説明

医療用の抗クラスト形成及び抗菌コーティング

【課題】医療用装置及び泌尿器用器具に使用するための、バクテリアコロニー化及びクラスト化に抵抗性を備えたコーティング材と材料の提供。
【解決手段】コーティング材は、貴金属の組み合わせや抗菌剤と共に、親水性ポリウレタンプレポリマーに化学反応的に結合された酸性キレート化合物を含んでおり、この酸性の貴金属組み合わせを医療器具のプラスチック成型時に添加物として使用することもでき、継続的抗菌表面はこのようなコーティングと材料とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明はバクテリア成長あるいはクラスト形成(encrustation)に対して抵抗力を備えた泌尿器装置等の医療器具に関する。さらに特定すれば、ウリアーゼを抑制し、燐酸カルシウムと燐酸マグネシウムの蓄積を抑制させることができる物質で形成あるいはそのような物質でコーティングされた泌尿器カテーテル(urinary catheter)に関する。
【背景技術】
【0002】
泌尿器カテーテルは泌尿器手術や、失禁に対処する他の方法の代用として使用される。これらカテーテルは一般的に無毒無刺激性であって、フレキシブルであるが腰が強い材料で製造されている。理想的には、バクテリアのコロニー化や鉱物蓄積によるクラスト化に対して抵抗力を備えたものである。プラスチック製泌尿器挿入具のごとき失禁に対処する短期使用の泌尿具はバクテリアを繁殖させ、尿路感染(UTI)を引き起こす。
【0003】
そのようなカテーテルに最も一般的に利用される材料はラテックス、プラスチックあるいはシリコンである。最新のポリウレタン、ポリウレタンカーボン及びシリコンカーボン等の全てのバイオ材料(biomaterial)は程度の差こそ有れ鉱物堆積でクラスト化する。尿に接触するバイオ材料上へのクラスト形成程度は、バイオ材料の種類、尿との接触期間、感染物の存在如何、及び尿の溶質含有量によって異なる。採取されたクラスト物体に対するいくつかの研究(例えば、1989年のヒューキンズ博士他)は、2種類の物体、すなわち、燐灰石Ca5(PO43(OH)とストルビート(struvite)MgNH4PO4・6H2Oを特定した。非常に少量のブラシト(brushite)CaHPO4・2H2Oも特定された。
【0004】
尿のpH値の増大は尿を感染させるウリアーゼ生産バクテリアによって引き起こされる。ウリアーゼは尿素の加水分解を急速触媒(中性溶液では観測できない尿素随意加水分解の10の14乗速く)し、アンモニアを生産し、燐酸カルシウムを沈殿させる。
【0005】
スキャニングとトランスミッション電顕オートラジオグラフィ(transmission electron microscopy)により感染カテーテル物質上で観測されたバイオフィルム(bio-film)の微生物異性(microbial heterogeneity)と構造複雑度(complexity)は多様なミクロフローラ(microflora)を顕現する。バクテリアの付着性ミクロコロニーは抗生物質に対してはそれらのプランクトン対応物(planktonic counterpart)よりも影響度がずっと低いようである。なぜなら、細胞を包囲する大きな陽イオンマトリックス(anionic matrix)は電荷抗生物質分子と、それらの細胞標的(cellular target)との間にイオン交換バリヤを含んでいると考えられるからである。抗生物質は症候熱性感染症(symptomatic,febrile infection)対処用であるべきである。さもないと、バクテリア相に変化を生じさせ、抵抗力を発生させる可能性がある。
【0006】
カテーテルが適用されている患者の細菌尿は尿路がコロニー化あるいは感染したことを示している。ニトロフラントイン(nitrofurantoin)、メテナミン(methenamine)、ナルディキシ酸(naldixic acid)のごとき抗菌物質の投与は実用化されている。これらのほとんどはアルカリ性尿内ではさほど実効性がなく、尿内で高濃度とするには患者への大量投与が必要である。
【0007】
カテーテルによって引き起こされる細菌尿は、カテーテル及び排尿システムの内側及び/又は外側表面のグリコカリックス内包バイオフィルム(glycocalyx enclosed biofilm)内で増大するバクテリアコロニー化によって発生する。バクテリアの付着を阻止し、バクテリアコロニーの拡大を抑制するバイオ物質で製造された尿路カテーテルは尿路感染症の発症を低減させる。親水性表面は蛋白質付着を低減させるが、抗菌面はさらに優れた保護を提供する。制御放出(controlled release)あるいは表面で固定された抗菌剤はバクテリアコロニー化を連続的に抑制するであろう。酸化銀カテーテルはシェーファ A.J.、ストーリ K.O.、ジョンソン S.M.の出版物「カテーテル起因細菌尿における酸化銀/トリクロロイソシアヌール酸抗微生物排尿システムの効果」(泌尿器科学誌、39、60、1988年)において解説されている。ジョンソン J.R.、ロバーツ P.L.、オルセン R.J.、モイヤー K.A.及びスタニ W.E.が「酸化銀コーティングされたカテーテル」(感染症誌、162、1145、1990年)において報告した銀製カテーテルの臨床研究は抗菌剤を投与されていない女性でのUTI予防効果を示している。
【0008】
長期間にわたって使用されているカテーテルが引き起こす別の問題は、カルシウムヒドロキシ燐灰石(calcium hydroxyapatite)とストルビート(struvite)の形成によるクラスト化(encrustation)である。長期間の泌尿器カテーテル治療は処置困難な尿失禁あるいは貯留(retention)を患う患者にしばしば必要である。この治療法は、様々な慢性治療施設の患者の16%から28%で利用されている。
【0009】
50%以上は自身のカテーテルによる遮断(blockage)で悩んでいる。そのため、カテーテルを越えて流れる尿による尿失禁が発生し得る。さらに、泌尿器感染症による激痛や不快感を伴うこともある。
【0010】
酸性溶液(クエン酸‐酸化マグネシウム)による堆積物の除去は生体外でクラスト形成物を溶解させることが知られており、現在広範に実用化されている。頻繁な灌注(irrigation)は膀胱内の粘膜に損傷を及ぼしかねない。
【0011】
多数の米国特許は尿路感染症を予防する目的での埋め込み式泌尿器カテーテルシステムを記述している。これらは排尿管を開放状態に保つだけでなく、感染の拡大を防止するように、適当なバルブを備えた機械的な装置である。
【0012】
リチャード・デイビスに付与された米国特許第4946449号と、ハンズ・アーンスト・サチスに付与された第4878901号は典型的な例を示している。
【0013】
しかし、これらはクラスト形成の予防方法を開示していない。一般的に、機械的システムは複雑であり、感染からの充分な保護を提供しない。カーンズ他に付与された米国特許第4932948号は、抗菌剤保有器として機能するように泌尿器カテーテル端部に漏斗(funnel)形状のインサートを提供することを開示している。抗菌剤はこの漏斗の形成時にエチレン/酢酸ビニルポリマーと混合されるだけである。カテーテル表面自体は抗菌剤を運搬せず、クラスト形成を防止することもできない。ヤコブ・グラスマンに付与された米国特許第4579554号はカテーテル管の灌注を提供するデザインを開示している。しかし、頻繁な灌注は膀胱の粘膜を痛める可能性がある。
【0014】
サカモト他に付与された米国特許第4642104号は、イオン交換を通じて抗生物質を拘束することができるマルチカルボキシル(multicarboxyl)アミノ酸基あるいはスルフォン酸基を運搬するポリマーの使用を教示している。これらイオン交換基は、カテーテルの表面にコーティングされたポリマー内に存在する特定の作用性を有した加水分解によって泌尿器カテーテルの内壁及び外壁の分子内に化学的に導入される。ポリミキシンのごとき陰イオン系抗生物質あるいは塩化ベンザルコニウム(benzalkonium chloride)または塩化ベンゼチオニウム(benzethionium chloride)、シクロヘキシジン、あるいはポビジン‐イオジン(povidine-iodine)のごとき石鹸は静電気拘束現象によって表面上に残留する。カテーテルの表面に陽イオン基を導入するには、その表面には一連の化学反応処理とコーティングとが施されなければならず、冗長で費用が嵩む。
ルータ他に付与された米国特許第4950256号は、患者の血管系に挿入するためのカニューレを含んだ血管カテーテルの使用を教示している。このカテーテルは抗血栓形成剤と陰イオンポリミキシン抗生物質を拘束するために親水性ポリウレタン‐ポリエン組成物でコーティングされている。ルータ他はポリミキシンの親水性ポリウレタンへの吸収は当初濃度を変化させることで制御が可能であることを記述し、カテーテルは時間放出血管カテーテル(time release intravascular catheter)として記述している。
【0015】
アミノホスフォネート(amino phosphonate)は心臓弁膜の石灰化を予防することが証明されており、そのプロセスはバイオ物質へのモイアティ(moiety)の共有結合が関与している(C.L.ウェッブ他、米国人造内臓協会、XXXIV、1851[1988年])。銀合金(R.L.マクリーン他、カニューレ微生物学誌、39[1993年];リードバーグ及びT.ランドバーグ、英国泌尿器学誌、65、379‐381[1990年])は泌尿器カテーテルにコーティングされ、バクテリア付着に対して優れた予防効果があることが証明されている。
【0016】
米国特許第5295979号は溶液内の銀イオンを駆動(drive)させるためのイオン電気導入用平流電気対(ionophoretic galvanic couple)を創出させるために銀とプラチナとのごとき2種の非類似金属コーティングの使用を教示している。このことは、連続的金属(successive metals)の無電気メッキ(electroless plating)によって平流電気対のドット形態をスパッタリングすることで達成される。
【0017】
そのようなコーティングは技術的に困難であり、多層形態を提供するには複数の製造工程が関与する。完璧な防止効果を得るには、体積に対する望ましい銀面積比を約25から50平方mm/(成長媒体(growth medium))mLとする。このコーティング条件の達成は困難である。なぜなら、流体積(flow volume)は泌尿器カテーテルにおいてはさらに大きいからである。
【0018】
スパイアコーポレーションが提供する広く活用されているイオンビーム含浸銀合金カテーテル(ion-beam impregnated silver alloy catheter)は、銀粒子が外側のみに堆積するためにルーメン内での保護を提供しない。さらに、このカテーテルはクラスト形成には対処しない。
【0019】
近年、酸化銀コーディングされたバクスターカテーテル(Baxter catheter)が臨床的に研究された。その結果は、そのカテーテルが細菌尿の予防には実効性がないことを示した。グラム陽性細菌(gram positive organism)が支配的であることが発見されている(レイリー他、アメリカ医学誌、98、349[1995年])。
【0020】
酸化ポリエチレンコーティング(polyethylene oxide coating)はバクテリア安定性(bacteriostatic)であり、抗蛋白質(protein-resistant)であることが発見されている(D.K.ハン、S.Y.ジョン、Y.H.キム他、バイオ物質科学誌、ポリマー版、4(6)、579‐89(1993年)及び参照文献)。このようなコーティングは抗細菌特性を有しておらず、一時的な抗付着特性を有している。そのようなコーティング上にはバイオフィルム(biofilm)が形成される。
【0021】
サランガパニに付与され、本願出願人に譲渡された米国特許第5328954号は、クラスト化とバクテリアとに抵抗性を示す医療用コーティング剤を開示している。このコーティング剤は、使用材料によっては、短期間ではあるものの非常に有効であるが、長期の使用ではさほどでもない。このコーティングは、黒色が勝ったグレーを付与する広域カーボン充填材(high area carbon filler)を使用する。その結果、ラテックスあるいは他の白色ポリマー装置をコーティングする際に美観を向上させるための着色剤は使用できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
従って、本願発明の主たる目的は、カテーテル表面でのバクテリアによるバイオフィルムの形成とクラスト形成とを予防でき、長期間の使用に耐える泌尿器手術用あるいは尿失禁制御用のカテーテルの提供である。
【0023】
本願発明の別の目的は、従来のカテーテルよりも低い感染リスクで泌尿器手術に使用できるカテーテル、あるいは尿失禁を制御する装置用の材料の提供である。
【0024】
本願発明の別な目的は、有機酸、銀、及び/又はプラチナのごとき添加物を溶融ポリマー、二酸化チタン充填材、あるいはプレポリマーポリウレタンとブレンドさせ、その溶剤を乾燥させ、またはそのプラスチック材料と直接的に溶融ブレンドすることで抗菌表面を提供することである。
【0025】
本願発明のさらに別な目的は、プラスチック材料と尿のごとき体液との間を隔てる酸化キレート化させる化合物を組み合わせ、その表面に酸性pHを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0026】
細菌の付着を抑えるバイオポリマー材料によるインターフェース面の提供には明確に需要が存在する。バクテリア付着を抑える本願発明の表面は泌尿器具に使用されるときに特に有用であることが発見されている。このような表面を備えた泌尿器具は、a)バクテリアの付着を防止し、b)ウリアーゼを抑制し、c)材料上へのカルシウムとマグネシウムの堆積を防止するであろう。このような泌尿器カテーテルは長期間にわたって使用するときに特に有用である。これらの利点は、ブレイドナイロン(braided nylon)に塗布されたときにコンポジットを提供する反応性親水ポリマーを利用することで広域材料(high surface area)(充填材)の表面改質によって達成される。この充填材改質ポリマー塗布材はラテックスを含んで全てのプラスチック物質に対してコーティングが可能である。コーティングされたカテーテルはフレキシブル性と親水性と保持し、イオンを平衡に保ち、反応性表面を提供する。
【0027】
特定の化合物を医療品質プラスチックにブレンドさせ、親水性で抗菌性である表面を提供することもできる。C‐フレックス(Flex)(コンソリデーテドポリマーテクノロジーインク社販売、ベースポリマーはスチレン/ブタジエン)、PVC等のプラスチックはそれ自体では永久親水性コーティングを提供しない。本願発明は特定の化合物のブレンドにより、親水性を利用して表面を水分子吸着性とし、酸性pHとすることでこの問題を解決する。銀のごとき抗菌材との共助作用で効果的な抗菌作用が達成される。低pHは、他の病原体に対抗する自然保護を提供する尿路内のラクトバシリ種の生存に貢献する。
【0028】
本願発明は、ラテックス管とカテーテルにコーティングされた多様なポリウレタン組成(formulation)を含んでいる。これらフォーミュレーションはラテックスに対する優れた付着性を提供し、そのコーティングの化学活性はバクテリア付着及びクラスト形成を抑制する。本願発明は、ポリウレタンフォーミュレーションに使用されるものと同じ類の抗菌添加剤によるC‐フレックス物性改質の方法を開示している。
【0029】
本願発明のユニークな特徴は、バクテリアによるバイオフィルム形成を継続的に抑制することができる銀及び/又はプラチナとの組み合わせによる酸性キレート化基(acidic chelating group)の組み合わせである。このような組み合わせはプラスチック内に溶解可能な接着塗布材あるいは塗布粉末として組成化されている。
【0030】
本願発明は従来のものとはいくつかの点で異なっている。1)‐NCO基の接着性及び様々な抗菌剤をカップリングさせる活性を利用すること。2)カルシウム溶解材としてホスフォネート(phosphonate)及び/又はカルボキシレートモイエティを利用すること。3)二酸化チタンまたは銀化炭素(silverized carbon)のごとき広域材料と混合された抗菌剤として1ミクロンまたは低レベル広域金属銀(lower level high area metallic silver)を利用すること。4)プレポリマーの‐NCO基と共有結合できる抗菌剤を利用し、抗菌剤をコーティングの親水性ポリウレタンバックボーンの一部とすること。5)アミノポリカルボキシル酸、クエン酸、及び他の類似したカルボキシル酸、アミノホスフォン酸及びアミノスルフォン酸を使用すること。6)銀粉末と共にプラチナブラック等の貴金属ブラックを使用し、銀の陽イオンの継続的な遅速放出を促すこと。7)二酸化チタン等の充填剤を利用し、化学吸着(chemisorption)によってポリホスフォン酸を結合させること。加えて、ポリオックス(Polyox)(ユニオンカーバイド社)(高分子重量酸化ポリエチレン)の存在は表面をバクテリア安定的(bacteriostatic)で滑りやすくする。
【0031】
本願発明は2方法で2種類の非類似金属コーティングを使用する際に発生する問題を解消させる。親水性である塗布剤を含んだ、二酸化チタン上に拡散された広域プラチナブラック(high area platinum black)と広域銀粉末(high area silver powder)とを使用することで、望む表面積/体積比が達成される。コーティング剤の単位面積当たりの実際の表面積は、疎水性プラスチック材料上での単純金属コーティング(simple metallized coating)の幾何面積よりもずっと広い。よって、細菌抑制は放出銀イオンのみでなく、その親水性と酸性とでも達成される。
【0032】
その酸性度は多様な例で示されるようにホスフォン酸とカルボキシル酸の存在によって提供される。抗菌剤としての銀イオンの有用性は塩化銀(10-13)の溶解度積定数(solubility product constant)によって制限される。尿のごとき体液は、遊離銀イオンを直ちに塩化銀に変換させる高濃度の塩化ナトリウムを含んでいる。この銀の抗菌特性によって提供される濃度は発生する銀イオンの発生度とバクテリアの成長度との比率によって決定される。本願発明においては、キレート化タイプ(DPTA、ジアミノプロパノールテトラセチン酸)クエン酸の複合酸の存在によって、銀のポリホスフォネート複合体は塩化銀よりもずっと溶解性が高く(溶解度積値は10-8程度)、塩化銀と平衡状態で存在し、次のような優れた効果が提供される。a)殺菌性濃度(bactericidal concentration)で溶解性銀の安定濃度を提供すること。b)ほとんどの病原体を抑制するのに必要な酸性pHを提供すること。c)クラスト化燐酸カルシウムの有核化(nucleation)を防止する表面を提供すること。
【0033】
表面上で塩化銀に直ちに変換される銀イオンの代わりに、表面上でさらに溶解性が高い銀化合物(クエン酸銀、銀DPTA等)を提供することは本願発明のユニークな特徴である。実施例において解説するように非常に少量のプラチナを添加すると銀とキレート化酸との組み合わせによる活性が増強される。
【0034】
本願発明のフォーミュレーションは、導電性プラスチック層によって分離されたプラスチックマトリックス内の銀及びプラチナまたは銅のごとき2層の非類似金属のイオントフォレシス構造を開示する米国特許第5322520号で説明されるフォーミュレーションのものよりもずっと有用で効果的である。本願発明は、1ポットフォーミュレーション(one pot fomlulation)を達成させる手段を提供することで分離層を提供することにおけるこの従来技術の困難性を解消させるだけでなく、プラチナ使用あるいは非使用で、酸性成分の存在下における銀の効力をも証明している。
【0035】
本願発明のこれら及び他の特徴並びに目的は、添付の図面を参照にして以下の詳細な説明を読めば充分に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1a】コーティング未処理ラテックス面とコーティング処理ラテックス面の構造を示す顕微鏡写真である。
【図1b】コーティング未処理ラテックス面とコーティング処理ラテックス面の構造を示す顕微鏡写真である。
【図2a】本願発明の実施例からのコントロール及びサンプルのバクテリアクラスト化データを示すグラフである。
【図2b】ラテックと汎用ヒドロゲル(hydrogel)コーティング処理ラテックスのバクテリアクラスト化データを示すグラフである。
【図3a】実施例3のコーティング処理サンプルとコントロールとのバイオフィルム形成(12時間後と24時間後)の程度を示すグラフである。
【図3b】は実施例3のコーティング処理サンプルとコントロールとのバイオフィルム形成(12時間後と24時間後)の程度を示すグラフである。
【図4a】本願発明にて使用される組み合わせ添加剤と共に組み入れられたC‐フレックス物質の抑制効果を示すグラフである。
【図4b】本願発明にて使用される組み合わせ添加剤と共に組み入れられたC‐フレックス物質の抑制効果を示すグラフである。
【図4c】本願発明にて使用される組み合わせ添加剤と共に組み入れられたC‐フレックス物質の抑制効果を示すグラフである。
【図4d】本願発明にて使用される組み合わせ添加剤と共に組み入れられたC‐フレックス物質の抑制効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
従来の泌尿器カテーテルで問題となっているクラスト化及び/又は感染を低減させる本願発明のカテーテルコーティング材は、親水性ポリウレタンプレポリマー、好適には二酸化炭素または二酸化チタンである広域充填剤(シリカ、アルミナ及び他の充填剤も使用が可能)、キノロン(quinolone)等の抗菌剤及び銀イオンやEDTAのごときウリアーゼ抑制剤を有したコーティング材を含んでいる。
【0038】
本願発明は2つの方法で重層金属コーティングの製造に関わる問題を解消させる。まず、広域プラチナブラックと広域銀粉末との混合物を親水性の塗料物質を含んだ二酸化チタン上に拡散されたものを使用して好適な表面積/体積比が達成される。このコーティング材の単位面積当たりの実際の表面積は疎水性プラスチック材料上の単純金属コーティング材のものよりずっと広い。従って、バクテリア抑制は放出された銀イオンのみならずその親水性と酸性とでも達成される。
【0039】
以下に例示する様々な実施例のホスフォン酸及びカルボキシル酸の存在により提供される酸性はさらに別な効果を提供する。抗菌剤としての銀イオンの活用性は、優れた効果:a)殺菌濃度で溶解性銀の安定濃度を提供し、及びb)ほとんどの病原体を抑制するのに必要な酸性pHを提供するための平衡状態をシフトさせるキレートタイプの複合酸(complexing acids)の存在によって、AgClの溶解積定数による制限を受ける。
【0040】
有害なバクテリアを殺菌する表面を提供することで、カテーテルや自己使用尿道プラグ等の器具は膀胱へのライン病原バクテリア(line pathogenic bacteria)の運搬量を大きく低減させ、UTIの発症を大きく低減させる。PVCやスチレンブタジエンなどの合成ゴムやシリコン等のプラスチック材料は本来は疎水性である。
【0041】
C‐フレックス、シリコン、PVC等のプラスチック材料は自然には永久的親水性コーティング剤を提供しない。本願発明はこの問題をプラスチック樹脂内に特定の親水性物質あるいはポリマーをブレンドすることで克服する。さらに、本願発明はE.コリ等の有害なグラム陰性種を効果的に殺菌する共助的抗菌作用を開示している。この親水性物質は表面に水分子を引き寄せるだけでなく表面を低pHである4から5とし、バクテリアの繁殖を妨害する。このような低pHは健康な女性の尿道に繁殖するラクトバシラス(Lactobacillus)種によって自然状態で発生する。病原菌を抑制する低pHの効果にはいくつかの研究報告例が存在する。
【0042】
加えて、前記の親水性物質と、銀、一酢酸レゾルシノール(resorcinol monoacetate)、EDTA、DPTA及びカルボキシル酸のごとき抗菌剤との特定の組み合わせは以下に解説するような驚くべき効果を提供する。いくつかのフォーミュレーションが提供するE.コリ殺菌能力とラクトバシリをを生かしておく能力とはいくつかの例で証明されている。
【0043】
本願発明の別実施例においては、親水性と抗菌性は、スチレン・ブタジエン誘導ゴムやポリ塩化ビニル等の医療産業に利用される疎水性ゴムに提供される。あらゆる種類のカテーテル、ステント、尿道プラグ、及び合成バイオ物質のごとき抗菌面を必要とする器具には、コーティング材として、あるいは器具自身の一部として本明細書に記載されたフォーミュレーションが使用できる。
泌尿器カテーテル内での感染及びコロニー化は、そのほとんどがカテーテルのルーメン内で発生する。本願において解説される非常に接着性が高いコーティング材はルーメン内側表面に使用されるとバクテリアの付着を抑制する。本願発明のコーティング材は次の特徴を備えている。
【0044】
a)7日間、バクテリアコロニー化に抵抗性を備えている。
【0045】
b)7日間、クラスト化に抵抗性を備えている(加速バクテリア環流試験(accelerated bacterial perfusion study)で確認)。
【0046】
c)湿潤されると非常に滑らかとなり、ラテックスや他の医療用ポリマーに対して優れた接着性を備え、長期間使用する泌尿器カテーテルでの利用に適している。
【0047】
エチレンジアミン四酢酸(tetraacetic acid)やイミノ二酢酸のごときアミノポリカルボキシル酸は、pH8からpH10でカルシウムやマグネシウムに対して強力なキレート剤である。pH7(通常の尿pH)において、エチレンジアミン四酢酸はほとんどがH22-(Y4-はテトライオン)の形態で存在し、少量はY4-、H3Y‐及びH4Yの形態で存在する。pH10では、Y4-の濃度はエチレンジアミン四酢酸の全濃度の40%である。H22-が相当に高い濃度でバイオ物質上に存在する場合は、ウリアーゼの活性によるpHの増加は酸性プロトンの放出でいくらかは制御され、さらなる増加はY4-の形成を招き、pH8からpH10の間でCa2+とMg2+を包囲(engulf)し、カテーテル表面のヒドロキシ燐灰石やストルビート(struvite)の有核化(nucleation)を抑制する。尿のpHが7となると、拘束されたカルシウムやマグネシウムはエチレンジアミン四酢酸で解放される。尿のpHが5以下となると、エチレンジアミン四酢酸は強力なウリアーゼ抑制剤として作用し、細胞壁からCa2+をキレート化することで抗菌特性を備えている。従って、エチレンジアミン四酢酸と関連リガンドを高pH及び中性pHより少々低いpHで使用することの利点は、前述の目的の達成に非常に有効である。アミノホスフォネート、ポリビニルホスフォネート、及びジホスフォネートは本願発明のフォーミュレーションでカルシウム堆積抑制剤として使用された。
【0048】
それら抗菌剤の中でキノロンは現在改良中であり、改良後はセファロスポリン(cefalosporin)やアミノグリコシドのものを遥かに凌ぐ。そのキノロンは殺菌剤であり、一般的にその最低抑制濃度で、複合体を形成させるその傾向のため、二価陽イオンの存在を増加させる。レゾルシノールあるいはレゾルシノール一酢酸防腐剤の使用は外部使用に関しては既に確立した技術である。コラーゲンベースのバイオ物質でのレゾルシノール一酢酸の利用は、ほんの2%w/wの濃度でさえも優れたバクテリア抑制効果を発揮する。この作用性がカテーテル表面に結合されると、長期にわたって有効な抗菌効果が提供される。
【0049】
この有機作用性による表面効果を高めるためにポリマーが使用された。商業的に利用が可能な異なる種類のポリマーを使用した研究によって、W.R.グレース社がハイポール(hypol)の商品名で販売する親水性ポリウレタンプレポリマーが有効であることが知られた。
【0050】
2.55meq/gの遊離NCO基及び‐OHや‐COOH基との多様な反応物を含んだMDI(メチレンジイソシアネート)ベースプレポリマーであるハイポール5000(薄黄色の高粘液)は以下に示されている。
【0051】
【化1】

非常に反応性が高い‐NCO基がエチレンジアミン四酢酸、イミノ二酢酸、レゾルシノール一酢酸及びキノロンと反応された。異なる反応定数(rate constant)を備えたいくつかの反応セクエンスがカップリングや硬化プロセスに可能ではあるが、IRスペクトルデータでは硬化サンプル中での‐NCO基の不存在やウレタン、‐COOH基及び‐OH基の存在を示している。抗菌特性を示すポリエチレンイミンは本願発明のフォーミュレーションに成功裏に活用された。
【0052】
広域カーボンはハイポール等のポリマーに対する優れた補助材料として使用が可能である。適当な化合物との化学カップリング後の希釈ハイポールは親水性カボットM‐1300カーボンと非常によくブレンドし、塗料のような物質を形成する。完全硬化後のハイポール管体が提供されたカーボンの表面積は3000cm2/gであった。実験でコントロールとして使用されたシリコン管体の表面積はほんの270cm2/gであった。よって、この物質の広域カーボンの使用でキレート化及び抗菌剤の表面濃度はカーボンを使用しないで可能であるものより少なくとも1ランク向上した効果を提供する。ハイポールはさらにカーボンの優れた結合剤であることが証明され、多様なハイポール/カーボンカテーテル材料での培養研究中にカーボン微粒子は検出されなかった。
【0053】
そのようなコーティング剤中の二酸化チタンのカーボンとの置換で優れた表面品質、色彩及び性能を備えたコーティング剤が生産された。
【0054】
二酸化チタンのごとき充填剤はポリホスフォン酸、銀粉末、及びプラチナブラック(それぞれ5から10%、3から5%、0.05から0.2%)で提供される。この粉末はハイポールと化学反応的に混合され、塗料様の物質が製造された。
【0055】
0.05から0.2%のプラチナブラックを銀を含む物質に付加すると銀の活性が高まり、コーティング剤の硬化速度が速くなる。この物質は清浄なポリウレタン表面に直接的にコーティング処理できる。ラテックス表面はオクトエート錫(tin octoate)の存在下でジイソシアネートヘキサン(トルエン中5%)と成功裏にプライム処理(prime)できよう。(トルエンを除去するため)60℃の真空オーブン内で1時間乾燥処理した後に、その管体はハイポール2002(トルエン中10%)でコーティングされるべきである。このコーティングされた管体は寝かせて硬化処理される。
【0056】
表面のウリアーゼ濃度はミクロモル(micromole)の量であろう。そのアミノポリカルボキシルリガンドはそのpHに応じてCa2+あるいはMg2+を可逆的に結合させることができる。また、抗菌剤と共に使用されるAg+等の高表面濃度の強力なウリアーゼ抑制剤は感染菌やウリアーゼに対して強力なバリヤを提供する。表面と尿との平衡達成(equilibration)は、ヒドロゲルあるいはイオノマーコーティング剤が膨張して種々な種を拡散させるため、急速でなければならない。
【実施例】
【0057】
実施例1
本実施例はラテックス管体に成功裏にコーティングされたフォーミュレーショングループ(表I)を解説する。バクテリアクラスト形成に対するそれらコーティングの効果が評価された。
【0058】
典型的な1手法は、知られた量のハイポールの重量測定と、DPTA、クエン酸、ニトロキソリン安息香酸、レゾルシノール一酢酸、ホスフォセリン、ホスフォリルエタノールアミン、ノルフロキサシン、シプロフロキサシン、等々(これら物質はフルカ、シグマ‐アルドリッヒ化学会社から入手)の重量測定と、攪拌棒を使用した温暖条件下での混合が関与した。
【0059】
この混合物はアセトンとTHFで希釈され、充填剤が加えられた。その粘度は塩化メチレン内のポリオックス(Polyox)(商品名)の添加で調整された。完全に洗浄されて乾燥されたラッシュ社製のラテックス管体が基材として使用された。典型的には、このフォーミュレーション物質は真空ラインを使用して管体の内側表面上に流入されてコーティングされ、その外側表面は単純な浸潤処理でコーティングされた。室温での2日以上の硬化処理で、元の長さの5倍にまで引き伸ばされたコーティング処理された管体上でひび割れも剥離も発生させない接着性の光沢を有したコーティングが提供された。PBS内での3週間にわたる保温処理でもコーティングの質に変化は観察されなかった。
【0060】
図1a、図1b、図2a、図2bはそれぞれコーティング処理された管体とコーティング処理されていない管体の顕微鏡写真と、それらコーティングのいくらかでのクラスト形成データである。全サンプルはテストに先立ってオートクレーブ処理された。
【0061】
全てのバクテリアクラスト形成実験は本願発明者が出版した“生体外”改良リアクターモデル(S.サランガパニ他、生物化学材料の研究、29、1185‐1191、1995年)で実施された。このクラスト形成モデルの結果は、コントロールに較べてカルシウム堆積を約50%減少させて1%以下とするホスフォセリン、ホスフォリルエタノールアミン、及びポリホスフォネートのフォーミュレーションの効果を示している。
【0062】
【表1】

*ポリオックスは最終コーティング層として適用、またはフォーミューレーションに含ませることが可能。
【0063】
実施例2
ポリビニルホスフォン酸またはヒドロキシエチルジホスフォネート(HEDP)がハイポールプレポリマーと直接的に混合されるフォーミューレーションが本実施例に記載されている。一般フォーミュレーションは次のごとくである。
【0064】
ポリビニルエチルヒビスホスフォネート 銀粉末 = 0.5‐1.0g
クエン酸銀 = 0‐0.2g
M‐1300カーボン
またはデグッサ酸化チタン = 0.1‐0.5g
ハイポール2002 = 10‐15g
RMA = 0.2‐0.5g
最初の4種の成分は微粉末化され、ハイポール2002とホットプレート上の温暖条件下で混合される。次に、アセトン〜15‐20mLが加えられ、混合され、レゾルシノール一酢酸を加えた後に超音波処理される。表I、グループIIのこのコーティングフォーミュレーションは本実施例にて記述されたフォーミュレーションのバリエーションである。
【0065】
実施例3
本実施例はカーボンを二酸化チタンのごとき顔料と置換するフォーミュレーションを解説する。次のフォーミュレーションでプラチナブラック(30m2/g表面積)(ジョンソン・マシー)を銀粉末(平均粒度1ミクロン)(アルファまたはセラック)に添加すると、バクテリア抵抗力がさらに長期にわたって表面に付与される。
【0066】
A B
ポリビニルホスフォン酸 = 1.0g 1.0g
Ag粉末 = 1.0g 1.0g
Ptブラック = 0.2g −
TiO2(デグッサ、P25)= 0.3g 0.3g
ハイポール2002 = 11g 11g
レゾルシノール一酢酸 = 0.5g 0.5g
銅フタロシアニン染料 = 0.05g 0.05g
このブレンドは乳鉢と乳棒で固体成分を粉末化した後に混合され、ハイポールを含んだアセトン20mlが加えられ、超音波処理されてラテックスまたはポリウレタン表面にコーティングされた。このコーティングは常温で48時間以内に硬化した。プラチナの添加で硬化速度は速められた。このコーティング材はフィルム状での利用も可能である。
【0067】
優れた光沢と滑らかさとを備えた薄グレーのコーティング材が得られた。0.
05gの銅フタロシアニン(着色剤)の添加で青グレーコーティングが得られた。
【0068】
実施例4
本実施例は継続的多量バクテリア存在条件下で実施された長期バイオフィルム実験の結果を記述するものである。
【0069】
試験材料:カテーテル材料(ラテックスコントロール、実施例3Aと3Bのコーティング材)がテストされた。シリコンゴムに加えて、別の従来カテーテル材料(オクラホマ州タルサのダプロ社製)が比較のために使用された。使用に先立って、これらカテーテルからディスク体が切り取られ、以下に記すようにバイオフィルム試験において使用された。
【0070】
バイオフィルム実験:バイオフィルム実験はロビンズ装置(Robbins device)(ニッケル、J.C.、I.ルセスカ、J.B.ライト、J.W.コスタートン、“泌尿器カテーテル材料上のバイオフィルムとして成長するプソイドモナスアエルギノーサ細胞のトブラミシン抵抗”抗菌剤化学療法、27:619‐624、1985年)。約7mm径のディスク体がコルク穴抜具でカテーテルの縁部から切り取られた。試験用に8体から10体のディスク体が各材料から切り取られた。ロビンズ装置内へのこれら材料の搭載は溶解パラフィンワックスをロビンズ装置プラグ内に入れ、その上にディスク体を配置することで行われた。プラグによっては、プラグのエッジをパラフィンで覆うことが必要であった。これら材料は使用前に殺菌されなかった。それによってP.アエルギノーサや、汚染によって繁殖している可能性のある他の微生物によるコロニー化を抑制する能力がテストされた。カテーテルの微生物によるコロニー化は臨床に関わる問題を提起するとの想定に基づいていた。
【0071】
ディスク体は次のようにロビンズ装置に搭載された。シリコンゴム(ポート1と2)、ラテックスゴムコントロール(ポート3から9)(ポート10から17)、(ポート18から25)(液流方向での番号、すなわち、入口は1で出口は25)。液流は60mL/hにセットされた。
【0072】
培養液(culture)の接種(inoculation)に先立って、ロビンズ装置は無菌処理されたH2Oで数時間かけて水洗された。この処理はディスクの固定状態を確認するために行われた。いくつかのディスク体は再搭載が必要であったが、全ディスク体は培養液が接種された後には接着状態を保持した。
【0073】
培養後に、ディスク体は培養液から無菌状態で取り出され、無菌脱イオン水内で2秒間渦動処理され、接着していない微生物が取り除かれた。バイオフィルム微生物は10mLの無菌水内に入れられ、バス超音波器内で10分間超音波処理することで除去された。除去された微生物の連続的希釈が無菌ホスフェートバッファされたサリンで実施され(マクリーン、R.J.C.、J.ダウニー、L.クラップハム、J.C.ニッケル、“生体外でのストルビート結晶成長の研究のための単純技術”泌尿器研究、18:39‐43、1990年)、その微生物は養分アガールプレート(nutrient agar plate)(ディフコ)上でプレート化され、37℃で一晩培養された。コロニーカウント後にその結果は、コロニー形成ユニット数/1ディスク体(CFU/ディスク)
として報告された。
【0074】
データ分析:log10(CFU/ディスク)値であるデータ分析がシグマスタットソフト(SigmaStat software)(バージョン1.01・ジャンデル科学、カルフォルニア州ラファエル)を使用して単方向(one way)ANOVAによって行われた。その結果はシグマプロットソフト(SigmaPlot software)(バージョン5.0、ジャンデル)を使用してグラフ上にプロットされた。データの対数変換、すなわち、対数(CFU/ディスク体)値とCFU/ディスク体値の比較は、データの通常配分を提供するために実行された。
【0075】
P.アエルギノーサはこの実験に使用された全てのテスト表面を簡単にコロニー化した。データのグラフ表示と統計分析は図3a(12時間コロニー化)と図3b(24時間コロニー化)で提供されている。接着性P.アエルギノーサの大きな減少は12時間と24時間の両方で実施例3Aのコーティング材と他の全ての材料との間で検出された。これらの相違は3桁を超えるほどの大きさであった。
【0076】
実施例5
本実施例はウサギに対する実施例3Aの選択コーティング材の生物学的両立性(biocompatibility)を解説する。
【0077】
組織病理学におけるウサギのUSP筋肉埋め込みテスト(オハイオ州のナムサにより実施)
テスト器具:コーティング処理管体、テコフレックス(Tecoflex)ポリウレタン、約7フレンチサイズ、実施例3Aのコーティング材。
【0078】
準備:テスト器具は1mm×10mmにカットされ、EOで殺菌された。
【0079】
手順:それぞれ体重2.5kgの健康な2匹のニュージーランド白ウサギがテストに使用された。各動物の背中は背骨の両側で剃毛された。剃毛後に緩い毛はアルコールで拭い取られ、パラ椎骨筋肉(paravertebral muscle)は麻酔された。
【0080】
無菌テスト器具の帯体がそれぞれのウサギの右側パラ椎骨筋肉に埋め込まれた。USPコントロールプラスチックの帯体が各ウサギの左パラ椎骨筋肉内に埋め込まれた。
【0081】
それら動物は埋め込み5日後に安楽死され、椎骨の両側のパラ椎骨筋肉全体が取り出された。組織は10%中性バッファホルマリン内に固定された。固定後に、埋め込み体を取り出すために筋肉が切開された。埋め込み体を囲む筋肉が肉眼検査された。埋め込み体部位は組織学的に処理され、一流の病理学者による顕微鏡検査のためにヘマトキシリンとエオシンで染色処理された。
【0082】
肉眼検査の結果:
表II
ウサギ 番号 テストコーティング コントロール
実施例
22b
87154* 0 0
0 0
0 0
87111* 0 0
0 0
0 0
平均: 0.0 0.0
平均(テスト)‐平均(コントロール)=0.0
スコアキー
スコア カプセル化
0 無カプセル化または無悪影響反応
(軽度の出血を除く)
1 0.5mmまでのカプセル化または反応領域
2 0.6から1.0mmまでのカプセル化または
反応領域
3 1.1から2.0mmまでのァプセルかまたは
反応領域
4 2.0mm以上のカプセル化または
反応領域
反応表示
0から0.5 ごく軽度
0.6から1.0 軽度
1.1から2.0 少々
2.1から3.0 多少目立つ程度
3.1以上 顕著
肉眼検査:その反応程度は、USPネガティブコントロール埋め込み体材料と較べてごく軽度であった。
顕微鏡検査:その反応程度は、USPネガティブコントロール埋め込み体材料と較べて無刺激程度であった(添付報告参照)。
コメント:*研究所記録では使用の痕跡有り。
【0083】
実施例6
本実施例は、非コーティングで商業的に入手される抗菌カテーテルとの比較による、人体の尿(フィルター殺菌)内におけるプロテウスミラバリス(Proteus Mirabalis)H13420(ピロ腎炎(pylonephritic)患者から採取;バルチモアバージニア病院)の接着性に対する実施例コーティングの効果を説明するものである。
【0084】
手順
ワイヤフックに取り付けられたカテーテル部分を有したリッド(蓋)(米国特許第5328954号に記載、その内容を本願に援用)が無菌ホスフェートバッファサリン(PBS)が入った瓶上に配置された。そのカテーテル部分は37℃で1時間PBC内で平衡化された。そのリッドは約250mlの反応媒質を入れた瓶に移され、約半分のカテーテル部分長が反応媒質内に沈められた。ワイヤフックが反応媒質と接触しないように注意が払われた。各反応容器のリッドには1カテーテルタイプのみからの部分が取り付けられた。1反応容器のリッドには12までのカテーテル部分が取り付けられ、それぞれは1体のワイヤフックに取り付けられた。この反応媒質は約2×104のCfu/mLのP.ミラビリスIE4320と、攪拌しながら37℃で3時間培養されたCfa/mLで接種された。
【0085】
3時間の培養後、カテーテル部分が取り付けられたリッドは反応容器から外され、約250無菌PBSを入れた瓶上に配置された。それらカテーテル部分は無菌PBSの3体の連続瓶内に沈められて洗浄され、新鮮で無菌である人間の尿内に置かれて24時間培養された。いくつかのカテーテル部分はカテーテル表面へのP.ミラビリスの付着の評価のために取り外された。残りのカテーテル部分を取り付けたリッドは新鮮な無菌反応媒質を入れた新しい反応容器上に配置され、その装置はさらに24時間培養された。洗浄及び再培養手順は一部のカテーテル部分がトータルで96時間となるように反応媒質内で培養されるまで反復された。
【0086】
各24時間の培養の終了時に、反応媒質内のP.ミラビリス細胞の数が数えられ、その結果はCfu/mLの反応媒質で表された。
【0087】
微生物学的評価‐カテーテル部分が沈められた反応媒質から得られた数
非コーティングコントロール
24時間‐13×108Cfu/mL
48時間‐7.6×105Cfu/mL
72時間‐1.2×106Cfu/mL
96時間‐2.7×106Cfu/mL
本願発明のコーティング管体(実施例3のコーティングA)
24時間‐成長せず
48時間‐成長せず
72時間‐成長せず
96時間‐成長せず
バルデックスI.C.フォリーカテーテル(銀コーティング)
24時間‐1.7×106Cfu/mL
48時間‐3.9×105Cfu/mL
72時間‐6.9×105Cfu/mL
96時間‐1.2×106Cfu/mL
実施例7
本実施例は、銀やプラチナを使用せずにホスフォン酸やカルボキシル酸のごとき活性成分を使用する例を示す。
【0088】
CPTインク社のC‐フレックス樹脂RTO‐050が本例に使用された。典型的には、10%の透明溶液がその樹脂を溶剤中で溶解(50gのC‐フレックス樹脂に300gのトルエンと150gのデカリン(Decalin)を加え、激しく攪拌しながら水コンデンサー(water condenser)を使用して逆流処理(reflux))することで準備された。典型的には、所定量のポリマー溶液に対して、添加物が加えられ、超音波処理され、ガラスペトリ皿上でキャスト処理される。
溶剤が完全に蒸発した後、真空乾燥され、キャスト処理されたディスク体は7分間、250℃の炉内で成型焼結される。
【0089】
次の表は溶解C‐フレックスと組み合わされた種々な添加物を示している。
【0090】
表III‐A
グループ IB ‐ 1%クエン酸+0.5%銀
グループ II ‐2%クエン酸+0.5%銀
グループ III‐1%クエン酸+0.5%銀+0.5%ブチルパラベン グループ IV ‐1%ヒドロキシエチルイデンホスフォン酸+0.5%銀 グループ V ‐1%ヒドロキシエチルイデンホソフォン酸+0.5%銀
+0.025%プラチナ
%はw/v
得られたディスク体は添加物を使用しないコントロールを含んでガンマ線殺菌(gamma sterilized)され、前述のごとく処理された。37℃で20mLの合成尿内で培養されたときの2体の1cmディスク体のpH効果は以下のごどくである。
【0091】
表III‐B
合成尿*pH5‐8内のC‐フレックス pHテスト
pH測定(37℃で培養)
【0092】
【表2】

HEDP‐ヒドロキシエチルビスホスフォン酸
PVP‐ポリビニルホスフォン酸
*準備には「生物医学材料の研究」誌、29、1185‐1191(1995年)S.サランガパニ他、を参照のこと
真空乾燥後に溶剤キャストディスク体は成型条件に類似した250℃の炉内で5分から7分間焼結処理された。
【0093】
コントロールとの比較で修正材料の殺菌/バクテリア安定(定着)(bacteriostatic)特性の効果を評価するスクリーニングプロトコールを利用する。
【0094】
直接接触法‐汚染プロトコール結果:挿入時に失禁器具に病原菌細胞が付着するとき、尿は収集開始され、あるいは挿入後に残留尿は直ちに収集されるので、細胞生存確率が0となるようにすることが必要である。
【0095】
使用されたプロトコールは、接触時間の関数として約100万の細胞のE.コリ/mLと約10万の細胞のラクトバシリ/mLと接触する改質及び非改質材料の効果を検査した。両方の細菌はATCC保存物あるいはUTI培養保存物から入手された。さらに、24時間培養後と48時間培養後の細胞生存率が検査された。その結果は図4a、図4b、図4c及び図4dに示されている。
【0096】
燒結と非燒結とは250℃で15分間フィルムをキャスト処理する熱処理のことである。コントロールとの比較における改質材料の殺菌/バクテリア定着特性の効果を評価するスクリーニングプロトコールが合成尿と本物の尿とで実施された。感染した患者から分離されたセントジョセフヘルスケアセンター(カナダ)のE.コリサンプルがこの付着研究に使用された。
【0097】
人間の尿での実験結果は以下に提供されている。1実施形態は1mLの尿(5%BHIB補充)に、コントロールディスク体と選択フォーミュレーションを含んだディスク体での一晩寝かせた培養液からの約10の9乗のE.コリ細胞を接種させた。適当な希釈溶液のプレートカウントが翌日に実施された。
【0098】
結果は、クエン酸とホスフォン酸を銀と共に含んだディスク体(1平方cm)
の合成尿及び人体尿内でE.コリが安定的に抑制された。同一のフォーミュレーションが人体尿と合成尿の両方でラクトバシリ(セントジョセフヘルスケアのグレゴリ・レイド博士から提供されたラクトバシリGC)を生存させた。人体の尿は常に5%のブレーン・ハートインフージョンブロス(Brain Heart infusion broth)またはトリプチックソイブロス(Tryptic Soy broth)が補充された。
【0099】
P.ミラバリス種HI4320の完全な抑制も発揮された。
【0100】
表IV
サンプル E.コリ ラクトバシリ
コントロールブランク TNTC TNTC
コントロールディスク体 225 TNTC
サンプルディスク体 12 TNTC
クエン酸と銀を含有
一般的に、クエン酸とホスフォン酸を銀またはプラチナと共に含んだフォーミュレーションはグラム陰性株(strain)に対して効果が最も高い。ラクトバシリ等の良性バクテリアは本願発明の添加物によって影響を受けないという事実が明瞭に示された。
【0101】
実施例8
本実施例は、溶剤ベースのコーティング材として脂肪族ポリウレタンであるテコフレックス(Tecoflex)(マサチューセッツ州ウォバーンのサーメヂックス)のごときポリマー内にブレンドされる活性成分の能力を記述する。テコフレックス樹脂5%(w/v)は加熱されたTHF内で溶解された。溶解されたポリマーはRMA(20%)とブレンドされ、テコフレックス経腸フィード管(enteral feeding tubing)のルーメンにコーティングされた。
【0102】
THF内の純粋RMA20%w/vでのこのコーティングのバリエーションも適用された。THFは管体自体からのポリウレタンの数層を溶解させ、壁上に抗菌剤を提供する。
【0103】
空気乾燥後に、コーティングされた管体はコントロールの凝固形成を抑制し、15日から20日の寿命であったコントロールと較べて45日間の寿命を示した。これらの実験は、臨床状況で通流を促す生体外経腸フィードフォーミュラリアクター内で実行された。合成ペプシンと塩酸も定速で混合され、胃環境を擬似した。
【0104】
従って、抗菌剤を含んだポリマーのコーティングはバクテリアバイオフィルムによる凝固の可能性を減少させる。
【0105】
本願発明を以上の実施例を利用して解説してきたが、それらの改良や変更は可能である。それら全ては「特許請求の範囲」に含まれるものである

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用ポリマー製品のためのコーティング材であって、
アミノカルボキシル酸、トリカルボキシル酸、アミノ酸、ホスフォン酸及びフェノール化合物で成る群から選択される陰イオンに錯体化する1以上の銀イオンを含んだ銀化合物と、
ポリマーと、
1ミクロン以下の平均粒径を有した銀粉末と、
を含んで成ることを特徴とするコーティング材。
【請求項2】
プラチナブラックをさらに含んでいることを特徴とする請求項1記載のコーティング材。
【請求項3】
二酸化チタンをさらに含んでいることを特徴とする請求項2記載のコーティング材。
【請求項4】
アミノカルボキシル酸はDPTAであることを特徴とする請求項1記載のコーティング材。
【請求項5】
アミノカルボキシル酸はEDTAであることを特徴とする請求項1記載のコーティング材。
【請求項6】
トリカルボキシル酸はクエン酸であることを特徴とする請求項1記載のコーティング材。
【請求項7】
アミノ酸はホスフォセリンであることを特徴とする請求項1記載のコーティング材。
【請求項8】
アミノ酸はタウリンであることを特徴とする請求項1記載のコーティング材。
【請求項9】
ホスフォン酸はポリビニルホスフォン酸であることを特徴とする請求項1記載のコーティング材。
【請求項10】
ホスフォン酸はヒドロキシエチルイデンであることを特徴とする請求項1記載のコーティング材。
【請求項11】
フェノール化合物は一酢酸レゾルシノールであることを特徴とする請求項1記載のコーティング材。
【請求項12】
医療用のメルトブレンドポリマー材料であって、
ポリマーと、
アミノカルボキシル酸、トリカルボキシル酸、アミノ酸、ホスフォン酸及びフェノール化合物で成る群から選択される陰イオンに錯体化する1以上の銀イオンを含んだ銀化合物と、
1ミクロン以下の平均粒径を有した銀粉末と、
を含んで成ることを特徴とするポリマー材料。
【請求項13】
プラチナブラックをさらに含んでいることを特徴とする請求項12記載のポリマー材料。
【請求項14】
パラベンエステルをさらに含んでいることを特徴とする請求項12記載のポリマー材。
【請求項15】
アミノカルボキシル酸はDPTAであることを特徴とする請求項12記載のポリマー材料。

【図2a】
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【図2b】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図4d】
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【図1a】
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【図1b】
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【公開番号】特開2010−29647(P2010−29647A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−137408(P2009−137408)
【出願日】平成21年6月8日(2009.6.8)
【分割の表示】特願平10−548310の分割
【原出願日】平成10年5月4日(1998.5.4)
【出願人】(509160432)アイセット,インク. (1)
【Fターム(参考)】