医療用デバイス
【課題】ガイドワイヤに対して回転力を与える機能を備え、かつガイドワイヤの端部をカテーテルの開口部に挿入する機能をも備えることで作業に優れる医療用デバイスを提供する。
【解決手段】ガイドワイヤ3に回転力を付与可能に当該ガイドワイヤ3と連結可能なガイドワイヤ連結部1と、カテーテル4を連結可能であって前記ガイドワイヤ連結部1と相対的に近接離間可能なカテーテル連結部2と、を有する医療用デバイスである。
【解決手段】ガイドワイヤ3に回転力を付与可能に当該ガイドワイヤ3と連結可能なガイドワイヤ連結部1と、カテーテル4を連結可能であって前記ガイドワイヤ連結部1と相対的に近接離間可能なカテーテル連結部2と、を有する医療用デバイスである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガイドワイヤに対して回転力を与える医療用デバイスと、ガイドワイヤの端部をカテーテルの開口部に挿入する医療用デバイスとに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、血管を介して生体内の治療等を行うためにカテーテルが用いられており、血管に導入されたカテーテルを目的位置へ導くために、ガイドワイヤが使用される。ガイドワイヤは、通常、経皮的に血管に導入されたシースを通って血管内へ挿入され、回転操作や進退操作を体外側で行いつつ目的位置へ押し進められる。このため、ガイドワイヤの回転操作や進退操作を容易にするために、ガイドワイヤの体外側の端部に、術者が指で把持するための回転力付与器具(トルクデバイス)を連結する手法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
そして、ガイドワイヤが目的位置まで到達すると、ガイドワイヤの体外側の端部を、カテーテルの先端側の開口部に挿入し、カテーテルをガイドワイヤに沿って目的位置まで押し進めることができる。そして、ガイドワイヤの端部に回転力付与器具が連結されている場合には、回転力付与器具を取り外した後にガイドワイヤをカテーテルの開口部に挿入することになるが、カテーテルの開口部は非常に小さいため、挿入操作は容易ではない。このため、カテーテルの開口部にガイドワイヤの端部を挿入するための導入補助具(インサータ)が知られている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2に記載の導入補助具は、カテーテルの先端部を溝に固定し、広い導入口から徐々に縮径する漏斗状の導入部からガイドワイヤを挿入して、カテーテルの小径の開口部にガイドワイヤを導く構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−173465号公報
【特許文献2】特開2009−189386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ガイドワイヤから回転力付与器具を外した後に、導入補助具を用いてガイドワイヤをカテーテルの開口部に挿入することは、作業が煩雑であり作業性が優れない。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、ガイドワイヤに対して回転力を与える機能を備え、かつガイドワイヤの端部をカテーテルの開口部に挿入する機能をも備えることで作業に優れる医療用デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明の医療用デバイスは、ガイドワイヤに回転力を付与可能に当該ガイドワイヤと連結可能なガイドワイヤ連結部と、カテーテルを連結可能であって前記ガイドワイヤ連結部と相対的に近接離間可能なカテーテル連結部と、を有する医療用デバイスである。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る医療用デバイスは、ガイドワイヤに回転力を付与可能に連結可能なガイドワイヤ連結部が設けられるため、ガイドワイヤに回転力を付与して操作することができる。更に、本医療用デバイスは、カテーテルを連結してガイドワイヤ連結部と相対的に近接離間可能なカテーテル連結部が設けられるため、ガイドワイヤ連結部に固定されたガイドワイヤをカテーテル連結部に連結されたカテーテルに近接させ、カテーテルの開口部にガイドワイヤを容易に挿入することができ、作業性に優れる。
【0009】
前記ガイドワイヤ連結部が、前記ガイドワイヤに対して近接または離間することで当該ガイドワイヤを把持または開放可能であるとともに、前記ガイドワイヤ連結部およびカテーテル連結部の近接移動によって前記ガイドワイヤを開放する把持部を有すれば、ガイドワイヤ連結部およびカテーテル連結部の近接移動に連動してガイドワイヤを開放でき、操作性が向上する。
【0010】
前記ガイドワイヤ連結部が、前記把持部から延びて前記ガイドワイヤを収容可能なガイドワイヤ収容溝を有し、前記カテーテル連結部が、前記カテーテルを収容して保持可能であって前記ガイドワイヤ収容溝と同軸上に延びるカテーテル収容溝を有し、前記ガイドワイヤ連結部およびカテーテル連結部が、前記ガイドワイヤ収容溝およびカテーテル収容溝の延在方向に沿って近接離間可能であれば、ガイドワイヤ収容部にガイドワイヤを収容し、カテーテル収納溝にカテーテルを収容した状態でガイドワイヤ連結部およびカテーテル連結部を近接させることで、カテーテルにガイドワイヤを挿入することができる。
【0011】
前記把持部が、前記ガイドワイヤに対して近接または離間することで当該ガイドワイヤを把持または開放可能な把持部材と、前記把持部材を付勢する弾性部材と、を有し、前記把持部材は、前記弾性部材による弾性力によって前記ガイドワイヤに接する接触部と、前記ガイドワイヤ連結部およびカテーテル連結部の近接移動によって力を受けて前記接触部を前記ガイドワイヤから離間させる受け部と、を有すれば、弾性部材による弾性力を利用して接触部によりガイドワイヤを把持しつつ、ガイドワイヤ連結部およびカテーテル連結部の近接移動に連動させて接触部を離間させてガイドワイヤを開放することができ、作業性が向上する。
【0012】
前記把持部材が、回転軸部によって互いに回転可能に連結される一対で構成され、各々の前記把持部材の前記回転軸部を挟んで一端側に前記接触部が形成され、各々の前記把持部材の前記回転軸部を挟んで他端側に前記受け部が形成されれば、受け部を押圧することで、接触部をガイドワイヤから離間させることができる。
【0013】
前記カテーテル連結部が、前記ガイドワイヤ連結部に近接することで前記受け部を前記ガイドワイヤが収容される方向に向かって押圧する押圧部を更に有し、前記把持部材が、前記受け部が押圧されることで前記回転軸部を中心に回転して前記接触部が前記ガイドワイヤから離間するようにすれば、カテーテル連結部とガイドワイヤ連結部の近接に連動して受け部を押圧して、接触部をガイドワイヤから離間させることができる。
【0014】
前記カテーテル連結部が、前記ガイドワイヤ連結部に近接することで前記受け部を前記ガイドワイヤが収用される方向と反対方向に向かって押圧する押圧部を更に有し、前記把持部材が、前記受け部が押圧されることで前記回転軸部による連結が解除されるとともに前記接触部が前記ガイドワイヤから離間するようにすれば、カテーテル連結部とガイドワイヤ連結部の近接に連動して受け部を押圧して、接触部をガイドワイヤから離間させることができる。
【0015】
前記ガイドワイヤ連結部とカテーテル連結部の相対的な移動を拘束する拘束部を更に有するようにすれば、ガイドワイヤをガイドワイヤ連結部に連結した状態でガイドワイヤに回転力を付与する回転力付与器具として使用しやすくなり、更には、ガイドワイヤ連結部とカテーテル連結部を近接させた状態を維持することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態に係る医療用デバイスの平面図である。
【図2】図1のA−A線に沿う矢視図である。
【図3】図1のB−B線に沿う矢視図である。
【図4】図1のC−C線に沿う矢視図である。
【図5】図1のD−D線に沿う断面図である。
【図6】図2のE−E線に沿う断面図である
【図7】第1実施形態に係る医療用デバイスを回転力付与器具として使用する際を示す平面図である。
【図8】ガイドワイヤ連結部とカテーテル連結部を近接させた際を示す、図2のE−E線に対応する断面図である。
【図9】ガイドワイヤ連結部とカテーテル連結部を離間させた際を示す、図2のE−E線に対応する断面図である。
【図10】ガイドワイヤ連結部からガイドワイヤを取り出す際を示す、図2のE−E線に対応する断面図である。
【図11】図10のF−F線に沿う矢視図である。
【図12】カテーテルのハブ部から導出されるガイドワイヤを医療用デバイスにより把持した際を示す平面図である。
【図13】本発明の第2実施形態に係る医療用デバイスの平面図である。
【図14】図13のG−G線に沿う矢視図である。
【図15】図13のH−H線に沿う矢視図である。
【図16】図13のI−I線に沿う矢視図である。
【図17】図14のJ−J線に沿う断面図である。
【図18】第2実施形態に係る医療用デバイスのガイドワイヤ連結部とカテーテル連結部を近接させた際を示す、図14のJ−J線に対応する断面図である。
【図19】第1実施形態の把持部の他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上、誇張されて実際の比率とは異なる場合がある。
【0018】
<第1実施形態>
本発明の第1の実施形態に係る医療用デバイスは、ガイドワイヤ3に対して回転力を与える回転力付与器具(トルクデバイス)としての機能と、ガイドワイヤ3の端部をカテーテル4の開口部に挿入する導入補助具(インサータ)としての機能とを併せ持つデバイスである。
【0019】
本医療用デバイスは、図1〜6に示すように、ガイドワイヤ3の基端の近傍を連結可能なガイドワイヤ連結部1と、カテーテル4の先端を連結可能なカテーテル連結部2とを備えており、ガイドワイヤ連結部1とカテーテル連結部2とは、相対的に近接離間可能に連結されている。なお、先端とは、使用の際に血管内に挿入される側に位置する端部(図1の左側)を示し、基端とは、使用の際に操作する術者側に位置する端部(図1の右側)を示す。
【0020】
ガイドワイヤ連結部1は、カテーテル連結部2と摺動可能な基台10と、基台10上に配置されてガイドワイヤ3を把持する把持部20とを備えている。基台10には、ガイドワイヤ3を収容可能に先端から基端へ延びるガイドワイヤ収容溝11が側方へ開いて形成されており、このガイドワイヤ収容溝11が形成される面に、把持部20が配置されている。なお、側方とは、医療用デバイスに連結されるガイドワイヤ3およびカテーテル4の軸方向と直交する方向を示す。
【0021】
把持部20は、いわゆる“洗濯ばさみ”様の構造を備えており、ガイドワイヤ3に接触して把持する一対の把持部材21A,21Bと、把持部材21A,21Bがガイドワイヤ3を押圧するように把持部材21A,21Bを付勢する弾性部材22とを備えている。
【0022】
この把持部材21A,21Bは、略中央に設けられる回転軸部23によって互いに回転可能に連結される。一方の把持部材21Aには、所定厚さの円弧状の軸部23Aが形成され、他方の把持部材21Bには、所定厚さの軸部23Aを挟むように保持し、かつ軸部23Aの円弧面を摺動可能に受ける円弧状の軸受部23Bが溝形状で形成されている(図10参照)。これにより、一対の把持部材21A,21Bは、軸受部23B内で軸部23Aが回転可能であるとともに、軸部23Aを軸受部23Bから離間させることで、把持部材21A,21B同士を分離することが可能である。
【0023】
各々の把持部材21A,21Bの回転軸部23を挟んで一端側(先端側)には、ガイドワイヤ3と接する接触部24A,24Bが形成され、各々の把持部材21A,21Bの回転軸部23を挟んで他端側(基端側)には、カテーテル連結部2が近接することで力を受ける受け部25A,25Bが形成される。
【0024】
弾性部材22は、弾性材料からなる円弧状の線材であり、各々の把持部材21A,21Bを回転軸部23よりも受け部側で貫通し、各々の端部が、各々の把持部材21A,21Bの回転軸部23よりも接触部側を互いに近接する方向(ガイドワイヤ3に近接する方向)へ押圧している。一対の受け部25A,25Bを近接させるように押圧すると、弾性部材22による押圧力に抗して、接触部24A,24B同士を離間させることができる。そして、弾性部材22の中央部は、基台10のガイドワイヤ収容溝11の底面に形成されて弾性部材22を覆う弾性部材固定部12に固定される。すなわち、弾性部材22は、ガイドワイヤ収容溝11の底面に形成される弾性部材固定部12を貫通する構成となっている。したがって、ガイドワイヤ3がガイドワイヤ収容溝11に収容される際にも、弾性部材22はガイドワイヤ3よりも下方に位置し、ガイドワイヤ3と干渉しない。把持部材21A,21Bは、弾性部材固定部12でのみ基台10と固定されており、したがって、弾性部材22による押圧力に抗して接触部24A,24B同士を離間させ、更に軸部23Aと軸受部23Bを離間させれば、ガイドワイヤ収容溝11に収容されるガイドワイヤ3を、ガイドワイヤ収容溝11から側方(図11の紙面上方向)に開放することができる。
【0025】
基台10は、樹脂材料により形成されるが、把持部材21A,21Bを保持し、かつカテーテル連結部2との摺動が可能であれば、特に限定されず、例えば金属材料や張り合わせた厚紙等により形成されてもよい。
【0026】
把持部材21A,21Bは、樹脂材料により形成されるが、ガイドワイヤ3を把持する機能を発揮できるのであれば特に限定されず、例えば金属材料や張り合わせた厚紙等により形成されてもよい。
【0027】
基台10および把持部材21A,21Bに適用される樹脂材料(合成樹脂)としては、指で押えた際に、閉塞しない程度の剛性を有する硬質樹脂または準硬質樹脂が好ましく、そのようなものとして、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン)、スチレン系樹脂(ポリスチレン、MS樹脂)、ポリエステル、ポリカーボネート、硬質塩化ビニル樹脂等が好適である。金属材料としては、ステンレス、アルミニウム、銅、鉄、ニッケルチタン等が使用できる。
【0028】
弾性部材22は、金属材料により形成され、ステンレス、アルミニウム、銅、鉄、ニッケルチタン等が好適である。なお、把持部材21A,21Bを付勢する機能を発揮できるように弾性を示すものであれば特に限定されず、例えば上記した基台10および把持部材21A,21Bにも適用可能な合成樹脂や張り合わせた厚紙等により形成されてもよい。
【0029】
カテーテル連結部2は、基台10と摺動して基台10を収容可能な収容部33が内部に形成される本体部材30と、カテーテル4を収容して保持可能なカテーテル収容溝41が形成されるカテーテル保持部材40とを備えている。
【0030】
本体部材30は、ガイドワイヤ連結部1に連結したガイドワイヤ3に回転力を付与するために術者が指で掴む円柱状の円柱部31が先端側に形成され、円柱部31の基端側に、円柱の周方向の一部が切り落とされてカテーテル保持部材40が埋設される円柱基端部32が形成される。円柱部31には、外周面から収容部33まで貫通するスリット34が、先端側から基端側まで延びて形成される。
【0031】
収容部33は、基台10を摺動可能に保持し、かつ基台10に回転力を伝えられるように基台10と非回転的となっている。収容部33は、基台10が先端側に移動した際に基台10を抜け落ちないように保持し、更に回転力付与器具として使用する際に基台10の本体部材30に対する進退動を停止可能な構造であることが好ましい。一例として、図6に示すように、基台10の摺動する面に突出部13を形成し、収容部33に、突出部13の移動を一定範囲内で許容する溝部35を形成することができる。そして、溝部35の先端側に深さの浅い拘束溝部35A(拘束部)を形成し、拘束溝部35Aに突出部13が嵌まることで、基台10を本体部材30に対して拘束することができる。
【0032】
また、収容部33は、把持部材21A,21Bの受け部25A,25Bをも収容可能となっており、カテーテル連結部2とガイドワイヤ連結部1とが相対的に近接移動する際に、受け部25A,25Bが接するテーパ状の押圧部36A,36Bが形成される。押圧部36A,36Bは、基端側へ向かって狭くなるように(押圧部36Aと押圧部36Bの間の距離が小さくなるように)形成されており、したがって、カテーテル連結部2とガイドワイヤ連結部1とが相対的に近接移動すると、押圧部36A,36Bが受け部25A,25Bをガイドワイヤ収容溝11側に向かって押圧し、把持部材21A,21Bの接触部24A,24Bが開くことになる(図8参照)。そして、押圧部36A,36Bには、接触する受け部25A,25Bが弾性部材22の弾性力で先端方向へ滑って戻らないように、微細な凹凸部37(拘束部)を形成が形成される。
【0033】
カテーテル保持部材40は、カテーテル4をカテーテル収容溝41に側方から押し込み、かつ取り出すことが可能な程度に柔軟な材料により形成され、カテーテル4がカテーテル収容溝41に押し込まれると、カテーテル保持部材40の弾性力によってカテーテル4を保持した状態を維持することができる。カテーテル保持部材40には、例えば、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン)、スチレン系樹脂(ポリスチレン、MS樹脂)、ポリエステル、ポリカーボネート、硬質塩化ビニル樹脂等の合成樹脂や、エラストマー等を適用できるが、これに限定されない。
【0034】
そして、基台10のガイドワイヤ収容溝11およびカテーテル収容溝41は、保持するガイドワイヤ3およびカテーテル4の中心軸が同一線上に並ぶように同軸状に並び、ガイドワイヤ収容溝11、カテーテル収容溝41およびスリット34は、いずれも側方への開放する方向が一致している。
【0035】
本体部材30は、樹脂材料により形成されるが、基台10との摺動が可能であり、把持部材21A,21Bの受け部25A,25Bを押圧可能であれば、特に限定されず、例えば金属材料や張り合わせた厚紙等により形成されてもよい。
【0036】
本体部材30に適用される樹脂材料(合成樹脂)としては、指で押えた際に、閉塞しない程度の剛性を有する硬質樹脂または準硬質樹脂が好ましく、そのようなものとして、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン)、スチレン系樹脂(ポリスチレン、MS樹脂)、ポリエステル、ポリカーボネート、硬質塩化ビニル樹脂等が好適である。金属材料としては、ステンレス、アルミニウム、銅、鉄、ニッケルチタン等が使用できる。
【0037】
次に、本実施形態に係る医療用デバイスの作用について説明する。ここでは、ガイドワイヤ3が挿通されるカテーテル4は、マイクロカテーテル4であるものとして説明する。
【0038】
まず、患者の血管に、例えばセルジンガー法によりシース(イントロデューサ)を留置し、シースを通してガイディングカテーテル用の大径(例えば、外径0.035インチ)のガイドワイヤを血管内に挿入する。そして、ガイドワイヤを血管内で押し進めて目的部位(例えば、心臓冠動脈の入口)へ先行させた後、ガイドワイヤに沿ってガイディングカテーテルを血管内で押し進めて目的部位まで押し進める。そして、目的部位に、ガイディングカテーテルを係合させる。この後、ガイディングカテーテルを残してガイディングカテーテル用のガイドワイヤを抜き去る。
【0039】
次に、マイクロカテーテル4用の小径(例えば、外径0.016インチ)のガイドワイヤ3の基端側に、本実施形態に係る医療用デバイスを連結した状態で、ガイドワイヤ3をガイディングカテーテルの基端側から挿入する。このとき、ガイドワイヤ3の基端の近傍は、図7に示すように、基台10のガイドワイヤ収容溝11に収容され、把持部材21A,21Bによって把持され、更に回転軸部23によってガイドワイヤ収容溝11から側方へ離脱不能に保持されている。そして、ガイドワイヤ3の基端側端部は、基台10の基端側端部よりも基端側の収容部33内に位置している。このようにガイドワイヤ3を医療用デバイスに連結するためには、まずガイドワイヤ連結部1とカテーテル連結部2とを離間させ、更に把持部材21A,21Bの受け部25A,25Bを指で押し込んで接触部24A,24B同士を離間させた状態で、ガイドワイヤ3の基端側端部をガイドワイヤ収容溝11の先端側から挿入する。そして、ガイドワイヤ3の基端側端部が基台10を過ぎて収容部33まで到達させた状態で受け部25A,25Bの押し込みを開放し、接触部24A,24Bでガイドワイヤ3を把持した状態とする。なお、ガイドワイヤ3を医療用デバイスに連結する作業は、手技を開始する前に予め行われていることが好ましい。
【0040】
この後、ガイディングカテーテルの先端側から血管内に入り込んだガイドワイヤ3を、医療用デバイスにより回転力を与えて操作しつつ先端方向へ前進させ、目的部位(例えば、冠動脈内部の病変部)へ導く。すなわち、医療用デバイスによって回転力を付与可能にガイドワイヤ3を把持できるため、医療用デバイスを回転力付与器具として使用できる。
【0041】
次に、医療用デバイスのカテーテル収容溝41に、側方からマイクロカテーテル4を押し込んで固定する。このとき、ガイドワイヤ収容溝11とカテーテル収容溝41が同軸上に位置しているため、ガイドワイヤ3とマイクロカテーテル4の開口部が同一線上に位置することになる。そして、基台10を収容部33に収容するようにガイドワイヤ連結部1とカテーテル連結部2を相対的に近接させると、図8に示すように、各々に保持されたガイドワイヤ3とマイクロカテーテル4とが近接し、マイクロカテーテル4の開口部にガイドワイヤ3が挿入される。すなわち、医療用デバイスは、回転力付与器具としての機能を備えるのみならず、マイクロカテーテル4の開口部にガイドワイヤ3の端部を挿入するための導入補助具としての機能をも備えている。したがって、個別の回転力付与器具と導入補助具の両方を使用する必要がなくなり、作業性が向上する。また、ガイドワイヤ連結部1とカテーテル連結部2を相対的に近接させる動作に連動して、マイクロカテーテル4の開口部にガイドワイヤ3の端部を挿入できるため、操作性に優れている。
【0042】
そして、ガイドワイヤ連結部1とカテーテル連結部2とが相対的に近接することで、把持部材21A,21Bに形成される受け部25A,25Bが、収容部33に形成されるテーパ状の押圧部36A,36Bに到達し、ガイドワイヤ3が位置する方向へ向かって押圧部36A,36Bによって押圧される。これにより、把持部材21A,21Bは、弾性部材22に弾性力に抗して回転軸部23を中心に回転し、接触部24A,24B同士が離間して、ガイドワイヤ3の把持が解除される。なお、ガイドワイヤ3の把持が解除される際には、ガイドワイヤ3の基端側端部が、既にマイクロカテーテル4の開口部に挿入されている。そして、押圧部36A,36Bに凹凸部37が形成されているため、ガイドワイヤ連結部1とカテーテル連結部2の近接を停止すると、受け部25A,25Bが押圧部36A,36Bに拘束されて、カテーテル連結部2とガイドワイヤ連結部1の相対的な位置を固定的に維持できる。すなわち、押圧部36A,36Bと受け部25A,25Bは、カテーテル連結部2とガイドワイヤ連結部1の相対的な移動を拘束する拘束部としての機能も果たしている。
【0043】
次に、マイクロカテーテル4を医療用デバイスとともにガイドワイヤ3に対して先端方向へ前進させ、ガイドワイヤ3をマイクロカテーテル4の基端側に形成されるハブ部4Aから導出させる。この後、図9に示すように、カテーテル連結部2とガイドワイヤ連結部1を相対的に離間させ、把持部材21A,21Bを収容部33から突出させる。これにより、接触部24A,24Bが再びガイドワイヤ3を把持することになる。そして、図10,11に示すように、各々の把持部材21A,21Bを反対方向へ捩じり、弾性部材22による押圧力に抗して接触部24A,24B同士を離間させ、更に軸部23Aと軸受部23Bを離間させれば、ガイドワイヤ収容溝11に収容されるガイドワイヤ3を、ガイドワイヤ収容溝11から側方に開放可能となる。そして、この状態で、マイクロカテーテル4の先端部をカテーテル収容溝41から離脱させると、本体部材30のスリット34を介して、ガイドワイヤ3が挿通された状態のマイクロカテーテル4を医療用デバイスから側方へ取り出すことができる。なお、ガイドワイヤ3およびマイクロカテーテル4を医療用デバイスから側方へ取り出すのは、ガイドワイヤ3がマイクロカテーテル4のハブ部4Aから導出する前でもよいが、医療用デバイスから取り出した際に、ガイドワイヤ3がマイクロカテーテル4から離脱しない程度にガイドワイヤ3がマイクロカテーテル4に差し込まれていることが好ましい。
【0044】
この後、図12に示すように、マイクロカテーテル4のハブ部4Aから突出したガイドワイヤ3の基端部に医療用デバイスを移動させて設置し、医療用デバイスを、ガイドワイヤ3に回転力を付与可能な回転力付与器具として再び使用できる。この後、マイクロカテーテル4とガイドワイヤ3を操作して、目的部位の治療を行うことになる。
【0045】
<第2実施形態>
本発明の第2の実施形態に係る医療用デバイスは、把持部材21A,21Bを動作させる構成が、第1実施形態に係る医療用デバイスと異なる。なお、第1実施形態に係る医療用デバイスと同様の機能を有する部位は、同一の符号を付して説明を省略する。
【0046】
第2実施形態に係る医療用デバイスは、図13〜17に示すように、本体部材50の内部の基台10が摺動する収容部53に、テーパ状の押圧部が形成されず、本体部材50の外周面の先端側の縁部に、押圧部56が形成される。そして、把持部材21A,21Bの受け部25A,25Bの互いに対向する面に、凹凸部57(拘束部)が形成されている。把持部材21A,21Bは、弾性部材22がガイドワイヤ収容溝11の下方(溝の深さ方向)に位置しているため、全体として本体部材50の中心から下方へずれて位置している。
【0047】
第2実施形態に係る医療用デバイスにおいて、ガイドワイヤ連結部5とカテーテル連結部6とを離間させた状態で、第1実施形態と同様に把持部20によってガイドワイヤ3を把持すれば、第2実施形態に係る医療用デバイスを、第1実施形態と同様に、回転力付与器具として使用することができる。
【0048】
そして、基台10を収容部53に収容するようにガイドワイヤ連結部5とカテーテル連結部6とを相対的に近接させると、図18に示すように、ガイドワイヤ連結部5およびカテーテル連結部6に保持されたガイドワイヤ3およびマイクロカテーテル4が近接し、マイクロカテーテル4の開口部にガイドワイヤ3が挿入される。すなわち、医療用デバイスが、マイクロカテーテル4の開口部にガイドワイヤ3の端部を挿入するための導入補助具として機能する。
【0049】
そして、ガイドワイヤ連結部5とカテーテル連結部6が相対的に近接することで、把持部材21A,21Bに形成される受け部25A,25Bが、本体部材50に形成される押圧部56に到達し、ガイドワイヤ3から離れる方向へ向かって、すなわち押し広げられるように、押圧部56によって押圧される。このとき、把持部材21A,21Bが本体部材50の中心から下方へずれて位置しているため、受け部25A,25Bが接する押圧部56は、本体部材50の円柱状の外周面の下方側に位置している。このため、カテーテル連結部6とガイドワイヤ連結部5を相対的に近接させると、各々の把持部材21A,21Bの受け部25A,25Bの上方側が大きく開くように押圧部56から力を受けて、各々の把持部材21A,21Bが反対方向へ捩じられ、弾性部材22による押圧力に抗して接触部24A,24B同士が離間し、更に軸部23Aと軸受部23Bが離間する。これにより、ガイドワイヤ3の接触部24A,24Bによる把持が解除されとともに、ガイドワイヤ収容溝11に収容されるガイドワイヤ3を、ガイドワイヤ収容溝11から側方に開放可能となる。すなわち、本医療用デバイスは、ガイドワイヤ連結部5とカテーテル連結部6とを相対的に近接させる動作に連動して、ガイドワイヤ3を側方へ開放可能とすることができ、作業性に優れている。なお、ガイドワイヤ3の把持が解除される際には、ガイドワイヤ3の基端側端部が、既にマイクロカテーテル4の開口部に挿入されている。そして、受け部25A,25Bに凹凸部57(拘束部)が形成されているため、ガイドワイヤ連結部5とカテーテル連結部6の近接を停止しても、押圧部56が受け部25A,25Bに拘束されて、カテーテル連結部6とガイドワイヤ連結部5の相対的な位置を固定的に維持できる。すなわち、押圧部56と受け部25A,25Bは、カテーテル連結部6とガイドワイヤ連結部5の相対的な移動を拘束する拘束部としての機能も果たしている。
【0050】
そして、この状態で、マイクロカテーテル4の先端部をカテーテル収容溝41から離脱させると、本体部材50のスリット34を介して、ガイドワイヤ3が挿通された状態のマイクロカテーテル4を医療用デバイスから側方へ取り出すことができる。
【0051】
第2実施形態に係る医療用デバイスも、回転力付与器具としての機能を備えるのみならず、マイクロカテーテル4の開口部にガイドワイヤ3の端部を挿入するための導入補助具としての機能をも備えている。したがって、回転力付与器具と導入補助具の両方を使用する必要がなくなり、作業性が向上する。また、ガイドワイヤ連結部5とカテーテル連結部6を相対的に近接させる動作に連動して、マイクロカテーテル4の開口部にガイドワイヤ3の端部を挿入できるため、作業性に優れている。
【0052】
なお、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内で種々改変することができる。例えば、ガイドワイヤを把持する把持部の構成は、ガイドワイヤ連結部とカテーテル連結部を相対的に近接させることでガイドワイヤの把持を解除できるのであれば、特に限定されない。したがって、例えば第1実施形態では、把持部材21A,21Bの接触部24A,24Bが先端側に位置して受け部25A,25Bが基端側に位置しているが、逆の構成とすることもできる。また、把持部が、一対の把持部材でガイドワイヤ3を挟む構成ではなしに、1つの把持部材によって押し付けるようにして把持する構成とすることもできる。
【0053】
また、図19は、第1実施形態の把持部の他の例を、ガイドワイヤ3の中心軸と直交する断面図で示しているが、このように、一対の把持部材61A,61Bを互いに離れる方向に弾性部材62により付勢し、鉤形状の接触部64A,64Bにより、ガイドワイヤ3を把持する構造としてもよい。この把持部材61A,61Bでは、押圧部36A,36Bにより把持部材61A,61Bの受け部65を押圧することで、一対の把持部材61A,61Bが互いに近接しつつ鉤形状の接触部64A,64Bが移動し、ガイドワイヤ3の把持が解除されるとともに、ガイドワイヤ収容溝11に収容されるガイドワイヤ3が、ガイドワイヤ収容溝11から側方に開放可能となる。
【0054】
また、カテーテル収容溝41の先端側に、ガイドワイヤ3をカテーテル4の開口部へ挿入しやすくするように、先端側に開いた漏斗形状の導入口を形成してもよい。
【符号の説明】
【0055】
1,5 ガイドワイヤ連結部、
2,6 カテーテル連結部、
3 ガイドワイヤ、
4 カテーテル、マイクロカテーテル、
11 ガイドワイヤ収容溝、
20 把持部、
21A,21B,61A,61B 把持部材、
22,62 弾性部材、
23 回転軸部、
24A,24B,64 接触部、
25A,25B,65 受け部、
35A 拘束溝部(拘束部)、
36A,36B 押圧部、
37,57 凹凸部(拘束部)、
41 カテーテル収容溝。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガイドワイヤに対して回転力を与える医療用デバイスと、ガイドワイヤの端部をカテーテルの開口部に挿入する医療用デバイスとに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、血管を介して生体内の治療等を行うためにカテーテルが用いられており、血管に導入されたカテーテルを目的位置へ導くために、ガイドワイヤが使用される。ガイドワイヤは、通常、経皮的に血管に導入されたシースを通って血管内へ挿入され、回転操作や進退操作を体外側で行いつつ目的位置へ押し進められる。このため、ガイドワイヤの回転操作や進退操作を容易にするために、ガイドワイヤの体外側の端部に、術者が指で把持するための回転力付与器具(トルクデバイス)を連結する手法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
そして、ガイドワイヤが目的位置まで到達すると、ガイドワイヤの体外側の端部を、カテーテルの先端側の開口部に挿入し、カテーテルをガイドワイヤに沿って目的位置まで押し進めることができる。そして、ガイドワイヤの端部に回転力付与器具が連結されている場合には、回転力付与器具を取り外した後にガイドワイヤをカテーテルの開口部に挿入することになるが、カテーテルの開口部は非常に小さいため、挿入操作は容易ではない。このため、カテーテルの開口部にガイドワイヤの端部を挿入するための導入補助具(インサータ)が知られている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2に記載の導入補助具は、カテーテルの先端部を溝に固定し、広い導入口から徐々に縮径する漏斗状の導入部からガイドワイヤを挿入して、カテーテルの小径の開口部にガイドワイヤを導く構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−173465号公報
【特許文献2】特開2009−189386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ガイドワイヤから回転力付与器具を外した後に、導入補助具を用いてガイドワイヤをカテーテルの開口部に挿入することは、作業が煩雑であり作業性が優れない。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、ガイドワイヤに対して回転力を与える機能を備え、かつガイドワイヤの端部をカテーテルの開口部に挿入する機能をも備えることで作業に優れる医療用デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明の医療用デバイスは、ガイドワイヤに回転力を付与可能に当該ガイドワイヤと連結可能なガイドワイヤ連結部と、カテーテルを連結可能であって前記ガイドワイヤ連結部と相対的に近接離間可能なカテーテル連結部と、を有する医療用デバイスである。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る医療用デバイスは、ガイドワイヤに回転力を付与可能に連結可能なガイドワイヤ連結部が設けられるため、ガイドワイヤに回転力を付与して操作することができる。更に、本医療用デバイスは、カテーテルを連結してガイドワイヤ連結部と相対的に近接離間可能なカテーテル連結部が設けられるため、ガイドワイヤ連結部に固定されたガイドワイヤをカテーテル連結部に連結されたカテーテルに近接させ、カテーテルの開口部にガイドワイヤを容易に挿入することができ、作業性に優れる。
【0009】
前記ガイドワイヤ連結部が、前記ガイドワイヤに対して近接または離間することで当該ガイドワイヤを把持または開放可能であるとともに、前記ガイドワイヤ連結部およびカテーテル連結部の近接移動によって前記ガイドワイヤを開放する把持部を有すれば、ガイドワイヤ連結部およびカテーテル連結部の近接移動に連動してガイドワイヤを開放でき、操作性が向上する。
【0010】
前記ガイドワイヤ連結部が、前記把持部から延びて前記ガイドワイヤを収容可能なガイドワイヤ収容溝を有し、前記カテーテル連結部が、前記カテーテルを収容して保持可能であって前記ガイドワイヤ収容溝と同軸上に延びるカテーテル収容溝を有し、前記ガイドワイヤ連結部およびカテーテル連結部が、前記ガイドワイヤ収容溝およびカテーテル収容溝の延在方向に沿って近接離間可能であれば、ガイドワイヤ収容部にガイドワイヤを収容し、カテーテル収納溝にカテーテルを収容した状態でガイドワイヤ連結部およびカテーテル連結部を近接させることで、カテーテルにガイドワイヤを挿入することができる。
【0011】
前記把持部が、前記ガイドワイヤに対して近接または離間することで当該ガイドワイヤを把持または開放可能な把持部材と、前記把持部材を付勢する弾性部材と、を有し、前記把持部材は、前記弾性部材による弾性力によって前記ガイドワイヤに接する接触部と、前記ガイドワイヤ連結部およびカテーテル連結部の近接移動によって力を受けて前記接触部を前記ガイドワイヤから離間させる受け部と、を有すれば、弾性部材による弾性力を利用して接触部によりガイドワイヤを把持しつつ、ガイドワイヤ連結部およびカテーテル連結部の近接移動に連動させて接触部を離間させてガイドワイヤを開放することができ、作業性が向上する。
【0012】
前記把持部材が、回転軸部によって互いに回転可能に連結される一対で構成され、各々の前記把持部材の前記回転軸部を挟んで一端側に前記接触部が形成され、各々の前記把持部材の前記回転軸部を挟んで他端側に前記受け部が形成されれば、受け部を押圧することで、接触部をガイドワイヤから離間させることができる。
【0013】
前記カテーテル連結部が、前記ガイドワイヤ連結部に近接することで前記受け部を前記ガイドワイヤが収容される方向に向かって押圧する押圧部を更に有し、前記把持部材が、前記受け部が押圧されることで前記回転軸部を中心に回転して前記接触部が前記ガイドワイヤから離間するようにすれば、カテーテル連結部とガイドワイヤ連結部の近接に連動して受け部を押圧して、接触部をガイドワイヤから離間させることができる。
【0014】
前記カテーテル連結部が、前記ガイドワイヤ連結部に近接することで前記受け部を前記ガイドワイヤが収用される方向と反対方向に向かって押圧する押圧部を更に有し、前記把持部材が、前記受け部が押圧されることで前記回転軸部による連結が解除されるとともに前記接触部が前記ガイドワイヤから離間するようにすれば、カテーテル連結部とガイドワイヤ連結部の近接に連動して受け部を押圧して、接触部をガイドワイヤから離間させることができる。
【0015】
前記ガイドワイヤ連結部とカテーテル連結部の相対的な移動を拘束する拘束部を更に有するようにすれば、ガイドワイヤをガイドワイヤ連結部に連結した状態でガイドワイヤに回転力を付与する回転力付与器具として使用しやすくなり、更には、ガイドワイヤ連結部とカテーテル連結部を近接させた状態を維持することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態に係る医療用デバイスの平面図である。
【図2】図1のA−A線に沿う矢視図である。
【図3】図1のB−B線に沿う矢視図である。
【図4】図1のC−C線に沿う矢視図である。
【図5】図1のD−D線に沿う断面図である。
【図6】図2のE−E線に沿う断面図である
【図7】第1実施形態に係る医療用デバイスを回転力付与器具として使用する際を示す平面図である。
【図8】ガイドワイヤ連結部とカテーテル連結部を近接させた際を示す、図2のE−E線に対応する断面図である。
【図9】ガイドワイヤ連結部とカテーテル連結部を離間させた際を示す、図2のE−E線に対応する断面図である。
【図10】ガイドワイヤ連結部からガイドワイヤを取り出す際を示す、図2のE−E線に対応する断面図である。
【図11】図10のF−F線に沿う矢視図である。
【図12】カテーテルのハブ部から導出されるガイドワイヤを医療用デバイスにより把持した際を示す平面図である。
【図13】本発明の第2実施形態に係る医療用デバイスの平面図である。
【図14】図13のG−G線に沿う矢視図である。
【図15】図13のH−H線に沿う矢視図である。
【図16】図13のI−I線に沿う矢視図である。
【図17】図14のJ−J線に沿う断面図である。
【図18】第2実施形態に係る医療用デバイスのガイドワイヤ連結部とカテーテル連結部を近接させた際を示す、図14のJ−J線に対応する断面図である。
【図19】第1実施形態の把持部の他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上、誇張されて実際の比率とは異なる場合がある。
【0018】
<第1実施形態>
本発明の第1の実施形態に係る医療用デバイスは、ガイドワイヤ3に対して回転力を与える回転力付与器具(トルクデバイス)としての機能と、ガイドワイヤ3の端部をカテーテル4の開口部に挿入する導入補助具(インサータ)としての機能とを併せ持つデバイスである。
【0019】
本医療用デバイスは、図1〜6に示すように、ガイドワイヤ3の基端の近傍を連結可能なガイドワイヤ連結部1と、カテーテル4の先端を連結可能なカテーテル連結部2とを備えており、ガイドワイヤ連結部1とカテーテル連結部2とは、相対的に近接離間可能に連結されている。なお、先端とは、使用の際に血管内に挿入される側に位置する端部(図1の左側)を示し、基端とは、使用の際に操作する術者側に位置する端部(図1の右側)を示す。
【0020】
ガイドワイヤ連結部1は、カテーテル連結部2と摺動可能な基台10と、基台10上に配置されてガイドワイヤ3を把持する把持部20とを備えている。基台10には、ガイドワイヤ3を収容可能に先端から基端へ延びるガイドワイヤ収容溝11が側方へ開いて形成されており、このガイドワイヤ収容溝11が形成される面に、把持部20が配置されている。なお、側方とは、医療用デバイスに連結されるガイドワイヤ3およびカテーテル4の軸方向と直交する方向を示す。
【0021】
把持部20は、いわゆる“洗濯ばさみ”様の構造を備えており、ガイドワイヤ3に接触して把持する一対の把持部材21A,21Bと、把持部材21A,21Bがガイドワイヤ3を押圧するように把持部材21A,21Bを付勢する弾性部材22とを備えている。
【0022】
この把持部材21A,21Bは、略中央に設けられる回転軸部23によって互いに回転可能に連結される。一方の把持部材21Aには、所定厚さの円弧状の軸部23Aが形成され、他方の把持部材21Bには、所定厚さの軸部23Aを挟むように保持し、かつ軸部23Aの円弧面を摺動可能に受ける円弧状の軸受部23Bが溝形状で形成されている(図10参照)。これにより、一対の把持部材21A,21Bは、軸受部23B内で軸部23Aが回転可能であるとともに、軸部23Aを軸受部23Bから離間させることで、把持部材21A,21B同士を分離することが可能である。
【0023】
各々の把持部材21A,21Bの回転軸部23を挟んで一端側(先端側)には、ガイドワイヤ3と接する接触部24A,24Bが形成され、各々の把持部材21A,21Bの回転軸部23を挟んで他端側(基端側)には、カテーテル連結部2が近接することで力を受ける受け部25A,25Bが形成される。
【0024】
弾性部材22は、弾性材料からなる円弧状の線材であり、各々の把持部材21A,21Bを回転軸部23よりも受け部側で貫通し、各々の端部が、各々の把持部材21A,21Bの回転軸部23よりも接触部側を互いに近接する方向(ガイドワイヤ3に近接する方向)へ押圧している。一対の受け部25A,25Bを近接させるように押圧すると、弾性部材22による押圧力に抗して、接触部24A,24B同士を離間させることができる。そして、弾性部材22の中央部は、基台10のガイドワイヤ収容溝11の底面に形成されて弾性部材22を覆う弾性部材固定部12に固定される。すなわち、弾性部材22は、ガイドワイヤ収容溝11の底面に形成される弾性部材固定部12を貫通する構成となっている。したがって、ガイドワイヤ3がガイドワイヤ収容溝11に収容される際にも、弾性部材22はガイドワイヤ3よりも下方に位置し、ガイドワイヤ3と干渉しない。把持部材21A,21Bは、弾性部材固定部12でのみ基台10と固定されており、したがって、弾性部材22による押圧力に抗して接触部24A,24B同士を離間させ、更に軸部23Aと軸受部23Bを離間させれば、ガイドワイヤ収容溝11に収容されるガイドワイヤ3を、ガイドワイヤ収容溝11から側方(図11の紙面上方向)に開放することができる。
【0025】
基台10は、樹脂材料により形成されるが、把持部材21A,21Bを保持し、かつカテーテル連結部2との摺動が可能であれば、特に限定されず、例えば金属材料や張り合わせた厚紙等により形成されてもよい。
【0026】
把持部材21A,21Bは、樹脂材料により形成されるが、ガイドワイヤ3を把持する機能を発揮できるのであれば特に限定されず、例えば金属材料や張り合わせた厚紙等により形成されてもよい。
【0027】
基台10および把持部材21A,21Bに適用される樹脂材料(合成樹脂)としては、指で押えた際に、閉塞しない程度の剛性を有する硬質樹脂または準硬質樹脂が好ましく、そのようなものとして、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン)、スチレン系樹脂(ポリスチレン、MS樹脂)、ポリエステル、ポリカーボネート、硬質塩化ビニル樹脂等が好適である。金属材料としては、ステンレス、アルミニウム、銅、鉄、ニッケルチタン等が使用できる。
【0028】
弾性部材22は、金属材料により形成され、ステンレス、アルミニウム、銅、鉄、ニッケルチタン等が好適である。なお、把持部材21A,21Bを付勢する機能を発揮できるように弾性を示すものであれば特に限定されず、例えば上記した基台10および把持部材21A,21Bにも適用可能な合成樹脂や張り合わせた厚紙等により形成されてもよい。
【0029】
カテーテル連結部2は、基台10と摺動して基台10を収容可能な収容部33が内部に形成される本体部材30と、カテーテル4を収容して保持可能なカテーテル収容溝41が形成されるカテーテル保持部材40とを備えている。
【0030】
本体部材30は、ガイドワイヤ連結部1に連結したガイドワイヤ3に回転力を付与するために術者が指で掴む円柱状の円柱部31が先端側に形成され、円柱部31の基端側に、円柱の周方向の一部が切り落とされてカテーテル保持部材40が埋設される円柱基端部32が形成される。円柱部31には、外周面から収容部33まで貫通するスリット34が、先端側から基端側まで延びて形成される。
【0031】
収容部33は、基台10を摺動可能に保持し、かつ基台10に回転力を伝えられるように基台10と非回転的となっている。収容部33は、基台10が先端側に移動した際に基台10を抜け落ちないように保持し、更に回転力付与器具として使用する際に基台10の本体部材30に対する進退動を停止可能な構造であることが好ましい。一例として、図6に示すように、基台10の摺動する面に突出部13を形成し、収容部33に、突出部13の移動を一定範囲内で許容する溝部35を形成することができる。そして、溝部35の先端側に深さの浅い拘束溝部35A(拘束部)を形成し、拘束溝部35Aに突出部13が嵌まることで、基台10を本体部材30に対して拘束することができる。
【0032】
また、収容部33は、把持部材21A,21Bの受け部25A,25Bをも収容可能となっており、カテーテル連結部2とガイドワイヤ連結部1とが相対的に近接移動する際に、受け部25A,25Bが接するテーパ状の押圧部36A,36Bが形成される。押圧部36A,36Bは、基端側へ向かって狭くなるように(押圧部36Aと押圧部36Bの間の距離が小さくなるように)形成されており、したがって、カテーテル連結部2とガイドワイヤ連結部1とが相対的に近接移動すると、押圧部36A,36Bが受け部25A,25Bをガイドワイヤ収容溝11側に向かって押圧し、把持部材21A,21Bの接触部24A,24Bが開くことになる(図8参照)。そして、押圧部36A,36Bには、接触する受け部25A,25Bが弾性部材22の弾性力で先端方向へ滑って戻らないように、微細な凹凸部37(拘束部)を形成が形成される。
【0033】
カテーテル保持部材40は、カテーテル4をカテーテル収容溝41に側方から押し込み、かつ取り出すことが可能な程度に柔軟な材料により形成され、カテーテル4がカテーテル収容溝41に押し込まれると、カテーテル保持部材40の弾性力によってカテーテル4を保持した状態を維持することができる。カテーテル保持部材40には、例えば、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン)、スチレン系樹脂(ポリスチレン、MS樹脂)、ポリエステル、ポリカーボネート、硬質塩化ビニル樹脂等の合成樹脂や、エラストマー等を適用できるが、これに限定されない。
【0034】
そして、基台10のガイドワイヤ収容溝11およびカテーテル収容溝41は、保持するガイドワイヤ3およびカテーテル4の中心軸が同一線上に並ぶように同軸状に並び、ガイドワイヤ収容溝11、カテーテル収容溝41およびスリット34は、いずれも側方への開放する方向が一致している。
【0035】
本体部材30は、樹脂材料により形成されるが、基台10との摺動が可能であり、把持部材21A,21Bの受け部25A,25Bを押圧可能であれば、特に限定されず、例えば金属材料や張り合わせた厚紙等により形成されてもよい。
【0036】
本体部材30に適用される樹脂材料(合成樹脂)としては、指で押えた際に、閉塞しない程度の剛性を有する硬質樹脂または準硬質樹脂が好ましく、そのようなものとして、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン)、スチレン系樹脂(ポリスチレン、MS樹脂)、ポリエステル、ポリカーボネート、硬質塩化ビニル樹脂等が好適である。金属材料としては、ステンレス、アルミニウム、銅、鉄、ニッケルチタン等が使用できる。
【0037】
次に、本実施形態に係る医療用デバイスの作用について説明する。ここでは、ガイドワイヤ3が挿通されるカテーテル4は、マイクロカテーテル4であるものとして説明する。
【0038】
まず、患者の血管に、例えばセルジンガー法によりシース(イントロデューサ)を留置し、シースを通してガイディングカテーテル用の大径(例えば、外径0.035インチ)のガイドワイヤを血管内に挿入する。そして、ガイドワイヤを血管内で押し進めて目的部位(例えば、心臓冠動脈の入口)へ先行させた後、ガイドワイヤに沿ってガイディングカテーテルを血管内で押し進めて目的部位まで押し進める。そして、目的部位に、ガイディングカテーテルを係合させる。この後、ガイディングカテーテルを残してガイディングカテーテル用のガイドワイヤを抜き去る。
【0039】
次に、マイクロカテーテル4用の小径(例えば、外径0.016インチ)のガイドワイヤ3の基端側に、本実施形態に係る医療用デバイスを連結した状態で、ガイドワイヤ3をガイディングカテーテルの基端側から挿入する。このとき、ガイドワイヤ3の基端の近傍は、図7に示すように、基台10のガイドワイヤ収容溝11に収容され、把持部材21A,21Bによって把持され、更に回転軸部23によってガイドワイヤ収容溝11から側方へ離脱不能に保持されている。そして、ガイドワイヤ3の基端側端部は、基台10の基端側端部よりも基端側の収容部33内に位置している。このようにガイドワイヤ3を医療用デバイスに連結するためには、まずガイドワイヤ連結部1とカテーテル連結部2とを離間させ、更に把持部材21A,21Bの受け部25A,25Bを指で押し込んで接触部24A,24B同士を離間させた状態で、ガイドワイヤ3の基端側端部をガイドワイヤ収容溝11の先端側から挿入する。そして、ガイドワイヤ3の基端側端部が基台10を過ぎて収容部33まで到達させた状態で受け部25A,25Bの押し込みを開放し、接触部24A,24Bでガイドワイヤ3を把持した状態とする。なお、ガイドワイヤ3を医療用デバイスに連結する作業は、手技を開始する前に予め行われていることが好ましい。
【0040】
この後、ガイディングカテーテルの先端側から血管内に入り込んだガイドワイヤ3を、医療用デバイスにより回転力を与えて操作しつつ先端方向へ前進させ、目的部位(例えば、冠動脈内部の病変部)へ導く。すなわち、医療用デバイスによって回転力を付与可能にガイドワイヤ3を把持できるため、医療用デバイスを回転力付与器具として使用できる。
【0041】
次に、医療用デバイスのカテーテル収容溝41に、側方からマイクロカテーテル4を押し込んで固定する。このとき、ガイドワイヤ収容溝11とカテーテル収容溝41が同軸上に位置しているため、ガイドワイヤ3とマイクロカテーテル4の開口部が同一線上に位置することになる。そして、基台10を収容部33に収容するようにガイドワイヤ連結部1とカテーテル連結部2を相対的に近接させると、図8に示すように、各々に保持されたガイドワイヤ3とマイクロカテーテル4とが近接し、マイクロカテーテル4の開口部にガイドワイヤ3が挿入される。すなわち、医療用デバイスは、回転力付与器具としての機能を備えるのみならず、マイクロカテーテル4の開口部にガイドワイヤ3の端部を挿入するための導入補助具としての機能をも備えている。したがって、個別の回転力付与器具と導入補助具の両方を使用する必要がなくなり、作業性が向上する。また、ガイドワイヤ連結部1とカテーテル連結部2を相対的に近接させる動作に連動して、マイクロカテーテル4の開口部にガイドワイヤ3の端部を挿入できるため、操作性に優れている。
【0042】
そして、ガイドワイヤ連結部1とカテーテル連結部2とが相対的に近接することで、把持部材21A,21Bに形成される受け部25A,25Bが、収容部33に形成されるテーパ状の押圧部36A,36Bに到達し、ガイドワイヤ3が位置する方向へ向かって押圧部36A,36Bによって押圧される。これにより、把持部材21A,21Bは、弾性部材22に弾性力に抗して回転軸部23を中心に回転し、接触部24A,24B同士が離間して、ガイドワイヤ3の把持が解除される。なお、ガイドワイヤ3の把持が解除される際には、ガイドワイヤ3の基端側端部が、既にマイクロカテーテル4の開口部に挿入されている。そして、押圧部36A,36Bに凹凸部37が形成されているため、ガイドワイヤ連結部1とカテーテル連結部2の近接を停止すると、受け部25A,25Bが押圧部36A,36Bに拘束されて、カテーテル連結部2とガイドワイヤ連結部1の相対的な位置を固定的に維持できる。すなわち、押圧部36A,36Bと受け部25A,25Bは、カテーテル連結部2とガイドワイヤ連結部1の相対的な移動を拘束する拘束部としての機能も果たしている。
【0043】
次に、マイクロカテーテル4を医療用デバイスとともにガイドワイヤ3に対して先端方向へ前進させ、ガイドワイヤ3をマイクロカテーテル4の基端側に形成されるハブ部4Aから導出させる。この後、図9に示すように、カテーテル連結部2とガイドワイヤ連結部1を相対的に離間させ、把持部材21A,21Bを収容部33から突出させる。これにより、接触部24A,24Bが再びガイドワイヤ3を把持することになる。そして、図10,11に示すように、各々の把持部材21A,21Bを反対方向へ捩じり、弾性部材22による押圧力に抗して接触部24A,24B同士を離間させ、更に軸部23Aと軸受部23Bを離間させれば、ガイドワイヤ収容溝11に収容されるガイドワイヤ3を、ガイドワイヤ収容溝11から側方に開放可能となる。そして、この状態で、マイクロカテーテル4の先端部をカテーテル収容溝41から離脱させると、本体部材30のスリット34を介して、ガイドワイヤ3が挿通された状態のマイクロカテーテル4を医療用デバイスから側方へ取り出すことができる。なお、ガイドワイヤ3およびマイクロカテーテル4を医療用デバイスから側方へ取り出すのは、ガイドワイヤ3がマイクロカテーテル4のハブ部4Aから導出する前でもよいが、医療用デバイスから取り出した際に、ガイドワイヤ3がマイクロカテーテル4から離脱しない程度にガイドワイヤ3がマイクロカテーテル4に差し込まれていることが好ましい。
【0044】
この後、図12に示すように、マイクロカテーテル4のハブ部4Aから突出したガイドワイヤ3の基端部に医療用デバイスを移動させて設置し、医療用デバイスを、ガイドワイヤ3に回転力を付与可能な回転力付与器具として再び使用できる。この後、マイクロカテーテル4とガイドワイヤ3を操作して、目的部位の治療を行うことになる。
【0045】
<第2実施形態>
本発明の第2の実施形態に係る医療用デバイスは、把持部材21A,21Bを動作させる構成が、第1実施形態に係る医療用デバイスと異なる。なお、第1実施形態に係る医療用デバイスと同様の機能を有する部位は、同一の符号を付して説明を省略する。
【0046】
第2実施形態に係る医療用デバイスは、図13〜17に示すように、本体部材50の内部の基台10が摺動する収容部53に、テーパ状の押圧部が形成されず、本体部材50の外周面の先端側の縁部に、押圧部56が形成される。そして、把持部材21A,21Bの受け部25A,25Bの互いに対向する面に、凹凸部57(拘束部)が形成されている。把持部材21A,21Bは、弾性部材22がガイドワイヤ収容溝11の下方(溝の深さ方向)に位置しているため、全体として本体部材50の中心から下方へずれて位置している。
【0047】
第2実施形態に係る医療用デバイスにおいて、ガイドワイヤ連結部5とカテーテル連結部6とを離間させた状態で、第1実施形態と同様に把持部20によってガイドワイヤ3を把持すれば、第2実施形態に係る医療用デバイスを、第1実施形態と同様に、回転力付与器具として使用することができる。
【0048】
そして、基台10を収容部53に収容するようにガイドワイヤ連結部5とカテーテル連結部6とを相対的に近接させると、図18に示すように、ガイドワイヤ連結部5およびカテーテル連結部6に保持されたガイドワイヤ3およびマイクロカテーテル4が近接し、マイクロカテーテル4の開口部にガイドワイヤ3が挿入される。すなわち、医療用デバイスが、マイクロカテーテル4の開口部にガイドワイヤ3の端部を挿入するための導入補助具として機能する。
【0049】
そして、ガイドワイヤ連結部5とカテーテル連結部6が相対的に近接することで、把持部材21A,21Bに形成される受け部25A,25Bが、本体部材50に形成される押圧部56に到達し、ガイドワイヤ3から離れる方向へ向かって、すなわち押し広げられるように、押圧部56によって押圧される。このとき、把持部材21A,21Bが本体部材50の中心から下方へずれて位置しているため、受け部25A,25Bが接する押圧部56は、本体部材50の円柱状の外周面の下方側に位置している。このため、カテーテル連結部6とガイドワイヤ連結部5を相対的に近接させると、各々の把持部材21A,21Bの受け部25A,25Bの上方側が大きく開くように押圧部56から力を受けて、各々の把持部材21A,21Bが反対方向へ捩じられ、弾性部材22による押圧力に抗して接触部24A,24B同士が離間し、更に軸部23Aと軸受部23Bが離間する。これにより、ガイドワイヤ3の接触部24A,24Bによる把持が解除されとともに、ガイドワイヤ収容溝11に収容されるガイドワイヤ3を、ガイドワイヤ収容溝11から側方に開放可能となる。すなわち、本医療用デバイスは、ガイドワイヤ連結部5とカテーテル連結部6とを相対的に近接させる動作に連動して、ガイドワイヤ3を側方へ開放可能とすることができ、作業性に優れている。なお、ガイドワイヤ3の把持が解除される際には、ガイドワイヤ3の基端側端部が、既にマイクロカテーテル4の開口部に挿入されている。そして、受け部25A,25Bに凹凸部57(拘束部)が形成されているため、ガイドワイヤ連結部5とカテーテル連結部6の近接を停止しても、押圧部56が受け部25A,25Bに拘束されて、カテーテル連結部6とガイドワイヤ連結部5の相対的な位置を固定的に維持できる。すなわち、押圧部56と受け部25A,25Bは、カテーテル連結部6とガイドワイヤ連結部5の相対的な移動を拘束する拘束部としての機能も果たしている。
【0050】
そして、この状態で、マイクロカテーテル4の先端部をカテーテル収容溝41から離脱させると、本体部材50のスリット34を介して、ガイドワイヤ3が挿通された状態のマイクロカテーテル4を医療用デバイスから側方へ取り出すことができる。
【0051】
第2実施形態に係る医療用デバイスも、回転力付与器具としての機能を備えるのみならず、マイクロカテーテル4の開口部にガイドワイヤ3の端部を挿入するための導入補助具としての機能をも備えている。したがって、回転力付与器具と導入補助具の両方を使用する必要がなくなり、作業性が向上する。また、ガイドワイヤ連結部5とカテーテル連結部6を相対的に近接させる動作に連動して、マイクロカテーテル4の開口部にガイドワイヤ3の端部を挿入できるため、作業性に優れている。
【0052】
なお、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内で種々改変することができる。例えば、ガイドワイヤを把持する把持部の構成は、ガイドワイヤ連結部とカテーテル連結部を相対的に近接させることでガイドワイヤの把持を解除できるのであれば、特に限定されない。したがって、例えば第1実施形態では、把持部材21A,21Bの接触部24A,24Bが先端側に位置して受け部25A,25Bが基端側に位置しているが、逆の構成とすることもできる。また、把持部が、一対の把持部材でガイドワイヤ3を挟む構成ではなしに、1つの把持部材によって押し付けるようにして把持する構成とすることもできる。
【0053】
また、図19は、第1実施形態の把持部の他の例を、ガイドワイヤ3の中心軸と直交する断面図で示しているが、このように、一対の把持部材61A,61Bを互いに離れる方向に弾性部材62により付勢し、鉤形状の接触部64A,64Bにより、ガイドワイヤ3を把持する構造としてもよい。この把持部材61A,61Bでは、押圧部36A,36Bにより把持部材61A,61Bの受け部65を押圧することで、一対の把持部材61A,61Bが互いに近接しつつ鉤形状の接触部64A,64Bが移動し、ガイドワイヤ3の把持が解除されるとともに、ガイドワイヤ収容溝11に収容されるガイドワイヤ3が、ガイドワイヤ収容溝11から側方に開放可能となる。
【0054】
また、カテーテル収容溝41の先端側に、ガイドワイヤ3をカテーテル4の開口部へ挿入しやすくするように、先端側に開いた漏斗形状の導入口を形成してもよい。
【符号の説明】
【0055】
1,5 ガイドワイヤ連結部、
2,6 カテーテル連結部、
3 ガイドワイヤ、
4 カテーテル、マイクロカテーテル、
11 ガイドワイヤ収容溝、
20 把持部、
21A,21B,61A,61B 把持部材、
22,62 弾性部材、
23 回転軸部、
24A,24B,64 接触部、
25A,25B,65 受け部、
35A 拘束溝部(拘束部)、
36A,36B 押圧部、
37,57 凹凸部(拘束部)、
41 カテーテル収容溝。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイドワイヤに回転力を付与可能に当該ガイドワイヤと連結可能なガイドワイヤ連結部と、
カテーテルを連結可能であって前記ガイドワイヤ連結部と相対的に近接離間可能なカテーテル連結部と、を有する医療用デバイス。
【請求項2】
前記ガイドワイヤ連結部は、前記ガイドワイヤに対して近接または離間することで当該ガイドワイヤを把持または開放可能であるとともに、前記ガイドワイヤ連結部およびカテーテル連結部の近接移動によって前記ガイドワイヤを開放する把持部を有する、請求項1に記載の医療用デバイス。
【請求項3】
前記ガイドワイヤ連結部は、前記把持部から延びて前記ガイドワイヤを収容可能なガイドワイヤ収容溝を有し、
前記カテーテル連結部は、前記カテーテルを収容して保持可能であって前記ガイドワイヤ収容溝と同軸上に延びるカテーテル収容溝を有し、
前記ガイドワイヤ連結部およびカテーテル連結部は、前記ガイドワイヤ収容溝およびカテーテル収容溝の延在方向に沿って近接離間可能である、請求項2に記載の医療用デバイス。
【請求項4】
前記把持部は、
前記ガイドワイヤに対して近接または離間することで当該ガイドワイヤを把持または開放可能な把持部材と、
前記把持部材を付勢する弾性部材と、を有し、
前記把持部材は、
前記弾性部材による弾性力によって前記ガイドワイヤに接する接触部と、
前記ガイドワイヤ連結部およびカテーテル連結部の近接移動によって力を受けて前記接触部を前記ガイドワイヤから離間させる受け部と、を有する、請求項2または3に記載の医療用デバイス。
【請求項5】
前記把持部材は、回転軸部によって互いに回転可能に連結される一対で構成され、
各々の前記把持部材の前記回転軸部を挟んで一端側に前記接触部が形成され、各々の前記把持部材の前記回転軸部を挟んで他端側に前記受け部が形成される、請求項4に記載の医療用デバイス。
【請求項6】
前記カテーテル連結部は、前記ガイドワイヤ連結部に近接することで前記受け部を前記ガイドワイヤが収容される方向に向かって押圧する押圧部を更に有し、
前記把持部材は、前記受け部が押圧されることで前記回転軸部を中心に回転して前記接触部が前記ガイドワイヤから離間する、請求項5に記載の医療用デバイス。
【請求項7】
前記カテーテル連結部は、前記ガイドワイヤ連結部に近接することで前記受け部を前記ガイドワイヤが収用される方向と反対方向に向かって押圧する押圧部を更に有し、
前記把持部材は、前記受け部が押圧されることで前記回転軸部による連結が解除されるとともに前記接触部が前記ガイドワイヤから離間する、請求項5に記載の医療用デバイス。
【請求項8】
前記ガイドワイヤ連結部とカテーテル連結部の相対的な移動を拘束する拘束部を更に有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の医療用デバイス。
【請求項1】
ガイドワイヤに回転力を付与可能に当該ガイドワイヤと連結可能なガイドワイヤ連結部と、
カテーテルを連結可能であって前記ガイドワイヤ連結部と相対的に近接離間可能なカテーテル連結部と、を有する医療用デバイス。
【請求項2】
前記ガイドワイヤ連結部は、前記ガイドワイヤに対して近接または離間することで当該ガイドワイヤを把持または開放可能であるとともに、前記ガイドワイヤ連結部およびカテーテル連結部の近接移動によって前記ガイドワイヤを開放する把持部を有する、請求項1に記載の医療用デバイス。
【請求項3】
前記ガイドワイヤ連結部は、前記把持部から延びて前記ガイドワイヤを収容可能なガイドワイヤ収容溝を有し、
前記カテーテル連結部は、前記カテーテルを収容して保持可能であって前記ガイドワイヤ収容溝と同軸上に延びるカテーテル収容溝を有し、
前記ガイドワイヤ連結部およびカテーテル連結部は、前記ガイドワイヤ収容溝およびカテーテル収容溝の延在方向に沿って近接離間可能である、請求項2に記載の医療用デバイス。
【請求項4】
前記把持部は、
前記ガイドワイヤに対して近接または離間することで当該ガイドワイヤを把持または開放可能な把持部材と、
前記把持部材を付勢する弾性部材と、を有し、
前記把持部材は、
前記弾性部材による弾性力によって前記ガイドワイヤに接する接触部と、
前記ガイドワイヤ連結部およびカテーテル連結部の近接移動によって力を受けて前記接触部を前記ガイドワイヤから離間させる受け部と、を有する、請求項2または3に記載の医療用デバイス。
【請求項5】
前記把持部材は、回転軸部によって互いに回転可能に連結される一対で構成され、
各々の前記把持部材の前記回転軸部を挟んで一端側に前記接触部が形成され、各々の前記把持部材の前記回転軸部を挟んで他端側に前記受け部が形成される、請求項4に記載の医療用デバイス。
【請求項6】
前記カテーテル連結部は、前記ガイドワイヤ連結部に近接することで前記受け部を前記ガイドワイヤが収容される方向に向かって押圧する押圧部を更に有し、
前記把持部材は、前記受け部が押圧されることで前記回転軸部を中心に回転して前記接触部が前記ガイドワイヤから離間する、請求項5に記載の医療用デバイス。
【請求項7】
前記カテーテル連結部は、前記ガイドワイヤ連結部に近接することで前記受け部を前記ガイドワイヤが収用される方向と反対方向に向かって押圧する押圧部を更に有し、
前記把持部材は、前記受け部が押圧されることで前記回転軸部による連結が解除されるとともに前記接触部が前記ガイドワイヤから離間する、請求項5に記載の医療用デバイス。
【請求項8】
前記ガイドワイヤ連結部とカテーテル連結部の相対的な移動を拘束する拘束部を更に有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の医療用デバイス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2012−200568(P2012−200568A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−70991(P2011−70991)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
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