説明

医薬及び/又は生物学的組成物、その製造及びその使用

【課題】製造が容易であり且つ人体等に中毒を生じさせることがなく、重度の火傷患者等に適用可能な医薬組成物及びその製法を提供すること。
【解決手段】本発明に記載のと25℃及び大気圧で蒸気圧が10,000Pa(100ミリバール)以上であり且つ沸点が30℃以上である過フッ素化した化合物である液体を医薬及び/又は生物学的組成物が製造に用いられ、この液体と粉末及び/又は固体の生物学的材料中の医薬成分のみよりなり、本医薬成分及び/又は生物学的成分は本液体中で溶解しない。また、適宜のフィルム形成剤を含んでいる。本発明は、医薬分野に応用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬及び/又は生物学的組成物、その製造方法及びその使用に関する。
また、本発明は、上記医薬及び/又は生物学的組成物、該組成物を大気圧及び室温で揮発性の液体担体を使用して製造する方法及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ある種の医薬組成物は、経口摂取のために処方された固形物であって、固体の成分でコーティングされた治療効果のある成分からなる。しかし、これらの組成物の治療効果は遅い。
【0003】
そこで、患者の体内に注射されるべく医薬組成物が処方され、この場合には有効成分は体内に迅速に放出される。
【0004】
しかしながら、これらの注射用医薬組成物は、これら有効成分を溶解する液体担体は、それ自体が毒性であり、又は糖尿病患者の場合にように、注射を極めて頻繁に行わなければならないときに、患者のライフサイクルと常に共存できるとは限らないので、必ずしも全ての患者に耐え得るとは限らない。
【0005】
さらに、例えば皮膚科で使用する医薬組成物があり、これらは皮膚に塗る軟膏、ゲル又は液体として処方される。
【0006】
しかし、ここでもまた、これらの組成物を処方する添加剤は、毒性又はアレルギー性を有しており、副作用を生じる場合がある。
【0007】
粘膜、特に鼻粘膜用に適用して投与される医薬組成物も現在存在する。かかる処方製品は、液体形態の有効成分を含み、有効成分及びその担体を鼻粘膜上に噴射ガスが送達する。
【0008】
しかし、噴射ガスが存在するために、有効成分が患者の気道及び肺へ送られる場合がある。そこで、このような形態の組成物は、気道及び肺へ供給する必要がある場合にのみに使用されている。
【0009】
現在、存在する他の医薬組成物は、直腸投与のための坐剤又は膣へ投与されるペッサリーとして処方されている。この場合にも、また、有効成分がそれぞれ肛門又は膣粘膜を通過する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
これらの投与形態がときとしてそれらの医薬品が患者にうまく受け入れられないという事実を別としても、それらは幾つかの欠点を有する。特に、一方では、添加剤が溶けると、不快で、且つ汚く流れ出し、他方では、組成物が肛門や膣からはみ出すことがある。この現象は、特に子供の排便反射を誘発する坐剤の場合に顕著になる。この場合には、本薬剤は投与できない。
【0011】
また、幾つかの医薬組成物、特にホルモン又はニコチンよりなる医薬組成物は、現在、皮膚に適用して皮膚の障壁を越えて放出されるパッチ(貼付)タイプで使用されている。しかし、特に更年期女性に投与されるホルモン剤の場合には、パッチで適用される組成物の処方には、現在の処方ではホルモン剤の不安定性のために多くの問題を生じる。
【0012】
医薬品処方が不適切である特殊な場合は、重度の火傷患者に投与されるケア投与である。事実、重度の火傷患者の場合に幾つかの問題が生じる。先ず、僅かに触れたのみで痛みを生じる問題であり、これは治療薬を、噴射ガスを含む噴霧器により適用した場合でも生じる。
【0013】
次に、ケア製品の厳密な組成の問題があり、事実、あるケア製品は健康な又は別の処置を必要とする場所に、はみ出さず火傷部分のみに適用せねばならない。これは、特に軟膏又は液体として処方される医薬組成物の場合である。
【0014】
さらに、生きている組織の回復のための生物学的組成物の中には、適当な培地中で成長させた幹細胞により構成されるものがある。これらの幹細胞は、採取すると、直ちに培地に移植して成長させる。現時点では、これらの幹細胞を、どうすれば最終的な所望の成長段階に進ませることなく、中間の成長段階に維持するか又はこの中間成長段階でどうすれば健康に維持できるかのかは不明である。
【0015】
一例は、特に重度の火傷患者に適用される場合に、人の皮膚を元の場所で成長させることであり、幹細胞を採取し、培地中で培地が取り去られるまで元の場所で成長させ、これにより成長を停止させることである。
【0016】
これらの皮膚細胞を試験管内で成長させ、且つ特定の段階でこれらの細胞の成長を阻止し、重度の火傷患者に投与された他のケアが移植を可能にするまで十分に進行し、それを元の場所に移植できるようにするのが好ましい。
【0017】
また、試験管内で培養された人工皮膚に関する毒性及びアレルギー型反応のない医薬品及び化粧品組成物のテストが、動物又は人でこれらの組成物をテストするより益々盛んに行われている。
【0018】
増加した反応性にとって人の皮膚幹細胞を特定の成長段階で止めて健康に保ち、先に述べたように新鮮な人の皮膚組織の構成を試験するために、出来る限り皮膚組織の形成に成長させるのが好ましい。
【0019】
本発明は、上述した従来技術の医薬又は生物学的組成物の課題を解決する、すなわち人に無毒且つ細胞増殖抑制性でまた室温及び常圧下で高い揮発性を有する生体適合性である液体担体内での組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、25℃及び大気圧における蒸気圧が10,000Pa(100ミリバール)以上であり、沸点が30℃以上である過フッ素化された液体を使用して、上記液体及び粉末状の医薬成分及び/又は固体生物学的材料のみからなる医薬及び/又は生物学的組成物を製造することを基本的態様とするものである。上記医薬成分及び/又は生物学的材料は、上記液体中に溶解せずとも、あるいは任意成分として、皮膜形形成剤を使用してもよい。
【0021】
好ましくは、上記液体の蒸気圧は、25℃及び大気圧で10,000Pa(100ミリバール)〜70,000Pa(700ミリバール)の範囲である。
【0022】
特に好ましくは、上記液体は、フッ化水素エーテル(HFE)、フッ化水素エーテル異性体の混合物及び以下の化学式(1)で与えられるフッ化水素エーテル(HFE)の混合物である。
RH−O−R F ・・・(1)
式中、−RHは、置換又は未置換の、直鎖状、分岐状又は環状の部分的又は全体的に水素化されたアルキル基であり、−RFは、直鎖状、分岐状又は環状の全体的又は部分的にフッ素化されたアルキル基である。
【0023】
特に好ましくは、上記液体は、メトキシヘプタフルオロプロパン、エトキシノナフルオロブタン及びメトキシノナフルオロブタンよりなる群から選択される。
【0024】
上記液体の第1の態様は、人、動物又は植物組織の幹細胞用細胞増殖抑制性保存媒体により構成される。この場合には、幹細胞は、好ましくは人の皮膚組織の幹細胞である。
【0025】
第2の態様は、上記液体は、医薬組成物の液体担体であり、有効成分は、この液体担体内に溶解しない微細化された粉末状である。
【0026】
本発明の特徴の一つは、有効成分及び液体担体よりなる医薬組成物であり、この組成物は25℃及び大気圧で蒸気圧が10,000Pa(100ミリバール)以上であり、沸点が30℃以上である過フッ素化された化合物である液体担体及びこの液体担体には溶解しない微細化された粉末状の有効成分、及び任意の皮膜形成剤より構成されている。
【0027】
好ましくは、上記液体担体は、25℃及び大気圧で10,000Pa(100ミリバール)〜70,000Pa(700ミリバール)の蒸気圧を有する。
【0028】
特に好ましくは、上記液体担体は、フッ化水素エーテル(HFE)、フッ化水素エーテルの異性体混合物及び以下の化学式(1)で示されるフッ化水素エーテルの混合物である。
R−O−R ・・・(1)
式中、Rは、置換又は未置換の、直鎖状、分岐された又は環状の部分的又は全体的に水素化されたアルキル基であり、Rは、直鎖状、分岐状又は環状の、全体的又は部分的にフッ素化されたアルキル基である。化学式(1)の基Rは、幾つかの位置異性体を有する。例えば、ペルフルオロブチル基は、2つの位置異性体、すなわちペルフルオロ−n−ブチル(CFCFCFCF)及びペルフルオロ−n−イソブチル[(CFCFCF]を有する。
【0029】
本発明における上記及び下記の、「フッ化水素エーテル」の用語は、そのR及びR基が単一の異性体中に独立して存在するフッ化水素エーテル及びR及び/又はR基がこれらの2以上の異性体の混合物の形態で独立して存在するフッ化水素エーテルの両方を含むと解するものとする。
【0030】
同様に、本発明における、「フッ化水素エーテルの混合物」の用語も、異なるR及びR基を有する2以上のフッ化水素エーテルの混合物を意味し、各R及びR基は、独立して単一の異性体の形態又はこれら異性体の複数の混合物の形態である。
【0031】
特に好ましくは、液体担体は、メトキシヘプタフルオロプロパン、エトキシノナフルオロブタン及びメトキシノナフルオロブタンよりなる群から選択される。
【0032】
有効成分に関する限り、これは特にインスリン、ワクチン、鎮痛剤、トリニトリン(Trinitrine(R))、ニコチン、ヨード、ホルモン、抗生物質及び抗菌剤から選択される。
【0033】
本発明の医薬品の好適実施態様では、有効成分と液体担体の容積比は、1/4〜4/1の間である。特に好ましくは、有効成分と液体担体の容積比は、1/1である。
【0034】
本発明を実施する特定の態様では、医薬組成物は噴霧器内にパッケージされている。上記組成物は、好ましくはフィルム形成剤を含んでいる。
【0035】
また、本発明の特徴は、重度の火傷患者のケアに本発明の医薬組成物を使用することである。
【発明の効果】
【0036】
本発明の医薬及び/又は生物学的組成物及びその製法によると、次のような実用上の顕著な効果が得られる。すなわち、有効成分を微細化した粉末状とし、フッ化水素エーテルの如き特定の液体担体中で溶解しないように構成されるので、噴霧器等を使用して患者に痛みや不快感を与えることなく患部のみに適用可能である。従って、重度の火傷患者の皮膚や粘膜等に極めて好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
本発明は、より明瞭に理解され、且つ他の特徴及び利点は以下の説明から一層明瞭に理解されよう。
【0038】
本発明で得られる医薬及び/又は生物学的用途を持つ組成物は、人体の血液、リンパその他のシステムへ急速に送達される必要のある医薬組成物に関し、これは一般に注射器で注射することにより行われる。
【0039】
注射器の使用は、一般に患者にはうまく受け入れられておらず且つ種々の疾病を伝染させるために健康上安全の問題を生じているという事実は別にして、有効成分の中には、ヒマシ油の如き毒性溶媒にのみ溶解する。この場合には、本発明は有効成分を固体状に維持するか又はそれを例えば凍結乾燥して固体に変換し、粘膜に適用する。
【0040】
粉末状の有効成分は、微細化された粉末状にされ、粘膜、特に鼻粘膜に沈着させなければならない。
【0041】
従来技術では、これは一般に有効成分を噴霧器、特に鼻用噴霧器にパッケージングして実行されていた。
【0042】
微細化された粉末状の有効成分は、加圧下で噴射ガスにより噴射され、これは気道及び肺に送り込むことができ、及び/又は送り込む必要のある有効成分の使用に限定されるので、その使用が制限される。
【0043】
この問題を解決するために、本発明では、有効成分は、噴射ガスにより噴射されず、その代わり使用する明確な位置、すなわち粘膜に単に沈着させるので、室温及び大気圧で極めて揮発性の液体担体の使用により気道及び肺内に噴射されることがない。
【0044】
上記担体に用いる液体の25℃及び大気圧における蒸気圧は、10,000Pa(100ミリバール)以上であり、好ましくは10,000Pa(100ミリバール)〜70,000Pa(700ミリバール)間であり、その沸点は、30℃以上でなくてはならない。
【0045】
また、液体担体の沸点が30℃未満であると、液体担体は室温で液状ではあり得ず、ガス状又は液体−気体の混合物となり、噴射ガスを使用したのと同様の問題を生じることになる。
【0046】
温度25℃及び大気圧で蒸気圧が10,000Pa(100ミリバール)を有する液体担体は、大気圧及び室温で約10秒間に気化するが、これは粘膜上の希望する用途に適する。
【0047】
蒸気圧が高くなるにつれて、液体担体の揮発性が大きくなる。25℃及び大気圧における蒸気圧が70,000Pa(700ミリバール)より大きい液体担体では、蒸発は急速気化型となり、それが適用される面を冷却する。
【0048】
もし、先の面が人又は動物の粘膜であれば、このような急激な冷却は、投与中に血管収縮又は不快感の如き望ましくない現象を生じる恐れがある。
【0049】
この理由により、本発明では、25℃及び大気圧での蒸気圧が明確に10,000Pa(100ミリバール)より大きく、しかし70,000Pa(700ミリバール)以下である液体担体を使用するのが好ましい。
【0050】
本発明のこの枠組みに該当する特に好ましい液体担体の1つは、フッ化水素エーテル(HFE)又は以下の化学式(1)で与えられるフッ化水素エーテルの混合物である。
RH−O−RF ・・・(1)
式中、RHは、置換又は未置換の、直鎖状、分岐状又は環状の、部分的又は全体的に水素化したアルキル基であり、RFは、直鎖状、分岐状又は環状の、全体的又は部分的にフッ素化されたアルキル基である。
【0051】
上記フッ化水素エーテル類(HFE)は、高度に揮発性及び生体適合性の化合物であり、人間に毒性が全くなく、実質的に全ての有機物に対して化学的に不活性である。
【0052】
本発明で使用されるHFEは、特に人体組織と接触することを意図している。従って、その毒性及び人の組織への溶解能が可能な限り少ないことが重要である。そのために、Rは、短い炭素鎖のアルキル基であるのが好ましい。特に好ましくは、R基は、1個又は2個の炭素原子を有するアルキル基である。
【0053】
本発明の組成物の液体担体を構成するHFEが必要とする揮発性に関して、HFEの蒸気圧を変えることが可能であるので、R基の鎖の長さを変えることにより得られる。25℃及び大気圧で28,000Pa(280ミリバール)の蒸気圧を有するHFEでは、1mLを生きている人の手に接触させると蒸発時間は約4秒であり、25℃及び大気圧で14,000Pa(140ミリバール)の蒸気圧を有するHFEでは、蒸発時間は7秒であり、25℃及び大気圧で2,100Pa(21ミリバール)の蒸気圧を有するHFEでは、蒸発時間は約15秒であり、また25℃及び大気圧で69,800Paの蒸気圧を有するHFEでは、蒸発時間は約1秒であった。
【0054】
したがって、本発明の組成物に使用される液体担体は、特に好ましくは、25℃及び大気圧で69,800Pa(698ミリバール)の蒸気圧を有する(手の上で蒸発時間が約1秒である)3M社からHFE7000の参照番号で市販されているメトキシヘプタフルオロプロパン、25℃及び大気圧で28,000Pa(280ミリバール)の蒸気圧を有する(手の上での蒸発時間が約4秒である)3M社からHFE7100の参照番号で市販されているメトキシノナフルオロブタン又は25℃及び大気圧で14,000Pa(140ミリバール)の蒸気圧を有する(手の上での蒸発時間約7秒である)3M社からHFE7200の参照番号で市販されているエトキシノナフルオロブタンである。
【0055】
上記担体に使用する液体の蒸発時間は、皮膚上に2mLを塗布した場合の平均時間であるが、これらの値は、適用される面の温度に依存し、個人間で異なっており、体温及び室温に従って、皮膚及び粘膜に適用する個人間で変化し得る。かかる液体担体を使用すると、噴射ガスの反復使用により粘膜に圧力を加えることによる傷害を避ける。
【0056】
本発明により処方される医薬組成物は、重度な火傷患者の傷の様な深い傷であって、圧迫を加えるために必要な単なる手による圧力に容易には耐えられない場合に、所望の有効成分を沈着させる際に特に好適である。
【0057】
上記有効成分は、所望部分へのみ送達され且つ粉末状であるので、傷口の周りの組織へ流れ出したり又ははみ出したりすることがない。よって、本発明による医薬組成物の1つの特定用途は、重度な火傷患者のケアである。
【0058】
全ての場合において、本発明による医薬組成物に含まれる有効成分は、凍結乾燥により、又は既に固形に合成されており、例えば凍結乾燥により粉末状に変換されているために、微細化された粉末状に変換されるあらゆる有効成分であってもよい。
【0059】
よって、有効成分は、現在体内に注射器によって投与されているワクチン、体内で直ちに放出される必要のあるインスリン、激しい痛みの鎮痛剤、抗生物質及び抗喘息剤とTrinitrine(R)の様な全ての心臓調節剤と同様に置換可能である。
【0060】
通常は注射される又は噴射ガスにより気化される、これら全ての製品は、本発明の医薬組成物を使用して粘膜に投与可能である。現在、添加剤と共に処方される皮膚病用組成物、特に抗菌剤を含む皮膚病用組成物は、アレルギー化賦形剤のない本発明により製造可能である。
【0061】
同様に、経口投与用に現在処方されている有効成分は、本発明による担体液内で微細化された粉末状にして、本発明により処方可能である。
【0062】
これらの有効成分は、鎮痛剤又はヨード オブラート カプセルとすることが可能である。特定用途の1つは、この方法で投与するとき即効性を有するニコチンに関係する。しかし、ニコチンは、フィルムを形成して、粘膜及び皮膚の両方に投与可能である。
【0063】
この場合に、本発明の組成物は、効果的にフィルム形成剤をも含み、ニコチン上に保護フィルムを形成することにより、ニコチンを皮膚上に位置させることを可能にする。
【0064】
同様に、例えば更年期処置用のホルモンの如く、現在貼付剤の形態で投与されているホルモンは、好ましくはフィルム形成剤を含む本発明の組成物の形態で、投与可能となる。ホルモンは、現在の処方では不安定であるので、貼付剤の形態にするのが実際には困難である。
【0065】
本発明の医薬組成物では、液体担体は、適用場所へ移動させる輸送手段として作用するので、本発明の組成物を1回投与分又は複数回投与分の噴霧器の形態で処方可能である。1回限り又は連続した複数回分の正確な分量を投与するための多数の噴霧器が従来知られている。
【0066】
好ましくは、効率又は運搬能力を高めるために、本発明の組成物における有効成分と液体担体との容積比は、1/4〜4/1である。
【0067】
特に極めて好ましいのは、本発明の医薬組成物の処方は、有効成分と液体担体との容積比は、微細化された粉末で1であり、液体担体で1である。
【0068】
実質的にあらゆる有機化合物は、液状HFEに溶解せず、HFE内で有効成分は化学的に完全状態を維持し、これにより上記有効成分の治療効果を完全に保存する。さらに、HFEは、人体に毒性がなく、且つオゾン層及び環境に無毒である。
【0069】
また、本発明は生物学的組成物に関し、この生物学的製品は、固形であって本発明の第1実施態様による医薬生成物で説明した液体担体と同じ液体担体内で溶解しない。
【0070】
したがって、本発明は、医薬及び/又は生物学的組成物の製造に関して上述した液体担体の使用に基づく。
【0071】
本発明における特に好ましい生物学的組成物は、人、動物又は植物の幹細胞よりなる。
【0072】
特に、上述した化学式(1)のフッ化水素エーテルは、細胞増殖抑制性であり、すなわち如何なる幹細胞又は生きた細胞も、傷害を受けることなく特定の成長段階で完全に保存維持される。
【0073】
そこで、人の組織、動物の組織又は植物の組織等の特定の成長段階の生きた組織の幹細胞を予め用意し、フッ化水素エーテル(HFE)内に条件を整えられたコンテナ(容器)を開けることにより、フッ化水素エーテル又はフッ化水素エーテルの混合物は、直ちに揮発し、それを培地に入れ替えてこれらのセルの成長を続けさせるので、所望の段階へ成長を続けさせることが可能である。
【0074】
また、これらの幹細胞を使用して、重度の火傷患者の皮膚を再構成させ又は新鮮な人の皮膚サンプルを非常に迅速に作り、化粧品及び/又は医薬品の無毒性を試験管内でテストに用いられる。
【0075】
液体担体が揮発すると、当業者には明瞭であるように、本発明による医薬及び/又は生物学的組成物は、閉じた容器に収めておくべきであり、この容器は開くことができ、且つ任意に気密状態に再度閉じることも可能である。
【0076】
本発明は、ここで説明した実施態様に限定されるものではなく、これらの実施態様は発明の単なる例示として示したに過ぎない。
【0077】
これに対して、本発明は、ここに説明したものと技術的に等価なもの全てを含み、また本発明の精神に含まれるものであれば、これらの組み合わせも包含する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度25℃及び大気圧における蒸気圧が10,000Pa(100ミリバール)以上、沸点が30℃以上の過フッ素化化合物である液体を使用する医薬及び/又は生物学的組成物であって、
上記液体、並びに、医薬成分が粉末、及び/又は生物学的材料が固形形態であるかどうか、又は上記医薬成分及び/又は生物学的材料が上記液体担体に不溶性であるかどうかのいずれかの状態、並びに適宜のフィルム形成剤、からなることを特徴とする医薬及び/又は生物学的組成物。
【請求項2】
温度25℃及び大気圧における蒸気圧が、10,000〜70,000Pa(100〜700ミリバール)の範囲である上記液体中に粉末状の医薬成分及び/又は固形の生物学的材料並びに適宜のフィルム形成剤を分散させて製造することを特徴とする請求項1の医薬及び/又は生物学的組成物の製造方法。
【請求項3】
上記液体担体が、フッ化水素エーテル(HFE)、フッ化水素エーテル異性体の混合物及び以下の式(1)のフッ化水素エーテル(HFE)の混合物よりなる群から選択されることを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
−O−R・・・(1)
式中、Rは、置換又は未置換の、直鎖状、分岐状又は環状の、部分的又は全体的に水素化されたアルキル基であり、Rは、直鎖状、分岐状又は環状の、全体的又は部分的にフッ素化されたアルキル基である。
【請求項4】
上記液体担体が、メトキシへプタフルオロプロパン、エトキシノナフルオロブタン及びメトキシノナフルオロブタンよりなる群から選択されることを特徴とする請求項2又は3に記載の製造方法。
【請求項5】
上記液体担体が、人、動物又は植物組織の幹細胞のための細胞増殖抑制性媒体からなることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1つに記載の製造方法。
【請求項6】
上記幹細胞が、人の皮膚組織の幹細胞であることを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
上記医薬組成物の液体担体中で、有効成分が微細化された粉末形態であり、上記液体担体に溶解していないことを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
有効成分及び液体担体よりなる医薬組成物であって、上記液体担体が、25℃及び大気圧で蒸気圧が10,000Pa(100ミリバール)以上、沸点が30℃以上である過フッ素化された化合物であり、治療有効成分が上記液体担体内に不溶の微細化された粉末形態であり、さらに、適宜のフィルム形成剤よりなることを特徴とする医薬組成物。
【請求項9】
上記液体担体は、25℃及び大気圧における蒸気圧が10,000〜70,000Pa(100〜700ミリバール)の範囲であることを特徴とする請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
上記液体担体が、フッ化水素エーテル(HFE)又は下記の式(1)のフッ化水素エーテル混合物であることを特徴とする請求項8又は9に記載の医薬組成物。
−O−R ・・・・(1)
式中、Rは、置換又は未置換の、直鎖状、分岐状又は環状の、部分的又は全体的に水素化されたアルキル基であり、Rは、直鎖状、分岐状又は環状の全体的又は部分的にフッ素化されたアルキル基である。
【請求項11】
上記液体担体は、メトキシヘプタフルオロプロパン、エトキシノナフルオロブタン及びメトキシノナフルオロブタンよりなる群から選択されることを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項12】
上記有効成分が、インスリン、ワクチン、鎮痛剤、トリニトリン(Trinitrine(R))ニコチン、ヨード、ホルモン、抗生物質及び抗菌剤より選択されることを特徴とする請求項8〜11のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項13】
上記有効成分と上記液体担体の容積比が、1/4〜4/1の範囲であることを特徴とする請求項8〜12のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項14】
上記有効成分と上記液体担体の容積比が、1/1であることを特徴とする請求項8〜13のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項15】
噴霧器内にパッケージされていることを特徴とする請求項8〜14のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項16】
フィルム形成剤を含むことを特徴とする請求項8〜15のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項17】
重度の火傷患者のケアのための請求項8〜16のいずれかに記載の医薬組成物。

【公表番号】特表2006−519215(P2006−519215A)
【公表日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−502176(P2006−502176)
【出願日】平成16年2月13日(2004.2.13)
【国際出願番号】PCT/FR2004/050055
【国際公開番号】WO2004/073743
【国際公開日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(591254958)株式会社タイキ (35)
【Fターム(参考)】