらの塩から選択される。
当該溶液中における脂肪酸の含有量は、15〜45重量%の範囲であれば任意に設定することができる。
【0012】
(B)の炭素数8〜18の脂肪酸とグリセリンからなるモノ、ジ又はトリ脂肪酸グリセリンエステルは、特に限定はされないが、具体的にはモノカプリル酸グリセリル、トリカプリル酸グリセリル、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリル、モノカプリン酸グリセリル、モノラウリン酸グリセリル、ジラウリン酸グリセリル、モノミリスチン酸グリセリル、トリミリスチン酸グリセリル、パルミチン酸グリセリル、ジパルミチン酸グリセリル、トリパルミチン酸グリセリル、モノイソパルミチン酸グリセリル、トリイソパルミチン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、モノイソステアリン酸グリセリル、トリステアリン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、モノオキシステアリン酸グリセリル、トリオキシステアリン酸グリセリル、モノヒドロキシステアリン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリル、トリオレイン酸グリセリル、モノリノール酸グリセリル、トリリノール酸グリセリル、トリリノレン酸グリセリルから選択される。特に、水に対する溶解性並びに固有の限界ミセル濃度の点から、モノカプリル酸グリセリル、ジカプリル酸グリセリル、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリル、モノラウリン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル及びモノオレイン酸グリセリルから選択される。
当該溶液中におけるモノ、ジ又はトリ脂肪酸グリセリンエステルの含有量は、20〜50重量%の範囲であれば任意に設定することができる。
【0013】
(C)のスルホコハク酸エステルは、特に限定はされないが、具体的にはスルホコハク酸ジエチルヘキシル、スルホコハク酸ラウリル二ナトリウム、ウンデシレノイルアミドエチルスルホコハク酸二ナトリウム、オレイン酸アミドエトキシエタノールスルホコハク酸エステル二ナトリウム、ポリオキシエチレンスルホコハク酸β−シトステリル二ナトリウム、ポリオキシエチレンスルホコハク酸ラウリル二ナトリウム、ポリオキシエチレングリコールジメチコンスルホコハク酸二ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸二ナトリウム、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸イソプロパノールアミドスルホコハク酸二ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、スルホコハク酸ポリオキシエチレンラウロイルエタノールアミド二ナトリウム、スルホコハク酸ヤシ油アルキルグルコシド、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウムから選択される。特に、水に対する溶解性並びに製造におけるコストの面から、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、スルホコハク酸ラウリル二ナトリウム及びスルホコハク酸ジエチルヘキシル又はその塩から選択される。
当該溶液中におけるスルホコハク酸エステルの含有量は、10〜30重量%の範囲であれば任意に設定することができる。
【0014】
本発明の医療施設用の抗菌剤で用いられる少なくとも(A)〜(E)を含む溶液には、脂肪酸の酸化を防止するために、更に酸化防止剤を添加することができる。酸化防止剤は医薬品、医薬部外品、化粧品及び食品に通常添加されている成分であれば特に限定はされないが、具体的には、アスコルビン酸類、トコフェロール類、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、エリソルビン酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム等が挙げられる。溶液への配合量としては、0.001〜5重量%の範囲であれば十分である。
【0015】
本発明の医療施設用の抗菌剤で用いられる(A)〜(E)を含む溶液の製造方法としては、公知な処方製剤の製造方法より得られる。例えば、(A)〜(C)を必要ならば(A)の融点以上に加温しながら溶解及び混合した後、これにあらかじめ混合した(D)及び(E)の混合物を、例えば攪拌機を備えた乳化装置やホモミキサー、ディスパーミキサー、高剪断力の高圧ホモジナイザーや高圧及び/又は真空ホモミキサー、超音波乳化機、SPG膜乳化機、スタティック型ラインミキサー、コロイドミル等といった混合装置を用いて徐々に添加しながら撹拌混合することで当該溶液が製造される。
【0016】
本発明である医療施設用の抗菌剤は、第二に前記(A)〜(E)を含む溶液を水性基剤に混合して分散させてなることを必須とする。混合する比率は、溶液1重量部に対し、水性基剤が1〜500重量部の範囲で設定される。混合するにあたって、特に混合装置等は必須ではないが、本発明の抗菌剤を大量に製造する場合には撹拌装置を備えた設備であることが好ましい。
本発明で用いられる水性基剤は、水又はエタノールを0〜10重量%含む水溶液である。また、当該水性基剤には、医療施設用の抗菌剤のハンドリング性を向上させることを目的に、更に増粘剤を添加することができる。増粘剤は医薬品、医薬部外品、化粧品及び食品に通常添加されている成分であれば特に限定はされないが、具体的には、アクリル酸重合体、アクリル酸アルキル重合体、メタクリル酸アミド重合体、アクリル酸アミド・スチレン共重合体、アクリル酸・メタクリル酸共重合体、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、アクリル酸アルキルエステル・メタクリル酸アルキル共重合体、アクリル酸アルキル共重合体、アクリル酸アルキル共重合体メチルポリシロキサンエステル、アクリル酸アルキル・酢酸ビニル共重合体、アクリル酸アルキル・スチレン共重合体、アルギン酸又はその塩、加水分解コラーゲン又はその誘導体、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体、加水分解コムギタンパク質又はその誘導体、加水分解シルク又はその塩又はその誘導体、スチレン・ジビニルベンゼン共重合体、スチレン・ビニルピロリドン共重合体、スチレン・ブタジエン共重合体、ブタジエン・アクリロニトリル共重合体、加水分解エラスチン又はその塩、加水分解カゼイン又はその塩、アラビアゴム、カラギーナン、カラヤガム、ゼラチン、キチン又はその誘導体又はそれらの塩、キトサン又はその誘導体又はそれらの塩、セルロース又はその誘導体又はそれらの塩、カルボキシビニルポリマー、キサンタンガム、グアーガム、ジェランガム、ローカストビーンガム、流動パラフィン、ヒアルロン酸又はその塩、ソルビトール、トレハロース、デキストラン、プルラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアスパラギン酸又はその塩、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリグルタミン酸又はその塩、ユーグレナ多糖体、イソブチレン・マレイン酸塩共重合体、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・プロピレン・スチレン共重合体、β−グルカン又はその塩等が挙げられる。水性基剤への配合量としては、0.0001〜20重量%の範囲で設定することができる。
【0017】
本発明の医療施設用の抗菌剤は、除菌、殺菌、消毒等の目的で、公知の抗菌剤、殺菌剤、消毒剤又はこれらを含む組成物と同様に、医療施設の環境に使用することができる。具体的には、医療施設内の診察室や診療室、手術室、待合室、廊下、トイレ、給湯室、受付や医療従事者の控え室等の内壁や床、机、椅子、ソファー、棚、窓や窓枠、扉の取っ手等に使用する。剤型は液状あるいはゲル状、フォーム状であり、消毒する箇所に塗布あるいは布等に含浸させて用いる他、特にエアゾール製剤等の噴霧して用いる形態が好ましい。なお、埃の蓄積やべたつき感の発生、床に使用した場合で危惧される人の転倒等を未然に防止するために、本発明の抗菌剤を塗布あるいは噴霧し、一定時間経過後、抗菌剤を拭き取る処理を行うことがより適切である。しかしながら、本発明はこれらの使用用途及び剤型のみに限定されるものではない。
【0018】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。
【実施例】
【0019】
表1〜2に本発明である医療施設用の抗菌剤の製造に用いる溶液の製造例と比較例を示した。表中の各成分の数値は重量%を示す。
【0020】
【表1】

【0021】
【表2】

【0022】
(実施例1)製造例1〜8及び比較例1〜3の抗菌性試験
製造例1〜8並びに比較例1〜3を用いて製造した医療施設用の抗菌剤に対し、抗菌性試験を実施した。製造例1〜8及び比較例1〜3を水に1:1の比率で混合したものを供試した。対象とする微生物は、Staphylococcus aureus ATCC6538(黄色ブドウ球菌)、Pseudomonas aeruginosa ATCC9027(緑膿菌)、Escherichia coli ATCC8739(大腸菌)、Bacillus subtilis NBRC3134(枯草菌)、Candida albicans ATCC102313(カンジダ菌)、Aspergillus niger NBRC6341(黒カビ)の6種を設定した。試験方法は日本薬局方の保存効力試験に準拠した。結果を表3〜6に示した。
【0023】
【表3】

【0024】
【表4】

【0025】
【表5】

【0026】
【表6】

【0027】
(実施例1の結果)
製造例1〜8及び比較例1〜3の抗菌性を試験した結果、表3〜6で示されたとおり、供試した6種の微生物全てに対して、本発明の医療施設用の抗菌剤を構成しない比較例と比べて、優れた抗菌活性を示した。特に製造例1〜4の組成物は、培養7日間でほぼ全ての微生物が死滅していることが確認され、本発明の中でも特に優れた医療施設用の抗菌剤であることが判明した。
【0028】
(実施例2)医療施設用の抗菌剤の製造における(A)〜(E)を含む溶液と水性基剤の混合比の検討
本発明の医療施設用の抗菌剤を製造するにあたり、(A)〜(E)を含む溶液と水性基剤の混合比率について、以下に記載の混合比率で製造した組成物の抗菌活性を調べた。供試する溶液として、実施例1において最も抗菌活性に優れる製造例1を採択した。試験方法は実施例1の方法に準拠し、培養14日目おける各微生物の生菌数を測定した。結果を表7に示した。
製造例9:製造例1の溶液1重量部に対し、水100重量部の比率で混合して得られた医療施設用の抗菌剤。
製造例10:製造例1の溶液1重量部に対し、水200重量部の比率で混合して得られた医療施設用の抗菌剤。
製造例11:製造例1の溶液1重量部に対し、水500重量部の比率で混合して得られた医療施設用の抗菌剤。
製造例12:製造例1の溶液1重量部に対し、水1000重量部の比率で混合して得られた医療施設用の抗菌剤。
製造例13:製造例1の溶液1重量部に対し、5%エタノール水溶液200重量部の比率で混合して得られた医療施設用の抗菌剤。
製造例14:製造例1の溶液1重量部に対し、10%エタノール水溶液200重量部の比率で混合して得られた医療施設用の抗菌剤。
【0029】
【表7】

【0030】
(実施例2の結果)
製造例9〜14の医療施設用の抗菌剤について抗菌活性を測定した結果、溶液1重量部に対し、水性基剤500重量部の混合比率までが実施例1で得られた抗菌活性が維持されるものであり、水性基剤が1000重量部となると抗菌活性が低下した。また製造例9〜11及び13〜14の結果から、水性基剤として水のみでもエタノールを含む水溶液でも同様に抗菌活性を示すことが判明し、更には、製造例9〜14は全ての組成物において本発明の医療施設用の抗菌剤中に含まれる成分の乖離や沈殿、層分離等の発生もなく、安定な製剤であることが確認された。
【0031】
(実施例3)インフルエンザウイルスの不活性化効果
本発明である医療施設用の抗菌剤のインフルエンザウイルスに対する抗ウイルス効果を測定した。本試験には製造例10の組成物を供試した。試験方法の詳細は以下に示す。なお、ウイルスを対象とした試験に関しては、バイオハザード防止に必要な設備や体制及び取り扱いに長ける試験実施者等を必要とすることから、外部試験機関に委託した。
【0032】
(インフルエンザウイルスの抗ウイルス試験)
[1.供試ウイルス]
Influenza A virus(A型インフルエンザウイルス)
[2.供試ウイルスの培養方法]
インフルエンザウイルスは発育鶏卵の漿尿液腔に接種し、孵卵器で培養後、漿尿液を採取し、密度勾配遠心法により精製したウイルスを供試ウイルス液とした。
[3.ウイルス不活化試験]
試験管内に900μL の製造例10とウイルス液100μL をそれぞれ加え、ボルテックスミキサーでよく混合した後、室温で60分間反応させた。次いで、直ちにこの混合液50μLをリン酸緩衝生理食塩液5mLで100倍に希釈し、製造例10のウイルスに対する作用を停止させるとともに細胞毒性を回避した。この溶液をウイルス感染価定量試験用試料とした。なお、反応時間0分(初期ウイルス感染価測定用)の試料は製造例10の代わりにリン酸緩衝生理食塩液を用いた。
[4.ウイルス不活化試験]
定量試験用試料を原液としリン酸緩衝生理食塩液で10倍階段希釈を行い、原液及び希釈液を96穴プレートにそれぞれ10穴ずつ植え込んだ。更に、5%FBSを含むDulbecco modified Eagle培地(DMEM)に懸濁したMDCK細胞を96穴プレートに植え込んだ。その後、37℃の炭酸ガス孵卵器内で4日間培養し、倒立顕微鏡下でウイルスの感染によって生じた細胞変性効果(CPE)を観察し、Reed-Muench法によりウイルス感染価(TCID50)を求めた。ウイルス感染価の結果を表8に示した。
【0033】
【表8】

【0034】
(実施例3の結果)
製造例10とウイルス液を60分間作用させた後のウイルス感染価は、検出限界値の6.3 TCID50/mL以下に減少した。また、作用時間0分(初期ウイルス感染価)の感染価は5.4×105 TCID50/mLであった。従って製造例10を60分間作用させた場合のウイルス感染価の減少値は 4.9 log10以上であった。以上の結果より、本発明の医療施設用の抗菌剤はインフルエンザウイルスに対し優れた抗ウイルス作用を有することが判明した。
【0035】
(実施例4)ヘルペスウイルスの不活性化効果
本発明である医療施設用の抗菌剤のヘルペスウイルスに対する抗ウイルス効果を測定した。本試験には製造例10の組成物を供試した。試験方法の詳細は以下に示す。
【0036】
(ヘルペスウイルスの抗ウイルス試験)
[1.供試ウイルス]
Herpes simplex virus type 1(ヘルペスウイルス)
[2.供試ウイルスの培養方法]
ヘルペスウイルスは、アフリカミドリザル腎臓上皮由来のVero細胞に感染させ、90%以上の細胞が細胞変性効果(CPE)を示したとき-80℃の冷凍庫に凍結保存した。その後凍結融解操作を2回繰り返した後、3500rpmで10分間遠心した上清を試験用ウイルスとして使用時まで-80℃に保存した。
[3.ウイルス不活化試験]
試験管内に900μLの製造例10とウイルス液100μLをそれぞれ加え、ボルテックスミキサーでよく混合した後、室温で60分間反応させた。次いで、直ちにこの混合液50μL をリン酸緩衝生理食塩液5mLで100倍に希釈し、製造例10のウイルスに対する作用を停止させるとともに細胞毒性を回避した。この溶液をウイルス感染価定量試験用試料とした。なお、反応時間0分(初期ウイルス感染価測定用)の試料は製造例10の代わりにリン酸緩衝生理食塩液を用いた。
[4.ウイルス不活化試験]
定量試験用試料を原液としリン酸緩衝生理食塩液で10倍階段希釈を行い、原液及び希釈液を96穴プレートにそれぞれ10穴ずつ植え込んだ。さらに、5%FBSを含むDulbecco modified Eagle培地(DMEM)に懸濁したVero細胞を96穴プレートに植え込んだ。その後、37℃の炭酸ガス孵卵器内で4日間培養し、倒立顕微鏡下でウイルスの感染によって生じた細胞変性効果(CPE)を観察し、Reed-Muench法によりウイルス感染価(TCID50)を求めた。ウイルス感染価の結果を表9に示した。
【0037】
【表9】

【0038】
(実施例4の結果)
製造例10とウイルス液を60 分間作用させた後のウイルス感染価は検出限界値の6.33 TCID50/mL以下に減少した。また、作用時間0分(初期ウイルス感染価)の感染価は1.1×103 TCID50/mLであった。すなわち、試験品を60分間作用させた場合のウイルス感染価の減少値は2.3 log10以上減少した。以上の結果より本発明の医療施設用の抗菌剤はヘルペスウイルスに対し優れた抗ウイルス作用を有することが判明した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも下記の(A)〜(E)を含む溶液の1重量部に対し、水性基剤を1〜500重量部の比率で混合してなることを特徴とする医療施設用の抗菌剤。
(A)炭素数8〜22の脂肪酸又はその塩が15〜45重量%、
(B)炭素数8〜18の脂肪酸とグリセリンからなるモノ、ジ又はトリ脂肪酸グリセリンエステルが20〜50重量%、
(C)スルホコハク酸エステルが10〜30重量%、
(D)エタノール、プロパノール又はイソプロパノールから選ばれる1種又は2種以上のアルコールが0〜10重量%、
(E)水が0〜55重量%
【請求項2】
炭素数8〜22の脂肪酸又はその塩が、カプリル酸、カプリン酸、パルミトレイン酸及びオレイン酸又はそれらの塩から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1記載の医療施設用の抗菌剤。
【請求項3】
炭素数8〜18の脂肪酸とグリセリンからなるモノ、ジ又はトリ脂肪酸グリセリンエステルが、モノカプリル酸グリセリル、ジカプリル酸グリセリル、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリル、モノラウリン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル及びモノオレイン酸グリセリルから選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1〜2記載の医療施設用の抗菌剤。
【請求項4】
スルホコハク酸エステルが、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、スルホコハク酸ラウリル二ナトリウム及びスルホコハク酸ジエチルヘキシル又はその塩から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1〜3記載の医療施設用の抗菌剤。
【請求項5】
大腸菌、シュードモナス属、スタフィロコッカス属及びバシルス属であるグラム陰性菌群、アスペルギルス属及びカンジダ属である不完全菌類及び半子嚢菌類、及びインフルエンザウイルス、ヘルペスウイルスの消毒又は殺菌又は増殖防止に使用することを特徴とする請求項1〜4記載の医療施設用の抗菌剤。

【公開番号】特開2011−195497(P2011−195497A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−63616(P2010−63616)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(509306203)テクノマイニング株式会社 (10)
【Fターム(参考)】