説明

医療用プローブ

本発明は、骨盤底領域の筋肉に対する電気刺激及びバイオフィードバックトレーニングに用いる、特に骨盤底の理学療法及び診断に用いるプローブシステムにおいて、膣又は直腸に挿入可能なプローブボディを有するプローブと、前記プローブの外側表面上の長さ方向及び周囲方向の複数位置に配置された複数の電極とを備えたプローブシステムであって、前記各電極からのEMG信号を受け取り、骨盤底領域の筋肉の反応をマッピングするために前記各信号を処理するように適応しており、前記プローブに操作的に連結している制御ユニットをさらに備えたプローブシステムに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膣内及び/又は肛門内の電気刺激及びバイオフィードバック(筋反射)トレーニング、特に骨盤底筋、尿道括約筋、並びに内肛門括約筋及び外肛門括約筋のレジストレーション及びトレーニングに用いられるプローブに関する。本発明のプローブは、研究目的にも使用される。
【0002】
特に、これらのプローブは、膣又は直腸の内部の挿入位置、すなわち膣内又は肛門内で使用される。
【背景技術】
【0003】
そのようなプローブは数多く実施され知られている。そのようなプローブの初期のものの一つに、いわゆる圧力プローブがあり、Kegelによる会陰圧測定器として用いられ、AM J.obst Gyneocol. 1948; 65の238〜304頁に記載されている。このプローブの導入以降、骨盤底治療において、膣内及び肛門内の電気刺激及びバイオフィードバックトレーニング用に多くの電極が開発されてきた。
【0004】
膣内及び肛門内の電気刺激及びバイオフィードバックトレーニングは、尿意逼迫及び緊張性尿失禁、肛門機能障害、及び性機能障害の治療に用いられる。治療の最適化を図るためには、刺激やバイオフィードバックトレーニングの主ターゲットである構造体に関する知識が必要である。
【0005】
骨盤底の解剖学的側面及び生理学的側面の両方に関する知識があって、プローブは最適に設計されることになる。ヒトにおける解剖学的違いは難しい問題である。しかし、現在使用されているプローブの多くは経験的に開発されてきた。
【0006】
本発明者らが現在有している知識によると、骨盤底は基本的に肛門挙筋及び恥骨直腸筋から構成されている。骨盤底筋の収縮には、これら二種類の筋肉の収縮が関与していると推測される。肛門挙筋は、排泄過程で活動する筋肉である。肛門挙筋は収縮することにより排便及び排尿を促進する。他方、恥骨直腸筋は、排便排尿制御(continence)過程において活動する筋肉である。恥骨直腸筋は、U字ひも状として垂直に位置し、尿道及び肛門経路を取り巻いている。さらに、外肛門括約筋及び尿道括約筋は、恥骨直腸筋に由来している。恥骨直腸筋の収縮時には、外肛門括約筋及び尿道括約筋も同調して収縮し、尿道及び肛門経路が閉鎖(封止)する。
【0007】
すなわち、恥骨直腸筋自体と、外肛門括約筋及び尿道括約筋とが直接働くことにより制御がなされるのである。
【0008】
括約筋/ストレスによる失禁において、本発明では外括約筋及び/又は骨盤底筋、恥骨直腸筋の強化が電気刺激の主たるターゲットである。しかし、一番のターゲットは筋肉ではなく、骨盤及び/又は陰部の神経線維である。かかる神経繊維が電気刺激で直接活性化されることにより、上記筋肉の活動が間接的に誘導される。
【0009】
急迫性尿失禁に対しては二種類の作用機序があげられる。すなわち、陰部求心性神経が刺激されることにより中枢性反射が生じ排尿筋が抑制され、かつ、遠心性神経が刺激されることにより、骨盤底及び尿道括約筋組織の状態が強化されて防御反射が生じ排尿筋が抑制される。これらの作用機序は、ターゲットも異なり、互いに大きく異なるため、最適なプローブに対する需要が同じであるかどうかは疑問である。バイオフィードバックのレジストレーションの場合と同じように、刺激療法を最適なものとするためには、様々なタイプのプローブが必要とされるであろう。
【0010】
市販の種々のプローブを、骨盤底に対応する理学療法士が日常の療法で使用している標準プロトコールに従った位置で使用し、調べて評価した。
【0011】
肛門プローブ及び膣プローブの配置を調べるために、SSD 1700 Ultrasound(Aloka(R)社)、power Doppler(Bruel-Kjaer Medical社)、及び Falcon Ultrasound scanner Type 2101(Bruel-Kjaer Medical社)と、8658/S型及び1850型のトランスデューサーとを用いて、骨盤底の筋肉組織及び神経血管束の位置を調べた。8658/S型トランスデューサーをBrachyバルーン(Barzell Whitmore Maroon Bells(R)社)と併用した。経肛門コイルを備えた0.5−T MRIスキャナー(Philips NT5, Philips Medical Systems(R)社, ベスト、オランダ)を用いて骨盤底の解剖学的構造を詳しく調べた。本発明者らは、骨盤底の解剖学的構造、並びに骨盤底理学療法におけるプローブの配置について文献を詳細に検討した。二回以上の出産経験を有し、骨盤底機能障害のない健康な女性2名についてプローブの最適配置を評価した。記録リングから筋肉までの距離は、恥骨直腸筋及び外肛門括約筋の近位部で表される。肛門プローブの位置は、超音波トランスデューサーを膣内に導入することにより左側褥瘡部位で調べた。膣プローブの位置は、超音波トランスデューサーを肛門管に導入した状態で、截石位で調べた。かかる解剖学的構造を、本発明者らの研究所のプロトコールに基づき経肛門コイルを用いて行ったMRI試験の数多くの例と比較した。試験中、上記2名の女性に対し、力を入れていきむように依頼した。3週間の間隔を空けて上記被験者両名に対して繰り返し測定を行った。試験用ブローブを使用してから、次の試験用プローブを使用するまでの間隔は15分間であり、上記両名の女性に速収縮を10回と緩徐収縮を5回行ってもらった。プローブ5種(膣内用3種及び肛門用2種)を試験し、技術的に記した。3種類のプローブは縦方向の記録プレートを有し、2種類のプローブは同心円状の記録プレートを有する。
【0012】
Verity Medical Ltd(R)社のNeen膣プローブは、その全長が7.5cmであり、周囲が10cmである。この膣プローブには縦方向の記録プレートが2個備わっている。プローブの頂部と両記録プレートとの距離は、1.5cmである。前記2個の記録プレートは、プローブボディに沿って設けられ、その幅は1.5cm、長さは3.5cmである。プローブの根元から両記録プレートまでの距離は3.0cmである。このプローブは、膣入口にリングがくるまで膣内に挿入される。
【0013】
Verity Medical Ltd(R)社のVeriprobe膣プローブは、縦方向のプレートを備え、その全長が8.8cm、周囲が8.2cmである。縦方向に長方形の2個の記録プレートは、プローブボディに沿って設けられ、その幅は2.0cm、長さは3.5cmであり、プローブのボディと同一平面上にある。2個の記録プレート間の距離は、2.0cmである。記録プレートから頂部までの距離は1.5cmであり、底部までの距離は2.1cmである。プローブの外側部分は、長さ1.3cmである。このプローブは、膣入口にハンドルがくるまで挿入される。
【0014】
V.M.P. Bioparc(R)社のEMG 2-ring vaginal probe 2 mmには、円状の記録プレートが2個備わっている。このプローブの全長は12.7cm、周囲は7.7cmである。上のリングからプローブの頂部までの距離は1.4cmである。2個のリング間の距離は1.8cmであり、リングの幅はいずれも1.0cmである。このプローブは一番薄い部分が膣入口にくるまで挿入される。
【0015】
Verity Medical Ltd(R)社のNeen肛門プローブであるanuformは、その全長が8.4cm、最大周囲が7.0cmである。このプローブは、縦方向の2個の記録プレートを有するボディ、ネック部、及び開放リングから構成されている。記録プレートは台形状である。記録プレートの遠位側は0.5cm幅であり、近位側は1.0cm幅である。記録プレートの長さは2.7cmである。2個の記録プレート間の距離は、約2.0cmである。記録プレートからプローブ頂部までの距離は1.0cmであり、底部までの距離は0.5cmである。リングの長さは3.0cmである。このプローブは、リングが肛門縁にくるまで挿入される。
【0016】
V.M.P. Bioparc(R)社のEMG 2-ring anal probe 2 mmには、円状の記録プレートが2つ備わっている。このプローブの全長は13.6cmである。プローブ頂部の周囲は5.0cmである。遠位側の記録リングと頂部の距離は1.8cmである。2個のリング間の距離は1.0cmである。2個のリングの幅はいずれも0.5cmである。近位側のリングと次の突起部との距離は1.0cmである。突起部は3個あり、突起部と突起部との間隔はそれぞれ1.0cmである。これらの突起部は、固定を目的としている。近位側の突起部とプローブ底部の距離は6.0cmである。このプローブは、近位側の突起部が肛門縁にくるまで挿入される。
【0017】
本発明のプローブの種類に関する文献は数少ない。検討した市販のプローブは、プローブボディの形状及び大きさや、記録電極の種類(プレート又はリング)など、その設計が多岐にわたっている。それにも関わらず、これら全てのプローブは、骨盤底機能障害の治療中に正しく配置するという、同じ目的を有している。正しい配置が意味するものは、刺激又はレジストレーションが必要な構造(神経、外括約筋、恥骨直腸筋、その他の骨盤底筋)によって異なる。筋肉の解剖学的構造は大まかにいって三層の筋肉、すなわち、下方から上方にむかって外肛門括約筋、恥骨直腸筋、及び挙筋群から構成されていると説明できる。膣内電極の計測結果は、恥骨直腸筋の近位(Veriprobe)と恥骨直腸筋の6cm上方(EMG 2-ring vaginal probe 2 mm)とでは異なる。肛門電極は、外肛門括約筋の隣接部、すなわち恥骨直腸筋の1cm下方(Neen Probe、anuform)と、恥骨直腸筋の2cm上方で外肛門括約筋の4cm上方(EMG probe anal, 2-rings)とでは異なる。各対象者及び各プローブにつき、順番に関係なく計測は再現可能である。プローブの読取りは、隣接開口部(orifice)における超音波プローブの有無に影響されなかった。急迫性尿失禁の治療における電気刺激の場合、骨盤神経叢及び陰部神経(5)の求心性神経線維に集中して刺激すべきであり、或いは緊張性尿失禁におけると同様に防御反射も関係している場合には、外括約筋及び骨盤底筋肉組織に集中して刺激すべきである。この点に関し、あらゆる骨盤底筋肉の中でも恥骨直腸筋が最も関連性のある筋肉である(15)。便失禁に電気刺激を用いる場合、外肛門括約筋及び恥骨直腸筋を集中的に刺激する。バイオフィードバックトレーニングでは、尿道括約筋及び肛門括約筋、並びに恥骨直腸筋の機能を記録することを本発明者らは目的とする。バイオフィードバックトレーニングでは、電極プレートと筋肉自体とが密接することが重要であると見い出された。しかし、骨盤底機能障害(緊張性及び急迫性の尿失禁、便失禁、排便困難)に対する電気刺激では、求心性神経及び/又は遠心性神経の刺激が必須であり、関連筋肉を直接刺激することは必ずしも必須ではないことが見い出されている。本発明者らの研究の過程で判明した電気刺激が奏功するための一般的な要件は、刺激強度が、関連神経にインパルスを生じさせるのに十分な強度でなければならないということである。閾値強度は、神経線維の直径、神経との距離、刺激電極の大きさ、及びパルス形態と反比例して種々に変化する。試験したプローブは全て大きな電極領域を有していた。そのため、奏功するためには比較的大きな電流が必要となるが、そのこと自体には害がない。電極が外肛門括約筋及び/又は恥骨直腸筋に位置しない場合、バイオフィードバックトレーニングでは骨盤底だけではなく、活動している全ての周辺筋肉の合計や腹腔内圧に対する反応といった、全領域の複合EMG(筋電位)信号を実際にはレジストレーションしていると本発明者らは推定する。本発明者らの知見に基づき、本発明者らが骨盤底機能障害の治療のための電気刺激及びバイオフィードバックトレーニングに現在使用しているプローブの電極は、本発明者らが刺激又はレジストレーションすることを望む構造にとって最適ではないと結論する。
【0018】
膣内超音波によってプローブの肛門内配置を観察したところ、骨盤底を収縮させる試みの間、外肛門括約筋が「滴(ドロップ)」状をとり、後方に「巻き戻される」ことが明らかになった。同時に、尿道自体が伸びて長くなり、尿道括約筋及び恥骨直腸筋が収縮する際に下方に引っ張られる。他方、緊張時には尿道が短くなり、上方に動く。
【0019】
プローブを最適に取り付けるのは更に複雑となるだろう。Hussain(17)によると、三つの面(plane)全てにおいて性差が観察された。男性と女性の解剖学的構造は明らかに異なるので、骨盤底機能障害の治療には異なる電極が必要となる。超音波及びMRIの画像から、電極が骨盤神経叢の近くに位置することがわかった。求心性又は遠心性の刺激以外にも、急迫性尿失禁に対する膣内刺激の作用機序である運動神経もまた膀胱壁又は尿道の直接刺激と関係している可能性がある。外肛門括約筋に、又は肛門管直腸接合部の下の肛門管内に、又は膣入口のすぐ後ろに電極を配置する場合、電気刺激は患者にとって激痛を与えることになる。低い強度であっても皮膚及び粘膜を直接刺激することが、恐らくこのような痛覚の原因であろう。バイオフィードバックの場合、刺激用プローブの最適位置は全く異なる。本発明者らの見解による理想的なプローブは以下のとおりである。
1.レジストレーション;
・膣:恥骨直腸筋、外尿道括約筋;
・肛門:恥骨直腸筋、外肛門括約筋、肛門挙筋;
2.刺激したい構造を刺激する:
神経又は筋肉;
3.局部解剖学的構造に形状及び大きさを適応させる(逆は同じからず);
4.患者にとっての快適さ;
5.位置の維持;
6.基準電極を組み込むべき;
7.滅菌に適している;
8.耐久性がある;
9.電極のリング及びプレートを備えている。
【0020】
結論
試験した5種類の市販プローブは、大まかにいって筋肉の3つの層との関係性がそれぞれ大きく異なり、これらのプローブが全て最適な使用に適している可能性は低い。本発明者らの考えでは、本発明者らが現在使用している肛門プローブ及び膣プローブの直径は、経膣出産の経験のある女性にとっても大きすぎる。
【0021】
米国特許第6741895号は、女性の性機能障害を研究し、できれば治療するために、膣の神経を刺激する膣プローブを開示している。実施形態の一つでは、選択的に励起可能な副要素(例えば振動刺激)の配列(array)をプローブに備えてもよい。かかる刺激はコンピュータを使って制御され、被験者は口頭で応答することができる。
【0022】
米国特許第6356777号は、早期陣痛を防ぐために、電気パルスを用いて子宮及び子宮頚部の筋細胞及び神経を治療するプローブを開示している。このプローブは、子宮、子宮頚部、又は膣の壁部に侵入する形態をとることができ、或いは膣に挿入可能な形態をとることもできる。挿入可能なプローブは、例えば上記市販のプローブ等から知られている環状電極を有する。
【0023】
WO2005/096926は、括約筋で発生する筋電信号を検出するセンサーであって、かかる目的のためにプローブ表面の周囲に数個のリング状電極として配置された電極を有するセンサーを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】米国特許第6741895号
【特許文献2】米国特許第6356777号
【特許文献3】WO2005/096926
【非特許文献】
【0025】
【非特許文献1】AM J.obst Gyneocol. 1948; 65; pages 238-304
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
本発明の目的は、現行のプローブの欠点の少なくとも一部を克服することにある。
【0027】
本発明の他の目的は、計測と電気刺激の両方に使用できるプローブを提供することにある。
【0028】
本発明の他の目的は、快適に使用できるプローブを提供することにある。
【0029】
本発明のさらに他の目的は、上述した医学上の問題に関連するいくつかの治療目的及びいくつかの診断目的に用いることができるプローブを提供することにある。
【0030】
本発明のさらに他の目的は、膣内及び肛門内の両方に使用できるプローブを提供することにある。
【0031】
他の目的は、筋肉及び/又は神経を選択的に刺激できるプローブを提供することにある。
【0032】
本発明のさらに他の目的は、様々な人の生理学的特徴に適合する形状をしたプローブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0033】
上記の目的を達成するため、本発明は、骨盤底領域の筋肉に対する電気刺激及びバイオフィードバックトレーニングに用いる、特に骨盤底の理学療法及び診断に用いるプローブシステムにおいて、膣又は直腸に挿入可能なプローブボディを有するプローブと、前記プローブの外側表面上の長手方向及び周囲方向の複数位置に配置された複数の電極とを備えたプローブシステムであって、前記各電極からのEMG信号を受け取り、骨盤底領域の筋肉の反応をマッピングするために前記各信号を処理するように適応しており、前記プローブに操作的に連結している制御ユニットをさらに備えたプローブシステムを提供する。
【0034】
プローブの長手方向及び周囲方向の両方に沿って電極を種々の場所に設けることにより、治療又はトレーニングすべき領域の正確な位置を決定することが可能となった。さらに、かかる正確な位置に刺激を与えることができる。多くの場合、失禁問題を克服又は治療するには、括約筋ではなく若しくは括約筋だけではなく、骨盤底筋肉を鍛える必要があることが見い出された。実際は、殆どの患者にとって括約筋を刺激することは不快なことである。マッピングソフトウエアを用いることにより筋活動のマップが提供される。このマップは二次元(2D)マップでもよいが、筋活動を特定するためには、筋活動の三次元(3D)マップを提供することが好ましい。
【0035】
本発明のさらなる実施形態は、従属項及び以下に記載されている。
【0036】
本発明のプローブの一実施形態では、電極がパッチ状電極を含む。
【0037】
本発明のプローブの一実施形態では、電極が、外側表面上に規則的なマトリックスパターンで配置されている。
【0038】
本発明のプローブの一実施形態では、電極が、プローブ周囲の表面上で数個のリングとして集合化している。
【0039】
本発明のプローブの一実施形態では、電極が、プローブの表面上で数個の長手方向の列として集合化している。
【0040】
本発明のプローブの一実施形態では、電極が、プローブの表面上で数個の長手方向の列として集合化し、電極の各列が個別に使用可能である。
【0041】
本発明のプローブの一実施形態では、電極が、プローブ周囲の表面上で数個のリングとして集合化し、電極の各リングが個別に使用可能である。
【0042】
本発明のプローブの一実施形態では、電極が、EMG単極信号を検出し、少なくとも一つの電気信号を筋層に送る単極電極である。
【0043】
本発明のプローブの一実施形態では、電極が、ステンレススチールの電極表面を有する。
【0044】
本発明のプローブの一実施形態では、プローブボディが、主として非導電材、好適には生体適合性のある合成材を含む。
【0045】
本発明のプローブの一実施形態では、プローブが、実質的にロッド形状であり、好適には実質的に剛性ロッドである。ロッド形状のメインボディが非導電ポリマー素材からなることが好ましい。殆どの場合、かかるプローブは成形され、具体的には電極と配線がポリマー材に組み込まれメインボディがソリッド成形されるような成形を行う。挿入したときの感触がよく、抜き出すのが簡単なポリマー材を用いることが好ましい。好適なポリマー材は当業者にはよく知られている。
【0046】
本発明のプローブの一実施形態では、プローブが、丸みのある先端部を有する。
【0047】
本発明のプローブの一実施形態では、電極が、それぞれ少なくとも4個の電極からなる少なくとも6個のグループに集団化されている。
【0048】
本発明のプローブの一実施形態では、プローブが、作動可能な状態で制御ユニットに接続されている。
【0049】
本発明のプローブの一実施形態では、各電極が、制御ユニットにワイヤーで接続されている。
【0050】
本発明のプローブの一実施形態では、プローブの後側からワイヤーが出ている。かかるプローブの扱いを一層簡単にし、正確かつ再現可能な計測結果を確保するため、プローブの挿入深度を決定する停止部を設けてもよい。かかる停止部は、プローブの後端部の近くに位置するリング形状として設けてもよい。具体的な実施形態では、このリングのプローブ上における長手方向の位置は調節可能である。さらに、一実施形態では、プローブの後端部を厚くしてもよい。そのような実施形態では、厚みが増す部分の手前に必要に応じてリング又は停止部が設けられる。
【0051】
本発明のプローブの一実施形態では、プローブ上の各電極の位置が、制御ユニットに記憶される。
【0052】
本発明のプローブの一実施形態では、制御ユニットが、電極から計測信号を得るための計測ユニットを有する。
【0053】
本発明のプローブの一実施形態では、計測ユニットが、各電極からの信号を個別に計測することに適応している。
【0054】
本発明のプローブの一実施形態では、制御ユニットが、骨盤底領域における選択した筋肉、神経、又は前記選択した筋肉若しくは神経の一部に作用するために電極に電気信号を送る活性化ユニットを有する。電極は、リング方向に活動させてもよく、又は電極の長手方向の1以上の列を同時に活動させてもよい。しかし多くの場合、各電極はそれぞれ個別に信号を受け取る。
【0055】
本発明のプローブの一実施形態では、活性化ユニットが、計測ユニットからの計測信号に基づいて電気信号を送るように適応している。
【0056】
本発明はさらに、骨盤底領域の筋肉に対する電気刺激及びバイオフィードバックトレーニングに用いる、特に骨盤底の理学療法及び診断に用いる方法であって、
−骨盤底領域の筋肉又は神経からの電気信号を、電極を用いて測定するステップ、及び
−前記測定した電気信号に基づき、骨盤底領域における前記筋肉の一部の筋肉に収縮及び弛緩を生じさせるために、前記電極に電気信号を送るステップを含み、先行請求項のいずれかに記載のプローブシステムを用いる方法に関する。
【0057】
この方法で本発明のプローブを用いることにより、特定の筋肉の状況及び症状を判断することが可能となり、各筋肉にそれぞれ特異的な刺激を与えることが可能となる。このことは、各電極を個別に活動させることによってだけではなく、さらに各電極の具体的な形状及び強度を他の電極への信号と関連付けて決めることによって可能となる。
【0058】
本方法の一実施形態では、さらに以下のステップを含む。
−骨盤底領域の筋肉又は神経からの電気信号を、電極を用いて計測するステップ、
−骨盤底領域における前記筋肉の筋張力を、前記電気信号から測定するステップ、及び
−前記計算された筋張力に基づき、前記電極に電気信号を送り、骨盤底領域における選択された筋肉若しくは前記筋肉の一部に収縮及び/又は弛緩を生じさせるステップ
【0059】
本発明はさらに、先行請求項のいずれかに記載のプローブを制御する制御ユニットにおける作動時に、前記制御ユニットに以下のステップ
−前記各電極からの電気信号を読み取るステップ;
−骨盤底領域における筋肉の筋張力を前記電気信号から計算するステップ;
−各電極に送る電気信号を計算するステップ;
−前記計算された電気信号を前記電極に送るために前記プローブを制御するステップ
を実行させるコンピュータプログラム製品に関する。
【0060】
本発明の実施形態を以下に詳しく説明し、添付の図面によって示す。図面は以下のとおりである。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】制御ユニットを備えた本発明によるプローブを示す図である。
【図2】図1のプローブを用いた信号処理の経路を示す図である。
【図3】図1のプローブを用いた電気刺激及び治療の経路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0062】
図1は、本発明のプローブ1の考えられる実施形態を示す図である。このプローブ1は、ロッド状ボディ2を有する。プローブ1の大きさは、男性や女性を問わず様々な人々に用いることができ、膣内及び肛門内のいずれにも用いることができるように選択される。かかる目的のために、プローブ1の直径は、約1〜2cmとする。このプローブには、プローブの長手方向及び周囲の両方に位置して複数の電極パッチ4が備わっている。電極に覆われている部分のプローブの長さは、約10〜15cmであることが好ましい。
【0063】
さらに、プローブは丸みのある先端部3を有し、挿入時にあってもプローブを取り扱うことができるように、プローブ1は電極4を超えて延伸している。
【0064】
再現性よくプローブを配置し、使用中その場所に維持するため、プローブ1は、円周状の停止表面7を有する。この停止表面7は、プローブ1上をスライド可能であり、その位置をプローブ1上に固定するための固定手段8が設けられている。本実施形態では、プローブ1上の位置を固定する固定スクリューが設けられている。本実施形態における停止表面7はディスクである。この停止部は、プローブ1の挿入深度を決める停止部として、また、その位置を固定する固定手段としての両方の機能を有する。かかる目的を達成するため、使用時には、その円周端部を患者の大腿間又は股間で挟む。
【0065】
本実施形態では、電極4がワイヤー5によって制御ユニット6にワイヤー接続されている。この制御ユニット6は、各電極4からの電気信号を読み取り、選択した電極に調節可能な電気信号を送るソフトウエアを備えた汎用コンピュータであってよい。さらに、かかるソフトウエアは、コンピュータに設けられたメモリに読み込まれた電気信号を記憶(store)することができ、また、起動する電極として選択された電極や、かかる電極に付与する強度、長さ、場合によりパルスの形状に対応する設定を記憶することができる。
【0066】
好適な実施形態では、制御ユニットは、使用者が所定の筋肉を活動させるように指示された後などに電気信号を読み取り、次に計測値と、できれば医師の療法士が入力した選択された治療プログラムとに基づき活動プログラムを計算し、計算した信号を選択した電極に送り、活動の間若しくは活動後に、各電極からの電気信号を再び読み取り、これら信号の効果を計算し、医師の療法士にフィードバックする。必要に応じ、医師の療法士は設定を変更することができ、或いは読取り結果に基づき制御ユニットがその設定を調整することができ、変更若しくは調整された信号を同じ又は別の電極に送る。
【0067】
図2は、制御ユニット診断相における使用時のプローブ1を示す。プローブ1はEMG信号を提供する筋肉層10に取り囲まれている。電気信号は、高インピーダンス増幅器11によって処理され、24ビットのAD変換器(ADC)を用いてデジタル信号に転換され、そしてハイ/ローフィルター13を用いてフィルタリングされる。
【0068】
この後、当業者には公知のEMG信号分析ユニット15を使用して信号を処理する。実際には、各電極4毎にEMG信号が生じる。電極は単極電極であるため、信号は絶対値として用いることができる。これらの信号を1以上の別の電極4の値に対して標準化(calibrate)することもでき、別の基準を同じ目的で使用することもできる。制御ユニット6を用いることにより、数個の電極を、例えばリングや長手方向のプレートとして互いに機能的に連結させることもできるが、計測結果に適応させた構造とすることがさらによい。
【0069】
マッピングソフトウエアを使用することにより、電極4の全て又は一部に基づいて筋活動の3Dマップを作成することができる。
【0070】
図3は治療相における使用時のプローブ1を示し、やはりプローブ1が筋肉層10に取り囲まれている。この相では、刺激ユニット17が、各電極4から送られてくる電気信号を計算する。刺激ユニット17は、各電極用の信号(形状、強度、継続時間、パターン)を作製するジェネレーター16を制御する。
【0071】
上記の記載は、好適な実施形態の実施を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によってのみ限定されるものである。本明細書の記載に基づき種々の変更を行うことは当業者には自明であり、かかる変更も本発明の精神及び範囲に包含されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨盤底領域の筋肉に対する電気刺激及びバイオフィードバックトレーニングに用いる、特に骨盤底の理学療法及び診断に用いるプローブシステムであって、膣又は直腸に挿入可能なプローブボディを有するプローブと、前記プローブの外側表面上の長手方向及び周囲方向の複数位置に配置された複数の電極とを備え、前記各電極からのEMG信号を受け取り、骨盤底領域の筋肉の反応をマッピングするために前記各信号を処理するように適応しており、前記プローブに操作的に連結している制御ユニットをさらに備えたプローブシステム。
【請求項2】
電極がパッチ状電極である、請求項1に記載のプローブシステム。
【請求項3】
電極が、外側表面上に規則的なマトリックスパターンで配置された、請求項1又は2に記載のプローブシステム。
【請求項4】
電極が、プローブ周囲の表面上で数個のリングとして集合化している、請求項1〜3のいずれかに記載のプローブシステム。
【請求項5】
電極が、プローブの表面上で数個の長手方向の列として集合化している、請求項1〜4のいずれかに記載のプローブシステム。
【請求項6】
電極が、プローブの表面上で数個の長手方向の列として集合化し、前記各電極列が個別に使用可能である、請求項1〜5のいずれかに記載のプローブシステム。
【請求項7】
電極が、プローブ周囲の表面上で数個のリングとして集合化し、前記各電極リングが個別に使用可能な、請求項1〜6のいずれかに記載のプローブシステム。
【請求項8】
電極が、EMG単極信号を検出し、少なくとも一つの電気信号を筋層に送る単極電極である、請求項1〜7のいずれかに記載のプローブシステム。
【請求項9】
電極が、ステンレススチールの電極表面を有する、請求項1〜8のいずれかに記載のプローブシステム。
【請求項10】
プローブボディが、主として非導電材、好適には生体適合性のある合成材を含む、請求項1〜9のいずれかに記載のプローブシステム。
【請求項11】
プローブが、実質的にロッド形状であり、好適には実質的に剛性ロッドである、請求項1〜10のいずれかに記載のプローブシステム。
【請求項12】
プローブが、丸みのある先端部を有する、請求項1〜11のいずれかに記載のプローブシステム。
【請求項13】
電極が、それぞれ少なくとも4個の電極からなる少なくとも6個のグループに集団化されている、請求項1〜12いずれかに記載のプローブシステム。
【請求項14】
各電極が、制御ユニットにワイヤーで接続された、請求項1に記載のプローブ。
【請求項15】
ワイヤーが、プローブの後側から出ている、請求項14に記載のプローブ。
【請求項16】
プローブ上の各電極の位置が制御ユニットに記憶されている、請求項1〜15のいずれかに記載のプローブ。
【請求項17】
制御ユニットが、電極から計測信号を得るための計測ユニットを有する、請求項1〜16のいずれかに記載のプローブ。
【請求項18】
計測ユニットが、各電極からの信号を個別に計測することに適応している、請求項17に記載のプローブ。
【請求項19】
制御ユニットが、骨盤底領域における選択した筋肉、神経、又は前記選択した筋肉若しくは神経の一部に作用するために電極に電気信号を送る活性化ユニットを有する、請求項1〜18のいずれかに記載のプローブ。
【請求項20】
活性化ユニットが、計測ユニットからの計測信号に基づいて電気信号を送るように適応している、請求項19に記載のプローブ。
【請求項21】
プローブが、プローブの挿入深度を設定するための停止表面、特にプローブ上に調整可能位置を備えた停止表面をさらに有する、請求項1〜20のいずれかに記載のプローブ。
【請求項22】
プローブが、使用時の挿入位置を固定するための固定手段をさらに有する、特にプローブが、プローブの回転軸に沿ってプローブ上をスライド可能なディスクを有する、請求項21に記載のプローブ。
【請求項23】
骨盤底領域の筋肉に対する電気刺激及びバイオフィードバックトレーニング、特に骨盤底の理学療法及び診断に用いる方法であって、請求項1〜22のいずれかに記載のプローブシステムを用い、以下のステップを含む方法。
−骨盤底領域の筋肉又は神経からの電気信号を、電極を用いて測定するステップ、及び
−前記測定した電気信号に基づき、骨盤底領域における前記筋肉の一部の筋肉に収縮及び弛緩を生じさせるために、前記電極に電気信号を送るステップ
【請求項24】
以下のステップを含む請求項23に記載の方法。
−骨盤底領域の筋肉又は神経からの電気信号を、電極を用いて計測するステップ、
−骨盤底領域における前記筋肉の筋張力を、前記電気信号から測定するステップ、及び
−前記計算された筋張力に基づき、前記電極に電気信号を送り、骨盤底領域における選択された筋肉若しくは前記筋肉の一部に収縮及び/又は弛緩を生じさせるステップ
【請求項25】
請求項1〜24のいずれかに記載のプローブシステムを制御する制御ユニットにおける作動時に、前記制御ユニットに以下のステップを実行させるコンピュータプログラム製品。
−前記各電極からの電気信号を読み取るステップ;
−骨盤底領域における筋肉の筋張力を前記電気信号から計算するステップ;
−各電極に送る電気信号を計算するステップ;
−前記計算された電気信号を前記電極に送るために前記プローブを制御するステップ

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−538176(P2009−538176A)
【公表日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−511971(P2009−511971)
【出願日】平成19年5月23日(2007.5.23)
【国際出願番号】PCT/NL2007/050238
【国際公開番号】WO2007/136266
【国際公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(508348417)パブリークレヒテリケ レヒトスペルスーン アカデミッシュ ジーケンハウス ライデン エイチ.オウ.ディー.エヌ. レイズ ユニベルシテール メディシュ シーイー (1)
【氏名又は名称原語表記】PUBLIEKRECHTELIJKE RECHTSPERSOON ACADEMISCH ZIEKENHUIS LEIDEN H.O.D.N. LEIDS UNIVERSITAIR MEDISCH CE
【Fターム(参考)】