説明

医療装置

【課題】管孔に対する挿入部の挿入性を向上させることが可能な医療装置を提供する。
【解決手段】医療装置10は、第1湾曲部34と、第1湾曲部の基端側に設けられた第2湾曲部36とを有し、屈曲部Faを有し得る管孔LI内に挿入可能な細長の挿入部24と、第1湾曲部を湾曲させる湾曲操作入力部52を有する第1湾曲駆動機構34a,42,46,52と、第2湾曲部を湾曲させる第2湾曲駆動機構36a,44,62,64と、第1湾曲部が第1湾曲駆動機構により湾曲しているときに、第1湾曲部の湾曲角度が所定角度を超えたことを検知する検知部56と、検知部に接続され、所定角度を設定可能な設定部98を有し、第1湾曲部の湾曲角度が所定角度を超えたことを検知部で検知した時点で、第2湾曲駆動機構により第2湾曲部を湾曲させる信号を第2湾曲駆動機構に出力する制御部74とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、管孔内に挿入される挿入部を有する医療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1及び特許文献2には、例えば腸管の形状に追従させるように第1湾曲部の後端に第2湾曲部を設け、第2湾曲部の湾曲角度をモータで制御しながら駆動させる内視鏡が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−217929号公報(2つの湾曲部)
【特許文献2】特開2002−177200号公報(2つの湾曲部)
【特許文献3】特開2003−93328号公報(管孔暗部の検出)
【特許文献4】特開2009−034421号公報(モニタ一体型内視鏡)
【特許文献5】国際公開第2008/155828号パンフレット(UPD装置)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1及び特許文献2に開示された内視鏡の第2湾曲部を駆動させる場合、その開始タイミング、停止タイミング等について、内視鏡の操作者の意図通りに動かない場合がある。このため、管孔に対する挿入部の挿入性の向上が望まれている。
【0005】
この発明は、管孔に対する挿入部の挿入性を向上させることが可能な医療装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、この発明に係る医療装置は、第1湾曲部と、前記第1湾曲部の基端側に設けられた第2湾曲部とを有し、屈曲部を有し得る管孔内に挿入可能な細長の挿入部と、前記第1湾曲部を湾曲させる湾曲操作入力部を有する第1湾曲駆動機構と、前記第2湾曲部を湾曲させる第2湾曲駆動機構と、前記第1湾曲部が前記第1湾曲駆動機構により湾曲しているときに、前記第1湾曲部の湾曲角度が所定角度を超えたことを検知する検知部と、前記検知部に接続され、前記所定角度を設定可能な設定部を有し、前記第1湾曲部の湾曲角度が前記所定角度を超えたことを前記検知部で検知した時点で、前記第2湾曲駆動機構により前記第2湾曲部を湾曲させる信号を前記第2湾曲駆動機構に出力する制御部とを有することを特徴とする。
医療装置は、第1湾曲部を例えばU方向又はD方向に設定部で設定した所定角度(例えば90度)に湾曲させた時点をトリガーとして、制御部から第2湾曲部を第1湾曲部と同じ方向に湾曲させるように第2湾曲駆動機構に信号を送ることができる。第2湾曲部の湾曲開始タイミングを第1湾曲部34が設定部で設定した所定角度(例えば90度)を超える状態に湾曲した時点に規定することによって、内視鏡の操作者が第2湾曲部の湾曲開始タイミングを容易に予想することができる。したがって、挿入部を奥側に押し込むタイミング等を取り易くすることができ、管孔に対する挿入部の挿入性を向上させることができる。このため、内視鏡の操作性も向上させることができる。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、管孔に対する挿入部の挿入性を向上させることが可能な医療装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】(A)は第1から第3実施形態に係る内視鏡システム(医療装置)を示す概略図、(B)は図1(A)中の内視鏡システムの内視鏡の挿入部の先端硬質部の先端を矢印1B方向から観察した状態を示す概略的な正面図。
【図2】第1実施形態に係る内視鏡システムの内視鏡の挿入部の第1湾曲部と操作部の第1及び第2ドラムとの関係、第2湾曲部と操作部の第3ドラムとの関係を示す概略図。
【図3】(A)は第1から第3実施形態に係る内視鏡システムの内視鏡、又は、第4実施形態に係る内視鏡の操作部の第1ドラムを回転させたときに第1湾曲部を湾曲させた状態を示し、(B)は内視鏡の操作部の第3ドラムを回転させたときに第2湾曲部を湾曲させた状態を示す概略図。
【図4】第1から第3実施形態に係る内視鏡システムの内視鏡、又は、第4実施形態に係る内視鏡の挿入部と操作部との間に配置されるワイヤの状態を示し、(A)は第2湾曲部が真っ直ぐの状態の概略図、(B)は第2湾曲部がU方向に湾曲した状態を示す概略図。
【図5】第1実施形態に係る内視鏡システムの駆動制御部と駆動制御により制御される部材との関係を示す概略的なブロック図。
【図6】第1実施形態に係る内視鏡システムを用いて挿入部の先端を曲がりくねった管孔の手前側から奥側に向かって挿入していく際のフローチャート。
【図7】第1から第3実施形態に係る内視鏡システム、又は、第4実施形態に係る内視鏡を用いて、内視鏡の挿入部を大腸の奥側(小腸や胃側)に向かって挿入する際の挿入部の動作を示す概略図であり、時間経過とともに(A)から(G)に向かって作業を行うことを示す概略図。
【図8】第1から第3実施形態に係る内視鏡システム、又は、第4実施形態に係る内視鏡を用いて、内視鏡の挿入部を大腸の奥側(小腸や胃側)に向かって挿入する際の挿入部の動作を示す概略図であり、第1及び第2湾曲部を湾曲させた状態から時間経過とともに(A)から(C)に向かって作業を行うことを示す概略図。
【図9】第1実施形態の第1変形例に係る内視鏡システムを用いて挿入部の先端を曲がりくねった管孔の手前側から奥側に向かって挿入していく際のフローチャート。
【図10】第2実施形態に係る内視鏡システムの内視鏡の挿入部の第1湾曲部と操作部の第1及び第2ドラムとの関係、第2湾曲部と操作部の第3ドラムとの関係を示す概略図。
【図11】第2実施形態に係る内視鏡システムの駆動制御部と駆動制御により制御される部材との関係を示す概略的なブロック図。
【図12】第2実施形態に係る内視鏡システムの観察光学系により撮像され、モニタに表示された観察像に、駆動制御部に接続された画像処理部により中央側にある矩形範囲を表示した状態を示す概略図。
【図13】第2実施形態に係る内視鏡システムを用いて、内視鏡の挿入部を大腸の奥側(小腸や胃側)に向かって挿入する際の挿入部の動作を示す概略図であり、(A)は管孔の奥側の挿入方向を探すために第1湾曲部を適宜に湾曲させた状態を示す概略図、(B)は第1湾曲部を90度湾曲させたときに画像処理部により観察像に暗部が抽出された状態を示す概略図、(C)は第1湾曲部の湾曲方向と同じ方向に第2湾曲部を湾曲させている状態を示す概略図。
【図14】第2実施形態の第1変形例に係る内視鏡システムを用いて挿入部の先端を曲がりくねった管孔の手前側から奥側に向かって挿入していく際のフローチャート。
【図15】第3実施形態に係る内視鏡システムの内視鏡の挿入部の第1湾曲部と操作部の第1及び第2ドラムとの関係、第2湾曲部と操作部の第3ドラムとの関係を示す概略図。
【図16】第3実施形態に係る内視鏡システムの駆動制御部と駆動制御により制御される部材との関係を示す概略的なブロック図。
【図17】第4実施形態に係る内視鏡(医療装置)を示す概略図。
【図18】第4実施形態に係る内視鏡の内部構造を示す概略的なブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながらこの発明を実施するための形態について説明する。
第1の実施の形態について図1から図8を用いて説明する。
【0010】
図1(A)に示すように、本発明の第1実施形態に係る内視鏡システム(医療装置)10は、内視鏡(内視鏡本体)12と、内視鏡12に着脱自在に接続され、この内視鏡12の照明光学系30に光学的に接続され照明光を供給する光源14と、内視鏡12に着脱自在に接続され内視鏡12の観察光学系28を制御すると共にこの観察光学系28から得られた信号を処理して標準的な映像信号を出力するビデオプロセッサ16と、ビデオプロセッサ16で信号処理して得られた内視鏡画像を表示するモニタ18とを有する。ビデオプロセッサ16には、図示しない画像記録装置などを接続可能である。なお、内視鏡12とは別体の光源14の代わりに、照明光学系30の一部としてLED等の小型光源を内視鏡12の内部に内蔵しても良い。
【0011】
内視鏡12は、術者に把持されて後述する第1湾曲部34の湾曲操作などが可能な操作部(内視鏡本体)22と、操作部22から延出され後述する管孔LI(図7に示す大腸の腸管にも同じ符号を付す)内の被検体(観察対象部位)に挿入される細長の挿入部24と、操作部22の側面より延設され、観察光学系28に接続する信号ケーブルや光源14からの照明光を伝達するライトガイドなどを内蔵したユニバーサルコード26と、このユニバーサルコード26の端部に設けられ、光源14及びビデオプロセッサ16に着脱自在に接続されるコネクタ部26aとを有する。すなわち、挿入部24の基端部には操作部22が設けられて、操作部22からユニバーサルコード26が延出されている。
なお、操作部22及び挿入部24の内部には、図1(B)に示す観察光学系(撮像手段)28及び照明光学系(照明手段)30(具体的には第4実施形態参照)、更には図示しない処置具等を挿通するチャンネル32aが配設されている。
【0012】
挿入部24は、その先端に設けられた先端硬質部32と、この先端硬質部32の後端側に設けられ操作部22の操作により湾曲自在の第1湾曲部34と、この第1湾曲部34の後端側に設けられた湾曲自在の第2湾曲部36と、第2湾曲部36の後端側に設けられ軟性で管状の部材により形成される長尺で可撓性を有する管状部38とを有する。すなわち、先端硬質部32、第1湾曲部34、第2湾曲部36及び管状部38が、その先端側から基端側に向かって順に連設されて挿入部24が形成されている。
操作部22及び挿入部24には、図18に示すように、観察光学系28として、観察窓302、対物レンズ304、(イメージガイド306、)結像レンズ308、CCDやCMOSなどの撮像素子310及びこの撮像素子310を駆動するための回路基板などが組み込まれた撮像素子制御回路342が内蔵されている。また、操作部22及び挿入部24には照明光学系30として、光源14から出射される照明光を伝達するライトガイド294、及び、照明窓296が内蔵されている。なお、対物レンズ304は例えば対物レンズ群として、イメージガイド306及び結像レンズ308を含んでいても良い。
そして、先端硬質部32の先端面から出射させた照明光を被検体に照射して、照明した被検体を観察光学系28の撮像素子310で撮像して光電変換し、観察光学系28に接続されたビデオプロセッサ16で画像処理して、モニタ18に被検体の像(内視鏡像)を表示させることができる。
なお、モニタ18の上側は内視鏡12の挿入部24の後述する第1湾曲部34の上側(U方向)に対応し、下側は第1湾曲部34の下側(D方向)に対応し、右側は第1湾曲部34の右側(R方向)に対応し、左側は第1湾曲部34の左側(L方向)に対応する。
【0013】
上述したように、本実施形態では、内視鏡12の挿入部24は、先端硬質部32に近接する第1湾曲部34と、管状部38に近接する第2湾曲部36との、2つの湾曲部34,36を有する。
図2に示す第1湾曲部34及び第2湾曲部36は、それぞれ公知の複数の湾曲駒で形成された湾曲管(第1及び第2湾曲駆動機構)34a,36aと、湾曲管34a,36aの外側に配設されたブレードと、ブレードの外側に配設された外皮とを有する。第1湾曲部34の湾曲管34aの先端には、第1湾曲部34の各湾曲方向に対応して例えば4本のアングルワイヤ(第1湾曲駆動機構)42(U,D,R,L)が固定されている。また、第2湾曲部36の湾曲管36aの先端にも例えば2本のアングルワイヤ(第2湾曲駆動機構)44(U’,D’)が固定されている。このため、第1湾曲部34を第1及び第2方向として上下(UP/DOWN)方向(図2中にU,Dで示す)及び第3及び第4方向として左右(RIGHT/LEFT)方向(図2中にR,Lで示す)に湾曲させることが可能であり、第2湾曲部36を第1及び第2方向として上下方向に湾曲させることが可能である。
【0014】
図2に示すように、第1湾曲部34を上下方向に湾曲させる2本のアングルワイヤ42(U,D)は操作部22の内部の第1ドラム(第1湾曲駆動機構)46に巻回されて固定されている。第1湾曲部34を左右方向に湾曲させる2本のアングルワイヤ42(R,L)は操作部22の内部の第2ドラム48に巻回されて固定されている。第1及び第2ドラム46,48は同一軸上に配置されている。操作部22の外部には、第1ドラム46を回動させる第1アングルノブ(湾曲操作入力部)52と、第2ドラム48を回動させる第2アングルノブ54とが配設されている。第1及び第2アングルノブ52,54は同一軸上に配置されている。また、これら第1及び第2ドラム46,48、並びに、第1及び第2アングルノブ52,54は同一軸上に配置されている。そして、第1アングルノブ52をその軸周りに回転させると、第1ドラム46が同一軸周りに第1アングルノブ52と同じ角度だけ回転し、第2アングルノブ54をその軸周りに回転させると、第2ドラム48が同一軸周りに第2アングルノブ54と同じ角度だけ回転する。湾曲管34a、ワイヤ42、第1ドラム46、第1アングルノブ52は第1湾曲部34を湾曲させる第1湾曲駆動機構を形成する。
なお、この実施形態では、第1湾曲部34が真っ直ぐの状態となる位置を第1アングルノブ52の初期位置(ニュートラル位置)として規定するとともに、第2湾曲部36が真っ直ぐの状態となる位置をモータ64の初期位置(ニュートラル位置)として規定する。そして、第1アングルノブ52のU方向(プラス方向)及びD方向(マイナス方向)の回転可能角度、第1及び第2湾曲部34,36のU方向及びD方向の湾曲可能角度ψは対称であることが好ましい。特に、第1アングルノブ52の回転可能角度ψ及び第1湾曲部34の湾曲可能角度ηは、U方向及びD方向ともに、第1湾曲部34が真っ直ぐの状態(初期状態)ηから例えばそれぞれ180度程度であることが好ましい。第2アングルノブ54の回転可能角度及び第1湾曲部36の湾曲可能角度は、R方向及びL方向ともに、第1湾曲部34が真っ直ぐの状態(初期状態)から例えばそれぞれ160度程度であることが好ましい。また、第2湾曲部36の湾曲可能角度(最大湾曲角度)θは、U方向及びD方向ともに、第2湾曲部36が真っ直ぐの状態(初期状態)θから例えばそれぞれ120度程度であることが好ましく、第2湾曲部36の湾曲速度の絶対値|V|は例えば30度/秒程度で一定であることが好ましい。
【0015】
第1ドラム46には第1ドラム46の回転位置を検知する検知部(検出部)としてのノブ位置検知用ポテンショメータ(入力量検出部)56が取り付けられている。このポテンショメータ56は操作部22の内部に配置されている。第1アングルノブ52の初期位置(第1湾曲部34が真っ直ぐの位置)に合わせてポテンショメータ56の初期設定をすることにより、このポテンショメータ56は、第1ドラム46の回転量、すなわち、第1アングルノブ52の回転位置(回転角度)ψを検出することができる。このため、ポテンショメータ56は、第1アングルノブ(第1湾曲操作入力部)52に入力された湾曲操作量を湾曲操作入力量として検出する。そして、図3(A)に示す第1アングルノブ52の回転量ψ、すなわち第1ドラム46の回転量ψと、第1湾曲部34のU方向及びD方向の湾曲量(湾曲角度)ηとは略対応している。このため、ポテンショメータ56を用いることによって、第1アングルノブ52の回転量に基づいて第1湾曲部34のU方向及びD方向の湾曲状態を推定し、すなわち、湾曲角度を検知することができる。
このため、ポテンショメータ56は第1湾曲部34が第1湾曲駆動機構により湾曲しているときに、第1湾曲部56の湾曲角度がある設定角度(所定角度)を超えたことを検知する検知部として機能する。
【0016】
図2に示すように、第2湾曲部36をU方向及びD方向に湾曲させる2本のアングルワイヤ44(U’,D’)は操作部22の内部の第3ドラム(第2湾曲駆動機構)62に巻回されて固定されている。第3ドラム62にはモータ(駆動部)64、及び、モータ(第2湾曲駆動機構)64の回転量(回転角度)ω(図3(B)参照)を検知するエンコーダ(回転位置検知部)66が配置されている。モータ64は第2湾曲部36を湾曲させるための駆動力を発生する。したがって、湾曲管36a、ワイヤ44、第3ドラム62及びモータ64は第2湾曲部36を湾曲させる第2湾曲駆動機構を形成する。
なお、図1及び図2では、モータ64及びエンコーダ66は操作部22の外部に一部が突出するように描いたが、操作部22の内部に配置されていることも好ましい。また、モータ64は操作部22の内部ではなく、挿入部24の内部に配置されていることも好ましい。
【0017】
図4(A)及び図4(B)に示すように、第2アングルワイヤ44(U’,D’)には、予めたるみ(sag)44a,44bを持たせてある。ワイヤ44のたるみ量は図4(A)に示す第3ドラム62及びモータ64が中立位置にある状態(第2湾曲部36が真っ直ぐの状態)から、図4(B)に示すようにモータ64を回転させてドラム62を回転させ、第2湾曲部36をU方向の最大湾曲角度まで湾曲させても、ワイヤ44(U’,D’)に僅かにたるみ44a,44bが残っている程度であることが好ましい。
【0018】
曲がった状態の第2湾曲部36が管孔LIの壁面(例えば体壁)に触れていても、ワイヤ44(U’,D’)に十分なたるみ44a,44bがあるため、たるみ44a,44bの分だけ第2湾曲部36をU方向に更に湾曲させ、又はU方向への湾曲量を減少させることができるので、第2湾曲部36を湾曲させた状態でも遊びがあり、第2湾曲部36を無理に逆方向に湾曲させることがない。したがって、管孔LIの内壁に大きな力を加えることがない。図示しないが、このような構造は第1湾曲部34及びワイヤ42でも同様であることが好ましい。
【0019】
例えばビデオプロセッサ16の内部には、図5に示すモータ電源(トルク量検知部、張力検知部)72が配置されている。例えばビデオプロセッサ16の内部には、さらに、ポテンショメータ56、モータ64、エンコーダ66及びモータ電源72を制御する図5に示す駆動制御部(制御部)74が配置されている。モータ電源72や駆動制御部74がビデオプロセッサ16に配設されている場合、これらモータ電源72及び駆動制御部74は、ユニバーサルコード26を介してポテンショメータ56、モータ64及びエンコーダ66に対して電気的に接続される。
なお、これらモータ電源72は、詳しくは第4実施形態で説明するが、ビデオプロセッサ16の内部に限らず、例えば内視鏡12、光源14、モニタ18のいずれに設けられていることも好適である。
すなわち、内視鏡12自体が駆動制御部74を備えていても良いし、内視鏡12の外部に駆動制御部74が配設されていても良い(内視鏡システム10が駆動制御部74を備えていれば良い)。以下、本実施形態では、内視鏡12自体、及び、内視鏡12以外の内視鏡システム10の機器のいずれに駆動制御部74が配置されていても良いものとして説明する。そして、内視鏡12に駆動制御部74が接続されている場合とは、内視鏡12自体が駆動制御部74を有する場合と、内視鏡12の外部に駆動制御部74が配設されている場合とを含む。
同様に、内視鏡12自体がモータ電源72を備えていても良いし、内視鏡12の外部にモータ電源72が配設されていても良い(内視鏡システム10がモータ電源72を備えていれば良い)。以下、本実施形態では、内視鏡12自体、及び、内視鏡12以外の内視鏡システム10の機器のいずれにモータ電源72が配置されていても良いものとして説明する。そして、内視鏡12にモータ電源72が接続されている場合とは、内視鏡12自体がモータ電源72を有する場合と、内視鏡12の外部にモータ電源72が配設されている場合とを含む。
【0020】
モータ電源72は、モータ64に流される電流Iを測定する電流測定部82と、モータ64に加える電圧を設定する電圧設定部84とを有する。
駆動制御部74は、CPU90と、ポテンショメータ56の抵抗値を測定する抵抗値測定部(湾曲角取得部)92と、エンコーダ66のパルスをカウントするカウント処理部94と、モータ64の発生トルクTを算出するトルク算出部(トルク量検知部)96と、閾値入力部(設定部)98と、記憶部100とを有する。
抵抗値測定部92、カウント処理部94、トルク算出部96、閾値入力部98及び記憶部100はCPU90に電気的に接続されて制御される。また、モータ64はCPU90に電気的に接続されて制御される。
このため、駆動制御部74の抵抗値測定部92で、ポテンショメータ56の抵抗値を測定することによって、第1アングルノブ52のU方向及びD方向の操作量、すなわち入力量(回転角度)ψを得ることができ、第1湾曲部34のU方向及びD方向の湾曲量(湾曲角度)をそれぞれ推定することができる。したがって、駆動制御部74の抵抗値測定部92は第1湾曲駆動機構(アングルワイヤ42及び第1ドラム46)によって湾曲駆動された第1湾曲部34の湾曲量を算出する湾曲量算出部として機能する。また、駆動制御部74のカウント処理部94で、エンコーダ66のエンコーダパルスのカウントを処理してモータ64の回転位置情報(回転角度)ωを得ることができる。
【0021】
ここで、モータ64の電流量からトルクTを算出する場合、モータ64に流れる電流Iと、モータ64の出力トルクTとの関係は、T=k・Iとして表わされる。kはトルク定数でモータ64ごとに固有の値である。このため、駆動制御部74は、モータ64に流す電流Iを制御して、モータ64が発生するトルクTを算出できる。すなわち、駆動制御部74は、モータ電源72の電流測定部82で測定した電流Iに基づいてトルクを算出し、モータ64が発生しているトルクTを得ることができる。
【0022】
閾値入力部(閾値設定部)98は、例えば後述する閾値角度ψ,ψ,ψ,ψ,ψを設定するのに用いられる。記憶部100はこれら閾値角度ψ,ψ,ψ,ψ,ψを記憶するのに用いられるとともに、第1アングルノブ52のU方向及びD方向の操作量(回転角度)ψ、モータ64の回転位置情報(回転角度)ω等を記憶することができる。
【0023】
なお、この実施形態では、駆動制御部74は、閾値角度ψ,ψの絶対値が90度を超えた時点、すなわち、第1湾曲部34の湾曲角度が90度を超えた時点で第1湾曲部34が管孔LIの屈曲部Faを通過したと判断するものとする。
【0024】
第1アングルノブ52の回転角度ψと、第1湾曲部34の湾曲角度ηとは対応する。モータ64の回転角度ωと第2湾曲部36の湾曲角度θとは対応する。
この実施形態では、第1アングルノブ52の回転角度ψと、第1湾曲部34の湾曲角度ηとは一致又は略一致するものとして説明する。例えば第1アングルノブ52の回転角度ψを0度(真っ直ぐの状態)から例えば90度に回転させた場合、第1湾曲部34も真っ直ぐの状態(0度)から90度湾曲する。また、例えば第1アングルノブ52の回転角度ψを0度(真っ直ぐの状態)から例えば120度に回転させた場合、第1湾曲部34も真っ直ぐの状態(0度)から120度湾曲する。
説明を簡単にするため、モータ64の回転角度ωと第2湾曲部36の湾曲角度θとは一致又は略一致するものとする。駆動制御部74が例えばモータ64を制御して第3ドラム62の回転角度ωを0度から例えば90度に回転させた場合、第2湾曲部36も真っ直ぐの状態から90度湾曲する。
【0025】
そして、外力が無負荷状態で第2湾曲部36が真っ直ぐの直線状態(ニュートラル状態)θの内視鏡12のモータ64の回転位置を計測し、これを中立位置ωとして設定する。予め、外力が無負荷状態で直線状態の第2湾曲部36をニュートラル状態(角度θ)に対してU方向に目標湾曲角度θ(例えば120度)だけ湾曲させるために必要なトルクTuを計測するとともに、D方向に目標湾曲角度θ(例えば−120度)だけ湾曲させるために必要なトルクTdを計測する。そして、このとき計測したトルクTu,Tdを駆動制御部74の記憶部100に記憶させる。角度θ(120度),θ(−120度)は、例示であって、第2湾曲部36の回動可能角度の範囲内で、閾値入力部98で適宜に設定できる。
また、予め、外力が無負荷状態で直線状態の第2湾曲部36をニュートラル状態(角度θ)に対してU方向に角度θ(例えば120度)だけ湾曲させるために必要な時間Δtuを計測するとともに、D方向に角度θ(例えば−120度)だけ湾曲させるために必要な時間Δtdを計測する。このとき、第2湾曲部36の湾曲角度がニュートラル状態(角度θ)から角度θ(例えば120度)に至るまでの各角度における時間を計測しておく。
【0026】
なお、モータ64に例えばトルクTuを発生させるために、モータ電源72の電圧を設定する。そのような目的に利用される設定手法として、PID制御がある。PID制御は、フィードバック制御の一種であり、入力値の制御を、出力値と目標値との偏差、その積分、及び微分の3つの要素によって行う方法である。本実施形態では、モータ電源72の電圧情報を入力値とし、現在モータ64が発生しているトルク情報を出力値とし、駆動制御部74内で導出されたトルク情報を目標値としてPID制御を適用し、モータ電源72に与える電圧情報を導出する。すなわち、目標とするモータ64のトルクTの発生を、モータ電源72の電圧の制御により実現する。
また、後述するように、速度Vで第2湾曲部36を中立位置(初期位置)θに向かわせる場合、モータ電源72の電圧情報を入力値とし、モータ64の回転位置情報から得られるモータ64の回転速度を出力値とし、駆動制御部74内で導出された速度情報を目標値として、PID制御を適用し、モータ電源72に与える電圧情報を導出することにより実現する。
なお、モータ64の回転速度は、モータ64の回転位置情報の時間差分により算出した値を利用する。モータ回転速度V=X(t2)−X(t1),t2>t1である。ここで、X(t2)は時刻t2でのモータ64の回転位置、X(t1)は時刻t1でのモータ64の回転位置である。
【0027】
以下、本実施形態に係る内視鏡システム10を用いて、第1湾曲部34が所定の湾曲状態のときに、第2湾曲部36を第1湾曲部34の湾曲方向と同じ方向に第2湾曲駆動機構であるモータ64、第3ドラム62、ワイヤ44及び湾曲管36aを用いて湾曲させる動作を行う場合について図6に示すフローチャートを用いて説明する。ここでは、主に、第1及び第2湾曲部34,36を上方向(U方向)に動かす例について説明する。
まず、閾値入力部98で閾値角度ψ(例えば5度),ψ(例えば90度),ψ(例えば25度),ψ(例えば−90度),ψ(例えば−25度)を設定する。閾値角度ψは例えば0度から例えば10度の間の任意の値であることが好ましい。
なお、本実施形態では、ポテンショメータ56で検出される第1アングルノブ52のU方向の角度ψの閾値角度ψを90度として説明するが、閾値角度ψは90度に限ることはなく、100度や120度等、適宜に設定できるが、90度以上であることが好ましい。また、閾値角度ψは25度に限ることはなく、20度や30度等、適宜に設定できる。閾値角度ψ,ψも適宜に設定できる。ただし、閾値角度ψは閾値角度ψよりも大きい角度とし、閾値角度ψは閾値角度ψよりも小さい角度とする。なお、閾値角度ψ,ψはマイナスの値であるため、閾値角度ψの絶対値は、閾値角度ψの絶対値よりも大きい。
【0028】
第1アングルノブ52を初期位置からU方向又はD方向に回転させると、ポテンショメータ56で第1アングルノブ52の回転角度ψを得ることができる。そして、第1アングルノブ52をU方向に回転させて、第1アングルノブ52の回転角度ψの絶対値(|ψ|)が所定の閾値角度(例えば5度)ψ以上となったとき、すなわち、第1湾曲部34を湾曲させるための操作を行い始めたときに処理を開始する(S1)。ここで、このような処理の開始の判定は、ポテンショメータ(検知部)56で検知した信号をポテンショメータ56の抵抗値測定部92、CPU90及び記憶部100、すなわち駆動制御部74が判定部として機能することにより行われる。以下に説明する判断(S2,S3,S6,S7,S3’,S6’)も、ポテンショメータ56の抵抗値測定部92、CPU90及び記憶部100、すなわち駆動制御部74が判定部として機能することにより行われる。
【0029】
駆動制御部74は回転角度ψがプラスの値であればU方向に、マイナスの値であればD方向に第1アングルノブ52を回転させ始めている、と判断できる(S2)。以下、回転角度ψがプラスの値である、U方向に第1アングルノブ52を回転させる場合(ψ>0)について説明する。
【0030】
第1アングルノブ52をU方向に回転させながら、ポテンショメータ56で第1アングルノブ52のU方向の回転角度ψを検知する。駆動制御部74第1アングルノブ52のU方向の回転角度ψが閾値角度ψ(例えば90度)以上であるか、閾値角度ψ未満であるか判断し(S3)、角度ψ未満である場合、第2湾曲部36が外力を受けた場合であっても、CPU90からモータ64に湾曲駆動信号を出力してモータ64を制御して、速度Vで第2湾曲部36を湾曲させて、すなわち、第2湾曲部36にトルクTuを付加して第2湾曲部36がニュートラル状態を維持しようとする(S4)。トルクTuは一定である必要はなく、トルクTuによって第2湾曲部36がU方向に湾曲させられるのを防止するとともに、D方向に湾曲させられるのを防止できる。したがって、第1アングルノブ52のU方向の回転角度が0度より大きく、例えば角度ψ(例えば90度)より小さい場合、外力を受けて第2湾曲部36が湾曲させられたとしても、第2湾曲部36は真っ直ぐの状態を維持しようとする。
【0031】
駆動制御部74はポテンショメータ56で得た第1アングルノブ52の回転角度ψが角度ψ(例えば90度)以上となった時点で、第1湾曲部34が管孔LIの屈曲部Faを通過したと判断する。
すなわち、ポテンショメータ56は、第1湾曲部34を湾曲させているときに第1湾曲部34の湾曲角度が90度を超えたことを検知する。そして、駆動制御部74は、ポテンショメータ56で得られた信号に基づいて、第1湾曲部34が管孔LIの屈曲部Faを通過したと判断する。
駆動制御部74は、同時に、CPU90からモータ64に湾曲駆動信号を出力してモータ64に第2湾曲部36をU方向に湾曲させるための一定のトルク(第2湾曲部36をU方向に120度湾曲させるためのトルク)Tuを発生させ続ける(S5)。
すなわち、第1湾曲部34が所定角度(90度)曲げられた時点で、第1アングルノブ52に設けられたポテンショメータ56は第1湾曲部34が管孔LIの屈曲部Faを通過したものと検知する検知部として機能し、第2湾曲部36を湾曲させるタイミングを規定する。このため、一定のトルクTuによって、第3ドラム62及びワイヤ44を介して第2湾曲部36を第1湾曲部34と同じU方向に湾曲させる。
【0032】
一旦、第1アングルノブ52の回転角度ψが角度ψ(例えば90度)以上となった後、第1アングルノブ52の回転角度ψを減らしてもなお回転角度ψが角度ψ(例えば25度)以上である場合(S6)、駆動制御部74はモータ64により一定量のトルクTuを発生させ続ける。このため、第2湾曲部36がU方向に湾曲した所定の湾曲状態に維持される。
【0033】
第1アングルノブ52の回転角度ψが角度ψ(例えば90度)以上となった後、第1アングルノブ52の回転角度ψを減らして角度ψ(例えば25度)未満とした場合(S6)、モータ64を制御して(CPU90からモータ64に湾曲駆動信号を出力して)、速度Vで第2湾曲部36を中立位置θに向かって湾曲量(θ)を減らす(S4)。言い換えると、第1アングルノブ52の回転角度ψを角度ψ以上とした後、第1アングルノブ52の回転角度ψを減らして角度ψ未満とした場合(S6)、モータ64を制御して、速度Vを維持するような任意のトルクTu(一定である必要はない)で第2湾曲部36の湾曲量θを減らし、第2湾曲部36を真っ直ぐの状態(中立位置)θに近づける(S4)。
【0034】
そして、第1アングルノブ52の回転角度の絶対値|ψ|が所定の角度(例えば5度)ψに到達した場合(S7)、処理を終了する。第1アングルノブ52の回転角度の絶対値|ψ|が所定の角度ψ以上である場合は上述した処理を続ける。すなわち、再び第1湾曲部34の回転角度ψを角度ψ(例えば90度)以上にした場合(S3)、駆動制御部74はモータ64に第2湾曲部36をU方向に湾曲させるための一定のトルクTuを発生させる(S5)。
【0035】
以下、第1湾曲部34及び第2湾曲部36のD方向(回転角度ψ<0)の湾曲について簡単に説明する。第1湾曲部34をU方向に湾曲させた後、第1湾曲部34をD方向に湾曲させる場合、一旦処理が終了し、図6に示すフローに沿って再スタートする。
駆動制御部74は第1アングルノブ52のD方向の回転角度ψが角度ψ(例えば−90度)以下であるか、角度ψよりも大きいか判断し(S3’)、角度ψよりも大きい場合、第2湾曲部36が外力を受けた場合であっても、モータ64を制御して、一定の速度(−V(上述した速度Vと逆方向の速度))で第2湾曲部36を湾曲させて(すなわち、トルクTdを付加して)第2湾曲部36がニュートラル状態を維持する(S4’)。トルクTdは一定である必要はなく、トルクTdによって第2湾曲部36がU方向及びD方向に湾曲させられるのを防止でき、第2湾曲部36は真っ直ぐの状態を維持しようとする。
【0036】
ポテンショメータ56で得た第1アングルノブ52の回転角度ψが角度ψ(例えば−90度)以下となった場合、駆動制御部74はモータ64に第2湾曲部36をD方向に湾曲させるための一定のトルクTdを発生させる(S5’)。このため、一定のトルクTdによって、第3ドラム62及びワイヤ44を介して第2湾曲部36を第1湾曲部34と同じD方向に湾曲させる。
【0037】
一旦、第1アングルノブ52の回転角度ψが角度ψ(例えば−90度)以下となった後、第1アングルノブ52の回転角度ψを増やしてもなお回転角度ψが角度ψ(例えば−25度)以下である場合(S6’)、駆動制御部74はモータ64に一定量のトルクTdを発生させ続ける。このため、第2湾曲部36がD方向に湾曲した所定の湾曲状態に維持される。
【0038】
第1アングルノブ52の回転角度ψが角度ψ(例えば−90度)以下となった後、第1アングルノブ52の回転角度ψを増やして角度ψ(例えば−25度)よりも大きくした場合(S6’)、駆動制御部74はモータ64を制御して、速度(−V0)で第2湾曲部36を中立位置θに向かって湾曲量を減らす(S4’)。
【0039】
そして、第1アングルノブ52の回転角度ψの絶対値|ψ|が所定の角度(例えば5度)ψに到達した場合(S7)、処理を終了し、第1アングルノブ52の回転角度ψの絶対値|ψ|が所定の角度ψ以上である場合は上述した処理を続ける。
【0040】
このように、第2湾曲部36は、第1アングルノブ52を回転操作して、第1湾曲部34を所定の湾曲量η(例えば90度)だけ湾曲させる前は真っ直ぐの状態を維持し、第1湾曲部34の湾曲角度ηが所定の湾曲角度η(例えば90度)を超えた時点をトリガーとして、第2湾曲部36を第1湾曲部34と同じ方向に湾曲させることができる。一方、第1湾曲部34の湾曲角度ηが所定の湾曲角度η(例えば90度)を超える前、又は、所定の湾曲角度η(例えば90度)を超えた後、所定の湾曲角度η(例えば25度)未満となったときに、第2湾曲部36を真っ直ぐの状態にすることができる。
【0041】
したがって、第1湾曲部34をU方向に湾曲させる場合、D方向に湾曲させる場合は、いずれにしても、ポテンショメータ56によって検出された第1アングルノブ52の回転角度ψが閾値入力部98で設定した閾値(第1閾値)ψ,ψの絶対値よりも大きくなる場合に、第2湾曲部36を初期位置θから所定の湾曲量θ,θまで湾曲させて、その第2湾曲部36を所定の湾曲量θ,θまで湾曲させた状態を維持するためのトルクTu,Tdをモータ64に付加し続ける。
このように、ポテンショメータ56によって検出された第1アングルノブ52の回転量(第1湾曲部34を湾曲させる湾曲量)が閾値入力部(設定部)98で設定した第1閾値角度ψ,ψの絶対値よりも大きくなる場合に、駆動制御部74は第1アングルノブ52の回転量に応じて湾曲した第1湾曲部34と同じ方向に第2湾曲部36を初期位置θから所定の湾曲量θ,θまで湾曲させてその第2湾曲部36を湾曲量θ,θまで湾曲させた状態を維持するためのトルクTu,Tdをモータ64に付加し続ける。このため、この実施形態に係る内視鏡システム10は、閾値入力部98で設定した第1閾値角度ψ,ψの絶対値によって、第1湾曲部34に追従して第2湾曲部36を自動的に同じ方向に湾曲させることができる。したがって、第2湾曲部36の湾曲方向を第1湾曲部34と必ず同じ方向に規定することによって、第1湾曲部34を例えば大腸等の管孔に引っ掛けた状態が意図せず解除されるのを防止でき、挿入部24の先端を手前側から奥側に向かって挿入する際の挿入性を向上させることができる。
【0042】
モータ64は、駆動制御部74に接続されることにより、第1湾曲部34が湾曲している場合、第1湾曲部34の湾曲方向と反対の方向に第2湾曲部36が湾曲するのを防止するトルクTu,Td,Tu,Td,Tu,Tdをワイヤ44に付加する。このため、第1湾曲部34を湾曲させて例えば管孔に引っ掛けた状態が意図せず解除されるのをより確実に防止できる。
また、ポテンショメータ56による第1アングルノブ52の回転角度ψが閾値入力部98で設定した閾値(第1閾値)ψ,ψの絶対値を越えた後、閾値ψ,ψの絶対値よりも小さい閾値(第2閾値)ψ,ψの絶対値よりも大きい場合は第2湾曲部36を所定の湾曲量θ,θの状態に維持し、閾値(第2閾値)ψ,ψの絶対値よりも小さくした場合に、モータ64には第2湾曲部36を初期位置θまで戻すトルクTu,Tdを付加する。このため、第1湾曲部34の湾曲量を減少させたときに、第2湾曲部36の湾曲量を追従して減少させることができるので、2つの湾曲部34,36の湾曲状態を簡単に調整できる。
【0043】
このように動作する内視鏡12の挿入部24の先端を管孔の一種である大腸LIの内部の手前側(例えば肛門側)から奥側(例えば小腸や胃側)に向かって挿入する場合の動作について図7を用いて説明する。
術者は内視鏡12の操作部22を左手で把持しながら、右手で挿入部24の可撓性を有する管状部38を保持する。この状態で、モニタ18に表示される画面でいわゆる内視鏡画像を確認しつつ、第1及び第2アングルノブ52,54を左手で操作しながら、大腸LIの管腔(管孔)内を肛門側(手前側)から奥側に向かって挿入部24の先端を挿入していく。
【0044】
例えば図7(A)に示す大腸LIの屈曲部Fa,Fbを有するS状結腸の奥側に内視鏡12の挿入部24の先端を挿入していく場合、手前側の屈曲部Faに挿入部24の先端を配置する。
図7(B)に示すように、挿入部24の先端が大腸LIの屈曲部Faにあるときに第1アングルノブ52を例えばU方向に回転させ(図6中のS1,S2参照)、挿入部24の第1湾曲部34をU方向に徐々に湾曲させる(図6中のS3)。このとき、第2湾曲部36に大腸LIの内壁が当たっても第2湾曲部36は真っ直ぐの状態を維持しようとする(図6中のS3,S4)。すなわち、第2湾曲部36がD方向に湾曲するのが防止され、2つの湾曲部34,36が全体としてS字状となるのが防止されている。
【0045】
図7(C)に示すように、大腸LIの屈曲部Faにある第1湾曲部34をU方向にニュートラル状態から90度を越えるように湾曲角度を増大させながら挿入部24の先端を奥側に移動させようとする(図6中のS3)とき、第1湾曲部34の湾曲角度が90度よりも小さい場合、第2湾曲部36は真っ直ぐの状態を維持する。このため、第1湾曲部34の湾曲角度が90度よりも小さい場合、大腸LIの屈曲部Faを押し上げてしまうことを防止するため、術者は大腸LIに負荷を与えないようにゆっくりと慎重に手技を行う。
【0046】
図7(D)及び図7(E)に示すように、第1湾曲部34をU方向に90度以上湾曲させる(図6中のS3)と、駆動制御部74は第2湾曲部36を第1湾曲部34と同じU方向に湾曲させる(図6中のS5)。なお、第1湾曲部34をU方向に90度に湾曲させる意図は、屈曲部Faに第1湾曲部34を確実に引っ掛けるとともに、屈曲部Faの奥側を観察するためである。このため、内視鏡12の挿入部24の先端が屈曲部Faの奥側の屈曲部Fbに向かって移動する。このとき、第2湾曲部36を湾曲させると、第1湾曲部36が屈曲部Faの奥側の屈曲部Fbに向かって移動するので、第1湾曲部34による大腸LIの屈曲部Faの押し上げ状態は緩和される。このため、挿入部24の先端が大腸LIの奥側に向かって自動的に移動する。このとき、第1及び第2湾曲部34,36で屈曲部Faをしっかりと保持しているので、挿入部24を手前側に引くことによって、大腸LIを引き寄せることもできる。
【0047】
第1湾曲部34の湾曲量が90度以上である場合、第2湾曲部36も相当量湾曲しているため、大腸LIの奥側の屈曲部Fbを観察するというよりも、手前側の屈曲部Faに近接した内壁を観察する状態となる。このため、大腸LIの奥側の屈曲部Fbを観察するために、第1湾曲部34の湾曲量を減少させる。第1湾曲部34の湾曲量を減少させた際に、第1湾曲部34が25度以上である場合、第2湾曲部36が内視鏡12の挿入部24の先端が屈曲部Faの奥側の屈曲部Fbに向かって移動したときと同様の湾曲状態を維持する(図6中のS6)。第1湾曲部34の湾曲量が25度未満となった場合、図7(F)に示すように、内視鏡12の挿入部24の先端を屈曲部Faの奥側の屈曲部Fbに向かって移動させながら、第2湾曲部36の湾曲量が速度Vで減少する(図6中のS6,S7)。このため、図7(G)に示すように、第1湾曲部34及び第2湾曲部36が真っ直ぐの状態に近づき、挿入部24の先端を容易に大腸LIの奥側の屈曲部Fbに移動させることができる。このとき、可撓性を有する管状部38は大腸LIの屈曲部Faを通るので、曲げられている。
【0048】
そして、第1及び第2アングルノブ52,54を操作して第1湾曲部34を4方向に動かし、第1湾曲部34に対して第2湾曲部36を適宜に追従させる作業を繰り返して、内視鏡12の挿入部24の先端を大腸LIの奥側に徐々に移動させていく。
【0049】
なお、図7(D)に示すように、第1湾曲部34を湾曲させながら大腸LIを押し上げそうになった場合、第1湾曲部34の湾曲角度が閾値角度ψ(例えば90度)を越えると図7(E)に示すように第1湾曲部34に追従して第2湾曲部36を自動的に湾曲させることとなるので、この実施形態に係る内視鏡システム10は、内視鏡12の挿入部24が大腸LIに負荷をかけるのを極力防止できる。
【0050】
このように、本実施形態に係る内視鏡システム10は、第1湾曲部34をU方向又はD方向に例えば90度に湾曲させた時点をトリガーとして、駆動制御部74から第2湾曲部36を第1湾曲部34と同じ方向に湾曲させるように第2湾曲駆動機構のモータ64に信号を送ることができる。第2湾曲部36の湾曲開始タイミングを第1湾曲部34が90度を超える状態に湾曲した時点に規定することによって、内視鏡12の操作者が第2湾曲部36の湾曲開始タイミングを容易に予想することができる。したがって、管孔LIに対する挿入部24の挿入性を向上させ、かつ、操作性も向上させることができる。
特に、この実施形態に係る内視鏡12の第1アングルノブ52を回動させたときに、第1湾曲部34が第1アングルノブ52の回動角度と同じ角度だけ湾曲するように構成している。第1アングルノブ52は内視鏡12の操作部22を把持して操作者が回動させるので、第2湾曲部36が湾曲を開始するタイミングを容易に予測することができる。
【0051】
そして、内視鏡12の第1湾曲部34及び第2湾曲部36に対して、このような制御を行うことによって、内視鏡12の挿入部24の先端を曲がりくねった管孔LIの奥側に挿入する際の挿入をアシストすることができる。したがって、本実施形態に係る内視鏡システム10を用いれば、術者の第1アングルノブ52の操作、すなわち、第1湾曲部34の湾曲動作に追従して所定のタイミングで第2湾曲部36を湾曲させたり、真っ直ぐの状態を保持するように動作するので、術者による内視鏡12の挿入部24を管孔LIの奥側に挿入する操作を補助することができる。このため、例えば大腸LI等、管孔LIの奥側に挿入するのに困難を伴う手技を行う場合であっても、術者(操作者)の内視鏡12の操作を容易にすることができるので、術者に与える疲労を低減することができる。また、大腸等を内視鏡12を用いて観察される患者にとっても、術者(操作者)は挿入部24の挿入操作をより容易に行うことができるので、肛門側から胃や小腸側に向かって挿入部24の先端が挿入されるのにかかる時間を短くすることができ、患者に与える苦痛が軽減される。
【0052】
また、第1湾曲部34をU方向に湾曲させているときには第2湾曲部36を真っ直ぐの状態又はU方向に湾曲させた状態として維持でき、第2湾曲部36がD方向に湾曲するのを防止している。このため、大腸LIの奥側に挿入部24の先端を挿入するために、例えばU方向に第1湾曲部34を180度近く湾曲させて大腸LIの屈曲部Faに第1湾曲部34を引っ掛けた状態で第2湾曲部36が意図せずD方向に湾曲して、第1湾曲部34を屈曲部Faに引っ掛けた状態が解除されるのを防止できる。
【0053】
なお、第1湾曲部34の湾曲角度が90度以上となった時点で第2湾曲部36を第1湾曲部34と同じ方向に湾曲させて第2湾曲部36の湾曲角度が例えば90度となったことをエンコーダ66のパルスカウント処理部94で検知したとき、第2湾曲部36の湾曲を維持する。このとき、図8(A)に示すように、第1湾曲部34及び第2湾曲部36を合わせた湾曲角度は180度を超えた状態となる。この状態で、図8(B)に示すように、挿入部24を手前側から奥側に向かって押し込むとともに、第1湾曲部34の湾曲角度を小さくするように、第1アングルノブ52を操作する。そうすると、図8(C)に示すように、挿入部24の先端硬質部32の先端面の向きを、管孔LIの奥側に向けることができる。
【0054】
このような作業を行わない場合、図8(A)に示すように、挿入部24の先端の先端面の向きを管孔LIの内壁面に向けてしまう。上述した作業を行うことは、挿入部24の先端を管孔LIの奥側に向けていくときに好ましい。そして、このような作業を行うことによって、第1湾曲部34で管孔LIの壁面を掴んでいたものを、第1湾曲部34の基端側の第2湾曲部36で同じ位置の壁面を掴むことができるので、挿入部24の先端の位置を管孔LIの奥側に移動させることができる。
【0055】
本実施形態では、第2湾曲部36をU方向及びD方向の2方向だけに湾曲するものとして説明したが、4方向に湾曲させるように構成することも可能である。第1湾曲部34を例えばU方向とR方向との間に湾曲させる場合、図6に示すフローチャートを第1湾曲部34のR方向やL方向に湾曲させる場合にも拡張すれば、例えば第2湾曲部36をU方向とR方向との間に湾曲させることができる。このため、駆動制御部74は、U方向とR方向との間に第1湾曲部34を90度を超える状態に湾曲させた時点で、第2湾曲部36もU方向とR方向との間に追従して湾曲させることができる。
なお、第1湾曲部34がR方向又はL方向に適宜の角度に湾曲し、かつ、U方向又はD方向に90度を超える状態に湾曲した場合、U方向又はD方向の湾曲角度だけで第2湾曲部36の湾曲開始タイミングを判断するものとすることが好ましい。
【0056】
次に、この実施形態に係る内視鏡システム10の第1変形例について、図9を用いて説明する。
【0057】
予め、第1湾曲部34を90度を超える状態に湾曲させた状態(図9中のS3)で、第2湾曲部36を真っ直ぐの状態から第1湾曲部34の湾曲方向と同じ方向に無負荷状態で30度/秒で湾曲させる際の時間と角度との関係を取得しておく(図9中のS5)。すなわち、管孔LI内において、第1湾曲部34を90度を超える状態に湾曲させた状態で、第2湾曲部36を第1湾曲部34と同じ方向に湾曲させていく際の、単位時間tあたりの予定湾曲角度θiを求める。このとき、駆動制御部74は、エンコーダ66からの信号により単位時間tあたりの予定湾曲角度θiを計測でき、例えば記憶部100に記憶できる。
【0058】
実際に、管孔LI内に挿入部24を挿入した状態で、第1湾曲部34が90度を超えた時点(図9中のS3)で、駆動制御部74は第2湾曲駆動機構に信号を送り、第2湾曲部36を湾曲させる(図9中のS5)。駆動制御部74は、適宜の時間間隔で、記憶部100に記憶された第2湾曲部36の予定湾曲角度θiと、実際の湾曲角度θrとの差分を求める。実際の湾曲角度θrが予定湾曲角度θiよりも小さい場合(図9中のS5a)、駆動制御部74は第2湾曲駆動機構に信号を送り、第2湾曲部36の湾曲を停止させる(図9中のS5b)。
この場合、実際の使用状態を考慮して、実際の湾曲角度θrが予定湾曲角度θiの1倍よりも小さい例えば0.9倍等よりも小さい場合などに、第2湾曲部36の湾曲を停止させるようにしても良い。
【0059】
このように、第2湾曲部36の湾曲を停止する場合、例えば先端硬質部32が管孔LIの内壁に当接していることが予測される。このため、駆動制御部74は、第2湾曲部36の湾曲を停止させて、管孔LIに先端硬質部32から力を負荷するのを防止する。
【0060】
図9に示す他の一連のフローは第1実施形態で説明したのと同様であるので、ここでの説明を省略する。
【0061】
次に、この実施形態に係る内視鏡システム10の第2変形例について説明する。第1変形例は単位時間あたりの湾曲角度変化により第2湾曲駆動機構を制御するものとして説明したが、この変形例では、単位角度あたりの時間変化により第2湾曲駆動機構を制御するものとして説明する。
【0062】
予め、第1湾曲部34を90度を超える状態に湾曲させた状態で、第2湾曲部36を真っ直ぐの状態から第1湾曲部34の湾曲方向と同じ方向に無負荷状態で30度/秒で湾曲させる際の時間と角度との関係を取得しておく。すなわち、管孔LI内において、第1湾曲部34を90度を超える状態に湾曲させた状態で、第2湾曲部36を第1湾曲部34と同じ方向に湾曲させていく際の、一定の角度θだけ動作するのにかかる時間Δtを求める。このとき、駆動制御部74は、エンコーダ66からの信号を用いて、ある角度湾曲するのにかかる時間を計測でき、例えば記憶部100に記憶できる。
【0063】
すなわち、管孔LI内において、第1湾曲部34を90度を超える状態に湾曲させた状態で、第2湾曲部36を第1湾曲部34と同じ方向に湾曲させていく際の、単位角度だけ動くのにかかる予定時間Δtを求める。このとき、単位角度は例えば1度ごとや10度ごと等、適宜に設定できる。
【0064】
実際に、管孔LI内に挿入部24を挿入した状態で、第1湾曲部34が90度を超えた時点で、駆動制御部74は第2湾曲駆動機構に信号を出力し、第2湾曲部36を湾曲させる。適宜の角度θを動くのにかかる時間Δtを検知する。実際の単位角度動くのにかかる時間trが予定時間tiよりも長い場合、例えば予定時間tiの1.2から1.3倍程度かかる時点で、駆動制御部74は第2湾曲駆動機構に信号を送り、第2湾曲部36の湾曲を停止させる。この場合、例えば先端硬質部32が管孔LIの内壁に当接していることが予測される。このため、第2湾曲部36の湾曲を停止させて、管孔LIに先端硬質部32から力を負荷するのを防止する。
【0065】
次に、第2実施形態について図10から図14を用いて説明する。この実施形態は第1実施形態の変形例であって、第1実施形態で説明した部材と同一の部材には同一の符号を付し、詳しい説明を省略する。
【0066】
この実施形態では、第1湾曲部34のU方向及びD方向のうちの一方の湾曲角度が90度を超えた時点で観察光学系(観察手段)28を用いた内視鏡像の画像処理を図11に示す画像処理部112で行うことにより、第2湾曲部36を湾曲させるか否か判断する場合について説明する。
【0067】
図11に示すように、この実施形態に係る内視鏡システム10のビデオプロセッサ16は、撮像手段を有する観察光学系28に接続されているとともに駆動制御部74に接続された画像処理部(暗部抽出部)112を有する。
【0068】
挿入部24を管孔LIの内部に挿入して照明光学系30による照明光で管孔LIの内部を照明したときに、図12に示す内視鏡像は、先端硬質部32の先端面に対して対向した近い位置が明部であり、照明光で照明され難い位置や先端硬質部32の先端に対して遠い位置が暗部Sとなる。このように、観察画像(内視鏡像)における相対的な明暗を判断、特に暗部Sを抽出する手段として、公知の画像処理技術である2値化処理、コントラスト調整、輪郭抽出技術などがある。これら画像処理技術は公知で広く用いられているので、ここでの説明を省略する。そして、これら画像処理技術によって、画像処理部112は、存在する場合には、内視鏡画像を相対的に明部と暗部とに分けることができ、特に暗部Sを抽出することができる。
なお、例えば明るさに適宜に設定可能な閾値を設ければ、明部が存在するが、暗部が存在しないこともあり得る。また、その逆もあり得る。明部と暗部との差が小さい場合、例えば内視鏡画像中のコントラスト比が適宜に設定可能な所定の値よりも小さい場合、明部及び/又は暗部が抽出できないとすることができる。一例として、先端硬質部32の先端面が管孔LIの壁面に対向している場合である。このとき、内視鏡像によっては、挿入部24の先端硬質部32を向かわせることが可能な行先が見つかっていないので、第1湾曲部34のU方向又はD方向の湾曲角度が90度を超えたか否かには関わらず、駆動制御部74は、屈曲部Faを通過したとは判断しないようにする。
【0069】
例えば大腸等の管孔LIの内部に挿入部24を挿入した状態で、画像処理部112が観察光学系28で得られた像について画像処理を行うと、図12に示すように、管孔LIの内部の内視鏡画像の暗部Sを示すことができる。ここで、挿入部24の第1湾曲部34のU方向、D方向、R方向及びL方向と、観察光学系28の撮像素子(図示せず)で撮像した像の向き、すなわち、モニタ18に表示される像の向きとは、一致する。このため、画像処理部112は、観察光学系28により得られた像に暗部Sが検出されたときの内視鏡12の挿入部24の先端硬質部32に対する位置を信号化することができる。
【0070】
画像処理部112を用いて内視鏡像の暗部Sを抽出する画像処理を行う場合、第1湾曲部34のU方向又はD方向(U方向及びD方向の少なくとも一方)の湾曲角度が90度を超えた時点をトリガー(閾値角度)として行うものとする。すなわち、第1湾曲部34の湾曲角度が90度を超えた時点で、ポテンショメータ56の抵抗値測定部92からCPU90を介して画像処理部112に信号を出力し、観察光学系28で得た像の画像処理を開始する。駆動制御部74は、画像処理部112に信号を出力し、観察光学系28で得た像の画像処理を開始する。
すなわち、この実施形態では、ポテンショメータ56から駆動制御部74に入力される信号は画像処理部112による画像処理の開始タイミングを規定する。
【0071】
そして、この実施形態では、駆動制御部74から第2湾曲駆動機構に信号を出力して第2湾曲部36を湾曲させる時点を、第1実施形態で説明した第1湾曲部34の湾曲角度が90度を超えたことを検知した時点、から、画像処理部112で被検体の像を明部と暗部Sとに画像処理し、画像処理部112による画像処理により被検体の像の中に暗部Sが検出された時点に遅らせるようにした。そして、画像処理部112による画像処理により被検体の像の中に暗部Sが検出された時点を第1湾曲部34が管孔LIの屈曲部Faを通過した時点と規定する。暗部Sが検出された場合、その暗部Sの位置は、挿入部24の先端硬質部32を向かわせることができる方向(行先)を示している。このため、挿入部24の先端硬質部32の行先を確認した上で、第2湾曲部36を第1湾曲部34と同じ方向に湾曲させることができる。
【0072】
そして、この実施形態では、第1湾曲部34をU方向又はD方向に90度を超えるように湾曲させた状態で、画像処理部112により内視鏡画像中に暗部Sが検出された場合、図10中に破線で示す範囲B(内視鏡像の拡大/縮小で位置が変化する)の内側、例えばある矩形範囲B内に暗部S、特に暗部Sの中心が検出されたときは、駆動制御部74は第2湾曲部36を第1湾曲部34の湾曲方向と同じ方向に湾曲させる信号(モータ64を駆動させる信号)を出力し、ある矩形範囲Bの外側に暗部S、特に暗部Sの中心が検出されたときには第2湾曲部36は真っ直ぐの状態を維持する。後者の場合、内視鏡12の操作者が例えば右手で保持した挿入部24を捩じる等して、内視鏡画像中の暗部Sがある矩形範囲Bの内側に配置されたときに、駆動制御部74は、第2湾曲部36を第1湾曲部34の湾曲方向と同じ方向に湾曲させる信号を出力する。
なお、ある矩形範囲Bの外側に暗部S、特に暗部Sの中心が検出されたときに第2湾曲部36が真っ直ぐの状態を維持するのは、そのような状態でU方向又はD方向に第2湾曲部36を湾曲させたときに、U方向又はD方向の可動範囲が矩形範囲Bの内側に比べて小さいので、管孔LIの内壁に先端硬質部32が当接し易くなるからである。なお、矩形範囲Bは適宜に設定可能であり、矩形範囲Bは設定しなくても良い。
【0073】
図11に示すように、この実施形態に係る内視鏡システム10は、内視鏡12の挿入部24の第1湾曲部34の湾曲角度検出手段、第1湾曲部34の先端位置をリアルタイムで検出する位置検出手段、及び、第1湾曲部34が移動しているか否か検出する移動検出手段としての機能を備える公知のUPD装置(検知部、第1湾曲部34の湾曲角度検知装置)122を有する。UPD装置122は、例えばビデオプロセッサ16の駆動制御部74に接続されている。
図10に示すように、内視鏡12の挿入部24の第1湾曲部34には、挿入部24の挿入形状を検出するために、それぞれ位置情報を発生する位置情報発生手段として複数のコイル(UPDコイルという)124a,124b,124c,…が例えば所定の間隔に配置されている。
【0074】
そして、図11に示すUPD装置122でこれらUPDコイル124a,124b,124c,…の各コイルの位置を検出することにより、第1湾曲部34の先端位置、湾曲角度を含む第1湾曲部34の形状、第1湾曲部34の長手軸の方向(向き)を検出することができる。このため、UPD装置122により、モニタ18に挿入部24の第1湾曲部34の先端の位置や、湾曲角度を含む第1湾曲部34の形状を表示できる。
【0075】
次に、この実施形態に係る内視鏡システム10の作用について説明する。
第1実施形態で説明したように、内視鏡12の挿入部24を管孔LIの手前側から奥側に向かって挿入していく。挿入部24の先端硬質部32が管孔LIの屈曲部Faに差し掛かったときに、主に第1アングルノブ52を操作して、第1湾曲部34をU方向及びD方向に適宜に湾曲させる。すなわち、内視鏡12の操作者(例えば医師)は、第1湾曲部34を湾曲させて、モニタ18に表示される内視鏡画像を観察しながら管孔LIの暗部Sを探していく。このとき、例えば図13(A)に示すように、モニタ18には管孔LIの内壁が表示される。
【0076】
第1実施形態で説明したポテンショメータ56で第1湾曲部34の湾曲角度を推定した結果、及び/又は、上述したUPD装置122でUPDコイル124a,124b,124c,…の位置及び姿勢をリアルタイム検出した結果、ポテンショメータ56の抵抗値測定部92、すなわち駆動制御部74、及び/又は、UPD装置122は、第1湾曲部34のU方向又はD方向の湾曲角度が90度を超えた時点で、駆動制御部74のCPU90を介して画像処理部112にトリガー信号を出力する(図14中のS3)。
【0077】
そして、第1湾曲部34のU方向又はD方向の湾曲角度が90度を超える状態で、かつ、画像処理部112が図13(B)に示す管孔LIの暗部Sを検知したとき(図14中のS3a)、画像制御部112はさらに暗部Sの中心位置が所定の範囲Bの内側にあるか否か判断する。図13(B)に示す状態において、暗部Sが範囲Bの内側にあると判断したとき、画像処理部112は駆動制御部74に信号を出力する。駆動制御部74はこの時点を、第1湾曲部34が管孔LIの屈曲部Faを通過した時点であると判断するとともに、モータ64に信号を出力し、図13(C)に示すように、第1湾曲部34を湾曲させた方向と同じ方向に第2湾曲部36を湾曲させる。
【0078】
第2湾曲部36を湾曲させているときであっても、UPD装置122は第1湾曲部34の湾曲角度や先端の位置を検知し続けている。このため、UPD装置122により第1湾曲部34の先端の移動量が少ない状態や、先端が移動しない状態がある設定時間続いていると判断されたら(図14中のS51)、UPD装置122は駆動制御部74のCPU90を通して第2湾曲駆動機構のモータ64に対し、第2湾曲部36をさらに湾曲させるのを防止し、第2湾曲部36の湾曲角度を維持するように信号を出力する(図14中のS52)。すなわち、UPD装置122は、駆動制御部74を用いて第2湾曲部36の湾曲を停止するタイミングを決定している。
なお、第2湾曲部36を湾曲させるように第2湾曲駆動機構を動作させたときに、第1湾曲部34の移動量が少ない状態や先端が移動しない状態とは、例えば先端硬質部32が管孔LIの内壁面に当接して、内壁面を押圧した状態である。
【0079】
また、第2湾曲部36の湾曲動作を停止させるトリガーとしては、UPD装置122により第1湾曲部34の位置(移動状態)を検出して用いるほか、第2湾曲部36の単位時間当たりの推定湾曲角度を用いても良い。第2湾曲部36は例えば30度/秒の湾曲速度で湾曲するので、エンコーダ66により計測された時間に対する推定湾曲角度が、閾値入力部(設定部)98で設定されるある設定値以上に差があれば、すなわち、第2湾曲部36の単位時間当たりの目標湾曲角度に対してある閾値以上に湾曲角度が小さければ、第2湾曲部36の湾曲を停止させる。
【0080】
このように、第1湾曲部34の移動がUPD装置122で検知できなくなったり、駆動制御部74に接続されたエンコーダ66により第2湾曲部36の湾曲角度を検知したときに湾曲角度が増大しないと判定されたりしたときには、駆動制御部74は、第2湾曲駆動機構のモータ64に対し、第2湾曲部36をさらに湾曲させるのを防止し、第2湾曲駆動機構で第2湾曲部36の湾曲角度を維持するように制御するための信号を出力する。
【0081】
なお、第1湾曲部34の湾曲角度が90度を超えた時点で画像処理を行った際に、管孔LIの暗部Sが検出されなかった場合、駆動制御部74は、第2湾曲部36を湾曲させず、真っ直ぐの状態を維持する。
【0082】
第1湾曲部34の湾曲角度が90度を超えた時点で再度の画像処理により管孔LIの暗部Sが検出された場合、上述したように第2湾曲部36を湾曲させる。
【0083】
第1湾曲部34のU方向又はD方向の湾曲角度が90度を超える状態で、かつ、画像処理部112が図13(B)に示す管孔LIの暗部Sを検知したとき、駆動制御部74は、暗部Sの中心位置が所定の範囲Bの内側にあるか否か判断する。暗部Sの中心位置が範囲Bの外側にある場合、駆動制御部74の記憶部100は暗部Sが検知されなかったものとして記憶する。
【0084】
内視鏡12の操作者は、第2湾曲部36が湾曲しないことをモニタ18の表示や、右手の感覚等で確認した後、例えば第1湾曲部34の湾曲角度を90度よりも小さくするように戻し、挿入部24を捩じる。
【0085】
第1湾曲部34を湾曲させたときにU方向又はD方向に90度以上湾曲した状態であれば、画像処理部112は再度の画像処理を行う。暗部Sの中心位置が矩形範囲Bの内側にあるとき、記憶部100に記憶された情報から、画像処理部112による前回の画像処理時に管孔LIの暗部Sが未検出であったと判断し、第2湾曲部36を第1湾曲部34の湾曲方向と同じ方向に湾曲させる。
【0086】
この実施形態では、画像処理部112を用いる例について説明したが、近年の内視鏡には、挿入部24の先端硬質部32の先端面からの距離を測定する測距機能を有するものがある。この測距機能を用いて計測された最も遠い位置を暗部Sの中心としても良い。
【0087】
次に、第3実施形態について図15及び図16を用いて説明する。この実施形態は第1及び第2実施形態の変形例であって、第1及び第2実施形態で説明した部材と同一の部材または同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、詳しい説明を省略する。
【0088】
この実施形態に係る内視鏡システム10は、第2実施形態で説明した公知のUPD装置122を有する。
【0089】
図15に示すように、この実施形態に係る内視鏡12は、第1湾曲駆動機構の2つのモータ(駆動源)134a,134bにより第1湾曲部34を4つの方向に湾曲させることができる。モータ134a,134bにはそれぞれエンコーダ136a,136bが配設されている。この実施形態では、各ドラム46,48の回動角度は第1実施形態で説明したように、第1湾曲部34の湾曲角度に対応する。このため、各ドラム46,48の回動角度をエンコーダ136a,136bで測定することにより、第1湾曲部34のU方向、D方向、R方向及びL方向のそれぞれの湾曲角度を推測できる。
なお、予め、第1湾曲部34の湾曲角度とある湾曲角度に至るのに要した時間とを計測することによって、時間から湾曲角度を推定でき、湾曲角度からある湾曲角度に至るまでの時間を推定できる。
【0090】
図16に示すように、駆動制御部74は、コントローラ152が着脱可能に接続された制御回路(コントローラ152の制御回路)154を有する。コントローラ152を操作することにより、第1湾曲部34を4つの方向に自在に湾曲させることができる。
【0091】
各ドラム46,48は、それぞれモータ134a,134bの回転軸に連結され、正転及び逆転が自在のモータ134a,134bの回転方向に応じて回転される。これらのモータ134a,134bは、駆動制御部74によって駆動が制御される。
【0092】
そして、コントローラ152を操作すると、コントローラ152の制御回路154によって駆動制御部74はモータ134a,134bを制御してドラム46,48を回転させる。このため、駆動制御部74、モータ134a,134b、エンコーダ136a,136bは湾曲ワイヤ42U,42D,42R,42Lを介して第1湾曲部34を電気的に湾曲駆動させる湾曲アクチュエータを構成している。
【0093】
なお、駆動制御部74のCPU90には上述したUPD装置122が接続されている。このため、第1湾曲部34の先端の位置及び向きをリアルタイムで得ることができる。
【0094】
エンコーダ136aで第1湾曲部34のU方向又はD方向の湾曲角度を測定した結果、及び/又は、UPD装置122でUPDコイル124a,124b,124c,…の位置及び姿勢をリアルタイム検出した結果、第1湾曲部34のU方向及びD方向の一方の湾曲角度が90度を超えた時点で、エンコーダ136aからの信号、及び/又は、UPD装置122からの信号により、第2湾曲部36を第1湾曲部34と同じ方向に湾曲させる。このように、第2湾曲部36を湾曲させると第1湾曲部34の先端も移動する。このとき、UPD装置122により、図8(A)に示すように、第1湾曲部34の先端が移動しないと判断されたら、UPD装置122は、駆動制御部74を用いて第2湾曲駆動機構のモータ64に対し、第2湾曲部36をさらに湾曲させるのを防止し、湾曲角度を維持する信号を出力する。
なお、第2湾曲部36を湾曲させるように第2湾曲駆動機構を動作させたときに、第1湾曲部34が移動しない場合とは、例えば先端硬質部32が管孔LIの内壁面に当接して、内壁面を押圧した状態である。
【0095】
このとき、モータ134a,134bに配設されたエンコーダ136a,136bは第1湾曲部34の単位時間当たりの絶対位置を検知することにより、第1湾曲部34が移動しているか否か判断しても良い。
また、第1湾曲部34の湾曲角度の時間変化を検知することによっても、第1湾曲部34が移動しているか否か判断しても良い。
【0096】
さらに、第2湾曲部36の湾曲角度を検知したときに湾曲角度が増大しないと判定され、かつ、UPD装置122により第1湾曲部34の先端が移動しないと判断されたら、第2湾曲駆動機構のモータ64に対し、第2湾曲部36をさらに湾曲させるのを防止し、湾曲角度を維持する信号を出力する。
【0097】
そして、駆動制御部74は第2湾曲部36が湾曲するのを停止した時点をトリガーとして、すなわち、エンコーダ136aからの信号をトリガーとして、図8(B)に示すように、第1湾曲部34の湾曲角度を90度よりも小さくし、真っ直ぐの状態に近づけるようにモータ64に信号を入力する。このため、第1湾曲部34の先端が管孔LIの奥側に移動することをUPD装置122で検出でき、かつ、モニタ18の表示によっても確認できる。
【0098】
そして、図8(C)に示すように、第2湾曲部36の湾曲角度を大きくして、第1湾曲部34の先端が動かない状態とする。
【0099】
このような制御が繰り返されて、第2湾曲部36の湾曲角度を大きくしつつ、第1湾曲部34を屈曲部Faに対して奥側に移動させる。
【0100】
この実施形態によれば、屈曲部Faを通過したタイミングで第2湾曲部36を湾曲させることができ、第2湾曲部36の湾曲駆動を停止させると同時に第1湾曲部34を逆方向に湾曲させることができる。
【0101】
次に、第4実施形態について図17及び図18を用いて説明する。この実施の形態は第1から第3実施形態の変形例であって、第1から第3実施形態で説明した部材と同一の部材には同一の符号を付し、詳しい説明を省略する。
上述した第1から第3実施形態では、内視鏡システム10は、内視鏡12とは別に、光源14、ビデオプロセッサ16、モニタ18とを有するものとして説明した。この実施形態では、内視鏡(医療装置)210自体が光源やビデオプロセッサの機能を有するとともに、モニタ18を有する場合について簡単に説明する。
【0102】
図17に示すように、この実施形態に係る内視鏡(医療装置)210は、モニタ18と、モニタ18が配設された操作部22と、被検体となる体腔内の被検部位に向けて挿入される挿入部24とを備えている。なお、この実施形態に係る内視鏡210の挿入部24の第1湾曲部34は説明の簡単のため、2方向(U方向及びD方向)に湾曲するものとして説明する。
図18に示すように、操作部22の内部には、モニタ18、観察光学系28、及び、照明光学系30、更には第1湾曲駆動機構及び第2湾曲駆動機構を制御可能な制御部220が配設されている。
【0103】
図17に示すように、操作部22には、湾曲操作レバー242が配設されている。湾曲操作レバー242の回動軸242aは、操作部22を図17中の左右方向に貫通するように配設されている。この回動軸242aは、操作部22の内部で操作ワイヤ42が巻回されたドラム48(図2参照)に固定されている。このため、第1実施形態で説明したように、湾曲操作レバー242の回動量はポテンショメータ56により検知され、第1湾曲部34が無負荷状態では、湾曲操作レバー242の回動量が第1湾曲部34の湾曲角度に一致する。
【0104】
図18に示すように、内視鏡12の挿入部24及び操作部22には、観察光学系28及び照明光学系30が配設されている。
照明光学系30は、光源292と、ライトガイド294と、照明窓296とを備えている。観察光学系28は、観察窓302と、対物レンズ304と、イメージガイド306と、結像レンズ308と、例えばCCDやCMOS等の撮像素子310とを備えている。
図1(B)及び図18に示すように、照明窓296及び観察窓302は、先端硬質部32に固定されている。図18に示すように、照明窓296の基端側には、ライトガイド294の先端が先端硬質部32に固定されている。観察窓302の基端には対物レンズ304が先端硬質部32に固定されている。さらに、対物レンズ304の基端側には、イメージガイド306の先端が先端硬質部32に固定されている。そして、ライトガイド294及びイメージガイド306は、湾曲部34,36及び管状部38を通して操作部22に向かって延出されている。
例えばLED等の光源292は、操作部22の内部に固定されている。光源292は、後述する給電制御回路336に接続されている(図2参照)。
【0105】
結像レンズ308及び撮像素子310は、操作部22の内部に配設されている。結像レンズ308は、イメージガイド306の基端に固定されている。さらに、結像レンズ308による観察像の結像位置には、撮像素子310が固定されている。このとき、観察窓302、対物レンズ304、イメージガイド306、結像レンズ308及び撮像素子310は光学的に接続されている。したがって、照明窓296から出射され、被検体を照明した光の反射光は、観察窓302、対物レンズ304、イメージガイド306、結像レンズ308を通して撮像素子310により撮像される。そして、後述する撮像素子制御回路342で画像処理されて観察像(内視鏡像)が得られる。
そして、図18に示すように、操作部22には、制御部220が配設されている。制御部220は、略直方体形状(箱型)をした装置本体(筐体)322により外枠が形成されている。そして、装置本体322の外表面には、内視鏡画像を表示するモニタ18が配設されている。
【0106】
さらに、装置本体322は、その内部に、バッテリ334と、給電制御回路336と、内部メモリ等の記録媒体(図示せず)を有する記録制御回路338と、表示素子制御回路340と、処理回路である撮像素子制御回路342と、上述した実施形態で説明した駆動制御部74を有する。駆動制御部74は、操作部22の内部でポテンショメータ56、モータ64及びエンコーダ66に対して電気的に接続されている。
【0107】
バッテリ334は、給電制御回路336に接続されている。給電制御回路336は、モニタ18と、記録制御回路338と、表示素子制御回路340と、撮像素子制御回路342とに接続されている。給電制御回路336は、上述した光源292や撮像素子310にも電気的に接続され、これらに電力を供給する。
【0108】
給電制御回路336は、バッテリ334から供給された電力を、光源292と撮像素子310とモニタ18と記録制御回路338と表示素子制御回路340と撮像素子制御回路342との各々に対し、各回路に対応した駆動電力を出力する。
【0109】
給電制御回路336は、モニタ18のように装置本体322の外部に配置された電源スイッチ352を含んで構成されており、電源スイッチ352の操作により内視鏡210の全体の電源のオン/オフが行われる。バッテリ334には、繰り返し充電して使用することができるニ次電池が用いられることが好ましい。
【0110】
表示素子制御回路340は、記録制御回路338、あるいは撮像素子制御回路342からの信号を映像化して、モニタ18に内視鏡画像を表示させる。また、記録制御回路338は、給電制御回路336へ、各種スイッチからの信号入力に応じて、光源292、撮像素子310及び撮像素子制御回路342に対し、電力供給の指示信号を供給する。
【0111】
撮像素子310により撮像された被検部位の観察像は、撮像素子310から撮像素子制御回路342に出力される。撮像素子制御回路342は、撮像素子310によって撮像された被検部位の観察像を信号化して、記録制御回路338及び表示素子制御回路340に出カする。
【0112】
次に、このように構成された本実施形態に係る内視鏡210の作用について説明する。
内視鏡210の電源スイッチ352をオンにする。内視鏡210は、電源スイッチ352がオンにされると、制御部220のバッテリ334から給電制御回路336を通してそれぞれ電力が供給される。
【0113】
制御部220が、静止画記録待機状態となると、給電制御回路336から光源292に電力が供給されるとともに、撮像素子310等にも電力が供給される。
【0114】
バッテリ334から給電制御回路336を通して光源292を発光させた照明光は、ライトガイド294の基端に入射され、ライトガイド294の先端に導かれ、ライトガイド294の先端に配置された照明窓296を通して出射され、体腔内の被検部位の所望の範囲が照明される。
【0115】
照明光により照射された被検部位Sからの反射光は、先端硬質部32に設けられた観察窓302及び対物レンズ304により観察像が形成される。そして、この観察像がイメージガイド306の他端に入射された後、イメージガイド306の一端まで伝達される。その後、反射光による観察像は、イメージガイド306の一端から、操作部22内に設けられた結像レンズ308を介して、撮像素子310上に結像される。このため、撮像素子制御回路342により制御されている撮像素子310により観察像が撮像される。
【0116】
観察像は、撮像素子310から撮像素子制御回路342、表示素子制御回路340、モニタ18の順に伝達され、モニタ18にリアルタイムに表示される。
【0117】
そして、この実施形態に係る内視鏡210は、第1実施形態で説明したように第1湾曲部34をU方向又はD方向に所定角度(例えば90度)を超える状態に湾曲させた時点をトリガーとして駆動制御部74がモータ64に信号を出力して第2湾曲部36を第1湾曲部34の湾曲方向と同じ方向に湾曲させるようにすることができる。
【0118】
また、この実施形態に係る内視鏡210は、第2実施形態で説明したように、挿入部24の第1湾曲部34にUPDコイル124a,124b,124c,…を配置し、内視鏡210とは別にUPD装置122を配置して、第1湾曲部34の位置、向き、姿勢等をリアルタイム検出して、その情報をモニタ18に表示できるようにしても良い。また、表示素子制御回路340と撮像素子制御回路342との間に画像処理部112が配設され、又は、表示素子制御回路340と撮像素子制御回路342との一方に画像処理部112を含むことが好ましい。
そうすると、第2実施形態で説明したように、第1湾曲部34を所定角度湾曲させた時点で制御部220により画像処理を行って暗部Sを検出できれば、第2湾曲部36を第1湾曲部34の湾曲方向に湾曲させ、暗部Sが検出されなければ、第2湾曲部36の形状をそのまま維持するようにする。
そして、第1湾曲部34がU方向又はD方向に所定角度湾曲している際に、画像処理部112の画像処理により暗部Sが検出されると、前回の画像処理時に暗部Sが検出されなかったことを条件に、第2湾曲部36を第1湾曲部34の湾曲方向と同じ方向に湾曲させる。
【0119】
また、第3実施形態で説明したように、第1湾曲部34を湾曲させるための駆動力を発生させるためにモータ134a,134bを用いることも好ましい。
【0120】
このように、内視鏡システム(医療装置)10は、内視鏡の外部に種々の装置を接続するだけでなく、内視鏡210の内部に種々の装置を有するものを含む。すなわち、上述した第1から第3実施形態では内視鏡システム(医療装置)10を用いた実施形態について説明したが、この実施形態で説明した内視鏡210においても、同様の作用及び効果を得ることができる。
【0121】
これまで、いくつかの実施の形態について図面を参照しながら具体的に説明したが、この発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で行なわれるすべての実施を含む。
【符号の説明】
【0122】
10…内視鏡システム(医療装置)、12…内視鏡、14…光源装置、16…ビデオプロセッサ、18…モニタ、22…操作部、24…挿入部、26…ユニバーサルコード、26a…コネクタ部、28…観察光学系、30…照明光学系、32a…チャンネル、32…先端硬質部、34…第1湾曲部、36…第2湾曲部、34a,36a…湾曲管、38…管状部、42,44…アングルワイヤ、46,48…ドラム、52…第1アングルノブ、54…第2アングルノブ、56…ノブ位置検知用ポテンショメータ(検知部)、62…ドラム、64…モータ、66…エンコーダ、72…モータ電源、74…駆動制御部(制御部)、82…電流測定部、84…電圧設定部、90…CPU、92…抵抗値測定部、94…パルスカウント処理部、96…トルク算出部、98…閾値入力部(設定部)、100…記憶部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1湾曲部と、前記第1湾曲部の基端側に設けられた第2湾曲部とを有し、屈曲部を有し得る管孔内に挿入可能な細長の挿入部と、
前記第1湾曲部を湾曲させる湾曲操作入力部を有する第1湾曲駆動機構と、
前記第2湾曲部を湾曲させる第2湾曲駆動機構と、
前記第1湾曲部が前記第1湾曲駆動機構により湾曲しているときに、前記第1湾曲部の湾曲角度が所定角度を超えたことを検知する検知部と、
前記検知部に接続され、前記所定角度を設定可能な設定部を有し、前記第1湾曲部の湾曲角度が前記所定角度を超えたことを前記検知部で検知した時点で、前記第2湾曲駆動機構により前記第2湾曲部を湾曲させる信号を前記第2湾曲駆動機構に出力する制御部と
を有することを特徴とする医療装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記検知部に接続され、前記第1湾曲部の湾曲角度を得る湾曲角取得部を有することを特徴とする請求項1に記載の医療装置。
【請求項3】
被検体の像を撮像可能な観察光学系をさらに有し、
前記制御部には、前記観察光学系に接続されているとともに、前記観察光学系で撮像された前記被検体の像を画像処理する画像処理部が接続され、
前記制御部は、前記第1湾曲部の湾曲角度が前記所定角度を超えたことを前記検知部で検知した時点で前記画像処理部で前記被検体の像を明部と暗部とに画像処理させることが可能であり、前記制御部から前記第2湾曲駆動機構に信号を出力して前記第2湾曲部を湾曲させる時点を、前記第1湾曲部の湾曲角度が前記所定角度を超えたことを前記検知部で検知した時点、から、前記画像処理部で前記被検体の像を明部と暗部とに画像処理し、前記画像処理部による画像処理により前記被検体の像の中に暗部が検出された時点に遅らせるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の医療装置。
【請求項4】
前記検知部は、前記第1湾曲部の湾曲角度を検知する湾曲角度検知装置を有することを特徴とする請求項1に記載の医療装置。
【請求項5】
前記湾曲角度検知装置は、前記第1湾曲部の湾曲角度に加えて、前記第1湾曲部の先端の移動及び位置の情報の少なくとも一方を検知可能であり、
前記制御部は、前記角度検知装置により得られる情報に基づいて、前記第2湾曲駆動機構を制御可能としたことを特徴とする請求項4に記載の医療装置。
【請求項6】
前記第2湾曲駆動機構は、前記第2湾曲部の湾曲角度を検出可能であり、
前記制御部の前記設定部は、前記第2湾曲部を湾曲させたときの目標湾曲角度を設定可能であり、
前記制御部は、前記第2湾曲部の湾曲角度と前記目標湾曲角度との差分により前記第2湾曲駆動機構を制御可能としたことを特徴とする請求項1に記載の医療装置。
【請求項7】
前記第2湾曲駆動機構は、前記第2湾曲部の湾曲角度を検出可能であり、
前記制御部の前記設定部は、前記第2湾曲部を湾曲させたときの目標湾曲角度を設定可能であり、
前記制御部は、前記第2湾曲部を目標湾曲角度だけ移動したときの所要時間に基づいて前記第2湾曲駆動機構を制御可能としたことを特徴とする請求項1に記載の医療装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記第2湾曲駆動機構により前記第2湾曲部を所定角度を超える角度に湾曲させた後、前記第1湾曲部を前記第2湾曲部の湾曲方向と逆方向に湾曲させる信号を前記第1湾曲駆動機構に出力するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の医療装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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