説明

医療用複室容器

【課題】操作者への2つの薬剤室の連通のための圧迫操作の必要性を認識させ、かつ、連通操作が極めて容易である医療用複室容器を提供する。
【解決手段】医療用複室容器1は、上部5、下部6、向かい合う側部7,8、第1の薬剤室21と第2の薬剤室22に区分する仕切部11を有する軟質バッグ2と、第1の薬剤室21側に固定された排出ポート3と、第1の薬剤室21と排出ポート3との連通を阻害する連通阻害部12とを備える。仕切部は、2つの仕切部側部シール部13a、13bと、中央弱シール部11aを備える。上部5は、第2の薬剤室の上部より中央弱シール部方向に向かう上部突出部31を有し、側部7,8は、第2の薬剤室の中央部の中央方向に向かうように湾曲した向かい合う側部内側湾曲部33a,33bを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剥離可能な仕切部により複数の薬剤室に区分されるとともに、各薬剤室に薬剤が充填された用事混合可能な医療用複室容器に関する。
【背景技術】
【0002】
薬剤の中には、あらかじめ配合すると経時的変化を起こしやすい不安定な薬剤がある。例えば、患者に必要な栄養成分を非経口的に投与する輸液剤では、アミノ酸液とブドウ糖液を同時に投与することが広く行われているが、あらかじめアミノ酸液とブドウ糖液を配合して一製剤とした場合、保存時の経時的変化、あるいは滅菌処理時などの加熱で発生するメイラード反応によって混合液が着色(褐変)することが知られている。また、カルシウム化合物はリン酸化合物との共存下では、酸性では安定であるが、pHが上昇するとリン酸カルシウムの沈殿を生じることが知られている。このような薬剤を患者に投与する場合、混合前の成分を個別に収納する医療用複室容器を用い、隔壁を剥離することにより投与直前に混合してから投与するようになってきている。
【0003】
しかしながら、医療用複数容器は排出口側の収納部に液剤を収納している場合が多く、この場合、隔壁を剥離せずに排出口から薬剤を投与してしまう虞がある。
このため、確実に各収納部に収納されている薬剤を混合した後に患者に投与することを保証し、薬剤を誤って混合しないで患者に投与する事故を確実に防止する方法が工夫されている。例えば、特開2002−136570号公報(特許文献1)のように薬剤排出口と薬剤を収納する分室との間を区切る隔壁である仕切り用弱シール部を備える複室容器が提案されている。
【0004】
また、本件出願人は、特開2007−244660号公報(特許文献2)の医療用複室容器を提案している。
この医療用複室容器は、可撓性材料により作製され、内部空間が剥離可能な仕切部により第1の薬剤室と第2の薬剤室に区分された軟質バッグと、第1の薬剤室の下端部と連通する排出ポートと、第1の薬剤室に収納された第1の薬剤と、第2の薬剤室に収納された第2の薬剤と、第1の薬剤室と排出ポートとの連通を阻害する剥離可能な連通阻害部とを備える医療用複室容器である。医療用複室容器は、第1の薬剤室の圧迫による仕切部および連通阻害部の剥離作業性と第2の薬剤室の圧迫による仕切部および連通阻害部の剥離作業性に差違を有するものであり、かつ、仕切部および連通阻害部の剥離作業性に優れた側の薬剤室の向かい合う側部の中央付近が、薬剤室の内側方向に向かうように変形している。また、この医療用複室容器は、内側方向に変形している薬剤室の側部を薬剤室の内側方向に圧迫することによりワンアクションで仕切部、連通阻害部の順に剥離するものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−136570号公報
【特許文献2】特開2007−244660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に示すものでは、2つの薬剤室を連通させるために、どのような連通操作を行うべきかの理解が容易なものではなく、かつ、理解したとしても、連通操作自体も容易なものではなかった。また、特許文献2のものは、仕切部を剥離して2つの薬剤室を連通させる必要があることの認識は良好であり、十分な効果を有する。しかし、医療現場からは、2つの薬剤室を連通の必要の認識を良好に行え、かつその作業がさらに容易に行えるものが求められていた。
そこで、本発明は、上記問題点を解決するものであり、操作者に2つの薬剤室の連通混合の必要性の認識が可能であり、かつ、連通操作が第2の薬剤室の圧迫により行うことの認識も可能であり、さらに、第2の薬剤室の圧迫時の第2の薬剤室内の薬液を確実に仕切部方向に向かわせることができ、2つの薬剤室の連通操作が極めて容易である医療用複室容器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するものは、以下のものである。
(1) 可撓性材料により作製され、上部と、下部と、2つの向かい合う側部とにより規定された内部空間を第1の薬剤室と第2の薬剤室に区分する剥離可能な仕切部を有する軟質バッグと、前記第1の薬剤室側に固定された排出ポートと、前記第1の薬剤室に収納された第1の薬剤と、前記第2の薬剤室に収納された第2の薬剤と、前記第1の薬剤室と前記排出ポートとの連通を阻害する剥離可能な連通阻害部とを備える医療用複室容器であって、
前記仕切部は、前記軟質バッグのそれぞれの側部から前記軟質バッグの中央に向かって延出する2つの仕切部側部シール部と、前記2つの仕切部側部シール部間を繋ぐように設けられた中央弱シール部とを備え、
さらに、前記上部は、中央部に、前記第2の薬剤室の中央方向かつ前記中央弱シール部方向に向かう上部突出部を有し、前記2つの側部は、前記第2の薬剤室を形成する部分のそれぞれの中央部に、前記第2の薬剤室の中央方向に向かうように湾曲した向かい合う側部内側湾曲部を備える医療用複室容器。
【0008】
また、上記目的を達成するものは、以下のものである。
(2) 可撓性材料により作製され、上部と、下部と、2つの向かい合う側部とにより規定された内部空間を第1の薬剤室と第2の薬剤室に区分する剥離可能な仕切部を有する軟質バッグと、前記第1の薬剤室側に固定された排出ポートと、前記第1の薬剤室に収納された第1の薬剤と、前記第2の薬剤室に収納された第2の薬剤と、前記第1の薬剤室と前記排出ポートとの連通を阻害する剥離可能な連通阻害部とを備える医療用複室容器であって、
前記仕切部は、前記軟質バッグのそれぞれの側部から前記軟質バッグの中央に向かって延出する2つの仕切部側部シール部と、前記2つの仕切部側部シール部間を繋ぐように設けられた中央弱シール部とを備え、前記仕切部側部シール部は、前記中央弱シール部より幅が広く、かつ、前記仕切部側部シール部の上縁は、前記側部に向かうに従って、前記軟質バッグの上端側に向かうように湾曲しており、
さらに、前記上部は、中央部に、前記第2の薬剤室の中央方向かつ前記中央弱シール部方向に向かう上部突出部を有し、前記2つの側部は、前記第2の薬剤室を形成する部分のそれぞれの中央部に、前記第2の薬剤室の中央方向に向かうように湾曲した向かい合う側部内側湾曲部を備え、前記仕切部側部シール部の上縁は、前記側部内側湾曲部の下部と連続した曲線状内縁を形成している医療用複室容器。
【0009】
(3) 前記第2の薬剤室の上部の両角部の内縁は、円弧状となっている上記(1)または(2)に記載の医療用複室容器。
(4) 前記第1の薬剤室の下部の両角部の内縁は、円弧状となっている上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の医療用複室容器。
(5) 前記医療用複室容器は、前記第2の薬剤室を圧迫したとき、前記第2の薬剤室内の薬剤が、前記中央弱シール部に向かい、前記中央弱シール部、前記連通阻害部の順で剥離するものとなっている上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の医療用複室容器。
(6) 前記第2の薬剤室の表面には、前記第2の薬剤室を前記側部内側湾曲部を有する向かい合う側面から中央側に絞るように圧迫することを促す剥離操作表示が設けられている上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の医療用複室容器。
(7) 前記第2の薬剤室には、前記第1の薬剤室より多い量の薬剤が充填されている上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の医療用複室容器。
(8) 前記連通阻害部は、前記中央弱シール部の下方に位置している上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の医療用複室容器。
【発明の効果】
【0010】
本発明の医療用複室容器は、可撓性材料により作製され、上部と、下部と、2つの向かい合う側部とにより規定された内部空間を第1の薬剤室と第2の薬剤室に区分する剥離可能な仕切部を有する軟質バッグと、第1の薬剤室の下端部と連通する排出ポートと、第1の薬剤室に収納された第1の薬剤と、第2の薬剤室に収納された第2の薬剤と、第1の薬剤室と排出ポートとの連通を阻害する剥離可能な連通阻害部とを備える。そして、仕切部は、軟質バッグのそれぞれの側部シール部から軟質バッグの中央に向かって延出する2つの仕切部側部シール部と、2つの仕切部側部シール部間を繋ぐように設けられた中央弱シール部とを備え、上部は、中央部に、第2の薬剤室の中央方向かつ中央弱シール部方向に向かう上部突出部を有し、2つの側部は、第2の薬剤室を形成する部分のそれぞれの中央部に、第2の薬剤室の中央方向に向かうように湾曲した向かい合う側部内側湾曲部を備える。
このため、上部となる第2の薬剤室は、中央部側部が内側に窪んだ形状となり、かつその下部に中央弱シール部が位置するものであるため、操作者は、容易に中央弱シール部(仕切部)の存在を認識し、2つの薬剤室の連通混合の必要性を認識する。さらに、窪んでいる第2の薬剤室の中央部側部を圧迫することにより、中央弱シール部(仕切部)が剥離すること、すなわち、連通操作が第2の薬剤室の圧迫により行うことの認識も容易である。さらに、第2の薬剤室の上縁を形成する上部は、中央部に、第2の薬剤室の中央方向かつ中央弱シール部方向に向かう上部突出部を有し、かつ、第2の薬剤室の中央部側部が内側に窪んだ形状となっているため、第2の薬剤室の圧迫時の第2の薬剤室内の薬液は、確実に中央弱シール方向に向うため、2つの薬剤室の連通操作も極めて容易である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の実施例の医療用複室容器の正面図である。
【図2】図2は、図1のA−A線断面図である。
【図3】図3は、本発明の他の実施例の医療用複室容器の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の医療用複室容器について、添付図面を参照して詳細に説明する。
なお、図中の上側を「上端」、下側を「下端」として説明する。
本発明の医療用複室容器1は、可撓性材料により作製され、上部(上部シール部)5と、下部(下部シール部)6と、2つの向かい合う側部(側部シール部)7,8)と、内部空間を第1の薬剤室21と第2の薬剤室22に区分する剥離可能な仕切部11とを有する軟質バッグ2と、第1の薬剤室21側に固定された排出ポート3と、第1の薬剤室21に収納された第1の薬剤と、第2の薬剤室22に収納された第2の薬剤と、第1の薬剤室21と排出ポート3との連通を阻害する剥離可能な連通阻害部12とを備える。仕切部11は、軟質バッグ2のそれぞれの側部(側部シール部)7,8から軟質バッグの中央に向かって延出する2つの仕切部側部シール部13a、13bと、2つの仕切部側部シール部13a,13b間を繋ぐように設けられた中央弱シール部11aとを備える。上部(上部シール部)5は、中央部に、第2の薬剤室22の中央方向かつ中央弱シール部方向に向かう上部突出部(上部シール突出部)31を有し、2つの側部(側部シール部)7,8は、第2の薬剤室22を形成する部分のそれぞれの中央部に、第2の薬剤室22の中央方向に向かうように湾曲した向かい合う側部内側湾曲部(側部シール内側湾曲部)33a,33bを備えている。
【0013】
さらに、図1に示す医療用複室容器1では、仕切部11は、軟質バッグ2のそれぞれの側部(側部シール部)7,8から軟質バッグの中央に向かって延出する2つの仕切部側部シール部13a、13bと、2つの仕切部側部シール部13a,13b間を繋ぐように設けられた中央弱シール部11aとを備える。仕切部側部シール部13a,13bは、中央弱シール部11aより幅が広く、かつ、仕切部側部シール部13a,13bの上縁は、側部(側部シール部)7,8に向かうに従って、軟質バッグ2の上端側に向かうように湾曲している。上部(上部シール部)5は、中央部に、第2の薬剤室22の中央方向かつ中央弱シール部方向に向かう上部突出部(上部シール突出部)31を有し、2つの側部(側部シール部)7,8は、第2の薬剤室22を形成する部分のそれぞれの中央部に、第2の薬剤室22の中央方向に向かうように湾曲した向かい合う側部内側湾曲部(側部シール内側湾曲部)33a,33bを備えている。そして、仕切部側部シール部13a,13bの上縁34a,34bは、側部内側湾曲部(側部シール内側湾曲部)33a,33bの下部と連続した曲線状内縁を形成している。
【0014】
本発明の医療用複室容器1は、図1に示すように、軟質バッグ2と、第1の薬剤と、第2の薬剤と、排出ポート3、混注ポート4とを備えている。
また、本発明の軟質バッグ2は、図1に示すように、第1の薬剤室21と、第2の薬剤室22と、仕切部11と、連通阻害部12と、排出ポート固定部27、混注ポート固定部28,薬剤注入部26を備えている。
軟質バッグ2は、インフレーション成形法により筒状に成形されたものが好ましい。なお、軟質バッグ2は、例えばブロー成形法などの種々の方法により製造されたものであってもよい。また、この実施例では、軟質バッグ2は、筒状体の外周部のほぼ全周をシールしたものとなっており、表面側シート部2aと裏面側シート部2bにより形成されている。
【0015】
そして、この実施例では、軟質バッグ2の上端部には上部シール部5が、下端部には下部シール部6が、左側側部には左側部シール部7が、右側側部には、右側部シール部8が設けられている。なお、軟質バッグとしては、ブロー成形により、シールの必要がなく、封止された状態の上部5、下部6、側部(左側部7、右側部8)を有するものであってもよい。
そして、軟質バッグ2の下端部には、図1に示すように、排出ポート3が取り付けられた排出ポート固定部27が設けられ、側部シール部7には、第1の薬剤室21内に薬剤を注入するための薬剤注入部26が設けられ、軟質バッグ2の上端部には、混注ポート固定部28が設けられている。
排出ポート固定部27、混注ポート固定部28は、軟質バッグ2の一部に形成された非シール部に、排出ポート3、混注ポート4を挿入後、熱シールすることにより、形成されている。また、薬剤注入部26は、第1の薬剤室21内に薬液を充填するための軟質バッグ2の一部に形成された非シール部を、薬液の充填後に熱シールすることにより形成されている。なお、薬剤注入部26は、右側側部、もしくは下端部に設けてもよい。
【0016】
図1に示すように、軟質バッグ2は、仕切部11により第1の薬剤室21と第2の薬剤室22に区画されている。そして、この実施例の医療用複室容器1では、仕切部11は、軟質バッグ2の側部シール部7,8から軟質バッグの中央に向かって延出する2つの仕切部側部シール部13a、13bと、2つの仕切部側部シール部13a,13b間を繋ぐように設けられた中央弱シール部11aとにより形成されている。中央弱シール部11aは、軟質バッグ2のシート材を帯状に剥離可能に融着することにより形成されている。このような構成により、薬剤室の中央付近には、中央弱シール部11aのみ形成されており、その両側には、中央弱シール部11aの両端部と重なるように形成された仕切部側部シール部13a,13bが形成されている。
また、この実施例では、仕切部側部シール部13a,13bは、中央弱シール部11aより幅が広く、その上縁、下縁は、側辺部に向かうに従って、軟質バッグの上端側に向かうように湾曲している。
【0017】
仕切部11の中央弱シール部11aの剥離強度としては、輸送中に2つ折り梱包形態の軟質バッグ2に対して加えられる圧力では剥離せず、軟質バッグ2を手指などで強く圧迫した(絞った)ときに剥離する程度であることが好ましい。仕切部11は、軟質バッグ2を融着することにより形成されることが好ましい。融着としては、熱融着、高周波融着、超音波融着などであることが好ましい。軟質バッグ2は、このように仕切部11に区分された2つの薬剤室21、22を有しているため、異なる成分の薬剤を無菌的に軟質バッグ2内で混合することができる。
具体的には、中央弱シール部11aのシール強度(初期の剥離強度)は、0.1〜5N/10mm、特に、0.3〜3N/10mmであることが好ましい。シール強度がこの範囲内であれば、輸送や保管中等に誤って中央弱シール部が剥離することがなく、また、中央弱シール部を剥離する作業も容易である。
【0018】
また、図1に示す実施例において中央弱シール部11aは、第1の薬剤室側および第2の薬剤室側の縁部に非シール部11bを有するものとなっている。特に、図1に示すものでは、中央弱シール部11aの第1の薬剤室側および第2の薬剤室側の縁部は、ともにノコギリ刃形状となっており、かつ、全体として、幅がほぼ同じものとなっている。具体的には、第2の薬剤室側の縁部は、頂点角が比較的に広く、ほぼ二等辺三角形状となった波が、連続するノコギリ刃(ノコギリ波)形状となっており、さらに、第1の薬剤室側の縁部も同様に、頂点角が比較的に広く、ほぼ二等辺三角形状となった波が、連続するノコギリ刃(ノコギリ波)形状となっており、かつ、第1および第2の薬剤室側の中央弱シール部11aの縁部の各頂点と各谷部が軸方向にほぼ同じ位置となっている。これにより、両刃のノコギリ状、かつ全体として幅がほぼ同じものとなっている。このように、中央用弱シール部11aの第1および第2の薬剤室側の縁部が、直線状でないため、高圧蒸気滅菌の際に、剥離困難な強シール部が形成されることがない。
また、中央弱シール部11aは、図1に示すように、後述する連通阻害部12の上方、特に、鉛直方向上方となる位置に設けられていることが好ましい。また、仕切部側部シール部13a,13bは、図示するように、連通阻害部12の鉛直方向上方となる位置の両側に設けられていることが好ましい。このような位置に中央弱シール部11aが設けられていることにより、中央弱シール部11aが剥離した際、軟質バッグ2の連通阻害部12が形成されている部分が大きく膨らむため連通阻害部12が剥離しやすくなる。
【0019】
そして、医療用複室容器1は、図1に示すように、連通阻害部12を備える。この実施例の医療用複室容器1では、連通阻害部は、連通阻害弱シール部により形成されている。そして、この実施例の医療用複室容器1では、連通阻害部12は、排出ポート3の上方を取り囲むように形成されている。この連通阻害部12により、第1の薬剤室21から隔離された第3の室23が形成されている。この第3の室23は、空き室となっている。しかし、第3の室23には、所定の液体(例えば、注射用水または生理食塩水)が入れられていてもよい。また、第3の室23は、乾燥状態でもよいが、滅菌のための微量の液体が充填されていてもよい。さらに、連通阻害弱シール部12に若干の水蒸気などの水分が通る通路を形成し、第1の薬剤室21と上記のようなレベルで連通するものであってもよい。連通阻害弱シール部12は、シート材を熱シール(熱融着、高周波融着、超音波融着)することにより形成することができる。
連通阻害部12は、仕切部11の中央弱シール部11a部分の下側となる位置に形成されていることが好ましい。このような位置に形成されることにより、第1の薬剤室21または第2の薬剤室22を圧迫したとき(例えば押圧したときあるいは絞ったとき)に、上述したように連通阻害部12が剥離しやすくなる。
【0020】
連通阻害部12は、図1に示す実施例では、脚部が開いた反転したU字(コの字)形状(言い換えれば、短辺が上側となる台形状)に形成されている。また、連通阻害部12は、排出ポート3が頂点となる三角形状、排出ポート3が底辺となる三角形状、四角形状等の多角形状、略半円形状、略半楕円形状であってもよい。なお、連通阻害部12が外周縁に角部を有する場合には、角部にエッジが形成されていないことが好ましい。
連通阻害部12の剥離のための強度は、中央弱シール部11aの剥離のための強度より大きいものとなっている。また、この連通阻害部12では、中央弱シール部11aと向かい合う先端部12aに、複数の非シール部12bが形成されている。このような非シール部12bを設けることにより、連通阻害部12の中央弱シール部11aと向かい合う先端部12aの縁部が、直線状でないものとなり、高圧蒸気滅菌の際に、剥離困難な強シール部が形成されることがない。
【0021】
また、連通阻害弱シール部12は、連通阻害弱シール部のシール強度が、中央弱シール部11aと同等もしくは中央弱シール部11aのシール強度より若干強くすることにより構成することとができる。連通阻害弱シール部のシール強度(初期の剥離強度)は、1〜25N/10mm、好ましくは、2〜20N/10mm、特に3〜12N/10mmであることが好ましい。
剥離強度の具体的な測定方法としては、以下のようにして行うことができる。医療用複室容器を、各測定対象シール部を含む部分を容器の幅方向に10mmの長さに切断して、それぞれの切断片のシール部を引張速度300mm/分で剥離させた際の測定値の平均値である。
そして、この実施例の医療用複室容器1では、第2の薬剤室22の容積は、第1の薬剤室21の容積より大きい。このため、圧迫可能な表面積が大きく、作業が容易である。さらに、第2の薬剤室22には、第1の薬剤室21よりも多い量の薬剤が充填されている。このため、圧迫時に圧迫される液体量が多いものとなっている。
また、医療用複室容器1は、連通阻害弱シール部12の上端と薬剤排出ポートの上端との間の長さ(最短距離)に対する中央弱シール部11aの横方向の長さの比は、0.2〜3であることが好ましく、更に0.5〜2であることが好ましい。特に、0.7〜1.5であることが好ましい。また、連通阻害弱シール部12の幅(帯幅)は、2〜20mm、特に、4〜12mmであることが好ましい。
【0022】
そして、この医療用複室容器1では、上部に位置する第2の薬剤室22は、仕切部11(仕切部側部シール部13a、13b、中央弱シール部11a)、上部シール部5、2つの向かい合う側部シール部7,8、混注ポート4および混注ポート固定部28により、区画された薬剤室となっている。
そして、第2の薬剤室22の上縁部を形成する上部シール部5は、その中央部に、第2の薬剤室22の中央方向かつ中央弱シール部11a方向に向かう上部シール突出部31を有し、第2の薬剤室22を形成する部分の2つの側部シール部7,8は、それぞれの中央部に、第2の薬剤室22の中央方向に向かうように湾曲した向かい合う側部シール内側湾曲部33a,33bを備えている。さらに、第2の薬剤室22の上部の両角部の内縁、具体的には、混注ポート固定部28より下部側部である右上部角部内縁32aは、ほぼ略円弧状となっており、その上部シール部側端部は、混注ポート固定部28の内縁と連続し、その下部は、側部シール内側湾曲部33aの上部と曲線的に連続している。同様に、薬剤室22の左上部角部内縁32bは、上部シール突出部31の内縁と連続し、その下部は、側部シール内側湾曲部33bの上部と曲線的に連続している。
このため、第2の薬剤室22の上部は、図1に示すように、側部近傍から頂点に向かってなだらかに形成された上部シール突出部31により形成された上部凹部と、向かい合う側部シール内側湾曲部33a,33bにより、上部中央部が窪み、上部より基端側となる両側部が内側に入り込んだハート形の上部部分のような形状となっている。
【0023】
また、仕切部側部シール部13a,13bは、中央弱シール部11aより幅が広く、かつ、仕切部側部シール部13a,13bの上縁は、側部シール部7,8に向かうに従って、軟質バッグ2の上端側に向かうように湾曲している。そして、仕切部側部シール部13aの上縁(上部内縁)34aは、側部シール内側湾曲部33aの下部と連続し、曲線状内縁を形成しており、同様に、仕切部側部シール部13bの上縁(上部内縁)34bも、側部シール内側湾曲部33bの下部と、連続し曲線状内縁を形成している。このため、側部シール内側湾曲部33a、33bより下部の第2の薬剤室22の内縁は、中央弱シール部11aに向かって曲線的かつ急激に幅が減少するものとなっている。
そして、第2の薬剤室22は、その内縁形状が上述した通りであるため、第2の薬剤室22の全体形状は、図1に示すように、上部中央部が窪み、縦方向に伸び、かつ両側部が窪むととともに、下端部が中央弱シール部に向かって狭くなるとともに下端が切れた形態、表現するならば、変形ハート型形状となっている。
【0024】
このため、第2の薬剤室22の圧迫時に、第2の薬剤室22内の薬液は、上部シール突出部31および側部シール内側湾曲部33a,33bにより、確実に第2の薬剤室22の上部の両角部32a,32bに移行し、両角部32a,32bが膨張する。さらに、第2の薬剤室22の圧迫を継続すると、中央弱シール11aが剥離し、第2の薬剤室22の上部の右角部32aを膨張させた薬剤が、第2の薬剤室22の側部内縁33a、34aを沿って流れ、また、第2の薬剤室22の上部の左角部32bを膨張させた薬剤が、第2の薬剤室22の側部内縁33b、34bに沿って流れ、中央弱シール部11aを確実に剥離するとともに、2つの薬液流れが合流し、中央弱シール部11aの下方に位置する連通阻害弱シール部12に当接するため、中央弱シール部11aの剥離と連動して、連通阻害弱シール部12を確実に剥離させることができるものとなっている。よって、この実施例の医療用複室容器1は、第2の薬剤室を圧迫したとき、第2の薬剤室内の薬剤が、中央弱シール部に向かい、中央弱シール部、連通阻害部の順で剥離するものとなっている。
【0025】
また、側部シール内側湾曲部33a,33bの内側への変形量としては、側辺より3〜15mm程度が好適であり、側部シール内側湾曲部33a,33bの軟質バッグの上下方向の長さは、5〜15cm程度が好適である。また、側部シール内側湾曲部33a,33bの形状としては、図1に示すような内側へ突出する湾曲形状であることが好ましい。
さらに、この医療用複室容器1では、下部に位置する第1の薬剤室21は、仕切部11(仕切部側部シール部13a、13b、中央弱シール部11a)、2つの向かい合う側部シール部7,8、連通阻害弱シール部12、下部シール部6により、区画された薬剤室となっている。
そして、第1の薬剤室22の下縁部側部を形成する下部シール部6と側部シール部7,8の下部は、曲線状に連続し、第1の薬剤室22の下部の両角部37a、37bの内縁は、ほぼ略円弧状となっている。また、仕切部側部シール部13a,13bは、中央弱シール部11aより幅が広く、かつ、仕切部側部シール部13a,13bの下縁は、側部シール部7,8に向かうに従って、軟質バッグ2の下端側に向かうように湾曲している。そして、仕切部側部シール部13a、13bの下縁35a,35bは、側部シール部7,8の直線状内縁部36a,36bと連続している。このため、第1の薬剤室21は、大きく角部が面取りされた矩形状であるとともに、連通阻害部12により形成された下部より上方に延びる凹部を有する形状となっている。特に、第1の薬剤室21の下部角部は、円弧状のものとなっているため、第1の薬剤室21に流入した薬剤流より分流した薬剤流が、第1の薬剤室21の側縁部を流れた場合に、その分流した薬剤流が、連通阻害部12の側部に確実に当接するため、連通阻害部12の剥離を補助する。
【0026】
さらに、図3に示す実施例の医療用複室容器10のように、第2の薬剤室22の表面に、仕切部の剥離のための圧迫操作を促す剥離操作表示40を有するものであってもよい。圧迫操作を促す表示40の存在により、作業者は、第1の薬剤室と第2の薬剤室の連通作業が必要であることを認識する。さらに、圧迫操作を促す剥離操作表示40が、第2の薬剤室22の表面にのみ設けられているので、作業者は、第2の薬剤室を圧迫することにより、連通作業を行うものとなり、作業が良好に行われる。
さらに、図3に示すように、圧迫操作を促す表示40は、第2の薬剤室22の側部シール内側湾曲部33a,33b付近に設けることが好ましい。さらに、圧迫操作を促す表示40は、図3に示すように、第2の薬剤室22の向かい合う側部シール内側湾曲部33a,33b間を中央側に絞るように圧迫することを促す表示であることが好ましい。表示40は、第2の薬剤室22の側部シール内側湾曲部33a付近に設けられ、向かい合う側部シール内側湾曲部33b方向を向く第1の表示(矢印状表示)40aと、第2の薬剤室22の側部シール内側湾曲部33b付近に設けられ、向かい合う側部シール内側湾曲部33a方向を向く第2の表示(矢印状表示)40bとを備えている。そして、第1の表示(矢印状表示)40aと第2の表示(矢印状表示)40bは、向かい合うものとなっている。
【0027】
なお、表示40は、図3に示した形に限定されるものではなく、略ブーメラン状(言い換えれば、中央部が第2の薬剤室の中央側に屈曲し、かつ中央部が最も幅の広いものとなっている屈曲形状)であってもよい。
さらに、図3に示すように、薬剤の流れを直感的に理解できる表示41を設けてもよい。医療用複室容器10には、連通阻害部12もしくはその付近に到達する方向性表示41を有している。この表示41は、第2の薬剤室22を圧迫した時の圧力負荷方向(薬液の流れ方向)を示すものでもある。この表示41を設けることにより、「圧迫操作を促す表示」によって圧迫操作を行うときの圧迫方向の直感的把握もしくは無意識における排出口側への液圧負荷の実行を起こさせることができる。さらに、この方向性表示41を連通阻害部12上にその一部(先端部)を配置することにより、剥離すべき「連通阻害部」の存在をより明確に意識付けることができ、より一層圧迫操作を促す表示による効果を高めることができる。なお、方向性表示41としては、図3に示すような二股に分かれた矢印表示が好ましい。
【0028】
医療用複室容器1に用いられる軟質バッグ2は、水蒸気バリアー性を有することが好ましい。水蒸気バリアー性の程度としては、水蒸気透過度が、50g/m・24hrs・40℃・90%RH以下あることが好ましく、より好ましくは10g/m・24hrs・40℃・90%RH以下であり、さらに好ましくは1g/m・24hrs・40℃・90%RH以下である。この水蒸気透過度は、JISK7129(A法)に記載の方法により測定される。
このように軟質バッグ2が水蒸気バリアー性を有することにより、医療用複室容器1の内部からの水分の蒸散が防止できる。その結果、充填される薬剤(具体的には、薬液)の減少、濃縮を防止することができる。また、医療用複室容器1の外部からの水蒸気の侵入も防止することができる。
【0029】
このような軟質バッグ2の形成材料としては、ポリオレフィン類を含むものであるのが好ましい。軟質バッグ2の形成材料として、特に好ましいものとして、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブタジエン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)のようなポリオレフィン類に、スチレン−ブタジエン共重合体やスチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体等のスチレン系熱可塑性エラストマーあるいはエチレン−プロピレン共重合体やエチレン−ブテン共重合体、プロピレン−αオレフィン共重合体などのオレフィン系熱可塑性エラストマーをブレンドし柔軟化した軟質樹脂を用いてもよい。この材料は、高強度で柔軟性に富み、耐熱性(特に滅菌時の耐熱性)、耐水性が高い他、加工性が特に優れ、製造コストの低減を図ることができる点で好ましい。
【0030】
さらに、上記のブレンド樹脂を用いる場合には、2種以上の融点の異なる材料を用いることになり、軟質バッグ2の上部シール部5、下部シール部6、側部シール部7、8、中央弱シール部11a,仕切部側部シール部13a,13bおよび連通阻害弱シール部12の各シール条件の設定、各シール部分の剥離強度の安定化を容易かつ良好に図ることができる。
また、軟質バッグ2は、上述したような材料よりなる単層構造のもの(単層体)であってもよいし、また種々の目的で、複数の層(特に異種材料の層)を重ねた多層積層体であってもよい。多層積層体の場合、複数の樹脂層を重ねたものであってもよいし、少なくとも1層の樹脂層に金属層を積層したものであってもよい。複数の樹脂層を重ねたものの場合、それぞれの樹脂の利点を併有することができ、例えば、軟質バッグ2の耐熱性、耐衝撃性を向上させたり、耐ブロッキング性を付与したり、あるいは透明性を向上させたりすることができる。また、金属層を有するものの場合、軟質バッグ2のガスバリアー性などを向上させることができる。例えば、アルミ箔などのフィルムが積層された場合、ガスバリアー性を向上させることができる。なお、軟質バッグ2が多層積層体である場合、その内表面部分を形成する材料が、前述した材料であるのが好ましい。
【0031】
軟質バッグ2を構成するシート材料の厚さは、その層構成や用いる素材の特性(柔軟性、強度、水蒸気透過度、耐熱性など)に応じて適宜決定され、特に限定されるものではないが、通常は、100〜550μm程度であるのが好ましく、200〜400μm程度であるのがより好ましい。また、軟質バッグ2としては、引張弾性率で500MPa以下、好ましくは50〜300MPaの押出フィルムあるいはインフレーション成形したチューブを用いることが好ましい。
軟質バッグ2は、上記樹脂を用いてブロー成形し周縁部を融着したもの、上記樹脂により形成された2枚のシートの周縁部を融着して形成したものなどのいずれでもよい。
【0032】
軟質バッグ2の薬剤室21、22には、薬剤が収納されている。薬剤室21、22には共存することにより沈殿が生じたり、経時的にあるいは一時的な加熱による着色・分解等の配合変化が生じたりすることがある成分を分離して収納するなど、異なった成分のものが収容されていることが好ましい。このような薬剤(輸液剤)としては、例えば、腹膜透析液、経中心静脈輸液剤、経末梢静脈用注射剤、液状栄養剤などのように2つ以上の薬剤を輸液の際に混合する必要のあるものが好ましい。また、輸液剤としては、例えば生理食塩水、電解質溶液、リンゲル液、高カロリー輸液、ブドウ糖液、注射用水、アミノ酸電解質溶液などが挙げられるが、これに限定されるものではない。例えば、薬剤室の一方にブドウ糖電解質液、他方にアミノ酸液を収納し、さらに両室にビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンC、パンテノール、ニコチン酸アミドなどの水溶性ビタミン等を、安定性等を考慮して適宜振り分け収納することができる。
また、軟質バッグ2の上部シール部5には、ハンガーなどに吊り下げるための孔(吊り下げ部)25が設けられている。
【0033】
排出ポート3は、図1に示すように、軟質バッグ2の下部シール部6に形成された排出ポート固定部27に取り付けられている。排出ポート固定部27は、下部シール部6の中心に設けられている。また、医療用複室容器1は、薬液を混注するための混注ポート4を備えている。このようにすることにより、医療用複室容器1に入れられた薬剤以外の成分を使用前に混注することができる。排出ポート3、混注ポート4は、高周波融着、熱融着、超音波融着等により軟質バッグ2に取り付けられている。なお、排出ポート3、混注ポート4としては、公知のものが使用できる。
【符号の説明】
【0034】
1 医療用複室容器
2 軟質バッグ
3 排出ポート
11 仕切部
12 連通阻害部
14 表示
21 第1の薬剤室
22 第2の薬剤室
5 上部
6 下部
7,8 側部
21 第1の薬剤室
22 第2の薬剤室
31 上部突出部
33a,33b 側部内側湾曲部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性材料により作製され、上部と、下部と、2つの向かい合う側部とにより規定された内部空間を第1の薬剤室と第2の薬剤室に区分する剥離可能な仕切部を有する軟質バッグと、前記第1の薬剤室側に固定された排出ポートと、前記第1の薬剤室に収納された第1の薬剤と、前記第2の薬剤室に収納された第2の薬剤と、前記第1の薬剤室と前記排出ポートとの連通を阻害する剥離可能な連通阻害部とを備える医療用複室容器であって、
前記仕切部は、前記軟質バッグのそれぞれの側部から前記軟質バッグの中央に向かって延出する2つの仕切部側部シール部と、前記2つの仕切部側部シール部間を繋ぐように設けられた中央弱シール部とを備え、
さらに、前記上部は、中央部に、前記第2の薬剤室の中央方向かつ前記中央弱シール部方向に向かう上部突出部を有し、前記2つの側部は、前記第2の薬剤室を形成する部分のそれぞれの中央部に、前記第2の薬剤室の中央方向に向かうように湾曲した向かい合う側部内側湾曲部を備えることを特徴とする医療用複室容器。
【請求項2】
可撓性材料により作製され、上部と、下部と、2つの向かい合う側部とにより規定された内部空間を第1の薬剤室と第2の薬剤室に区分する剥離可能な仕切部を有する軟質バッグと、前記第1の薬剤室側に固定された排出ポートと、前記第1の薬剤室に収納された第1の薬剤と、前記第2の薬剤室に収納された第2の薬剤と、前記第1の薬剤室と前記排出ポートとの連通を阻害する剥離可能な連通阻害部とを備える医療用複室容器であって、
前記仕切部は、前記軟質バッグのそれぞれの側部から前記軟質バッグの中央に向かって延出する2つの仕切部側部シール部と、前記2つの仕切部側部シール部間を繋ぐように設けられた中央弱シール部とを備え、前記仕切部側部シール部は、前記中央弱シール部より幅が広く、かつ、前記仕切部側部シール部の上縁は、前記側部に向かうに従って、前記軟質バッグの上端側に向かうように湾曲しており、
さらに、前記上部は、中央部に、前記第2の薬剤室の中央方向かつ前記中央弱シール部方向に向かう上部突出部を有し、前記2つの側部は、前記第2の薬剤室を形成する部分のそれぞれの中央部に、前記第2の薬剤室の中央方向に向かうように湾曲した向かい合う側部内側湾曲部を備え、前記仕切部側部シール部の上縁は、前記側部内側湾曲部の下部と連続した曲線状内縁を形成していることを特徴とする医療用複室容器。
【請求項3】
前記第2の薬剤室の上部の両角部の内縁は、円弧状となっている請求項1または2に記載の医療用複室容器。
【請求項4】
前記第1の薬剤室の下部の両角部の内縁は、円弧状となっている請求項1ないし3のいずれかに記載の医療用複室容器。
【請求項5】
前記医療用複室容器は、前記第2の薬剤室を圧迫したとき、前記第2の薬剤室内の薬剤が、前記中央弱シール部に向かい、前記中央弱シール部、前記連通阻害部の順で剥離するものとなっている請求項1ないし4のいずれかに記載の医療用複室容器。
【請求項6】
前記第2の薬剤室の表面には、前記第2の薬剤室を前記側部内側湾曲部を有する向かい合う側面から中央側に絞るように圧迫することを促す剥離操作表示が設けられている請求項1ないし5のいずれかに記載の医療用複室容器。
【請求項7】
前記第2の薬剤室には、前記第1の薬剤室より多い量の薬剤が充填されている請求項1ないし6のいずれかに記載の医療用複室容器。
【請求項8】
前記連通阻害部は、前記中央弱シール部の下方に位置している請求項1ないし7のいずれかに記載の医療用複室容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−183181(P2012−183181A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−47959(P2011−47959)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】