説明

医療用バルーン

医療用バルーンなどの医療器具、およびそのような医療器具の製造方法が開示される。いくつかの実施形態では、バルーンはたとえば層(26)など、厚さが可変である部分を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用のバルーンおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用バルーンは、様々な治療を施すために使用することができる。たとえば、血管形成術では、バルーンを使用して狭窄した冠動脈などの体血管を拡張することができる。バルーンはまた、ステントなどの管状部材を搬送し体内に留置して閉塞した血管を補強または再開通するために使用することもできる。
【0003】
血管形成術では、バルーンを折り畳み、血流が制限される程度まで狭小化した血管の部位に搬送することによって、狭窄すなわち体血管の狭小化の治療にバルーンを使用することができる。バルーンは、据え付けたガイドワイヤ上にカテーテルを通過させ、カテーテルを目的部位へ進めることによって、目的部位へ搬送される。目的部位までの経路は蛇行および/または狭小化していることが多い。目的部位に到達すると、バルーンは、たとえば流体をバルーン内部に注入することにより拡張させられる。バルーンを拡張することにより狭窄部が径方向に拡張させられるので、血管は血流量を受容することが可能となる。使用後は、バルーンを折り畳み抜去する。
【0004】
ステント搬送時には、ステントをバルーン上に圧縮して目的部位に運ぶ。目的部位に到達すると、バルーンを拡張させて、所定の位置、たとえば血管壁と接触する位置において、ステントを変形させて固定する。次いで、バルーンを折り畳み抜去する。
【0005】
医療用バルーンは、ポリマーからなる円筒管を押出成形し、次いで管を加熱しながら加圧し拡張させてバルーンの形状に製造される。バルーンを中空のカテーテルシャフトの外周に沿って固定して、バルーンカテーテルを形成することも可能である。バルーンの中空の内部はシャフトの中空の内部と連通している。シャフトを使用して、バルーンを膨張させるために流体を供給し、またはバルーンを収縮させるために吸引することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記に鑑みて改良したバルーンを備える医療器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様では、本発明は、第1の部分、および第1の部分の選択された部分上に配置される第2の部分を有し、第1および第2の部分の厚さが可変であるバルーンを備える医療器具を特徴とする。
【0008】
実施形態は以下の特徴の1つまたは複数を含むことができる。
第1および第2の部分は異なる組成および/または硬度を有する。第1の部分は、バルーンのほぼ全長にわたって延びる。第2の部分は第1の部分より軟質である。第2の部分は、第1の部分のほぼ全体にわたって配置される。これらの部分はバルーンのほぼ全長にわたって延びる。これらの部分の厚さはバルーンの長さ方向において連続的に可変である。これらの部分の一方の厚さは、バルーンの長さ方向において段階的に可変である。
【0009】
バルーンは本体部を有し、第1の部分は、本体部の第1の部分においてバルーンの別の部分よりも厚くなっている。バルーンは本体部を有し、第1の部分は、本体部の第1の部分においてバルーンの円錐部よりも厚くなっている。バルーンは第1の部分によってほぼ全体的に形成される本体部を有する。バルーンは円錐部を有し、第1の部分の厚さは円錐部においてほぼ一定である。バルーンは円錐部を有し、第1の部分の厚さは円錐部の一部において可変である。バルーンは円錐部を有し、第2の部分の厚さは円錐部においてほぼ一定である。バルーンは円錐部を有し、第2の部分の厚さは円錐部の一部において可変である。バルーンは本体部、および本体部よりも可撓性を有する円錐部を有する。バルーンは、基端部、および基端部よりも可撓性を有する先端部を有する。
【0010】
別の態様では、本発明は、第1の部分、および第1の層の選択された部分に配置される第2の部分を有し、第2の部分の厚さが可変であるバルーンを備える医療用器具を特徴とする。
【0011】
実施形態は以下の特徴の1つまたは複数を含むことができる。
第2の部分は第1の部分よりも軟質である。第1および第2の部分は異なる硬度を有する。第1の部分はバルーンのほぼ全長にわたって延びる。第2の部分はバルーンのほぼ全長にわたって延びる。
【0012】
バルーンは本体部および円錐部を有し、第2の部分は円錐部よりも本体部において薄くなっている。バルーンは第2の部分からほぼ独立した本体部を有する。バルーンは、本体部、および本体部よりも可撓性の高い、または可撓性の低い円錐部を有する。
【0013】
別の態様では、本発明は、本体部、円錐部、本体部の一部および円錐部の一部を越えて延びるポリマーからなる第1の層を有し、ポリマーからなる第1の層が円錐部における厚さと異なる本体部における厚さを有するバルーンを備える医療用器具を特徴とする。
【0014】
実施形態は以下の特徴の1つまたは複数を含むことができる。
円錐部の一部の第1の層の厚さはほぼ一定である。円錐部の一部の第1の層の厚さはテーパ状をなす。第1の層は、円錐部から本体部へ徐々に厚さが増加している。第1および第2の層の全体的な厚さは、本体部および円錐部においてほぼ一定である。第1および第2の層はバルーンのほぼ全長にわたって延びる。第2の層は第1の層より軟質である。第1の層は、円錐部よりも本体部において厚くなっている。第2の層は第1の層より硬質である。本体部は円錐部よりも可撓性が低い。本体部はほぼ第1の層からなる。バルーンは第1の層の一部にわたって第2の層をさらに含み、第2の層は第1の層と異なる組成を有する。
【0015】
別の実施形態では、本発明は第1の層および第2の層を有し、第1の層の厚さが可変である管材を形成する工程と、管材を医療用バルーンに形成する工程とを含む医療バルーンの製造方法を特徴とする。管材は押出成形されてもよい。管材を医療用バルーンに形成する工程はブロー成形を含む。第2の層の厚さは可変である。
【0016】
別の実施形態では、本発明は、第1の材料および第1の材料と異なる第2の材料から形成された複数の層を備え、それらの層の少なくとも1つの層の厚さがバルーンに沿って軸方向に可変である、医療用バルーンを特徴とする。バルーンは本体部およびテーパ状部分を含むことができ、本体部およびテーパ状部分は異なる剛性を有する。バルーンは少なくとも2層を有することができる。
【0017】
実施形態は以下の効果の1つまたは複数を含むことができる。バルーンは比較的可撓性の高い円錐部やくびれ部を有する。それによって、バルーンの可撓性を強化することができ、バルーンが蛇行した経路をより良好に進むことが可能になる。バルーンは、効率的に、たとえば高生産および/または低費用で、形成することができる。
【0018】
本発明の他の態様、特徴、および効果は、好ましい実施形態の説明および特許請求の範囲から明らかとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(構造)
図1において、バルーンカテーテル20は、カテーテル24に担持されたバルーン22を備える。バルーンカテーテルの例は、たとえばワン(Wang)に付与された米国特許第5,915,969号、ハムリン(Hamlin)に付与された米国特許第5,270,086号に記載されており、米国ミネソタ州メープルグローブに所在するボストン サイエンティフィック社−シメッド ライフ システムズ社((Boston Scientific Corp.−Scimed Life Systems,Inc.)から販売されているMaverick(登録商標)またはSymbiot(登録商標)カテーテルシステムによって実証されている。図2に示すように、バルーン22は複数の(図では2つ)ポリマー層26、28を含む壁構造を有する。層26、28は、通常異なるポリマー組成物から形成される。ポリマー組成物、層の厚さすなわち層の有無、およびバルーンの全体的な壁厚(T)は、バルーンの性能を向上させるために、その長さ(長手方向すなわち軸方向の軸線A)に沿ってバルーンの特性を制御するように選択される。たとえば、バルーンの剛性をバルーンの軸線方向において可変的に設定することにより、カテーテル上に担持されたバルーンを血管などの蛇行する体管腔内へ容易に搬送することができる。バルーンの一部は押圧性を強化するために比較的高い剛性を有し、他の部分は横方向の可撓性を強化、すなわちガイドワイヤ上などにおける追従性を強化するために比較的高い可撓性を有することが可能である。さらに、バルーンの様々な部分の機能を強化するために、バルーンの各部分の膨張性、接合性、およびステント担持性を、バルーンに沿って制御することができる。
【0020】
図2では、バルーンの壁厚はほぼ一定であり、層26、28はバルーンの長さに沿ってほぼ延びる。層の厚さは、バルーンの様々な部分において異なる。バルーン22は、本体部30、先端くびれ部32、先端円錐部34、基端くびれ部36、基端円錐部38を含む。本体部30は、たとえば治療下の組織と係合するため、体内管腔を拡張するため、またはステントを搬送するために、バルーンを拡張したときに最大径を有する。くびれ部32、36は、カテーテル24に連結されるバルーン22の一部である。円錐部34、38は、一般に本体部30からくびれ部32、36へそれぞれ延びている。本体部の内層の厚さTIBは、円錐部の内層の厚さTICまたはくびれ部の内層の厚さTIWよりも厚い。実施形態では、内層は比較的高剛性、非弾性、高破裂強度のポリマー組成物からなり、外層は低剛性、高可撓性、高適合性、低デュロメータ硬度のポリマーからなる。内層が本体部において比較的厚いため、高強度および非弾性といった特性がこの部分において強化されて、膨張などの動作特性を画定された径および予測可能な破裂圧力に対して向上させることができる。本体部に外層があるために、耐ピンホール性およびステント搬送性が向上する。たとえば、ステントを入れ子(nested)すなわち外層内にわずかに埋め込むことができる。内層はくびれ部および円錐部で比較的薄いため、可撓性が強化されて追従性などの動作特性が向上する。
【0021】
いくつかの実施形態では、本体部30において、層28はバルーンの全壁厚の約1パーセント〜約95パーセントを構成し、層26は残りの部分を構成する。たとえば、本体部30において、層28は、バルーンの全壁厚の約1パーセント、5パーセント、10パーセント、15パーセント、20パーセント、25パーセント、30パーセント、35パーセント、40パーセント、50パーセント、60パーセント、70パーセント、80パーセント、または90パーセント以上、および/または、バルーンの全壁厚の約95パーセント、90パーセント、80パーセント、70パーセント、60パーセント、50パーセント、45パーセント、40パーセント、35パーセント、30パーセント、25パーセント、20パーセント、15パーセント、10パーセント、または5パーセント以下を構成することができる。比較的可撓性の高い部分、たとえば円錐部34、38、またはくびれ部32、36では、層26がバルーンの全壁厚の約1パーセント〜約95パーセントを構成し、可撓性を有するポリマーが残りの部分を構成する。たとえば、円錐部34および/または38、および/またはくびれ部32、36において、層26は、バルーンの全壁厚の約1パーセント、5パーセント、10パーセント、15パーセント、20パーセント、25パーセント、30パーセント、35パーセント、40パーセント、50パーセント、60パーセント、70パーセント、80パーセント、または90パーセント以上、および/または、バルーンの全壁厚の約95パーセント、90パーセント、80パーセント、70パーセント、60パーセント、50パーセント、45パーセント、40パーセント、35パーセント、30パーセント、25パーセント、20パーセント、15パーセント、10パーセント、または5パーセント以下を構成することができる。たとえば、内層26は、両軸方向において配向された比較的結晶質のポリマー組成物などの比較的剛性の高い材料から形成することができる。好適なポリマーには、PET、すなわちPEBAX(登録商標)7233(ショアD72)が含まれる。外層28は、比較的可撓性の高い、より非晶質のポリマーから形成することができる。好適なポリマーには、PE、すなわちPEBAX(登録商標)7033(ショアD69)が含まれる。層の特定の厚さは、たとえば使用される材料および/または所望の可撓性などにより決定することができる。他の実施形態では、層26は、層28の1つまたは複数の材料よりも軟質な1つまたは複数の材料を含んでもよい。
【0022】
バルーンの壁厚(T)が一定でない実施形態では、バルーンに沿って特性を変化させるために厚さの違いを利用する。たとえば、本体部30が円錐部34、38および/またはくびれ部32、36よりも比較的剛性の高い材料を有する場合、本体部は、本体部をブロー成形(後述)などによりかなり薄くする場合の円錐部および/またはくびれ部よりも可撓性が高くなる。
【0023】
図3においては、別の実施形態によるバルーンの一部が示されており、剛性の高い内層26が、本体部30全体を形成し、本体部30は軟質材料を含まない。剛性の高い本体部により拡張および破裂圧力が予測可能になる。図に示すように、内層26の厚さは、くびれ部32、36から本体部30へテーパ状をなしているが、いくつかの実施形態では、くびれ部および/または円錐部の内層は、図2に示すように同じ厚さ形状を有することができる。他の実施形態では、内層の厚さはくびれ部32および36から本体部30へ徐々に減少している(図4)。図4に示すように、層26は層28よりも軟質かつ低剛性であってもよい。図5においては、内層26の厚さは、くびれ部32、36から本体部30へ徐々に増加する別の実施形態が示され、本体部30は内層および外層28を有する。外層28によって優れたステント固定性および耐ピンホール性が付与される。
【0024】
1つまたは複数の層は、バルーン22の長さ方向に連続的または断続的に延びてもよい。図6は断続的に延びる内層28の一例を示し、図示されるように、内層の一部が別の材料、すなわち外層26により離間されている。円錐部34、38における断続的な内層28の厚さは、テーパ状をなしてもよく(たとえば、図3および4)、あるいは比較的一定していてもよい(たとえば、図2)。内層28は、本体部30の全体またはその一部を形成することができる(たとえば、図2)。連続的に延びる層の例は図2および3に示されている。
【0025】
1つまたは複数の層の厚さは、バルーン22の中心から径方向に向かう断面において非対称にすることができる。図7を参照すると、内層26は基端円錐部38において比較的薄く、本体部30において比較的厚い。本体部30の先端側において内層26が終端するため、先端円錐部34は軟質の外層28によって形成される。その結果、バルーン22の先端部(円錐部34およびくびれ部32)は、高い可撓性を有することができ、それによりバルーンの追従性が向上する。比較的剛性の高い基端部によって破裂圧力を高めることができる。
【0026】
これら複数の層は、管材の径方向に非対称に分布させることができる。たとえば、同一組成の複数の層を有するバルーン(たとえば、後述の図8)では、層をバルーンの内面よりバルーンの外面により近接して配置することができる。他の実施形態では、層は管材の径方向において均一に分布させてもよい。
【0027】
特定の実施形態では、1つまたは複数の層はその軸線方向の長さに沿って、少なくとも約0.02マイクロメートル(たとえば、少なくとも約0.05マイクロメートル、少なくとも約0.1マイクロメートル、少なくとも約0.25マイクロメートル、少なくとも約0.5マイクロメートル、少なくとも約0.75マイクロメートル、少なくとも約1マイクロメートル、少なくとも約1.5マイクロメートル、少なくとも約2マイクロメートル、少なくとも約2.5マイクロメートル、少なくとも約3マイクロメートル、少なくとも約3.5マイクロメートル)の最小厚、および/または、最大約20マイクロメートル(たとえば、最大約15マイクロメートル、最大約10マイクロメートル、最大約9マイクロメートル、最大約8マイクロメートル、最大約7マイクロメートル、最大約6マイクロメートル、最大約5マイクロメートル、最大約4マイクロメートル、最大約3マイクロメートル、最大約2マイクロメートル、最大約1マイクロメートル、最大約0.5マイクロメートル、最大約0.25マイクロメートル)の最大厚を有することができる。各層の厚さは、たとえば形成される器具の厚さ、層の数、層の材料、および/または層の配置によって決定される。バルーン22の全厚は比較的一定にすることができるが、場合によっては、バルーンの全厚はバルーンの長さに沿って可変性を付与することもできる。
【0028】
バルーンの径方向断面に沿って、可撓性を有する層および剛性を有する層の厚さは異なっていてもまたは同一であってもよい。いくつかの比較的剛性を有する部分では、可撓性を有する層が、バルーンの全壁厚の約1パーセント〜約45パーセント(たとえば、約5パーセント〜約45パーセント、約5パーセント〜約40パーセント、約30パーセント未満、約20パーセント〜約30パーセント)を構成し、剛性を有するポリマーが残りの部分を構成する。特定の比較的可撓性を有する部分では、剛性を有する層がバルーンの全壁厚の約1パーセント〜約45パーセント(たとえば、約5パーセント〜約45パーセント、約5パーセント〜約40パーセント、約30パーセント未満、約20パーセント〜約30パーセント)を構成し、可撓性を有するポリマーが残りの部分を構成する。それによって、可撓性を有する層および剛性を有する層の数が同等の器具では、可撓性を有するポリマー層を、剛性を有するポリマー層よりもより薄くまたはより厚くしてもよい。層の厚さは径方向に徐々に変化させてもよい。たとえば、層を最外層から最内層へより厚くしていく、またはその逆も可能である。他方のタイプの層を一定にしたまま、一方のタイプ(可撓性または剛性)の層の厚さを可変とすることもできる。
【0029】
1つまたは複数の層の厚さは、急激に(たとえば、段階的に)または緩やかに(たとえば約0.64センチメートル(0.25インチ)以上にわたって)変化させることも可能である。厚さの変化は、たとえば、円錐部と本体部との間の境界面において、スリーブに沿って、または本体部の所定の位置において、バルーンの長さに沿って任意の部分において形成することができる。
【0030】
層の数は、通常2つ以上である。たとえば、層の数は少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つ、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、またはそれ以上とすることができる。特定の実施形態では、層の数は100未満(たとえば、90未満、80未満、70未満、60未満、50未満、40未満、35未満、30未満、25未満、20未満、15未満、または10未満など)とすることができる。たとえば、層の数は7、13、20、またはそれ以上とすることができる。
【0031】
特定の実施形態では、層の数を増加することによって、バルーンまたは管材の穿刺強度を高めることができる。たとえば、4つの層を有するバルーンは、同一材料の構成(すなわち、ポリマーおよび/または接着剤などの各化合物が同じ割合)を有し、2つの層からなるが同じ厚さを有するバルーンよりも、穿刺強度が高い。特定の実施形態では、3つを超える層(たとえば、4つの層、5つの層、6つの層、7つの層、8つの層、9つの層、10の層、11の層、12の層、13の層、20の層など)を有するバルーンは、3つを超える層を有するバルーンと同一の材料構成および同じ厚さを有する、3層以下の層(たとえば、1つの層、2つの層、または3つの層)を有するバルーンより、少なくとも約3パーセント以上(たとえば、少なくとも約5パーセント、少なくとも約10パーセント、少なくとも約20パーセント、少なくとも約30パーセント)高い、穿刺強度を有する。
【0032】
一例として、図8を参照すると、バルーン壁80は、2つの硬質層82、84、ならびに硬質層82と84との間に軟質層86が配置された3つの層を含む。硬質層82は、円錐部34、38から本体部30へ向かって厚さが増加する。硬質層84は、バルーンのほぼ全長にわたってほぼ一定の厚さを有する。軟質層86は、円錐部34、38から本体部30へ向かって厚さが減少する。その結果、円錐部34、38は、本体部30に比べて比較的可撓性が高くなる。2つを越える層を備えたバルーンは、本明細書で述べられている構成の任意の組合せを有することもできる。たとえば、1つまたは複数の層82、84、86をテーパ状にすることも可能である(たとえば、図2)。
【0033】
バルーンは、2つ以上の材料から形成された、上述の層の任意の組合せを有することもできる。たとえばバルーンは、厚さが一定または変化し、均一または非対称に離間して分布された、1つまたは複数の層を有することができる。
【0034】
(材料)
以下に述べるいずれの材料も、任意の組合せにおいて、本明細書で説明される任意の層を形成するために使用することができる。硬軟度は、通常、バルーンの他のポリマーと相対的に考慮される。所定の層に2つ以上の材料を使用することも可能である。
【0035】
いくつかの実施形態では、硬度が約60ショアDを超える、好ましくは65ショアD以上の高剛性すなわち硬質のポリマー、および硬度が約60ショアD以下のより軟質のポリマーから形成することができる。いくつかの実施形態では、可撓性すなわち軟質のポリマーは、約60ショアDよりも高い硬度を有することができるが、硬質ポリマーよりも軟質である。隣接する接合層の硬度の差は、約40ショアD以下、好ましくは20ショアD以下とすることができ、それにより層間の適合性を向上させ、境界面での層間剥離を抑制し、および/または共押出成形を容易にすることが可能である。硬度はASTM D2240に従って測定することができる。層は硬質ポリマーと軟質ポリマーとの間で交互に配置することができる。層は徐々に硬度を増加することができる。たとえば、層を最外層から最内層へ徐々により硬度を高めていくことができる。たとえば、ステントの搬送に使用する支持体として、最外層を軟質層にしてステントによる応力や磨耗を吸収かつ分散することができる。
【0036】
層はほぼ単独(pure)のポリマーからなってもよく、または異なるポリマーのブレンドからなってもよい。軟質(または硬質)層のすべてを同一の軟質(または硬質)ポリマーから形成することも可能であり、または異なる軟質(または硬質)層を異なるポリマーから形成することも可能である。軟質および硬質ポリマーは、適合性を向上させながら障害の発生も阻止できる共通のブロック部分を含む、ブロックコポリマーから形成することもできる。たとえば、ブロック部分は、アミドセグメントおよびテトラメチレングリコールセグメントであってもよい。
【0037】
一例として、単独またはブレンドとして使用できるPEBAX(登録商標)のポリマー群がある(米国ペンシルバニア州フィラデルフィアに所在するアトフィナ社(Atofina)から販売されている)。たとえば、PEBAX(登録商標)5533(55ショアD)をPEBAX(登録商標)2533(25ショアD)と約4対1の重量比で混合し、約50ショアDの軟質ポリマーを形成することができる。硬質ポリマーと軟質ポリマーの別の組合せには、CELANEX(登録商標)(80ショアDを越える硬度、米国ニュージャージー州サミットに所在するティコナ社(Ticona)製)などのポリブチレンテレフタレート(PBT)、およびARNITEL(登録商標)(55ショアD、米国インディアナ州エリオンスピラに所在するディエスエム社(DSM)製)として販売されるポリエステル/エーテルブロックコポリマーがある。硬質ポリマーと軟質ポリマーの組合せには、PBT、およびたとえばRITEFLEX(登録商標)(ショアD55、ティコナ社(Ticona)製)、およびHYTREL(登録商標)(55ショアD、米国デラウェア州ウィルミントンに所在するイー.アイ.デュポン・ド・ヌムール社(E.I.Dupont de Nemours)製)など1つまたは複数のPBT熱可塑性エラストマーがある。硬質ポリマーと軟質ポリマーのさらに別の組合せには、ポリエチレンテレフタレート(PET)、およびPBT熱可塑性エラストマー(たとえば、ARNITEL(登録商標)、HYTREL(登録商標)、またはRITEFLEX(登録商標))などの熱可塑性エラストマーがある。
【0038】
特定の実施形態では、1つまたは複数の層は、1つまたは複数のナイロンを含むことができる。たとえば、1つまたは複数の硬質ポリマー層は、1つまたは複数のナイロンを含むことができる。たとえば、硬質ポリマーと軟質ポリマーの組合せには、ナイロン、およびPEBAX(登録商標)、GRILON(登録商標)、GRILAMID(登録商標)(イーエムエス社(EMS))、および/またはVESTAMID(登録商標)(クレアノヴァ社(Creanova))などの、PEBAX(登録商標)系の材料がある。ナイロンの例としては、Nylon 11(エルフ・アトケム社(Elf Atochem))、Nylon 6(アライド シグナル社(Allied Signal))、Nylon 6/10(ビーエーエスエフ社(BASF))、Nylon 6/12(アシュレイ ポリマー社(Ashley Polymers))、およびNylon 12などの脂肪族ナイロンがある。ナイロンの別の例には、GRIVORY(登録商標)(イーエムエス社(EMS))およびNylon MXD−6などの芳香族ナイロンがある。他のナイロンおよび/またはナイロンの組合せを使用することもできる。
【0039】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数の層は液晶ポリマー(LCP)(たとえば、LCPを組み込んだ複合材料)を含むことができる。LCPの例には、VECTRA(登録商標)A(ティコナ社(Ticona))、VECTRA(登録商標)B(ティコナ社(Ticona))、およびVECTRA(登録商標)LKX(ティコナ社(Ticona))(たとえば、VECTRA(登録商標)LKX1111(ティコナ社(Ticona))などの、ポリエステル、ポリアミド、および/またはそれらのコポリマーがある。他のLCPおよび/またはLCPの組合せも使用することができる。
【0040】
LCPを、たとえばPEBAX(登録商標)系の材料、ナイロン、熱可塑性ポリエステル、および/またはそれらの熱可塑性エラストマーバージョンなどの、1つまたは複数のポリマーに組み込むことができる。特定の実施形態では、液晶ポリマーを1つまたは複数のポリマー層に組み込み、硬質材料からなる層(たとえば、約65ショアDを超える硬度といったように、約60ショアDを超える硬度を有する材料からなる層)を形成することができる。好ましい実施形態では、LCPは、PEBAX(登録商標)、GRILON(登録商標)、GRILAMID(登録商標)、および/またはVESTAMID(登録商標)などの、1つまたは複数のPEBAX(登録商標)系の材料を含む層に組み込まれる。特定の実施形態では、LCPを含む組成物は、メルトフロー方向において比較的剛性を高くすることができる。理論にとらわれることなく、これは、ポリマー組成物が液体状態から固体状態に冷却されるときにLCP結晶(たとえばファイバー)をメルトフロー方向に形成すなわち整列させることから生じると考えられる。管材を医療用バルーンに形成する実施形態においては(後述)、LCPファイバーは、層に含まれる他のポリマー(たとえば、マトリクスポリマー)を強化することができ、それにより、複合材料中のLCP含有量に応じてバルーンを膨張させながら、膨張中にバルーンの長さが増加しないように抑制すると考えられる。
【0041】
管材に含まれるLCPの量は、使用目的に応じて変更することができる。いくつかの実施形態では、複合材料中のLCPの割合が減少すると、たとえば管材におけるLCPを含む複合材料の1つまたは複数の層の個々の層の厚さおよび全体の厚さを増加することができる。たとえば、所定の層において、LCP含有量は、少なくとも約0.1重量パーセント(たとえば、約1重量パーセント〜約50重量パーセント、約5重量パーセント〜約20重量パーセント、約5重量パーセント〜約15重量パーセント)であってもよい。
【0042】
特定の実施形態では、接着強化材料を1つまたは複数の材料層に組み込むことができる。接着強化材料は、たとえば隣接する層間の接着を強化するために使用することができる。接着強化材料の例には、LOTADER(登録商標)(エルフ アトケム社(Elf Atochem))、およびKODAR(登録商標)PETG(イーストマン コダック社(Eastman Kodak))などの、エポキシまたはアンヒドリド変性ポリオレフィンが含まれる。接着強化材料は、押出成形前に材料(たとえば、1つまたは複数のポリマーを含む組成物)に添加することができる(以下に述べる)。たとえば、交互に配置される層がPETおよびPBTから形成される実施形態においては、押出成形前にPETGをPETに添加することができる。
【0043】
接着強化材料の量は、目的とする用途に応じて変更することができる。いくつかの実施形態では、接着強化材料が、層を形成する生成された混合物の少なくとも約0.5パーセント(たとえば、少なくとも約1パーセント、少なくとも約5パーセント、少なくとも約10パーセント)を占めるように、かつ/または層を形成する生成された混合物の最大約20パーセント(たとえば、最大で約15パーセント、最大で約12パーセント、最大で約10パーセント)を占めるように、接着強化材料の十分な量が材料に含まれている。
【0044】
いくつかの実施形態では、適合材料を1つまたは複数の材料層に組み込むことができる。適合材料は、たとえばLCPと1つまたは複数の他のポリマー(たとえば、熱可塑性ポリマー)の1つまたは複数の相境界を変更し、かつ/またはLCPと1つまたは複数の他のポリマーとの間の接着を強化するように設計されている。適合材料は、少なくとも2つの異なる化学構造部分を含み、それぞれがLCPと1つまたは複数の他のポリマーに混合物中で適合性を付与する、ブロックコポリマーなどのコポリマーであってもよい。適合材料は、混合物中でLCPおよび/または1つまたは複数の他のポリマーと反応する、反応性ポリマーであってもよい。適合材料は、混合物中でLCPと1つまたは複数の他のポリマーとの間の反応を促進する、触媒であってもよい。他の適合材料を使用することもできる。適合材料の組合せを使用することもできる。
【0045】
適合材料の例には、コポリマーエラストマー、エチレン無水マレイン酸コポリマーなどのエチレン不飽和エステルコポリマー、エチレン−メチルアクリレートコポリマーなどのエチレンおよびカルボキシル酸または酸誘導体のコポリマー、機能性モノマーをグラフトしたポリオレフィンまたはエチレン−メチルアクリレートコポリマーなどのエチレン不飽和エステルコポリマー、エチレン−メチルアクリレート無水マレイン酸ターポリマーなどのエチレンおよびカルボキシル酸または酸誘導体のコポリマー、エチレンのターポリマー、エチレン−メチルアクリレート−メタクリル酸ターポリマーなどの不飽和エステルおよびカルボキシル酸または酸誘導体、マレイン酸グラフトスチレン−エチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー、およびアクリルゴムなどのアクリル酸エラストマーがある。たとえば、グリシジルメチルアクリレートから派生するなどのエポキシ官能基を含む同様のポリマー(たとえば、アルキル(メタ)アクリレート−エチレン−グリシジル(メタ)アクリレートポリマー)を使用することができる。イオノマーコポリマーを使用することもできる。PETGを使用することもできる。適合材料の例には、HYTREL(登録商標)HTR−6108、POLYBOND(登録商標)3009(BPケミカル社(BP Chemicals))、SP 2205(シェブロン社(Chevron))、DS 1328/60(シェブロン社(Chevron))、LOTADER(登録商標)2400、ESCOR(登録商標)ATX−320、ESCOR(登録商標)ATX−325、VAMAC(登録商標)GIおよびLOTADER(登録商標)AX8660がある。特定の実施形態では、適合材料(たとえば、PETG)を押出成形前に1つまたは複数のポリマー(たとえば、LCP含有材料)とブレンドすることができる。
【0046】
多くの方法によりLCPを熱可塑性物質にブレンドすることができる。LCPのブレンドは、LCP、熱可塑性材料、および適合材料の三成分系とすることができる。様々なLCP、様々な熱可塑性材料、および様々な適合材料からなる多数の組合せによる系が意図されている。
【0047】
たとえば、適合化されたブレンドは、ポリアゾメチンLCP、ポリアミドなどの熱可塑性ポリマー、および、LCPおよび/または熱可塑性ポリマーに適合性および/または反応性を示すことのできる少なくとも1つの機能グループを有する、カプロラクタムなどの適合材料のブレンドであってもよい。このようなブレンドは、たとえば米国特許第5,565,530号に記載されており、同特許文献同に開示された内容は本願においても開示されたものとする。
【0048】
他の例には、PET、全芳香族LCPコポリエステル、およびたとえばESCOR(登録商標)ATX320、ESCOR(登録商標)ATX325、またはESCOR(登録商標)XV−11.04などのエチレンメチルアクリレート−アクリル酸ターポリマー適合材料を含むポリマーブレンド製品がある。他のポリマーブレンド製品には、PET、全芳香族LCPコポリエステル、およびPOLYBOND(登録商標)3009などのエチレン−無水マレイン酸コポリマー適合材料がある。別のポリマーブレンド製品には、PET、全芳香族LCPコポリエステル、およびDS1328/60など無水マレイン酸適合材料をグラフトしたエチレン−メチルアクリレートコポリマー、またはHYTREL(登録商標)HTR6108などのコポリエステルエラストマーがある。
【0049】
PET、LCP、および少なくとも2つの適合材料を含むポリマーブレンド製品を使用することができる。たとえば、DS1328/60およびPOLYBOND(登録商標)3009をLCP VECTRA(登録商標)とともに使用することができる。別の例として、LCPがVECTRA(登録商標)である場合、適合材料は、POLYBOND(登録商標)3009、およびESCOR(登録商標)ATX−320、ESCOR(登録商標)ATX−325、DS1328160、ESCOR(登録商標)XV−11.04およびHYTREL(登録商標)HTR−6108から選択される、少なくとも1つの別の適合材料とすることができる。
【0050】
LCP、熱可塑性ポリマー、および適合材料を含むいくつかの実施形態では、ブレンド製品は、約0.1重量パーセント〜約10重量パーセント(たとえば、約0.5重量パーセント〜約2重量パーセント)のLCP、約40重量パーセント〜約99重量パーセント(たとえば、約85重量パーセント〜約99重量パーセント)の熱可塑性ポリマー、および約0.1重量パーセント〜約30重量パーセント(たとえば、約1重量パーセント〜約10重量パーセント)の適合材料を含む。
【0051】
特定のポリマーおよびポリマーの組合せについてすでに述べたが、他のポリマーおよびポリマーの組合せも使用することができる。他のポリマーには、たとえば、熱可塑性エラストマーなどのエラストマー、およびポリブチレンテレフタレート−ポリエチレングリコールブロックコポリマーなどの、たとえばHYTREL(登録商標)として入手可能なエンジニアリング熱可塑性エラストマーがある。これらはハミルトン(Hamilton)に付与された米国特許第5,797,877号に記載されており、同特許文献に開示された内容は本願においても開示されたものとする。他のポリマーにはポリウレタンがある。他のポリマーには、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)、ABS/ナイロン、ABS/−ポリビニルクロライド(PVC)、ABS/ポリカーボネート、アクリロニトリルコポリマー、ポリアクリルアミド、ポリアクリレート、およびポリアクリルスルホンなどのコポリマー;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエステル/ポリカプロラクトン、およびポリエステル/ポリアジペート(polyadipate)などのポリエステル;ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、およびポリエーテルケトン(PEK)を含む高温溶融ポリマー;ポリメチルペンテン、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、およびスチレンアクリロニトリル(SAN);ナイロン6、ナイロン6/6、ナイロン6/66、ナイロン6/9、ナイロン6/10、ナイロン6/12、ナイロン11、ナイロン12などのポリアミド;エチレン、プロピレンエチレンビニルアセテート、およびエチレンビニルアルコール(EVA);様々なイオノマー;ポリエチレンタイプI−IV;ポリオレフィン;ポリウレタン;ポリビニルクロライド;ポリシロキサン(シリコーン)がある。低温から中温溶融ポリマーには、ポリクロロトリエチレン(CTFE)、ポリ(エチレン−コ−クロロトリフルオロエチレン)(ECTFE)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)コポリマー、テトラフルオロエチレンおよびヘキサフルオロプロピレン(FEP)のコポリマー、パーフルオロアルカン(PFA)、およびポリ(ビニリデンフルオライド)(PVDF)などのフルオロカーボンが含まれる
【0052】
他の実施形態では、1つまたは複数の接着層を他の材料からなる層の間に形成することができる。これらの接着層は、2つ以上の層が不混和性である場合などに、たとえば2つ以上の層の間の接着を強化するために使用されてもよい。
【0053】
一例として、1つまたは複数の層は、医療器具での使用に適したポリエステル含有材料(たとえば、ほぼ単独のポリマー、少なくとも1つのポリエステルを含むブレンド)から形成することができる。そのようなポリマーには、たとえば、ポリエステルホモポリマー、および/またはポリエステルのコポリマー(たとえば、ブロックコポリマー)がある。ポリエステルの例には、PETポリマー、PBTポリマー、ならびにこれらのブレンドおよび組合せ、たとえばSELAR(登録商標)PTのポリマー群(たとえば、デュポン社(DuPont)より販売されるSELAR(登録商標)PT 8307、SELAR(登録商標)PT4274、SELAR(登録商標)PTX280)、CLEARTUF(登録商標)のポリマー群(たとえば、米国ウェストバージニア州アップルグローヴに所在するM&Gポリマー社(M&G Polymers)より販売されるCLEARTUF(登録商標)8006)、TRAYTUF(登録商標)のポリマー群(たとえば、米国テキサス州ヒューストンに所在するシェル ケミカル社(Shell Chemical)より販売されるTRAYTUF(登録商標)1006、デュポン社(Dupont)より販売されるMELINAR(登録商標)のポリマー群、米国ニュージャージー州サミットに所在するティコナ社(Ticona)より販売されるCELANEX(登録商標)のポリマー群、ティコナ社より販売されるRITEFLEX(登録商標)のポリマー群、デュポン社より販売されるHYTREL(登録商標)のポリマー群(たとえば、HYTREL(登録商標)5556、HYTREL(登録商標)7246、HYTREL(登録商標)4056)、および米国インディアナ州エリオンスピラに所在するDSM社より販売されるARNITEL(登録商標)のポリマー群(たとえば、ARNITEL(登録商標)EM630)などがある。
【0054】
他の層は、医療器具での使用に適したポリアミド含有材料(たとえば、ほぼ単独のポリマー、少なくとも1つのポリアミドを含むブレンド)から形成することができる。そのようなポリマーには、ポリアミドホモポリマー、および/または、ポリアミドのコポリマー(たとえば、ブロックコポリマー)などがある。ポリアミドの1つのタイプには、たとえば、Nylon 11(アトフィナ社(Atofina)より販売)、Nylon 6(米国ニュージャージー州モリスタウンに所在するハネウェル社より販売)、Nylon 6/10(米国ニュージャージー州マウントオリーブに所在するBASF社(BASFより販売)、Nylon 6/12(米国ニュージャージー州クランフォードに所在するアシュレイ ポリマー社(Ashley Polymers)より販売)、Nylon 12、Nylon NXD−6、GRIVORY(登録商標)のポリマー群(米国サウスカロライナ州サムターに所在するEMS社(EMS)より販売)、GRILAMID(登録商標)のポリマー群(EMS社より販売)、VESTAMID(登録商標)のポリマー群(ダイセル−デグサ社(Daicel−Degussa Ltd)より販売)、およびPEBAX(登録商標)のポリマー群(たとえば、アトフィナ社より販売されるPEBAX(登録商標)5533、PEBAX(登録商標)2533、PEBAX(登録商標)7033)などの脂肪族ナイロンや芳香族ナイロンなどを含むナイロン系のポリマー群がある。
【0055】
接着層は、医療器具での使用に適した任意の接着材料から形成されてもよい。接着材料は、ポリマー(たとえば、ほぼ単独のポリマー、またはポリマーのブレンド)であってもよい。一例として、特定の実施形態においては、接着材料は、エチレンビニルアセテートポリマー含有材料から形成されている。別の例としては、いくつかの実施形態において、接着材料がアンヒドリド変性ポリオレフィンから形成される。接着材料は、たとえば、E.I.デュポン・ド・ヌムール社(E.I.Dupont de Nemours)から販売されているBYNEL(登録商標)のポリマー群(たとえば、BYNEL(登録商標)CXAシリーズ、BYNEL(登録商標)1000シリーズ、BYNEL(登録商標)1123、BYNEL(登録商標)1124、BYNEL(登録商標)11E554、BYNEL(登録商標)11E573、BYNEL(登録商標)CXA E−418)、米国ニュージャージー州ニューアークに所在するエクイスター ケミカル社(Equistar Chemicals)から販売されているPLEXAR(登録商標)のポリマー群(たとえば、PX360、PX360E、PX380、PX3227、PX3236、PX3277、PX5125、PX5327、PX206、PX209、PX2049、PX165、PX175、PX180、PX909、PX101、PX107A、PX108、PX114、PX1164)、および/または、米国ミシガン州ミッドランドに所在するダウ ケミカル カンパニー社(Dow Chemical Company)から販売されているBLOX(登録商標)のポリマー群(たとえばBLOX(登録商標)200シリーズ)から選択することができる。
【0056】
(製造)
バルーン22は、管材を形成し、その管材をバルーンに成形することによって製造することができる。
たとえば、管材は押出成形法によって製造されてもよい。この方法は、通常、一連のディスクを有する押出成形装置(たとえば、コンパクトクロスヘッドなどのクロスヘッド)を使用する。ゾーン加熱温度、ポリマー濃度、送り速度、およびライン速度などのいくつかの例示的な操作条件が、2001年3月2日付けで出願された米国特許出願番号第09/798,749号(発明の名称:多層からなる医療器具(Multilayer Medical Device))に記載されており、同特許文献に開示された内容は本願においても開示されたものとする。
【0057】
メルトポンプ、ポンプを制御するシステムおよびその方法を含む、送り速度またはポリマーのフローを制御するための典型的なシステムが、国際公開第WO01/32398号(発明の名称:カテーテル用管材を押出成形するための方法および装置(Method and Apparatus for Extruding Catheter Tubing))に記載されており、同特許文献に開示された内容は本願においても開示されたものとする。他の方法には、ビュルリら(Burlis et al.)に付与された米国特許第3,752,617号に記載されているような、サーボ制御バルブの使用が含まれ、同特許文献に開示された内容は本願においても開示されたものとする。
【0058】
次に、バルーンを形成するために、成形された(たとえば、共押出成形された)管材をブロー成形してもよい。いくつかの実施形態では、管材をあらかじめ加熱したバルーンの型に配置し(たとえば、中心合わせし)、管腔の開通性を維持するために空気を管材の内部に注入する。所定の温度および時間で均熱後、管材を所定の時間、速度、および温度で所定の長さに伸ばす。次いで、管材内部の圧力を十分に増加して、型内部の管材を径方向に拡張しバルーンを形成する。形成したバルーンを、たとえば折り畳み記憶を強化するために、および/または、所定の形状に折り畳むために、加熱処理されてもよい。
【0059】
場合によっては、バルーンの成形により比較的厚い壁の円錐部を形成することがあり、それによりバルーンの可撓性および追従性が減少することがある。たとえば、成形中に、バルーンの本体部を対角線上に少なくとも6倍に引き伸ばすことができる。その結果、引き伸ばす量が比較的大きいため、本体部のバルーン壁を相対的に薄くすることができる。ただし、バルーンの本体部以外の部分は相対的に引き伸ばす量を少なくしてもよい。たとえば、バルーンの端部はカテーテルシャフトとほぼ同じ径のままとし、約2倍に引き伸ばしてもよい。それにより、バルーンの本体部以外の部分を比較的厚くして、非可撓性にすることができる。本明細書で述べたようにバルーンを形成することによって、バルーンの一部(たとえば、本体部以外)の可撓性を強化することができる。
【0060】
バルーンを管材から形成する方法は、たとえば、2002年10月2日付けで出願された本発明の譲受人に譲渡された米国特許出願第10/263,225号(発明の名称:医療用バルーン(Medical Balloon))、アンダーソン(Anderson)に付与された米国特許第6,120,364号、ワン(Wang)に付与された米国特許第5,714,110号、およびノディ(Noddin)に付与された米国特許第4,963,313号に記載されており、これらの特許文献に開示された内容は本願においても開示されたものとする。他の好適なカテーテルシステムは、たとえば、ワン(Wang)に付与された米国特許第5,195,969号、ハムリン(Hamlin)に付与された米国特許第5,270,086号に記載されており、ボストン サイエンティフィック社(Boston Scientific Corp.)から販売されているRanger(登録商標)システムによって実証されている。また、カテーテルシャフトは、添付された付録Aの米国特許出願第10/645,014号に記載された多層管のいずれであってもよい。
【0061】
他の数多くの実施形態が意図されている。たとえば、添付の付録Aに記載された管材のいずれかの実施形態、たとえば構造を使用して医療用バルーンを形成することができる。複数の薄層を有することによって、応力、ひびや穿刺などの欠陥が分散されるので、バルーンの壁を通って障害を引き起こす箇所まで伝わらないようにすることができる。異なる硬度から形成された複数の層は、応力の分散を助け欠陥の伝達を阻止する一方で、高い破裂強度および低い膨張性を付与することができる。このような層は、たとえば、押出成形により形成された気泡や異物粒子などの欠陥の標準的な寸法よりも厚く形成することができる。
【0062】
本明細書に開示されたすべての特徴は、どのような組合せで組み合わせることもできる。開示されたそれぞれの特徴は、同一、均等、または同様の目的に役立つ代替的な特徴に置き換えることができる。したがって、明確にそうでないと記載されていない限りにおいては、開示される各特徴は、均等の、又は類似する特徴の一例であるものとする。
【0063】
本明細書において参照された全ての公報、出願及び特許は、本願においても開示されたものとする。
他の実施形態は特許請求の範囲に含まれる。
本特許出願は、本出願と同時に出願された米国特許出願第10/645,014号(発明の名称:多層からなる医療器具(Multilayer Medical Devices)、代理人整理番号10527−396001)に関連し、その全体を本明細書に援用する。なお、同特許出願の写しを付録Aに添付する。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】バルーンを担持するカテーテルの実施形態を示す側面図。
【図2】バルーンの一実施形態を示す断面図。
【図3】バルーンの他の実施形態を示す断面図。
【図4】バルーンの別の実施形態を示す断面図。
【図5】バルーンの別の実施形態を示す断面図。
【図6】バルーンの別の実施形態を示す断面図。
【図7】バルーンの別の実施形態を示す断面図。
【図8】バルーンの別の実施形態を示す断面図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部分と、該第1の部分の選択された部分に配置された第2の部分とを有するバルーンを備え、該第1の部分および該第2の部分のそれぞれの厚さが可変であることを特徴とする医療器具。
【請求項2】
前記第1および第2の部分が異なる組成を有する請求項1に記載の器具。
【請求項3】
前記第1の部分が前記バルーンのほぼ全長にわたって延びる請求項1に記載の器具。
【請求項4】
前記第1および第2の部分が異なる硬度を有する請求項1に記載の器具。
【請求項5】
前記第2の部分が前記第1の部分より軟質である請求項1に記載の器具。
【請求項6】
前記バルーンが本体部を有し、前記第1の部分が該本体部の第1の部分において前記バルーンの別の部分よりも厚い請求項5に記載の器具。
【請求項7】
前記バルーンが本体部を有し、前記第1の部分が該本体部の第1の部分において前記バルーンの円錐部よりも厚い請求項5に記載の器具。
【請求項8】
前記第2の部分が、前記第1の部分のほぼ全体にわたって配置される請求項1に記載の器具。
【請求項9】
前記バルーンが前記第1の部分によってほぼ全体にわたって形成される本体部を有する請求項1に記載の器具。
【請求項10】
前記バルーンが円錐部を有し、前記第1の部分の厚さが該円錐部においてほぼ一定である請求項1に記載の器具。
【請求項11】
前記バルーンが円錐部を有し、前記第1の部分の厚さが該円錐部の一部にわたって可変である請求項1に記載の器具。
【請求項12】
前記バルーンが円錐部を有し、前記第2の部分の厚さが該円錐部においてほぼ一定である請求項1に記載の器具。
【請求項13】
前記バルーンが円錐部を有し、前記第2の部分の厚さが該円錐部の一部にわたって可変である請求項1に記載の器具。
【請求項14】
前記部分が前記バルーンのほぼ全長にわたって延びる請求項1に記載の器具。
【請求項15】
前記部分の厚さが前記バルーンの長さに沿って連続的に可変である請求項1に記載の器具。
【請求項16】
前記部分のうちの一部の厚さが、前記バルーンの長さ方向において段階的に可変である請求項1に記載の器具。
【請求項17】
前記バルーンが、本体部と、該本体部より可撓性を有する円錐部とを備える請求項1に記載の器具。
【請求項18】
前記バルーンが、基端部と、該基端部より可撓性を有する先端部とを有する請求項1に記載の器具。
【請求項19】
第1の部分と、該第1の層の選択された部分に配置された第2の部分とを有するバルーンを備え、該第2の部分の厚さが可変であることを特徴とする医療器具。
【請求項20】
前記第2の部分が前記第1の部分より軟質である請求項19に記載の器具。
【請求項21】
前記第1および第2の部分が異なる硬度を有する請求項19に記載の器具。
【請求項22】
前記バルーンが本体部と円錐部とを有し、前記第2の部分が該円錐部よりも該本体部において薄くなっている請求項19に記載の器具。
【請求項23】
前記バルーンが前記第2の部分からほぼ独立した本体部を有する請求項19に記載の器具。
【請求項24】
前記バルーンが本体部と、該本体部より可撓性の高い円錐部を有する請求項19に記載の器具。
【請求項25】
前記第1の部分が前記バルーンのほぼ全長にわたって延びる請求項19に記載の器具。
【請求項26】
前記第2の部分が前記バルーンのほぼ全長にわたって延びる請求項19に記載の器具。
【請求項27】
本体部と、円錐部と、該本体部の一部および該円錐部の一部に延びるポリマーからなる第1の層とを有するバルーンを備え、該ポリマーからなる第1の層が該円錐部における厚さと異なる該本体部における厚さを有することを特徴とする医療器具。
【請求項28】
前記円錐部の一部における第1の層の厚さがほぼ一定である請求項27に記載の器具。
【請求項29】
前記円錐部の一部における第1の層の厚さがテーパ状をなす請求項27に記載の器具。
【請求項30】
前記第1の層の厚さが前記円錐部から前記本体部に向かって増加する請求項29に記載の器具。
【請求項31】
前記バルーンが、前記第1の層の一部上に第2の層をさらに有し、該第2の層が前記第1の層と異なる組成を有する請求項27に記載の器具。
【請求項32】
前記第1および第2の層の全体的な厚さが、前記本体部および前記円錐部においてほぼ一定である請求項31に記載の器具。
【請求項33】
前記第1および第2の層が前記バルーンのほぼ全長にわたって延びる請求項31に記載の器具。
【請求項34】
前記第2の層が前記第1の層より軟質である請求項31に記載の器具。
【請求項35】
前記第1の層が前記円錐部より前記本体部においてより厚くなっている請求項34に記載の器具。
【請求項36】
前記第2の層が前記第1の層より硬質である請求項31に記載の器具。
【請求項37】
前記本体部が前記円錐部より可撓性が低い請求項31に記載の器具。
【請求項38】
前記本体部がほぼ前記第1の層からなる請求項27に記載の器具。
【請求項39】
第1の層と第2の層とを有し、該第1の層の厚さが可変である管材を形成する工程と、該管材を医療用バルーンに形成する工程とを含む医療器具の製造方法。
【請求項40】
前記管材は押出成形される請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記管材を前記医療用バルーンに形成する工程はブロー成形を含む請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記第2の層の厚さが可変である請求項39に記載の方法。
【請求項43】
医療用バルーンであって、
第1の材料と、該第1の材料と異なる第2の材料とから形成された複数の層からなり、該層の少なくとも1つの層の厚さが該バルーンの軸方向において可変であるバルーン。
【請求項44】
前記バルーンは本体部とテーパ状部分とを備え、該本体部および該テーパ状部分が異なる剛性を有する請求項43に記載のバルーン。
【請求項45】
少なくとも2つの層を有する請求項43に記載のバルーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図9a】
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【図9b】
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【図9c】
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【図9d】
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【図9e】
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【図9f】
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【図9g】
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【図9h】
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【図9i】
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【図9j】
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【図9k】
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【図10】
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【図11a】
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【図11b】
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【図11c】
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【図11d】
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【図11e】
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【図12】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−502660(P2007−502660A)
【公表日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−523904(P2006−523904)
【出願日】平成16年8月9日(2004.8.9)
【国際出願番号】PCT/US2004/025716
【国際公開番号】WO2005/021083
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(500332814)ボストン サイエンティフィック リミテッド (627)
【Fターム(参考)】