説明

医療用スリング

【課題】新規な構成を有する医療用スリングを提供する。
【解決手段】医療適用に使用するために適切に形成された材料から作製された医療用スリング20は、側部30,32を備え、それらの部分は、周辺組織の擦過傷を防ぐために平滑化される。1つの実施形態において、本スリングは、視覚的ガイドとして、垂直軸34の少なくとも1部分に実質的に沿って配置された可視線36をさらに備える。1つの実施形態において、本スリングの合成材料は、ナイロンポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、フルオロポリマーまたはそれらのコポリマーのうちの少なくとも1つである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2001年3月9日に米国特許庁に出願された特許仮出願番号60/274,843号および2001年4月26日に米国特許庁に出願された特許仮出願番号60/286,863号(これらの内容全体は、本明細書中に参考として援用される)に対する優先権を主張する。
【0002】
(技術分野)
本発明は、一般に、医療用スリングとして使用するための外科用メッシュ(例えば、骨盤床修復メッシュ)、そのようなメッシュを作製する方法、そのようなメッシュを備えるキット、およびそのようなメッシュを用いて患者の身体の損傷部、脱出部分(prolapsed portion)、弱い部分またはヘルニア様部分を処置または補強する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(背景情報)
外科的補てつメッシュは、損傷したか、脱したか、弱まったか、そうでなければヘルニア様である組織または器官(例えば、直腸瘤、膀胱ヘルニア、腸瘤、膣脱出症、およびプロトセレ(protocele)のような状態において)の処置または補強のために用いられてきた。脱出症とは、器官または器官の部分が、その正常な部分からすり抜けることをいう。例えば、直腸の脱出症とは、直腸内表面の肛門を通しての突出をいう。直腸瘤とは、直腸の会陰への突出である。子宮の脱出症とは、その保持構造の伸長および弛緩に起因した、膣への子宮の下垂をいう。膣円蓋脱出症とは、膣管の頭方向の端部の、その入口への脱出症、その入口を通しての脱出症、およびその入口を通りすぎての脱出症をいう。膀胱ヘルニア(cystocele)(すなわちvesicocele)は、膣口への膀胱の下方および後方の移動によって形成されるヘルニアであり、これは、最も一般的には出産の間の筋系の弱体化に起因する。しかし、安息時または緊張時の前方膣壁および膀胱の基底のいずれの異常な降下も、膀胱ヘルニアと考えられる。腸瘤とは、小腸のヘルニアであるが、この用語はまた、特に、直腸子宮窩を通しての骨盤腹膜のヘルニア(すなわち、後腟円蓋ヘルニア、直腸腟ヘルニア、盲嚢ヘルニア、ダグラス窩ヘルニア)を指すために用いられる。
【0004】
外科用メッシュはまた、一時的に(例えば、外科手術の間)組織を保持するためにかまたは身体器官を収縮させるために用いられ得る。例えば、米国特許第4,973,300号は、外科手術の間、心臓を保持するための心臓用スリングの使用を記載し;そして米国特許第5,362,294号は、腹腔鏡手術の間の子宮または腸のような身体器官の収縮を記載し;米国特許第6,102,921号は、神経の修復または再生に使用するための医療吻合用スリングの使用を記載する。
【0005】
これらの状態および他の多くの状態の患者の組織の処置または補強のためのスリングとして用いられる合成メッシュ材料は、患者に、例えば、このメッシュの縁部の鋭い突出部に少なくとも部分的に起因する侵食のような合併症を引き起こし得る。この突出部は、その製造工程の間またはその後(例えば、医師が、この材料を切断するかまたははさみをいれるかあるいはそれ以外に形成するとき)に形成される。これらの突出部は、これらの突出部が周囲の組織に接触する場合に、刺激効果を引き起こし得、この刺激は、侵食を導き得る。従って、そのスリングが保持する組織周辺の組織の不快感および侵食を最小限にするスリングが必要である。
【0006】
主として女性が罹患する、腹圧性尿失禁(SUI)は、外科用スリングを用いて首尾良く処置される状態である。腹圧性尿失禁は、一般的に、独立してか、または組み合わせて生じ得る2つの状態(すなわち、固有括約筋欠損(ISD)および過剰運動性)によって生じ得る。ISDにおいて、尿道内に位置する膀胱括約筋弁は、適切に閉じられず(接合できず)、ストレスのかかる活動の間、尿道からの尿の漏出を引き起こす。過剰運動性は、骨盤床が、膨張するか、弱まるか、または損傷した状態であり、この状態は、腹腔内の圧力上昇に応答して、(例えば、くしゃみ、せき、緊張に起因して)膀胱頸部および近位の尿道の回転および下降を引き起こし、尿道の閉鎖を促進するのに不充分な応答時間を生じ、結果的に、尿の漏出および/または流出を生じる。
【0007】
過剰運動性に影響し得る生物学的要素としては、以下:(年齢または限定された活動による)骨盤内筋膜の筋肉の乏しい緊張、損傷(例えば、出産)由来の骨盤内筋膜の筋肉の伸長/断裂、骨盤内筋膜/健弓(armcus tendenious)(筋肉/靱帯)分離(側方の欠損)、ホルモン欠乏(エストロゲン)、コンコンビナント(concombinant)欠損(膀胱ヘルニア、腸瘤、尿管脱出症)、および膣脱出症が挙げられる。従来の処置方法としては、膀胱頸部安定化スリングが挙げられ、ここでスリングは尿道または膀胱頸部の下に配置されてプラットホームを提供し、過剰な膨張を防ぐ。緊急の代替的な処置は、尿道中央(mid−urethral)スリングの配置である。そのようなスリングの配置は、尿道および膀胱頸部が回転して、正常な尿道の閉鎖を補助するための「尿道のよじれ」を提供する支点を提供することによって、過剰運動性状態を利用する。
【0008】
スリングは、従来、膀胱頸部の下に配置され、尿道のプラットホームを提供して、骨盤内筋膜の降下を限定し、一方で尿道括約筋の収縮を提供して、接合を改善してきた。この尿道中央の配置位置は、より移動可能でない解剖学的組織に機械的安定性を提供する。膀胱頸部スリングは、従来、骨固定法によって所望される位置に固定されてきた。低移動性領域に配置される尿道中央スリングは、固定なしのアプローチの効果を実証してきた。あるとしても、最小限の張度が必要であることを認識しているので、適切な場所にこのスリングを永続的に固定するために、医師は、この骨盤括約筋を介してこのスリングが固定化される尿道中央の下の場所のみを必要とする。このスリングは、スリングの安定性を最初に維持するためのメッシュ開口部およびメッシュ突出部を介して即時的な組織固定を可能とする。治癒されるにつれて、この骨盤内膜筋組織および直腸筋膜組織は、血管を再形成し、そそしてこのメッシュの編みこみパターン中およびこのメッシュの編みこみパターン周辺に再成長する。この手順において、このスリングは、この骨盤床が降下するあたりに支点を提供し(患者の過剰運動性状態を利用する)、そして高ストレス状態の間の尿流出をふせぐためのより高い耐性の尿道の「よじれ」を提供する。
【0009】
従って、突出部は、SUI処置に対して有益に寄与し得るが、一方で、これらはまた、患者に合併症(例えば、膣および尿道の侵食)を引き起こし得る。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の要旨)
本発明は、このメッシュの側部の一部に非突出セクションを有する(すなわち突出部が、形成されていないか、平滑化されているか、丸められているか、または除去されている)外科用メッシュまたは外科用スリング、そのようなメッシュを作製する方法、そのようなメッシュを備える医療用キット、およびそのようなメッシュを用いて患者の身体の損傷部、弱い部分、降下した部分、ヘルニア様部分または脱出した部分を処置する方法に関する。
【0011】
本発明に従うそのようなスリングの利点としては、そのスリングが組織(例えば、尿道組織および膣組織)と接触する場合の非突出セクション由来の減少された組織の不快感が挙げられるが、このスリングの突出部分周辺の瘢痕組織の迅速な形成を促進することが挙げられる。瘢痕組織の形成は、一般に、そのスリングが適用される組織(例えば、尿道)を加圧する大きな塊を与え、患者の節制の改善の補助を提供し、そして配置されたスリングの配置後の移動を防ぐ(inhibit)かまたは防ぐ(prevent)。
【0012】
1つの局面において、本発明は、医療適用に使用するためのスリングを含む。このスリングは、垂直軸にそって(反対側かつ互いに離れて配置されている)、第1の端部および第2の端部を備えるメッシュ材料から作製される。このメッシュ材料はまた、第1の側部および第2の反対側の側部も含み、この第2の反対側の側部は、その長手方向軸に垂直である軸か、またはその長手方向軸に実質的に垂直な軸に沿って有る距離だけ離れている。この垂直軸は、この垂直軸の中点、または実質的中点、でこの長手方向軸を横切る。この材料の第1の側部および第2の側部ならびにこの第1の端部およびに第2の端部のうちの一部分は、突出部を含む。この第1の側部および第2の側部のうちの一部分は、突出部を含まず(例えば、第1の側部および第2の側部上の突出部は、形成されていないか、平滑化されているか、丸められているか、または除去されている)非突出セクションを作製する。この第1および第2の側部は、各々が、例えば、その長手方向軸上の中央にある約1cm〜約5cmの長さの非突出セクションを有する。
【0013】
本発明のスリングは、医療適用に適する形状を有し得(例えば、このスリングは、長方形または実質的長方形であり得る)。あるいは、このスリングは、八角形、六角形、台形、楕円形、またはこのスリングの意図される体内の配置位置に適する他の形態であり得る。
【0014】
別の局面において、本発明は、非突出セクションを用いて直接製造するか、またはこのスリングの一部の突出部を平滑化するか、丸めるか、もしくは除去して非突出セクションを作製することによってスリングを作製する方法に関する。
【0015】
提供されるスリング材料は、合成材料から誘導され得るかまたは哺乳動物組織と合成材料との組み合わせから誘導され得る。このスリングを作製する方法は、このスリングが種々の医療適用における使用に適するように、当該分野において公知の方法に従ってスリング材料を滅菌する工程をさらに包含し得、そしてこのスリングを滅菌ホルダー中に包装する工程を含み得る。このスリング材料は、このスリングの操作を補助するためおよび/または外科的配置の間にこのスリングを調整するためにスリーブ内に包含され得るか、あるいは、このスリングを、この患者の体内での配置の前の操作に起因する伸長または歪みを防ぐためにこのスリーブで包理される。
【0016】
なお別の局面において、本発明は、非突出セクションを有するスリングを用いて患者の身体の損傷部分を処置する方法を含む。このスリングは、その垂直軸が患者の身体の一部(例えば、尿道中央、膀胱、直腸、膣、血管、神経、心臓など)に実質的に沿うように、患者の身体の内側に配置される;この材料は、その周辺の組織を侵食しない様式でこの患者の身体の一部分を保持する。このスリングは、このスリングの垂直軸をガイドとして用いて患者の身体の損傷部分で中央にあり得る。圧力は、この固定されたスリング材料を用いて患者の身体の部分で均一に分散され得る。外科用ファスナー(例えば、縫合、クリップ、骨固定、ステープル、または他の適切なファスナー)は、解剖学的構造にこのスリングを固定するために使用され得る。
【0017】
このスリング材料は、女性の尿失禁を処置するために、経膣的手順、経腹腔手順、または経膣的手順および経腹腔手順の組み合わせに従って移植され得る。例えば、この方法は、SUIに罹患した患者を処置するために使用され得、このスリングの非突出セクションは、この患者の尿道中央の隣接して配置され得る。
より特定すれば、本発明は以下の項目に関し得る。
(項目1)
医療適用に使用するためのスリングであって、上記スリングが、以下:
(a)第1の端部および第2の端部であって、上記第2の端部が、長手方向軸に沿って上記第1の端部の反対側かつ上記第1の端部と離れて配置されている、第1の端部および第2の端部;ならびに
(b)第1の側部および第2の側部であって、上記第2の側部が上記長手軸方向軸に実質的に垂直である軸に沿って、上記第1の側部の反対側かつ上記第1の側部とある距離だけ離れて配置されており、配置されており、上記第1の側部および上記第2の側部の一部が、非突起部分である、第1の側部および第2の側部
を含む材料を備える、スリング。
(項目2)
項目1に記載のスリングであって、上記第1の側部および上記第2の側部の上記非突起部分が約3cmでありかつ上記垂直軸を中心とする、スリング。
(項目3)
項目2に記載のスリングであって、上記第1の側部および上記第2の側部の上記非突起部分が約1cmでありかつ上記垂直軸を中心とする、スリング。
(項目4)
項目3に記載のスリングであって、上記第1の側部および上記第2の側部の上記非突起部分が約0.5cmでありかつ上記垂直軸を中心とする、スリング。
(項目5)
項目1に記載のスリングであって、上記非突起セクションが、熱平滑化される、スリング。
(項目6)
項目1に記載のスリングであって、第1の側部部分および第2の側部部分が、突起部分である、スリング。
(項目7)
項目1に記載のスリングであって、視覚的ガイドとして、上記垂直軸の少なくとも1部分に実質的に沿って配置された可視線をさらに備える、スリング。
(項目8)
項目7に記載のスリングであって、上記線が、外科的インクを含む、スリング。
(項目9)
項目1に記載のスリングであって、上記材料が、合成材料を含む、スリング。
(項目10)
項目9に記載のスリングであって、上記合成材料が、ナイロンポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、フルオロポリマーまたはそれらのコポリマーのうちの少なくとも1つである、スリング。
(項目11)
項目1に記載のスリングであって、上記材料が、実質的に長方形の形状を有する、スリング。
(項目12)
項目1に記載のスリングであって、上記スリングが、内部表面および外部表面を備えるスリーブによって囲まれている、スリング。
(項目13)
スリングを作製する方法であって、上記方法は、以下の工程:
医療適用に適する形状の材料を提供する工程であって、上記材料が、(a)第1の端部および第2の端部であって、上記第2の端部が、長手方向軸に沿って上記第1の端部の反対側かつ上記第1の端部と離れて配置されている、第1の端部および第2の端部、ならびに(b)第1の側部および第2の側部であって、上記第2の側部が、上記長手軸方向軸に実質的に垂直である軸に沿って上記第1の側部の反対側かつ上記第1の側部とある距離だけ離れて配置されており、そして上記垂直軸が、上記長手方向軸をその実質的中点で横切る、第1の側部および第2の側部、ならびに(c)上記第1の側部および上記第2の側部から突き出た突起部分を含む、工程;ならびに
上記第1の側部および上記第2の側部の一部に沿った上記突起部分を平滑にするか、丸めるか、または除去して、各々の側部上に非突起部分を形成させる工程、
を包含する、方法。
(項目14)
項目13に記載の方法であって、上記平滑化工程が、熱処理によって達成される、方法。
(項目15)
スリングを用いて患者の身体の損傷部分を処置する方法であって、患者に、以下:
(a)第1の端部および第2の端部であって、上記第2の端部が、長手方向軸に沿って上記第1の端部の反対側でかつ上記第1の端部と離れて配置されている、第1の端部および第2の端部、ならびに
(b)第1の側部および第2の側部であって、上記第2の側部が、上記長手軸方向軸に実質的に垂直である軸に沿って上記第1の側部の反対側でかつ上記第1の側部とある距離だけ離れて配置されており、そして、上記第1の側部および上記第2の側部の一部が、非突起部である、第1の側部および第2の側部、
を含む材料を、患者の身体の損傷部分から挿入する工程を包含する、方法。
(項目16)
項目15に記載の方法であって、上記スリングが、上記スリングの上記垂直軸をガイドとして用いて、上記患者の身体の上記損傷部の中央に配置される、方法。
(項目17)
項目15に記載の方法であって、上記患者の身体の上記損傷部上で圧力が均等に分散される、方法。
(項目18)
項目15に記載の方法であって、上記患者が、腹圧性尿失禁に罹患している、方法。
【0018】
(説明)
図1を参照すると、本発明に基づく、スリング20は、1つ以上の材料22から作製され得、そして第1端部24および第2端部26を含む。この第2端部26は、長手方向軸28に沿って、第1端部24とは反対側に、離れて配置される。この材料22はまた、第1の側部30および第2の側部32を備える。この第2の側部32は、垂直軸34に沿って、第1の側部30とは反対側に、離れて配置される。この軸34は、長手方向軸28に対して垂直であるか、または実質的に垂直であり、そしてこの軸28の中点でまたは実質的に中点で、長手方向軸28と交わる。このスリング20の長手方向軸28は、約2.5cm〜約45cmの範囲の長さであり得、一方、垂直軸34は、約1.0cm〜約3.0cmの範囲であり得る。このスリングは、好ましくは20〜30cmの長さ、そして1〜3cmの幅であるが、患者のサイズおよび補助を必要とする体の部分の表面積に依存して、より大きいスリングおよびより小さいスリングが、意図され得る。
【0019】
スリング20およびスリング21は、図1に示されるように、長方形、または実質的に長方形の形状(例えば、8角形)であり得る。あるいは、このスリングは、その意図される体の中の配置部位に適する、別の形状(例えば、台形、6角形、または楕円形)を有し得る。例示的な形状は、米国特許第6,042,534号に記載されており、この開示は、本明細書中に参考として援用される。
【0020】
スリング材料22の厚さは、この材料の全ての部分にわたり均一であり得るか、またはこの厚さは、1つ以上の異なる位置で変動し得る。スリング材料22の厚さは、約0.02〜約0.10cmの範囲であり得るが、代表的には、約0.07cmであり、そして均一の厚さを有する。材料の構成は、材料の厚さおよび均一性に影響し得る;例えば、ウィーブ(weave)は、繊維が交差するより厚い領域を有し得る。
【0021】
メッシュは、多数のニット、ウィーブまたは組みひも(braid)のいずれかを有し得、例えば、これらは、米国特許第5,569,273号;同第5,292,328号;同第5,002,551号;同第4,838,884号;同第4,655,221号;同第4,652,264号;同第4,633,873号;同第4,520,821号;同第4,452,245号;4,347,847号;同第4,193,137号;同第5,124,136号;同第3,054,406号;および同第2,671,444号において記載され、これらの開示は、本明細書中において、参考として援用される。
【0022】
メッシュ材料は、多数の生体適合性材料(例えば、ナイロン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、フルオロポリマー、これらのコポリマー、これらの組み合わせ、または他の適切な合成材料)のいずれかから製造され得る。この材料は、例えば、患者の身体により吸収され得る合成材料であり得る。適切な吸収性合成材料として、ポリグルコール酸、ポリ乳酸、および他の適切な吸収性合成材料が挙げられる。メッシュ材料は、1つ以上のヤーン(yarn)から製造され得、このヤーンは、1つ以上の材料から作製され得る。メッシュは、多数の製造プロセスに基づいて製造され得、そして、巨大な間隙空間を有することによって、急速な組織血管再生および組織内増殖を可能とするように設計され得る。例えば、メッシュの各ヤーンは、ヤーンフィラメントの間に間隙領域を有し得、そして、製造プロセスは、クレバスを生成し得る。例示的なウィーブは、図2において説明されるように、針1つあたり2つのヤーンを有するトリコット(tricot)ニットである。好ましい実施形態において、このメッシュは、ポリプロピレンモノフィラメントヤーンから構成される。
【0023】
吸収性合成材料はまた、本発明に従う使用のために適切であり得る。このような吸収性合成材料として、例えば、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、および他の適切な吸収性合成材料が挙げられる。適切なPGA材料は、TYCOから商品名(trade designation)DEXONとして入手可能である。他の適切な重合体のおよび非重合体の合成材料は、本発明に従って使用され得る。上記のような例示的な材料は、米国特許第6,090,116;同第5,569,273号;同第5,292,328号;同第4,633,873号;同第4,452,245号;同第4,347,847号;3,124,136号;同第3,054,406;および同第2,671,444号ならびにInglesia C.B.ら、(1997)Int.Urogynecol.J.8:105−115、において見出され、これらの開示の全てが、本明細書中に参考として援用される。
【0024】
あるいは、スリング材料22は、哺乳動物組織と合成材料との組み合わせに由来し得る。哺乳動物組織の供給源は、例えば、ヒト、ヒトの死体または組織加工されたヒト組織であり得る。あるいは、哺乳動物組織は、ブタ組織供給源、ヒツジ組織供給源、ウシ組織供給源およびウマ組織供給源のような動物供給源由来であり得る。このような組み合わせはまた、合成ポリマーおよび動物細胞(この動物細胞は、コラーゲンまたは他の一般的な動物細胞の抗原性繊維を架橋するために処置される)の両方を含む材料を含有し得る。1つの実施形態において、患者の組織と接触するスリングのメッシュ部分の少なくとも一部は、突出部の滑らかさに必要な合成材料を含む。
【0025】
この突出部(すなわち、鋭い突起またはほつれた縁部)40は、材料22が、切断されるか、切られる(chop)か、引き裂かれるか、ほつれるか、またはそのほかの方法で加工される場合に形成され、材料22の任意の縁部に沿って存在し得る。突出部40は、概して材料22への組織の増殖を促すために有用である。しかし、スリング20が患者の体内に挿入される場合、いくつかの突出部40は、隣接する組織を蝕み得ることが見出される。従って、側部30および側部32に配置される突出部40の一部は(例えば、いくつかの実施形態において、垂直軸34のどちらかの側部の約1cm〜約5cmの範囲内である)、非突出セクション42を形成するために、形成されないか、平滑化されるか、丸くされるか、または除去される。これらの刺激性の突起を除去することによって、これらは尿道壁および前膣壁に極めて近接し、侵食効果が減じられる。
【0026】
図1の参照を続けて、スリングの1つの形態において、線36は、長方形スリング20の垂直軸34に沿って配置される。この線36は、例えば、材料22の垂直軸34に沿って外科用インクを適用することにより形成される。好ましくは、側部30および側部32の非突出セクション42のおおよその中点は、線36と交差する。従って、線36は、患者の身体のうち支持のためにスリング20が使用された部分と、非突出セクション42とを均一に並べるための目に見えるガイドとして使用され得る。
【0027】
突出部40の鋭い端部を取り除くために、突出部40を平滑化するか、丸くするか、または除去する任意のプロセスが、適切である。例えば、突出部40は、加熱して焼くかまたは融かすことによって、平滑化される。このような加熱プロセスは、図2に最も適切に示されるように、鋭い突出部40の融解を引き起こし、織り目(woven knot)44に戻し、非突出セクション42を形成する。この非突出セクション42は、側部30および側部32の両方に配置され得、例えば、垂直軸34のいずれかの側部の約1〜4cmを占める。この突出部は、例えば、メッシュ材料の側端部に沿って5cm、6cm、7cm、8cm、9cmまたは10cmの部分が、除去され得る。
【0028】
材料22から本発明のスリング20を作製する例示的な方法は、例えば、スリング材料22を製造する工程、および垂直軸34に隣接する側部30および側部32の材料22の部分にスリング材料22を作製する工程および非突出セクション42を形成する工程を包含する。このスリング20は、スリング材料22のより大きな断片を適切な大きさに切断することにより形成され得る。側部30および側部32の各々の一部の上の突出部40は、非突出セクション42を形成するために、形成されないか、平滑化されるか、丸くされるか、または除去される(例えば、織り目に)。非突出セクション42は、約4cmまでの長さを有して、側部30および側部32のセグメントにわたり得るが、通常は、少なくとも約1cmであり、このセグメントは、好ましくは、垂直軸34の中心にある。代替の実施形態において、非突出セクション42は、5cm、6cm、7cm、8cm、9cmまたは10cmの長さを有して、側部30および側部32のセグメントにわたり得る。方法の1つの型において、突出部40は、この突出部を熱の供給源に曝露すること(すなわち、熱の供給源を突出部と接触させることによってか、または熱の供給源を突出部に近づけることによって)によって、平滑化されるか、丸くされるか、または除去される。代替の方法において、直線的な刃の端部(これは、突出部40を同時に切断および平滑化するために十分な温度に加熱される)が、使用され得る。
【0029】
スリング20は、本願と同時に出願された米国特許出願の表題「System for
Implanting an Implant」に記載されるように(これは、その全てが、参考として本明細書中に援用される)、スリーブまたは外被によって取り囲まれるかまたは包囲される得る。同時出願はまた、包皮に包囲されるスリングを取り付けるための方法を包含する。
【0030】
図1に関係して、スリング20は、患者の体内への移植に先立って所定の薬物に予漬され得る。例示的な薬物として、一般的には、ネオマイシン、サルファ剤、抗菌物質、および抗生物質が挙げられる。いくつかの実施形態において、親水性材料、薬物、組み合わせて使用される場合はその両方が、接触した場合に患者の組織に薬物を放出する。従って、スリング20に接触されそして挿入される場合、患者の組織の表面に送達される薬物は、外科デバイスの移植の間、患者の組織と接触して、活性である。
【0031】
あるいは、スリング20は、非水和性(non−wettable)材料(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、TYVEK(登録商標)、MYLAR(登録商標)またはそれらのコポリマー)から作製される。本発明に基づく使用のために適切な、ポリテトラフルオロエチレンは、DuPont(Wilmington,Delaware,商品名TEFLON(登録商標))から入手可能である。このような、非水和性材料は、いかなる溶液(例えば、溶液中の薬剤)も取り込まない。薬剤をこれらの非水和性材料の表面に結合させるかまたは吸収させることを可能にするため、スリング20は、例えば、水和性コーティング組成物のような、水和性の物質を用いて処理され得る。この水和性コーティング組成物は、合成のコーティング(例えば、ポリビニルピロリドン(polyvinylperilidone)すなわちPVP)、天然のコーティング(例えば、コラーゲン)または物理的に吸水性の材料(例えば、セルロースを含むスポンジまたは連続気泡(open celled)ポリウレタン)であり得る。水和性コーティング組成物は、親水性薬物を取り込むかまたは吸収するために、親水性であり得る。適切な親水性コーティングは、水溶性であり得、そして、例として、Hydroplus(Boston Scientific Corp.,Natick,MA)、Hydropass(Boston Scientific Corp.,Natick,MA)、硫酸ヒヨスチアミン(hyoscymine sulfate)(これは、Polymedica(Woburn,MA)から商品名CYTOSPAZとして入手可能である)、およびケトロダックフロメタミン(ketrodac fromethamine)(これは、Roche Pharmaceuticals(Nutley,NJ)から商品名Toradolとして入手可能である)が挙げられる。本発明に基づいて使用され得る親水性薬物として、例えば、塩酸オキシブチニン、リドカイン、ケトロラクおよび硫酸ヒヨスチアミン(hyoscymine)が挙げられる。
【0032】
同様に、疎水性コーティングが、スリング20の1つ以上の表面に使用され得る。適切な疎水性コーティングは、限定しないが、本発明に基づいて使用され得る疎水性コーティングを含み、例として、ポリテトラフルオロエチレン、ケイ素、およびPyreleneが挙げられる。このような疎水性コーティングは、疎水性薬物と組み合わせて使用され得、そして疎水性薬物を吸収する。適切な疎水性薬物は、限定しないが、適切な疎水性薬物を含み、例として、親水性形態中のイブプロフェン、ケトプロフェン、ジクロフェナク、およびリドカインが挙げられる。これらのコーティングと薬物との間の結合が弱い場合、吸収される薬物は、容易に放出され、それが接触する表面に送達される。あるいは、より強い結合親和性は、薬物のより遅い徐放を提供し得る。
【0033】
スリング20の表面に適用されるコーティングがイオン電荷を有する場合、相補的な電荷を含む薬物は、コーティングおよび薬物が、互いに曝露される場合、コーティングに結合する。任意の結合の強度は、薬物がどの程度容易にスリング20の表面から放出されるかに影響する。コーティングと薬物との間のイオン結合が弱い場合、薬物はより急速に放出される。急速な薬物の放出が所望される実施形態において、表面コーティングと薬物との間の共有結合は、避けるべきである。
【0034】
あるいは、スリング20は、親水性コーティング75によってコーティングされ得る。親水性コーティング75によってコーティングされたスリング20は、手術の直前に親水性薬物を含有する溶液に浸され得る。別の実施形態において、親水性コーティングおよび親水性薬物は、混合されて単一のコーティングを形成する。このコーティングは、スリング20の表面に配置され得る。
【0035】
例えば、女性の緊張性尿失禁を処置するためのスリングの送達および取付けの方法は、経腟的、経腹腔的(transabdominal)(経皮の)、および経腟的手順および経腹腔的手順の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
本明細書中に記載される事項の変化、改変および他の実施は、当業者によって、本発明の精神および範囲から逸脱することなく行われる。従って、本発明は、前記の例示的な記載に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図面において、同じ参照番号は、一般に、異なる図にわたり同一の部分を示す。これらの図面は、必ずしも大きさが比例してなく、むしろ、本発明の本質を例示する。
【図1】図1は、垂直軸のどちらかの側部に非突出セクション(non−tanged section)を備えるスリングの長方形の実施形態の平面図である。
【図2】図2は、非突出セクションを備えるスリング材料の拡大図である。
【符号の説明】
【0038】
20 スリング
22 スリング材料
24 第1の端部
26 第2の端部
28 長手方向軸
30 第1の側部
32 第2の側部
34 垂直軸
36 線(視覚的ガイド)
40 突出部
42 非突出セクション
44 織り目

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スリングを用いて患者の身体の損傷部分を処置する方法であって、患者に、以下:
(a)第1の端部および第2の端部であって、該第2の端部が、長手方向軸に沿って該第1の端部の反対側でかつ該第1の端部と離れて配置されている、第1の端部および第2の端部、ならびに
(b)第1の側部および第2の側部であって、該第2の側部が、該長手軸方向軸に実質的に垂直である軸に沿って該第1の側部の反対側でかつ該第1の側部とある距離だけ離れて配置されており、そして、該第1の側部および該第2の側部の一部が、非突起部である、第1の側部および第2の側部、
を含む材料を、患者の身体の損傷部分から挿入する工程を包含する、方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−45469(P2009−45469A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−224169(P2008−224169)
【出願日】平成20年9月1日(2008.9.1)
【分割の表示】特願2002−570896(P2002−570896)の分割
【原出願日】平成14年3月7日(2002.3.7)
【出願人】(500332814)ボストン サイエンティフィック リミテッド (627)
【Fターム(参考)】