説明

医療用活栓

【課題】 複数の分岐管の流路の切り替え操作が容易になる医療用活栓を提供すること。
【解決手段】 医療用活栓本体10を、内面が略球面状に形成されたチャンバー部11と、チャンバー部11からそれぞれ外側に延びる上流分岐管12、下流分岐管13および合流分岐管14で構成した。また、弁体20を略球形の弁本体21と棒状操作部22とで構成した。そして、チャンバー部11に内面から外部に貫通するガイド孔15を設けて、弁本体21を、チャンバー部11内に入れ、棒状操作部22をガイド孔15から外部に突出させた。また、弁本体21に、水平流路23と垂直流路24を形成して、棒状操作部22をガイド孔15に沿って移動させることにより、水平流路23と垂直流路24を介して、上流分岐管12、下流分岐管13および合流分岐管14のうちの所定の分岐管どうしを連通させたり遮断させたりできるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療に用いられる複数の輸液チューブ等に連結される複数の分岐管を備え、各分岐管の連通、遮断の状態を切り替えることのできる医療用活栓に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数の輸液チューブを用いて患者の体内に薬液等の液体を供給することが行われており、このような場合に、医療用活栓を用いて、各輸液チューブ間を連通させたり遮断させたりする操作が行われている。このような医療用活栓の中に、チャンバー部を円筒状に形成して、操作部をチャンバー部の軸周り方向に移動させることにより各分岐管とチャンバー部との間を連通させたり遮断させたりすることのできる医療用活栓がある(例えば、特許文献1参照)。この医療用活栓は、略円筒状のチャンバー部の周面を挟んで二つの分岐管が設けられ、チャンバー部内で弁体を軸周り方向に回転させることにより二つの分岐管の間を開閉できるように構成されている。
【特許文献1】特開昭62―172962号公報
【発明の開示】
【0003】
しかしながら、この医療用活栓は、二つの分岐管しか備えてなく、単に、二つの分岐管の間を連通させたり遮断させたりできるだけのものである。したがって、この医療用活栓では、医療に用いられる複数ラインの輸液チューブ等を連結して、各輸液チューブの連通、遮断を切り替えることはできない。また、二つの分岐管の間を連通させたり遮断させたりするためには、弁体を回転操作しなければならず、操作がし難いという問題もある。このため、3個の分岐管を備えコックを弁体の軸周り方向に回転操作することにより流路を切り換えることのできる医療用活栓も開発されているが、このような医療用活栓においても、操作の際に、一方の手で医療用活栓の本体を持ち、他の手でコックの操作を行う必要があるため操作が面倒になるという問題がある。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、その目的は、複数の分岐管の流路の切り替え操作が容易になる医療用活栓を提供することにある。
【0005】
前述した目的を達成するため、本発明に係る医療用活栓の構成上の特徴は、内面が略球面状に形成された空間部と内面の所定部分から外部に貫通するガイド孔とを備えたチャンバー部と、チャンバー部の外周面から互いの間隔を保ってそれぞれ外側に向って延びチャンバー部の内部と連通する流路をそれぞれ備えた複数の分岐管とからなる医療用活栓本体と、チャンバー部内に設置され所定部分に流路が形成された略球体からなりチャンバー部の内面に沿って回転移動することにより、流路を介して複数の分岐管のうちの所定の分岐管どうしを連通させたり遮断させたりできる弁本体と、弁本体の外周面からガイド孔を貫通して外部に延びガイド孔に沿って移動することにより、弁本体の流路を複数の分岐管のうちの所定の分岐管に連通させたり遮断させたりする棒状操作部とからなる弁体とを備えたことにある。
【0006】
前述したように構成した本発明の医療用活栓では、複数の分岐管が設けられた医療用活栓本体の内部に内面が略球面状に形成された空間部を設け、この空間部内に、複数の分岐管のうちの所定の分岐管どうしを連通させたり遮断させたりできる流路を備えた略球形の弁本体を設置している。そして、弁本体からチャンバー部に形成されたガイド孔を貫通して外部に延びる棒状操作部をガイド孔に沿って移動させることにより弁本体をチャンバー部内で回転させて、弁本体の流路を介して複数の分岐管のうちの所定の分岐管を連通させたり遮断させたりするように構成されている。
【0007】
このため、各分岐管間の切り替え操作が棒状操作部をガイド孔に沿って移動させるだけで済み、その際の棒状操作部の移動は弁本体を支点とした回転であるため片手での操作が可能になる。すなわち、チャンバー部を持った手の親指で棒状操作部を操作することができる。また、流路が形成される弁本体の所定部分としては、弁本体の内部と表面とのどちらでもよく、流路は弁本体を貫通する孔や弁本体の表面に沿って形成された溝部で構成することができる。さらに、チャンバー部の内面の略球面状や弁本体の略球体とは、全体としては球面や球体であるが、孔が設けられたり流路が設けられたりして完全な球面や球体になってないことを意味しており、弁本体はチャンバー部の内面に摺接した状態で回転可能になっている。
【0008】
また、本発明に係る医療用活栓の他の構成上の特徴は、複数の分岐管を、チャンバー部の外周面の両側から外側に向って延びる一対の水平分岐管と、チャンバー部の外周面の上側から上方に延びる垂直分岐管とで構成し、弁本体の流路を、一対の水平分岐管を連通させたり遮断させたりできる水平流路と、水平流路と垂直分岐管とを連通させたり遮断させたりできる垂直流路とで構成したことにある。
【0009】
これによると、弁本体をチャンバー部内で水平方向の所定位置に合わせることにより水平流路を一対の水平分岐管に連通させ、その状態で、弁本体を垂直方向の所定位置に合わせて垂直流路を垂直分岐管に連通させることにより、一対の水平分岐管と垂直分岐管とのすべてを弁本体の流路を介して連通させることができる。これによって、患者の体に水平分岐管と垂直分岐管から二種類の薬液等を供給することができる。また、その状態で弁本体を水平方向の一方に回転移動させることにより一対の水平分岐管の一方を遮断することができ、弁本体を水平方向の他方に回転移動させることにより一対の水平分岐管の他方を遮断することができる。さらに、一対の水平分岐管と垂直分岐管とのすべてを連通させた状態で、弁本体を垂直方向に回転移動させることにより垂直分岐管を遮断することができる。
【0010】
また、本発明に係る医療用活栓のさらに他の構成上の特徴は、ガイド孔を、水平方向に延びる水平ガイド孔と、水平ガイド孔の略中央から上方または下方に延びる垂直ガイド孔とで構成し、棒状操作部を水平ガイド孔に沿って移動させることにより一対の水平分岐管を連通させたり遮断させたりすることができ、棒状操作部を垂直ガイド孔に沿って移動させることにより水平流路と垂直分岐管とを連通させたり遮断させたりできるようにしたことにある。
【0011】
この場合、棒状操作部が、水平ガイド孔と垂直ガイド孔とが交差した部分に位置したときに、一対の水平分岐管と垂直分岐管とのすべてが連通し、その位置から棒状操作部が移動したときに、その移動方向に位置する分岐管が遮断されたり連通されたりするようにすることができる。これによると、棒状操作部の位置で各分岐管どうしの連通と遮断との関係がわかるため、誤操作を防止できる。
【0012】
また、本発明に係る医療用活栓のさらに他の構成上の特徴は、複数の分岐管を、チャンバー部の外周面の両側から外側に向って延びる一対の水平分岐管と、チャンバー部の外周面の上側から上方に延びる垂直分岐管とで構成し、弁本体の流路を、一対の水平分岐管を連通させたり遮断させたりできる水平流路と、水平流路と垂直分岐管とを常時連通させる垂直流路とで構成したことにある。この場合、ガイド孔を、水平方向に延びる水平ガイド孔で構成し、棒状操作部を水平ガイド孔に沿って移動させることにより一対の水平分岐管を連通させたり遮断させたりできるようにする。
【0013】
この場合、垂直分岐管には、シリンジの雄ルアー部や穿刺針等を挿し込むことのできるゴム栓を取り付けることができる。これによると、弁本体をチャンバー部内で水平方向の所定位置に合わせることにより一対の水平分岐管間を連通させたり遮断させたりすることができ、必要に応じて、垂直分岐管から他の薬液等をチャンバー部内に供給することができる。
【0014】
また、本発明に係る医療用活栓のさらに他の構成上の特徴は、弁本体の水平流路における一対の水平分岐管の流路とそれぞれ対向する両側部分を、弁本体の水平流路を一対の水平分岐管の流路とそれぞれ連通させた状態から、弁本体を水平方向の一方に所定角度回転したときに、水平流路と一対の分岐管の一方分岐管の流路とが連通状態を維持して、水平流路と一対の分岐管の他方の分岐管の流路とが遮断され、弁本体を水平方向の他方に所定角度回転したときに、水平流路と他方の分岐管の流路とが連通状態を維持して、水平流路と一方の分岐管の流路とが遮断されるように構成したことにある。
【0015】
この場合の所定角度とは、例えば、水平流路と一対の水平分岐管とがそれぞれ連通したときに、一対の水平分岐管の流路の開口全体が水平流路に対向しているとして、一方の分岐管の流路を遮断する場合には、弁本体の外周面における移動長さが一方の分岐管の流路の幅以上になるようにし、他方の分岐管の流路を遮断する場合には、弁本体の外周面における移動長さが他方の分岐管の流路の幅以上になるようにする。したがって、一方の分岐管の流路の幅と他方の分岐管の流路の幅とが異なっていれば、それぞれの所定角度は異なっていてもよい。
【0016】
また、水平流路を弁本体を貫通する孔で構成する場合には、水平流路の両端開口側部分を中央側部分よりも水平方向に長い孔に形成することで水平流路と一対の水平分岐管との間をそれぞれ連通させたり遮断させたりすることができる。さらに、水平流路を弁本体弁本体の表面に沿って形成された溝部で構成する場合には、水平流路と一対の水平分岐管とがそれぞれ連通したときに、水平流路の両端部がそれぞれ一対の分岐管の流路の開口に位置するようにすることで水平流路と一対の水平分岐管との間をそれぞれ連通させたり遮断させたりすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態に係る医療用活栓を図面を用いて詳しく説明する。図1ないし図3は、同実施形態に係る医療用活栓Aを示しており、この医療用活栓Aは、医療用活栓本体10と、医療用活栓本体10の内部に設置された弁体20とで構成されている。医療用活栓本体10は、略球状のチャンバー部11と、チャンバー部11の外周面における前後両側(図1および図2では左右両側で、以下、薬液等の流れの上流側に位置する方向を後方とし、下流側に位置する方向を前方として説明する。)に同軸に沿って水平方向に延びるように連結された本発明の一対の水平分岐管としての上流分岐管12および下流分岐管13と、チャンバー部11の外周面における上部に形成された本発明の垂直分岐管としての合流分岐管14とで構成されている。
【0018】
すなわち、上流分岐管12、下流分岐管13および合流分岐管14はチャンバー部11の外周面に円周方向に90度の間隔を保って設けられており、合流分岐管14は、水平方向に延びる上流分岐管12と下流分岐管13とに対して直交するように上方に向って延びている。チャンバー部11は略球形に形成されており、内部に、図4ないし図6に示したように、内周面が略球面状に形成された空間部11aが形成されている。また、チャンバー部11の側面(図2に示した面)における上下方向の中央には、前後方向に延びる水平ガイド孔15aがチャンバー部11の内部から外部に貫通して形成されており、その水平ガイド孔15aの前後方向の中央から上方に向ってチャンバー部11の内部から外部に貫通する垂直ガイド孔15bが延びている。
【0019】
さらに、チャンバー部11におけるそれぞれ上流分岐管12、下流分岐管13および合流分岐管14に対向する部分に、連通穴16a,16b,16cが形成されている。そして、チャンバー部11の外周面における連通穴16aに対応する部分には、上流分岐管12が設けられており、連通穴16aを介してチャンバー部11内の空間部11aと上流分岐管12の内部に形成された流路12aとが連通している。また、チャンバー部11の外周面における連通穴16bに対応する部分には、下流分岐管13が設けられており、連通穴16bを介してチャンバー部11内の空間部11aと下流分岐管13の内部に形成された流路13aとが連通している。
【0020】
さらに、チャンバー部11の外周面における連通穴16cに対応する部分には、合流分岐管14が設けられており、連通穴16cを介してチャンバー部11内の空間部11aと合流分岐管14の内部に形成された流路14aとが連通している。また、上流分岐管12は、チャンバー部11と一体的に形成されており、内部に形成された流路12aは、後端開口側の直径が大きくチャンバー部11側の直径が小さくなったテーパ状に形成されている。
【0021】
これをより詳しく説明すると、この流路12aは、連通穴16a側部分が、連通穴16aに近いほど直径が小さく、連通穴16aから離れるにしたがって直径が大きくなったやや急なテーパ状に形成されている。また、流路12aの上流側部分(図4および図5の右側部分)は、上流分岐管12の開口部に近づくほど徐々に直径が大きくなった緩やかなテーパ状に形成されている。そして、上流分岐管12の開口部の外周面には、連結用のねじ部12bが形成されている。
【0022】
下流分岐管13は、チャンバー部11と一体的に形成されており、チャンバー部11側に位置する基端部13bと、先端側に位置し基端部13bよりも細く形成された雄ルアー部13cとで構成されている。また、雄ルアー部13cは基端部13b側よりも先端側の方が徐々に細くなった先細りのテーパ状に形成されている。そして、下流分岐管13の外周面における基端部13bと雄ルアー部13cとの境界部には、突部13dが円周に沿って形成されている。
【0023】
チャンバー部11の上方に形成された合流分岐管14は、太さや軸方向の長さが上流分岐管12と略同じ程度の円筒形に形成されている。この合流分岐管14の内部に形成された流路14aは、連通穴16c側部分が、連通穴16cに近いほど直径が小さく、連通穴16cから離れるにしたがって直径が大きくなったやや急なテーパ状に形成されている。そして、流路14aの上流側部分(図5の上側部分)は、合流分岐管14の開口部に近づくほど徐々に直径が大きくなった緩やかなテーパ状に形成されている。そして、合流分岐管14の開口部の外周面には、連結用のねじ部14bが形成されている。
【0024】
弁体20は、チャンバー部11の空間部11aに設置された略球形の弁本体21と、弁本体21から水平ガイド孔15aと垂直ガイド孔15bとで構成されるガイド孔15を貫通して外部に延びる棒状操作部22とで構成されている。弁本体21は、外面をチャンバー部11の内面に摺接させた状態でチャンバー部11内に設置されており、球状の中心を中心としてチャンバー部11に対してすべての方向に回転可能になっているが、その回転範囲は、棒状操作部22とガイド孔15との係合によって規制される。
【0025】
そして、弁本体21の内部には、図4ないし図6に示したように、弁本体21を貫通して前後方向に延びる水平流路23と、水平流路23の前後方向の中央から弁本体21の上部に貫通する垂直流路24とが形成されている。水平流路23は、前後方向に延びる細い円柱状の空間部23aの前後両端にそれぞれ一方の側部側(図4における上部側)に延びる円弧状の広角空間部23b,23cを形成して構成されている。広角空間部23b,23cは、それぞれ高さ方向の幅を空間部23aの幅と同じにした状態でチャンバー部11の内面に沿うようにして互いに対向して延びている。
【0026】
そして、広角空間部23bの水平方向の幅は、連通穴16aの直径の略2倍に設定され、広角空間部23cの水平方向の幅は、連通穴16bの直径の略2倍に設定されている。このため、図4に示したように、棒状操作部22を、水平ガイド孔15aの中央に位置させたときには、広角空間部23bの空間部23a側部分と連通穴16aとが対向し、広角空間部23cと連通穴16bとが連通する。これによって、上流分岐管12の流路12aと下流分岐管13の流路13aとは、弁本体21の水平流路23を介して連通する。
【0027】
また、図7に示したように、棒状操作部22を、水平ガイド孔15aの前端側に位置させたときには、広角空間部23bの先端側部分と連通穴16aとが対向し、広角空間部23cはチャンバー部11の内面に閉塞され、連通穴16bは弁本体21の外面に閉塞される。このため、上流分岐管12の流路12aと弁本体21の水平流路23とは連通するが、弁本体21の水平流路23と下流分岐管13の流路13aとは遮断された状態になる。さらに、図8に示したように、棒状操作部22を、水平ガイド孔15aの後端側に位置させたときには、広角空間部23bはチャンバー部11の内面に閉塞され、連通穴16aは弁本体21の外面に閉塞される。
【0028】
また、広角空間部23cの先端側部分は連通穴16bと対向して連通する。このため、上流分岐管12の流路12aと弁本体21の水平流路23とは遮断された状態になり、弁本体21の水平流路23と下流分岐管13の流路13aとは連通する。垂直流路24は、上下方向に延びる細い円柱状の空間部で構成されており、直径が空間部23aの直径および連通穴16cの直径と同じに設定されている。また、垂直流路24の上端開口は、棒状操作部22が水平ガイド孔15aの中央に位置したときに、連通穴16cと連通する位置に形成されている。
【0029】
したがって、図4および図9に示した状態のときには、水平流路23を介して上流分岐管12と下流分岐管13とが連通し、垂直流路24を介して合流分岐管14の流路14aと水平流路23とが連通する。このため、上流分岐管12、下流分岐管13および合流分岐管14のすべてが弁本体21の水平流路23および垂直流路24を介して連通する。そして、図10に示したように、棒状操作部22を垂直ガイド孔15bの上端側に移動させると、垂直流路24の上端開口はチャンバー部11の内面に閉塞され、連通穴16cは弁本体21の外面に閉塞される。このため、合流分岐管14の流路14aと弁本体21の垂直流路24とは遮断された状態になる。
【0030】
この場合、弁本体21は、空間部23aの中心軸を中心として軸周り方向に回転するだけであるため、水平流路23を介して上流分岐管12と下流分岐管13とが連通した状態に変化は生じない。なお、図4、図7および図8においては、垂直流路24は、図に示した部分の上方に位置している。また、棒状操作部22は、弁本体21の外面から外部に向って延びる円柱状の連結部22aと、連結部22aの先端部に形成された略円板状のグリップ部22bとで構成されている。そして、グリップ部22bを指で操作して棒状操作部22をガイド孔15に沿って移動させることにより、前述したように、上流分岐管12、下流分岐管13および合流分岐管14間の連通、遮断の切り替えが行える。
【0031】
この構成において、所定の薬液を患者(図示せず)の体内に供給する場合には、上流分岐管12と合流分岐管14とに、それぞれ患者に供給する薬液を収容する容器等から延びる輸液チューブの先端部に設けられた雄ルアー部(図示せず)を接続する。また、下流分岐管13には、患者に穿刺して留置するための留置針が接続された輸液チューブ(図示せず)の後端部を接続する。そして、留置針を患者の体に穿刺して留置した状態で、棒状操作部22を操作して、例えば、垂直ガイド孔15bの上端側に移動させて上流分岐管12側に接続された容器等の薬液を患者に向けて送り出すことにより患者への薬液の供給が上流分岐管12から下流分岐管13を介して行われる。
【0032】
また、上流分岐管12側から供給される薬液に加えて、他の薬液等を患者に供給する場合には、合流分岐管14を介して、他の薬液等を垂直流路24内に供給する。この場合、棒状操作部22を垂直ガイド孔15bの下端部(水平ガイド孔15aの中央)に移動させた状態で合流分岐管14に接続された容器等の薬液を合流分岐管14側に送り出す。これによって、上流分岐管12側から供給される薬液と合流分岐管14側から供給される薬液とは、水平流路23で混合されて患者の体内に供給される。
【0033】
また、その状態から、棒状操作部22を水平ガイド孔15aの後端側に移動させて、図8の状態にすることにより、上流分岐管12側からの薬液の供給を止めて、合流分岐管14側からの薬液だけを患者の体内に供給することができる。さらに、棒状操作部22を水平ガイド孔15aの前端側に移動させて、図7の状態にすることにより、下流分岐管13側への薬液の供給を止めるとともに、合流分岐管14側からの薬液を上流分岐管12側に流して、上流分岐管12側で、上流分岐管12側の薬液と合流分岐管14からの薬液とを混合することができる。そして、混合された薬液は、再度、下流分岐管13を水平流路23に連通させることにより患者の体内に供給することができる。
【0034】
このように、本実施形態に係る医療用活栓Aでは、チャンバー部11の内部に内面が略球面状に形成された空間部11aを設け、この空間部11a内に、略球形の弁本体21を設置している。また、弁本体21は、外面をチャンバー部11の内面に対して摺接させた状態で回転可能な状態で設置されており、その内部には、上流分岐管12と下流分岐管13とを連通させたり遮断させたりすることのできる水平流路23と、合流分岐管14と水平流路23との間を連通させたり、遮断させたりすることのできる垂直流路24とが形成されている。
【0035】
また、チャンバー部11には、水平ガイド孔15aと垂直ガイド孔15bとからなるガイド孔15が形成されており、弁本体21からガイド孔15を貫通して外部に延びる棒状操作部22をガイド孔15に沿って移動させることにより、上流分岐管12と下流分岐管13との連通、遮断や、合流分岐管14と水平流路23との間の連通、遮断の操作が行える。このため、上流分岐管12、下流分岐管13および合流分岐管14の各間の切り替え操作が棒状操作部22をガイド孔15に沿って移動させるだけで済むようになり、片手での操作が可能になる。
【0036】
また、棒状操作部22が、水平ガイド孔15aと垂直ガイド孔15bとが交差した部分に位置したときに、上流分岐管12、下流分岐管13および合流分岐管14のすべてが連通し、その位置から棒状操作部22が前後または上方に移動したときに、いずれかの分岐管が遮断される。この場合、その遮断される分岐管のほうに棒状操作部22が向くように構成されているため、棒状操作部22の向きによって、上流分岐管12、下流分岐管13および合流分岐管14のそれぞれの連通と遮断との状態がわかる。このため、誤操作を防止できるようになる。
【0037】
(第2実施形態)
また、図11は、本発明の第2実施形態に係る医療用活栓Bを示している。この医療用活栓Bでは、チャンバー部31の上部に形成された連通穴36cの直径が大きくなり、かつその周面はチャンバー部31側が大きく上部側に行くほど小さくなったテーパ状に形成されている。そして、チャンバー部31の上方に形成された合流分岐管34は、前述した合流分岐管14よりも直径が大きく軸方向の長さが短い円筒形に形成されている。また、この合流分岐管34の内部に形成された流路34aの周面は、連通穴36cのテーパ面と連続したテーパ面に形成されており連通穴36cに近いほど直径が大きく、連通穴36cから離れるにしたがって直径が小さくなっている。
【0038】
そして、流路34aの上方側部分は、流路34aの上端から外部にかけて直径が同じになった開口で構成されている。また、合流分岐管34の上端開口部の外周面には、連結用のねじ部34bが形成されている。そして、合流分岐管34の内部の上端には、天然ゴムまたは合成ゴムからなるゴム栓37が取り付けられている。このゴム栓37には、チャンバー部31の内部側と合流分岐管34の外部側との間を上下に貫通するスリット37aが設けられており、このスリット37aは、合流分岐管34を使用しない時には、ゴム栓37の弾性によって閉塞された状態になる。
【0039】
そして、合流分岐管34を使用する際には、ゴム栓37のスリット37aに、例えば、シリンジの雄ルアー部等(図示せず)を差し込むことによりシリンジと流路34aとを連通することができる。また、図示していないが、チャンバー部31に形成されたガイド孔は、垂直ガイド孔がなく水平ガイド孔だけで構成されている。このため、弁本体35が回転することによって、上流分岐管32と下流分岐管33との間の連通、遮断の操作が行われ、弁本体35に形成された垂直流路38は常時流路34aと連通している。この医療用活栓Bのそれ以外の部分の構成は、前述した医療用活栓Aと同一である。したがって、同一部分に同一符号を記して説明は省略する。
【0040】
このように構成したため、ゴム栓37のスリット37aにシリンジの雄ルアー部を差し込んだ状態で、棒状操作部22を水平ガイド孔の中央に移動させることにより、シリンジを、上流分岐管32および下流分岐管33に連通させることができる。これによって、患者の体に2種類の薬液等を供給することができる。また、その状態でシリンジを取り外してゴム栓37を閉塞することにより、上流分岐管32と下流分岐管33だけを連通させることができる。さらに、ゴム栓37のスリット37aにシリンジの雄ルアー部を差し込んだ状態で、上流分岐管32と水平流路23との間を遮断することにより、シリンジと下流分岐管33だけを連通させることができる。
【0041】
これらにより、患者の体に1種類の薬液等を供給することができる。また、ゴム栓37のスリット37aにシリンジの雄ルアー部を差し込んだ状態で、水平流路23と下流分岐管33との間を遮断することにより、シリンジと上流分岐管32だけを連通させることができる。さらに、その状態で、シリンジを取り外すことにより、上流分岐管32、下流分岐管33および合流分岐管34のすべての流路を閉塞することができる。この医療用活栓Bのそれ以外の作用効果は、前述した医療用活栓Aと同様である。
【0042】
また、本発明に係る医療用活栓は、前述した実施形態に限定するものでなく、適宜変更実施が可能である。例えば、前述した各実施形態では、水平流路23および垂直流路24を弁本体21,35の内部に設けているが、この水平流路と垂直流路は、弁本体の表面に沿って形成することもできる。また、前述した各実施形態では、複数の分岐管を上流分岐管12(32)、下流分岐管13(33)および合流分岐管14(34)の3個の分岐管で構成しているが、これを2個の分岐管で構成することもできる。
【0043】
さらに、前述した第2実施形態では、ゴム栓37にスリット37aを設けて、スリット37aに雄ルアー部を差し込むことにより、シリンジを合流分岐管34に連通させるようにしているが、シリンジに代えて、コネクターの差込部、注射針や鈍針等の針等をゴム栓37に差し込むこともできる。なお、注射針を差し込む場合、ゴム栓37に、スリット37aを設ける必要はなくなる。さらに、医療用活栓を構成するそれ以外の部分の構成についても適宜変更して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1実施形態に係る医療用活栓を示した平面図である。
【図2】医療用活栓を示した側面図である。
【図3】医療用活栓を示した背面図である。
【図4】図1の横断面図である。
【図5】図2の縦断面図である。
【図6】図3の縦断面図である。
【図7】上流分岐管と合流分岐管とを連通させた状態を示した横断面図である。
【図8】下流分岐管と合流分岐管とを連通させた状態を示した横断面図である。
【図9】水平流路と合流分岐管とを連通させた状態を示した縦断面図である。
【図10】水平流路と合流分岐管とを遮断させた状態を示した縦断面図である。
【図11】本発明の第2実施形態に係る医療用活栓の上流分岐管と下流分岐管とを連通させた状態を示した縦断面図である。
【符号の説明】
【0045】
10…医療用活栓本体、11,31…チャンバー部、11a…空間部、12,32…上流分岐管、12a,13a,14a,34a…流路、13,33…下流分岐管、14,34…合流分岐管、15…ガイド孔、15a…水平ガイド孔、15b…垂直ガイド孔、20…弁体、21,35…弁本体、22…棒状操作部、23…水平流路、24,38…垂直流路、A,B…医療用活栓。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内面が略球面状に形成された空間部と前記内面の所定部分から外部に貫通するガイド孔とを備えたチャンバー部と、前記チャンバー部の外周面から互いの間隔を保ってそれぞれ外側に向って延び前記チャンバー部の内部と連通する流路をそれぞれ備えた複数の分岐管とからなる医療用活栓本体と、
前記チャンバー部内に設置され所定部分に流路が形成された略球体からなり前記チャンバー部の内面に沿って回転移動することにより、前記流路を介して前記複数の分岐管のうちの所定の分岐管どうしを連通させたり遮断させたりできる弁本体と、前記弁本体の外周面から前記ガイド孔を貫通して外部に延び前記ガイド孔に沿って移動することにより、前記弁本体の流路を前記複数の分岐管のうちの所定の分岐管に連通させたり遮断させたりする棒状操作部とからなる弁体と
を備えたことを特徴とする医療用活栓。
【請求項2】
前記複数の分岐管を、前記チャンバー部の外周面の両側から外側に向って延びる一対の水平分岐管と、前記チャンバー部の外周面の上側から上方に延びる垂直分岐管とで構成し、前記弁本体の流路を、前記一対の水平分岐管を連通させたり遮断させたりできる水平流路と、前記水平流路と前記垂直分岐管とを連通させたり遮断させたりできる垂直流路とで構成した請求項1に記載の医療用活栓。
【請求項3】
前記ガイド孔を、水平方向に延びる水平ガイド孔と、前記水平ガイド孔の略中央から上方または下方に延びる垂直ガイド孔とで構成し、前記棒状操作部を前記水平ガイド孔に沿って移動させることにより前記一対の水平分岐管を連通させたり遮断させたりすることができ、前記棒状操作部を前記垂直ガイド孔に沿って移動させることにより前記水平流路と前記垂直分岐管とを連通させたり遮断させたりできるようにした請求項2に記載の医療用活栓。
【請求項4】
前記複数の分岐管を、前記チャンバー部の外周面の両側から外側に向って延びる一対の水平分岐管と、前記チャンバー部の外周面の上側から上方に延びる垂直分岐管とで構成し、前記弁本体の流路を、前記一対の水平分岐管を連通させたり遮断させたりできる水平流路と、前記水平流路と前記垂直分岐管とを常時連通させる垂直流路とで構成した請求項1に記載の医療用活栓。
【請求項5】
前記ガイド孔を、水平方向に延びる水平ガイド孔で構成し、前記棒状操作部を前記水平ガイド孔に沿って移動させることにより前記一対の水平分岐管を連通させたり遮断させたりできるようにした請求項4に記載の医療用活栓。
【請求項6】
前記弁本体の水平流路における前記一対の水平分岐管の流路とそれぞれ対向する両側部分を、前記弁本体の水平流路を前記一対の水平分岐管の流路とそれぞれ連通させた状態から、前記弁本体を水平方向の一方に所定角度回転したときに、前記水平流路と前記一対の分岐管の一方分岐管の流路とが連通状態を維持して、前記水平流路と前記一対の分岐管の他方の分岐管の流路とが遮断され、前記弁本体を水平方向の他方に所定角度回転したときに、前記水平流路と前記他方の分岐管の流路とが連通状態を維持して、前記水平流路と前記一方の分岐管の流路とが遮断されるように構成した請求項2ないし5のうちのいずれか一つに記載の医療用活栓。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate