説明

医療用ペースト注入混練器

【課題】操作が容易で、かつ、専用の注入ガンを必須としないでペーストの混練および注入が可能である医療用ペースト注入混練器を提供する。
【解決手段】医療用ペースト注入混練器は、シリンダと、仕切り具と、ストッパと、シャフト部と、攪拌部と、ハンドル部を備える。シャフト部は、ハンドル部と回動可能に係合する突状係合部を有し、ハンドル部の内側には、シャフト部の長手方向とハンドル部の長手方向が同じ向きになった状態において、突状係合部と係合しつつ突状係合部を摺動させることによってシャフト部がハンドル部内に収納された収納状態にするための略直線状のガイド部を有し、ガイド部は、その一端においてガイド部の中心線からオフセットした位置に、シャフト部とハンドル部が回動する際に突状係合部を回動可能に支持するためのオフセット係合部を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用ペースト注入混練器に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用ペースト注入混練器は、医療分野等において用いられる骨ペースト(骨ペーストには、例えばリン酸カルシウムを主成分とするものがある)を混練して注入するための器具である。このような医療用ペースト注入混練器としては、例えば特許文献1に記載されたものが知られている。この医療用ペースト注入混練器は、粉体または粒体成分を殺菌して密封した状態に保持する第1容器と、該第1容器と結合可能で液体成分を殺菌して密封した状態に保持する第2容器とを備え、液体成分を第2容器から第1容器内に排出するために、第1容器内に設けられ且つ密封状態で第1容器から導出される混合軸上に設けられた混合機構を動かすことにより、第1容器内で前記両成分を十分均一に混合することができる構成とされていた。
【0003】
【特許文献1】特表2003−527197号公報
【0004】
従来の医療用ペースト注入混練器では、混練後のペーストを注入するに際し、まず不要になったシャフト部を破断させ、ついで専用の機械式注入ガンを使用してペーストを押し出していた。このため、従来は、シャフト部を破断させる作業に手間取るおそれがあった。さらに、専用の注入ガンを必要としていたためコスト高を招くという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、操作が容易で、かつ、専用の注入ガンを必須としないでペーストの混練および注入が可能である医療用ペースト注入混練器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
医療用ペースト注入混練器であって、
一端が開口し他端にノズル部を有するシリンダと、
前記シリンダの内部を軸線方向に摺動可能な仕切り具と、
前記仕切り具を前記シリンダの開口側に係留および解除が可能なストッパと、
前記仕切り具の中心を貫く貫通孔に挿通され、前記貫通孔を出入りする軸線方向への往復運動と前記軸線を中心とする回動運動とが可能なシャフト部と、
前記シャフト部の一端であって前記シリンダ内に位置する部分に設けられた攪拌部と、
前記シャフト部の他端であって前記シリンダ外に位置する部分に設けられたハンドル部と、
を備え、
前記シャフト部は、前記ハンドル部と回動可能に係合する突状係合部を有し、
前記ハンドル部の内側には、前記シャフト部の長手方向と前記ハンドル部の長手方向が同じ向きになった状態において、前記突状係合部と係合しつつ前記突状係合部を摺動させることによって前記シャフト部が前記ハンドル部内に収納された収納状態にするための略直線状のガイド部を有し、
前記ガイド部は、その一端において前記ガイド部の中心線からオフセットした位置に、前記シャフト部と前記ハンドル部が回動する際に前記突状係合部を回動可能に支持するためのオフセット係合部を有することを特徴とする、医療用ペースト注入混練器。
こうすれば、使用者がハンドル部を操作することで、シャフト部の一端に設けられた攪拌部を操作することができ、ペーストの混練を容易に行うことができる。また、使用者がシャフト部を収納状態とする際は、オフセット係合部が突状係合部を支持することによって回転軸のぶれを抑止し、スムーズな操作を実現することができる。さらに、収納状態において、使用者がハンドル部を軸線方向に押圧することによりペーストの注入を容易に行うことができる。これらの結果、操作が容易で、かつ、専用の注入ガンを必須としないでペーストの混練および注入が可能である医療用ペースト注入混練器を提供することができる。
【0008】
[適用例2]
適用例1記載の医療用ペースト注入混練器であって、
前記シャフト部と前記ハンドル部は、前記シャフト部の長手方向と前記ハンドル部の長手方向が約90度の向きになった直交状態において互いに係合して前記直交状態を保持する第1の固定用係合部材をそれぞれ備えることを特徴とする、医療用ペースト注入混練器。
こうすれば、シャフト部とハンドル部が直交状態で保持されるため、使用者がペーストを混練する際の操作性を向上させることができる。
【0009】
[適用例3]
適用例1または2記載の医療用ペースト注入混練器であって、
前記仕切り具と前記ハンドル部は、前記収納状態において互いに係合する第2の固定用係合部材をそれぞれ備えることを特徴とする、医療用ペースト注入混練器。
こうすれば、仕切り具とハンドル部が固定されるため、使用者がペーストを注入する際の操作性を向上させることができる。
【0010】
[適用例4]
適用例1ないし3のいずれか一項記載の医療用ペースト注入混練器であって、
前記シャフト部と前記ハンドル部は、前記直交状態において互いに係合することで、前記シャフト部と前記ハンドル部を前記シャフト部の軸線方向に固定する第3の固定用係合部材をそれぞれ備えることを特徴とする、医療用ペースト注入混練器。
こうすれば、シャフト部とハンドル部が直交状態になった際に、シャフト部とハンドル部が、シャフト部の軸線方向に対して固定されるため、使用者がペーストを混練する際の操作性を向上させることができる。
【0011】
[適用例5]
適用例1ないし4のいずれか一項記載の医療用ペースト注入混練器であって、
前記攪拌部は、前記シャフト部から放射状に突出する羽根を有する羽根形であることを特徴とする、医療用ペースト注入混練器。
こうすれば、攪拌部をほぼ平らに形成することが可能となる。攪拌部は、ペースト注入時に仕切り具とノズル部の間に挟まるため、攪拌部をほぼ平らに形成すれば、ペースト注入時において、ハンドルを押しきった後、器具内に残留するペースト量を僅かとすることができる。
【0012】
[適用例6]
適用例1ないし5のいずれか一項記載の医療用ペースト注入混練器であって、
混練対象のペーストは、リン酸カルシウムを主成分とする骨ペーストであることを特徴とする、医療用ペースト注入混練器。
こうすれば、骨や歯に対する親和性の高い、医療用に適した骨ペーストを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明の実施の形態および実験結果を以下の順序で説明する。
A.第1実施例:
B.第1実施例の変形例:
C.第2実施例:
D.他の変形例:
【0014】
A.第1実施例:
(A1)各部の構成:
図1は、医療用ペースト注入混練器のペースト混練時の状態を示す縦断面図である。医療用ペースト注入混練器1は、シリンダ2と、ピストン3と、ストッパ4とを備えている。シリンダ2は、その内部に、例えば、リン酸カルシウムを主成分とする骨ペーストといった医療用のペーストを保持するための容器である。ピストン3は、ペーストの混練および注入に用いる。ストッパ4は、ペーストの混練時において、シリンダ2内部を密閉状態に保持するために用いる。
【0015】
シリンダ2は、所定の長さを有する円筒体2aと、ノズル部2bと、フランジ2cとを備えている。ノズル部2bは、円筒体2aの一端側に形成されており、その外周にネジ2f(例えば、ルアーロックネジ)を有している。ネジ2fには、ネジ機構により着脱可能な略円柱形状を有するキャップ2gが嵌め込まれている。このキャップ2gを外すことによって、ノズル部2bには、チューブや注射針等を取り付けることができる。なお、キャップ2gの径は、円筒体2aの径と同様もしくは円筒体2aの径よりも大きく形成することが好ましい。そうすれば、キャップ2gを嵌めた状態で、キャップ2gを下側にして円筒体2aを立てておくことができるためである。フランジ2cは、円筒体2aの開口側端面から外部に向かって突出する長円形の鍔状を有し、長円形の湾曲辺2dが、円筒体2aの外部に大きく張り出している。
【0016】
ピストン3は、仕切り具3aと、シャフト部3bと、攪拌部3cと、ハンドル部3dとを備えている。仕切り具3aは、シリンダ2の内外を仕切ると共に、シリンダ2の内部をシリンダ2の軸線方向に摺動可能な合成樹脂製の部品である。なお、仕切り具3aについての詳細は後述する。シャフト部3bは、丸棒であって、その長手方向の長さはシリンダ2の円筒体2aの深さよりも若干長く形成されている。シャフト部3bの一端であって、シリンダ2の内部に位置する部分には、放射状に突出する羽根を有する羽根形の攪拌部3cが形成されている。なお、攪拌部3cの羽根部分には、ペーストを均一に混練するための切り込みを設けることが好ましい。例えば、この切り込みは格子状の溝とすることができる。また、本実施例における羽根の枚数は4枚であるものとしているが、任意の枚数にすることができる。このように、攪拌部3cを羽根形とすることによって、攪拌部3cをほぼ平らに形成することができる。攪拌部3cは、ペースト注入時に仕切り具3aとノズル部2bの間に挟まるため、攪拌部3cをほぼ平らに形成すれば、ペースト注入時において、ハンドルを押しきった後、器具内に残留するペースト量を僅かとすることができる。
【0017】
シャフト部3bの他端であってシリンダ2の外部に位置する部分には、弾性変形可能な2枚の軸板350が形成されている。この軸板350の外側には、突状係合部351が突出するように形成されている。シャフト部3bとハンドル部3dは、シャフト部3bの突状係合部351と、ハンドル部3dのガイド部356とが係合することによって回動可能な状態で保持されている。なお、詳細は後述する。
【0018】
図2は、仕切り具3aの縦断面図である。仕切り具3aは、貫通孔300と、管体301と、第1鍔体320と、環状係止部321と、第2鍔体302と、仕切り具係合部310と、第3鍔体303と、第4鍔体304と、補強部材305と、外シール部307と、内シール部308と、外シール溝311と、内シール溝313とを備えている。管体301は、仕切り具3aの中心位置を貫く貫通孔300を有している。貫通孔300にはシャフト部3bが装入される。
【0019】
第1鍔体320は、管体301の胴部上端外周に設けられた環状の突出部である。第2鍔体302は、第1鍔体320よりも下側であって管体301の胴部外周に設けられた環状の突出部である。第1鍔体320と第2鍔体302の間には、301、302よりも突出高さの低い環状係止部321が設けられている。第3鍔体303は、第2鍔体302よりも下側であって管体301の胴部外周に設けられた環状の突出部である。第2鍔体302と第3鍔体303の間には、仕切り具係合部310が設けられている。第4鍔体304は、管体301の胴部下端外周に設けられた環状の突出部である。第3鍔体303と第4鍔体304の間には、両者を連結するように、リブ形状の補強部材305が設けられている。なお、第3鍔体303および第4鍔体304の突出高さは、第1鍔体320、第2鍔体302よりも高く設定される。
【0020】
管体301の外側であって補強部材305と第4鍔体304との間には、外シール溝311が設けられている。外シール部307は、外シール溝311内に、ゴムまたは合成樹脂製のOリングを装着することによって形成されている。管体301の内側(貫通孔300側)であって外シール溝311と対応する位置には、内シール溝313が設けられている。内シール部308は、内シール溝313内に、ゴムまたは合成樹脂製のOリングを装着することによって形成されている。外シール部307と内シール部308によって、仕切り具3aで仕切られたシリンダ2を密閉状態にすることができる。なお、前述したOリングは、滅菌処理で過度の強度劣化を起こさない材料(例えば、シリコーンゴム)を用いることが好ましい。
【0021】
図3は、ストッパ4の底面図である。ストッパ4は、合成樹脂例えばポリカーボネート、ならびにポリエチレンおよびポリプロピレン等のポレオフィン樹脂で形成される。このストッパ4は、仕切り具3aを円筒体2aの開口側で係留することによって、仕切り具3aの前後進を抑制する。また、ストッパ4を取り外すことによって、仕切り具3aの係留を解除することができる。このストッパ4は、第1基板4aと、第2基板4bと、縁壁体4cとを備えている。
【0022】
第1基板4aは、フランジ2cの外形に倣う形状を有する板状体である。第1基板4aは、平行辺4dと、滑り止め部4eと、湾曲縁辺4fと、切り欠き装入部4gとを備えている。平行辺4dは、フランジ2cの直行部分の間隔よりも大きな間隔を有するように形成された一対の平行辺である。滑り止め部4eは、平行辺4dの端部に形成された凸状部分である。この滑り止め部4eは、使用者がストッパ4を着脱する際の滑り止めとなる。湾曲縁辺4fは、2箇所の滑り止め部4eを結び、フランジ2cの湾曲部分に沿った形状を有するように形成されている。切り欠き装入部4gは、平行直線辺4hと、湾曲内周辺4iと、アーム部4jとを備え、湾曲縁辺4fと対向する側に形成されている。2つの平行直線辺4hは、仕切り具3aの仕切り具係合部310の径よりも若干大きな間隔を有するように形成された直線状の切り欠き部である。湾曲内周辺4iは、仕切り具3aの仕切り具係合部310の径よりも若干大きく形成された円弧状の切り欠き部である。アーム部4jは、湾曲内周辺4iが形成する円弧に沿うような形で湾曲状に形成された突出部である。
【0023】
第2基板4bは、第1基板4aと同様に、フランジ2cの外形に倣う形状を有する板状体である。第2基板4bは、平行辺4dと、滑り止め部4eと、湾曲縁辺4fと、円筒体固定部4mと、円筒体装入部4kとを備えている。円筒体装入部4kは、湾曲縁辺4fに対向する側に、円筒体2aの胴部分に沿う形状に形成された円弧状の切り欠き部である。円筒体固定部4mは、円筒体2aの胴部を約半周ほど回り込むような形で、第2基板4bから直角に立ち上がるように湾曲板状に形成されている。
【0024】
縁壁体4cは、直線状縁壁体4nと、湾曲状縁壁体4pとを備えている。直線状縁壁体4nは、第1基板4aの平行辺4dと、第2基板4bの平行辺4dとを結合するように形成されている。湾曲状縁壁体4pは、第1基板4aの湾曲縁辺4fと、第2基板4bの湾曲縁辺4fとを結合するように形成されている。この縁壁体4cの高さ(つまり、第1基板4aと第2基板4bとの間隔)は、フランジ2cよりもわずかに厚く形成される。第1基板4aと第2基板4bと縁壁体4cとから、フランジ装着部4qが形成される。利用者が、ピストン3を挿入したシリンダ2(図1)を、左方向OLから挿入すると、シリンダ2のフランジ2cがフランジ装着部4qへ装入される。また、アーム部4jが、仕切り具3aの仕切り具係合部310と係合することによって、シリンダ2内の上部に仕切り具3aが固定される。
【0025】
図4は、シャフト部3bとハンドル部3dの斜視図である。図4では説明の便宜上、ハンドル部3dの一部を透過して図示している。ハンドル部3dは、棒材352と、円板353と、支持部360とを備えている。円板353は、棒材352の一端に固定された円盤状の部材である。
【0026】
棒材352は、撹拌部3cが仕切り具3aに密着している状態での仕切り具3aの上面(図7における)からシャフト部3bの上端(図7における)の長さと同程度(或いは、若干長い)の長さを有し、かつ、シリンダ2の内径よりも小さな外形を有する略円柱状の部材である。棒材352は、中空部355と、ガイド部356と、オフセット係合部359と、割口357と、係止爪358と、案内板349とを備えている。中空部355は、棒材352の内側をくり抜くように設けられた中空部である。中空部355は、支持部360の位置よりも円板353寄りの側においては、開口しない筒状である。一方、支持部360を含む円板353とは逆側においては、開口した割口357を有している。係止爪358は、棒材352のうち、円板353とは逆の端部に設けられた2枚の係止爪である。ガイド部356は、中空部355の内部に設けられた略直線状の溝であり、その溝の両端には枠が形成されている。ガイド部356は、中空部355の内部にそれぞれ対向する向きに2箇所設けられている。オフセット係合部359は、ガイド部356の一端かつ円板353とは逆側の端部であって、ガイド部356の中心線から棒材352側にオフセットした位置に形成された溝である。案内板349は、支持部360からやや係止爪358側の位置に、割口357に迫り出すように設けられた2枚の板状の突出部である。2枚の案内板349同士の間隔は、後述する平坦部369の幅WAよりも若干広く、かつ、シャフト部3bの径よりも狭い幅に形成される。又、案内板349は、突状係合部351がオフセット係合部359に支持されて、シャフト部3bを平衡状態から直交状態にする際に、シャフト部3b及び小突起362と干渉しない位置に設置される。
【0027】
支持部360は、棒材352の割口357側に突起状に設けられた部材である。支持部360は、係止爪358側の一端が開口し、反対側(円板353側)には、開口を有しない。さらに支持部360は、その内側に、首係合部354と係合溝361を備えている。首係合部354は、支持部360の内側であって、棒材352と支持部360の接合位置に設けられた突出部である。係合溝361は、支持部360の内側であって、棒材352の長手方向と垂直方向に設けられた直線状の溝である。
【0028】
シャフト部3bは、攪拌部3cとは逆側の端部に、2枚の軸板350と、首部368と、平坦部369とを備えている。2枚の軸板350は、それぞれ、その外側に突起状の突状係合部351を備えている。首部368は、軸板350よりも幅狭に形成されている。図4の拡大図に示すように、シャフト部3bをOS方向から見た場合、平坦部369の幅WAは、首部368の幅よりも広く、かつ、シャフト部3bの径よりも狭い大きさに形成され、その外側に小突起362を備えている。平坦部369は、2枚の軸板350と同様に2箇所設けられている。
【0029】
ハンドル部3dとシャフト部3bの取り付けは、次のようにして行う。まず、ハンドル部3dとシャフト部3bの長手方向を同じ向きにし、割口357の側からシャフト部3bを挿入する(以降、「挿入状態」とも呼ぶ)。挿入状態において、ハンドル部3dの円板353側に向かって、シャフト部3bを強く押し込む。2枚の軸板350がしなることによって、2つの突状係合部351が、ガイド部356の枠を乗り越え、ガイド部356の溝に係合する。突状係合部351とガイド部356とが係合することによって、シャフト部3bは、ハンドル部3dに対して約90度回動可能な状態で保持される。具体的には、ハンドル部3dの長手方向(軸線)とシャフト部3bの長手方向(軸線)がほぼ平行な向きから、ハンドル部3dの長手方向(軸線)とハンドル部3dの長手方向(軸線)がほぼ垂直な向きへと転換させることができる。なお、図1のように、シャフト部3bの長手方向とハンドル部3dの長手方向が約90度の向きになった状態を、以降、「直交状態」とも呼ぶ。また、ハンドル部3dとシャフト部3bの長手方向(軸線)がほぼ平行な向きの状態を「平行状態」とも呼ぶ。
【0030】
この平行状態にて、突状係合部351がガイド部356に係合している状態において、シャフト部3b(或いは、シャフト3bと固定されている部品、例えば、シリンダ2等)を強く引くことで、突状係合部351をガイド部356から引き抜くことができる。すなわち、ハンドル部3dとシャフト部3bは着脱自在に形成されている。このようにすれば、ペーストの注入時において、ハンドル部3dを用いて行う手動での注入操作と、ハンドル部3dを外して専用の注入ガンを用いて行う機械での注入操作との両方に対応することができる。
【0031】
また、案内板349同士の間隔は、平坦部369の幅WA(図4:拡大図)よりも若干広く、かつ、シャフト部3bの径よりも狭い幅に形成され、且つ、案内板349は、突状係合部351がオフセット係合部359に支持されて、シャフト部3bを平衡状態から直交状態にする際に、シャフト部3b及び小突起362と干渉しない位置に設置される。このため、シャフト部3bが、係止爪358側に向かって十分にスライドされない状態(すなわち、突状係合部351がオフセット係合部359の位置までスライドされない状態)でシャフト部3bとハンドル部3dが、平行状態から直交状態にされるのを抑制することができる。
【0032】
(A2)使用方法:
医療用ペースト注入混練器1の使用に際しての手順は以下の通りである。
手順1)ノズル部2bをキャップ2gでふさいだシリンダ2内にフランジ2cの開口からペースト原料の粉剤を所定量充填する。そして、シリンダ2のフランジ2c側の開口に、ピストン3のシャフト部3bに装着された状態の仕切り具3aを嵌める。なお、仕切り具3aへのシャフト部3bの装着は、仕切り具3aの貫通孔300内にシャフト部3bを挿通することにより行う。
【0033】
手順2)ストッパ4をフランジ2cに装着する。具体的には、第1基板4aをハンドル部3d側に向けた状態で、フランジ装着部4qにフランジ2cが装入されるように、ストッパ4を押し込む。ストッパ4を押し込むと、第1基板4aのアーム部4jと湾曲内周辺4iとが、仕切り具3aの仕切り具係合部310の周囲を取り囲むような形で係合する。このとき、円筒体2aの胴部分には円筒体装入部4kが嵌り込んだ状態となる。これにより、仕切り具3aは、円筒体2aの開口側に係留され、軸線方向の前後進が抑制される。なお、ここまでの工程は製造工場で行うものとすることが好ましいが、医療現場で行うことも可能である。
【0034】
手順3)ノズル部2bの上向きにしてキャップ2gを外し、そこからペースト原料を硬化させるための液体を注入する。液体注入後、再度ノズル部2bにキャップ2gを嵌める。その後、図1のように、ハンドル3dを直交状態にして、ハンドル部3dを握ってI、II方向(図1)のように、軸線を中心とする回動運動と軸線方向への往復運動とを複合的に行う。こうすることによって、シャフト部3bが仕切り具3aの貫通孔300を出入りし、シャフト部3bの先端部に設けられた攪拌部3cによって粉剤のペースト原料と液体とが混練される。このように、仕切り具3aで仕切られたシリンダ2内でペーストを混練するため、混練時の異物混入を抑制することが可能である。
【0035】
図5は、第1実施例における医療用ペースト注入混練器1の部分拡大断面図である。図1および図5(A)に示すように、シャフト部3bの小突起362と、ハンドル部3dの係合溝361は、直交状態において互いに係合することで直交状態を保持する第1の固定用係合部材として機能している。医療用ペースト注入混練器1は、この第1の固定用係合部材を備えることによって、シャフト部3bの回動方向に対して、一時的な保持ができ、直交状態で操作する際のガタツキを抑え、操作性が良好になる。
【0036】
また、図1および図5(A)に示すように、シャフト部3bの首部368と、ハンドル部3dの首係合部354は、直交状態において互いに係合することで、シャフト部3bとハンドル部3dを、シャフト部3bの軸線方向に固定する第3の固定用係合部材として機能している。医療用ペースト注入混練器1は、この第3の固定用係合部材を備えることによって、ペースト混練操作時、I及びII方向(図1)の操作時における、ハンドル部3dとシャフト部3bの分解を抑制して直交状態を維持することができ、手で操作したハンドル部3dの動作をシャフト部3b及びその先端の撹拌部3cまで確実に伝えることでき、操作性が良好になる。
【0037】
手順4)混練が終了したところで、撹拌部3cが仕切り具3aに接触するまでシャフト部3bを引き戻し、図5(B)のようにハンドル部3dとシャフト部3bの長手方向を同じ向きに転換させる。具体的には、状態ST1のシャフト部3bを、その突状係合部351を中心としてシャフト部3bがIII方向に移動するように回動させる。このとき、突状係合部351がガイド部356の一端に設けられたオフセット係合部359に係合し、回動可能な状態で支持される回動時の軸のずれが抑制され、スムーズな回動操作が可能となる。また、オフセット係合部359の円弧の中心にあたる位置から支持部360の弧部分までの長さ(半径)は、シャフト部3bの突状係合部351の中心から首部368の下端までの長さLA(図4)よりも僅かに小さく形成されている。このため、シャフト部3bを回動させる際に、首部368と平坦部369との間に形成される段部が支持部360の弧部分に誘導される形となり、よりスムーズな回動操作をすることができる。回動後、シャフト部3bは、ハンドル部3d内に収まった状態ST2(図5(B))となる。状態ST2において、シャフト部3bをIV方向にスライドさせる。このとき、シャフト部3bの突状係合部351が、ハンドル部3dのガイド部356と係合しつつガイド部356内を摺動することにより、シャフト部3bが、ハンドル部3d内部を円板353側へ移動する。なお、このように、シャフト部3bがハンドル部3d内に収納された状態を「収納状態」とも呼ぶ。
【0038】
手順5)図6は、シャフト部3bがハンドル部3dに収納された状態を示す説明図である。なお、このように、シャフト部3bがハンドル部3dに収納された状態を「収納状態」とも呼ぶ。図6では、説明の便宜上、ピストン3のみを記載している。ハンドル部3dを仕切り具3aの方向に押し込むことによって、ハンドル部3dの係止爪358と、仕切り具3aの環状係止部321が係合する。この係止爪358と環状係止部321は、収納状態において互いに係合することで収納状態を保持する第2の固定用係合部材として機能している。医療用ペースト注入混練器1は、この第2の固定用係合部材を備えることによって、後述するペースト注入時の操作をスムーズに行うことができる。
【0039】
手順6)図7は、ペースト注入時の状態を示す縦断面図である。ストッパ4をフランジ2cから取り外し、図7のようにノズル部2bのキャップ2gをチューブに付け替え、円板353を使用してハンドル部3dをシリンダ2内に押し込む。そうすると、仕切り具3aとシャフト部3bとが一体となってシリンダ2内に押し込まれる。シリンダ2内のペーストは、仕切り具3aによって押し出され、チューブを通って患部へ注入される。このように、医療用ペースト注入混練器1は、機械式の注入ガンを必須としないでペーストの注入が可能であるため、医療用ペースト注入混練器の導入コストを抑えることができる。なお、前述のとおり、ハンドル部3dとシャフト部3bは着脱自在に形成されている。このため、シャフト部3bからハンドル部3dを取り外し、機械式の注入ガンを用いてペーストの注入を行うことも、勿論可能である。
【0040】
以上のようにすれば、使用者がハンドル部を操作することで、シャフト部の一端に設けられた攪拌部3cを操作することができ、ペーストの混練を容易に行うことができる。また、第1の固定用係合部材(小突起362および係合溝361)によって、シャフト部とハンドル部が直交状態で保持され、第3の固定用係合部材(首部368および首係合部354)によって、シャフト部とハンドル部が直交状態になった際に、シャフト部とハンドル部がシャフト部の軸線方向に対して固定される。このため、使用者がペーストを混練する際の操作性を向上させることができる。使用者がシャフト部を収納状態とする際は、オフセット係合部が突状係合部を支持することによって回転軸のぶれを抑止し、スムーズな操作を実現することができる。さらに、第2の固定用係合部材(係止爪358および環状係止部321)によって、仕切り具とハンドル部が固定されるため、使用者がハンドル部を軸線方向に押圧することにより行うペーストの注入の操作性を向上させ、容易に行うことができる。これらの結果、操作が容易で誤使用を抑制することができ、かつ、専用の注入ガンを必須としないでペーストの混練および注入が可能である医療用ペースト注入混練器を提供することができる。
【0041】
B.第1実施例の変形例1:
図8は、第1実施例の変形例1における医療用ペースト注入混練器11の部分拡大断面図である。この第1実施例の変形例1における医療用ペースト注入混練器11は、オフセット係合部359を有しない点においてのみ、第1実施例と異なる。この医療用ペースト注入混練器11では、シャフト部3bとハンドル部3dを平行状態から直交状態にする(V方向に移動するように回動させる)際、図8(B)のように、シャフト部3bがガイド部356の内部で横方向にずれを起こし、シャフト部3bの平坦部369と平坦部369の間に形成された段差(図4)が、首係合部354と噛み合ってしまう可能性がある。この点、第1実施例では、オフセット係合部が突状係合部を支持することによって回転軸のぶれを抑止し、スムーズな操作を実現することが可能である。
【0042】
B.第1実施例の変形例2:
図9は、第1実施例の変形例2における医療用ペースト注入混練器21の部分拡大断面図である。この第1実施例の変形例2における医療用ペースト注入混練器21は、ガイド部356およびオフセット係合部359を有せず、突状係合部351の回転軸位置が固定されている点において、第1実施例と異なる。この医療用ペースト注入混練器21では、シャフト部3bを収納状態とする際は、図9(B)状態ST22のように、シャフト部3bをIII方向に回転させるのみでよい。突状係合部351は固定されているため、シャフト部3bを回転後にシャフト部3bをIV方向にスライドさせる動作(第1実施例:手順4)は行う必要がない。この点、第1実施例では、シャフト部をスライドさせることによってハンドル部内に収納するため、ハンドル部の長手方向における長さを短くすることができる。この結果、第1実施例では、ハンドル部とフランジに手をかける距離が短くなり、操作性が向上する。
【0043】
C.第2実施例:
図10は、第2実施例における医療用ペースト注入混練器31の部分拡大断面図である。図5に示した第1実施例との違いは、ハンドル部33d内のオフセット係合部359と、シャフト部33bの突状係合部351が設けられる位置のみであり、他の構成は第1実施例と同様である。第2実施例のオフセット係合部359は、ガイド部356の一端かつ円板353とは逆側の端部であって、ガイド部356の中心線から支持部360側にオフセットした位置に形成された溝である。また、第2実施例の突状係合部351は、軸板350の中央付近に形成されている。
【0044】
第2実施例においては、混練が終了したところで、シャフト部33bを引き戻し、図10(B)のようにハンドル部33dとシャフト部33bの長手方向を同じ向き(平行状態)に転換させる。具体的には、状態ST31のシャフト部33bを、その突状係合部351を中心としてシャフト部33bがIII方向に移動するように回動させる。このとき、突状係合部351がガイド部356の一端に設けられたオフセット係合部359に係合し、かつ、軸板350の上端角部と、棒材352の内壁とが接触する。これによって、軸板350の上端部が軸回転によって棒材352の内壁に押され、突状係合部351がオフセット係合部359に移動することで、回動時の軸のずれが抑制され、スムーズな回動操作が可能となる。このようにして、シャフト部33bとハンドル部33dは回動可能な状態で支持される。回動後の動作は第1実施例で説明した通りである。
【0045】
このような構成としても、第1実施例と同様に、使用者がシャフト部を収納状態とする際は、オフセット係合部が突状係合部を支持することによって回転軸のぶれを抑止し、スムーズな操作を実現することができる。この結果、操作が容易で、かつ、専用の注入ガンを必須としないでペーストの混練および注入が可能である医療用ペースト注入混練器を提供することができる。
【0046】
D.他の変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0047】
D1.変形例1:
上記実施例では、第1の固定用係合部材として係合溝361と小突起362を例示した。同様に、第2の固定用係合部材として環状係止部321と係止爪358を、第3の固定用係合部材として首係合部354と首部368を、それぞれ例示した。しかし、上記はあくまで一例であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲において上記第1〜3の固定用係合部材は、任意の位置に、任意の形状を有する部材として構成することができる。
【0048】
D2.変形例2:
上記実施例では、医療用ペースト注入混練器を構成する各部の形状を例示した。しかし、医療用ペースト注入混練器を構成する各部(例えば、シリンダ、ピストン、ストッパ等)は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意の形状を採用することができる。医療用ペースト注入混練器の各部を構成する部材の材料についても同様である。
【0049】
D3.変形例3:
上記実施例では、医療用ペースト注入混練器を用いて混練、注入されるペーストは骨ペーストであるものとした。しかし、医療用ペースト注入混練器は、骨ペースト以外のペーストの混練、注入を行うことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】医療用ペースト注入混練器のペースト混練時の状態を示す縦断面図である。
【図2】仕切り具3aの縦断面図である。
【図3】ストッパ4の底面図である。
【図4】シャフト部3bとハンドル部3dの斜視図である。
【図5】第1実施例における医療用ペースト注入混練器1の部分拡大断面図である。
【図6】シャフト部3bがハンドル部3dに収納された状態を示す説明図である。
【図7】ペースト注入時の状態を示す縦断面図である。
【図8】第1実施例の変形例1における医療用ペースト注入混練器11の部分拡大断面図である。
【図9】第1実施例の変形例2における医療用ペースト注入混練器21の部分拡大断面図である。
【図10】第2実施例における医療用ペースト注入混練器31の部分拡大断面図である。
【符号の説明】
【0051】
1…医療用ペースト注入混練器
2…シリンダ
2a…円筒体
2b…ノズル部
2c…フランジ
2d…湾曲辺
2f…ネジ
2g…キャップ
3…ピストン
3a…仕切り具
3b…シャフト部
3c…攪拌部
3d…ハンドル部
4…ストッパ
4a…第1基板
4b…第2基板
4c…縁壁体
4d…平行辺
4e…滑り止め部
4f…湾曲縁辺
4g…装入部
4h…平行直線辺
4i…湾曲内周辺
4j…アーム部
4k…円筒体装入部
4m…円筒体固定部
4n…直線状縁壁体
4p…湾曲状縁壁体
4q…フランジ装着部
300…貫通孔
301…管体
302…第2鍔体
303…第3鍔体
304…第4鍔体
305…補強部材
307…外シール部
308…内シール部
310…仕切り具係合部
311…外シール溝
313…内シール溝
320…第1鍔体
321…環状係止部
349…案内板
350…軸板
351…突状係合部
352…棒材
353…円板
354…首係合部
355…中空部
356…ガイド部
357…割口
358…係止爪
359…オフセット係合部
360…支持部
361…係合溝
362…小突起
368…首部
369…平坦部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用ペースト注入混練器であって、
一端が開口し他端にノズル部を有するシリンダと、
前記シリンダの内部を軸線方向に摺動可能な仕切り具と、
前記仕切り具を前記シリンダの開口側に係留および解除が可能なストッパと、
前記仕切り具の中心を貫く貫通孔に挿通され、前記貫通孔を出入りする軸線方向への往復運動と前記軸線を中心とする回動運動とが可能なシャフト部と、
前記シャフト部の一端であって前記シリンダ内に位置する部分に設けられた攪拌部と、
前記シャフト部の他端であって前記シリンダ外に位置する部分に設けられたハンドル部と、
を備え、
前記シャフト部は、前記ハンドル部と回動可能に係合する突状係合部を有し、
前記ハンドル部の内側には、前記シャフト部の長手方向と前記ハンドル部の長手方向が同じ向きになった状態において、前記突状係合部と係合しつつ前記突状係合部を摺動させることによって前記シャフト部が前記ハンドル部内に収納された収納状態にするための略直線状のガイド部を有し、
前記ガイド部は、その一端において前記ガイド部の中心線からオフセットした位置に、前記シャフト部と前記ハンドル部が回動する際に前記突状係合部を回動可能に支持するためのオフセット係合部を有することを特徴とする、医療用ペースト注入混練器。
【請求項2】
請求項1記載の医療用ペースト注入混練器であって、
前記シャフト部と前記ハンドル部は、前記シャフト部の長手方向と前記ハンドル部の長手方向が約90度の向きになった直交状態において互いに係合して前記直交状態を保持する第1の固定用係合部材をそれぞれ備えることを特徴とする、医療用ペースト注入混練器。
【請求項3】
請求項1または2記載の医療用ペースト注入混練器であって、
前記仕切り具と前記ハンドル部は、前記収納状態において互いに係合する第2の固定用係合部材をそれぞれ備えることを特徴とする、医療用ペースト注入混練器。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項記載の医療用ペースト注入混練器であって、
前記シャフト部と前記ハンドル部は、前記直交状態において互いに係合することで、前記シャフト部と前記ハンドル部を前記シャフト部の軸線方向に固定する第3の固定用係合部材をそれぞれ備えることを特徴とする、医療用ペースト注入混練器。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項記載の医療用ペースト注入混練器であって、
前記攪拌部は、前記シャフト部から放射状に突出する羽根を有する羽根形であることを特徴とする、医療用ペースト注入混練器。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか一項記載の医療用ペースト注入混練器であって、
混練対象のペーストは、リン酸カルシウムを主成分とする骨ペーストであることを特徴とする、医療用ペースト注入混練器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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