説明

医療用経皮吸収テープ製剤用非水性粘着剤並びに医療用経皮吸収テープ製剤およびその製造法

(a)支持体、(b)薬剤及び非水性粘着剤を含む粘着剤層、及び(c)剥離フィルムが順次積層されてなる医療用経皮吸収テープ製剤に用いる非水性粘着剤及びそれを用いた医療用経皮吸収テープ製剤に関する。非水性粘着剤として、分子内にアセトアセチル基を有する(メタ)アクリル系モノマー(好ましくは2−アセトアセトキシエチルメタクリレート)と、アセトアセチル基を有しないその他の(メタ)アクリル系モノマー又は共重合可能なビニルモノマーの1種又は2種以上のモノマーとを共重合して得られる共重合体を、非水性溶媒中に含むものを用いる。本発明の共重合体の非水性粘着剤は可塑剤等の油状物質を含むことが可能であり、また架橋剤を使用する必要がない。そして、本発明の医療用経皮吸収テープ製剤は、貼着力、凝集力が優れ、かつ皮膚への刺激性も少なく安全性に優れ、また薬物の放出性、経皮吸収性にも優れるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアセトアセチル基を分子内に含む(メタ)アクリル系モノマーと、アセトアセチル基を有さない他の(メタ)アクリル系モノマーおよび共重合可能なビニルモノマーから選ばれる1種または2種以上のモノマーとを共重合させて得られる共重合体を、非水性溶媒中に含む医療用経皮吸収テープ製剤用の非水性粘着剤と、該非水性粘着剤を薬剤及び可塑剤とともに支持体または剥離フィルムの上面に塗布し、加熱乾燥して粘着剤層を形成した後、さらに粘着剤層の上に剥離フィルムまたは支持体を積層して製造した医療用経皮吸収テープ製剤とその製造法に関する。本発明の医療用経皮吸収テープ製剤は、製剤からの薬物の放出性と薬物の皮膚透過性に優れ、皮膚刺激性が少なく、かつ安定性に優れた経皮吸収テープ製剤である。
【背景技術】
【0002】
アセトアセトキシアルキルメタクリレートと他のモノマーとを重合して得られる共重合体を、ポリアミン化合物やイソシアネート化合物などの架橋剤で架橋された塗料、被覆剤、感圧接着剤は知られていた。(例えば、特許文献1および特許文献2を参照)しかしながら、医療用経皮吸収テープ製剤に用いられる粘着剤として、アセトアセチル基を有する(メタ)アクリル系モノマーと、他の(メタ)アクリル系モノマーおよび共重合可能なビニルモノマーから選ばれる1種または2種以上のモノマーとを共重合させて得られる共重合体からなる非水性粘着剤を用いた特許文献および非特許文献は見いだせない。
【0003】
薬剤と可塑剤を粘着剤層中に含み、実質的にケトン基を含む粘着剤をポリアミンの架橋剤で架橋した経皮吸収テープ製剤は知られていた。(例えば、特許文献3を参照)しかしながら、アセトアセチル基を有する共重合体を含む粘着剤の経皮吸収テープ製剤の例示はされていない。
【0004】
冠血管拡張薬のイソソルビドジニトレートと、脂肪酸エステル類を、アクリル酸アルキルエステルおよび官能性単量体を必須成分とするアクリル系共重合体からなる架橋された粘着剤中に含有する経皮吸収性製剤は知られていた。(例えば、特許文献4を参照)しかしながら、この経皮吸収製剤は架橋剤を用いたものであり、架橋しないものは粘着剤層に凝集力がなくなり経皮吸収製剤として用いることができないことが記載されている。また、特許文献3および特許文献4にもアセトアセチル基を有する共重合体を含む粘着剤の経皮吸収テープ製剤の例示もされていない。
【0005】
【特許文献1】特開平6−108033号公報
【特許文献2】特開平7−238203号公報
【特許文献3】特表2002−535475号公報
【特許文献4】特開平8−81369号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、支持体上に薬物を含む粘着剤層を形成し、さらにその上に剥離ライナーを積層した医療用経皮吸収テープ製剤において、粘着剤層中に親油性油状物質を多量に含ませることが可能であり、接着性、凝集性、安定性に優れた製剤と、その製剤のための非水性粘着剤を提供することにある。
【0007】
医療用経皮吸収テープ製剤の粘着剤層には薬物のほかに、薬物を溶解させるための溶媒、薬物の経皮吸収速度を促進させるための経皮吸収促進剤、粘着剤の可塑性を向上するための可塑剤、または粘着力の向上のために粘着付与剤などを配合する場合もあり、場合によってはかなりの量を配合する必要が生じることがある。粘着剤層中に薬物とともに配合する薬物の溶解剤、経皮吸収促進剤、可塑剤および粘着付与剤は親油性の油状物質である場合が多い。
【0008】
従来の非架橋性の粘着剤を用いた経皮吸収テープ製剤では、多量の油状物質を保持させることができず、多量の油状物を含むような場合テープ製剤とすることができなかったり、または製剤作製後に粘着剤層から油状物質が分離するなどして、粘着剤層中への油状物質の配合量に制限があるなどの問題点があった。
【0009】
この問題点を解決するため官能基を有するモノマーを重合させた粘着剤に、ポリアミン化合物、イソシアネート化合物、または多価金属キレート化合物などの架橋剤によって架橋を施したテープ製剤も検討されてきた。しかしながら、これらの架橋剤は、毒性のある化合物であったり、配合する薬物によっては影響を及ぼすこともあり、使用するのに制限を受けることがありまたは使用する量に制限を受けることがある。
【0010】
また、架橋剤を用いない自己架橋型粘着剤としては、N−メチロールアクリルアミドを構成モノマーとして含有する粘着剤が知られているが、有害物質のホルムアルデヒドが徐々に遊離するので、医療用の粘着テープとしては好ましくない。
【0011】
また、アセトアセチル基を有するモノマーを構成モノマーとして含む共重合体で、塗料、被覆剤または接着剤としての用途が知られていたが、いずれも、ポリアミン誘導体、イソシアネート化合物、および多価金属キレート化合物のような架橋剤を用いて架橋したものであり、医療用経皮吸収テープ製剤としての用途は知られていなかった。また、これらの架橋剤は毒性や使用する薬物の種類によっては使用することができないなどの問題点がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そこで、本発明者らは上記課題を解決するために研究を重ねた結果、分子内にアセトアセチル基を有する(メタ)アクリル系モノマーと、アセトアセチル基を有さない他の(メタ)アクリル系モノマーおよび共重合可能なビニルモノマーから選ばれる1種または2種以上のモノマーとを共重合して得られる共重合体を非水性溶媒中に含む非水性粘着剤を用いることにより、可塑剤などの油状物質を多量に保持させることができることが可能になることを知った。
【0013】
本発明に用いられる、アセトアセチル基を有する(メタ)アクリル系モノマーと、アセトアセチル基を有さない他の(メタ)アクリル系モノマーおよび共重合可能なビニルモノマーから選ばれる1種または2種以上のビニルモノマーとを共重合して得られる共重合体を非水性溶媒中に含む本発明の医療用経皮吸収テープ製剤用の非水性粘着剤は、薬物および可塑剤とともに、支持体または剥離フィルムに塗布して加熱乾燥する工程において、溶媒が蒸散するとともにアセトアセチル基が自己架橋して網目構造を形成して、この網目構造中に可塑剤などの油状物質を保持させることが可能となる。
【0014】
原料のアセトアセチル基を有する(メタ)アクリル系モノマーの量を増減させることにより、粘着剤の自己架橋度を変化させることができる。その結果粘着剤層中に可塑剤、経皮吸収促進剤、薬物の溶解剤などの親油性油状物質の配合量を調整することが可能となり、粘着剤と可塑剤や経皮吸収促進剤との配合比を調整することにより、適度な貼着力、凝集力を持たせることができ、安定な経皮吸収テープ製剤を得ることができることを見出し本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0015】
本発明のアセトアセチル基を有する(メタ)アクリル系モノマーを構成モノマーの一つとして含む共重合体の非水性粘着剤は加熱乾燥する工程において、溶媒が蒸散するとともにアセトアセチル基が自己架橋して網目構造を形成して、この網目構造中に可塑剤等の油状物質を多く含むことができる。本発明の粘着剤は、架橋剤として、ポリアミン誘導体、イソシアネート化合物および多価金属キレート化合物等を使用しないので、毒性の心配が無く、また皮膚を刺激したりすることがないので、医療用に適している。本発明の医療用経皮吸収テープ製剤は貼着力、凝集力が優れ、かつ皮膚刺激性も少なく安全性に優れている。また、薬物の放出性、経皮吸収性にも優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の医療用経皮吸収テープ製剤用の非水性粘着剤は、同じ分子中にアセトアセチル基を有する(メタ)アクリル系モノマーと、アセトアセチル基を有さない(メタ)アクリル系モノマーおよび共重合可能なビニルモノマーから選択される1種または2種以上のモノマーとを非水性溶媒中で共重合して得ることができる。
【0017】
アセトアセチル基を有する(メタ)アクリル系モノマーとしては、2−アセトアセトキシエチルメタクリレート、2−アセトアセトキシエチルアクリレート、3−アセトアセトキシプロピルメタクリレート、3−アセトアセトキシプロピルアクリレート、4−アセトアセトキシブチルメタクリレート、4−アセトアセトキシブチルアクリレートなどのアセトアセトキシアルキルメタクリレートまたはアセトアセトキシアルキルアクリレート類を挙げることができ、この中から1種または2種以上を用いることができるが、2−アセトアセトキシエチルメタクリレートまたは2−アセトアセトキシエチルアクリレートを用いることが好ましい。
【0018】
アセトアセチル基を有さない他の(メタ)アクリル系モノマーとしては、分子中に共重合可能な二重結合を有する(メタ)アクリル系モノマーであればよく、1種または2種以上の(メタ)アクリル系モノマーを用いることができる。具体的には、例えば2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ジアセトンアクリルアミド、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ヘキサエチレングリコールジメタクリレート、ヘキサエチレングリコールジアクリレート、メチルメタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、2−ヒドロキシエチルアクリレートおよびアクリル酸からなる群から選ばれる1種または2種以上の(メタ)アクリル系モノマーを用いることができ、好適には2−エチルヘキシルアクリレート、ジアセトンアクリルアミド、ブチルアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレートおよびメチルメタクリレートからなる群から選ばれる1種または2種以上のアクリル系モノマーを用いることが好ましい。
【0019】
またアセトアセチル基を有するモノマーと共重合する他のビニル化合物としては分子内に共重合可能なビニル基があればよく、例えばN−ビニル−2−ピロリドン、酢酸ビニルなどのビニル誘導体をあげることができる。
【0020】
本発明の非水性粘着剤に用いられる共重合体において、アセトアセチル基を有するモノマーの含量は、共重合体の総重量に対して、1重量%〜40重量%であればよく、さらに好適には5重量%〜40重量%であることがさらに好ましい。その割合が1重量%より少ないと、油状物質の保持能力および凝集力が低下するため好ましくなく、また40重量%を越えると、網目構造が密になりすぎるために、可塑剤などの保持能力が低下するので好ましくない。
【0021】
本発明の医療用経皮吸収テープ製剤用の非水性粘着剤の溶媒としては、本発明の医療用経皮吸収テープ製剤の製造工程中の加熱乾燥工程で揮散する有機溶媒であれば用いることができる。そのような溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルなどの酢酸エステル類、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類などの有機溶媒をあげることができ、その中から1種または2種以上の溶媒を単独で、または混合して用いることもできる。
【0022】
本発明の非水性粘着剤は、当該技術分野で周知な方法で製造することができる。具体的には、有機溶剤中にモノマー類を溶解させラジカル開始剤にて重合する方法がもっとも好ましい。
【0023】
あらかじめ所定の有機溶剤に全量のモノマー類を溶解し、窒素置換後、加熱により重合することも、またモノマー類を分割して逐次溶剤中に投入して重合を行なうことも可能である。この際、有機溶剤中のモノマー濃度は、10重量%〜80重量%が好ましい。この濃度が10重量%未満では、高重合度が得られにくく、80重量%を超えると、重合中に生ずる重合熱の制御が難しくなるため好ましくない。重合に使用される有機溶剤は先にあげた有機溶剤の群から選ばれた1種または2種以上の溶剤を単独で、または混合して用いてもよい。さらには、重合中に同種あるいは別種の溶剤を逐次投入することも可能である。
【0024】
本発明で使用されるラジカル開始剤は、過酸化物、アゾ系開始剤などから選ばれた化合物又はそれらの混合物が使用でき、その使用量は単量体100重量部に対して、0.001重量部〜2.00重量部が好ましく、より好ましくは、0.005重量部〜0.1重量部である。
【0025】
具体的な過酸化物としては、過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキシド、tertブチルハイドロパーオキシド、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、1,1′−ジ−tertブチル−パーオキシ−2−メチルシクロヘキサンなどが挙げられる。また、具体的なアゾ系開始剤としては、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、4,4′−アゾビス−4−シアノ吉草酸、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩などが挙げられる。
【0026】
重合温度は、ラジカル開始剤が適度のラジカルを発生する温度であれば良く、一般的には50℃〜120℃が好ましい。
【0027】
本発明の非水性粘着剤の残存モノマーの量は、皮膚への刺激性、および薬剤の安定性のためできる限り少なくすることが好ましく、粘着剤固形分に対して20000ppm以下が好ましい。残存モノマーを低減するために、例えば、重合が完結した後にラジカル開始剤を追加したり、あるいは加圧状態でより高温での処理などを施すことも可能である。
【0028】
本発明粘着剤の共重合体の分子量が大きくなれば粘着性が劣る結果となり、また分子量が小さくなれば凝集力が劣る結果となる。共重合体の分子量は、重量平均分子量で数万〜数百万の分子量であればよい。
【0029】
本発明粘着剤の共重合体のガラス転移温度(以下Tgという)も、粘着剤の粘着力、凝集力に与える影響が大きく、Tgが高くなれば粘着剤が硬くなる傾向を示し、低くなれば柔らかくなる傾向にあるため、共重合体のTgは−60℃〜−5℃の範囲にあることが好ましい。さらに好ましくは−50℃〜−10℃である。−60℃未満であると可塑剤を添加した場合に粘着剤の凝集力が弱くなりすぎ、一方−5℃を越えたTgでは、可塑剤を大量に添加しても粘着力を発現させにくくなる。
【0030】
一般にガラス転移点は、DSC装置による測定や粘弾性の測定などで得ることができる。また、ホモポリマーのガラス転移点から下記式1によって計算によって導いても良い。

(式中、Wiは、i成分の単量体の重量分率(%)、Tgiは、i成分のホモポリマーのガラス転移点(°K)を表す。)
【0031】
本発明の医療用経皮吸収テープ製剤の粘着剤層に配合する可塑剤としては、一般的に高沸点を有する油状物を用いることができる。例えば、ミリスチン酸イソプロピル、セバシン酸ジエチル、アジピン酸ジイソプロピル、オレイン酸エチル、パルミチン酸イソプロピル、ラウリン酸エチル、パルミチン酸オクチル、ミリスチン酸イソトリデシル、中鎖脂肪酸トリグリセリドなどのような脂肪酸エステル誘導体;ヘキシルデカノール、オクチルドデカノールのような高級アルコール誘導体;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールのようなポリアルキレングリコール類;オリーブ油、ヒマシ油、などのような油脂類を用いることができる。これらは単独でまたは2種以上のものを混合して用いることもできるが、なかでもミリスチン酸イソプロピル、またはパルミチン酸イソプロピルが、粘着剤の可塑剤として働くとともに、テープ製剤中での薬物の拡散性の促進効果と、薬物の皮膚透過性を促進させる作用があることから最も好適に用いられる。可塑剤の配合量は粘着剤層の総重量に対して、50重量%以下であることが好ましく、またさらに好ましくは10重量%〜40重量%である。可塑剤の配合量が50重量%を越えると粘着剤層中に保持することができず、粘着剤層から油状物がもれ出るブリーディングが起こるので好ましくない。
【0032】
本発明の医療用経皮吸収テープ製剤の粘着剤層には、非水性粘着剤のほかに経皮吸収性の薬剤と可塑剤を含み、本発明の粘着剤のみでも適度な粘着力が得られるが、さらに強い粘着力が所望の場合は、粘着剤層中に粘着付与剤を配合して粘着力をあげることも可能であり、粘着付与剤としては、例えば、脂環式飽和炭化水素樹脂やロジンエステル誘導体が好適に用いられる。脂環式飽和炭化水素としてはアルコンP−100(商品名;荒川化学工業製)などがあり、またロジンエステル誘導体としてはエステルガムH(商品名;荒川化学工業製)などがあり、それらの1種または2種以上を混合して用いることも可能である。
【0033】
本発明の経皮吸収テープ製剤に配合する薬物は、特に限定されるものではなく、その治療目的に応じて任意に選択することができ、例えばステロイドホルモン、非ステロイド鎮痛抗炎症剤、精神安定剤、抗高血圧薬、虚血性心疾患治療薬、抗ヒスタミン薬、抗喘息薬、抗パーキンソン薬、脳循環改善薬、制吐剤、抗うつ薬、抗痴呆薬、シェーグレン症候群治療薬、抗不整脈薬、抗凝固薬、抗痛風薬、抗真菌薬、麻薬性鎮痛薬、ベータ遮断薬、β1作動薬、β2作動薬、抗腫瘍薬、利尿薬、抗血栓薬、ヒスタミンH1レセプター拮抗薬、ヒスタミンH2レセプター拮抗薬、抗アレルギー薬、セロトニンレセプター拮抗薬、抗高コレステロール薬および禁煙補助剤などの種々の薬物であって、皮膚面上に滞留するものではなく、皮下若しくは血中まで浸透して局所作用若しくは全身作用を発揮する経皮吸収可能な薬物であれば使用することができる。これらの薬物は必要に応じては2種以上の薬物を併用することも可能である。またこれらの薬物の配合量は、薬物の種類、薬効、および投与目的によって適宜設定することができる。
【0034】
本発明の経皮吸収テープ製剤の粘着剤層中に配合する、上記の薬物、粘着剤および可塑剤以外に、必要に応じて薬物の溶解剤、経皮吸収促進剤、その他の賦形剤などを配合することも可能である。
【0035】
薬物の溶解剤としては、薬剤を溶解する溶媒であって、皮膚刺激性のない溶媒であれば使用することができる。具体的にはエタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの低級アルコール類、ヘキサノール、オクタノールなどの中級アルコール、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコールなどの多価アルコール類、脂肪酸エステル類、ポリビニルアルコール、N−メチルピロリドン、クロタミトンなどが用いられ、これらの溶媒を単独で、または2種以上を混合して薬物の溶解剤として用いることができるが、これらの溶媒に限定されるものではない。
【0036】
薬物の経皮吸収促進剤としては、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、アジピン酸ジイソプロピルなどの脂肪酸エステル類、カプリル酸モノグリセリド、カプリル酸トリグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステルなどの脂肪酸多価アルコールエステル類、l−メントール、ハッカ油、リモネンなどのテルペン類など経皮吸収テープ製剤に一般的に利用できるものであれば使用することができる。
【0037】
賦形剤としては、例えば、無水ケイ酸、軽質無水ケイ酸などのケイ素化合物、エチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース誘導体、ポリビニルアルコールなどの水溶性高分子、ジブチルヒドロキシトルエンなどの抗酸化剤、カオリン、酸化チタンなどの粉末があり、その他香料、着色料などを医薬的に許容できる範囲内で添加することができる。
【0038】
本発明の経皮吸収テープ製剤の支持体としては、特に限定されず、使用目的に応じて、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステルなどの伸縮性または非伸縮性の織布、不織布、布またはニットのような布類、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エチレン酢酸ビニル共重合体、塩化ビニルなどのプラスチック製フィルム、あるいはポリウレタンなどの発泡性フィルムを用いることができ、これらは単独あるいは積層されたものの何れでもよい。
【0039】
本発明の経皮吸収テープ製剤の剥離ライナーとしては、保存中の粘着剤層を保護するものであって、テープ製剤を使用するときには剥離して用いるもので、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリウレタン、金属箔の薄いフィルムまたはそれらの素材を組合せた積層構造のフィルムや、粘着剤層に接着する表面にシリコン処理したフィルム、あるいはフィルム表面にアルミニウムなどの金属を蒸着させたフィルムも用いることができる。さらに、剥離ライナーには、剥離をより容易にするために、連続または非連続の直線あるいは曲線の切れ込みを設けることも可能である。
【0040】
本発明の経皮吸収テープ製剤は、薬物、可塑剤、必要に応じて薬剤の溶解剤または経皮吸収促進剤、および粘着剤を含む液を、剥離ライナーの表面に塗布した後、40〜150℃の温度で加熱乾燥して粘着剤層を形成した後、粘着剤層の剥離ライナーが貼着した面とは反対側の表面に、支持体を積層した後、適当な大きさに切断して製造することができる。この際、支持体に水の非透過性の支持体を用いる場合には、支持体上に薬剤、可塑剤等を含む粘着剤液を塗布して、加熱乾燥後に、剥離ライナーを積層することも可能である。加熱乾燥する温度は溶媒類の揮散する温度以上あればよい。この温度が低すぎると溶媒類が完全に揮散しなくなるので好ましくなく、また150℃を越えると、薬物、可塑剤、経皮吸収促進剤に影響がでることが予想され好ましくない。
【実施例】
【0041】
以下に実施例に基づいて、本発明の医療用経皮吸収テープ製剤用非水性粘着剤および医療用経皮吸収テープ製剤について、さらに具体的に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
【0042】
実施例1 非水性粘着剤1の製造
ジムロート氏冷却器、温度計、窒素ガス吹き込み管および攪拌翼を備えた2リットルの4つ口フラスコに、2−エチルヘキシルアクリレート(以下2EHAと略す)157.5g、2−アセトアセトキシエチルメタクリレート(以下AAEMと略す)35g、ジアセトンアクリルアミド(以下DAAMと略す)80.5g、メチルメタクリレート(以下MMAと略す)76gを仕込み、溶剤として酢酸エチル525gを加えて均一になるまで溶解した。100ml/分の流量の窒素ガスを吹き込みながら75℃まで昇温した。75℃で30分間維持した後、開始剤として過酸化ベンゾイル0.21gを5gの酢酸エチルに溶解して添加し、外温を85℃に設定した。開始剤投入後、3、5、7時間後にトルエン300gを3回100gづつ分割して投入した。重合中は、100ml/分の流量の窒素ガスを吹き込み続けた。
最後のトルエン投入から12時間後に、過酸化ベンゾイル0.35gを追加触媒として投入し、その後、外温設定を95℃にして12時間、熱処理した後に冷却して非水性粘着剤1を得た。
【0043】
(非水性粘着剤1の溶液の物性)
溶液粘度(B型粘度計で測定):30000mPa・s
固形分(150℃×1時間処理):28.5%
残存モノマー:2EHA;300ppm、AAEM20ppm、DAAM1000ppm、MMA150ppm(HPLCにて測定)
【0044】
実施例2 非水性粘着剤2の製造
予め2EHA78.8g、nブチルアクリレート(以下BAと略す)78.8g、AAEM105g、MMA87.5g、ジエチレングリコールジメタクリレート(以下DEGMAと略す)1.05gを均一に溶解しモノマー液を調製した。このモノマー液100gをジムロート氏冷却器、温度計、窒素ガス吹き込み管および攪拌翼を備えた2リットルの4つ口フラスコに仕込み、溶剤として酢酸エチル350gを加えた。100ml/分の流量で窒素ガスを吹き込みながら75℃まで昇温し、75℃で30分間維持した後、開始剤として過酸化ベンゾイル0.35gを5gの酢酸エチルに溶解して添加し、外温を85℃に設定した。溶剤の還流を確認した後、残りのモノマー液を3時間で連続に投入した。モノマー液を連続投入開始から、1時間後から酢酸エチル500gを3時間で連続に投入した。酢酸エチル投入後12時間撹拌を続けた後、過酸化ベンゾイル0.5gを追加触媒として投入し、12時間熱処理しその後に冷却して非水性粘着剤2を得た。重合中は、100ml/分の流量の窒素ガスを吹き込み続けた。
【0045】
(非水性粘着剤2の溶液の物性)
溶液粘度(B型粘度計で測定):25000mPa・s
固形分(150℃×1時間処理):27.5%
残存モノマー:2EHA;1000ppm、BA200ppm、AAEM100ppm、MMA250ppm、DEGMA;検出限界以下(HPLCにて測定)
【0046】
実施例2に示した方法で、表1に示した実施例3〜10の非水性粘着剤3〜10を製造した。
【0047】
比較例1 比較例粘着剤1の製造
2EHA90g、BA90g、DAAM80.5g、MMA87.5g、DEGMA1.0gのモノマー組成で、実施例1の粘着剤1と同様な方法で重合合成を行ない比較例粘着剤1を製造した。
【0048】
(比較例粘着剤1の溶液の物性)
溶液粘度(B型粘度計で測定):38000mPa・s
固形分(150℃×1時間処理):28.5%
残存モノマー:2EHA300ppm、BA200ppm、DAAM1500ppm、MMA100ppm、DEGMA検出限界以下(HPLCにて測定)
【0049】
比較例2(比較例粘着剤2の調製)
2EHA130g、BA130g、MMA90g、モノマー組成で、実施例2と同様な方法で重合合成して比較例粘着剤2を製造した。
【0050】
(比較例粘着剤2の溶液の物性)
溶液粘度(B型粘度計で測定):28000mPa・s
固形分(150℃×1時間処理):27.5%
残存モノマー:2EHA500ppm、BA300ppm、MMA150ppm(HPLCにて測定)
【0051】
実施例1〜10および比較例1および2の非水性粘着剤におけるモノマー組成、溶媒、計算Tg値を表1に示す。
【0052】
【表1】

【0053】
試験例1
表1に示した本発明の非水性粘着剤1〜10と、比較例粘着剤1、2、および市販のアクリル系溶媒型(非水性)粘着剤アクリル系溶剤型粘着剤S−3403(商品名アロンタックS−3403東亜合成)を用いて、支持体に塗膏、乾燥してそれぞれテープ2−1〜2−21、比較例テープ3〜5を製造し、粘着剤と油状物質との相溶性、粘着剤の貼着力、凝集力の評価を行なった。
【0054】
1)テープの製造法
テープ2−1の製造
ねじ口ビンに粘着剤1を38.69g量りとり、ビン中で1時間以上攪拌した。乾燥した後の被膜重量が70mg/10cmとなるように、コーティング試験機(LTE−S、Wener Mathis AG社)を用いて、支持体(ポリエステルフィルム)上に本液を塗膏・乾燥した後、ライナー(シリコン処理が施されたポリエステルフィルム)のシリコン面が粘着剤と接するように被覆し、テープ2−1を得た。
【0055】
テープ2−2の製造
ねじ口ビンに粘着剤1を38.69g量りとり、次いでミリスチン酸イソプロピル(IPM)1.2g、それぞれ量りとり、ビン中で1時間以上攪拌した。乾燥した後の被膜重量が70mg/10cmとなるように、コーティング試験機(LTE−S、Wener Mathis AG社)を用いて、支持体(ポリエステルフィルム)上に本液を塗膏・乾燥した後、ライナー(シリコン処理が施されたポリエステルフィルム)のシリコン面が粘着剤と接するように被覆し、テープ2−2を得た。
粘着剤および対応する可塑剤を用いてテープ2−2の製造法と同じ方法で行い、テープ2−3〜2−21および比較例テープ3〜5を製造した。
【0056】
2)粘着剤と油状物質との相溶性の評価
製剤のライナーを剥がし、ライナーの表面に液状の物質が付着していないことを光学顕微鏡を用いて観察する。
評価基準
○:ライナー表面上に液状物質なし
×:ライナー表面上に液状物質あり
【0057】
3)テープの貼着力の評価
製剤のライナーを剥がしたあと、粘着剤面を指で触り、下記の評価基準に基づいて評価する。
○:(優)スチレン−イソプレン−スチレン共重合体を使用したモーラステープ(商品名:久光製薬)、ヤクバン(商品名:三笠製薬)と同程度の貼着力
△:(良)天然ゴムラテックスを使用したセラスター(商品名:山之内製薬)、ファルジー(商品名:沢井製薬)と同程度の貼着力
×:(不良)市販品以下の貼着力
−:凝集力が著しく低いため(半固形の状態)評価不能
【0058】
4)テープの凝集力(硬さ)の評価
テープのライナーを剥がし、粘着剤面を指で触り、下記の評価基準に基づいて評価する。
評価基準
○:(優)天然ゴムラテックスを使用したセラスター(商品名:山之内製薬)、ファルジー(商品名:沢井製薬)と同程度の凝集力
△:(良)スチレン−イソプレン−スチレン共重合体を使用したモーラステープ(商品名:久光製薬)、ヤクバン(商品名:三笠製薬)と同程度の凝集力
×:(不良)市販品以下の凝集力
【0059】
テープ2−1〜2−21、および比較例テープ3〜5を用いて上記の粘着剤と油状物質との相溶性、貼着力、凝集力を評価して、結果を表2に示した。その結果、比較例テープ3および4、と市販のアクリル系粘着剤を用いた比較例テープ5はいずれも、不十分な貼着力と凝集力であったのに対し、本発明の非水性粘着剤を用いて製したテープ2−1〜2−21は十分な貼着力と凝集力を示した。
【0060】
【表2】

【0061】
実施例11 経皮吸収テープ製剤11の製造
ねじ口ビンに粘着剤7を36.2g量りとり、次いでケトプロフェン1.5gをそれぞれ量りとり、ビン中で1時間以上攪拌した。乾燥した後の被膜重量が140mg/10cmとなるように、コーティング試験機(LTE−S、Wener Mathis AG社)を用いて、支持体(ポリエステルフィルム)上に本液を塗膏・乾燥した後、ライナー(シリコン処理が施されたポリエステルフィルム)のシリコン面が粘着剤と接するように被覆し、経皮吸収テープ製剤11を得た。得られた製剤中のケトプロフェンは10w/w%であった。
【0062】
実施例12 経皮吸収テープ製剤12の製造
ねじ口ビンに粘着剤7を35.69g量りとり、次いでIPM3.0gケトプロフェン1.5gをそれぞれ量りとり、ビン中で1時間以上攪拌した。乾燥した後の被膜重量が140mg/10cmとなるように、コーティング試験機(LTE−S、Wener Mathis AG社)を用いて、支持体(ポリエステルフィルム)上に本液を塗膏・乾燥した後、ライナー(シリコン処理が施されたポリエステルフィルム)のシリコン面が粘着剤と接するように被覆し、経皮吸収テープ製剤12を得た。得られた製剤中のケトプロフェンは10w/w%であった。
【0063】
実施例13〜16 経皮吸収テープ製剤13〜16の製造
実施例11または実施例12と同様な方法で、粘着剤7と、薬物、および必要あれば可塑剤のIPMを用いて実施し、経皮吸収テープ製剤13〜16を製造した。
【0064】
比較例6〜9 比較例経皮吸収テープ製剤6〜9の製造
所望の薬物、可塑剤を用い、比較例8、9は市販の溶媒型アクリル系粘着剤を用い、比較例6および7はイソシアネート架橋剤を追加して、実施例12と同じ方法で実施し、比較例経皮吸収テープ製剤6〜9を製造した。
【0065】
実施例11〜16で得られた経皮吸収テープ製剤11〜16および比較例経皮吸収テープ製剤6〜9を用いて、試験例1に示した、相溶性の評価、テープの貼着力と凝集力の評価を実施した。本発明の経皮吸収テープ製剤は、良好な貼着力と凝集力を示したのに反し、比較例経皮吸収テープ製剤は貼着力と凝集力に劣る結果であった。結果を表3に示す。
【0066】
【表3】

【0067】
試験例2 放出試験
製剤をユカタンマイクロピッグ(YMP)摘出皮膚に適用し、32℃−60%RH条件下で静置した。24時間後製剤を剥がし、製剤中の薬物残存量をHPLCにて測定した。薬物残存量より、製剤からの薬物放出率(%)を算出した。
(適用前薬物含量−薬物残存量)/適用前薬物含量×100=薬物放出率(%)
【0068】
試験例3 ヘアレスマウス摘出皮膚透過試験
縦型拡散セルの摘出皮膚の真皮側(receiver側)に0.05mol/L Mc Ilvaine Buffer(pH7.4)を入れ、角質層側(donor側)に製剤を適用した。各時点でreceiver液をサンプリングした後0.05mol/L Mc Ilvaine Bufferを同量加えた。サンプリング溶液中薬物濃度をHPLCにて測定し、flux、lag time、及び24時間の累積透過量を算出した。
【0069】
【表4】

【0070】
実施例の経皮吸収テープ製剤15、16、および比較例の経皮吸収テープ製剤8、9を用いて、試験例2および試験例3の放出試験と皮膚透過試験を実施した。その結果を表4に示した。本発明の実施例の経皮吸収テープ製剤は、比較例の経皮吸収テープ製剤よりも薬物の放出と皮膚透過性が著しく優れていた。
【0071】
試験例4 累積皮膚刺激試験(ウサギ)
前日までにウサギの背部被毛を電気バリカンを用いて刈毛し、試験に用いた。
ウサギ又はモルモットの背部に、製剤を適用し、不浸透油紙をのせ、その上を不織布粘着性包帯(メッシュポア、ニチバン)で貼付固定し、適用部全体をガーゼで覆い、粘着性布伸縮包帯(エラストポア、ニチバン)で被覆した。6時間後に被験製剤を除去し、適用部位を微温湯を湿らせた脱脂綿で軽く拭き取り、30分間放置した後、適用部を観察した。観察終了後、同一部位に被験製剤を適用し、同様の操作を7日間繰り返した。更に最終製剤除去48、72時間後にも同様に適用部を観察し、下記のDraizeらの評価基準に基づいて採点した。
【0072】
Draizeらの評価基準
A:紅斑及び痂皮形成
紅斑なし 0;ごく軽度の紅斑 1;明らかな紅斑 2;
中等度から強度の紅斑 3;強度の紅斑から軽度の痂皮形成 4
B:浮腫形成
浮腫なし 0;ごく軽度の浮腫 1;軽度の浮腫 2;
中等度の浮腫(約1mM隆起) 3;強度の浮腫 4
【0073】
日本薬局方ばんそう膏と、表2に示した本発明のテープ2−18を用いて、試験例4に示す7日間の累積皮膚刺激試験を実施し、ウサギ皮膚累積皮膚刺激スコアを求めた。その結果、本発明の粘着剤を用いたテープ2−18のスコアは4.0にたいし、日本薬局方ばんそう膏のスコアは14.6であり、本発明の粘着剤のウサギ皮膚に対する皮膚刺激は少なく、安全性が高いことが示された。
【0074】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の非水性粘着剤は加熱乾燥する工程において、アセトアセチル基が自己架橋して網目構造を形成して、この網目構造中に可塑剤等の油状物質を多く含むことができる。本発明の粘着剤は、架橋剤として、ポリアミン誘導体、イソシアネート化合物および多価金属キレート化合物等を使用しないので、毒性が無く、また皮膚の刺激がないので、医療用に適している。また、本発明の医療用経皮吸収テープ製剤は貼着力、凝集力、安全性、薬物の放出性、経皮吸収性において優れている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内にアセトアセチル基を有する(メタ)アクリル系モノマーと、アセトアセチル基を有しないその他の(メタ)アクリル系モノマーまたは共重合可能なビニルモノマーの1種又は2種以上のモノマーとを共重合して得られる共重合体を、非水性溶媒中に含むことを特徴とする医療用経皮吸収テープ製剤用非水性粘着剤。
【請求項2】
共重合体が、アセトアセトキシアルキルアクリレートまたはアセトアセトキシアルキルメタクリレートと、アセトアセチル基を有しないその他の(メタ)アクリル系モノマーまたは共重合可能なビニルモノマーの1種又は2種以上のモノマーとを共重合して得られる共重合体であることを特徴とする請求項1に記載した医療用経皮吸収テープ製剤用非水性粘着剤。
【請求項3】
共重合体が、アセトアセトキシアルキルアクリレートまたはアセトアセトキシアルキルメタクリレートと、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、ジアセトンアクリルアミド、ブチルアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ヘキサエチレングリコールジメタクリレートおよびアクリルアミドからなる群から選ばれる1種または2種以上の(メタ)アクリル系モノマーとを共重合して得られる共重合体であることを特徴とする請求項1または2に記載された医療用経皮吸収テープ製剤用非水性粘着剤。
【請求項4】
共重合体が、2−アセトアセトキシエチルメタクリレートと、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、ジアセトンアクリルアミド、ブチルアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ヘキサエチレングリコールジメタクリレートおよびアクリルアミドからなる群から選ばれる1種または2種以上の(メタ)アクリル系モノマーとを共重合して得られる共重合体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載された医療用経皮吸収テープ製剤用非水性粘着剤。
【請求項5】
共重合体の総重量に対して、1重量%〜40重量%の2−アセトアセトキシエチルメタクリレートと、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、ジアセトンアクリルアミド、ブチルアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ヘキサエチレングリコールジメタクリレートおよびアクリルアミドからなる群から選ばれる1種または2種以上の(メタ)アクリル系モノマーとを共重合して得られる共重合体を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載された医療用経皮吸収テープ製剤用非水性粘着剤。
【請求項6】
共重合体が、2−アセトアセトキシエチルメタクリレート、ジアセトンアクリルアミド、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレートおよびテトラエチレングリコールジメタクリレートを共重合して得られる共重合体であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載された医療用経皮吸収テープ製剤用非水性粘着剤。
【請求項7】
共重合体が、その計算上のガラス転移温度(Tg)を−60℃〜−5℃に有することを特徴とする請求項1〜6項のいずれか1項に記載された医療用経皮吸収テープ製剤用非水性粘着剤。
【請求項8】
(a)支持体、(b)薬剤および非水性粘着剤を含む粘着剤層および(c)剥離フィルム、を順次積層してなる医療用経皮吸収テープ製剤であって、該粘着剤層が、分子内にアセトアセチル基を有する(メタ)アクリル系モノマーと、アセトアセチル基を有さないその他の(メタ)アクリル系モノマーまたは共重合可能なビニルモノマーの1種または2種以上のモノマーとを共重合して得られる共重合体を非水性溶媒中に含む非水性粘着剤を薬剤とともに、支持体または剥離フィルム上に塗布して加熱乾燥して形成されたものであることを特徴とする医療用経皮吸収テープ製剤。
【請求項9】
共重合体が、アセトアセトキシアルキルアクリレートまたはアセトアセトキシアルキルメタクリレートと、アセトアセチル基を有しないその他の(メタ)アクリル系モノマーまたは共重合可能なビニルモノマーの1種または2種以上のモノマーとを共重合して得られる共重合体であることを特徴とする請求項8に記載された医療用経皮吸収テープ製剤。
【請求項10】
共重合体が、アセトアセトキシアルキルアクリレートまたはアセトアセトキシアルキルメタクリレートと、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、ジアセトンアクリルアミド、ブチルアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ヘキサエチレングリコールジメタクリレートおよびアクリルアミドからなる群から選ばれる1種または2種以上の(メタ)アクリル系モノマーとを共重合して得られる共重合体であることを特徴とする請求項8または9に記載された医療用経皮吸収テープ製剤。
【請求項11】
共重合体が、2−アセトアセトキシエチルメタクリレートと、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、ジアセトンアクリルアミド、ブチルアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ヘキサエチレングリコールジメタクリレートおよびアクリルアミドからなる群から選ばれる1種または2種以上の(メタ)アクリル系モノマーとを共重合して得られる共重合体であることを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載された医療用経皮吸収テープ製剤。
【請求項12】
共重合体の総重量に対して、1重量%〜40重量%の2−アセトアセトキシエチルメタクリレートと、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、ジアセトンアクリルアミド、ブチルアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ヘキサエチレングリコールジメタクリレートおよびアクリルアミドからなる群から選ばれる1種または2種以上の(メタ)アクリル系モノマーとを共重合して得られる共重合体であることを特徴とする請求項8〜11のいずれか1項に記載された医療用経皮吸収テープ製剤。
【請求項13】
共重合体が、その計算上のガラス転移温度(Tg)を−60℃〜−5℃に有することを特徴とする請求項8〜12のいずれか1項に記載された医療用経皮吸収テープ製剤。
【請求項14】
粘着剤層が、さらに可塑剤を含むことを特徴とする請求項8〜13のいずれか1項に記載された医療用経皮吸収テープ製剤。
【請求項15】
可塑剤が、脂肪酸エステル、高級アルコール、およびヒマシ油からなる群から選ばれる1種または2種以上の油状物であることを特徴とする請求項14に記載された医療用経皮吸収テープ製剤。
【請求項16】
可塑剤の含有量が、該粘着剤層の総重量の50重量%以下であることを特徴とする請求項14または15に記載された医療用経皮吸収テープ製剤。
【請求項17】
可塑剤が、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、中鎖脂肪酸トリグリセリド、セバシン酸ジエチル、およびアジピン酸ジイソプロピルからなる群から選択される1種または2種以上の脂肪酸エステルであることを特徴とする請求項15または16のいずれか1項に記載した医療用経皮吸収テープ製剤。
【請求項18】
可塑剤がミリスチン酸イソプロピルであることを特徴とする請求項17に記載された医療用経皮吸収テープ製剤。
【請求項19】
非水性粘着剤が2−アセトアセトキシエチルメタクリレート、ジアセトンアクリルアミド、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、およびテトラエチレングリコールジメタクリレートを共重合して得られる共重合体を、非水性溶媒中に含むものであって、可塑剤がミリスチン酸イソプロピルであることを特徴とする請求項14〜18のいずれか1項に記載された医療用経皮吸収テープ製剤。
【請求項20】
薬剤が、ステロイドホルモン、非ステロイド鎮痛抗炎症剤、精神安定剤、抗高血圧薬、虚血性心疾患治療薬、抗ヒスタミン薬、抗喘息薬、抗パーキンソン薬、脳循環改善薬、制吐剤、抗うつ薬、抗痴呆薬、シェーグレン症候群治療薬、抗不整脈薬、抗凝固薬、抗痛風薬、抗真菌薬、麻薬性鎮痛薬、ベータ遮断薬、β1作動薬、β2作動薬、抗腫瘍薬、利尿薬、抗血栓薬、ヒスタミンH1レセプター拮抗薬、ヒスタミンH2レセプター拮抗薬、抗アレルギー薬、セロトニンレセプター拮抗薬、抗高コレステロール薬および禁煙補助剤からなる群から選ばれる経皮吸収性の薬物であることを特徴とする請求項8〜19のいずれか1項に記載された医療用経皮吸収テープ製剤。
【請求項21】
分子内にアセトアセチル基を有する(メタ)アクリル系モノマーと、アセトアセチル基を有さないその他の(メタ)アクリル系モノマーまたは共重合可能なビニルモノマーの1種または2種以上のモノマーとを共重合して得られる共重合体を非水性溶媒中に含む非水性粘着剤を、薬剤および必要あれば可塑剤とともに支持体または剥離フィルム上に塗布し、加熱乾燥して粘着剤層を形成し、剥離フィルムまたは支持体を積層し、所望の大きさに切断することを特徴とする、(a)支持体(b)薬剤および非水性粘着剤を含む粘着剤層および(c)剥離フィルムを順次積層してなる医療用経皮吸収テープの製造法。
【請求項22】
40℃〜150℃において加熱乾燥して粘着剤層を形成することを特徴とする請求項21に記載した医療用経皮吸収テープ製剤の製造法。

【国際公開番号】WO2004/112760
【国際公開日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【発行日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−507234(P2005−507234)
【国際出願番号】PCT/JP2004/008544
【国際出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(000174622)埼玉第一製薬株式会社 (31)
【Fターム(参考)】