説明

医療用又は介護用シート

【課題】優れた吸放出性及び強度を備え、かつ優れた消臭効果、抗アレルゲン効果及び抗菌効果を有する医療用又は介護用シートを提供する。
【解決手段】吸排水性ポリマーを含む親水性吸排水繊維束11Aとフタロシアニン化合物を含む親水性消臭繊維束11Bとを構成繊維とする基布10、または吸排水性ポリマーとフタロシアニン化合物とを含む親水性吸排水消臭繊維束11Cを構成繊維とする基布20に撥水性パイル糸15が所定のボリュームで打ち込まれることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病院や介護施設など、医療や介護の現場で使用される医療用又は介護用シートであって、例えばパジャマ、浴衣、肌着、ベッド用シーツ、枕カバー、或いは車いすの座部カバーとして好適な医療用又は介護用シートに関する。より詳しくは、優れた吸放出性及び強度を備え、かつ優れた消臭効果、抗アレルゲン効果及び抗菌効果を有する医療用又は介護用シートに関する。
【従来の技術】
【0002】
従来より、医療や介護の現場では、患者又は被介護者が日常生活をする上で衣類等の身回り品から臭気が生じたり、湿気その他に起因して各種の細菌が繁殖したりして生活環境を悪化させることがある。また、横臥状態を余儀なくされる病人や寝たきり老人の場合、自由に身動きがとれないため、常に背中の同じ部分が布団にすれ、さらには発汗、あるいは失禁によって、寝床の中が蒸れ、すれた部分に細菌が繁殖しやすくなって床ずれを患う者も多い。このような悪臭の発生、床ずれの発生を防ぐため、看護士や介護人は頻繁に着替えやシーツの取り替えをしなかればならず、その衛生管理は繁雑を極めていた。特に床ずれの発生を防ぐためには、定期的に横臥者に寝返りをうたせて、すれを防止したり、寝床の中が蒸れないように通気性をよくするなど様々な工夫を施しても、床ずれを完全に防止することは困難であった。
【0003】
近年、高齢者の増加に伴い、介護を受ける人口は増加の一途を辿っており、上述した医療や介護の現場における看護士や介護人に対する負担は大きくなるばかりである。
【0004】
このような事情から、医療や介護の現場における煩雑さの解消を目的として、吸水性や消臭性を付与した医療用又は介護用シートが提案されるに至っている(特許文献1参照)。
このシートは、吸水性樹脂層と、脱臭、防菌・防カビ剤を含有した不織布層とからなるものであり、吸水、防湿、防水、脱臭、防菌・防カビ作用を同時に有するものである。
【0005】
しかしながら、このシートにあっては、吸水性樹脂が保水性が高く吸水後の乾燥スピ−ドが遅いために蒸れを生じ、これが細菌の生育に好条件となって付与した抗菌性では細菌の繁殖を完全に抑えることはできないという問題点があり、この結果、細菌の繁殖による悪臭の発生、床ずれの発生を招いていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平03−103254
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者は、水を速やかに吸水して保持すると共に、一旦吸収した水を速やかに放出することができ、かつ優れた消臭効果、抗アレルゲン効果及び抗菌効果を有する医療用又は介護用シートについて、さらに研究を進めた結果、本発明を完成するに至ったのである。
【0008】
すなわち、本発明は、優れた吸放出性及び強度を備え、かつ優れた消臭効果、抗アレルゲン効果及び抗菌効果を有する医療用又は介護用シートを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、撥水性上側繊維層と高吸水性下側繊維層とからなり、前記高吸水性下側繊維層が、吸排水性ポリマーを含む親水性吸排水繊維束とフタロシアニン化合物を含む親水性消臭繊維束とを構成繊維とする基布、または吸排水性ポリマーとフタロシアニン化合物とを含む親水性吸排水消臭繊維束を構成繊維とする基布からなることを特徴とする医療用または介護用シートをその要旨とした。
【0010】
請求項2記載の発明は、吸排水性ポリマーが感温吸排水性ポリマーであることを特徴とする請求項1に記載の医療用又は介護用シートをその要旨とした。
【0011】
請求項3記載の発明は、吸排水性ポリマーの感温点が10−45℃であることを特徴とする請求項2に記載の医療用又は介護用シートをその要旨とした。
【0012】
請求項4記載の発明は、吸排水性ポリマーを含む吸排水性繊維を芯部とし、前記芯部の周りに天然繊維 、合成繊維 、半合成繊維 または再生繊維からなる親水性繊維を鞘部とした親水性吸排水繊維束と、フタロシアニン化合物を含む消臭繊維を芯部とし、前記芯部の周りに天然繊維 、合成繊維 、半合成繊維 または再生繊維からなる親水性繊維を鞘部とした親水性消臭繊維束とを構成繊維とする基布を用いたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の医療用又は介護用シートをその要旨とした。
【0013】
請求項5記載の発明は、吸排水性ポリマーを含む吸排水性繊維とフタロシアニン化合物を含む消臭繊維とを芯部とし、前記芯部の周りに天然繊維 、合成繊維 、半合成繊維 または再生繊維からなる親水性繊維を鞘部とした親水性吸排水消臭繊維束を構成繊維とする基布を用いたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の医療用又は介護用シートをその要旨とした。
【0014】
請求項6記載の発明は、撥水性上側繊維層が、基布に所定のボリュームで打ち込まれる撥水性パイル糸からなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の医療用又は介護用シートをその要旨とした。
【0015】
請求項7記載の発明は、撥水性上側繊維層が、基布に積層一体化された撥水性繊維を構成繊維とする不織布、織物、或いは紙のいずれかからなる撥水性繊維シートであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の医療用又は介護用シートをその要旨とした。
【発明の効果】
【0016】
本発明の医療用又は介護用シートにあっては、撥水性上側繊維層と高吸水性下側繊維層とからなり、前記高吸水性下側繊維層が、吸排水性ポリマーを含む親水性吸排水繊維束とフタロシアニン化合物を含む親水性消臭繊維束とを構成繊維とする基布、または吸排水性ポリマーとフタロシアニン化合物とを含む親水性吸排水消臭繊維束を構成繊維とする基布からなることから、優れた吸放出性及び強度を備え、かつ優れた消臭効果、抗アレルゲン効果及び抗菌効果を有する。この結果、悪臭の発生や床ずれの発生を確実に防止することができ、医療や介護の現場における看護士や介護人に対する負担を大幅に軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の医療用又は介護用シートを示す拡大断面図である。
【図2】本発明の医療用又は介護用シートを構成する吸排水性ポリマーを含む親水性吸排水繊維束とフタロシアニン化合物を含む親水性消臭繊維束とを構成繊維とする基布を示す拡大断面図である。
【図3】本発明の医療用又は介護用シートの基布の構成繊維として含まれる吸排水性ポリマーを含む親水性吸排水繊維束を示す模式図である。
【図4】本発明の医療用又は介護用シートの基布の構成繊維として含まれるフタロシアニン化合物を含む親水性消臭繊維束を示す模式図である。
【図5】本発明の医療用又は介護用シートを構成する吸排水性ポリマーとフタロシアニン化合物とを含む親水性吸排水消臭繊維束を構成繊維とする基布を示す拡大断面図である。
【図6】本発明の医療用又は介護用シートの基布の構成繊維として含まれる吸排水性ポリマーとフタロシアニン化合物とを含む親水性吸排水消臭繊維束を示す模式図である。
【図7】本発明の医療用又は介護用シートの別の形態を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の医療用又は介護用シートを図面に示した好ましい実施の形態に従ってさらに詳しく説明する。本発明の医療用又は介護用シートは、優れた吸放出性及び強度を備え、かつ優れた消臭効果、抗アレルゲン効果及び抗菌効果を有するものであり、病院や介護施設など、医療や介護の現場で使用される医療用又は介護用シートであって、例えばパジャマ、浴衣、肌着、ベッド用シーツ、枕カバー、或いは車いすの座部カバーとして好適に使用できる。
【0019】
本発明の医療用又は介護用シート(以下、単にシートという)は、図1及び図7に示すように、撥水性上側繊維層15、23と高吸水性下側繊維層とからなり、前記高吸水性下側繊維層は、図2−図4に示す吸排水性ポリマーを含む親水性吸排水繊維束11Aとフタロシアニン化合物を含む親水性消臭繊維束11Bとを構成繊維とする基布10、または図5−図6に示す吸排水性ポリマーとフタロシアニン化合物とを含む親水性吸排水消臭繊維束11Cを構成繊維とする基布20からなる。
【0020】
図2−図4に示す基布10について説明する。図2に示す基布10を構成する吸排水性ポリマーを含む親水性吸排水繊維束11Aとしては、例えば図3に示すように、吸排水性ポリマーを含む吸排水性繊維12を芯部とし、前記芯部の周りに天然繊維 、合成繊維 、半合成繊維 または再生繊維からなる親水性繊維14を鞘部としたものを挙げることができる。
【0021】
吸排水性繊維12としては、親水性繊維の表面に吸排水性ポリマーをバインダーを介して付着させたもの、或いは親水性繊維の繊維内部に吸排水性ポリマーを含ませたものを挙げることができ、親水性繊維としては、例えば木綿、麻、木質パルプまたは竹パルプのようなセルロース系繊維、羊毛または絹のような蛋白質系繊維から選ばれる天然繊維、ポリオレフィン系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリアミド系繊維、ポリアクリル系繊維、ポリエステル系繊維、ポリウレタン系繊維から選ばれる合成繊維、アセテートレーヨンなどのセルロース系繊維からなる半合成繊維、ビスコースレーヨンなどのようなセルロース系繊維から選ばれる再生繊維を挙げることができる。
【0022】
吸排水性ポリマーとしては、特に限定されないが、取り扱い性が良好であり、かつ吸排水性の制御が容易であることから、吸水性に優れると共に一旦吸水した後、温度変化に伴って吸水率が変化して排水する機能を持つ感温吸排水性ポリマーが好ましい。感温吸排水性ポリマーとしては、感温点が10−45℃の温度領域にあるものがより好ましく、感温点が35°Cのものがさらに好ましい。図3及び図6の例では、感温点が35°Cの感温吸排水性ポリマーを吸排水性ポリマーとして用いた。
【0023】
このような感温吸排水性ポリマーとしては、イソプロピルアクリルアミド構造を含むポリマーの他に、アクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド、アクリルアミド誘導体、ジメチルアミノエチルメタクリレ−ト、アクリル酸ステアリンアクリレート共重合体などのポリマーを挙げることができる。
【0024】
鞘部を構成する繊維には、吸排水性繊維のベースとした親水性繊維と同じく、木綿、麻、木質パルプまたは竹パルプのようなセルロース系繊維、羊毛または絹のような蛋白質系繊維から選ばれる天然繊維、ポリオレフィン系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリアミド系繊維、ポリアクリル系繊維、ポリエステル系繊維、ポリウレタン系繊維から選ばれる合成繊維、アセテートレーヨンなどのセルロース系繊維からなる半合成繊維、ビスコースレーヨンなどのようなセルロース系繊維から選ばれる再生繊維などの親水性繊維を用いることができる。
【0025】
尚、親水性吸排水繊維束は、芯部を構成する吸排水性繊維の含有割合によっては、該吸排水性繊維中の感温吸排水性ポリマーが吸水により膨潤し、親水性吸排水繊維束自体の繊維強度を低下する恐れがあるが、吸水時の親水性吸排水繊維束の繊維強度の低下を抑えるため、繊維束中にポリエステルなどの熱接着性繊維を混入させても良い。
【0026】
図2に示す基布10を構成するフタロシアニン化合物を含む親水性消臭繊維束11Bとしては、例えば図4に示すように、フタロシアニン化合物を含む消臭繊維13を芯部とし、前記芯部の周りに天然繊維 、合成繊維 、半合成繊維 または再生繊維からなる親水性繊維14を鞘部としたものを挙げることができる。
【0027】
消臭繊維としては、親水性繊維の表面にフタロシアニン化合物をバインダーを介して付着させたもの、或いは親水性繊維の繊維内部にフタロシアニン化合物を含ませたものを挙げることができ、親水性繊維としては、例えば木綿、麻、木質パルプまたは竹パルプのようなセルロース系繊維、羊毛または絹のような蛋白質系繊維から選ばれる天然繊維、ポリオレフィン系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリアミド系繊維、ポリアクリル系繊維、ポリエステル系繊維、ポリウレタン系繊維から選ばれる合成繊維、アセテートレーヨンなどのセルロース系繊維からなる半合成繊維、ビスコースレーヨンなどのようなセルロース系繊維から選ばれる再生繊維を挙げることができる。
【0028】
フタロシアニン化合物としては、下記化学式1で表されるものであり、式中のMは、鉄、マンガン、チタン、バナジウム、ニッケル、銅、タングステンからから選択される金属である。
【化1】

【0029】
鞘部を構成する繊維には、吸排水性繊維のベースとした親水性繊維と同じく、木綿、麻、木質パルプまたは竹パルプのようなセルロース系繊維、羊毛または絹のような蛋白質系繊維から選ばれる天然繊維、ポリオレフィン系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリアミド系繊維、ポリアクリル系繊維、ポリエステル系繊維、ポリウレタン系繊維から選ばれる合成繊維、アセテートレーヨンなどのセルロース系繊維からなる半合成繊維、ビスコースレーヨンなどのようなセルロース系繊維から選ばれる再生繊維などの親水性繊維を用いることができる。
【0030】
図2−図4に示す吸排水性ポリマーを含む親水性吸排水繊維束11Aとフタロシアニン化合物を含む親水性消臭繊維束11Bとを構成繊維とする基布10は、不織布、織物、編物、紙などの形態を採ることができ、この基布10を単独で使用するほかに、基布10に不織布、織物、編物、紙、プラスチックネットなどの補強シートを積層し、部分接着、絡合処理などにより一体化した複合体の形態を採ることもできる。
【0031】
基布10のさらに好ましい形態としては、吸排水性ポリマーを含む親水性吸排水繊維束11Aとフタロシアニン化合物を含む親水性消臭繊維束11Bとを含み、さらに熱接着性繊維を含む繊維ウェブを形成し、この繊維ウェブを水流絡合やニードルパンチなどの絡合処理を行ない、さらに加熱処理をすることで得られる不織布からなるもの、或いは前記繊維ウェブの一方面側にプラスチックネットからなる補強シートを積層し、水流絡合やニードルパンチなどの絡合処理を行ない、さらに加熱処理をすることで得られる複合シートからなるものを挙げることができる。
【0032】
次に、図5−図6に示す基布20について説明する。図5に示す基布20を構成する吸排水性ポリマーとフタロシアニン化合物とを含む親水性吸排水消臭繊維束11Cとしては、例えば図6に示すように、吸排水性ポリマーを含む吸排水性繊維12とフタロシアニン化合物を含む消臭繊維13とを芯部とし、前記芯部の周りに天然繊維 、合成繊維 、半合成繊維 または再生繊維からなる親水性繊維14を鞘部としたものを挙げることができる。
【0033】
親水性吸排水消臭繊維束11Cにおける吸排水性ポリマーを含む吸排水性繊維12、フタロシアニン化合物を含む消臭繊維13、親水性繊維14については、親水性吸排水繊維束11Aの芯部を構成する吸排水性繊維12、親水性消臭繊維束11Bの芯部を構成する消臭繊維13、親水性吸排水繊維束11A及び親水性消臭繊維束11Bの鞘部を構成する親水性繊維と同じであるため、ここでの説明は割愛する。
【0034】
尚、親水性吸排水消臭繊維束11Cにおける吸排水性繊維12及び消臭繊維13の量は任意であり、本発明の医療用又は介護用シートの用途や使用状態において、要求される吸排水性及び消臭性の大小に応じて適宜決定すると良い。
【0035】
次に、撥水性上側繊維層について説明する。図1に示す医療用又は介護用シートは、上述の基布10又は20の上面に撥水性のパイル糸15が所定のボリュームとなるように打ち込まれて撥水性上側繊維層が構成されているのである。基布10又は20に打ち込まれるパイル糸15には、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系の合成繊維が好適に使用される。パイル糸21の太さは任意であり、予定する医療用又は介護用シートの種類や用途に合わせて自由に決定すると良い。
【0036】
パイル糸15は、該パイル糸15を構成する繊維表面に撥水剤を付着させて撥水加工が施されている。使用する撥水剤としては、例えばフッソ系撥水剤、シリコン系撥水剤、パラフィン系撥水剤等があり、要求される撥水性能に応じて適宜選択すると良い。特にパーフルオロエチレン系およびその共重合物からなるものは撥水性能が高く好ましい。この撥水剤の付着量としては、純分で0.01〜10.0重量%の範囲が望ましい。この範囲よりも付着量が下回ると、十分な撥水性能が得られず、この範囲よりも多い付着量とした場合には、上回った分だけの効果が期待できず不経済となる。
【0037】
図1に示す医療用又は介護用シートにあっては、撥水性上側繊維層、すなわち撥水性のパイル糸15の層が、患者又は被介護者の身体の肌に面する側となるように使用される。このため、図1中矢印で示すように、患者又は被介護者の発汗、あるいは失禁による水分は、パイル糸15の構成繊維間を通してパイル糸15基部の基布10又は20に浸透し、基布10又は20に含まれる、吸排水性繊維12の吸排水性ポリマーに吸水されるようになっている。基布10又は20には、図3、図4又は図6に示すように、吸排水性繊維12とともにフタロシアニン化合物を含む消臭繊維13が含まれており、吸排水性繊維12中の吸排水性ポリマーの吸水に伴って、これに隣り合う消臭繊維13中のフタロシアニン化合物も水と接触し、該フタロシアニン化合物の持つ消臭効果、さらには抗アレルゲン効果及び抗菌効果がより活性化され、効果的に医療用又は介護用シートの消臭、抗アレルゲン及び抗菌がなされるようになっている。
【0038】
吸水した吸排水性繊維12中の吸排水性ポリマーは、所定の湿度又は温度となったとき(図示の場合感温点が35°Cの感温吸排水性ポリマーを吸排水性ポリマーとして用いたので、感温点35℃となったとき)、一旦吸収した水を速やかに放出するようになっている。
【0039】
パイル糸15が打ち込まれた基布10又は20裏面には、パイル糸の抜け止め層16が設けられている。図1に示す抜け止め層16は、蜘蛛の巣状の透孔性接着シートからなる。この透孔性接着シートには、接着時の熱およびまたは圧力で薄膜化されて成るもの、ホットメルト樹脂などの接着樹脂中に発泡剤を入れて混練、シート化したものなどを用いることができる。図1に示す例では、この透孔性接着シートをパイル糸15を打ち込んだ基布10又は20裏面に配置し熱プレスすることで、該透孔性接着シートが薄膜(フィルム)状となって基布10又は20内部に浸透し、パイル糸15の抜けを止めるようになっている。
【0040】
基布10又は20裏面に形成されているバッキング層17は、該医療用又は介護用シートの補強および保形、すべり止めを行う目的で形成されるものである。図1に示す例において、バッキング層17は連続気泡構造となっており、その裏面側にはズレ止め用の多数のスパイク19が形成されている。
【0041】
バッキング層を構成する樹脂としては、例えばスチレンーブタンジエンースチレン共重合体、アクリルニトリルーブタジエン系共重合体、ウレタン樹脂等の高分子、スチレンーブタンジエンゴム、アクリルニトリルーブタンジエンゴム、ブタンジエンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム等のゴム高分子、またはこれらを複数種混合したものなどを例示することができる。また、上記樹脂には必要に応じて充填剤、発泡剤、増粘剤、分散剤を加えてもよい。
【0042】
充填剤としては、例えば、ポリアクリル酸ソーダ、カルボキシメチルセルローズ、タルク、水酸化アルミニウム、酸化アンチモンなどが例示できる。発泡剤としては、例えば脂肪酸石けん、アルキルアリルスルホン酸ナトリウム、高級アルコール硫酸エステルナトリウム、Nーオクタデシルスルホコハク酸モノアミドジナトリウムなどが挙げられる。増粘剤としては、例えばポリアクリル酸ソーダ、カルボキシメチルセルローズ、ポリビニルアルコール、カゼイン、発酵多糖類などが挙げられるが、好ましくは低分子量のポリアクリル酸ソーダである。分散剤としては、例えばトリポリリン酸ソーダ、ヘキサメタリン酸ソーダなどが例示できる。
【0043】
バッキング層17は、表裏に貫通する多数の貫通孔18を有している。これら多数の貫通孔18を通して図1中点線で示すように医療用又は介護用シート内部の基布10又は20に空気が出入りするようになっており、基布10又は20に含まれる吸排水性繊維12中の吸排水性ポリマーの一旦吸収した水分の放出を促すようになっている。
【0044】
次に、上述の基布の上面側に設けられる撥水性上側繊維層の別の態様について説明する。撥水性上側繊維層は、撥水性のパイル糸15のほかに、図7に示すように、撥水性繊維を構成繊維とする不織布、織物、或いは紙などの撥水性繊維シート23によって構成することもできる。撥水性繊維シート23を構成する撥水性繊維には、例えばポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン/ポリプロピレン複合繊維、ポリプロピレン/エチレン酢酸ビニル共重合体複合繊維等のポリオレフイン繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレンテレフタレート・イソフタレート共重合体複合繊維等のポリエステル繊維に、フッソ系撥水剤、シリコン系撥水剤或いはパラフィン系撥水剤などの撥水剤によって撥水処理を施したものを用いることができる。
【0045】
図7に示す形態において、撥水性繊維シート23と基布10又は20とは、接着剤による接着、縫合、絡合といった知られた一体化手段により積層一体化することができる。例えば撥水性繊維シート23と基布10又は20とをいずれも繊維ウェブの状態で上下に積層しておき、ニードルパンチや水流絡合などの絡合処理を行うことで一度に撥水性繊維シート23と基布10又は20とを作製すると同時に両者を一体化することができる。また、撥水性繊維シート23と基布10又は20とに熱接着性繊維を含ませておき、これらを上下に積層した状態で熱プレスすることで一体化することもできる。
【0046】
尚、本発明の医療用又は介護用シートは、上述した例に限定されるものではなく、例えば図5に示すように、吸排水性ポリマーとフタロシアニン化合物とを含む親水性吸排水消臭繊維束11Cを含む基布20の構成繊維に導電性繊維を含む糸22(炭素繊維、金属繊維、導電性セラミック繊維などの無機繊維、合成繊維を主材とし、この繊維表面に銅や銀、アルミニウムなどの金属をメッキしたメッキ繊維、繊維表面に銅や銀、アルミニウムなどの金属を練り込んだもの、あるいは繊維成分中に導電性を有する樹脂を含ませた繊維などの導電性繊維を複数本束ねて加撚することで得られる糸)を含ませて、抗菌性をさらに向上させ、かつ静電気除去機能を持たせるなど、特許請求の範囲に記載された範囲で自由に変更することができる。
【符号の説明】
【0047】
10又は20・・・基布
11A・・・親水性吸排水繊維束
11B・・・親水性消臭繊維束
11C・・・親水性吸排水消臭繊維束
12・・・吸排水性繊維
13・・・消臭繊維
14・・・親水性繊維
15・・・パイル糸
23・・・撥水性繊維シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撥水性上側繊維層と高吸水性下側繊維層とからなり、前記高吸水性下側繊維層が、吸排水性ポリマーを含む親水性吸排水繊維束とフタロシアニン化合物を含む親水性消臭繊維束とを構成繊維とする基布、または吸排水性ポリマーとフタロシアニン化合物とを含む親水性吸排水消臭繊維束を構成繊維とする基布からなることを特徴とする医療用または介護用シート。
【請求項2】
吸排水性ポリマーが感温吸排水性ポリマーであることを特徴とする請求項1に記載の医療用又は介護用シート。
【請求項3】
吸排水性ポリマーの感温点が10−45℃であることを特徴とする請求項2に記載の医療用又は介護用シート。
【請求項4】
吸排水性ポリマーを含む吸排水性繊維を芯部とし、前記芯部の周りに天然繊維 、合成繊維 、半合成繊維 または再生繊維からなる親水性繊維を鞘部とした親水性吸排水繊維束と、フタロシアニン化合物を含む消臭繊維を芯部とし、前記芯部の周りに天然繊維 、合成繊維 、半合成繊維 または再生繊維からなる親水性繊維を鞘部とした親水性消臭繊維束とを構成繊維とする基布を用いたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の医療用又は介護用シート。
【請求項5】
吸排水性ポリマーを含む吸排水性繊維とフタロシアニン化合物を含む消臭繊維とを芯部とし、前記芯部の周りに天然繊維 、合成繊維 、半合成繊維 または再生繊維からなる親水性繊維を鞘部とした親水性吸排水消臭繊維束を構成繊維とする基布を用いたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の医療用又は介護用シート。
【請求項6】
撥水性上側繊維層が、基布に所定のボリュームで打ち込まれる撥水性パイル糸からなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の医療用又は介護用シート。
【請求項7】
撥水性上側繊維層が、基布に積層一体化された撥水性繊維を構成繊維とする不織布、織物、或いは紙のいずれかからなる撥水性繊維シートであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の医療用又は介護用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−187822(P2010−187822A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−33770(P2009−33770)
【出願日】平成21年2月17日(2009.2.17)
【出願人】(000149664)株式会社大和 (35)
【出願人】(592083993)株式会社八千代 (34)
【出願人】(592084004)株式会社祥永 (34)
【Fターム(参考)】