説明

医療用ポンプシステムおよび医療用ポンプ

【課題】医療用ポンプの使用エリアに応じて、薬剤ライブラリの適切なプロファイルを自動的に選択することが可能な医療用ポンプシステムを提供する。
【解決手段】無線LANに医療用ポンプと位置検出装置とが接続された医療用ポンプシステムにおいて、位置検出装置は、医療用ポンプ200の位置を無線LANを用いて検出し、医療施設内の複数のエリアのうちの検出された位置が属するエリアを、無線LANを用いて当該医療用ポンプに通知する。記医療用ポンプは、複数のエリアの一つ以上のエリアに対応する、ポンプ設定に関する複数のプロファイルを保持しており、ユーザによるポンプ設定操作をサポートするために、位置検知装置から通知されたエリアに対応するプロファイルを複数のプロファイルから選択する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸液ポンプ、シリンジポンプのような医療用ポンプおよび医療用ポンプシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
輸液ポンプ、シリンジポンプのような医療用ポンプは、様々な薬剤を患者の体内に適切な投与量で注入するために用いられる。したがって、医療用ポンプにおいては、患者の状態や薬剤の種類等に応じて、薬剤の投与速度などを看護師などのユーザが設定する必要があり、誤設定などの人為的なミスが発生する要因となっている。これに対して、医療用ポンプの使用エリア毎に各薬剤の流量上下限等を設定する薬剤ライブラリを利用して、このような誤設定の発生を防ぐことが提案されている。すなわち、パーソナルコンピュータ等から医療用ポンプに薬剤ライブラリをダウンロードしておき、医療用ポンプを使用する際には、ユーザに薬剤ライブラリから投与する薬剤を選択させて、薬剤投与速度設定間違いや医師の処方間違いを未然に防ぐ(特許文献1)。
【0003】
なお、薬剤ライブラリは、ポンプでの流量誤設定等を防ぐことを目的として、薬剤毎に流量設定の上下限や、使用場所等の運用ルールを設定したものであり、病院のホストコンピュータなどに3000件程度の薬剤が登録され、都度、新規登録や更新がなされ、医療用ポンプにダウンロードして使用されるものであり、薬剤毎に投与速度の上下限や基準投与速度、閉塞圧設定等のポンプ設定を登録できる。また、たとえば、ICUというプロファイルを作成し、各薬剤にプロファイルを設定することで薬剤をグループ化することができる。これにより、たとえば、ICUで使用される医療用ポンプにおいて、ICUで使用されない薬剤が選択されないように、ICU用のプロファイルでそのような薬剤の選択を不可としておき、ユーザである医師、看護師等の医療従事者による設定時の間違いを防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−529675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に医療用ポンプは可搬型であり、一つの医療用ポンプを異なるエリア(ICU、NICU、病棟、病室、手術室等)で使用する可能性がある。しかしながら、従来技術では、一つの医療用ポンプを異なる診療科で用いることについて考慮されていない。そのため、医療用ポンプを使用する際にユーザは使用エリアに対応したプロファイル(たとえば診療科に対応したプロファイル)をまず選択してから投与する薬剤を選択する必要があり、多忙な看護師に新たな業務を強いるシステムとなっている。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、医療用ポンプの使用エリアに応じて、薬剤ライブラリの適切なプロファイルを自動的に選択することが可能な医療用ポンプシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための本発明の一態様による医療用ポンプシステムは以下の構成を備える。すなわち、
無線LANに医療用ポンプが接続された医療用ポンプシステムであって、
前記無線LANを用いて前記医療用ポンプの位置を検出する検出手段と、
医療施設内の複数のエリアのうち前記検出手段で検出された位置が属するエリアを判定する判定手段と、
ユーザによる前記医療用ポンプの設定操作をサポートするために、前記複数のエリアの一つ以上のエリアに対応して作成された、前記医療用ポンプの設定に関わる複数のプロファイルの中から、前記判定手段で判定されたエリアに対応するプロファイルを選択する選択手段とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、医療用ポンプの使用エリアに応じて、薬剤ライブラリの適切なプロファイルを自動的に選択することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態による医療用ポンプシステムの構成例を示す図である。
【図2】位置検知サーバの構成例を示すブロック図である。
【図3】位置検知サーバによる、医療用ポンプの位置管理テーブルのデータ構成例を示す図である。
【図4】薬剤ライブラリを保持する保持部のデータ構成例を示す図である。
【図5】実施形態による医療用ポンプの構成例を示すブロック図である。
【図6】第1実施形態による位置検知サーバの動作を説明するフローチャートである。
【図7】第1実施形態による医療用ポンプの動作を説明するフローチャートである。
【図8】第3実施形態による位置検知サーバの動作を説明するフローチャートである。
【図9】第3実施形態による医療用ポンプの動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付の図面を参照して、本発明の好適な実施形態を説明する。
【0011】
[第1実施形態]
図1は、実施形態における医療用ポンプシステムの構成例を示す図である。図1において、位置検知サーバ101、プロファイルサーバ102、複数の医療用ポンプ200は、複数の中継器103を介した無線LANによって接続されている。なお、位置検知サーバ101やプロファイルサーバ102と中継器103との間は有線で接続されていてもかまわない。位置検知サーバ101は、中継器103と医療用ポンプ200との通信状況に基づいて医療用ポンプ200の位置を検知する。また、プロファイルサーバ102は、医療用ポンプ200に対して薬剤ライブラリプロファイル(以下、単にプロファイルという)を、無線LANを介して提供する。
【0012】
図2は、位置検知サーバ101の構成を示すブロック図である。なお、図2に示した構成は、コンピュータが所定のプログラムを実行することにより適切なハードウエアとの連携により実現され得る。
【0013】
無線LANモジュール121は、LANと接続して、中継器103および医療用ポンプ200との通信を可能にする。位置検出部122は、無線LANに接続された医療用ポンプ200の位置を、複数の中継器103からの信号に基づいて判定する。なお、このような無線LANを利用した位置検知技術は周知であり、ここでは詳細な説明を省略する。エリア判定部123は、複数の医療用ポンプ200の各々について検知された位置をエリア情報に変換する。なお、エリアとは、医療施設内を複数領域に分けたものであり、病棟や病室等をエリアとして用いることができる。位置情報からエリア情報への変換はたとえば以下のようにして実現できる。すなわち、病室や病棟の各エリア名と各エリアの範囲を示す座標値を対応付けて保持したエリアテーブル125を用意し、このエリアテーブル125を参照して位置検出部122が検出した位置から対応するエリア名を取得する。
【0014】
移動検出部124は、図3に示すような位置管理テーブル301を用いて、無線LANに接続されている1つまたは複数の医療用ポンプ200の位置(エリア)を管理する。移動検出部124は、たとえば、エリア判定部123で判定されたエリアと位置管理テーブル301に登録されている現在エリアとを比較し、両者が異なる場合に医療用ポンプがエリア間で移動したと判定する。移動検出部124は、こうしてエリア間での移動が発生した医療用ポンプを検出すると、移動した医療用ポンプに移動後のエリアを通知する。また、移動が検出された場合には、移動後のエリアに登録されている現在エリアを更新する。なお、関連付けテーブル421を参照する構成は第2実施形態で必要となるものであり、第1実施形態では省略される。
【0015】
また、本実施形態では、病棟や部屋を単位としたエリア管理を行うが、これに限られるものではない。医療用ポンプにおけるプロファイルの切り替えを適切に行えるようにエリアが設定されていればよい。以上のように、位置検知サーバ101は、位置管理テーブル301を参照することにより、無線LANを介して、医療用ポンプ200の各々に位置情報を送信する(詳細は、図5のフローチャートにより後述する)。
【0016】
プロファイルサーバ102は、図4(a)に示すように、ICU用、一般病棟用、小児科用といった複数種類の薬剤ライブラリのプロファイル(プロファイル群401)を保持している。各プロファイルは医療用ポンプの設定に関わるものであり、ユーザによる医療用ポンプの設定操作をサポートするために、医療施設内の複数のエリアの一つ以上のエリアに対応して作成されたものである。そして、プロファイルサーバ102は、必要に応じてプロファイルを医療用ポンプ200に無線LANを介してダウンロードする。なお、本実施形態におけるプロファイルの各々は、プロファイル名402と、当該プロファイルが対応しているエリアが記録された対応エリア403を含む。
【0017】
中継器103は、病院内の各所に適切に配置され、医療用ポンプ200を無線LANに接続する。医療用ポンプ200は、たとえば輸液ポンプまたはシリンジポンプであり、無線機能を内蔵し、中継器103を介して無線LANに接続される。
【0018】
図5は、実施形態による医療用ポンプの構成例を示すブロック図である。以下、医療用ポンプ200の構成を図2を参照して説明する。医療用ポンプ200は、中継器103を介して無線LANと接続するための、無線LANモジュール201を有する。制御部203は不図示のCPU,ROM,RAMを備え、医療用ポンプ200における各種制御を行う。ユーザは、操作部204を介して薬剤設定や流量設定等を行うことができる。表示部205は、制御部203の制御下で各種の表示を行う。
【0019】
送液機構206は、制御部203の制御下で、薬液の送出を行う。医療用ポンプ200が輸液ポンプの場合、送液機構206はたとえば送液用の複数のフィンガーを具備し、複数のフィンガーが順次に輸液チューブを押すことによりチューブ内の薬液を送出する。また、医療用ポンプ200がシリンジポンプであれば、送液機構206はシリンジを装着してその押し子を押圧する構成となる。
【0020】
保持部207は、位置検知サーバ101(図2)から通知されたエリアであるエリア情報208やプロファイルサーバ102からダウンロードされたプロファイル群209を保持する。
【0021】
以上のような構成を備えた本実施形態の医療用ポンプシステムにける位置検知サーバ101の動作について、図6のフローチャートを参照して説明する。位置検知サーバ101は、複数の医療用ポンプ200の位置を常時把握し、医療用ポンプ200が異なるエリア(異なる病棟、病室、ICU、NICU、手術室等)に移動したかどうかを監視する。そして、位置検知サーバ101は、医療用ポンプ200が異なるエリアに移動したことを検知した際には、そのエリアを示すエリア情報を当該医療用ポンプ200に通知する。
【0022】
まず、ステップS101において、位置検出部122は、各医療用ポンプの位置を検出するタイミングか否かを判定する。位置を検出するタイミングになると、ステップS102以降の処理を開始して、無線LANに接続されている医療用ポンプ200の位置を検出する。以下、複数の医療用ポンプ200のうち処理対象とするポンプを医療用ポンプNとして説明する。まず、ステップS102において、Nを1に設定し、ステップS103において、位置検出部122は、無線LANを利用した位置検知を実行し、中継器103からの信号に基づいて医療用ポンプNの現在位置を検出する。続いてステップS104において、エリア判定部123は、ステップS103で検出された位置情報(たとえば座標情報)を、エリアテーブル125を参照してエリア(たとえば、病棟、病室名の情報)を判定する。
【0023】
次に、ステップS105において、移動検出部124は、位置管理テーブル301の医療用ポンプNに関連して登録されている現在エリアとステップS104で判定したエリアとを比較する。位置管理テーブル301の現在エリアには、医療用ポンプNに対して最も最近に通知したエリアが登録されているので、この比較の結果、両者が一致しない場合は医療用ポンプNが別のエリアに移動したことを示している。よって、処理はステップS106からステップS107へ進み、移動検出部124は、ステップS104で判定した新たなエリアを医療用ポンプNに通知する。そして、ステップS108において、移動検出部124は、位置管理テーブル301における、医療用ポンプNの現在エリアを、判定されたエリアで更新する。そして、処理をステップS109へ進める。
【0024】
他方、ステップS106で、比較された2つのエリアが一致した場合は、医療用ポンプNはエリア間を移動しておらず、エリア情報の通知や位置管理テーブル301の更新は不要である。したがって、処理はステップS107、S108をスキップして、直接ステップS109へ進む。ステップS109において、無線LANに接続された全ての医療用ポンプについて処理を終えたか否かを判定し、終えていなければ、ステップS110でNを一つインクリメントする。そして、処理をステップS103に戻して次の医療用ポンプを対象として上記処理を繰り返す。
【0025】
以上のようにして、無線LANに接続された医療用ポンプ200には、位置検知サーバ101から当該医療用ポンプ200が存在しているエリア情報が通知される。医療用ポンプ200は、このエリア情報をにしたがって適切なプロファイルを選択し、ユーザによる薬液設定をサポートする。以下、図7のフローチャートを参照して、本実施形態による医療用ポンプ200のプロファイル選択にかかわる動作を説明する。なお、以下で説明する処理に先立って、医療用ポンプ200の保持部207には、プロファイルサーバ102からダウンロードしされたプロファイル群401がプロファイル群209として保持されているものとする。プロファイル群209の各プロファイルは、図4(a)で示したように、対応エリア403に当該プロファイルを適用できるエリアが記録されている。
【0026】
ステップS201において、制御部203は、位置検知サーバ101からエリアが通知されたかどうかを判定する。位置検知サーバ101からエリアが通知された場合は、自身が別のエリアに移動していることを示す。したがって、処理はステップS202に進み、制御部203は、通知されたエリアでエリア情報208を更新する。こうして、エリア情報208は、位置検知サーバ101から通知された最新のエリアを常に示す。
【0027】
医療用ポンプ200に対するユーザの設定操作が検出されると、現在の医療用ポンプ200が存在するエリアに応じた、適切なプロファイルを自動的に選択する処理(ステップS204〜S207)を実行する。まず、ステップS204において、制御部203は、エリア情報208を保持部207から読み出し、ステップS205において、プロファイル群209の各プロファイルが有する対応エリア403に記録されたエリアと比較する。そして、ステップS206において、制御部203は、エリア情報208が示すエリアと一致するエリアを対応エリア403として含むプロファイルを選択する。そして、ステップS207において、制御部203は、選択されたプロファイルを用いて、各種設定処理を実行する。たとえば、プロファイル群209として図4(a)のプロファイル群401を保持しており、エリア情報208が病棟Bを示す場合、プロファイル名「一般病棟」のプロファイルが選択され、ユーザによる設定のサポートに利用されることになる。
【0028】
以上のように、第1実施形態によれば、位置検知サーバは医療用ポンプの位置を常時把握し、ポンプが異なるエリア(異なる病棟、病室、手術室、ICU、NICU等)へ移動したことを検知した際には、医療用ポンプに対して自動的にその位置(エリア)を通知する。医療用ポンプは通知されたエリアを保持しておき、保持しているエリアの情報から適切なプロファイルを自動的に選択する。したがって、医師、看護師等の医療従事者であるユーザが医療用ポンプにて薬剤を選択したりその流量を設定したりする際には、医療用ポンプは現在の自身の位置に応じて適切なプロファイルを選択してユーザに提示することができる。したがって、ユーザによるプロファイル選択という操作を不要にしてユーザの負担を軽減するとともに、プロファイルの誤選択を防止できる。
【0029】
なお、上記実施形態では、図4(a)に示したようにプロファイル毎に対応エリアを記述した構成を説明したが、これに限られるものではない。たとえば、図4(b)に示したように、対応エリアとプロファイルとを関連付けた関連付けテーブル421と、プロファイル群422を保持した構成としてもよいことは明らかである。この場合、プロファイル群422の各プロファイルは、対応エリアの情報を持つ必要がなくなる。但し、プロファイルサーバ102から医療用ポンプ200にプロファイル群422とともに関連付けテーブル421をダウンロードしておく必要がある。
【0030】
[第2実施形態]
第1実施形態では、医療用ポンプ200が存在しているエリアを医療用ポンプ200に通知し、医療用ポンプ200が通知されたエリアを用いてプロファイル選択するようにした。第2実施形態では、位置検知サーバ101が医療用ポンプ200についてエリア間の移動を検出すると、移動後のエリアに応じて適切なプロファイルを特定し、そのプロファイルを識別する識別情報を当該医療用ポンプ200に通知する。なお、本実施形態では、プロファイルを識別する識別情報としてたとえばプロファイル名が用いられる。すなわち、第1実施形態では医療用ポンプ200がエリア情報からプロファイルを選択したが、第2実施形態では位置検知サーバ101がエリア情報からプロファイルを選択し、そのプロファイル名を医療用ポンプ200に通知する。
【0031】
位置検知サーバ101の構成は図2で説明したとおりであるが、第2実施形態の位置検知サーバ101は、位置管理テーブル301に加えて図4(b)に示した関連付けテーブル421を保持する。そして、移動検出部124は、医療用ポンプ200が存在するエリアが変化したことを検出した場合に、変化後のエリアに対応するプロファイルの識別情報(プロファイル名)を関連付けテーブル421を参照して取得する。その後、移動検出部124は、取得したプロファイル名を医療用ポンプ200に対して送信する。医療用ポンプ200は、位置検知サーバ101から送信されたプロファイル名にしたがって、ユーザによるポンプ設定操作のためのプロファイルを選択する。
【0032】
位置検知サーバ101と医療用ポンプ200の具体的な動作手順について、図6、図7を流用して説明する。第2実施形態の位置検知サーバ101の動作は、ステップS107を除いて第1実施形態同様である。第2実施形態の位置検知サーバ101は、ステップS107において、関連付けテーブル421を参照して、ステップS104で判定されたエリアに対応するプロファイルのプロファイル名を取得し、これを医療用ポンプNに通知する。
【0033】
医療用ポンプ200では、第1実施形態のエリア情報208の代わりにプロファイル名が保持される。すなわち、図7のステップS201、S202において、制御部203は、位置検知サーバ101からのプロファイル名の通知に応じて、最も最近に受信したプロファイル名を保持部207に保持する。そして、制御部203は、ステップS202で保持されたプロファイル名を保持部207から読み出し(ステップS204)、プロファイル群209の各プロファイル名と比較する(ステップS205)。そして、制御部203は、保持部207に保持されたプロファイル群209から、保持部207に保持されているプロファイル名と一致するプロファイルを選択する(ステップS206)。他のステップの処理は第1実施形態で説明したとおりである。
【0034】
[第3実施形態]
第1、第2実施形態では、医療用ポンプ200がプロファイル群209を保持し、位置検知サーバ101から通知されたエリア(第1実施形態)またはプロファイル名(第2実施形態)にしたがって使用すべきプロファイルを選択するように構成した。第3実施形態では、医療用ポンプ200が、常にエリアに対応したプロファイルのみを保持するようにして、ユーザによるプロファイルの誤選択を防止する。
【0035】
図8は、第3実施形態の位置検知サーバ101の動作を説明するフローチャートである。図8において、図6と同じ処理ステップには、図6と同一の番号を付してある。図8では、図6のステップS107がステップS121、S122に置き換わっている。ステップS121において、移動検出部124は、関連付けテーブル421を参照することにより、エリア判定部123により判定された現在エリアに対応するプロファイルのプロファイル名を選択する。そして、ステップS122において、移動検出部124は、無線LANモジュール121を介して、プロファイルサーバ102に対して、医療用ポンプNにステップS121で選択されたプロファイルをダウンロードするように指示する。
【0036】
プロファイルサーバ102は、ダウンロードすべきプロファイルのプロファイル名とダウンロード先の医療用ポンプ(医療用ポンプN)の指示を位置検知サーバ101から受信すると、指定されたプロファイルを医療用ポンプNにダウンロードする。なお、上記処理では、位置検知サーバ101がプロファイル名を特定してプロファイルサーバ102に指示を送っているがこれに限られるものではない。たとえば、位置検知サーバ101からは検出されたエリアを通知し、プロファイルサーバ102が通知されたエリアからダウンロードすべきプロファイルを選択するようにしても良い。
【0037】
第3実施形態の医療用ポンプ200も第1実施形態(図5)と同様の構成となるが、保持部207には単一のプロファイルが格納され、エリア情報208は保持されない。図9は、第3実施形態の医療用ポンプ200の動作を説明するフローチャートである。ステップS221において、制御部203はプロファイルサーバ102から新たなプロファイルをダウンロードしたか否かを判定する。新たなプロファイルをダウンロードした場合、制御部203は、ステップS222において、保持部207に当該ダウンロードされたプロファイルを保持し、それまで保持していたプロファイルを破棄する。こうして、新たにダウンロードされたプロファイルによって保持部207内のプロファイルが更新され、保持部207は最新のプロファイルの身を保持するようになる。
【0038】
ステップS223において、ユーザによる設定操作を受け付けると処理はステップS224に進む。ステップS224において、制御部203は、保持部207に現在保持されているプロファイルを用いて設定処理を行う。
【0039】
以上のように、第3実施形態によれば、医療用ポンプ200には、そのエリアに応じたプロファイルのみが保持され使用されるので、医療用ポンプ200を移動したことによるプロファイルの誤選択が防止される。また、医療用ポンプ200にはエリアに応じた、適切なプロファイルのみが保持されることになり、複数のプロファイルを保持した場合に比べてメモリ容量を節約することができる。
【0040】
なお、上記各実施形態では、位置検知サーバ101とプロファイルサーバ102を別体の情報処理装置として説明したが、これらは、一体の情報処理装置によって実現されてもよい。
【0041】
また、上記各実施形態において、医療用ポンプ200が、最後に利用したプロファイルの識別情報(プロファイル名)を記憶しておき、設定操作のためにプロファイルが選択された際に、前回と今回で選択されたプロファイルが一致するか判定し、一致しない場合にこれを通知するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0042】
101:位置検知サーバ、 102:プロファイルサーバ、 103:中継器、 121,201:無線LANモジュール、 122:位置検出部、 123:エリア判定部、 124:移動検出部、 125:エリアテーブル、 201:医療用ポンプ、 203:制御部、 204:操作部、 205:表示部、 206:送液機構、 207:保持部、 208:エリア情報、 209:プロファイル群、 301位置管理テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線LANに医療用ポンプが接続された医療用ポンプシステムであって、
前記無線LANを用いて前記医療用ポンプの位置を検出する検出手段と、
医療施設内の複数のエリアのうち前記検出手段で検出された位置が属するエリアを判定する判定手段と、
ユーザによる前記医療用ポンプの設定操作をサポートするために、前記複数のエリアの一つ以上のエリアに対応して作成された、前記医療用ポンプの設定に関わる複数のプロファイルの中から、前記判定手段で判定されたエリアに対応するプロファイルを選択する選択手段とを備えることを特徴とする医療用ポンプシステム。
【請求項2】
前記無線LANには、前記検出手段と前記判定手段として機能する位置検出装置が接続され、
前記選択手段は、
前記判定手段で判定されたエリアを、前記無線LANを介して前記位置検出装置から前記医療用ポンプに通知する通知手段と、
前記医療用ポンプにおいて、前記通知手段により通知されたエリアに対応するプロファイルを選択する手段とを有することを特徴とする請求項1に記載の医療用ポンプシステム。
【請求項3】
前記通知手段は、前記医療用ポンプが位置するエリアの変化が検出された場合に、変化後のエリアを前記医療用ポンプに通知することを特徴とする請求項2に記載の医療用ポンプシステム。
【請求項4】
前記無線LANには、前記検出手段と前記判定手段として機能する位置検出装置が接続され、
前記選択手段は、
前記複数のプロファイルのうちの前記判定手段で判定されたエリアに対応するプロファイルを特定する識別情報を、前記無線LANを介して前記位置検出装置から前記医療用ポンプに通知する通知手段と、
前記医療用ポンプにおいて、前記通知手段により通知された識別情報により前記複数のプロファイルの一つを選択する手段とを有することを特徴とする請求項1に記載の医療用ポンプシステム。
【請求項5】
前記無線LANを介して、前記複数のプロファイルを前記医療用ポンプにダウンロードするプロファイルサーバを更に備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の医療用ポンプシステム。
【請求項6】
前記無線LANに接続され、前記検出手段と前記判定手段として機能する位置検出装置と、
前記無線LANを介してプロファイルを前記医療用ポンプにダウンロードするプロファイルサーバとを更に備え、
前記選択手段は、
前記複数のプロファイルのうちの前記判定手段で判定されたエリアに対応するプロファイルを特定する識別情報を前記無線LANを介して前記位置検出装置から前記プロファイルサーバに通知する通知手段と、
前記通知手段で通知された識別情報によって特定されるプロファイルを前記プロファイルサーバから前記医療用ポンプにダウンロードするダウンロード手段とを備えることを特徴とする請求項1に記載の医療用ポンプシステム。
【請求項7】
前記医療用ポンプは、前記ダウンロード手段により最後にダウンロードされたプロファイルを保持し、ユーザによる薬剤設定をサポートするために、保持されているプロファイルを用いることを特徴とする請求項6に記載の医療用ポンプシステム。
【請求項8】
前記複数のプロファイルの各々には、当該プロファイルが対応している一つ以上のエリアを示すエリア情報が記録されており、
前記選択手段は、前記判定手段によって判定されたエリアを含むエリア情報が記録されているプロファイルを選択することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の医療用ポンプシステム。
【請求項9】
前記選択手段は、前記複数のプロファイルの各々と対応するエリアとを対応付けるテーブルを参照して、前記判定手段によって判定されたエリアに対応するプロファイルを選択することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の医療用ポンプシステム。
【請求項10】
無線LANを介して位置検知サーバとの通信が可能な医療用ポンプであって、
無線LANと接続するための通信手段と、
前記無線LANを介して、前記位置検知サーバから、医療施設内の複数のエリアのうちの当該医療用ポンプが属するエリアの通知を受信する受信手段と、
前記複数のエリアの一つ以上のエリアに対応して作成された、前記医療用ポンプの設定に関わる複数のプロファイルを保持する保持手段と、
ユーザによる前記医療用ポンプの設定操作をサポートするために、前記複数のプロファイルの中から、前記受信手段で受信されたエリアに対応するプロファイルを選択する選択手段とを備えることを特徴とする医療用ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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