説明

医療製品用容器およびそれをシールする方法

医療製品用の容器およびそれをシールする方法であり、ここで容器は、第1面および反対側の第2面、および、第1面に形成され、医療製品を保持するための少なくとも1つのポケットを有するベース、ならびに内面および外面を有し、内面が第1面にシールされる蓋シートを含み、ここでベースおよび蓋シートが金属で形成され、この金属間で溶接で互いにシールされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療製品用容器およびそれをシールする方法に関する。特に、本発明は、少なくとも1つのポケットを有するベースを含む容器と、このベースに蓋シートをシールする方法に関する。
本出願は、特に、湿気に敏感な薬剤、たとえば、吸入用ドライパウダー製剤を格納するための容器に関する。さらにまた、本発明は、薬剤の個々の服用量を格納するために使用する容器に関する問題の考察に基づいている。
【背景技術】
【0002】
射出成形プラスチックを使用して格納チャンバを作り出すことは公知である。
これは、代表的には、リザーバ・タイプの装置について使用され、ここでリザーバは反復投与するのに足る粉末を収容し、計量装置は各服用量の粉末を正確に計量できる。しかしながら、射出成形で代表的に使用されるプラスチックは、薬剤が湿気の影響に敏感である場合、保存期間および使用中の期間を通じて薬剤が劣化することになるような有限透湿度を有する。
【0003】
代替案としては、個々の事前計量服用量として薬剤をブリスターパックに包装することができる。ブリスターパックは、ポリマーと金属(たとえば、アルミニウム)の積層材から構成される。アルミニウムは、水蒸気の通路を完全にブロックする完全不透過性層となる。しかしながら、アルミニウムの蓋シートをアルミニウムの積層材ベースに結合した場合、シール用ポリマー層に沿って水蒸気を透過する小さな経路がまだ存在する。このポリマー層は20〜100ミクロン厚しかない場合があるけれども、長い時間にわたれば薬剤性質に影響を及ぼす程の湿気を通すことはなお可能である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、少なくとも上記の問題を低減し、改良した容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、
第1面および反対側の第2面、ならびに第1面に形成される医療製品を収容するための少なくとも1つのポケットを有するベース;ならびに
内面および外面を有し、該内面が第1面にシールされる蓋シートを含み;ここで
ベースおよび蓋シートが金属で形成され、この金属間で溶接で互いにシールされる
医療製品用容器が提供される。
【0006】
また、本発明によれば、
第1面および反対側の第2面、および第1面に形成された医療製品を収容するための少なくとも1つのポケットを有するベース、ならびに内面および外面を有し、該内面が第1面にシールされる蓋シートを含み、ベースおよび蓋シートが金属で形成される医療製品用容器をシールする方法であって;
ベースの金属を、蓋シートの金属に溶接する
ことを含む方法が提供される。
【0007】
このようにすれば、蓋シートの金属またはベースの金属との間にいかなる接着材料またはポリマー層をも設ける必要がない。それ故、シール部分でのいかなる透湿をも回避することが可能である。
【0008】
従来は、シールのところでの湿気拡散の影響を最小限に抑えるために、シール部分の幅を大きくして拡散経路の長さを大きくしていた。もちろん、これは、容器の寸法を大きくすると共に、容器から薬剤を計量分配するのに使用されるいかなる装置の寸法をも大きくするという結果になる。
本発明によれば、容器の寸法を小さくすることができる。
【0009】
溶接は、好ましくは、超音波溶接、抵抗溶接、レーザー溶接および電子ビーム溶接または他の溶接技術のうちの1つである。
従来は、ヒートシーリングを用いて蓋シートおよびベースを相互に接合していたことにも注目すべきである。特に、シール層を融解し、2つのフィルムを接着するためにホット・プレートを用いてフォイル積層フィルムを相互にプレスしていた。もちろん、その結果、薬剤が加熱されることになり、薬剤の物理的、化学的性質に悪影響を与える可能性があった。
少なくとも超音波溶接を用いれば、このような加熱は発生しない。
【0010】
ここで、ベースが、単回投与用容器のための単一のポケットしか持っていないものも、または、反復投与用容器のためのポケット列を持っているものであってよいことは理解されるであろう。ポケット列はどのような適切な形態でも採用し得るし、ベースが必ずしも平らである必要もない。
【0011】
好ましくは、ベースは、前記少なくとも1つのポケットを形成するために第1面に形成される少なくとも1つのくぼみを有する金属シートを含む。
換言すれば、ベースは公知のブリスターパックの一般的な形態を有するが、その第1面上にはいかなるポリマーも存在しない。
【0012】
ベースは、プレス加工または冷間成形によって形成することもできる。
好ましくは、ベースは、第2面上で金属シートを覆うポリマーとのラミネートである。
このようにすれば、金属シートにさらなる構造上の支持を与え、またポリマーが金属を破裂から保護する。
【0013】
好ましくは、ベースは、前記第1面、第2面間に少なくとも1つの貫通孔を有する金属基板と、前記少なくとも1つのポケットを形成するための前記第2面と共にシールするベース・シートとを含む。
これは、従来のブリスターパック形態の代替物となり、より効率的なパッキングを可能にするより急勾配の側面を持つポケットを含めて、多数の利点を与える。
【0014】
好ましくは、ベース・シートのシール面は、金属であり、溶接によって第2面に直接シールされる。
このようにすると、蓋シートと同じ利点が、ベース・シートに与えられ、ポケットが極めて良好にシールされる。
好ましくは、蓋シートは、少なくとも内面のところに金属フォイルを含む。
もちろん、金属フォイルには、外側コーティング(単数または複数)を施して、たとえばラッカーを塗布してなんらかの必要な印刷を容易にしてもよい。
【0015】
実際、第1面、内面の一方または両方に薄いラッカー・コーティングを施すことも可能である。溶接プロセスでは、ラッカーを介して溶接を行うことになるが、それでも金属対金属の接触は行える。したがって、ベースの第1面、蓋シートの内面のうち少なくとも一方は、金属を溶接した以外の領域に(溶接プロセス後)薄いラッカーを有することができる。
【0016】
蓋シートおよびベースのうち少なくとも一方は、ポケットを取り囲み、蓋シートおよびベースのうち他方の金属に溶接される金属部分を含んでいてもよい。
たとえば、金属または第3のフォイルの薄いビードをベースと蓋シートの間に挟み、ベースまたは蓋シートの一部を効果的に成形できる。実際、必要なのは、金属対金属接触で蓋シートをベースにシールすることだけである。これを行う場合、任意形態の挿入体を使用できる。
好ましくは、金属はアルミニウムである。
【0017】
好ましくは、医療製品は、吸入用ドライパウダーである。
本発明は、特に、ドライパウダーの容器にとって重要である。このような製品が特に湿気に影響されやすいからである。
【0018】
ベースは、少なくとも1つのポケットの周縁まわりの細い線に沿って蓋シートに溶接するとよい。
あるいは、ベースは、少なくとも1つのポケットまわりで第1面のほぼ全体にわたって蓋シートに溶接してもよい。
特定のシール位置および領域は、当該容器の特定の設計に従って選択するとよい。
【0019】
ほんの例示として添付図面を参照した以下の説明から本発明はより明確に理解されるであろう。
添付図面において、
図1は、本発明によるポケットを通る横断面を示している。
図2は、本発明による別のポケットを通る横断面を示している。
図3は、図1の変形例を示している。
図4は、図2の変形例を示す。
図5は、本発明によるポケットをシールする装置を概略的に示している。
【0020】
本発明は、医薬製品用の格納システムのベース構成要素に金属製の蓋シートを接合するための改良方法およびその結果得られた改良容器に関する。本発明は、ドライパウダー形態の吸入製品にとって特に重要であり、アルミニウム蓋フォイルをアルミニウム・ベース構成要素に接合するのに溶接、特に超音波溶接を使用することに関する。
【0021】
超音波溶接は、高周波機械的エネルギの適用により働き結合点のところに振動および摩擦を発生させる。アルミニウムを接合するためには、2つの構成要素に、高圧および機械的な振動エネルギを与える。これにより、2つの構成要素が顕微鏡的な規模で流動し、相互に融着する。
【0022】
図1は、本発明による容器のポケットを通る横断面を示している。ここで、容器が図示のように1つ、またはそれ以上のポケットを含み得るということは理解されるであろう。
容器は、アルミニウムラミネート10aとポリマー10bとから形成されたベース構成要素10を包含する。
【0023】
ベース構成要素10は、第1面12および第2面14を有する。ベース構成要素10は、第1面にくぼみ16を設けるためにプレス加工または冷間成形によって形成し、それによって、ポケット18を作り出す。
【0024】
後に明らかにするように、ポリマー層10bがベースの外面すなわち第2面にあり、一方、内面すなわち第1面は未処理アルミニウム10aまたはラッカー塗布アルミニウムであって、後者の場合、ラッカー塗布層はそれを通して溶接を行えるくらい薄い。
【0025】
薄いアルミニウム層から形成した蓋シート20は、内面22および外面24を有する。図示したように、蓋シート20の内面22はベース10の第1面12とシールされている。シール作業は、アルミニウム10aが蓋シート20のアルミニウムと直接結合するように溶接、たとえば、超音波溶接、抵抗溶接、レーザー溶接または電子ビーム溶接を用いて行う。このようにして、ポケットは完全に金属で取り囲まれる。
ここで、蓋シートの外面24を、たとえばラッカーでコーティングして印刷を容易にすることができることに注目すべきである。
【0026】
図2は、別の実施形態を示している。
図1と同様に、1つのポケットだけが示してある。しかしながら、容器は複数のこのようなポケットを含み得る。
ベース30は、第1面32および第2面34を有する。このベースは、比較的厚い金属プレートから基板として形成する。プレートには貫通孔36が形成してあり、この貫通孔36は、第1面32から第2面34まで延びていて、薬剤を格納するポケット38となっている。
【0027】
図1の実施形態と同様に、蓋シート40は、内面42および外面44を有するものとして与えられる。蓋シート40の内面42は、ベース30の第1面32に溶接によってシールされる。蓋は、好ましくは、薄いアルミニウム層であり、場合により、外面44をラッカーでコーティングして印刷を容易にする。
【0028】
図2でわかるように、ベース30は、第2面34に対面するシール表面48を有するベース・シート46をも含む。ベース・シート46のシール面48は、第2面34と共にシールを行って貫通孔46でポケット38を形成する。ベース・シートも、好ましくは、金属、たとえば、アルミニウムから形成され、溶接によって蓋シート40と同じ方法でシールされる。このようにして、ポケットは完全に金属で取り囲まれる。
もちろん、ベース・シート46の外面をラッカーまたは同様のものでコーティングしてもよい。
【0029】
ここでまた、溶接プロセスの前に薄いラッカーでシール面をコーティングすることも可能である。次いで、金属を、ラッカーを通して溶接する。図3は、コーティング17、21および溶接部11を有する、図1のポケットと同様のポケットを示している。図4は、コーティング49および溶接部47を有する、図2のポケットと同様のポケットを示している。
【0030】
図4は別の変形例も示している。薄い金属またはフォイルのビード28を、蓋シートとベースとの間に設けることが可能である。これは、蓋シートまたはベースの一部と考えることができ、蓋シートおよびベースに溶接して望ましい金属対金属接触部を形成できる。
【0031】
図5は、図1に示すような容器の蓋シートをシールする装置を概略的に示している。この装置は、好ましい超音波溶接技術を使用している。
ベース用に支持体50が設けてある。蓋シートを所定位置に置いてから、蓋シート上にプレス60で力を加え、蓋シートをベースに対して押し込む。
次いで、超音波発生器70が超音波をプレス60に加え、蓋シートとベースの間に超音波溶接部を形成する。
【0032】
図示のように、プレス60は、ポケットの周縁まわりの細い線でのみ蓋シートと接触して対応するシールを形成する。しかしながら、ここで、他のシールを形成する別のプレスを使用し得ることは理解すべきである。たとえば、ベースと接触するすべての部分で蓋シートをプレス加工し、シールすることも可能である。
また、一度に複数のポケットをシールするのに適したプレスを行うことができることも理解すべきである。
【0033】
上述したように、図3の装置は非常に概略的であり、任意所望の形状または寸法の容器用に、および図2の形態を有する容器用にも必ずアレンジを与えることが可能である。
【0034】
本発明によれば、結合が金属対金属であり、水を透過させるポリマーまたは他の透過性物質の薄い層がまったくないために容器を完全に密封シールすることができる。シールが非常に効果的であるため、シール性能がその幅に大きく依存することはない。したがって、シールの幅をかなり減らすことが可能であり、それ故、シールの完全性を損なうことなく製品全体の寸法を小さくすることができる。
【0035】
最後に、溶接プロセスがほとんど熱を発生しないので、薬剤、たとえば、吸入用粉末への熱による損傷のリスクがまったくない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明によるポケットを通る横断面を示している。
【図2】本発明による別のポケットを通る横断面を示している。
【図3】図1の変形例を示している。
【図4】図2の変形例を示す。
【図5】本発明によるポケットをシールする装置を概略的に示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面および反対側の第2面、ならびに第1面に形成され医療製品を収容するための少なくとも1つのポケットを有するベース;ならびに内面および外面を有し、該内面が第1面にシールされる蓋シートを含み;ここでベースおよび蓋シートが金属で形成され、この金属間で、溶接で互いにシールされる医療製品用容器。
【請求項2】
ベースが、少なくとも1つのポケットを形成するために第1面に形成された少なくとも1つのくぼみを有する金属シートを含む、請求項1に記載の容器。
【請求項3】
ベースが、第2面上の金属シートを覆うポリマーを有する積層材である、請求項2に記載の容器。
【請求項4】
ベースが、第1面および第2面の間に少なくとも1つの貫通孔を有する金属基板ならびに少なくとも1つのポケットを形成するように前記第2面でシールを行うベース・シートを含む、請求項1に記載の容器。
【請求項5】
ベース・シートのシール面が、金属であり、溶接によって第2面に直接シールされる、請求項4に記載の容器。
【請求項6】
蓋シートが、少なくとも内面のところに金属フォイルを含む、請求項1〜5のいずれか1つに記載の容器。
【請求項7】
ベースの第1面および蓋シートの内面のうち少なくとも一方が、金属が溶接されるところ以外の領域に薄いラッカーを含む、請求項1〜6のいずれか1つに記載の容器。
【請求項8】
蓋シートおよびベースのうち少なくとも一方が、ポケットを取り囲み、蓋シートおよびベースのうち他方の金属に溶接される金属部分を包含する、請求項1〜7のいずれか1つに記載の容器。
【請求項9】
金属がアルミニウムである、請求項1〜8のいずれか1つに記載の容器。
【請求項10】
医療製品が吸入用ドライパウダーである、請求項1〜9のいずれか1つに記載の容器。
【請求項11】
ベースが、少なくとも1つのポケットの周縁まわりで細い線に沿って蓋シートに溶接される、請求項1〜10のいずれか1つに記載の容器。
【請求項12】
ベースが、少なくとも1つのポケットまわりで第1面のほぼ全体にわたって蓋シートに溶接される、請求項1〜10のいずれか1つに記載の容器。
【請求項13】
ベースを蓋シートに溶接することを含む、請求項1〜10のいずれか1つに記載の容器をシールする方法。
【請求項14】
第1面および反対側の第2面、および第1面に形成され医療製品を収容するための少なくとも1つのポケットを有するベース、ならびに内面および外面を有し、該内面が第1面にシールされる蓋シートを含み、ベースおよび蓋シートが金属で形成される医療製品用容器をシールする方法であって、ベースの金属を蓋シートの金属に溶接することを含む上記方法。
【請求項15】
さらに、少なくとも1つのポケットの周縁まわりで細い線に沿ってベースを蓋シートに溶接することを含む、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
さらに、少なくとも1つのポケットまわりで第1面のほぼ全体にわたってベースを蓋シートに溶接することを含む、請求項11または12に記載の方法。
【請求項17】
溶接工程が、超音波溶接、抵抗溶接、レーザー溶接および電子ビーム溶接のうちの1つを含む、請求項13〜16のいずれか1つに記載の方法。
【請求項18】
実質的に添付図面を参照しながら上述したように、および、実質的に添付図面により図解したように構成され、および、アレンジされる医療製品用容器。
【請求項19】
実質的に添付図面を参照しながら上述したように、および、実質的に添付図面により図解したように医療製品用容器をシールする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−528396(P2008−528396A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−553734(P2007−553734)
【出願日】平成18年1月27日(2006.1.27)
【国際出願番号】PCT/IB2006/000235
【国際公開番号】WO2006/082514
【国際公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(597014501)ファイザー・リミテッド (107)
【氏名又は名称原語表記】Pfizer Limited
【住所又は居所原語表記】Ramsgate Road, Sandwich, Kent, England
【Fターム(参考)】