説明

医療用栓体

【課題】本発明は、コックを回して流路が正しく繋がる直前に、円筒部と中空軸部との間に気泡の入るような隙間ができず、的確な位置決め感が得られるようにした医療用栓体を提供する。
【解決手段】本発明に係る医療用栓体は、外周に分岐管2を有する円筒部3と、該円筒部3に回動可能に嵌合し、分岐管2同士の接続路5を有し、一端側にコック6を設けた中空軸部4とからなり、前記中空軸部4の他端側端縁に、前記円筒部3の内面の対応位置に設けた突部10に係合できる割溝9を設けたことを特徴とし、コックとともに軸部を回して分岐管同士を正しく繋いだときにも、円筒部と軸部との間に気泡の入るような大きな隙間を作らせない状態にて位置決め感が伝わるように構成した。また、前記割溝9が、前記中空軸部の他端側端縁に直径方向に2個設け、中空軸部4の他端側端縁を小径側に圧縮し易くしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液や血液瓶(袋)と人体とを結ぶチューブの途中に設ける三方活栓或いは二方活栓からなる医療用栓体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
たとえば、薬液や血液を人体に注入する通路を切り換えるために三方活栓(二方活栓もある)が必要となる。三方活栓の切り換えは、多くの場合、コックを回動操作して行われるが、接続路が正しく繋がっているかはコックの向きや目印により目視で確認できる。この目視での確認は重要であるが、接続路が正しく繋がったときにコックを握る手指にカチッと位置決め感が感触として伝わるとより確認しやすくなる。
【0003】
上記の感触を受けうる手段として代表的なものに、特開2000−350787号公報がある。これは図5及び図6の如く、外周に分岐管51を有する円筒部52の内面に、環状に平部53と凹部54を多角形(8角形)状に設け、該円筒部52内に嵌合させたコック55を有する軸部56に凸子57を設け、該軸部56をコック55とともに回すと、凸子57が円筒部52に設けた平部(凹部に対して凸部となる)53を乗り越えて凹部54に係合したときに、前記分岐管51同士を流路58にて接続(OFFになる個所もある)した。しかして、前記軸部56の凸子57が平部53を乗り越えて凹部54に係合したときには、コックを握る手指にカチッと位置決め感が感触として伝わるようになっていた。
【特許文献1】特開2000−350787号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特開2000−350787号公報のものは、凹部54にあった軸部56の凸子57が平部53を乗り越えて再び凹部54に係合する直前、すなわち、凸子57が平部53に重なったときに、円筒部52と軸部56との間に大きな隙間ができて気泡が入るという問題があった。
本発明は、上記の課題を解決するためのもので、目的とするところは、コックを回して流路が正しく繋がる直前に、円筒部と中空軸部との間に大きな隙間ができず、気泡の入る余地がないばかりでなく、的確な位置決め感が得られるようにした医療用栓体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明に係る医療用栓体は、外周に分岐管を有する円筒部と、該円筒部に回動可能に嵌合し、分岐管同士の接続路を有し、一端側にコックを設けた中空軸部とからなり、前記中空軸部の他端側端縁に、前記円筒部の内面の対応位置に設けた突起に係合できる割溝を設けたことを特徴とし、コックとともに軸部を回して分岐管同士を正しく繋いだときにも、円筒部と軸部との間に気泡の入るような大きな隙間を作らせない状態にて位置決め感が的確に伝わるように構成した。
【0006】
また、請求項2に係る医療用栓体は、前記割溝が、前記中空軸部の他端側端縁に直径方向に2個設けたことを特徴とし、前記中空軸部の他端側端縁を円筒部の一端側から挿入してアンダーカット溝を、円筒部の内面に形成した環状突条を乗り越えて嵌合させるに際して小径側に圧縮でき易くなるように構成した。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、コックとともに中空軸部を回して分岐管同士を正しく繋ぐ直前に突起同士が重なるようなことがなく、中空軸部の割溝が円筒部の対応位置にある突起に係合するだけであるので、円筒部と軸部との間に大きな隙間ができて気泡が入るようなことがない。しかも、割溝と突起が係合したときは、コックを握る手指にカチッと位置決め感が感触として的確に伝わるという優れた効果を奏するものである。
【0008】
また、請求項2によれば、前記中空軸部の他端側端縁を、前記円筒部の一端側から挿入してアンダーカット溝を、円筒部の内面に形成した環状突条を乗り越えて嵌合させるに際して、前記中空軸部の他端側端縁に、直径方向の2個の割溝があると、小径方向に絞られるので、環状突条を乗り越えて嵌合し易くなる。しかも、絞り込みが解除されると円筒部内面に良く密着することとなり、コックを握る手指に位置決め感を伝え易くなるという優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に、本発明の実施の態様について図面を参照して説明する。図1は本願栓体の円筒部と中空軸部とを分解した場合の略示的斜視図、図2は本願栓体の分解した断面図で、(a)は中空軸部、(b)は円筒部、図3は本願栓体の要部断面図、図4は本願栓体の使用状態を示す略示的斜視図である。
【0010】
本願栓体1は、外周に分岐管2を3カ所設けた円筒部3と、該円筒部3の一端側(上端側)から嵌合した回動可能な中空軸部4とからなる。該中空軸部4の外周には、前記円筒部3の外周に設けた分岐管同士の接続路5がほぼT字状に設けられているとともに、該中空軸部4の一端側には手指で握るコック6が設けられている。これら円筒部3と中空軸部4は、それぞれプラスチック材料により成型されているが、人体に対して有害物が溶出する虞のある材料は避けられることとなる。
【0011】
前記円筒部3の一端側から嵌合した中空軸部4は、図2(a)の如く、その他端側(下端側)外周に設けた環状アンダーカット溝7が設けられ、また、図2(b)の如く、前記円筒部3の他端側(下端側)内周には環状突条8が設けられている。すなわち、円筒部3の一端側から中空軸部4を挿入し、その他端側外周に設けた環状アンダーカット溝7を、前記円筒部3の他端側内周に設けた環状突条8を嵌合させる。この場合、前記円筒部3の他端側内周に設けた環状突条8の上側に傾斜面8′を設けておき、前記中空軸部4を強く押し込むと、前記傾斜面8′により中空軸部4の他端側のエッジが強制的に小径方向に圧縮されて環状突条8を一気に乗り越えて嵌合する。嵌合後は、互いに抜け出さない状態で円周方向に回動可能に結合されることとなる。
【0012】
前記中空軸部4の他端側端縁には割溝9が設けられている。該割溝9は、コック6を手指で握って中空軸部4を回していくと、前記円筒部3の他端側内周に設けた突部10に、図3の如く、係合する。この係合時には、中空軸部4に設けた接続路5の作用で前記分岐管2の任意の2個が繋がるようになっている。この繋がりはコック6の上面に設けたマーク11により目視でも確認できるが、コック6を握る手指に位置決め感が的確に伝わることとなる。なお、割溝9と突部10との係合は、その係合直前に、突部同士が重なって、円筒部と軸部との間に大きな隙間ができるようなことが皆無であり、気泡の入る余地が全くないものである。
【0013】
前記割溝9は、前記中空軸部4の他端側端縁に直径方向に2個設けてもよい。かかる場合には、割溝9が1個の場合に比し、溝幅が倍になり、バネ性が高まるため、中空軸部4を円筒部3内に強く押し込んだときに、小径方向への絞り込みが大きくなり、前記環状突部8の乗り越えがよりし易くなる。一方、乗り越えた後には、中空軸部4の他端側が、拡大するため前記円筒部3の他端側内周に良く密着し、突部10との係合時に、手指に伝えられる位置決め感がより的確になる。
【0014】
次に、本願栓体1の作用を、三方活栓を例にして説明する。まず、本願栓体1は、図4の如く、円筒部3のそれぞれの分岐管2に、チューブ12a、12b、12cを接続し、このうち、前記チューブ12aを人体側(図示せず)に接続するとともに、他のチューブ12b、12cを図示していない第1及び第2薬液源(瓶又は袋)に接続する。
【0015】
次いで、チューブ12bからチューブ12aへ接続するために、コック5を手指で握って、実線矢印の如く、右方向に回動させ、該コック5を一点鎖線の如く、チューブ12bと平行になる位置にすると、中空軸部4の他端側の割溝9が円筒部3の他端側内周の対応位置に設けた突部10に係合し、該係合時の位置決め感が手指に的確に伝えられる。しかして、前記チューブ12bとチューブ12aとが導通するに至り、第1の薬液源から所望の薬液が人体に注入されることとなる。
【0016】
さらに、チューブ12cからチューブ12aへ接続させるには、コック6を手指で握り、該コック5がチューブ12cと平行になる位置(実線の位置)にする。この位置において、中空軸部4の他端側の割溝9が円筒部3の他端側内周に設けた突部10に係合し、該係合時に位置決め感が手指に的確に伝えられる。この場合において、前記チューブ12cとチューブ12aとが導通するに至り、第1の薬液源から切り替わって、第2の薬液源から所望の薬液が人体に注入されることとなる。
【0017】
このように、薬液や血液を人体に注入する通路を、コックを回動操作して正しく繋げたことを コックの向きや目印により目視で確認するほか、所望する接続路が正しく繋がったときにコックを握る手指にカチッと位置決め感が感触として的確に伝わるようにすると、より確認しやすくなるし、割溝9と突部10との係合直前には、突部同士が重なることがないので、円筒部と軸部との間に大きな隙間ができるようなことが皆無であって、気泡の入る余地が全くないものである。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本願栓体は、薬液や血液を人体に注入する通路を切り換えるための三方活栓或いは二方活栓であり、この切り換えはコックを回動操作して行い、通路が正しく繋がったときにはコックを握る手指にカチッと位置決め感が感触として的確に伝わるようにしたものであって、医療業界において広く使われるから、産業上の利用可能性は高いものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本願栓体の円筒部と軸部とを分解した場合の略示的斜視図である。
【図2】本願栓体の本願栓体の分解した断面図で、(a)は中空軸部、(b)は円筒部である。
【図3】本願栓体の要部断面図である。
【図4】本願栓体の使用状態を示す略示的斜視図である。
【図5】従来栓体の円筒部と軸部とを分解した場合の略示的斜視図である。
【図6】従来栓体の要部の断面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 本願栓体
2 分岐管
3 円筒部
4 中空軸部
5 接続路
6 コック
7 環状のアンダーカット溝
8 環状突部
8′ 傾斜面
9 割溝
10 突部
11 マーク
12a、12b、12c 管路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周に分岐管を有する円筒部と、該円筒部に回動可能に嵌合し、分岐管同士の接続路を有し、一端側にコックを設けた中空軸部とからなり、前記中空軸部の他端側端縁に、前記円筒部の内面の対応位置に設けた突起に係合できる割溝を設けたことを特徴とする医療用栓体。
【請求項2】
前記割溝が、前記中空軸部の他端側端縁に直径方向に2個設けたことを特徴とする請求項1に記載の医療用栓体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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