説明

医療用キャップ及びその製造方法

【課題】弾性栓体と、その周縁部を内壁で保持する外枠体との密着性に優れ、針刺しによって弾性栓体と外枠体の位置ずれがなく、密閉性の確保に優れた医療用キャップ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、弾性栓体と、弾性栓体の周縁部を接液面側から内壁で保持する下側枠部及び針刺面側から内壁で保持する上側枠部を備えた外枠体を有する医療用キャップであって、前記弾性栓体は、前記上側枠体との接触面で融着されており、かつ、前記下側枠体との接触面で非融着されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸液容器、採血管等の医療用キャップ及びその製造方法に関する。特に、医療用において針刺し可能な栓体を備えた医療用キャップ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野に用いられる薬液ボトルや点滴に用いられる輸液ボトルには、針でその薬液等を取り出せるようにするため、そのキャップとして、ゴム栓や、外枠体の内側に針指し用のゴムまたはエラストマー樹脂からなる栓体を設けたものが用いられている。この外枠体は、溶着などの方法により輸液容器に取り付けられる。そして、使用時には栓体に注射針を突き刺し、キャップ部を下にすることにより、容器内の輸液を取り出す。従って、この様な医療用キャップには、薬液や輸液の漏洩防止や空気に触れることによる変質防止のため、密閉性が求められる。
【0003】
例えば、医療用キャップの構造を栓体の接液面と外枠体の底面保持部の上部とが融着しており、かつ前記栓体の側面部と前記外枠体の側周部の内壁とは非融着状態で接触している状態にすることで、ゴム特性が改善され、再シール性に優れた医療用キャップが提案されている(下記特許文献1参照)。
【0004】
しかし、従来の医療用キャップであると、栓体と外枠体との密着が十分でない場合がある。このような医療用キャップにおいては、針刺しの際に栓体と外枠体の位置がずれて両者の間に空隙が生じたり、その為に第2本目の針を刺すこと、又は再度針刺しを行うことが困難になるという問題がある。
【0005】
【特許文献1】特開2005−118185号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、弾性栓体と、その周縁部を内壁で保持する外枠体との密着性に優れ、針刺しによって弾性栓体と外枠体の位置ずれがなく、密閉性の確保に優れた医療用キャップ及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者等は、前記従来の問題点を解決すべく、医療用キャップ及びその製造方法について検討した。その結果、下記構成を採用することにより、前記目的を達成できることを見出して、本発明を完成させるに至った。
【0008】
即ち、本発明に係る医療用キャップは、前記の課題を解決する為に、弾性栓体と、弾性栓体の周縁部を接液面側から内壁で保持する下側枠部及び針刺面側から内壁で保持する上側枠部を備えた外枠体を有する医療用キャップであって、前記弾性栓体は、前記上側枠体との接触面で融着されており、かつ、前記下側枠体との接触面で非融着されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の医療用キャップは、上側枠部が弾性栓体との接触面で融着した構造となっている。この為、例えば針刺面側から針刺しをする際に弾性栓体と上側枠部の位置ずれにより空隙が生じるのを防止することができ、薬液の密閉性も確保することができる。また、上側枠部の成形は、弾性栓体は下側に押圧された状態で行われるので、上側枠部の成形後、弾性栓体の針刺面側に於ける中央部が上方に膨れあがるのを抑制することができる。尚、前記「針刺面」とは、本発明の医療用キャップが薬液ボトルや点滴に用いられる輸液ボトルに装着され、薬液等を取り出す際に、注射針により針刺しが行われる面を意味する。また、前記「接液面」とは、薬液等が接する面を意味する。
【0010】
前記構成に於いて、前記上側枠部は、前記弾性栓体を密封する為のピールフィルムを貼付可能な貼付部を有しており、当該ピールフィルムを貼付部に剥離可能に貼り付けた際に、弾性栓体と接触しないことが好ましい。
【0011】
前記構成に於いて、前記弾性栓体の接液面は、前記下側枠部側の方向に向かって凸状となっていることが好ましい。
【0012】
また、本発明に係る医療用キャップの製造方法は、前記の課題を解決する為に、弾性栓体と、弾性栓体の周縁部を下面側から内壁で保持する下側枠部及び上面側から内壁で保持する上側枠部を備えた外枠体を有する医療用キャップの製造方法であって、第1上金型と共通下金型を用いて、前記弾性栓体の載置が可能な載置部を内壁に有する下側枠部を成形し、前記下側枠部の載置部上に、前記弾性栓体をその上面を上向きにして載置し、前記弾性栓体の直径よりも小さい直径を有する突起部を有し、かつ、前記共通下金型と組み合わせた際に前記上側枠部の成形用のキャビティを形成可能にする第2上金型を用いて、前記突起部が前記弾性栓体の中央部を押圧して下方に押し出すように前記共通下金型と型閉じし、前記キャビティ内に溶融樹脂を射出して上側枠部を成形し、前記外枠体を形成することを特徴とする。
【0013】
本発明の製造方法は、弾性栓体の周縁部を下面側から内壁で保持する下側枠部を成形した後、上面側から内壁で保持する上側枠部を成形して、外枠体を形成する方法である。下側枠部は、第1上金型と共通下金型を用いて成形される。このとき、下側枠部の内壁には弾性栓体の載置が可能な載置部も形成される。
【0014】
次に、下側枠部の載置部に弾性栓体をその上面が上向きとなる様に載置し、第2上金型と共通下金型を用いて、上側枠部を成形する。第2上金型は、共通下金型と組み合わせた際に、弾性栓体の中央部を押圧することが可能な突起部を備えている。このとき、弾性栓体下側の周縁部は前記載置部により支持されているが、中央部ではこれを支えるものがない。その為、突起部で押圧された中央部が下方に押し出された状態となる。この様な状態で、第2上金型と共通下金型との間に形成されたキャビティ内に溶融樹脂を射出して上側枠部を成形する。
【0015】
前記方法により成形された上側枠部は弾性栓体との接触面で融着した構造となっている。これにより、例えば上面側から針刺しをする際に弾性栓体と上側枠部の位置ずれにより空隙が生じるのを防止することができ、その結果、薬液の密閉性を確保することができる。また、上側枠部の成形は、弾性栓体は下側に押圧された状態で行われるので、上側枠部の成形後、弾性栓体の上面側に於ける中央部が上方に膨れあがるのを抑制することができる。
【0016】
前記方法に於いては、前記弾性栓体として、熱可塑性エラストマーを含み構成されるものを使用することが好ましい。これにより、復元力が向上し、輸液加療中の針保持力や針抜き後の再シール性に優れた医療用キャップを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施の形態について、図を参照しながら以下に説明する。但し、説明に不要な部分は省略し、また説明を容易にする為に拡大又は縮小等して図示した部分がある。図1は、本実施の形態に係る医療用キャップの製造方法を説明するための断面図である。図2は、前記製造方法に於ける上側枠部の射出成形の様子を示す断面図である。
【0018】
図1(a)に示すように、第1上金型13と共通下金型11を用いて、下側枠部を射出成形する。本実施の形態では、第1上金型13は固定型であり、共通下金型11は可動型である。第1上金型13と共通下金型11は、型閉じをした際に、円筒状の下側枠部の成形が可能なキャビティが形成される構造となっている。
【0019】
下側枠部の構成材料となる樹脂を溶融した溶融樹脂12は、第1上金型13内のスプル、ランナを通過し、キャビティ内に注入する。射出圧力としては特に限定されず、適宜必要に応じて設定され得る。射出された溶融樹脂12は所定時間冷却される。型開き後、図1(b)に示すように、下側枠部15が形成される。下側枠部15の内壁には、後述の弾性栓体を載置する為の載置部14が設けられている。
【0020】
次に、図1(c)〜1(e)に示すように、下側枠部15の載置部14上に、弾性栓体17をその針刺面(上面)18が上向きとなる様に載置し、上側枠部の射出成形を行う。弾性栓体17は、その周縁部17aのみが載置部14によって下側から支えられている。また、弾性栓体17の直径は特に限定されず、通常は12〜30mmの範囲内で設定される。また、弾性栓体17の直径は、下側枠部15の開口部に於ける内径R1に対し、0.1mm〜0.5mm程度小さめに設定されていることが好ましい。これにより、下側枠部15内への弾性栓体17のインサートの容易性を確保している。更に、弾性栓体17の厚みは特に限定されず、通常は3〜10mmの範囲内で設定される。
【0021】
ここで、上側枠部の射出成形の詳細を図2(a)〜2(c)に示す。上側枠部の成形には、第2上金型16と共通下金型11とを用いる。第2上金型16と共通下金型11は、型閉じをした際に、上側枠部の成形が可能なキャビティが形成される構造となっている。また、当該型閉じの際、弾性栓体17の中央部は、下側枠部15により支持されていない為、後述する突起部により押圧されて下方に押し出された状態となっている(図2(b)参照)。尚、弾性栓体17としては、針刺面18がフラットで、接液面20にのみ脱落防止の為の段差部17bが設けられたものを用いる。但し、本発明の弾性栓体としては、当該形状のものに限定されない。他の態様については、後段にて詳述する。
【0022】
前記第2上金型16には、カシメ入れ子19が設けられており、当該入れ子19は円柱状の突起部22aと段差部22bとを備えている。突起部22aの直径rは、弾性栓体17の直径よりも小さければ特に限定されず、成形する外枠体の形状、サイズに応じて適宜設定される。通常は、10.5〜29mmの範囲内であることが好ましく、11〜28mmの範囲内であることがより好ましい。内径Rが弾性栓体17の直径の80%を超えると、型締め時に下側枠部15が弾性栓体17を保持しにくくなる場合がある。その一方、内径Rが弾性栓体17の直径の45%未満であると、型締め時の弾性栓体17の変形が局部的になり、弾性栓体17の中央に向かう圧縮応力の発生が見られない場合がある。
【0023】
また、突起部22aの高さhは特に限定されず、弾性栓体17のサイズ、成形する外枠体の形状等に応じて適宜設定される。通常は、1〜5mmの範囲内であることが好ましく、1.5〜2.5mmの範囲内であることがより好ましい。高さhが5mmを超えると、第2上金型16と共通下金型11との型閉じが困難になる場合がある。その一方、高さhが1mm未満であると、弾性栓体17の中央部を下方に押し下げるのが不十分になり、弾性栓体17の中央に向かう圧縮応力の発生が見られない場合がある。
【0024】
尚、突起部の形状としては、本発明は前記円柱状の突起部22aに限定されない。例えば、図3(a)〜3(e)に示す種々の突起部を採用することもできる。即ち、中央部が窪んだ凹形状の突起部23(同図(a))や、中央部が所定の曲率で湾曲して膨らんだ凸形状の突起部24(同図(b))、リング状の突起部25(同図(c))、2段形状の突起部26(同図(d))、角が曲面となる様に面取りされた円柱状の突起部(同図(e))が例示できる。
【0025】
続いて、図2(b)に示すように、第2上金型16と共通下金型11との型閉じを行う。このとき、弾性栓体17の針刺面18に於ける中央部が突起部22aにより押圧され、接液面(下面)20が下方に押し下げられる。また、弾性栓体17の針刺面18の周縁部の一部が段差部22bと接触する。
【0026】
次に、型閉じにより形成されたキャビティ28内に、上側枠部の構成材料となる樹脂を溶融した溶融樹脂31を注入する。射出圧力としては特に限定されず、適宜必要に応じて設定され得る。射出された溶融樹脂31は所定時間冷却される。型開き後、図2(c)に示すように、上側枠部32が形成される。弾性栓体17と上側枠部32の接触部分は融着した状態となっている。
【0027】
以上により、上側枠部32と下側枠部15とが一体となった外枠体27が形成され、本実施の形態に係る医療用キャップ30が得られる(図1(e)、1(f)参照)。
【0028】
前記製造方法により得られる医療用キャップ30において、弾性栓体17には、上側枠部32によって、図2(c)の矢印で示す方向、すなわち弾性栓体17の中央部の下方に向かって圧縮応力(カシメ力)が働いている。この圧縮応力の作用により、弾性栓体17自身が有する復元力が弾性栓体17の側周部の方向に働き拡張しようとする結果、下側枠部15との密閉性が向上する。これにより、針抜けに対する保持力、及び復元力が向上し、針抜け後の再シール性にも優れたものにできる。
【0029】
また、圧縮押力の作用により、弾性栓体17における針刺面18の中央部が上方に膨れあがるのを抑制することができる。より詳細には、弾性栓体17の中央部の高さを、その周縁部を基準として1.5mm以下に抑制することができる。これにより、上側枠部32に、弾性栓体を密封する為のピールフィルム29を貼り付ける際にも、当該ピールフィルム29が弾性栓体17と接触するのを防止できる。また、弾性栓体17とピールフィルム29の隙間を小さくし、かつ、ピールフィルム29により密封された空気の体積を小さくできるので、例えば、滅菌の際、密封された空気の体積変化によるピールフィルム29の変形破壊を防止することができる。更に、弾性栓体17の針刺面18での膨らみを防止出きる結果、上側枠部32に於ける貼付部26aと前記中央部との段差を2mm以下に抑制できるので、当該上側枠部32に阻害されずに針の刺し込みを行うことができ、作業性が向上する。
【0030】
また、弾性栓体17と下側枠部15との接触部分は非融着状態である。これにより、使用時の針抜けや液漏れを防止することができる。即ち、弾性栓体側面部は下側枠部15に固定されずに自由な状態にあるので、針を刺した場合に弾性栓体17が外側に押しやられる力を吸収することができる。このとき刺した針には、反作用で下側枠部15から弾性栓体17と通して針を保持する力が生じるので、針抜けを防止できる。また、針を抜いたときには、弾性栓体17は下側枠部15から内側に押しやられる力を受けるので、針で生じた穴を閉塞し、再シール性を向上させることができる。弾性栓体17の接液面20は、下側枠部の下方側に向かって凸状になっている(図2(c)参照)。凸状となっている接液面20の頭頂部と、段差部17bの段差面を含む面との距離sは、0.1mm〜3mmであることが好ましく、0.1mm〜2.5mmであることがより好ましい。
【0031】
尚、前記外枠体27を構成する下側枠部15及び上側枠部32に用いる材料としては、合成樹脂のうち、医療用途としての安全性が確立されたものであれば足りる。中でも熱可塑性樹脂を用いるのが一般的である。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂等の従来医療用途に用いられている樹脂が好ましいが、これらに限定されるものではない。下側枠部15と上側枠部32は、両者を融着させて外枠体27を構成するため、それぞれ用いられる成分は、同一の成分または相溶性のある成分であることが好ましい。また、下側枠部15または上側枠部32の一方または両方に、着色剤などの任意の成分を添加してもよい。
【0032】
前記弾性栓体17に用いる材料としては、例えば、ゴムや熱可塑性エラストマーが挙げられる。前記ゴムとしては特に限定されず、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、イソプレン−イソブチレンゴム等が例示できる。また、熱可塑性エラストマーとしては特に限定されず、例えば、オレフィン系、スチレン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリ塩化ビニル系、ポリブタジエン系等が例示できる。中でも共役ジエン系の熱可塑性エラストマーに水素添加した熱可塑性エラストマー(SEBS、SEPS、HSBR、SEBR、CEBC)が好適である。
【0033】
また、熱可塑性エラストマー材料は、ゴム材料に比べて極めて衛生的な素材であるが、使用する薬液によっては、弾性栓体17の接液面20に、ラミネート加工を行ってもよい。ラミネート加工には、下側枠部15または取り付けるべき容器本体と同一種類の樹脂が一般に用いられる。これにより、薬液が接触する容器内や弾性栓体17の接液面20と同一又は類似した性質の材料とすることができる。
【0034】
また、弾性栓体17の断面形状は、適宜必要に応じて変形可能である。具体的には、例えば図4(a)に示すように、針刺面41a及び接液面41bの双方に、脱落防止の為の段差部41cが設けられた弾性栓体41が挙げられる。また、図4(b)に示すように、針刺面42a及び接液面42bの両方ともフラットの弾性栓体42であってもよい。更に、図4(c)に示すように、針刺面46a側に、第2上金型16の突起部22aの直径よりも大きい径を有する環状溝46cを備え、接液面46bはフラットな構成の弾性栓体46であってもよい。更に、図4(d)に示すように、針刺面47a側に第2上金型16の突起部22aの直径よりも大きい径を有する環状溝47cを備え、接液面47b側に脱落防止の為の段差部47dを備えた弾性栓体47であってもよい。更に、図4(e)に示すように、針刺面44a側に環状の突条部44cが設けられ、接液面42b側に脱落防止の為の段差部44dが設けられた弾性栓体44であってもよい。更に、図4(f)に示すように、針刺面45aにのみ脱落防止の為の段差部45cが設けられ、接液面45bはフラットの弾性栓体45であってもよい。
【0035】
弾性栓体17の製造方法としては特に限定されず、例えば、熱可塑性エラストマーを圧潰しながら行うコンプレッション成形や射出成形により製造可能である。
【0036】
(その他の事項)
本発明は前記に示した態様に限定されるものではなく、当該発明の効果を奏する範囲で種々の変更が可能である。例えば、前記実施の形態では、下側枠部として弾性栓体に近づくに従い、その内径が大きくなる態様を例にして説明したが、例えば、図5に示すように、弾性栓体41が載置された位置より下方では、その内径が均一となった下側枠部52有するポート一体タイプのキャップにも適用可能である。また、図5(b)に示すように、フランジを有する下側枠部53であって、容器口部とフランジ同士が溶着したタイプのキャップにも適用可能である。更に、図5(c)に示すように、容器口部に落とし込み、その上部外周を溶着させて用いるインサートタイプのキャップであってもよい。更に、図5(d)に示すように、同図(c)に示すインサートタイプと同様であるが、下側枠部55の周縁部に環状凹部55aが設けられ、当該環状凹部55aにおいて嵌合する様に上側枠部56とが成形された外枠体を有するキャップであってもよい。この場合、弾性栓体57の直径は通常よりも小さく、具体的には、12〜24mmの範囲内である。
【実施例】
【0037】
以下に、この発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但し、この実施例に記載されている材料や配合量等は、特に限定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0038】
(実施例1)
本実施例では、前述の図1(a)〜1(f)に示した方法に従い、図7(a)に示す医療用キャップ60の製造を行った。外枠体の材料としてはLDPE(低密度ポリエチレン、MFR=1)を用い、弾性栓体61の材料としてはスチレン系熱可塑性エラストマーを用いた。また、成形機としては、日精樹脂工業(株)製の二色射出成形機(商品名;DC100−200)を使用した。
【0039】
下側枠部62の成形条件は下記の通りである。
射出成形温度:240℃
射出圧力 :40kgf/cm
射出時間 :3.2秒
第1上金型温度及び共通下金型温度 :43℃
【0040】
また、上側枠部63の成形条件は下記の通りである。
射出成形温度:240℃
射出圧力 :39kgf/cm
射出時間 :2.8秒
第2上金型温度及び共通下金型温度 :43℃
【0041】
(比較例1)
先ず、予め成形した上側枠部101上に、弾性栓体102をその接液面が上向きとなる様に載置した(図6(a)参照)。次に、上金型103及び下金型104を用いて型閉じし(図6(b)参照)、キャビティ内に溶融樹脂を注入して射出成形を行った(図6(c))。これにより、本比較例に係る医療用キャップ100を製造した(図7(b)参照)。外枠体の材料としてはLDPE(低密度ポリエチレン、MFR=1)を用い、弾性栓体102の材料としてはスチレン系熱可塑性エラストマーを用いた。また、成形機としては、日精樹脂工業(株)製の二色射出成形機(商品名;DC100−200)を使用した。
【0042】
上側枠部101の成形条件は下記の通りである。
射出成形温度:240℃
射出圧力 :42kgf/cm
射出時間 :3.2秒
第1上金型温度及び共通下金型温度 :43℃
【0043】
また、下側枠部の成形条件は下記の通りである。
射出成形温度:240℃
射出圧力 :50kgf/cm
射出時間 :3.4秒
第2上金型温度及び共通下金型温度 :43℃
【0044】
(穿刺針の穿刺試験)
前記実施例1及び比較例1で得られた医療用キャップをそれぞれ用意し、プラスチック製輸液針を弾性栓体に刺したときの外枠体の状態を調べた。その結果、実施例1に係る医療用キャップ60については、図7(a)に示すように、弾性栓体61が上側枠部63とその接触面で融着固定されているので位置ズレが起こらず、空隙が生じなかった。その一方、比較例1に係る医療用キャップでは、図7(b)に示す様に、上側枠部101と弾性栓体102との接触部分が融着していないため、当該上側枠部101にリブ104を設けていても、めくれが発生した。
【0045】
(穿刺針の保持力試験)
前記実施例及び比較例で得られた医療用キャップに対し、オートクレーブにより106℃で25分間の滅菌処理を行った。その様な医療用キャップを40サンプル用意し、金属針(16G金属針)及び樹脂針(400樹脂針)をそれぞれ弾性栓体に刺したときの保持力について調べた。各医療用キャップを引っ張り圧縮試験機にセットし、弾性栓体の中央部に、前記試験機に取り付けた下記の穿刺針を垂直に突き刺した後、該穿刺針を200mm/minの速度で上昇させ、該穿刺針が弾性栓体から抜けるときの力(単位;kgf)を測定した。穿刺針としては、前記2種類の針を用いて行い、それぞれ最大値、最小値、平均値及び標準偏差を求めた。結果を下記表1に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
(穿刺針の液漏れ試験)
前記実施例及び比較例で得られた医療用キャップに対し、オートクレーブにより106℃で25分間の滅菌処理を行った。次に、各医療用キャップを試験用圧力缶体に取り付け、その点滴部位にテルモ株式会社製連結管(商品名;TC−00503B)を穿刺し4時間放置した。その後、抜針し、液漏れするかを調べた。尚、検体数は200個とした。
【0048】
次に、前記と同様にして滅菌処理を行った各医療用キャップを試験用圧力缶体に取り付け、その点滴部位にテルモ株式会社製輸液セット(商品名;TK−A400LK)を穿刺し4時間放置した。その後、抜針し、液漏れするかを調べた。尚、検体数は200個とした。
【0049】
更に、前記と同様にして滅菌処理を行った各医療用キャップを試験用圧力缶体に取り付け、その混注部位に、18G金属針をシリンジにセットし水10mlを入れて垂直に穿刺した。その後、18G金属針を針刺面に対し傾斜させた状態にし、水を試験用圧力缶体に3回注入吸引を繰り返した。続いて、2本目の18G金属針の穿刺し、水の注入吸引の操作を繰り返した。更に、1時間後の液漏れ量を測定した。結果を下記表2に示す。また、検体回数は200個とした。
【0050】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施の一形態に係る医療用キャップの製造方法を説明するための断面図である。
【図2】前記製造方法に於ける上側枠部の射出成形の様子を示す断面図である。
【図3】前記製造方法に用いる各種の第2上金型を示す断面図である。
【図4】前記医療用キャップに用いる各種の弾性栓体を示す断面図である。
【図5】本発明の他の実施の形態に係る医療用キャップを示す断面図である。
【図6】比較例1の医療用キャップの製造方法を説明するための断面図である。
【図7】穿刺針の穿刺試験の様子を示す断面図である。
【符号の説明】
【0052】
11 共通下金型
12 溶融樹脂
13 上金型
14 載置部
15 下側枠部
16 上金型
17 弾性栓体
17a 周縁部
17b 段差部
18 針刺面
19 入れ子
20 接液面
22a 突起部
22b 段差部
23 突起部
24 突起部
25 突起部
26 突起部
26a 貼付部
27 外枠体
28 キャビティ
29 ピールフィルム
30 医療用キャップ
31 溶融樹脂
32 上側枠部
41 弾性栓体
41a 針刺面
41b 接液面
41c 段差部
42 弾性栓体
42a 針刺面
42b 接液面
44 弾性栓体
44a 針刺面
44c 突条部
44d 段差部
45 弾性栓体
45a 針刺面
45b 接液面
45c 段差部
46 弾性栓体
46a 針刺面
46b 接液面
46c 環状溝
47 弾性栓体
47a 針刺面
47b 接液面
47c 環状溝
47d 段差部
52 下側枠部
53 下側枠部
55 下側枠部
55a 環状凹部
55a 当該環状凹部
56 上側枠部
57 弾性栓体
60 医療用キャップ
61 弾性栓体
62 下側枠部
63 上側枠部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性栓体と、弾性栓体の周縁部を接液面側から内壁で保持する下側枠部及び針刺面側から内壁で保持する上側枠部を備えた外枠体を有する医療用キャップであって、
前記弾性栓体は、前記上側枠体との接触面で融着されており、かつ、前記下側枠体との接触面で非融着されている医療用キャップ。
【請求項2】
前記弾性栓体が、熱可塑性エラストマーを含み構成される請求項1に記載の医療用キャップ。
【請求項3】
前記上側枠部は、前記弾性栓体を密封する為のピールフィルムを貼付可能な貼付部を有しており、当該ピールフィルムを貼付部に剥離可能に貼り付けた際に、弾性栓体と接触しない請求項1又は2に記載の医療用キャップ。
【請求項4】
前記弾性栓体の接液面は、前記下側枠部側の方向に向かって凸状となっている請求項1〜3の何れか1項に記載の医療用キャップ。
【請求項5】
弾性栓体と、弾性栓体の周縁部を下面側から内壁で保持する下側枠部及び上面側から内壁で保持する上側枠部を備えた外枠体を有する医療用キャップの製造方法であって、
第1上金型と共通下金型を用いて、前記弾性栓体の載置が可能な載置部を内壁に有する下側枠部を成形し、
前記下側枠部の載置部上に、前記弾性栓体をその上面を上向きにして載置し、
前記弾性栓体の直径よりも小さい直径を有する突起部を有し、かつ、前記共通下金型と組み合わせた際に前記上側枠部の成形用のキャビティを形成可能にする第2上金型を用いて、前記突起部が前記弾性栓体の中央部を押圧して下方に押し出すように前記共通下金型と型閉じし、
前記キャビティ内に溶融樹脂を射出して上側枠部を成形し、前記外枠体を形成する医療用キャップの製造方法。
【請求項6】
前記弾性栓体として、熱可塑性エラストマーを含み構成されるものを使用する請求項5に記載の医療用キャップの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−172739(P2010−172739A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−90579(P2010−90579)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【分割の表示】特願2007−185958(P2007−185958)の分割
【原出願日】平成19年7月17日(2007.7.17)
【出願人】(000225278)内外化成株式会社 (27)
【Fターム(参考)】