説明

医療用具システム

【課題】優れた操作性を発揮する医療用具システムを提供する。
【解決手段】中空の第1の医療用具および前記第1の医療用具内に挿入されてなる第2の医療用具を有する医療用具システムであって、第1の医療用具の少なくとも一部の内表面に、電荷を有する第1の親水性高分子を含む第1の表面潤滑層が被覆されてなり、第2の医療用具の少なくとも一部の外表面に、第1の親水性高分子の電荷と同符号の電荷を有する第2の親水性高分子を含む第2の表面潤滑層が被覆されてなる、医療用具システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用具システム、特に血管内診断または治療用医療用具システムに関する。さらに詳細には、本発明は、操作性および潤滑性に優れる医療用具システム、特に血管内診断または治療用医療用具システムに関する。
【背景技術】
【0002】
カテーテルやガイドワイヤ等の生体内に挿入される医療用具は、血管などの組織損傷を低減させ、かつ術者の操作性を向上させるため、優れた潤滑性を示すことが要求される。このため、潤滑性を有する親水性高分子を基材表面に被覆したガイドワイヤやカテーテルが開発され、実用化されている。
【0003】
ここで、ガイドワイヤに沿ってカテーテルを操作する場合を考えると、カテーテル外表面は主に血管壁と接触し、カテーテル内表面はガイドワイヤと接触する。カテーテルとガイドワイヤ間に発生する摩擦はカテーテルを操作する上で無視できるものではなく、場合によってはカテーテルと血管壁との間の摩擦よりも直接的に操作性に影響する。すなわち、カテーテルは外表面のみでなく内表面も低摩擦性を有していることが望ましい。このような要求を満足させるため、内表面にすべり性の高いPTFEをコーティングしたカテーテル(例えば、特許文献1)や、内表面に親水性潤滑コートを施したカテーテル(例えば、特許文献2、3)が考案されている。しかしながら、さらに操作性を高める技術への要望は依然として存在している。近年では、固体表面に電解質高分子鎖をグラフトしたポリマーブラシが、水系溶媒中において摩擦を低減できることも報告されているが(非特許文献1)、疎水性相互作用によってのみ基材表面に固定された高分子グラフト鎖は耐久性が十分でないことや、基材の凹凸が大きい場合に十分な効果を発揮できないといった問題があり、実用化に至っていない。
【0004】
また、これら生体内に挿入される医療用具のコーティングは、優れた潤滑性のみならず高い生体適合性が要求される。特に血管内に挿入される医療用具の場合、医療用具表面に血栓が形成されることは操作性・安全性の両面から問題がある。このため医療用具表面は抗血栓性を有することが望ましい。医療用具に抗血栓性を付与する方法としては、医療用具表面を水溶性高分子で被覆する方法が考案されており(例えば、特許文献4)、血小板や血漿タンパク質の吸着を抑制できることが知られている。しかしながら、水溶性高分子で被覆された材料表面は、血漿タンパク質等の吸着は抑制されるものの、材料表面で活性化された血小板や微小血栓が体内に返還され、異常な血球成分の変動が観察されることがあり、問題となることがあった。このような観点から、より積極的に血液凝固を抑制することを目的として、ヘパリン等の血液凝固を阻害する物質を医療用具表面にコーティングする技術も考案されている(例えば、特許文献5、6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−190681号公報
【特許文献2】特開2001−129074号公報
【特許文献3】特表2003−510134号公報
【特許文献4】特開2008−220786号公報
【特許文献5】特開平8−24327号公報
【特許文献6】特開平9−131396号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】NATURE Vol.425 pp.163−165 (2003)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、未だ潤滑性と抗血栓性とを十分に両立する技術は実用化されておらず、上記特許文献5、6に記載される医療用具であっても、潤滑性及び抗血栓性についてより改良が望まれる。
【0008】
したがって、本発明の目的は、上記した従来技術の問題点を解決し、血管内で従来にない優れた操作性を発揮する医療用具システム、特に血管内治療用の医療用具システムを提供することである。
【0009】
また、本発明の他の目的は、さらに血栓形成による操作性の低下を抑え、長時間良好な操作性を維持できる医療用具システム、特に血管内治療用の医療用具システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記問題を解決すべく、鋭意研究を行った結果、例えば、カテーテルとガイドワイヤとの組み合わせ等の、中空の医療用具内に他の医療用具が挿入されてなる医療用具システムにおいて、カテーテルやガイドワイヤ単品に関しての潤滑性コーティング技術ではなく、双方の組み合わせ時に生じる両者の摩擦について注目した。その結果、カテーテル内面とガイドワイヤ外面、あるいは親カテーテル内面とその内部を通る子カテーテル外面に働く静電的反発力を利用して、これらの間に生じる摩擦を低減することによって、優れた操作性を達成できることを知得した。上記知見に基づいて、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、上記目的は、中空の第1の医療用具および前記第1の医療用具内に挿入されてなる第2の医療用具を有する医療用具システムであって、前記第1の医療用具の少なくとも一部の内表面に、電荷を有する第1の親水性高分子を含む第1の表面潤滑層が被覆されてなり、前記第2の医療用具の少なくとも一部の外表面に、前記第1の親水性高分子の電荷と同符号の電荷を有する第2の親水性高分子を含む第2の表面潤滑層が被覆されてなる、医療用具システムによって達成される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、優れた操作性が達成しうる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の医療用具システムの概要を示す断面図である。
【図2】実施例1、比較例1〜3における摺動性評価試験で使用される装置の図である。
【図3】実施例1、比較例1〜3における摺動性評価結果を示す図である。
【図4】参考例1における2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)とアクリル酸(AAc)との共重合体の抗血栓性評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、中空の第1の医療用具(以下、「医療用具2」とも言う)および前記第1の医療用具内に挿入されてなる第2の医療用具(以下、「医療用具1」とも言う)を有する医療用具システムであって、前記第1の医療用具の少なくとも一部の内表面に、電荷を有する第1の親水性高分子(以下、「親水性高分子(B)」とも言う)を含む第1の表面潤滑層(以下、「表面潤滑層(B)」とも言う)が被覆されてなり、前記第2の医療用具の少なくとも一部の外表面に、前記第1の親水性高分子の電荷と同符号の電荷を有する第2の親水性高分子(以下、「親水性高分子(A)」とも言う)を含む第2の表面潤滑層(以下、「表面潤滑層(A)」とも言う)が被覆されてなる、医療用具システムを提供する。本発明は、医療用具1の外表面の電荷と、医療用具2の内表面の電荷と、を同付号にすることを特徴とする。このように、カテーテル等の医療用具2の内表面とガイドワイヤ等の医療用具1の外表面と、に同符号の電荷を有する親水性高分子をコーティングすることで、医療用具2と医療用具1との間(例えば、カテーテル−ガイドワイヤ間)に静電的反発力を働かせ、当該反発力により摩擦を軽減させることができる。したがって、本発明の医療用具システムによると、例えば、上記カテーテルとガイドワイヤとの場合であれば、ガイドワイヤをカテーテル内をスムーズに通すことができるなど、優れた操作性を発揮できる。このため、術者の負担が軽減され、また、患者においても、手術時間が短縮され、患者への負担を軽減することができる。また、親水性高分子(A)または(B)がスルホ基を有する場合には、当該親水性高分子が抗血栓性を発揮する。このため、このような形態の医療用具システムを使用することにより、血栓形成による操作性の低下をもさらに抑えられ、長時間良好な操作性を維持することができるという利点がある。
【0015】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0016】
[医療用具システム]
図1は、本発明の医療用具システムの概要を示す断面図である。なお、図1では、親水性高分子(A)および(B)が負電荷を有する場合について述べるが、本発明は、当該形態に限定されるものではなく、親水性高分子(A)および(B)が正電荷を有する形態も同様にして定義される。また、本明細書では、特記しない限り、医療用具1および医療用具2を一括して「医療用具」と、電荷を有する親水性高分子(A)および(B)を一括して「親水性高分子」と、また、表面潤滑層(A)および(B)を一括して「表面潤滑層」と、それぞれ、称する。
【0017】
図1に示されるように、本発明の医療用具システムは、医療用具1および前記医療用具1が挿入されてなる中空の医療用具2を有する。ここで、医療用具1は、その少なくとも一部の外表面が、電荷を有する親水性高分子(A)を含む表面潤滑層(A)で被覆される。また、医療用具2は、その少なくとも一部の内表面が、電荷を有する親水性高分子(B)を含む表面潤滑層(B)で被覆される。この際、表面潤滑層(A)を構成する親水性高分子(A)の電荷と、表面潤滑層(B)を構成する親水性高分子(B)の電荷と、は、同付号である。このような構成によって、同付号の電荷(図1では、負電荷)同士が対向して、医療用具1の外表面(表面潤滑層(A))と医療用具2の内表面(表面潤滑層(B))との間には静電的反発力が生じ、この反発力が医療用具1の外表面と医療用具2の内表面との間に発生する摩擦を軽減する。したがって、本発明の医療用具システムは、例えば、カテーテル(医療用具2)とガイドワイヤ(医療用具1)との組み合わせ(医療用具システム)において、ガイドワイヤを挿入するカテーテル内腔断面積が小さい場合であっても、術者はカテーテル内腔においてガイドワイヤをスムーズに通すことができる。このため、術者の負担が軽減され、また、患者においても、手術時間が短縮され、患者への負担を軽減することができる。上記に加えて、ガイドワイヤとカテーテル内腔との間に生じる摩擦が少ないため、カテーテル内表面やガイドワイヤ外表面のコーティングの剥がれを抑制・防止することもできる。ゆえに、長時間にわたり良好な操作性を維持することができる。また、親水性高分子がスルホ基を有する場合には、当該親水性高分子が抗血栓性を発揮して、血栓形成による操作性の低下を抑制・防止できるなど、優れた操作性をさらに発揮できる。
【0018】
したがって、本発明の医療用具システムは、医療用具1および前記医療用具1が挿入されてなる中空の医療用具2を有する構造を有するものであれば特に制限されない。本発明の医療用具システムの具体的な医療用具の組み合わせとしては、ガイドワイヤ(医療用具1)とガイディングカテーテル(医療用具2)、ガイドワイヤ(医療用具1)とバルーンカテーテル(医療用具2)、ガイドワイヤ(医療用具1)と造影カテーテル(医療用具2)、バルーンカテーテル(医療用具1)とガイディングカテーテル(医療用具2)等の組合せからなる医療用具システムなどが挙げられる。
【0019】
表面潤滑層が形成される医療用具(基材)の材質は、特に制限されず、医療用具1や2で通常使用される材質から適宜選択され、金属、高分子、セラミックまたはそれらの複合材料のいずれであってもよい。このうち、金属としては、特に制限されず、公知の医療用の金属が使用できる。具体的には、鉄、チタン、アルミニウム、スズ、金、銀、銅、白金、およびこれらの合金、SUS304、SUS316L、SUS420J2、SUS630等のステンレス、ニッケル−チタン合金(Ni−Ti合金)、コバルト−クロム合金、亜鉛−タングステン合金等の合金などが挙げられる。また、高分子としては、特に制限されず、公知の医療用の高分子が使用できる。具体的には、ポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステルやそれらの共重合体などが挙げられる。なお、基材は、高分子単体により成形加工されたものであっても、あるいは高分子が基材表面に存在するものであってもよい。セラミックとしては、特に制限されず、公知の医療用のセラミックが使用できる。具体的には、シリコン(Si)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)の酸化物、炭化物、窒化物及びニトロカーバイド、アパタイトや生体ガラス等の生体活性を有するセラミックなどが挙げられる。なお、上記基材の形状は、特に制限されず、使用する医療用具の種類によって適宜規定される。
【0020】
[表面潤滑層]
本発明において、表面潤滑層(A)及び(B)は、同付号の電荷を有する親水性高分子(A)及び(B)を含むことによって、同付号の電荷が対向し、医療用具1の外表面(表面潤滑層(A))と医療用具2の内表面(表面潤滑層(B))との間には静電的反発力が生じ、この反発力が医療用具1の外表面と医療用具2の内表面との摩擦を軽減する。ゆえに、表面潤滑層は、上記構成を有するものであれば、特に制限されるものではなく、いずれの特性を有するものであってもよいが、表面潤滑層自身が良好な潤滑性を示し、剥離あるいは溶出することなく基材としての医療用具に強固に固定化されるものであることが望ましい。
【0021】
一方、従来の医療用具では、表面潤滑層を形成する電荷を有する親水性高分子(以下、単に「親水性高分子」とも称する)は、それ単体で表面にコートしても潤滑性に劣っていたり、容易に溶出してしまったり、脆く剥離してしまうことがある。このため、このような問題を解消するという観点からは、表面潤滑層は反応性官能基を有する親水性潤滑コート剤(以下、単に「親水性潤滑コート剤」とも称する)をさらに含むことが好ましい。このように親水性潤滑コート剤と、電荷を有する親水性高分子とを混合して基材にコーティングして表面潤滑層を形成することで、親水性潤滑コート剤と電荷を有する親水性高分子とを反応させて、表面潤滑層に架橋構造を付与する。これにより、親水性高分子が表面潤滑層や基材から遊離することを抑制・防止できる。したがって、上記形態によるように、良好な潤滑性を示す親水性潤滑コート剤を利用することで、医療用具(基材)表面に表面潤滑層(親水性高分子)を容易にかつ強固に固定化することが可能である。
【0022】
また、本発明では、親水性高分子(A)を含む表面潤滑層(A)は、医療用具1の少なくとも一部の外表面を被覆していればよく、また、親水性高分子(B)を含む表面潤滑層(B)は、医療用具2の少なくとも一部の内表面を被覆していればよい。ここで、被覆部分は、医療用具1の外表面および医療用具2の内表面の少なくとも一部であれば特に制限されないが、医療用具1の外表面と医療用具2の内表面とが接触する部分が表面潤滑層で被覆されることが好ましい。このような形態の場合には、医療用具1の外表面と医療用具2の内表面との接触部分に静電的反発力が生じ、医療用具1の外表面と医療用具2の内表面との摩擦を軽減することができるため、術者は、本発明の医療用具システムを容易に操作できる。
【0023】
また、本発明に係る表面潤滑層の厚みは、特に制限されないが、操作性、潤滑性などを考慮すると、表面潤滑層の厚み(湿潤時)は、0.1〜50μmであることが好ましく、0.5〜20μmであることがより好ましい。
【0024】
[電荷を有する親水性高分子]
本発明では、電荷を有する親水性高分子を、医療用具1の少なくとも一部の外表面および医療用具2の少なくとも一部の内表面に形成して、表面潤滑層が形成される。電荷を有する親水性高分子は、潤滑層表面が正または負に帯電するものであれば特に制限されず、いずれの特性を有するものであってもよい。すなわち、本発明に係る親水性高分子は、正に帯電する官能基を有する単量体由来の構成単位または負に帯電する官能基を有する単量体由来の構成単位を含む場合のいずれであってもよい。
【0025】
ここで、正に帯電する官能基を有する単量体としては、以下に限定されるものではないが、アミノ基(−NH)、イミノ基(=NH、−NH−)、イミダゾイル基、ピリジル基等から選択される少なくとも一つの官能基を有する単量体などが挙げられる。
【0026】
上記のうち、アミノ基を有する単量体としては、特に制限されないが、例えば、(メタ)アリルアミン、アミノエチル(メタ)アクリレート、アミノプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、メチルエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノスチレン、ジエチルアミノスチレン、モルホリノエチル(メタ)アクリレート、リジンなどが挙げられる。
【0027】
イミノ基を有する単量体としては、特に制限されないが、例えば、N−メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、エチレンイミンなどが挙げられる。
【0028】
イミダゾイル基を有する単量体としては、特に制限されないが、例えば、4−ビニルイミダゾール、N−ビニル−2−エチルイミダゾール、N−ビニル−2−メチルイミダゾールなどが挙げられる。
【0029】
ピリジル基を有する単量体としては、特に制限されないが、例えば、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、2−メチル−5−ビニルピリジンなどが挙げられる。
【0030】
また、負に帯電する官能基を有する単量体としては、以下に限定されるものではないが、スルホ基(−SOH)、カルボキシル基(−COOH)、ホスホン酸基(−PO)等から選択される少なくとも一つの官能基を有する単量体などが挙げられる。
【0031】
上記のうち、スルホ基(−SOH)を有する単量体としては、特に制限されないが、例えば、ビニルスルホン酸(エチレンスルホン酸)、2−プロペンスルホン酸、3−ブテンスルホン酸、4−ペンテンスルホン酸、(メタ)アクリル酸スルホメチル、(メタ)アクリル酸2−スルホエチル、(メタ)アクリル酸3−スルホプロピル、(メタ)アクリル酸2−メチル−3−スルホプロピル、(メタ)アクリル酸4−スルホブチル、N−(2−スルホエチル)(メタ)アクリル酸4−スルホブチル、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、N−(2−スルホエチル)(メタ)アクリルアミド、N−(1−メチル−2−スルホエチル)(メタ)アクリルアミド、N−(2−メチル−3−スルホプロピル)(メタ)アクリルアミド、N−(4−スルホブチル)(メタ)アクリルアミド、10−スルホデシル(メタ)アクリレート、スチレンスルホン酸、(メタ)アリルスルホネート、アリルスルホン酸、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルスルホフェニルエーテル、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシスルホベンゾエート、4−(メタ)アクリロキシブチルスルホネート、(メタ)アクリルアミドメチルスルホン酸、(メタ)アクリルアミドエチルスルホン酸、2−メチルプロパンスルホン酸(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
【0032】
また、カルボキシル基を有する単量体としては、特に制限されないが、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、グルタコン酸、イタコン酸、クロトン酸、ソルビン酸、ケイ皮酸、N−(メタ)アクリロイルグリシン、N−(メタ)アクリロイルアスパラギン酸、N−(メタ)アクリロイル−5−アミノサリチル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンマレート、6−(メタ)アクリロイルオキシエチルナフタレン−1,2,6−トリカルボン酸、O−(メタ)アクリロイルチロシン、N−(メタ)アクリロイルチロシン、N−(メタ)アクリロイルフェニルアラニン、N−(メタ)アクリロイル−p−アミノ安息香酸、N−(メタ)アクリロイル−o−アミノ安息香酸、p−ビニル安息香酸、2−(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、3−(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、4−(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、N−(メタ)アクリロイル−5−アミノサリチル酸、N−(メタ)アクリロイル−4−アミノサリチル酸などが挙げられる。
【0033】
ホスホン酸基を有する単量体としては、特に制限されないが、例えば、ホスホオキシエチル(メタ)アクリレート、3−(メタ)アクリロキシプロピル−3−ホスホノプロピオネート、3−(メタ)アクリロキシプロピルホスホノアセテート、4−(メタ)アクリロキシブチル−3−ホスホノプロピオネート、4−(メタ)アクリロキシブチルホスホノアセテート、5−(メタ)アクリロキシペンチル−3−ホスホノプロピオネート、5−(メタ)アクリロキシペンチルホスホノアセテート、6−(メタ)アクリロキシヘキシル−3−ホスホノプロピオネート、6−(メタ)アクリロキシヘキシルホスホノアセテート、10−(メタ)アクリロキシデシル−3−ホスホノプロピオネート、10−(メタ)アクリロキシデシルホスホノアセテート、2−(メタ)アクリロキシエチル−フェニルホスホネート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホン酸、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルホスホン酸、N−(メタ)アクリロイル−ω−アミノプロピルホスホン酸などが挙げられる。
【0034】
上記単量体は、単独でもまたは2種以上を組み合わせても用いることができる。また、上記では、1つの単量体に1つの官能基を導入した例を挙げたが、1つの単量体に2以上の正または負に帯電する官能基を導入したものを使用してもよい。
【0035】
一般的に、生化学的に血液凝固を阻害する物質が表面潤滑層に存在すると、基材表面での血漿タンパク質や血小板の活性化を抑制し、凝固物による医療用具の操作性の悪化や生体への悪影響を防ぐことができる。このため、親水性高分子(A)および(B)の少なくとも一方は、抗血栓性を示すことが好ましく、親水性高分子(A)および(B)双方が抗血栓性を示すことがより好ましい。
【0036】
ここで、血液凝固を阻害する物質としてはヘパリンや種々の官能基を導入した変性ヘパリンを例示できる。ヘパリンや変性ヘパリンはスルホ基を有するため、これらをコーティングした表面は水溶液中で負の電荷を有する。しかし、ヘパリンのような生体由来物質は、高コストであり均一な品質を保証することが困難であることや、不可避的な感染のリスクがあること、また、基材表面に固定させてもその後の加熱による滅菌処理により抗凝血活性が低下したり、生体中の酵素により分解され長く活性を維持できないという問題点も存在する。このため安価に大量合成が可能な人工合成ヘパリノイドを用いることが好ましい。この場合の人工合成ヘパリノイドとしては、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)やポリビニル硫酸といったスルホ基を有する親水性高分子やその誘導体を好適に例示できる。これらの人工合成ヘパリノイドも、水溶液中でスルホ基に由来した負電荷を有している。また、これらのスルホ基を有する物質は、ヘパリン、ヘパラン硫酸等の生体由来の抗凝血活性物質とは異なり、様々な有機溶媒に可溶でき、さらに耐滅菌性に優れる。
【0037】
上述したように、スルホ基を有する単量体由来の構成単位を有する親水性高分子は、優れた抗血液凝固活性(ヘパリン類似活性、抗トロンビン活性)を示すため、当該親水性高分子を含む表面潤滑層は優れた抗血栓作用を示す。このため、親水性高分子(A)および(B)の少なくとも一方は、スルホ基(−SOH)に由来する負電荷を有することが好ましい。これにより、親水性高分子自身が抗血栓性(生理学的な抗凝固作用)を発揮するので、血液中での操作性を長時間維持できる。
【0038】
また、本発明に係る親水性高分子は、上記正または負に帯電する官能基を有する単量体に加えて、他の単量体由来の構成単位を有していてもよい。ここで、他の単量体としては、特に制限されず、公知の単量体が使用できる。具体的には、上記カルボキシル基を有する単量体のナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等の、塩の形態;上記スルホ基を有する単量体の一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩及び有機アミン塩;トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコール(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類;ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート等の二官能(メタ)アクリレート類;トリエチレングリコールジマレート、ポリエチレングリコールジマレート等の(ポリ)アルキレングリコールジマレート類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルクロトネート、エチルクロトネート、プロピルクロトネート、等の不飽和モノカルボン酸類と炭素原子数1〜4のアルコールとのエステル;メチル(メタ)アクリルアミドのように不飽和モノカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアミンとのアミド類;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メチルスチレン等のビニル芳香族類;1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート等のアルカンジオールモノ(メタ)アクリレート類;ブタジエン、イソプレン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエン等のジエン類;(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアルキルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド類;(メタ)アクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の不飽和エステル類;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸メチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸ジブチルアミノエチル、ビニルピリジン等の不飽和アミン類などが挙げられる。これらの他の単量体は、単独でもまたは2種以上を組み合わせても用いることができる。なお、親水性高分子が他の単量体由来の構成単位をさらに有する場合における、他の単量体の使用量は、上記正または負に帯電する官能基を有する単量体による効果を損なわない程度であれば特に制限されない。好ましくは、他の単量体の使用量は、全単量体に対して、0.1〜50質量%、より好ましくは0.1〜20質量%である。
【0039】
本発明に係る親水性高分子を製造する方法は、特に制限されず、公知の重合方法が使用できるが、一般的には、重合開始剤を用いて前記単量体を重合させればよい。単量体成分の重合方法は、特に制限されず、例えば、溶媒中での重合や塊状重合等の方法により行なうことができる。また、本発明に係る親水性高分子がブロック共重合体またはグラフト共重合体である場合には、例えば、リビング重合、マクロモノマーを用いた重合、高分子重合開始剤を用いた重合、重縮合などが例示できるが、特に限定されない。
【0040】
本発明では、親水性高分子(A)の電荷と親水性高分子(B)の電荷は同付号である。このため、親水性高分子(A)及び(B)の電荷が同付号となるように、上記単量体を適宜選択して、親水性高分子(A)及び(B)を製造すればよい。このため、親水性高分子(A)及び(B)の電荷が同付号である限り、親水性高分子(A)及び(B)の各電荷に帯電する単量体の種類は、同じであってもあるいは異なるものであってもよく、また、親水性高分子(A)及び(B)が同じ単量体から製造される場合であっても、これらの高分子は、必ずしも同じである必要はなく、重量平均分子量等が異なるものであってもよい。
【0041】
[親水性潤滑コート剤]
本発明に係る表面潤滑層は、親水性高分子に加えて、反応性官能基を有する親水性潤滑コート剤をさらに含んでもよい。このように親水性潤滑コート剤と電荷を有する親水性高分子とを混合して医療用具(基材)にコーティングして表面潤滑層を形成させることで、親水性潤滑コート剤と電荷を有する親水性高分子とを反応させて両者を化学結合して、表面潤滑層中に架橋構造を形成することができる。また、親水性潤滑コート剤を利用すれば、反応性官能基の種類に応じて、種々の基材に対して容易に表面潤滑層を形成することができ、かつ未反応の反応性官能基と電荷を有する親水性高分子とを反応させることが可能である。このため、表面潤滑層が医療用具(基材)から剥離(遊離)することおよび親水性高分子が表面潤滑層から剥離(遊離)することを抑制・防止できる。したがって、本形態によるように、良好な潤滑性を示す親水性潤滑コート剤を利用することで、医療用具(基材)表面に表面潤滑層(親水性高分子)を容易にかつ強固に固定化することが可能である。
【0042】
一般的に、親水性潤滑コート剤の反応性官能基(例えば、エポキシ基)は、親水性高分子の正または負に帯電する官能基(例えば、アミノ基、スルホ基、カルボキシル基)と反応するため、親水性潤滑コート剤を構成する単量体と親水性高分子を構成する単量体との共重合体を不溶化しないように合成することは困難である。これに対して、本発明によるように、親水性潤滑コート剤および親水性高分子を別々に作製し、医療用具(基材)表面に塗布すると、表面に多くの電荷を導入することができる。このため、これらの医療用具を組み合わせることによって、医療用具2内に医療用具1を挿入しても、これらの間に静電的反発力が発生するため、医療用具2及び医療用具1間の摩擦を有効に軽減できる。したがって、本発明の医療用具システムは、優れた操作性を発揮することができる。
【0043】
ゆえに、本発明では、表面潤滑層(A)および(B)の少なくとも一方が親水性潤滑コート剤をさらに含むことが好ましく、表面潤滑層(A)および(B)双方が親水性潤滑コート剤をさらに含むことがより好ましい。
【0044】
表面潤滑層が親水性潤滑コート剤をさらに含む場合に使用される親水性潤滑コート剤は、特に制限されないが、親水性高分子の官能基(例えば、上記正または負に帯電する官能基)と反応しうる反応性官能基を有することが好ましい。これにより、親水性潤滑コート剤の反応性官能基と親水性高分子の官能基とが反応して、架橋構造を形成して不溶化する。このような表面潤滑層を有する医療用具が体液や生理食塩水と接触すると、吸水して表面にハイドロゲル層を形成する。このハイドロゲル層は、医療用具の表面と生体組織との直接的な接触を回避させる「表面潤滑層」となり、摩擦を低減させることができる。ゆえに、表面潤滑層(A)および(B)の少なくとも一方が架橋構造を有することが好ましく、表面潤滑層(A)および(B)双方が架橋構造を有することがより好ましい。これにより、表面潤滑層の強度が向上し、表面潤滑層が医療用具(基材)から剥離(遊離)することおよび親水性高分子が表面潤滑層から剥離(遊離)することを抑制・防止できる。
【0045】
ここで、親水性潤滑コート剤の反応性官能基としては、特に制限されず、親水性高分子の官能基(例えば、上記正または負に帯電する官能基を有する単量体の官能基)の種類によって適宜選択される。具体的には、反応性官能基としては、エポキシ基、酸ハライド基、アルデヒド基、イソシアネート基、酸無水物基などが挙げられる。より好ましくは、親水性潤滑コート剤は、反応性官能基としてエポキシ基、酸無水物基を分子内に有し、水を1%以上吸水する高分子化合物である。表面潤滑性の発現は、親水性高分子が生理食塩水、緩衝液、血液などの水系溶媒を吸水することによって起こる。従って、本発明における親水性高分子は、使用する温度(通常30〜40℃)領域で吸水率が100wt%以上であることが、潤滑性発現のためには好ましい。
【0046】
親水性潤滑コート剤が反応性官能基を有する高分子化合物である場合の、高分子化合物は、特に制限されないが、反応性官能基を有する単量体由来の繰り返し単位を有する高分子化合物が挙げられる。このような反応性官能基を有する単量体としては、上記エポキシ基、酸ハライド基、アルデヒド基、イソシアネート基、酸無水物基などの官能基を有する単量体であればいずれも使用されうる。具体的には、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート(GMA)、グリシジルエーテル、メチルグリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテルなどのエポキシ基を分子内に有する単量体;(メタ)アクリル酸クロリド、(メタ)アクリル酸ブロミド、(メタ)アクリル酸アイオダイドなどの酸ハライド基を分子内に有する単量体;(メタ)アクリルアルデヒド、グリオキザル、テレフタルアルデヒドなどのアルデヒド基を分子内に有する単量体;アクリロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクリロイルオキシプロピルイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートまたは1,3,5−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどのイソシアネート基を分子内に有する単量体;無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等の酸無水物基を分子内に有する単量体などを例示できる。これらのうち、反応性官能基を有する単量体としては、エポキシ基を有する単量体が好ましく、反応が熱等により促進され、取り扱いも比較的容易であるグリシジルアクリレートやグリシジルメタクリレートがより好ましい。
【0047】
親水性潤滑コート剤である高分子化合物は、上記反応性官能基を有する単量体由来の繰り返し単位に加えて、他の単量体由来の構成単位を有していてもよい。ここで、他の単量体としては、特に制限されず、公知の単量体が使用できるが、親水性単量体が好ましい。すなわち、親水性潤滑コート剤である高分子化合物は、反応性官能基を分子内に有する単量体と親水性単量体とを共重合することにより得られることが好ましい。より好ましくは、反応性官能基を有する単量体が集まって反応性ドメインを形成し、かつ親水性単量体が集まって親水性ドメインを形成しているブロックまたはグラフト共重合体である。このようなブロックまたはグラフト共重合体であると、表面潤滑層の強度や潤滑性において良好な結果が得られる。
【0048】
このような親水性単量体としては、特に制限されないが、例えば、アクリルアミドやその誘導体、ビニルピロリドン、アクリル酸やメタクリル酸及びそれらの誘導体などの、水溶性の単量体などが挙げられる。より具体的には、N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMAA)、アクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、ビニルピロリドン、2−メタクロイルオキシエチルフォスフォリルコリン、2−メタクリロイルオキシエチル−D−グリコシド、2−メタクリロイルオキシエチル−D−マンノシド、ビニルメチルエーテルなどが挙げられる。
【0049】
親水性潤滑コート剤である高分子化合物が反応性官能基を有する単量体および他の単量体との共重合体である場合の、反応性官能基を有する単量体と他の単量体との組成は、特に制限されない。体液や生理食塩水と接触する際のハイドロゲル層の形成、さらには適度な潤滑性の発揮などを考慮すると、反応性官能基を有する単量体と他の単量体とのモル比は、1:1〜1:100であることが好ましく、1:5〜1:20であることがより好ましい。
【0050】
本発明に係る高分子化合物(親水性潤滑コート剤)としては、無水マレイン酸−メチルビニルエーテル共重合体やグリシジルメタクリレート−ジメチルアクリルアミド共重合体が好ましく、グリシジルメタクリレート−ジメチルアクリルアミド共重合体(特にブロック共重合体)がより好ましい。これは、グリシジルメタクリレート−ジメチルアクリルアミドブロック共重合体は、反応性官能基を有する単量体が集まって反応性ドメインを形成し、かつ親水性単量体が集まって親水性ドメインを形成することによって、表面潤滑層が良好な潤滑性を発揮できるためである。
【0051】
本発明に係る高分子化合物(親水性潤滑コート剤)を製造する方法は、特に制限されず、公知の重合方法が使用できるが、一般的には、重合開始剤を用いて前記単量体を重合させればよい。単量体成分の重合方法は、特に制限されず、例えば、溶媒中での重合や塊状重合等の方法により行なうことができる。また、本発明に係る高分子化合物(親水性潤滑コート剤)がブロック共重合体またはグラフト共重合体である場合には、例えば、リビング重合、マクロモノマーを用いた重合、高分子重合開始剤を用いた重合、重縮合などが例示できるが、特に限定されない。
【0052】
[医療用具システムの製造方法]
本発明の医療用具システムは、医療用具1の少なくとも一部の外表面が親水性高分子(A)を含む表面潤滑層(A)で、医療用具2の少なくとも一部の内表面が親水性高分子(B)を含む表面潤滑層(B)で被覆される構造を有するものであれば、いずれの方法によって製造されてもよく、例えば、医療用具の所定の表面部分に、親水性高分子を、スプレー装置、バーコーター、ダイコーター、リバースコーター、コンマコーター、グラビアコーター、スプレーコーター、ドクターナイフなどの塗布装置を用いて、塗布する方法;親水性高分子の溶液中に医療用具を浸漬する方法などが挙げられる。ここで、親水性高分子は、そのまま塗布に供されてもよいが、好ましくは溶液の形態で塗布される。この際、親水性高分子の溶液の調製に使用される溶媒は、親水性高分子を溶解できるものであれば特に制限されない。具体的には、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、クロロホルムなどが挙げられる。また、溶液中の親水性高分子の濃度は、特に制限されず、親水性高分子の所望の被覆量、潤滑性などによって適宜選択されうる。好ましくは、溶液中の親水性高分子の濃度は、0.1〜10質量%であり、0.2〜5質量%であることがより好ましい。
【0053】
上述したように、本発明に係る表面潤滑層は、親水性高分子に加えて、反応性官能基を有する親水性潤滑コート剤を含むことが好ましい。このような場合の医療用具システムの製造方法もまた、特に制限されない。すなわち、親水性高分子および親水性潤滑コート剤の医療用具への塗布方法(表面潤滑層の形成方法)は、特に制限されず、親水性潤滑コート剤と、親水性高分子と、を混合して反応させることによって形成されうる。ここで、親水性潤滑コート剤と親水性高分子との医療用具への塗布順序(混合順序)は、特に制限されない。具体的には、(ア)親水性潤滑コート剤と親水性高分子とを混合して、得られる混合物を医療用具(基材)にコーティングすることで表面潤滑層を形成する方法;(イ)親水性潤滑コート剤を予め医療用具(基材)にコーティングして潤滑コート剤層を形成した後、親水性高分子、好ましくは親水性高分子の溶液を前記潤滑コート剤層に含浸、反応させて、表面潤滑層を形成する方法;(ウ)親水性高分子を予め医療用具(基材)にコーティングして親水性高分子層を形成した後、親水性潤滑コート剤、好ましくは親水性潤滑コート剤の溶液を前記親水性高分子層に含浸、反応させて、表面潤滑層を形成する方法などが挙げられる。これらのうち、(ア)、(イ)の方法が好ましい。特に、親水性潤滑コート剤と親水性高分子とが同一の溶媒に溶解しないような場合には、(イ)の方法が好ましく使用される。(イ)の方法によれば、親水性潤滑コート剤と親水性高分子とが効率よく結合するため、表面潤滑層中に架橋構造を良好に形成することが可能であり、表面潤滑層が医療用具(基材)から剥離(遊離)することおよび親水性高分子が表面潤滑層から剥離(遊離)することをより良好に抑制・防止できる。ここで、お互いに反応する親水性高分子および親水性潤滑コート剤は、別々に溶媒に溶解して使用直前に混合してもよいし、混合溶液を調製した後、使用するまで反応が進みにくい条件(たとえば低温)で保存してもよい。また、これらの親水性高分子および親水性潤滑コート剤を溶解する適当な溶媒がない場合は、溶媒を変えて別々に医療用具の基材表面に含浸させてもよい。ただし、強固な表面潤滑層を形成させるためには、高分子溶液が十分基材に含浸した状態で、反応を行うことが好ましい。なお、親水性高分子および上記親水性高分子の溶液の調製に使用される溶媒については、上記あるいは下記と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0054】
親水性潤滑コート剤は、そのまま塗布に供されてもよいが、好ましくは溶液の形態で塗布される。この際、親水性潤滑コート剤の溶液の調製に使用される溶媒は、親水性潤滑コート剤を溶解できるものであれば特に制限されない。具体的には、エタノール、アセトン、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、クロロホルムなどが挙げられる。また、溶液中の親水性潤滑コート剤の濃度は、特に制限されず、親水性潤滑コート剤の所望の被覆量、潤滑性、架橋度などによって適宜選択されうる。好ましくは、溶液中の親水性潤滑コート剤の濃度は、0.1〜20質量%であり、0.5〜15質量%であることがより好ましい。
【0055】
表面潤滑層が親水性高分子および親水性潤滑コート剤を含む場合には、両者を反応させて、架橋構造を形成させ、不溶化させることで、表面潤滑層が形成される。このようにして形成された表面潤滑層が体液や生理食塩水と接触すると、吸水して表面にハイドロゲル層を形成する。このハイドロゲル層は、医療用具の表面と生体組織との直接的な接触を回避させる「表面潤滑層」となり、摩擦を低減させることとなる。
【0056】
親水性高分子および親水性潤滑コート剤との反応条件は、両者が反応できる条件であれば特に制限されない。反応温度は、20〜150℃が好ましく、50〜130℃がより好ましい。また、反応時間は、1〜20時間が好ましく、2〜10時間がより好ましい。このような反応条件であれば、親水性高分子および親水性潤滑コート剤が反応して容易に架橋構造を形成し不溶化させることができる。また、上記反応(加熱処理)によって、親水性高分子および親水性潤滑コート剤間の架橋反応に加えて、親水性潤滑コート剤内での架橋反応、さらには医療用具の基材表面と反応しうる反応性官能基を有する場合には、親水性潤滑コート剤と基材との反応も促進できる。すなわち、親水性高分子単独では架橋反応が進みにくいが、親水性潤滑コート剤と組み合わせることにより、架橋反応が促進され強固な表面潤滑層を形成できる。また、反応を促進させることを目的として、熱以外にも触媒を加えてもよい。この際、触媒は、特に制限されず、親水性潤滑コート剤の反応性官能基の種類などによって適宜選択できる。例えば、親水性潤滑コート剤がエポキシ基を有する場合には、トリアルキルアミン化合物やピリジンなどの3級アミン化合物が好適に使用される。また、熱以外にも反応を促進させるために、光、電子線、放射線などを利用することもできる。
【0057】
さらに、上記反応に引き続いてさらに架橋構造を向上する工程を行ってもよい。このような架橋構造の向上により、潤滑性は維持しつつ表面潤滑層の強度をさらに高めることができる。しかしながら、架橋構造が多くなり過ぎると、水膨潤性が低下して表面の低摩擦性が損なわれるため、架橋の形成には注意を要する。架橋せしめる方法としては、特に制限されず、一般的な公知の方法が適用可能である。例えば、光、熱、もしくは放射線を用いて活性ラジカルを発生させて、親水性高分子と親水性潤滑コート剤との架橋反応を促進させる方法、重合性多官能モノマーを添加する方法、多官能性の架橋剤を塗布する方法、触媒を用いて分子内の官能基同士を架橋させる方法などを例示できる。上記方法は、必要であれば組み合わせることができる。
【実施例】
【0058】
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
【0059】
参考例1
本発明に係る親水性高分子である、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)とアクリル酸(AAc)とのランダム共重合体の抗血栓性を以下のようにして評価した。
【0060】
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)とアクリル酸(AAc)のランダム共重合体(AMPS:AAc(モル比)=8:1)を、それぞれ、25μg/mL、50μg/mL、100μg/mL、250μg/mLの濃度で溶解した生理食塩水溶液を用意し、これらを、それぞれ、poly(AMPS−AAc)溶液(1)〜(4)とした。
【0061】
これらpoly(AMPS−AAc)溶液(1)〜(4)50μLと、人血漿450μLとを混合し、その内の50μLとAPTT試験薬(ロシュ社PTT試薬「RD」)50μLとをキュベットに充填した。次に、これらのキュベットを37℃で180秒インキュベートした後、0.025MのCaCl2溶液を50μL添加し、血漿凝固までの時間を測定した。結果を図4に示す。図4に示されるように、血漿凝固時間はpoly(AMPS−AAc)濃度が増加するほど延長したことから、poly(AMPS−AAc)に血液凝固を抑制する効果があることが確認された。
【0062】
例1
親水性ドメインとしてジメチルアクリルアミド(DMAA)を、反応性ドメインとしてグリシジルメタクリレート(GMA)を有するブロック共重合体(DMAA:GMA(モル比)=12:1)を8wt%濃度となるようにジメチルホルムアミド(DMF)に溶解したDMF溶液を作製し、これを親水性潤滑コート液とした。
【0063】
ステンレスコイル(SUS304)製ガイドワイヤ(外径0.36mm)を、上記で作製された親水性潤滑コート液中に浸漬した。次に、このガイドワイヤを乾燥させた後、120℃のオーブン中で3時間反応させることで、ガイドワイヤ外表面に親水性潤滑コート層を形成した。
【0064】
別途、負電荷を有する親水性高分子として2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)とアクリル酸(AAc)とのランダム共重合体(AMPS:AAc(モル比)=8:1)を1wt%濃度となるように水に溶解した水溶液を調製し、これを親水性高分子水溶液とした。
【0065】
上記で外表面に親水性潤滑コート層を形成したガイドワイヤを、上記で調製した親水性高分子水溶液中に、10分間浸漬した。次に、このガイドワイヤを乾燥させた後、120℃のオーブン中で4時間反応させることで、親水性潤滑コート層中に負電荷を導入した表面潤滑層を形成した。さらに、未反応の親水性高分子を除去するために、上記ガイドワイヤを純水中で一日間洗浄し、外表面に負電荷を有する親水性高分子を含む表面潤滑層を被覆したガイドワイヤ(A)を得た。このガイドワイヤ(A)の断面を顕微鏡観察したところ、湿潤時の表面潤滑層の厚さは約3μmで均一であった。
【0066】
例2
ステンレスコイル製(SUS304)ガイドワイヤ(外径0.36mm)を、上記例1と同様にして作製した親水性潤滑コート液中に浸漬した。次に、このガイドワイヤを乾燥させた後、120℃のオーブン中で7時間反応させることにより、ガイドワイヤ外表面に親水性潤滑コート層を形成したガイドワイヤ(B)を得た。なお、このガイドワイヤ(B)は、外表面に電荷を持たない。このガイドワイヤ(B)の断面を顕微鏡観察したところ、湿潤時の親水性潤滑コート層の厚さは約3μmで均一であった。
【0067】
例3
ステンレスコイル製(SUS304)ガイドワイヤ(外径0.36mm)の外表面をなんら被覆せずにそのまま用い、これをガイドワイヤ(C)とした。
【0068】
例4
親水性ドメインとしてジメチルアクリルアミド(DMAA)を、反応性ドメインとしてグリシジルメタクリレート(GMA)を有するブロック共重合体(DMAA:GMA(モル比)=12:1)を10wt%濃度となるようにテトラヒドロフラン(THF)に溶解したTHF溶液を作製し、これを親水性潤滑コート液とした。
【0069】
ナイロン12からなるカテーテル(内径0.45mm)の内腔に、上記で作製された親水性潤滑コート液を通過させた。次に、このカテーテルを乾燥させた後、100℃のオーブン中で3時間反応させることで、カテーテル内表面に親水性潤滑コート層を形成させた。
【0070】
別途、負電荷を有する親水性高分子として2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)とアクリル酸(AAc)とのランダム共重合体(AMPS:AAc(モル比)=8:1)を1wt%濃度となるように溶解した水溶液を調製し、これを親水性高分子水溶液とした。
【0071】
上記で内表面に親水性潤滑コート層を形成したカテーテル内に、上記で調製した親水性高分子水溶液を10分間通過させた。次に、このカテーテルを乾燥させた後、100℃のオーブン中で7時間反応させることで、親水性潤滑コート層中に負電荷を導入した表面潤滑層を形成した。さらに、未反応の親水性高分子を除去するために、上記カテーテルに純水を一日間流し続け、内表面に負電荷を有する親水性高分子を含む表面潤滑層を被覆したカテーテル(a)を得た。このカテーテル(A)の断面を顕微鏡観察したところ、湿潤時の表面潤滑層の厚さは約5μmで均一であった。
【0072】
例5
ナイロン12からなるカテーテル(内径0.45mm)の内腔に、上記例4と同様にして作製した親水性潤滑コート液を通過させた。次に、このカテーテルを乾燥させた後、100℃のオーブン中で10時間反応させることで、カテーテル内表面に親水性潤滑コート層を形成したカテーテル(b)を得た。なお、このカテーテル(b)は、内表面に電荷を持たない。このカテーテル(b)の断面を顕微鏡観察したところ、湿潤時の親水性潤滑コート層の厚さは約5μmで均一であった。
【0073】
例6
ナイロン12からなるカテーテル(内径0.45mm)の内表面をなんら被覆せずにそのまま用い、これをカテーテル(c)とした。
【0074】
実施例1、比較例1〜3:摺動性評価
上記例1〜3のガイドワイヤ(A)〜(C)および上記例4〜6のカテーテル(a)〜(c)を、表1に示すように組合せ、これらの組み合わせについて、以下の手順により摺動性を評価した。
【0075】
【表1】

【0076】
図2に示すように、φ35mmのループ型に固定された塩化ビニル製チューブ内に、先端にハブを取り付けた長さ250mmの医療用具システム1〜4のカテーテルをそれぞれ固定した。この状態で塩化ビニル製チューブ内を人鮮血(ヘパリン0.75単位/mLを含む)で満たした。カテーテルに取り付けられたハブより人鮮血を吸引し、カテーテル内及びハブが人鮮血で満たされたことを確認した。医療用具システム1〜4のガイドワイヤをそれぞれ生理食塩水で十分に湿らせた後、それぞれのカテーテルのハブ側より挿入した。ガイドワイヤを速やかにプッシュプルゲージと接続した後、カテーテルを100mm/minの速度で、20mmの幅を上下に30回往復移動させた。カテーテルを往復移動させている間、プッシュプルゲージが測定する摺動抵抗値を記録することで、ガイドワイヤ・カテーテルシステムの摺動性を評価した。測定結果を図3に示す。
【0077】
図3から下記のことが考察される。すなわち、実施例1の医療用具システム1は、摺動初期から低い摺動抵抗値を示し、かつその値を30往復の間維持したことが分かる。これは、ガイドワイヤ外面−カテーテル内面に存在する負電荷により両面の間に静電反発力が働き、摩擦を軽減したため低い摺動抵抗値を示したものと考えられる。また、表面潤滑層が抗血栓性を有していることから、微小な血栓形成までを抑制でき、安定した潤滑性を長時間維持することができた。
【0078】
これに対して、比較例3の医療用具システム4では、初期から高い摺動抵抗値を示し、摺動を繰り返すうちにその値は顕著に増加したことが分かる。これは、ガイドワイヤ外表面のSUS304や、カテーテル内表面のナイロン12は血栓形成を誘起しうる材料であるため、ガイドワイヤやカテーテル表面に形成された血栓が摺動に対する障害となり、摺動抵抗値が増加したためであると考えられる。
【0079】
また、比較例1の医療用具システム2は、比較的低い摺動抵抗値を示し、摺動を繰り返しても摺動抵抗値の顕著な増加は見られなかった。これは、ガイドワイヤ外表面およびカテーテル内表面に被覆した親水性潤滑コートは、血漿タンパク質や血小板の吸着を誘起し難い素材であり、摺動抵抗を大きく増加するほどの血栓を形成するまでには至っていないためであると考えられる。しかしながら、長時間血液に接触していると表面で活性化した凝固因子が微小血栓を形成し、摺動抵抗が僅かに高くなった。これは、ガイドワイヤBの外表面及びカテーテルbの内表面は双方とも電荷をもたない潤滑層で被覆されているため、両面の間に静電反発力が働かず、摺動抵抗値が高くなったものと考えられる。
【0080】
さらに、比較例2の医療用具システム3は、比較的低い摺動抵抗値を示し、摺動を繰り返しても摺動抵抗値の顕著な増加は見られなかった。しかしながら、その摺動抵抗値は比較例1とほぼ同等であった。これは、ガイドワイヤAの外表面は負電荷を有する潤滑層で被覆されるが、カテーテルbの内表面は電荷をもたない潤滑層で被覆されているため、両面の間に静電反発力が働かず、やはり摺動抵抗値が高くなったものと考えられる。
【0081】
以上の結果より、カテーテル内表面とガイドワイヤ外表面との間に静電反発力が働く抗血栓性表面潤滑層を形成させることで、血管内で従来にない優れた操作性を発揮し、さらに血栓形成による操作性の低下を抑え、長時間良好な操作性を維持することのできる血管内治療用の医療用具システムを実現することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空の第1の医療用具および前記第1の医療用具内に挿入されてなる第2の医療用具を有する医療用具システムであって、
前記第1の医療用具の少なくとも一部の内表面に、電荷を有する第1の親水性高分子を含む第1の表面潤滑層が被覆されてなり、
前記第2の医療用具の少なくとも一部の外表面に、前記第1の親水性高分子の電荷と同符号の電荷を有する第2の親水性高分子を含む第2の表面潤滑層が被覆されてなる、医療用具システム。
【請求項2】
前記第1の親水性高分子および第2の親水性高分子の少なくとも一方は、スルホ基(−SOH)またはカルボキシル基(−COOH)に由来する負電荷を有する、請求項1に記載の医療用具システム。
【請求項3】
前記第1の親水性高分子および第2の親水性高分子の少なくとも一方は、抗血栓性を示す、請求項1または2に記載の医療用具システム。
【請求項4】
前記第1の表面潤滑層および第2の表面潤滑層の少なくとも一方は、架橋構造を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の医療用具システム。
【請求項5】
前記第1の表面潤滑層および第2の表面潤滑層の少なくとも一方は、反応性官能基を有する親水性潤滑コート剤と、電荷を有する親水性高分子と、を混合して反応させることによって形成される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の医療用具システム。
【請求項6】
前記第1の表面潤滑層および第2の表面潤滑層の少なくとも一方は、反応性官能基を有する親水性潤滑コート剤をあらかじめ医療用具にコーティングして潤滑コート剤層を形成した後、電荷を有する親水性高分子を前記潤滑コート剤層に含浸させて反応させることによって形成される、請求項5に記載の医療用具システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−177381(P2011−177381A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−45467(P2010−45467)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】