説明

医療用流体カセットおよびその関連システムおよび方法

医療用流体ポンプシステムと共に使用するように構成される医療用流体送達カセットおよびその関連システムならびに方法。医療用流体送達カセットは、ベースと膜とを備え、それらは共に流体ポンプ室を画定する。医療用流体送達カセットは、膜の内面に外向き力を印加するように構成される部材をさらに備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医療用流体カセットおよびその関連システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
透析は、不十分な腎臓機能を有する患者をサポートするために行われる治療である。2つの主要な透析方法は血液透析と腹膜透析である。
血液透析(「HD」)中、透析器のダイアライザに透析溶液または透析液を流しつつ、患者の血液がダイアライザを通過する。ダイアライザの半透膜が血液とダイアライザ中の透析液とを分離させ、透析液と血流間の拡散および浸透交換とを発生させる。こうした膜を挟んだ交換の結果、尿やクレアチニンのような溶質を含む老廃物が血液から除去される。さらにこうした交換は、血液中のナトリウムや水などのその他の物質のレベルを調節する。このようにして、透析器は血液を浄化する人工腎臓の役割を果たす。
【0003】
腹膜透析(「PD」)中、患者の腹膜腔には透析溶液または透析液が定期的に注入される。患者の腹膜の膜状内層は、溶液と血流間の拡散および浸透交換を発生させる天然の半透膜としての役割を果たす。HDにおいてダイアライザを介した連続的交換と同様、患者の腹膜を介した交換も、尿やクレアチニンのような溶質を含む老廃物を血液から除去し、血液中のナトリウムや水などのその他の物質のレベルを調節する。
【0004】
多くのPD器は、患者の腹膜腔との間で、自動的に透析液を注入、滞留、および排出するように設計される。治療は通常数時間続き、腹膜腔から使用済み透析液を空にする最初の排出サイクルから開始されることが多い。その後、シーケンスは、連続的に行われる充填、滞留、および排出段階へと進む。各段階はサイクルと呼ばれる。
【発明の概要】
【0005】
本発明の一態様では、医療用流体ポンプシステムは、カセット筐体と医療用流体ポンプ機のカセット筐体内に配置されるように構成される医療用流体カセットとを画定する医療用流体ポンプ機を備える。医療用流体ポンプ機は可動ピストンを備える。医療用流体カセットは、ベースとベースに装着される膜とを備える。膜とベースの領域とは共に流体ポンプ室を画定する。カセットは、膜がピストンに対面するように医療用流体ポンプ機のカセット筐体内に位置可能であり、膜は流体ポンプ室の容積を減少させるようにピストンによって移動させることができる。医療用流体カセットは、流体ポンプ室内に配置され、膜の内面に外向き力を印加して流体ポンプ室の容積を増大させるよう構成される部材をさらに備える。
【0006】
本発明の別の態様によると、医療用流体カセットは、ベースとベースに装着される膜とを備える。膜とベースの一部は共に流体ポンプ室を画定する。部材は流体ポンプ室内に配置されて、膜の内面に外向き力を印加して流体ポンプ室の容積を増大させるように構成される。
【0007】
本発明の別の態様によると、医療用流体送達方法は、流体ポンプ室を覆う膜の部分の内面に外向き力を印加することによって、膜と医療用流体カセットの剛体ベースとの間に画定される流体ポンプ室に医療用流体を引き込むことを備える。
【0008】
本発明の別の態様によると、医療用流体ポンプシステムは、カセット筐体と、医療用流体ポンプ機のカセット筐体内に配置されるように構成される医療用流体カセットとを画定する医療用流体ポンプ機を備える。医療用流体ポンプ機は可動ピストンを含む。医療用流体カセットは、凹部を画定するベースと、ベースの凹部内に配置される部材とを備える。部材とベースは両者の間に流体ポンプ室を画定する。ピストンを前進させて流体を流体ポンプ室から排出させることによって部材を圧縮することができるように、カセットは医療用流体ポンプ機のカセット筐体内に位置可能であり、部材は、ピストンが部材から後退して流体を流体ポンプ室に引き込む際に自己拡張するように構成される。
【0009】
本発明の別の態様によると、医療用流体カセットは、凹部を画定するベースと、ベースの凹部内に配置される部材とを備える。部材とベースは両者の間に流体ポンプ室を画定し、部材は自己拡張可能であるため、圧縮されて流体を流体ポンプ室から排出させた後に自己拡張して、流体を流体ポンプ室に引き込むことができる。
【0010】
本発明の別の態様によると、医療用流体送達方法は、自己拡張部材に圧縮力を印加した後、自己拡張部材を自己拡張させることによって、自己拡張部材と医療用流体カセットの剛体ベースとの間に画定される流体ポンプ室に医療用流体を引きこむことを備える。
【0011】
実施態様は以下の特徴のうち1つまたはそれ以上を含むことができる。
いくつかの実施態様では、膜と共に流体ポンプ室を画定するベースの領域がベースの凹領域である。
【0012】
いくつかの実施態様では、ベースと共に膜が、流体ポンプ室からカセットの入口までつながる流路と、流体ポンプ室からカセットの出口までつながる流路とをさらに画定する。
いくつかの実施態様では、部材がカセットのベースに装着される。
【0013】
いくつかの実施態様では、部材が、ピストンヘッドを収容するように構成される凹部を画定する第1の部分を含む。
いくつかの実施態様では、部材が第1の部分に装着される第2の部分をさらに備え、第2の部分が拡張位置と圧縮位置との間で移動可能である。
【0014】
いくつかの実施態様では、第1の部分と第2の部分が一体的に形成される。
いくつかの実施態様では、第2の部分が第1の部分よりも柔軟である。
いくつかの実施態様では、第2の部分が拡張位置において略カップ状であり、圧縮位置において略平面状である。
【0015】
いくつかの実施態様では、部材が第1の部分と第1の部分に装着される第2の弾性部とを備える。第2の弾性部は拡張位置と圧縮位置との間を弾性的に移動するように構成され、第2の弾性部が圧縮位置から拡張位置に移動すると、第1の部分が膜に外向き力を印加するように構成される。
【0016】
いくつかの実施態様では、第2の弾性部が拡張位置において略カップ状であり、圧縮位置において略平面状である。
いくつかの実施態様では、第2の弾性部が、円周状に間隔をおいて配置された複数の開口部を画定する側壁を有するカップ状部材である。
【0017】
いくつかの実施態様では、第1の部分がピストンヘッドを収容するように構成される凹部を画定する。
いくつかの実施態様では、医療用流体ポンプシステムが、カセットのベースとカセットの流体ポンプ室内に配置される部材との間に位置する弾性素子をさらに備える。弾性素子は部材に力を印加するように構成される。
【0018】
いくつかの実施態様では、弾性素子が圧縮後に自己拡張するように構成される。
いくつかの実施態様では、弾性素子がバネおよび/またはエラストマ部材を備える。
いくつかの実施態様では、医療用流体ポンプ機が、カセットがカセット筐体内に配置されると、流体ポンプ室に配置される部材に力を印加するように構成される素子を備える。
【0019】
いくつかの実施態様では、素子が、圧縮後に自己拡張するように構成される弾性素子である。
いくつかの実施態様では、素子がバネおよび/またはバネ荷重ピストンを備える。
【0020】
いくつかの実施態様では、部材が、カセットのベースの開口部内に配置されるステム部を有する。
いくつかの実施態様では、カセットがカセット筐体内に配置されると、素子がステム部に当接する。
【0021】
いくつかの実施態様では、医療用流体ポンプシステムはステム部を囲むOリングをさらに備え、Oリングは、ステム部とステム部を配置する開口部を画定するベースの部分との間で圧縮される。
【0022】
いくつかの実施態様では、カセットが、ベースに固定され、ベースによって画定される開口部上に配置されるシールをさらに備える。
いくつかの実施態様では、カセットがカセット筐体内に配置されると、素子がシールに当接し、シールを介して素子から部材のステム部に力を伝達することができるようにシールが変形可能である。
【0023】
いくつかの実施態様では、シールは、力がステム部に伝達される際に流体が開口部を介してカセットから出るのを防ぐように構成される。
いくつかの実施態様では、部材が膜に外向き力を印加することによって、流体ポンプ室内に約150mbar〜約200mbarの真空圧を生成するように構成される。
【0024】
いくつかの実施態様では、部材が膜に最大約250N(たとえば、約20N〜約100N、約55N)の外向き力を印加するように構成される。
いくつかの実施態様では、医療用流体ポンプ機が第1および第2の可動ピストンヘッドを備え、膜とベースの領域とが共に第1および第2の流体ポンプ室を画定する。膜が第1および第2のピストンヘッドに対面するように、カセットを医療用流体ポンプ機のカセット筐体内に配置させることができ、第1および第2のピストンヘッドによって膜を移動させて第1および第2の流体ポンプ室の容積を低減させることができる。第1および第2の部材は第1および第2の流体ポンプ室内にそれぞれ配置され、膜の内面に外向き力を印加して第1および第2の流体ポンプ室の容積を増大させるように構成される。
【0025】
いくつかの実施態様では、医療用流体ポンプ機が第1の端部領域と第2の端部領域とを有するロッドを備え、ロッドは、第1の端部領域が第1の流体室に配置される第1の部材に力を印加し、第2の端部領域が第2の流体室に配置される第2の部材に力を印加することができるように構成される。
【0026】
いくつかの実施態様では、第1の端部領域が第1の部材に力を印加して第1の部材によって膜に外向き力を印加させると、第2の端部領域が第2の部材から遠ざかり、第2の端部領域が第2の部材に力を印加して第2の部材によって膜に外向き力を印加させると、第1の端部領域が第1の部材から遠ざかるように、ロッドが中央旋回点を中心に旋回可能である。
【0027】
いくつかの実施態様では、ロッドは、第1および第2のピストンヘッドによってロッドに力を伝達できるように構成され、ロッドはさらに、第1のピストンヘッドがロッドの第1の端部領域に力を印加するとロッドが旋回してロッドの第2の端部領域が第2のピストンヘッドに力を印加し、第2のピストンヘッドがロッドの第2の端部領域に力を印加するとロッドが旋回してロッドの第1の端部領域が第1のピストンヘッドに力を印加するように構成される。
【0028】
いくつかの実施態様では、カセットのベースが成形トレイ状ベースである。
いくつかの実施態様では、膜がトレイ状ベースの外周領域にのみ装着される。
いくつかの実施態様では、ベースが平面と平面から延在する複数の隆起特徴とを備え、膜がベースに押圧されると複数の隆起特徴が膜の内面に当接する。
【0029】
いくつかの実施態様では、膜がベースに押圧されると、複数の隆起特徴の少なくとも1つが膜と共に流体ポンプ室を形成する。
いくつかの実施態様では、膜がベースに押圧されると、隆起特徴の少なくともいくつかが膜と共に、流体ポンプ室と流体連通する流体経路を形成する。
【0030】
いくつかの実施態様では、医療用流体ポンプシステムが透析システム(たとえば、腹膜透析システム)である。
いくつかの実施態様では、医療用流体カセットが使い捨て可能である。
【0031】
いくつかの実施態様では、膜とベースの領域とが共に第1および第2の流体ポンプ室を画定し、第1および第2の部材が第1および第2の流体ポンプ室内にそれぞれ配置され、膜の内面に外向き力を印加して第1および第2の流体ポンプ室の容積を増大させるように構成される。
【0032】
いくつかの実施態様では、医療用流体送達方法が、流体ポンプ室を覆う膜の部分の外面に内向き力を印加することによって、医療用流体を流体ポンプ室から排出することをさらに備える。
【0033】
いくつかの実施態様では、外向き力が、流体ポンプ室に配置される部材によって膜に印加される。
いくつかの実施態様では、部材が、圧縮後に自己拡張するように構成される弾性部材である。
【0034】
いくつかの実施態様では、流体ポンプ室を覆う膜の部分の内面に外向き力を印加することによって、約150mbar〜約200mbarの真空圧が流体ポンプ室内に生成される。
【0035】
いくつかの実施態様では、約20N〜約100N(たとえば、約55N)の外向き力が膜に印加される。
いくつかの実施態様では、医療用流体が透析溶液である。
【0036】
いくつかの実施態様では、流体ポンプ室内に配置される部材が略平面状バネである。
いくつかの実施態様では、略平面状バネが、膜に直接隣接する流体ポンプ室の領域に配置される。
【0037】
いくつかの実施態様では、略平面状バネが、ハブ部とハブ部から外側に放射状に延在する複数の円周状に間隔をおいて配置された脚部とを備える。
いくつかの実施態様では、略平面状バネがハブ部と反対側の複数の脚部の端から延在する複数の足部をさらに備え、複数の足部の少なくとも1つが、その少なくとも1つの足部が装着される脚部の幅よりも大きな幅を有する。
【0038】
いくつかの実施態様では、複数の足部の少なくとも1つが、ベースの隣接面に略一致する湾曲構造を有する。
いくつかの実施態様では、略平面状バネが1つまたはそれ以上の金属で形成される。
【0039】
いくつかの実施態様では、ポンプ室内に配置される部材が、環状リングと環状リングから内側に放射状に延在する複数の円周状に間隔をおいて配置された脚部とを有するバネを備える。
【0040】
いくつかの実施態様では、環状リングが、ピストンヘッドを収容するように構成される中央開口部を画定する。
いくつかの実施態様では、医療用流体ポンプシステムがベースに装着される膜をさらに備える。
【0041】
いくつかの実施態様では、膜の一部がベースの凹部を覆って、その膜の部分がピストンと部材との間に配置される。
いくつかの実施態様では、カセットが医療用流体ポンプ機のカセット筐体内に位置し、ピストンが前進すると、ピストンが部材に直接当接するように、膜がベースの凹部と整列する開口部を画定する。
【0042】
いくつかの実施態様では、部材が略ドーム状部材である。
いくつかの実施態様では、略ドーム状部材が、カセットが医療用流体ポンプ機のカセット筐体内に位置し、ピストンが前進すると、ピストンによって当接される面を有し、その面が略平坦である。
【0043】
いくつかの実施態様では、凹部が略円柱状である。
いくつかの実施態様では、部材が弾性高分子材料製である。
いくつかの実施態様では、部材がポリウレタン製である。
【0044】
いくつかの実施態様では、部材がベースに液密に固定される。
いくつかの実施態様では、部材が、凹部を画定するベースの表面に押圧されて液密シールを生成するフランジを含む。
【0045】
いくつかの実施態様では、流体が流体通路およびポートを通過して流体ポンプ室に至ることができるように、ベースが、流体ポンプ室に隣接するベースの表面に画定されるポートまで延在する流体通路を画定する。
【0046】
いくつかの実施態様では、通路が凹部の長軸に略平行に延在する。
いくつかの実施態様では、部材の下にあるベースの部分が、ポートと流体連通する流路を画定する。
【0047】
いくつかの実施態様では、部材が自己拡張すると、流体ポンプ室内に約150mbar〜約200mbarの真空圧を生成するように構成される。
いくつかの実施態様では、自己拡張部材に圧縮力を印加することで、医療用流体を流体ポンプ室から排出させる。
【0048】
いくつかの実施態様では、自己拡張部材に圧縮力を印加することが、部材を覆う膜の部分の外面に内向き力を印加することを含む。
いくつかの実施態様では、自己拡張部材の拡張によって、流体ポンプ室内に約150mbar〜約200mbarの真空圧が生成される。
【0049】
実施態様は、以下の利点のうち1つまたはそれ以上を備えることができる。
いくつかの実施態様では、カセットの流体ポンプ室に配置される部材は流体ポンプ室の容積を増大させ、医療用流体を流体ポンプ室に引き込むために、膜の内面に外向き力を印加するように構成される。流体ポンプ室の容積を増大させるために膜に印加される力は、膜の外面に作用するピストンヘッドによって印加される引張力ではなく、流体ポンプ室内に配置される部材によって印加される押圧力であるため、流体をポンプ室に引き込む真空圧は、ピストンヘッドの運動とは関係なく制御することができる。閉塞が流体ポンプ室に流体接続される送達管内で発生する場合でも、これにより真空圧を所望の範囲内に維持することができる。たとえば、閉塞がカセットにつながる患者管路で発生し、流体ポンプ室への流体の流速を低減させた場合、後退するピストンヘッドが膜から分離され、流体ポンプ室内に配置される部材が、膜がカセットのベースから遠ざけられて流体ポンプ室の容積を増大させ流体を流体ポンプ室に引き込む速度を要求する。これは、患者に印加される真空圧が所望の限界を超過することを防ぐのを助ける。
【0050】
特定の実施態様では、膜に外向き力を印加するために使用される部材は、カセット自体の一部である自己拡張機構である。これによりシステム全体の複雑度が低減される。たとえば、特定の従来のシステムとは異なり、この構成では、流体を流体室に引き込むために、流体ポンプ室を覆う膜の部分に真空圧などの外部力を印加する必要がない。また、この構成では、ユーザは、ポンプ室を覆う膜の部分に他の方法でピストンヘッドを装着する能動的な措置を講じる必要がない。ここに記載のシステムは、その比較的単純な設定および動作により、特定の従来のシステムよりもユーザに優しい。
【0051】
いくつかの実施態様では、膜に外向き力を印加するために使用される部材が医療用流体ポンプ機から(たとえば、医療用流体ポンプ機のドアから)延在する可動部材(たとえば、ピストン)によって作動される。このような実施態様では、カセットの設計を簡易化することができるため、カセットを比較的安価に生産することができる。さらに、特定の実施態様では、カセットの膜に印加される力を所望のように調節することができるように、医療用流体ポンプ機の可動部材を調節可能である。その結果、単独のカセットを、膜に様々な大きさの力を印加する必要がある各種用途に合わせて使用することができる。
【0052】
その他の態様、特徴、および利点は、明細書、図面、および請求項から自明になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】携帯用カート上に配置されるPDサイクラを備える腹膜透析(「PD」)システムを示す斜視図である。
【図2】図1のPDシステムのPDサイクラおよびPDカセットを示す斜視図である。PDサイクラのドアは、使用中にPDカセットとインタフェースを取るPDサイクラの内面を見せるために開放位置を取っている。
【図3】図1および2のPDサイクラの開放されたカセットコンパートメントを示す斜視図である。
【図4】図1のPDシステムのPDカセットを示す展開斜視図である。
【図5】PDカセットの可撓膜側から見た図4のPDカセットを示す斜視図である。
【図6】PDカセットの可撓膜側から見た図4のPDカセットを示す平面図である。
【図7】図4のPDカセットを示す側面図である。
【図8】PDカセットの剛体ベース側から見た図4のPDカセットを示す斜視図である。
【図9】拡張構造における図4のPDカセットのバネ部材を示す側面図である。
【図10】圧縮構造における図4のPDカセットのバネ部材を示す側面図である。
【図11】図1のPDシステムのPDサイクラのカセットコンパートメント内のPDカセットを示す部分斜視図である。
【図12A】様々な動作段階中における図1のPDシステムのPDサイクラのカセットコンパートメント内のPDカセットを示す断面図である。
【図12B】様々な動作段階中における図1のPDシステムのPDサイクラのカセットコンパートメント内のPDカセットを示す断面図である。
【図12C】様々な動作段階中における図1のPDシステムのPDサイクラのカセットコンパートメント内のPDカセットを示す断面図である。
【図13A】PD治療中の図1のPDシステムのPDカセットを通る各種流体流路を示す図である。
【図13B】PD治療中の図1のPDシステムのPDカセットを通る各種流体流路を示す図である。
【図13C】PD治療中の図1のPDシステムのPDカセットを通る各種流体流路を示す図である。
【図14】カセットのポンプ室内に配置される弾性を有する略平坦なバネを備えるPDカセットを示す展開斜視図である。
【図15】PDカセットの剛体ベース側から見た図14のPDカセットを示す斜視図である。
【図16A】様々な動作段階中における、PDサイクラのカセットコンパートメント内の図14のPDカセットを示す断面図である。
【図16B】様々な動作段階中における、PDサイクラのカセットコンパートメント内の図14のPDカセットを示す断面図である。
【図17】ピストンに装着される第2のバネアセンブリを備えるPDサイクラと共に使用される図14のPDカセットを示す概略断面図である。
【図18】ハブ部から延在するダイヤモンド状脚部を備え、図14および17のカセットで使用可能であるバネを示す上面図である。
【図19】隣接する脚部間のスリットを有するハブ部から延在する複数の脚部を備え、図14および17のカセットで使用可能であるバネを示す上面図である。
【図20】カセットのベースと可動カップ状部材との間に配置される弾性ブロックを備えるPDカセットを示す断面図である。
【図21A】様々な動作段階中における、PDサイクラのカセットコンパートメント内の図20のPDカセットを示す断面図である。
【図21B】様々な動作段階中における、PDサイクラのカセットコンパートメント内の図20のPDカセットを示す断面図である。
【図22】PDサイクラのバネ荷重ピストンによって作動されるように構成される可動カップ状部材を備えるPDカセットを示す断面図である。
【図23A】様々な動作段階中における、PDサイクラのカセットコンパートメント内の図22のPDカセットを示す断面図である。
【図23B】様々な動作段階中における、PDサイクラのカセットコンパートメント内の図22のPDカセットを示す断面図である。
【図24】PDサイクラのバネ荷重ピストンによって作動されるように構成される可動カップ状部材を備える別の種類のPDカセットを示す断面図である。
【図25A】様々な動作段階中における、PDサイクラのカセットコンパートメント内の図24のPDカセットを示す断面図である。
【図25B】様々な動作段階中における、PDサイクラのカセットコンパートメント内の図24のPDカセットを示す断面図である。
【図26】PDカセットのポンプ室内でカップ状部材を交互に変位させるために使用可能な旋回可能ロッドを備えるPDサイクラのカセットコンパートメント内の図22のPDカセットを示す上面断面図である。
【図27】カセットの室内に配置された弾性の略ドーム状部材を備えるPDカセットの展開斜視図である。
【図28】PDカセットの剛体ベース側から見た図27のPDカセットを示す斜視図である。
【図29】図27のPDカセットを示す斜視切断図である。
【図30A】様々な動作段階中における、PDサイクラのカセットコンパートメント内の図27のPDカセットを示す断面図である。
【図30B】様々な動作段階中における、PDサイクラのカセットコンパートメント内の図27のPDカセットを示す断面図である。
【図31】カセットのポンプ室に配置されるカップ状バネを備えるPDカセットを示す展開斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
本発明の特定の態様では、医療用流体カセット(たとえば、透析流体カセット)は、膜とカセットのベースとの間に形成される室の中に配置される部材を備える。使用中、医療用流体ポンプ機(たとえば、透析器)のピストンが膜と部材に内向き力を印加して、流体を室から外に出す。その後、ピストンは後退させられ、ピストンが後退するにつれ、室内に配置された部材が膜に外向き力を印加して、流体を室内に引き込む。医療用流体カセットと医療用流体ポンプ機の例を後述する。
【0055】
図1を参照すると、腹膜透析(「PD」)システム100は、カート104上に配置されるPDサイクラ(PD器とも称する)102を備える。再度図2を参照すると、PDサイクラ102は、ハウジング106、ドア108、および、カセット112がカセットインタフェース110と閉じたドア108との間に形成されるカセットコンパートメント114内に配置される際、使い捨てPDカセット112と結合するカセットインタフェース110を備える。ヒータトレイ116はハウジング106の上面に配置される。ヒータトレイ116は、透析溶液のバッグ(たとえば、5リットルの透析溶液バッグ)を収容するような寸法と形状を有する。PDサイクラ102は、たとえば、PD治療の設定、開始、および/または終了を許可するためにユーザ(たとえば、患者)によって操作可能なタッチスクリーン118および追加の制御ボタン120をさらに備える。
【0056】
透析溶液バッグ122はカート104の側面のフィンガから吊るされ、ヒータバッグ124はヒータトレイ116上に配置される。透析溶液バッグ122とヒータバッグ124はそれぞれ、透析溶液バッグ管路126とヒータバッグ管路128を介してカセット112に接続される。透析溶液バッグ管路126は、使用中に透析溶液バッグ122からカセット112へ透析溶液を通過させるのに使用することができ、ヒータバッグ管路128は、使用中にカセット112とヒータバッグ124間で透析溶液を往復させるのに使用することができる。さらに、患者管路130とドレイン管路132がカセット112に接続される。患者管路130はカテーテルを介して患者の腹部に接続し、使用中にカセット112と患者間で透析溶液を往復させるのに使用することができる。ドレイン管路132はドレイン管またはドレイン管容器に接続することができ、使用中にカセット112からドレイン管またはドレイン管容器へ透析溶液を通過させるのに使用することができる。
【0057】
図3は、PDサイクラ102のカセットインタフェース110とドア108とをより詳細に示す図である。図示されるように、PDサイクラ102は、カセットインタフェース110に形成されるピストンアクセス口136A、136B内で軸方向に移動可能な略半球状のピストンヘッド134A、134Bを有するピストンを備える。ピストンヘッド134A、134Bは、様々な異なるポリマ、金属、および/または合金のいずれかで形成することができる。いくつかの実施態様では、ピストンヘッド134A、134Bはポリオキシメチレン(デラウェア州ウィルミントンのDupont社により商品名Delrinで市販されている)製である。ピストンヘッド134A、134Bの半球形状は、機械加工、成形、および/または鋳造などの様々に異なる手法のいずれかを用いて達成することができる。
【0058】
ピストンは、ピストンアクセス口136A、136B内で軸方向に内方および外方にピストンヘッド134A、134Bを移動させるように動作可能なモータに連結されるピストンシャフト(図12A〜12Cに示す)を備える。後述するように、ドア108が閉じた状態でカセット112(図2および4〜8に示す)がカセットコンパートメント114内に配置されると、PDサイクラ102のピストンヘッド134A、134Bはカセット112のポンプ室138A、138Bと並ぶ。その結果、ピストンヘッド134A、134Bはカセット112の方向に移動し、それによって膜140をポンプ室138A、138Bによって画定される容積へと追いやり、ポンプ室138A、138Bによって画定される容積を減少させて透析溶液をポンプ室138A、138Bから追い出す。ピストンヘッド134A、134Bをカセット112から後退させて、ポンプ室138A、138Bによって画定される容積から外に出すこともできる。後でより詳細に説明するように、弾性バネ部材161A、161Bがポンプ室138A、138Bに配置されており、ピストンヘッド134A、134Bが後退すると、弾性バネ部材161A、161Bは拡張して、ポンプ室138A、138Bを覆う膜140の部分をピストンヘッド134A、134Bの方に押すように構成される。その結果、ポンプ室138A、138Bによって画定される容積が増大し、ピストンヘッド134A、134Bが後退し、弾性バネ部材161A、161Bが拡張すると、透析溶液はポンプ室138A、138Bに引き込まれる。
【0059】
再度図3を参照すると、PDサイクラ102はカセットインタフェース110の可膨張性部材アクセス口144内に配置された複数の可膨張性部材142をさらに備える。カセット112がカセットコンパートメント114内に配置されたとき、可膨張性部材142はカセット112の押しつぶし可能なドーム領域146と並ぶ。可膨張性部材142のうち1つのみが図3に示されているが、PDサイクラ102はカセット112(図5に示す)の押しつぶし可能なドーム領域146のそれぞれと関連づけられた可膨張性部材を備えると理解されたい。可膨張性部材142は使用中、所望の形でカセット112を通るように透析溶液を方向づけるバルブとしての役割を果たす。具体的には、可膨張性部材142はカセットインタフェース110の表面を超えて膨張し、膨張したときはカセット112の押しつぶし可能なドーム領域146に当接し、可膨張性部材アクセス口144へと後退し、収縮したときはカセット112と当接しなくなる。特定の可膨張性部材142を膨張させてカセット112上の関連のドーム領域146を押し下げることによって、カセット112内の特定の流体流路を遮断することができる。このように、透析溶液を、ピストンヘッド134A、134Bを始動することによってカセット112を通って送り出し、可膨張性部材142を選択的に膨張および収縮させることによってカセット112内の所望の流路に沿って誘導することができる。
【0060】
なお図3を参照すると、位置決めピン148はカセットインタフェース110から延在している。ドア108が開放位置にあるとき、カセット112は、カセット112の頂部を位置決めピン148の下に配置し、カセット112の底部をカセットインタフェース110の方に押すことによってカセットインタフェース110に搭載することができる。カセット112は、位置決めピン148とカセットインタフェース110から延在する下突起150との間に確実に保持され、ドア108をカセット112に対して閉じさせる寸法を有する。位置決めピン148は、カセット112が閉じたドア108とカセットインタフェース110との間のカセットコンパートメント114内に配置される際に、カセット112のポンプ室138A、138Bがピストンヘッド134A、134Bと並ぶように確保するのを助ける。
【0061】
図3に示すように、ドア108は、ドア108が閉鎖位置にあるときにピストンヘッド134A、134Bとほぼ整列する凹部152A、152Bを画定する。カセット112がカセットコンパートメント114内に配置されると、内面が膜140と共にポンプ室138A、138Bを形成する、カセット112の中空突起部154A、154B(図7および8に示す)が凹部152A、152Bに嵌合する。ドア108は、使用中にドア108とカセットインタフェース110との間でカセット112を圧縮するように膨張可能なパッドをさらに備える。パッドが膨張した状態で、凹部152A、152Bを形成するドア108の部分が突起部154A、154Bを支持し、ドア108の平面がカセット112のその他の領域を支持する。ドア108はピストンヘッド134A、134Bおよび可膨張性部材142によって印加される力に対抗して、ピストンヘッド134A、134Bによりポンプ室138A、138Bを覆う膜140の部分を押し下げさせるとともに、可膨張性部材142によりカセット112上の押しつぶし可能なドーム領域146を始動させる。
【0062】
PDサイクラ102は、本明細書では詳述しないその他の様々な特徴を備える。PDサイクラ102とその各種部品に関するさらなる詳細は、参照によりここに組み込まれる米国特許出願公開第2007/0112297号で見られる。
【0063】
図4はカセット112の展開斜視図である。図4に示すように、カセット112は、トレイ状剛体ベース156、カセット112が完全に組み立てられたときにベース156の外周に装着される可撓膜140、およびベース156の凹領域163A、163Bに配置されるバネ部材161A、161Bを備える。隆起部165A、165Bは、凹領域163A、163Bのそれぞれの周囲のベースの平面から延在し、カセット112がドア108とPDサイクラ102のカセットインタフェース110との間で圧縮されたときに可撓膜140の内面に向かって延在し、内面と接触する。凹領域163A、163Bを囲む隆起部165A、165Bに加えて、一連の隆起部167がベース156の平面から延在して、カセット112がドア108とPDサイクラ102のカセットインタフェース110との間で圧縮されたときに可撓膜140の内面に向かって延在し、内面と接触する。
【0064】
図5および6はそれぞれ、組み立てられたカセット112を示す平面図および斜視図である。図4〜6を参照すると、カセット112がドア108とPDサイクラ102のカセットインタフェース110との間で圧縮されて、その結果、可撓膜140がベース156の隆起部165A、165Bに押し付けられると、ベース156の凹領域163A、163Bが可撓膜140と協働してポンプ室138A、138Bを形成する。具体的には、膜140と、ベース156の凹領域163A、163Bを形成する中空突起部154A、154B(図7および8に示す)との間の容積がポンプ室138A、138Bの役割を果たす。膜140はベース156に押し付けられると、同様にベース156から延在する一連の隆起部167と協働して、一連の流体経路158と流体経路158の拡張部分(たとえば、略円形の拡張部)である複数の押しつぶし可能なドーム領域146とを形成する。使用中、透析溶液は流体経路158およびドーム領域146を通ってポンプ室138A、138Bとの間を往復する。それぞれの押しつぶし可能なドーム領域146で、膜140は撓んで、隆起部167がそこから延在するベース156の平面と当接することができる。このような当接は、使用中にドーム領域146と対応づけられる経路158の領域に沿った透析溶液の流れをほぼ妨げる(たとえば、防止する)。よって、後でより詳細に説明するように、カセット112を通る透析溶液流は、PDサイクラ102の可膨張性部材142を選択的に膨張させることによって押しつぶし可能なドーム領域146の選択的押し下げを通じて制御することができる。
【0065】
ベース156の側から見たカセット112の側面図およびカセット112の上面図である図7および8を参照すると、ベース156の凹領域163A、163B(図4に示す)が中空突起部154A、154Bによって形成され、可撓膜140から遠ざかるように延在している。中空突起部154A、154Bは、カセット112の中央垂直軸に対して略対称に配置される。突起部154A、154Bは、PDサイクラ102のドア108の凹部152A、152Bに嵌合するような寸法と形状を有する。中空突起部154A、154Bは、第1の円柱状領域155A、155Bと、第1の円柱状領域155A、155Bの下方に配置される第2の小径の円柱状領域157A、157Bとを備える。突起部157A、157Bの第1の円柱状領域155A、155Bと第2の円柱状領域157A、157Bとは先細り領域159A、159Bによって接続される。
【0066】
中空突起部154A、154Bの円柱状領域157A、157Bの各内面は外周に環状流路を形成する。各環状流路は、固定位置のバネ部材161A、161Bをポンプ室138A、138B内に保持するため、関連バネ部材161A、161Bの対応構造を収容するように構成される。
【0067】
ベース156の剛性は、カセット112をPDサイクラ102のカセットコンパートメント114内の適所に保持し、ベース156がピストンヘッド134A、134Bによって突起部154A、154Bに印加される力および可膨張性部材142によってベース156の平面に印加される力に応答して撓んだり変形したりするのを防止するのに役立つ。
【0068】
ベース156は、様々な比較的剛体の材料で形成することができる。いくつかの実施態様では、ベース156は、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスルホン、およびその他の医療グレードプラスチック材料などの1つまたはそれ以上のポリマで形成される。特定の実施態様では、ベース156はステンレス鋼などの1つまたはそれ以上の金属または合金で形成される。もしくは、ベース156は、上記ポリマおよび金属の様々な異なる組み合わせで形成することができる。ベース156は、機械加工、成形、および鋳造などの様々な異なる手法のいずれかを用いて形成することができる。
【0069】
再度図5および6を参照すると、流体管路コネクタ160はカセット112の底縁に沿って配置されている。カセット112の流体経路158は、ポンプ室138A、138Bから各種コネクタ160につながる。コネクタ160はカセット112の幅に沿って非対称に配置される。コネクタ160の非対称配置は、カセット112の膜140をカセットインタフェース110に対面させた状態で、カセット112がカセットコンパートメント114内に適切に配置されるよう確保するのを助ける。コネクタ160は、透析溶液バッグ管路126、ヒータバッグ管路128、患者管路130、およびドレイン管路132の端部で接続金具を受け入れるように構成される。接続金具の一端を各管路に挿入および接合し、他端を関連コネクタ160に挿入および接合することができる。透析溶液バッグ管路126、ヒータバッグ管路128、患者管路130、およびドレイン管路132をカセットに接続させることによって、図1および2に示すように、コネクタ160は使用中に透析溶液をカセット112から出し入れさせる。
【0070】
図9は、拡張位置にあるバネ部材161Aの側面図であり、図10は、圧縮位置にあるバネ部材161Aの側面図である。カセット112の他方のバネ部材161Bはバネ部材161Aと構造上および機能上同一であると理解されたい。図4、9、および10を参照すると、バネ部材161Aは、接続領域173Aによってより剛体のカップ状部171Aと一体的に接続される弾性カップ状部169Aを備える。弾性カップ状部169Aは、周囲に複数の開口部177Aを有する側壁175Aを備える。開口部177Aは、弾性カップ状部169Aを拡張カップ状位置(図9に示す)からより平坦な圧縮構造(図10に示す)に圧縮させることができ、圧縮力が解放されたときにて拡張カップ状構造へと弾性的に復帰させることができる寸法と形状を有する。
【0071】
環状口縁179Aは、弾性カップ状部169Aの縁から外方に放射状に延在する。環状口縁179Aは、ベース156の中空突起部154Aの内面によって形成される環状凹部に嵌め込まれる寸法と形状を有する。よって、バネ部材161Aは、環状口縁179Aが中空突起部154Aの環状凹部に嵌め込まれるまでバネ部材161Aをベース156の方に押すことによって、ベース156に固定することができる。もしくはまたはさらに、バネ部材をベースに装着するのに、接着、熱接合、機械的固定などのその他様々な装着手法のいずれかを使用することができる。
【0072】
図9に示すように、弾性カップ状部169Aの側壁175Aの開口部177Aのいくつかは、弾性カップ状部169Aの外周に間隔をおいて配置された三角形の開口部である。その他の開口部177Aは、三角形の開口部間に配置される台形の開口部である。開口部177Aにより、隣接する開口部間における側壁175Aの部分は、図10に示すように、弾性カップ状部169Aが圧縮すると、開口部によって画定される空間内に拡張する。よって、開口部177Aは、弾性カップ状部169Aの径を増大させずに、弾性カップ状部169Aをより平坦な構造に圧縮させることができる。この構造は、使用中に弾性カップ状部169Aとベース156の中空突起部154A間の摺動接触を防止するのに役立ち、さらに、粒子が弾性カップ状部169Aおよび中空突起部154Aから剥がれ落ち、ポンプ室138A内の透析溶液中に集まることを防止するのに役立つ。
【0073】
弾性カップ状部169Aの材料および形状は、所望の弾性を有する弾性カップ状部169Aを提供するように選択することができる。特定の実施態様では、弾性カップ状部169Aは、剛体カップ状部171Aに約20N〜約250N(たとえば、約20N〜約100N、約55N)の外向き力を印加させるように構成される。後により詳細に説明するように、膜140の内面にこのような力を印加することで、ポンプ室138Aおよびポンプ室と流体接続する流体管路内に約150mbar〜約200mbar(たとえば、約150mbar)の真空圧が生成される。しかしながら、弾性カップ状部169Aは、バネ部材161Aの使用目的や用途に応じて、膜140により大きなまたは小さな力を印加するように形成することができる。
【0074】
図9および10を参照すると、より剛性の高いカップ状部171Aは、透析器の半球状ピストンヘッド134Aを収容するような寸法と形状の凹部181Aを備える。この構造は、使用中にピストンヘッド134Aが適切にバネ部材161Aと並ぶように確保するのに役立ち得る。カップ状部171Aの側壁183Aは、その外周に間隔をおいて配置された細長スロット185Aを備える。スロット185Aにより、流体はカップ状部171Aの一方の側からカップ状部171Aの他方の側に流れることができる。スロットの代わりに、またはそれに加えて、流体が剛体カップ状部171Aの一方の側から剛体カップ状部171Aの他方の側へと流れることのできる、その他様々な寸法および形状の開口部が使用可能である。
【0075】
バネ部材161Aのカップ状部169A、171Aは、所望の弾性を有するバネ部材161Aを提供する各種材料のいずれかで形成することができる。いくつかの実施態様では、カップ状部169A、171Aとコネクタ領域173Aとは同じ材料で形成される。もしくは、カップ状部169A、171Aおよびコネクタ領域173Aはそれぞれ異なる材料で形成することができる。バネ部材161Aを形成可能な材料の例は、アセタール、ポリスルホン、ポリカーボネート、ナイロン、エラストマポリエステル、ポリウレタンなどのポリマ、および/またはステンレス鋼などの金属である。
【0076】
様々な手法のいずれかを用いてバネ部材161Bを形成することができる。特定の実施態様では、バネ部材161Aは注入成形手法を用いて形成される。いくつかの実施態様では、たとえば、バネ部材161Aは2部の成形部を用いて形成される。第1の成形部は弾性カップ状部169Aを形成するのに使用され、第2の成形部は剛体カップ状部171Aを形成するのに使用される。バネ部材161Aを形成する際、第1および第2の成形部は相互に隣接して配置され、成形インサートは2つの成形部間に配置される。成形インサートは2つのカップ状部169A、171A間にコネクタ領域173Aを形成するのに使用される。成形インサートは通常、共に摺動してコネクタ領域173Aを形成する2つの半切れを備える。バネ部材161Aの成形後、2つの成形部が互いに離れるように移動させられ、成形インサートの2つの半切れが互いに離れるように移動させられることで、成形バネ部材161Aを成形装置から取り外すことができる。注入成形の代わりに、またはそれに加えて、機械加工法などその他の手法を利用してバネ部材161Aを形成することもできる。
【0077】
上述したように、膜140がベース156の外周に装着される。ベース156の中央部を覆う膜140の部分は通常、ベース156に装着されない。その代わりに、膜140のこの部分はベース156の平面から延在する隆起部165A、165B、および167上に緩く搭載される。膜140をベース156の外周に装着するために、接着や熱接合などの任意の様々な装着手法を使用することができる。膜140の厚さおよび材料は、膜140がピストンヘッド134A、134B、および可膨張性部材142によって膜140に印加される力に応答してベース156の方に撓むだけの十分な柔軟性を有するように選択される。特定の実施態様では、膜140の厚さは約0.100ミクロン〜約0.150ミクロンである。しかしながら、その他の様々な厚さが、膜140の形成に使用される材料の種類によっては十分である可能性がある。
【0078】
膜140を形成するのに、ピストンヘッド134A、134Bの移動と可膨張性部材142の膨張とに対応して膜140を破損なく撓めることのできる様々な異なる材料を使用することができる。いくつかの実施態様では、膜140は3層の積層体を備える。特定の実施態様では、たとえば、積層体の内層と外層は60%Septon(登録商標)8004熱可塑性ゴム(すなわち、水素化スチレンブロックコポリマ)と40%エチレンとから形成される化合物で形成され、中間層は、25%Tuftec(登録商標)H 1062(SEBS:水素化スチレン熱可塑性エラストマ)、40%Engage(登録商標)8003ポリオレフィンエラストマ(エチレンオクテンコポリマ)、および35%Septon(登録商標)8004熱可塑性ゴム(すなわち、水素化スチレンブロックコポリマ)から形成される化合物で形成される。もしくは、膜はより多いまたは少ない数の層を含むことができる、および/または異なる材料で形成することができる。
【0079】
剛体ベース156、膜140、およびバネ部材161A、161Bは通常、別々に形成されてから組み立てられてカセット112を製造する。いくつかの実施態様では、たとえば、剛体ベース156およびバネ部材161A、161Bの形成後、バネ部材161A、161Bが剛体ベース156の中空突起部154A、154Bによって形成される凹部163A、163Bに挿入される。次に、バネ部材161A、161Bの弾性カップ状部169A、169Bの環状口縁179A、179Bが中空突起部154A、154Bの内面によって形成される環状凹部に嵌めこまれてバネ部材161A、161Bをベース156に固定する。その後、膜140は剛体ベース156の外周に装着される。
【0080】
もしくは、他の製造手法を使用してカセット112を製造することができる。上述したように、たとえば、その他の手法を使用してバネ部材161A、161Bをベース156に固定することができる。さらに、バネ部材161A、161Bをベース156に装着する代案として、バネ部材161A、161Bをベース156と一体的に形成することが可能である。特定の実施形態では、たとえば、ベース156とバネ部材161A、161Bとは、一片の材料から機械加工することができる。
【0081】
図11に示すように、治療前、PDサイクラ102のドア108は開放されてカセットインタフェース110を露出させており、カセット112はインタフェース110に隣接する膜140と共に配置される。カセット112は、カセット112のポンプ室138A、138Bがピストンヘッド134A、134Bと並ぶように配置される。ポンプ室138A、138Bが確実にピストンヘッド134A、134Bと並ぶように、カセット112は位置決めピン148とカセットインタフェース110から延在する下側突起150との間に配置される。カセットのコネクタ160の非対称配置は、カセット112が膜140を誤った方向に面して(たとえば、ドア108の方に外向きに)設置される可能性を低減する重要な特徴としての役割を果たす。さらにまたはもしくは、位置決めピン148は、仮に膜140がドア108の方に外を向く場合でもカセット112が位置決めピン148に当接し得ないように、突起部154A、154Bの最大突起よりも小さい寸法とすることができる。
【0082】
カセット112をPDサイクラ102に搭載する間、ピストンヘッド134A、134Bは通常、ピストンアクセス口136A、136B内で後退させられる。このピストンヘッド134A、134Bの位置は、カセット112の設置間にピストンヘッド134A、134Bが損傷を負う可能性を低減することができる
図12A〜12Bは、様々な動作段階における、ポンプ室138Aとその関連バネ部材161Aおよびピストンヘッド134Aを示す。他方のバネ部材161Bおよびピストンヘッド134Bも同様に作動して、透析溶液を他方のポンプ室138Bへ、および他方のポンプ室138Bから送り出すと理解されたい。
【0083】
図12Aを参照すると、カセット112がカセットインタフェース110に隣接した状態で、カセット112がドア108とカセットインタフェース110との間のカセットコンパートメント114に収容されるように、ドア108がカセット112上で閉鎖される。カセット112がカセットコンパートメント114内に位置した状態で、ドア108内の可膨張性パッドが膨張して、ドア108とカセットインタフェース110との間でカセット112を圧縮する。このカセット112の圧縮により、カセット112の突起部154A、154Bがドア108の凹部152A、152B内に保持され、膜140が剛体ベース156の平面から延在する隆起部165A、165B、167に緊密に押し付けられて包囲された流体経路158、ドーム領域146、およびポンプ室138A、138Bを形成する(図5および6に示す)。
【0084】
動作中、カセット112がコンパートメント114内に固定された状態で、ピストンヘッド134A、134Bが往復運動して、ポンプ室138A、138Bのそれぞれの容積を順次変更する。通常、ピストンヘッド134Aが拡張すると、他方のピストンヘッド134Bが後退し、その逆もまた同様である。その結果、透析溶液はポンプ室138Bに引き込まれるのと同時にポンプ室138Aから排出され、その逆もまた同様である。
【0085】
図12Bに示すように、カセット112をカセットコンパートメント114内に配置し、ドア108内でパッドを膨張させた後、ピストンヘッド134Aが拡張して、バネ部材161Aの剛体カップ状部171Aによって形成される凹部へと膜を変形させる。ピストンヘッド134Aがこの位置にある状態で、ポンプ室138A内に配置されるバネ部材161Aは拡張位置を維持する。この位置で、ポンプ室138Aの容積は最大治療レベルにあり、透析溶液で満杯である。
【0086】
図12Cを参照すると、ピストンヘッド134Aが外方へ移動して略完全拡張位置に至ると、バネ部材161は拡張位置から圧縮位置に移動する。これにより、ポンプ室138Aの容積が低減して、透析溶液をカセットの流体経路158を介してポンプ室138Aから排出させる(図5および6に示す)。
【0087】
透析溶液をポンプ室138Aから排出させた後、ピストンヘッド134Aは再度、図12Bに示す位置に後退する。バネ部材161Aの弾性カップ状部169Aの弾性により、弾性カップ状部169Aは剛体カップ状部171Aに外向き力を印加する。その結果、剛体カップ状部171Aはカセット112の膜140に外向き力を印加する。よって、ピストンヘッド134Aがカセット112の剛体ベース156から離れるように後退すると、バネ部材161Aの剛体カップ状部171Aがピストンヘッド134Aの後退方向と同じ方向に膜140を移動させることによって、ポンプ室138Aの容積を増大させる。ポンプ室138Aの容積が増大すると、透析溶液がカセット112の流体経路158を介してカセット112のポンプ室138Aに引き込まれる(図5および6に示す)。
【0088】
透析溶液をポンプ室138Aに引き込んだ後、ピストンヘッド134Aを図12Cに示す位置に再び復帰させ、膜140を剛体ベース156の方に移動させてポンプ室138A、138Bの容量を低減することによって、透析溶液をポンプ室138Aから追い出すことができる。このプロセスは、所望量の透析溶液がある位置との間(たとえば、患者との間)を往復するまで繰り返される。
【0089】
上述したように、透析溶液をポンプ室138A、138Bとの間で往復させる間、PDサイクラ102の特定の可膨張性部材142が選択的に膨張させられて、カセット112の所望の経路に沿って、送り出した透析溶液を方向づけることができる。
【0090】
再度図1および2を参照すると、PD治療中、患者管路130はカテーテルを介して患者の腹部に接続され、ドレイン管路132はドレイン管またはドレイン管容器に接続される。PD治療は通常、前回の治療から患者の腹部に残留する使用済み透析溶液を患者から空にすることで始まる。こうするために、PDサイクラ102のポンプが始動されてピストンヘッド134A、134Bを往復させ、選択された可膨張性部材142が膨張して使用済み透析溶液を患者からカセット112のポンプ室138A、138Bに引き込んだ後、該透析溶液をドレイン管路132を介してポンプ室138A、138Bからドレイン管に引き込む。このカセット112の流体経路158を通る使用済み透析溶液の流路を図13Aに示す。
【0091】
患者から使用済み透析溶液を排出した後、加熱された透析溶液がヒータバッグ124から患者に移される。そうするため、PDサイクラ102のポンプが始動されてピストンヘッド134A、134Bを往復させ、PDサイクラ102の特定の可膨張性部材142が膨張して、使用済み透析溶液をヒータバッグ管路128を介してヒータバッグ124からカセット112のポンプ室138A、138Bに引き込んだ後、該透析溶液を患者管路130を介してポンプ室138A、138Bから患者に送り出す。このカセット112の流体経路158を通る透析溶液の流路を図13Bに示す。
【0092】
いったんヒータバッグ124から患者に送り出されたら、透析溶液はある期間、患者内に滞留させられる。この滞留期間中、毒素が患者の血液から腹膜を横断して透析溶液に至る。透析溶液が患者内に滞留すると、PDサイクラ102は次のサイクルで患者に送達する新鮮な透析液を用意する。具体的には、PDサイクラ102は4つの満杯の透析溶液バッグ122のうち1つから加熱のためにヒータバッグ124へ新鮮な透析溶液を送り出す。こうするため、PDサイクラ102のポンプはピストンヘッド134A、134Bを往復運動させるように始動され、PDサイクラ102の特定の可膨張性部材142が膨張させられて、選択された透析溶液バッグ122からその関連管路126を介して透析溶液をカセット112のポンプ室138A、138Bに引き込み、その後、ヒータバッグ管路128を介して透析溶液をポンプ室138A、138Bからヒータバッグ124へと送り出す。このカセット112の流体経路158を通る透析溶液の流路は図13Cに示される。
【0093】
透析溶液が所望の期間、患者内に滞留した後、使用済み透析溶液が患者からドレイン管に送り出される。その後、加熱された透析溶液がヒータバッグ124から患者に送り出され、所望の期間滞留する。これらのステップは、3つの残りの透析溶液バッグ122のうち2つからの透析溶液で繰り返される。最後の透析溶液バッグ122からの透析溶液は通常、患者に送達されて、次回のPD治療まで患者内に残される。
【0094】
透析溶液は単独の透析溶液バッグ122からヒータバッグ124に送り込まれると説明したが、透析溶液は複数の透析溶液バッグ122からヒータバッグ124に送り込むこともできる。このような手法は、たとえば、バッグ122中の透析溶液が、異なる濃度を有し、治療のための所望の濃度がバッグ122のうち2つまたはそれ以上のバッグ中の透析溶液の濃度の中間である場合に有利である可能性がある。
【0095】
PD治療の完了後、ピストンヘッド134A、134Bはピストンヘッド134A、134Bが膜140に当接しなくなるように十分な距離、カセット112から離れて後退する。その後、PDサイクラのドア108が開放されて、カセット112がカセットコンパートメントから除去され、廃棄される。
【0096】
カセット112のバネ部材161A、161Bは、透析溶液をポンプ室138A、138Bに引き込むためにカセット112の流体経路158に供給される真空圧が所望の範囲に確実に維持されるように助けることができる。いくつかの実施態様では、たとえば、バネ部材161A、161Bは、印加される真空圧を約150mbar〜約200mbarの範囲に制限するように構成される。この構成は、閉塞が患者からカセット112につながる患者管路130で生じた場合に有利になり得る。ピストンヘッドが膜に装着されるシステムでは、このような閉塞の結果、ポンプ室への透析溶液の流速が低下するにもかかわらず膜がピストンヘッドと共に移動するため、ポンプ室内の真空圧が増大し、患者に印加される真空圧が増大する可能性がある。対照的に、閉塞のせいで低下するポンプ室138A、138Bに向かう透析溶液の流速に対応して、ピストンヘッド134A、134Bは膜140よりも速い速度で後退し、膜140から解放される。バネ部材161A、161Bは、膜140に所望の範囲(たとえば、約20N〜約250N、約20N〜約100N、約55N)内の力を印加し続けて、患者管路を介して患者に印加される真空圧を所望の範囲(たとえば、約150mbar〜約200mbar)内に維持する。
【0097】
さらに、PDシステム100はポンプ室138A、138Bを覆う膜140の部分162A、162Bを移動させるための真空システムを必要としないため、ドア108とカセットインタフェース110間の略気密シールは通常必要とされない。よって、ポンプ室を覆うカセット膜の部分を後退させるように適合される真空システムを備えるシステムと比較して、PDサイクラ102のドアシール機構はより簡易で、よりコスト効率が良い。
【0098】
特定の実施態様を説明したが、他の実施態様も可能である。
バネ部材161Aの弾性カップ状部169Aの側壁175Aが三角形および台形の開口部177Aを備えると説明したが、その他様々な形状および寸法の開口部を使用して、弾性カップ状部169Aを所望の構造に圧縮することができる。さらに、弾性カップ状部169Aが平坦なカップ状構造に圧縮されるように構成されると説明したが、いくつかの実施態様では、弾性カップ状部169Aは圧縮時に略平面構造を取るように構成される。たとえば、弾性カップ状部169Aが平坦な平面形状に圧縮されるような開口部の寸法と形状を選択することができる。
【0099】
バネ部材161A、161Bは2つの対向するカップ状部材を有すると説明したが、膜140の内面に所望の外向き力を印加することのできるその他の様々な形状のバネ部材が使用可能である。特定の実施態様では、たとえば、1つまたはそれ以上の板バネが、膜140の内面に外向き力を印加するように流体ポンプ室全体に延在する。
【0100】
図14は、カセット612のポンプ室638A、638Bに配置される略平坦なバネ661A、661Bを備えるPDカセット612の展開図である。図14および15に示すように、カセット612のベース656は、半球状の凹領域663A、663Bを形成するドーム状突起部654A、654Bを備える。ベース656の凹領域663A、663Bは覆いかぶさる膜140と共に、バネ661A、661Bが配置されるポンプ室638A、638Bを形成する。ベース656は凹領域663A、663Bの形状において、カセット112のベース156と異なる。ベース656のその他の構造上および機能上の特徴は上述のベース156とほぼ同じである。さらに、膜140は、カセット112のベース156に装着されると説明したのと同じように、ベース656に固定することができる。
【0101】
バネ661A、661Bはそれぞれハブ部663A、663Bを備え、そこから複数の細長脚部665A、665Bが延在する。拡大されたパッドまたは足部667A、667Bは脚部665A、665Bの端部に装着される。足部667A、667Bは、バネ661A、661Bの外縁に円周状に間隔をおいて配置される。バネ661A、661Bのハブ部663A、663Bと脚部665A、665Bとは略平坦または平面状であり、足部667A、667Bは湾曲構造を有する。足部667A、667Bの曲率半径は、凹領域663A、663Bが形成されるドーム状突起部654A、654Bの内面の曲率半径とほぼ同じである。
【0102】
バネ661A、661Bは、ハブ部663A、663Bに印加されバネ661A、661Bをポンプ室638A、638B内に(すなわち、ベース656の方に)撓ませる力が解放された後、平坦または平面状の非変形位置にバネ661A、661Bを復帰させる弾性をバネ661A、661Bに提供するような材料と寸法で構成される。いくつかの実施態様では、バネ661A、661Bはステンレス鋼(たとえば、302ステンレス鋼)製である。しかしながら、もしくはまたはさらに、鋼鉄、真鍮、リン青銅、ポリプロピレン、ポリエーテルイミド(たとえば、Ultem(登録商標))、ナイロン、鋼鉄、真鍮、および/またはリン青銅などのその他の材料を使用して、バネ661A、661Bを形成することができる。特定の実施態様では、バネ661A、661Bはバネ661A、661Bの生体適合性を向上させるポリマコーティングを塗布される。バネ661A、661Bは、たとえば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)コーティングを塗布することができる。
【0103】
特定の実施態様では、バネ661A、661Bは厚さが約0.01インチ〜約0.04インチである。バネ661A、661Bは、約2.0インチ〜約2.5インチの外径を有することができる。脚部665A、665Bはそれぞれ、約0.5インチ〜約1.0インチの長さ(すなわち、ハブ部663A、663Bと足部667A、667Bとの間の線形距離)、および/または約0.12インチ〜約0.20インチの幅を有することができる。
【0104】
いくつかの実施態様では、バネ661A、661Bは302ステンレス鋼製であり、厚さが約0.020インチである。脚部665A、665Bはそれぞれ長さが0.75インチ、幅が0.16インチである。
【0105】
バネ661A、661Bを製造するには、スタンピング機が通常使用されて、平坦なシート状材料から、バネ661、661Bの形状とほぼ一致する形状の平坦部材が打ち抜かれる。次に、バネ661A、661Bの足部667A、667Bに一致する平坦な部材の部分が、後の形成工程を用いて湾曲形状に形成される。もしくは、スタンピング機に、バネ661A、661Bを単独の打抜き/形成ステップで製造できる形成機能を設けることができる。もしくはまたはさらに、鋳造、成形、エッチングなどのその他各種材料加工手法のいずれかを用いてバネ661A、661Bを形成することができる。
【0106】
図14を参照すると、カセット612が完全に組み立てられると、バネ661A、661Bはベース656の凹領域663A、663Bに配置される。バネ661A、661Bは、凹領域663A、663Bの最大径と略等しい(すなわち、凹領域663A、663Bを形成するドーム状突起部654A、654Bの最大内径と等しい)径を有する。この構造の結果、バネ661A、661Bは、非変形位置において、ドーム状突起部654A、654Bの内面と当接する足部667A、667Bと共に凹領域663A、663Bの頂部に静止する。
【0107】
カセット612は、上述のカセット112とほぼ同じように使用することができる。具体的には、カセット612はPDサイクラ102のカセットコンパートメント114内に配置することができ、PDサイクラ102のピストンは流体をポンプ室638A、638Bに引き込み、ポンプ室638A、638Bから押し出すように往復運動させることができる。図16Aおよび16Bは、ポンピング工程の2つの異なる段階中における、PDサイクラ102のカセットコンパートメント114内に配置されるカセット612を示す。図16Aおよび16Bはポンプ室638Aに関するポンピング工程を示すが、同様のポンピング工程が、カセット612のポンプ室638B内でも生じることを理解されたい。
【0108】
図16Aに示すように、ポンプ室638Aに関連づけられるピストンがカセット612のベース656A方に前進すると、バネ661Aは変形して、ピストンヘッド134Aの形状にほぼ合致する。その結果、ポンプ室638Aの容積が低減して、流体をポンプ室638Aから外に送り出す。バネ661Aが凹領域663A内へ変形すると、バネ661Aの足部667Aはドーム状突起部654Aの内面に力を印加し、その後、連続的な力がバネ661Aに印加されると、その表面に沿って摺動する。各足部667Aの曲率半径はドーム状突起部654Aの内面の曲率半径と略等しいため、ドーム状突起部654Aの内面に印加される力は各足部667Aの幅全体に分布され、ドーム状突起部654Aの内面のスカイビングの発生が低減または防止される。
【0109】
図16Bを参照すると、ピストンが後退すると、バネ661Aは変形していない平坦または平面状構造に復帰し、膜140に外向き力を印加する。これにより、ポンプ室638の容積が増大してポンプ室638内に真空が生成され、流体をポンプ室638に引き込む。
【0110】
ポンプ室638A、638Bと関連づけられるピストンを往復動させることによって、流体は上述したように順次、ポンプ室638A、638Bに引き込まれ、ポンプ室638A、638Bから排出される。
【0111】
カセット612は、上述のカセット112と同様にして組み立てることができる。通常、ベース656およびバネ661A、661Bの製造後、バネ661A、661Bが凹領域663A、663Bに挿入される。続いて、膜140がベース656に装着されて、膜140とベース656の凹領域663A、663Bとの間に形成されるポンプ室638A、638B内のバネ661A、661Bを閉鎖する。
【0112】
上述の実施態様ではピストンが膜140の外面に直接接触すると説明したが、特定の実施態様では、ピストンヘッドと膜140の間に構造が配置される。図17に示すように、たとえば、第2のバネアセンブリ680Aは、ピン682Aを介してカセット612のポンプ室638Aに関連づけられるピストンのピストンヘッド634Aに解放可能に固定される。第2のバネアセンブリ680Aは後述するように、バネ612Aの略全面とバネ612Aを覆う膜140の部分全体にピストンヘッド634Aの前進力を分布する役割を果たす。図示されていないが、類似の第2のバネアセンブリはカセット612のポンプ室638Bに関連づけられるピストンのピストンヘッドに接続されると理解されたい。
【0113】
第2のバネアセンブリ680Aは、カセット612のポンプ室638Aに配置されるバネ661Aの径と略等しい径を有する第2のバネ684Aを備える。第2のバネ684Aはバネ661Aと同様、略平坦または平面形状に付勢される。第2のバネ684Aは、ピストンヘッド634Aがカセットベース656の凹領域663Aへと前進すると、ピストンヘッド634Aの形状にほぼ合致するように変形することができる。第2のバネ684Aは上述のバネ661A、661Bと設計および構造を類似させることができる。もしくは、バネ684Aをピストンヘッド634Aの形状にほぼ合致させるように変形しながら、バネ684Aに平面状バイアスを加えるその他の設計と構造も使用可能である。
【0114】
カバー686Aは、第2のバネ684Aの底面に装着される。カバー686Aはバネ684Aと661Aとの間にクッションを提供し、膜140が膜140に作用するバネ684A、661Aの力により損傷を負うのを防ぐのに役立つ。カバー686Aは、バネ661Aを覆う膜140の部分が略滑らかで皺がよらないように確保するのにも役立つ。これにより、流体がポンプ室638Aから送られる精度を向上させることができる。いくつかの実施態様では、カバー686Aはポリウレタンなどの発泡材料で形成される。しかしながら、膜140をバネ684A、661Aから保護するその他の比較的軟らかい材料を使用することができる。そのような材料の例はウレタンフォームおよびエチレンプロピレンジエンモノマ(EPDM)である。
【0115】
上述したように、第2のバネアセンブリ680Aはピン682Aを介してピストンヘッド634Aに解放可能に固定される。ピン682Aは、ピン682Aが第2のバネ684Aおよび/またはカバー686Aの開口部688A、690Aに挿入されたとき、第2のバネ684Aおよび/またはカバー686Aに圧入または摩擦嵌合するような寸法を有することができる。もしくはまたはさらに、ピン682Aには、ピン682Aが開口部688A、690Aに挿入されたとき、第2のバネ684Aおよび/またはカバー686Aと解放可能に係合するバヨネットコネクタなどの機械的コネクタが設けられる。
【0116】
第2のバネアセンブリ680Aを装着したピストンは、流体をカセット612のポンプ室638A、638Bに引き込み、カセット612のポンプ室638A、638Bから追い出すために上述のピストンと同じように使用される。ピストンヘッド634Aが前進すると、第2のバネアセンブリ680Aが膜140の外面に当接する。第2のバネ684Aの変形への耐性により、ピストンが前進すると、バネ661Aと第2のバネアセンブリ680A間に位置する膜140の領域は、これらの構造間で圧縮させられる。同様に、各バネの平坦または平面形状に向かうバイアスにより、ピストンがバネ661Aが拡張する(すなわち、平面構造に復帰する)速度以下の速度で後退する際も、ピストンが後退するにつれてバネ661Aと第2のバネアセンブリ680A間に位置する膜140の部分は圧縮させられる。このため、流体がポンプ室638Aに引き込まれる、およびポンプ室638Aから追い出される精度を向上させることができる。
【0117】
第2のバネアセンブリ680Aはピストンヘッド634Aに解放可能に装着されると説明したが、永久装着手法を用いて第2のバネ構造をピストンヘッドに固定することもできる。たとえば、第2のバネ構造はピストンヘッドに熱接合または化学結合される。
【0118】
バネ661A、661Bはハブ部663A、663Bから延在する8個の別々の脚部665A、665Bを有すると図示されているが、バネは、所望の外向き力を膜に印加するのに十分な弾性をバネに与える任意の数の脚部を有することができる。特定の実施態様では、たとえば、各バネは、ハブ部から延在する16個の脚部を備える。いくつかの実施態様では、上述のバネのうち2つのバネのハブ部は積層されて、互いに装着(たとえば、熱接合、化学結合、または接着)される。このような実施態様では、バネは、1つのバネのフィンガがその他のバネの隣接するフィンガ間に形成されたスロットを覆うように配置される。
【0119】
同様に、バネ661A、661Bの脚部665A、665Bは別個の細長部材として説明および図示したが、その他の形状および寸法の脚部を使用することもできる。図18に示すように、たとえば、バネ761はハブ部763から延在する12個の脚部765を備え、ハブ部763と反対側の端部に装着されたパッドまたは足部767を有する。各脚部765は略ダイヤモンド状であり、中央のダイヤモンド状開口部769を備える。
【0120】
バネのハブ部は固体ディスクとして説明されているが、特定の実施態様では、バネのハブ部はフィンガ間にスリットを備える。図19に示すように、たとえば、バネ861はハブ部863から延在する12個の脚部765を備える。ハブ部863は、ハブ部863の外周から内方に放射状に延在するスリット864を備える。スリット864はバネ861の隣接する脚部765間に配置され、ハブ部863よりも大きな動作範囲を脚部765に提供することができる。
【0121】
図14〜19のバネは中央ハブ部から外方に放射状に延在する脚部を備えると説明したが、特定の実施態様では、環状部材から内方に放射状に延在する脚部を備えるバネが使用される。図31に示すように、たとえば、カセット1012は、膜140のベース656間に形成されるポンプ室638A、638B内に配置されるバネ1061A、1061Bを備える。バネ1061A、1061Bはそれぞれ、環状リング1063A、1063Bから延在する複数の脚部1065A、1065Bを備える。環状リング1063A、1063Bは、透析器のピストンヘッドを収容するように構成される中央開口部1064Aを備える。フランジ1067A、1067Bは環状リング1063A、1063Bから外方に放射状に延在する。カセット1012がポンプ室638A、638B内に配置されるバネ1061A、1061Bと共に完全に組み立てられると、フランジ1067A、1067Bはポンプ室638A、638Bの内面に位置する。
【0122】
バネ1061A、1061Bは図14〜19に示す上述のバネと同じように働く。透析器のピストンヘッドがポンプ室638A、638B内へと前進して流体をポンプ室638A、638Bから追い出すと、ピストンヘッドはバネ1061A、1061Bの環状リング1063A、1063Bに収容される。その結果、脚部1065A、1065Bはベース656の方に撓み、ポンプ室638A、638Bの内面とほぼ合致する。続いてピストンヘッドが後退すると、脚部1065A、1065Bが元の略平面位置に復帰する。その際、脚部1065A、1065Bは膜140の内面に外向き力を印加して、ポンプ室638A、638Bの容積を増大させ、流体をポンプ室638A、638Bに引き込む。
【0123】
バネ1061A、1061Bは、図14〜19のバネに関して上記各種材料のいずれかで形成することができる。さらに、バネ661A、661Bはポンプ室638A、638B内に緩く配置されると説明したが、バネ1061A、1061Bはカセット1012のベース656に固定することもできる。バネ1061A、1061Bはたとえば、ポンプ室638A、638B内に圧入させる、あるいはポンプ室638A、638Bの内面に接合させる(たとえば、熱接合、接着、または化学結合)ことができる。
【0124】
上述のカセットはバネ部材を用いてカセット膜140に外向き力を直接的に印加するが、膜140に外向き力を直接的または間接的に印加するその他の種類の自己拡張部材をポンプ室内に配置して使用することができる。図20に示すように、たとえば、カセット212は、剛体カセットベース256と、使用中にPDサイクラ102のピストンヘッド134Aと結合するカップ状部材271との間に配置される弾性ブロック269を備える。剛体ベース256は、ポンプ室238を形成する中空突起部254を備える。ポンプ室238は、カップ状部材271を収容するような形状の半球状セクション239と弾性ブロック269を収容するような形状の略円柱状セクション241とを備える。弾性ブロック269は、ポンプ室238の円柱状セクション241内の剛体ベース256に固定される。弾性ブロック269は、たとえば、ポンプ室238の円柱状セクション241を形成する剛体ベース256の部分に接着または熱接合することができる。弾性ブロック269のステム部273はカップ状部材271に形成される凹部272まで延在し、カップ状部材271に固定される。弾性ブロック269のステム部273は、たとえば、カップ状部材271に接着する、カップ状部材271に熱接合する、および/または摩擦嵌合手法を用いてカップ状部材271の凹部272内に固定することができる。弾性ブロック269は、ブロックが圧縮後に弾性的に拡張することができる様々な異なるエラストマ材料のいずれかで形成することができる。ブロックの形成に使用可能なエラストマ材料の例は、ポリイソプレン、ポリウレタン、ラテックス、およびシリコーンである。
【0125】
図21Aおよび21Bは、様々な動作段階中における、カセットコンパートメント114内に配置されるカセット212のPDサイクラ102を示す断面図である。図21Aに示すように、PDサイクラ102のピストンヘッド134Aが拡張させられると、ピストンヘッド134Aは膜140およびカセット212のカップ状部材271を押して、カップ状部材271を剛体ベース256の方に向かわせ、弾性ブロック269をカップ状部材271と剛体ベース256間で圧縮させる。これにより、ポンプ室238の容積が低減して、透析溶液がポンプ室238から排出される。ピストンヘッド134Aが完全に拡張すると、ピストンヘッド134Aに対するカップ状部材271の対向面がポンプ室238を形成する中空突起部254の内面と接触、またはほぼ接触する。カップ状部材271と中空突起部254とは相互に噛み合う半球形状を有しており、ピストンヘッド134Aが完全な拡張位置にある際、カップ状部材271と中空突起部254の面間で流体量を低減する(たとえば、最小限にする)。この構造は、ピストンヘッド134Aを拡張して透析溶液をポンプ室238から排出した後、ポンプ室238に残留する透析溶液の量を低減する(たとえば、最小限にする)のに役立つ。
【0126】
図21Bに示すように、ブロック269の弾性により、ピストンヘッド134Aが後退すると、弾性ブロック269が拡張して、カップ状部材271によって、カセット212の膜140の内面に外向き力を印加させる。その結果、ポンプ室238の容積が増大して、透析溶液をポンプ室238に引き込ませる。
【0127】
弾性ブロック269の代わりに、またはそれに加えて、圧縮バネなどの別の種類の弾性部材を剛体ベース256とカップ状部材271との間に配置することができる。このようなバネは上述の弾性ブロック269と同じように働き、ピストンヘッド134Aが後退すると、膜140を剛体ベース256から遠ざけてポンプ室238の容積を増大させる。
【0128】
カセット212のポンプ室のうち一方のみが図示されているが、カセット212はそれぞれがカップ状部材とポンプ室内のカップ状部材を移動させる弾性部材とを含む2つのポンプ室を備えると理解されたい。上述したように、ピストンヘッド134A、134Bは、繰り返し透析溶液をポンプ室に引き込んでからポンプ室から排出するように往復運動させることができる。
【0129】
上述のカセットは膜に外向き力を印加する自己拡張部材を備えるが、いくつかの実施態様では、カセットは、PDサイクラの可動部材がカセット膜の内面に外向き力を印加することができるようにPDサイクラの可動部材と協働するように構成される。図22を参照すると、たとえば、カセット312は、ポンプ室338を形成するカセット膜140と共に剛体ベース356を備える。通路341はベース356を通ってポンプ室338からベース356に形成される開口部343まで延在する。カップ状部材371はポンプ室338内に配置され、ベース356の通路341に位置するステム部373を備える。Oリング375はカップ状部材371のステム部373を囲い、ポンプ室338内の透析溶液が通路341を介して抜け出ないように、ステム部373と剛体ベース356の包囲部分とで液密シールを形成する。
【0130】
図23Aおよび23Bは、様々な動作段階中における、カセット312がカセットコンパートメント314内に配置された、PDサイクラ302の部分断面図である。図23Aに示すように、PDサイクラ302のドア308は、カセット312が閉じたドア308とPDサイクラ302のカセットインタフェース310との間に形成されるカセットコンパートメント314内に配置されるとき、カップ状部材371のステム部373と並ぶバネ荷重ピストン353を備える。カセット312は、ドア308が開放位置にあるときにカセット312をカセットインタフェース310に固定し、次にドア308を閉鎖することによってカセットコンパートメント314内に配置される。
【0131】
図23Aをさらに参照すると、ピストンヘッド134Aが拡張位置に移動すると、ピストンヘッド134Aが膜140とカップ状部材371を押して、ドア308に形成される孔355内のバネ荷重ピストン353を圧縮する。ピストンヘッド134Aの完全拡張位置では、ピストンヘッド134Aに対するカップ状部材371の対向面がポンプ室338を形成する剛体ベース356の部分の内面と接触またはほぼ接触する。その結果、ポンプ室338の容積が低減し、透析溶液がポンプ室338から排出される。カップ状部材371とポンプ室338は噛み合う形状を有しており、ピストンヘッド134Aが完全拡張位置にあるとき、カップ状部材371とベース356の面間の流体量を低減する(たとえば、最小限にする)。この構造は、ピストンヘッド134Aを拡張させて透析溶液をポンプ室338から排出した後にポンプ室338に残留する透析溶液の量を低減する(たとえば、最小限にする)のに役立つ。
【0132】
図23Bに示すように、バネ荷重ピストン353の弾性により、ピストンヘッド134Aが後退すると、バネ荷重ピストン353が膜140の方に移動して、カップ状部材371によって膜140に外向き力を印加させる。その結果、ポンプ室338の容積が増大して、透析溶液がポンプ室338に引き込まれる。
【0133】
カセット312のポンプ室の一方のみが図示されているが、カセット312はそれぞれが使用中にPDサイクラのバネ荷重ピストンによって始動されるカップ状部材を含む2つのポンプ室を備えると理解されたい。上述したように、ピストンヘッド134A、134Bは往復運動して、繰り返し透析溶液をポンプ室に引き込んだ後、ポンプ室から排出することができる。
【0134】
カセット312は液体がポンプ室338から抜け出すのを防止するためにカップ状部材371のステム部373を囲むOリングを備えると説明したが、その他の手法を用いてポンプ室338を封止することができる。図24に示すように、たとえば、エラストマキャップシール475がカセット412の剛体ベース356に装着されて、カップ状部材471のステム部473を配置する通路341を封止する。キャップシール475は、カップ状部材471のステム部473に形成される凹部472へと延在するポスト477を備える。キャップシール475のポスト477は、カップ状部材471のステム部473に装着される。キャップシール475のポスト477は、たとえば、カップ状部材471のステム部473に接着する、カップ状部材471のステム部473に熱接合する、および/または摩擦嵌合手法を用いてカップ状部材471のステム部473の凹部内に固定することができる。キャップシール475は、通路341を形成する剛体ベース356の部分を囲む環状隆起部479も備える。キャップシール475はカセット412の剛体ベース356に装着される。たとえば、キャップシール475の環状隆起部479は剛体ベース356に接着または熱接合することができる。キャップシール475は、シール475が弾性的に伸張した後で元の構造に復帰することができる様々に異なるエラストマ材料のいずれかで形成することができる。キャップシール475を形成するのに使用可能なエラストマ材料の例はポリイソプレン、ポリウレタン、ラテックス、およびシリコーンである。
【0135】
図25Aおよび25Bは、様々な動作段階中における、カセットコンパートメント314内に配置されるカセット412を有するPDサイクラ302を示す断面図である。図25Aに示すように、ピストンヘッド134Aが拡張位置に移動して透析溶液をポンプ室338から追い出すと、ピストンヘッド134Aが膜140とカップ状部材471を押圧して、カップ状部材471のステム部473を完全に通路341内へと押しやる。この位置で、ピストンヘッド134Aに対向するカップ状部材471の表面がポンプ室338を形成する剛体ベース356の部分の内面と接触あるいはほぼ接触し、キャップシール475は非変形構造を取る。ピストンヘッド134Aが完全に拡張すると、ステム部473はバネ荷重ピストン353を圧縮する。
【0136】
図25Bを参照すると、ピストンヘッド134Aが後退すると、バネ荷重ピストン353はキャップシール475およびカップ状部材471を膜140の方に移動させ、カップ状部材471により膜140の内面に外向き力を印加させる。その結果、ポンプ室338の容積が増大して、透析溶液が室338に引き込まれる。キャップシール475が通路341内へと変形すると、ポンプ室338に引き込まれる透析溶液が抜け出さないようにキャップシール475と剛体ベース356間の液密シールが維持される。
【0137】
キャップシール475はカップ状部材471のステム部473の凹部に嵌合するポスト477を備えると説明したが、キャップシールをカップ状部材に装着できるその他の様々な構造も使用することができる。
【0138】
カセット412のポンプ室の一方のみが図示されているが、カセット412は、それぞれが使用中にPDサイクラのバネ荷重ピストンによって始動されるカップ状部材を含む2つのポンプ室を備えると理解されたい。上述したように、ピストンヘッド134A、134Bは、繰り返し透析溶液をポンプ室に引き込んでからポンプ室から排出するように往復運動させることができる。
【0139】
バネ荷重ピストン353を用いてカップ状部材371のステム部373またはキャップシール475に力を印加する代わりに、またはそれに加えて、圧縮バネまたはエラストマ部材などのその他の種類の自己拡張弾性部材を使用することができる。PDサイクラ302のドア308には、たとえば、使用中にカップ状部材371のステム部373またはキャップシール475に力を印加するように配置された圧縮バネまたはエラストマ部材などのその他の種類の自己拡張弾性部材を設けることができる。このような自己拡張弾性部材は上述の弾性ブロック269と同様に動作して、ピストンヘッド134Aが後退すると、膜140をカセット312、412の剛体ベース356から遠ざけ、ポンプ室338の容積を増大させる。同様に、自己拡張弾性部材の代わりにまたはそれに加えて、PDサイクラ302のドア308は、カップ状部材371のステム部373またはキャップシール475に力を印加するように配置された電気式、油圧式、および/または空気式部材などの動作可能部材を備えることができる。
【0140】
いくつかの実施態様では、カップ状部材371のステム部373またはキャップシール475に力を印加するために使用される自己拡張または動作可能部材は、カップ状部材371またはキャップシール475に様々な大きさの力を印加するように調節可能とすることができる。特定の実施態様では、カップ状部材371のステム部373またはキャップシール475に力を印加するために使用される自己拡張または動作可能部材は、様々な大きさの力を印加するその他の自己拡張または動作可能部材と容易に置き換えることができる。このような実施態様では、カセット312、412は、様々な大きさの力を膜140の内面に印加する必要がある各種用途のために、変更なく使用することができる。
【0141】
特定の実施態様では、PDサイクラのドアは、一方のカップ状部材の内向き力を、外向き力として他方のカップ状部材に伝達するように構成される機構を備える。たとえば、閉鎖されたドア508とPDサイクラ502のカセットインタフェース510との間に形成されたカセットコンパートメント514内のカセット512(図22、23A、および23Bの上述のカセット312と類似)の上断面図である図26を参照すると、PDサイクラ502のドア508は、ロッド553の対向端に、突起部555A、555Bを有する旋回可能ロッド553を備える。突起部555A、555Bは、カセット512のポンプ室538A、538B内の関連するカップ状部材571A、571Bのステム部573A、573Bと当接する。ロッド553は中央旋回軸557を中心に旋回可能である。いくつかの実施態様では、たとえば、ピンがロッドに形成される穴に挿入され、PDサイクラのドアに装着されて、ロッド553がピンを中心に旋回することができる。しかしながら、もしくはまたはさらにその他の各種機構を用いて、ロッド553をドア508に旋回可能に装着することもできる。
【0142】
使用中、PDサイクラ502のピストンヘッド134A、134Bは、一方のピストンヘッドが拡張する間に他方のピストンヘッドが後退する、およびその逆となるように交互に動作する。図26に示すように、ピストンヘッド134Aが拡張し、カップ状部材571Aをポンプ室538Aに押し込んで透析溶液をポンプ室538Aから排出させると、ロッド553が旋回軸557を中心に旋回する。具体的には、カップ状部材571Aに当接するロッド553の端部555Aがポンプ室538Aから遠ざかり、ロッド553の対向端555Bがポンプ室538Bに近づく。その結果、ロッド553の対向端555Bが他方のカップ状部材571Bをカセット512の剛体ベース556から遠ざけるように移動させて、カップ状部材571Bによってカセット512の膜140に外向き力を印加させる。膜140に印加された外向き力により、ピストンヘッド134Bが後退すると、ポンプ室538Bの容積が増加し、透析溶液がポンプ室538Bに引き込まれる。透析溶液をポンプ室538Bに引き込んだ後、ピストンヘッド134Bが拡張して、カップ状部材571Bをポンプ室538B内に追いやり透析溶液をポンプ室538Bから排出させる。それと同時に、ピストンヘッド134Aが後退して、カップ状部材571Aがベース556から遠ざけられて透析溶液をポンプ室538Aに引き込む。いくつかの実施態様では、ピストンヘッド134A、134Bは略同一の速度で後退および拡張するため、ポンピング工程全体を通じて、カップ状部材571A、571Bは関連のピストンヘッド134A、134Bと密着したままである。
【0143】
上記PDサイクラのピストンヘッド134A、134Bは半球状であると説明したが、ピストンヘッドはその他の様々な形状を取ることができる。いくつかの実施態様では、たとえば、ピストンヘッドは平坦端面を有することができる。このような実施態様では、カセットのポンプ室内に配置されるカップ状部材は、使用中にピストンヘッドの平坦端面と接する平坦面を有することができる。同様に、ピストンヘッド134A、134Bは特定の材料および製造手法を用いて形成されると説明したが、その他各種適切な材料および製造手法を使用することができる。
【0144】
上述のカセットのポンプ室内に配置される部材(たとえば、バネ)は液体を通過させるように設計されているが、特定の実施態様では、カセットに液体浸透性自己拡張部材が設けられているため、カセットのポンプ室を出入りする液体が自己拡張部材によってせきとめられる。図27に示すように、たとえば、カセット912は、膜140とカセット912のベース956の円柱状凹領域963A、963Bとの間に形成されるポンプ室938A、938Bに配置される弾性的なドーム状部材961A、961Bを備える。ドーム状部材961A、961Bは液体不浸透性を有し、ドーム状部材961A、961Bのそれぞれの外周に液密シールが設けられるように、凹領域963A、963B内に保有される。使用中、後により詳細に説明するように、流体は、ドーム状部材961A、961Bの内面とその下のベース956の面との間で、凹領域963A、963Bの底部に形成される流体室912A、972Bに引き込まれる、および流体室912A、972Bから追い出される。
【0145】
カセット912のベース956は上述のカセットのベースと類似する。しかしながら、凹領域963A、963Bと凹領域963A、963Bにつながる流体入口および出口通路とは、上述のカセットの対応機能と異なる構造を有する。図27および28に示すように、ベース956は、円柱状凹領域963A、963Bを形成する中空の略円柱状突起部954A、954Bを備える。膜140に最も近い凹領域の端部近傍に流体入口および出口を備える上述のベースと異なり、流体入口965A、965Bおよび出口966A、966Bは円柱状突起部954A、954Bの側壁で、膜140に対向する凹領域963A、963Bの端部近傍に形成される。よって、カセット912が完全に組み立てられると、図29に示すように、流体入口965A、965Bおよび出口966A、966Bはドーム状部材961A、961Bの下方に位置する。
【0146】
図29に示すように、カセット912のベース956は、ベース956の上面(図29に斜視図で示される)に沿って形成される流体流路から流体入口および出口965B、966Bまで延在する縦型流体通路968B、969Bを形成する。これらの通路968B、969Bは、ドーム状部材961Bが配置される円柱状突起部954Bの外面に沿って延在する。ドーム状部材961Bの下にあるベース956の表面領域は流体入口および出口965B、966Bと並ぶ流路970B、971Bを形成し、ドーム状部材961Bの下を通り、ドーム状部材961Bとベース956との間に形成される流体ポンプ室972Bへと流体を流す。これらの流路970B、971Bは、ドーム状部材961Bの方に上方に延在するベース956の隆起面977Bによって分割される。図示されないが、ドーム状部材961Aの下のベース956の部分は、ドーム状部材961Bの下のベース956の対応部分と略同一である。
【0147】
図27および29に示すように、ドーム状部材961A、961Bはそれぞれ、平坦な頂部974A、974Bと、本体973A、973Bの下端部領域の周辺で拡張する環状フランジまたはリング976A、976Bとを有する本体973A、973Bとを備える。ドーム状部材961A、961Bは、ドーム状部材961A、961Bが圧縮後、弾性的に自己拡張できるような材料と寸法で形成される。いくつかの実施態様では、ドーム状部材961A、961Bはポリウレタン製である。しかしながら、もしくはまたはさらに、シリコーン、スチレンブロックコポリマ(たとえば、Kraton D)、クロロプレン、ポリクロロプレン(たとえば、Neoprene)、および/または熱可塑性エラストマ(たとえば、Mediprene)などのその他の弾性材料を使用してドーム状部材961A、961Bを形成することができる。
【0148】
ドーム状部材は、ドーム状部材961A、961Bが完全に圧縮された後に完全に拡張させられたとき、所望量(たとえば、12.75mL)の流体がドーム状部材961A、961Bとカセット912のベース956との間に形成される室972A、972Bを出入りするような寸法を有する。ドーム状部材961A、961Bはたとえば、径が約50mm〜約56mm、高さ(すなわち側壁の下面から平坦な頂部974A、974Bの上面までの垂直距離)が約17mm〜約23mm、壁厚が約1.5mm〜約3.5mmとすることができる。
【0149】
特定の実施態様では、ドーム状部材はポリウレタン製であり、径が53mm、高さが20mm、壁厚が2.4mmである。
再度図29を参照すると、ドーム状部材961A、961Bは、円柱状突起部954A、954Bによって形成される凹領域963A、963Bに圧入される。具体的には、ドーム状部材961A、961Bのそれぞれのフランジ976A、976Bは、凹領域963A、963Bの径(すなわち、円柱状突起部954A、954Bの内径)よりも大きな約0.020インチの径を有する。この構造は凹領域963A、963B内にドーム状部材961A、961Bを固定するとともに、ドーム状部材961A、961Bとベース956の円柱状突起部954A、954Bの内面との間の液密シールを提供する。さらに、膜140は凹領域963A、963B上を延在し、ベース956の外周で封止されるため、膜140は、液体がドーム状部材961A、961Bとベース956間を通過する場合でも、液体がカセット912から抜け出すのを防止する第2の液密シールを提供する。
【0150】
カセット912は、上述のカセットと同じように流体を送りだすために使用される。図30Aおよび30Bは、ポンピング工程の各種段階中に、PDサイクラ102のカセットコンパートメント114内に配置されるカセット912を示す。図30Aに示すように、PDサイクラ102のピストンの平坦なピストンヘッド934Bはドーム状部材961Bを圧縮して、ドーム状部材961Bと円柱状突起部954Bとの間に形成される流体室972Bから流体を追い出している。ドーム状部材961Bが圧縮されると、流体は流路971Bを通って流れ、流体出口966Bを出て、縦通路969Bに入る(すべて図29に示す)。図30Bは、ドーム状部材961Bが拡張されてドーム状部材961Bと円柱状突起部954Bとの間に形成される室972Bに流体を引き込むように、ピストンが後退している様子を示す。ドーム状部材961Bが拡張すると、流体は縦通路968Bを通過し、流体入口965Bに入り、流路970Bを通る(すべて図29に示す)。流路970B、971Bは面977Bに対して凹んでいるため、流路970B、971Bは、ドーム状部材961Bが完全に圧縮されて面977Bと接触する、あるいはほぼ接触する場合でも、流体室972Bと入口および出口965B、966B間の流体連通を確保する。
【0151】
カセット912は、ドーム状部材961A、961Bをベース956の凹領域963A、963Bに圧入した後、他のカセットに対して上述したように膜140をベース956の外周に装着することによって組み立てることができる。
【0152】
ドーム状部材961A、961Bのフランジまたはリング976A、976Bは円柱状突起部954A、954Bの平坦な内面に対して押し付けられると説明したが、円柱状突起部954A、954Bの内面は、代替としてフランジ976A、976Bを収容する環状凹部を備えることができる。この構成の結果、ドーム状部材961A、961Bのフランジ976A、976Bと円柱状突起部954A、954Bの隣接面との間に蛇行路が形成されて、フランジ976A、976Bと円柱状突起部954A、954B間を液体が通過することを防ぐのを助ける。
【0153】
別の代替例として、ドーム状部材961A、961Bは、ベース956の円柱状突起部954A、954Bに接合(たとえば、熱接合、化学結合、または接着)することができる。
【0154】
ドーム状部材961A、961Bは円柱状突起部954A、954Bによって形成される凹領域963A、963B内に圧入または接合されると説明したが、ドーム状部材961A、961Bは成形手法を用いてカセット912のベース956で形成することができる。このようにしてドーム状部材961A、961Bを形成するため、ベース956の底部が除去され、2部成形体が円柱状突起部954A、954Bに挿入されてドーム状部材961A、961Bを形成する。ドーム状部材961A、961Bの形成後、ベース956の底部は再装着される。
【0155】
膜140は凹領域963A、963Bを含め、ベース956のほぼ全面にわたって延在すると説明したが、特定の実施態様では、ピストンヘッドがドーム状部材961A、961Bに直接当接するように、膜が凹領域963A、963Bと並ぶ孔を備える。このような実施態様では、膜が円柱状部材954A、954Bのそれぞれの外周に装着されて(たとえば、熱接合または接着)液密シールを確保する。
【0156】
上述のカセットは2つのポンプ室を有すると説明したが、代替としてカセットは2つより少ないまたは多いポンプ室を有することができる。
上述のカセットの各ポンプ室は流体入口および流体出口を備えると説明したが、ポンプ室は代替として入口と出口の両方として使用される単独のポートを備えることができる。
【0157】
上述のピストンはピストンのシャフトに装着されるピストンヘッドを有すると説明したが、特定の実施態様では、ピストンヘッドとシャフトが一体的に形成される。いくつかの実施態様では、ピストンヘッドは単にピストンシャフト自体の平坦端面である。
【0158】
特定のカセットは、ピストンヘッドがカセットのポンプ室と並ぶような位置にカセットを保持するため、位置決めピンとPDサイクラのカセットインタフェースから延在する下突起との間に配置されると説明したが、もしくはまたはさらに、確実にピストンヘッドをポンプ室と並ばせる他の手法を使用することができる。いくつかの実施態様では、たとえば、カセットの中空突起部がPDサイクラのドアの凹部に配置された状態で、カセットがPDサイクラのドアに押し付けられる。カセットはドアに装着されるリテーナクリップによってこの位置に保持される。ドアを閉鎖すると、PDサイクラのピストンヘッドがカセットのポンプ室と並ぶ。
【0159】
上記の特定のPDサイクラはタッチスクリーンと関連ボタンを備えると説明したが、PDサイクラはその他の種類の画面とユーザデータ入力システムを備えることができる。特定の実施態様では、たとえば、サイクラは、表示画面に隣接するコンソール上に配置されるボタン(たとえば、フェザータッチボタン)を有する表示画面を備える。特定のボタンを使用中に画面上に表示される動作オプションと並べて配置させることができるため、ユーザはその動作オプションと並んだボタンを押すことによって所望の動作オプションを選択できる。各種表示画面および/または特定の画面上に表示される各種アイテムを通じてユーザを誘導できるように、矢印ボタンの形状の追加ボタンも設けることができる。たとえば、動作パラメータを入力するため、ユーザが数値を入力できる数字キーパッドの形状のその他のボタンも設けることができる。ユーザが矢印キーを用いて誘導した動作オプションを選択する、および/またはユーザが数字キーパッドを用いて入力した値を入力する選択または入力ボタンも設けることができる。
【0160】
上述のPDサイクラのドアはPDサイクラの前面に配置されると図示したが、ドアはPDサイクラ上のその他様々な位置に配置することができる。たとえば、ドアは、カセットが略垂直方位の代わりに略水平方位にカセットコンパートメント内に摺動できるようにPDサイクラの上面に配置することができる。
【0161】
上述のPDサイクラのいくつかはドアとカセットインタフェースとの間でカセットを圧縮するためにドアに可膨張性パッドを備えると説明したが、もしくはまたはさらに、PDサイクラはカセットインタフェースの背後に配置される可膨張性パッドを備えることができる。
【0162】
上述のカセットはPDシステムの一部として説明したが、これらの種類のカセットはその他の様々な種類のカセット型医療用流体ポンプシステムにおいても使用することができる。上述のカセットを使用可能な医療用流体ポンプシステムの他の例は、血液透析システム、血液潅流システム、静脈注入システムである。
【0163】
同様に、カセットは透析溶液を送りだすために使用されると説明したが、その他の種類の透析液をカセットを通じて送り出すことができる。一例として、血液透析器と共に使用されるカセットの場合、血液をカセットを通じて送り出すことができる。さらに、食塩水などの呼び水も同様に、上述の様々な異なるシステムおよび手法を用いてカセットを通じて送り出すことができる。同様に、カセットが使用される医療用流体ポンプ機の種類に応じて、透析液の代わりに、その他の様々な種類の医療用流体を上記カセットを通じて送り出すことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用流体ポンプシステムであって、
カセット筐体を画定し、可動ピストンを備える医療用流体ポンプ機と、
前記医療用流体ポンプ機のカセット筐体内に配置されるように構成される医療用流体カセットと、を備え、前記医療用流体カセットが、
ベースと、
前記ベースに装着され、前記ベースの一部と共に流体ポンプ室を画定する膜であって、前記膜が前記可動ピストンに対面して前記膜が前記可動ピストンによって移動することで前記流体ポンプ室の容積を低減するように、前記カセットが前記医療用流体ポンプのカセット筐体内に位置可能である、前記膜と、
前記流体ポンプ室内に配置され、前記膜の内面に外向き力を印加して前記流体ポンプ室の容積を増大させるように構成される部材と、
を備える医療用流体ポンプシステム。
【請求項2】
前記膜と共に前記流体ポンプ室を画定する前記ベースの領域が前記ベースの凹領域である、請求項1に記載の医療用流体ポンプシステム。
【請求項3】
前記膜が前記ベースと共に、前記流体ポンプ室から前記カセットの入口までつながる流路と前記流体ポンプ室から前記カセットの出口までつながる流路とをさらに画定する、請求項1に記載の医療用流体ポンプシステム。
【請求項4】
前記部材が前記カセットの前記ベースに装着される、請求項1に記載の医療用流体ポンプシステム。
【請求項5】
前記部材が、前記ピストンを収容するように構成される凹部を画定する第1の部分を備える、請求項1に記載の医療用流体ポンプシステム。
【請求項6】
前記部材が、前記第1の部分に装着される第2の部分をさらに備え、前記第2の部分が拡張位置と圧縮位置との間で可動である、請求項5に記載の医療用流体ポンプシステム。
【請求項7】
前記第1および第2の部分が一体的に形成される、請求項6に記載の医療用流体ポンプシステム。
【請求項8】
前記第2の部分が前記第1の部分よりも柔軟である、請求項6に記載の医療用流体ポンプシステム。
【請求項9】
前記第2の部分が、前記拡張位置において略カップ状であり、前記圧縮位置において略平面状である、請求項6に記載の医療用流体ポンプシステム。
【請求項10】
前記部材が、第1の部分とこの第1の部分に装着される第2の弾性部とを備え、前記第2の弾性部は拡張位置と圧縮位置との間で弾性的に移動するように構成され、前記第1の部分は、前記第2の弾性部が前記圧縮位置から前記拡張位置に移動する際に前記膜に前記外向き力を印加するように構成されている、請求項1に記載の医療用流体ポンプシステム。
【請求項11】
前記第2の弾性部が前記拡張位置において略カップ状であり、前記圧縮位置において略平面状である、請求項10に記載の医療用流体ポンプシステム。
【請求項12】
前記第2の弾性部が、円周状に間隔をおいて配置される複数の開口部を画定する側壁を有するカップ状部材である、請求項10に記載の医療用流体ポンプシステム。
【請求項13】
前記第1の部分が、前記ピストンを収容するように構成される凹部を画定する、請求項10に記載の医療用流体ポンプシステム。
【請求項14】
前記流体ポンプ室内に配置される前記部材が略平面状のバネである、請求項1に記載の医療用流体ポンプシステム。
【請求項15】
前記略平面状のバネが、前記膜に直接隣接する前記流体ポンプ室の領域に配置される、請求項14に記載の医療用流体ポンプシステム。
【請求項16】
前記略平面状のバネが、ハブ部と、ハブ部から外側に放射状に延在する、円周状に間隔をおいて配置された複数の脚部とを備える、請求項14に記載の医療用流体ポンプシステム。
【請求項17】
前記略平面状のバネが、前記ハブ部と反対側の前記複数の脚部の端から延在する複数の足部をさらに備え、前記複数の足部の少なくとも1つが、該少なくとも1つの足部が装着される脚部の幅よりも大きな幅を有する、請求項16に記載の医療用流体ポンプシステム。
【請求項18】
前記複数の足部の少なくとも1つが、前記ベースの隣接面にほぼ一致する湾曲構造を有する、請求項16に記載の医療用流体ポンプシステム。
【請求項19】
前記略平面状のバネが1つまたはそれ以上の金属で形成される、請求項14に記載の医療用流体ポンプシステム。
【請求項20】
前記カセットの前記ベースと前記カセットの前記流体ポンプ室内に配置される前記部材との間に配置される弾性素子をさらに備え、前記弾性素子が前記部材に力を印加するように構成される、請求項1に記載の医療用流体ポンプシステム。
【請求項21】
前記弾性素子が圧縮後に自己拡張するように構成される、請求項20に記載の医療用流体ポンプシステム。
【請求項22】
前記弾性素子がバネを備える、請求項21に記載の医療用流体ポンプシステム。
【請求項23】
前記弾性素子がエラストマ部材を備える、請求項21に記載の医療用流体ポンプシステム。
【請求項24】
前記医療用流体ポンプ機は、前記カセットが前記カセット筐体内に配置される際に、前記流体ポンプ室内に配置された前記部材に力を印加するように構成された素子を備える、請求項1に記載の医療用流体ポンプシステム。
【請求項25】
前記素子が、圧縮後に自己拡張するように構成された弾性素子である、請求項24に記載の医療用流体ポンプシステム。
【請求項26】
前記素子がバネを備える、請求項24に記載の医療用流体ポンプシステム。
【請求項27】
前記素子がバネ荷重ピストンを備える、請求項24に記載の医療用流体ポンプシステム。
【請求項28】
前記部材が、前記カセットの前記ベースの開口部内に配置されるステム部を有する、請求項24に記載の医療用流体ポンプシステム。
【請求項29】
前記カセットが前記カセット筐体内に配置される際に前記素子が前記ステム部と当接する、請求項28に記載の医療用流体ポンプシステム。
【請求項30】
前記ステム部を囲むOリングをさらに備え、前記Oリングが前記ステム部と前記ステム部を配置する前記開口部を画定する前記ベースの一部との間で圧縮される、請求項29に記載の医療用流体ポンプシステム。
【請求項31】
前記カセットが、前記ベースに固定されるとともに、前記ベースによって画定される前記開口部上に配置されるシールをさらに備える、請求項28に記載の医療用流体ポンプシステム。
【請求項32】
前記カセットが前記カセット筐体内に配置される際に前記素子が前記シールに当接し、前記シールは、前記シールを介して前記素子から前記部材の前記ステム部に力を伝達することができるように変形可能である、請求項31に記載の医療用流体ポンプシステム。
【請求項33】
前記シールは、前記力が前記ステム部に伝達される際に流体が前記開口部を介して前記カセットから出るのを防ぐように構成されている、請求項32に記載の医療用流体ポンプシステム。
【請求項34】
前記部材は、前記膜に外向き力を印加することによって、前記流体ポンプ室内に約150mbar〜約200mbarの真空圧を生成するように構成される、請求項1に記載の医療用流体ポンプシステム。
【請求項35】
前記部材は、前記膜に最大約250Nの外向き力を印加するように構成される、請求項1に記載の医療用流体ポンプシステム。
【請求項36】
前記部材は、前記膜に約20N〜約100Nの外向き力を印加するように構成される、請求項35に記載の医療用流体ポンプシステム。
【請求項37】
前記医療用流体ポンプ機が第1および第2の可動ピストンを備え、前記膜と前記ベースの領域とが協働して第1および第2の流体ポンプ室を画定し、前記膜が前記第1および第2の可動ピストンに対面して前記膜が前記第1および第2の可動ピストンによって移動することで前記第1および第2の流体ポンプ室の容積を低減するように、前記カセットが前記医療用流体ポンプ機の前記カセット筐体内に位置可能であり、前記第1および第2の流体ポンプ室内にはそれぞれ第1および第2の部材が配置され、前記第1および第2の部材が、前記膜の内面に外向き力を印加して前記第1および第2の流体ポンプ室の容積を増大するように構成されている、請求項1に記載の医療用流体ポンプシステム。
【請求項38】
前記医療用流体ポンプ機が、第1の端部領域と第2の端部領域とを有するロッドを備え、前記ロッドは、前記第1の端部領域が前記第1の流体ポンプ室に配置される前記第1の部材に力を印加し、前記第2の端部領域が前記第2の流体ポンプ室に配置される前記第2の部材に力を印加するように構成される、請求項37に記載の医療用流体ポンプシステム。
【請求項39】
前記第1の端部領域が前記第1の部材に力を印加して前記第1の部材から前記膜に外向き力が印加されると前記第2の端部領域が前記第2の部材から遠ざかり、前記第2の端部領域が前記第2の部材に力を印加して前記第2の部材から前記膜に外向き力が印加されると前記第1の端部領域が前記第1の部材から遠ざかるように、前記ロッドが中央旋回点を中心として旋回可能である、請求項38に記載の医療用流体ポンプシステム。
【請求項40】
前記ロッドは、前記第1および第2の可動ピストンによって前記ロッドに力が伝達されるように構成されているとともに、前記ロッドは、前記第1の可動ピストンが前記ロッドの第1の端部領域に力を印加すると前記ロッドが旋回して前記ロッドの第2の端部領域が前記第2の可動ピストンに力を印加し、前記第2の可動ピストンが前記ロッドの第2の端部領域に力を印加すると前記ロッドが旋回して前記ロッドの第1の端部領域が前記第1の可動ピストンに力を印加するように構成されている、請求項39に記載の医療用流体ポンプシステム。
【請求項41】
前記カセットの前記ベースが成形トレイ状ベースである、請求項1に記載の医療用流体ポンプシステム。
【請求項42】
前記膜が前記トレイ状ベースの外周領域にのみ装着される、請求項41に記載の医療用流体ポンプシステム。
【請求項43】
前記ベースが、平面と、この平面から延在する複数の隆起特徴とを備え、前記膜が前記ベースに対して押圧される際、前記複数の隆起特徴が前記膜の内面に当接する、請求項42に記載の医療用流体ポンプシステム。
【請求項44】
前記膜が前記ベースに対して押圧されると、前記複数の隆起特徴の少なくとも1つが前記膜と共に前記流体ポンプ室を形成する、請求項43に記載の医療用流体ポンプシステム。
【請求項45】
前記膜が前記ベースに対して押圧されると、前記複数の隆起特徴の少なくともいくつかが前記膜と共に、前記流体ポンプ室と流体連通する流体経路を形成する、請求項44に記載の医療用流体ポンプシステム。
【請求項46】
前記医療用流体ポンプシステムが透析システムである、請求項1に記載の医療用流体ポンプシステム。
【請求項47】
前記医療用流体ポンプシステムが腹膜透析システムである、請求項46に記載の医療用流体ポンプシステム。
【請求項48】
前記医療用流体カセットが使い捨て可能である、請求項1に記載の医療用流体ポンプシステム。
【請求項49】
医療用流体カセットであって、
ベースと、
前記ベースに装着され、前記ベースの領域と共に流体ポンプ室を画定する膜と、
前記流体ポンプ室内に配置され、前記膜の内面に外向き力を印加して前記流体ポンプ室の容積を増大させるように構成された部材と、
を備える医療用流体カセット。
【請求項50】
前記膜と共に前記流体ポンプ室を画定する前記ベースの領域が前記ベースの凹領域である、請求項49に記載の医療用流体カセット。
【請求項51】
前記膜が前記ベースと共に、前記流体ポンプ室から前記カセットの入口までつながる流路と、前記流体ポンプ室から前記カセットの出口までつながる流路とをさらに画定する、請求項49に記載の医療用流体カセット。
【請求項52】
前記部材が前記カセットの前記ベースに装着される、請求項49に記載の医療用流体カセット。
【請求項53】
前記部材が、医療用流体ポンプ機のピストンを収容するように構成される凹部を画定する第1の部分を備える、請求項49に記載の医療用流体カセット。
【請求項54】
前記部材が、前記第1の部分に装着される第2の部分をさらに備え、前記第2の部分が拡張位置と圧縮位置との間で移動可能である、請求項53に記載の医療用流体カセット。
【請求項55】
前記第1および第2の部分が一体的に形成される、請求項54に記載の医療用流体カセット。
【請求項56】
前記第2の部分が前記第1の部分よりも柔軟である、請求項54に記載の医療用流体カセット。
【請求項57】
前記第2の部分が、前記拡張位置において略カップ状であり、前記圧縮位置において略平面状である、請求項54に記載の医療用流体カセット。
【請求項58】
前記部材が、第1の部分とこの第1の部分に装着される第2の弾性部とを備え、前記第2の弾性部は拡張位置と圧縮位置との間で弾性的に移動するように構成され、前記第1の部分は、前記第2の弾性部が前記圧縮位置から前記拡張位置に移動する際に前記膜に前記外向き力を印加するように構成されている、請求項49に記載の医療用流体カセット。
【請求項59】
前記第2の弾性部が、前記拡張位置において略カップ状であり、前記圧縮位置において略平面状である、請求項58に記載の医療用流体カセット。
【請求項60】
前記第2の弾性部が、円周状に間隔をおいて配置される複数の開口部を画定する側壁を有するカップ状部材である、請求項58に記載の医療用流体カセット。
【請求項61】
前記第1の部分が、医療用流体ポンプ機のピストンを収容するように構成される凹部を画定する、請求項58に記載の医療用流体カセット。
【請求項62】
前記カセットの前記ベースと前記カセットの前記流体ポンプ室内に配置される前記部材との間に位置する弾性素子をさらに備え、前記弾性素子が前記部材に力を印加するように構成される、請求項49に記載の医療用流体カセット。
【請求項63】
前記弾性素子が圧縮後に自己拡張するように構成される、請求項62に記載の医療用流体カセット。
【請求項64】
前記弾性素子がバネを備える、請求項63に記載の医療用流体カセット。
【請求項65】
前記弾性素子がエラストマ部材を備える、請求項63に記載の医療用流体カセット。
【請求項66】
前記部材が、前記カセットの前記ベースの開口部内に配置されるステム部を有する、請求項49に記載の医療用流体カセット。
【請求項67】
前記ステム部を囲むOリングをさらに備え、前記Oリングが前記ステム部と前記ステム部を配置する前記開口部を画定する前記ベースの一部との間で圧縮される、請求項66に記載の医療用流体カセット。
【請求項68】
前記カセットが、前記ベースに固定されるとともに、前記ベースによって画定される前記開口部上に配置されるシールをさらに備える、請求項66に記載の医療用流体カセット。
【請求項69】
前記シールは、前記シールを介して前記部材の前記ステム部に力を伝達することができるように変形可能である、請求項68に記載の医療用流体カセット。
【請求項70】
前記シールは、前記力が前記ステム部に伝達される際に流体が前記開口部を介して前記カセットから出るのを防ぐように構成されている、請求項69に記載の医療用流体カセット。
【請求項71】
前記部材は、前記膜に外向き力を印加することによって、前記流体ポンプ室内に約150mbar〜約200mbarの真空圧を生成するように構成される、請求項49に記載の医療用流体カセット。
【請求項72】
前記部材は、前記膜に最大約250Nの外向き力を印加するように構成される、請求項49に記載の医療用流体カセット。
【請求項73】
前記部材は、前記膜に約20N〜約100Nの外向き力を印加するように構成される、請求項72に記載の医療用流体カセット。
【請求項74】
前記膜と前記ベースの領域とが協働して第1および第2の流体ポンプ室を画定し、前記第1および第2の流体ポンプ室内には第1および第2の部材がそれぞれ配置され、前記第1および第2の部材が、前記膜の内面に外向き力を印加して前記第1および第2の流体ポンプ室の容積を増大させるように構成されている、請求項49に記載の医療用流体カセット。
【請求項75】
前記カセットの前記ベースが成形トレイ状ベースである、請求項49に記載の医療用流体カセット。
【請求項76】
前記膜が前記トレイ状ベースの外周領域にのみ装着される、請求項75に記載の医療用流体カセット。
【請求項77】
前記ベースが、平面と、この平面から延在する複数の隆起特徴とを備え、前記膜が前記ベースに対して押圧される際、前記複数の隆起特徴が前記膜の内面に当接する、請求項76に記載の医療用流体カセット。
【請求項78】
前記膜が前記ベースに対して押圧されると、前記複数の隆起特徴の少なくとも1つが前記膜と共に前記流体ポンプ室を形成する、請求項77に記載の医療用流体カセット。
【請求項79】
前記膜が前記ベースに対して押圧されると、前記複数の隆起特徴の少なくともいくつかが前記膜と共に、前記流体ポンプ室と流体連通する流体経路を形成する、請求項78に記載の医療用流体カセット。
【請求項80】
前記医療用流体カセットが透析カセットである、請求項49に記載の医療用流体カセット。
【請求項81】
前記医療用流体カセットが腹膜透析カセットである、請求項80に記載の医療用流体カセット。
【請求項82】
前記医療用流体カセットが使い捨て可能である、請求項49に記載の医療用流体カセット。
【請求項83】
医療用流体送達方法であって、
流体ポンプ室を覆う膜の部分の内面に外向き力を印加することによって、前記膜と医療用流体カセットの剛体ベースとの間に画定される前記流体ポンプ室に医療用流体を引き込むことを備える医療用流体送達方法。
【請求項84】
前記流体ポンプ室を覆う前記膜の部分の外面に内向き力を印加することによって、前記医療用流体を前記流体ポンプ室から排出させることをさらに備える請求項83に記載の医療用流体送達方法。
【請求項85】
前記外向き力が、前記流体ポンプ室に配置される部材によって前記膜に印加される、請求項83に記載の医療用流体送達方法。
【請求項86】
前記部材が、圧縮後に自己拡張するように構成される弾性部材である、請求項85に記載の医療用流体送達方法。
【請求項87】
前記流体ポンプ室を覆う前記膜の部分の内面に前記外向き力を印加することによって、約150mbar〜約200mbarの真空圧が前記流体ポンプ室内に生成される、請求項83に記載の医療用流体送達方法。
【請求項88】
約20N〜約100Nの外向き力が前記膜に印加される、請求項83に記載の医療用流体送達方法。
【請求項89】
前記医療用流体が透析溶液を備える、請求項83に記載の医療用流体送達方法。
【請求項90】
医療用流体ポンプシステムであって、
カセット筐体を画定し、可動ピストンを備える医療用流体ポンプ機と、
前記医療用流体ポンプ機のカセット筐体内に配置されるように構成される医療用流体カセットと、を備え、前記医療用流体カセットが、
凹部を画定するベースと、
前記ベースの凹部内に配置され、前記ベースとの間に流体ポンプ室を画定する部材と、を備え、
前記可動ピストンが前進して前記流体ポンプ室から流体を追い出すことによって前記部材を圧縮することができるように、前記カセットが前記医療用流体ポンプ機の前記カセット筐体内に位置可能であり、前記部材は、前記可動ピストンが前記部材から後退して前記流体ポンプ室に流体を引き込む際に自己拡張するように構成されている、医療用流体ポンプシステム。
【請求項91】
前記ベースに装着される膜をさらに備える請求項90に記載の医療用流体ポンプシステム。
【請求項92】
前記膜の一部が前記ピストンと前記部材との間に配置されるように当該膜の一部が前記ベースの前記凹部を覆う、請求項91に記載の医療用流体ポンプシステム。
【請求項93】
前記カセットが前記医療用流体ポンプ機の前記カセット筐体内に位置して前記ピストンが前進するとき前記ピストンが前記部材に直接当接するように、前記膜は、前記ベースの前記凹部と整列する開口部を画定する、請求項91に記載の医療用流体ポンプシステム。
【請求項94】
前記部材が略ドーム状部材である、請求項90に記載の医療用流体ポンプシステム。
【請求項95】
前記略ドーム状部材は、前記カセットが前記医療用流体ポンプ機の前記カセット筐体内に位置して前記ピストンが前進するとき前記ピストンと当接する面を有し、前記面が略平坦である、請求項94に記載の医療用流体ポンプシステム。
【請求項96】
前記凹部が略円柱状である、請求項94に記載の医療用流体ポンプシステム。
【請求項97】
前記部材が弾性高分子材料で形成される、請求項90に記載の医療用流体ポンプシステム。
【請求項98】
前記部材がポリウレタンで形成される、請求項97に記載の医療用流体ポンプシステム。
【請求項99】
前記部材が前記ベースに液密に固定される、請求項90に記載の医療用流体ポンプシステム。
【請求項100】
前記部材が、前記凹部を画定する前記ベースの表面に押圧されて液密シールを生成するフランジを含む、請求項99に記載の医療用流体ポンプシステム。
【請求項101】
前記ベースは、前記流体ポンプ室に隣接する前記ベースの表面に画定されるポートまで延在する流体通路を画定し、前記流体通路および前記ポートを介して流体が前記流体ポンプ室まで至ることが可能な請求項90に記載の医療用流体ポンプシステム。
【請求項102】
前記流体通路が前記凹部の長軸に略平行に延在する、請求項101に記載の医療用流体ポンプシステム。
【請求項103】
前記部材の下にある前記ベースの部分が、前記ポートと流体連通する流路を画定する、請求項101に記載の医療用流体ポンプシステム。
【請求項104】
前記部材は、自己拡張する際、前記流体ポンプ室内に約150mbar〜約200mbarの真空圧を生成するように構成される、請求項90に記載の医療用流体ポンプシステム。
【請求項105】
医療用流体カセットであって、
凹部を画定するベースと、
前記ベースの凹部内に配置され、前記ベースとの間に流体ポンプ室を画定する部材であって、自己拡張可能な部材と、を備え、
前記部材は、圧縮されて流体を前記流体ポンプ室から追い出した後、自己拡張して流体を前記流体ポンプ室に引き込むことが可能である、医療用流体カセット。
【請求項106】
前記ベースに装着される膜をさらに備える請求項105に記載の医療用流体カセット。
【請求項107】
前記膜の一部が前記ベースの凹部を覆う、請求項106に記載の医療用流体カセット。
【請求項108】
前記凹部内に配置された前記部材が露出されるように、前記膜が、前記ベースの前記凹部と整列する開口部を画定する、請求項106に記載の医療用流体カセット。
【請求項109】
前記部材が略ドーム状部材である、請求項105に記載の医療用流体カセット。
【請求項110】
前記略ドーム状部材が、前記凹部の開口部に対面する略平坦面を有する、請求項109に記載の医療用流体カセット。
【請求項111】
前記凹部が略円柱状である、請求項109に記載の医療用流体カセット。
【請求項112】
前記部材が弾性高分子材料で形成される、請求項105に記載の医療用流体カセット。
【請求項113】
前記部材がポリウレタンで形成される、請求項112に記載の医療用流体カセット。
【請求項114】
前記部材が前記ベースに液密に固定される、請求項105に記載の医療用流体カセット。
【請求項115】
前記部材が、前記凹部を画定する前記ベースの表面に押圧されて液密シールを生成するフランジを備える、請求項114に記載の医療用流体カセット。
【請求項116】
前記ベースは、前記流体ポンプ室に隣接する前記ベースの表面に画定されるポートまで延在する流体通路を画定し、前記流体通路および前記ポートを介して流体が前記流体ポンプ室まで至ることが可能な請求項105に記載の医療用流体カセット。
【請求項117】
前記通路が前記凹部の長軸に略平行に延在する、請求項116に記載の医療用流体カセット。
【請求項118】
前記部材の下にある前記ベースの部分が前記ポートと流体連通する流路を画定する、請求項116に記載の医療用流体カセット。
【請求項119】
前記部材は、自己拡張する際、前記流体ポンプ室内に約150mbar〜約200mbarの真空圧を生成するように構成される、請求項105に記載の医療用流体カセット。
【請求項120】
医療用流体送達方法であって、
自己拡張部材に圧縮力を印加した後、前記自己拡張部材を自己拡張させることによって、前記自己拡張部材と医療用流体カセットの剛体ベースとの間に画定される流体ポンプ室に医療用流体を引きこむことを備える医療用流体送達方法。
【請求項121】
前記医療用流体が透析液である、請求項120に記載の医療用流体送達方法。
【請求項122】
前記自己拡張部材に圧縮力を印加することで、前記流体ポンプ室から医療用流体が排出される、請求項120に記載の医療用流体送達方法。
【請求項123】
前記自己拡張部材に圧縮力を印加することが、前記部材を覆う膜の部分の外面に内向き力を印加することを備える、請求項122に記載の医療用流体送達方法。
【請求項124】
前記自己拡張部材の拡張によって、前記流体ポンプ室内に約150mbar〜約200mbarの真空圧が生成される、請求項120に記載の医療用流体送達方法。
【請求項125】
前記ポンプ室内に配置される前記部材が、環状リングと前記環状リングから内側に放射状に延在する円周状に間隔をおいて配置された複数の脚部とを有するバネを備える、請求項1に記載の医療用流体ポンプシステム。
【請求項126】
前記環状リングが、ピストンヘッドを収容するように構成される中央開口部を画定する、請求項125に記載の医療用流体ポンプシステム。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図14】
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【図15】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21A】
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【図21B】
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【図22】
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【図23A】
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【図23B】
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【図24】
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【図25A】
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【図25B】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30A】
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【図30B】
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【図31】
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【図1】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【公表番号】特表2012−533357(P2012−533357A)
【公表日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−520749(P2012−520749)
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【国際出願番号】PCT/US2010/041976
【国際公開番号】WO2011/008858
【国際公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(505324858)フレゼニウス メディカル ケア ホールディングス インコーポレーテッド (30)
【氏名又は名称原語表記】Fresenius Medical Care Holdings,Inc.
【Fターム(参考)】