説明

医薬品又は検体用収納容器

【課題】 本発明は、医薬品や検体を外部から明瞭に視認することができる医薬品又は検体用の収納容器を提供することを課題とする。
【解決手段】 透明なフィルム7の一面に接着剤8が設けられたラベル4が、医薬品又は検体を入れる透明な容器本体2の外面に貼付された医薬品又は検体用収納容器1に於いて、前記接着剤8が、フィルム7の一面に溶融押出によって形成された透明な感熱性接着剤からなる。この感熱性接着剤は、エチレン共重合体20〜60重量%、オレフィン系エラストマー20〜60重量%、粘着付与剤10〜30重量%を含むものが用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品や検体を入れるための収納容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、注射液などの医薬品や血液などの検体を入れる医療用収納容器として、プレフィルドシリンジ、アンプル、バイアルビン、真空採血管などが知られている。
プレフィルドシリンジは、予め医薬品が封入された注射器である。
アンプルは、医薬品が封入され、使用に際して一部分を分断して開口部を形成することで医薬品を取り出すことができる容器である。
バイアルビンは、医薬品が封入され、使用に際して注射針などを刺して医薬品を吸い出すことができる容器である。
真空採血管は、血管に連通する注射針を貫通させることにより、血液を吸い出すことができる容器である。
【0003】
上記医薬品又は検体用収納容器は、ガラス製のものも多いが、近年、合成樹脂製のものも多く使用されている。しかしながら、合成樹脂製の収納容器は、酸素などのガスバリア性に劣るため、酸素などの侵入による医薬品の劣化を防ぐ目的で、各種のラベルが貼付されている。
例えば、特許文献1には、バレル(容器本体)にガスバリア性を有する粘着ラベルが貼付されたプレフィルドシリンジが開示されており、粘着剤として感熱性或いは感圧性の粘着剤が使用されている。
また、特許文献2には、アンプル本体にガスバリア性を有する粘着ラベルが貼付されたアンプルが開示されており、粘着剤として感熱性或いは感圧性の粘着剤が使用されている。
一方、印刷表示や封緘を目的としてラベルを貼付したものもあり、例えば、特許文献3には、シリンダー(容器本体)と栓体に亘って、裏面に粘着剤が塗布されたシュリンクラベルが被せられたプレフィルドシリンジが開示されており、粘着剤として感圧型粘着剤が使用されている。
【0004】
ところで、医薬品や検体を収納する上記容器は、収納している医薬品や検体の変質、異物混入の有無等を目視によってチェックする必要があるため、医薬品や検体を外部から明瞭に視認できるようにしておかなければならない。
従って、プレフィルドシリンジ、アンプル、バイアルビン、真空採血管などの医療用容器自体は、透明なガラス又は透明な合成樹脂成形体によって作製されているが、これに貼付する粘着ラベル自体も透明性に優れるものが望まれる。
【0005】
この点、上記特許文献1及び2には、感熱性粘着ラベルが記載されているが、一般に感熱性の粘着ラベルに用いられている感熱性粘着剤は、加熱後、粘着性が長時間持続するディレードタック型感熱性粘着剤が用いられていることが多く、該ディレードタック型感熱性粘着剤には、固体可塑剤が多量に含まれているため、加熱後、これが結晶化することでラベルの透明性が低下する。従って、該感熱性粘着ラベルが添付された医療用収納容器は、医薬品や検体の微妙な変質、微細な異物などを見落とす虞がある。
【0006】
尚、上記特許文献1〜3に記載された感圧型粘着剤が塗布された粘着ラベルは、離型紙に貼付されて提供されるため、材料費が嵩む他、これを容器に貼付する際には、離型紙の剥離工程が必要で、又、貼付後、離型紙を廃棄処分しなければならず、省ゴミ化などの点から好ましいものとは言えない。
【0007】
【特許文献1】特開2004−267662公報
【特許文献2】特開2004−267663公報
【特許文献3】登録実用新案第3024311号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、入れられた医薬品や検体を外部から明瞭に視認することができる医薬品又は検体用の収納容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための手段として、本発明は、透明なフィルムの一面に接着剤が設けられたラベルが、医薬品又は検体を入れる透明な容器本体の外面に貼付された医薬品又は検体用収納容器に於いて、前記接着剤が、前記フィルムの一面に溶融押出によって形成された透明な感熱性接着剤からなることを特徴とする医薬品又は検体用収納容器を提供する。
【0010】
上記医薬品又は検体用収納容器は、透明なフィルムに溶融押出にて塗工された透明な感熱性接着剤を有するラベルが貼付されている。溶融押出にて塗工された透明な感熱性接着剤は、接着剤中に空気などの気泡を含むことなく接着でき、透明性に優れているので、該ラベルを介して、容器本体内に入れられた医薬品又は検体を外部から明瞭に視認することができる。従って、本発明の医薬品又は検体用収納容器は医薬品の変質、異物混入の有無等を目視によって確実にチェックすることができる。
【0011】
また、本発明の好ましい態様では、上記感熱性接着剤が、エチレン共重合体20〜60重量%、オレフィン系エラストマー20〜60重量%、粘着付与剤10〜30重量%を含む上記医薬品又は検体用収納容器に係り、かかる医薬品又は検体用収納容器は、感熱性接着剤が特に透明性に優れているので、容器本体内に入れられた医薬品又は検体を外部から明瞭に視認することができる。
【0012】
さらに、本発明の好ましい態様では、上記ラベルが、ガスバリア性を有し、少なくとも容器本体の胴部周囲に覆われている上記医薬品又は検体用収納容器に係り、かかる医薬品又は検体用収納容器は、ラベルを介して外部から酸素などの侵入を防止でき、医薬品などが劣化を防止できる。
【0013】
また、本発明の好ましい態様では、上記ラベルを構成するフィルムが、容器本体の周方向に熱収縮性を有し、ラベルが、容器本体の周方向に巻き付けて貼付されている上記医薬品又は検体用収納容器に係り、かかる医薬品又は検体用収納容器は、ラベルを巻付けながら貼付するので、ラベルと容器本体との間に空気が残存し難く、また、更に熱収縮させるので、ラベルが容器本体の表面に強く密着し、より透明性に優れたものとなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る医薬品又は検体用収納容器は、ラベルが透明性に優れているので、該ラベルを介して、容器本体内に入れられた医薬品又は検体を外部から明瞭に視認することができる。従って、医薬品の変質、異物混入の有無等を目視によって確実にチェックすることができる医薬品又は検体用収納容器を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明について、図面を参照しつつ具体的に説明する。
(第1実施形態)
図1に於いて、1は、筒状胴部21の前方閉塞面22に医薬品注出口となる注射針装着部23が形成された合成樹脂製の容器本体2と、容器本体2の後方開口部24に挿入されたプランジャー栓部3と、注射針装着部23に取り付けられた栓体5と、容器本体2内の収納部26に封入された医薬品と、容器本体2の外面を覆うように貼付され、且つ裏面に透明な感熱性接着剤が設けられた透明なフィルム7からなるラベル4と、を備えるプレフィルドシリンジを示す。
【0016】
具体的には、容器本体2は、例えば内部に収納部26が形成された円筒状の胴部21と、この胴部21の前方開口部を閉塞する前方閉塞面22と、この前方閉塞面22に形成され、且つ胴部21内部に連通する小径筒状部からなる注射針装着部23と、胴部21の後方開口部24の周囲から外側に突設された掛止部25と、を有する。
容器本体2は、収納する医薬品(注射薬)を透視するため、透明な合成樹脂、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレートなどの公知の合成樹脂成形品によって形成されている。
【0017】
この容器本体2の後方開口部24には、ゴム製のプランジャー栓部3が挿入されており、この栓部3には、プランジャー31が連結されている。
容器本体2の注射針装着部23には、ブチルゴムなどのゴムや合成樹脂などの成型品からなる栓体5が着脱可能に取付けられている。この栓体5は、例えば、容器本体2の胴部21よりも小径な円柱状に形成され、注射針装着部23の中途部分にまで嵌着されている。
そして、容器本体2の収納部26内に於いて、プランジャー栓部3から栓体5に至るまで、医薬品(注射薬)が充填封入されている。
尚、特に図示しないが、注射針装着部に注射針が装着され、この注射針を覆うように、ペンキャップ状のキャップが注射針に取り付けられているプレフィルドシリンジも知られており、本発明は、かかるプレフィルドシリンジに適用することも可能である。
【0018】
次に、ラベル4は、ガスバリア性を有し且つ縦方向に少なくとも熱収縮性を有する透明なフィルム7と、該フィルム7の裏面全体に溶融押出法によって設けられた感熱性接着剤からなる接着部8と、を有する。
このラベル4の幅方向(容器本体2に装着した際、容器本体2の縦方向。以下同様)の長さは、概ね容器本体2の掛止部25から栓体5の後端部までの長さに形成され、ラベル4の縦方向(容器本体2に装着した際、容器本体2の周方向。以下同様)の長さは、オーバーラップ部6を確保するため、概ね容器本体2の胴部21周長よりも少し長く形成されている。
このラベル4は、加熱して接着部8を活性化した後、図2に示すように、ラベル4の前端部4cを容器本体2の前方閉塞面22よりも外側に突出させ、且つラベル4の一側端部4a裏面を容器本体2の胴部21の縦方向に沿って貼着した状態で、該ラベル4を容器本体2の胴部21の周りに巻き付け、ラベル4の他側端部4bの裏面を一側端部4aの表面に重ね合わせて両面を接着した後(この重ね合わせ接着部分をオーバーラップ部6という場合がある)、熱収縮させて貼付されている。
【0019】
裏面に接着部8が設けられ且つ熱収縮によって貼付された上記ラベル4は、容器本体2の胴部21から前方閉塞面22に気密状に接着されている。すなわち、ラベル4は、接着部8を介して容器本体2の胴部21の外周面に密着している。さらに、ラベル4の前端部4cは、熱収縮により、容器本体2の胴部21から前方閉塞面22、更に注射針装着部23の基部(栓体5によって覆われていない注射針装着部23の露出部)にかけて形成された段部に沿って縮径しており、接着部8を介して前方閉塞面22及び注射針装着部23の基部に気密状に接着されている。尚、ラベル4の後端部4dは、接着部8を介して容器本体2の胴部21に気密状に接着されている。
また、栓体5とラベル4によって容器本体2の外面を確実に被覆するため、ラベル4の前端縁は、栓体5に接している。尚、ラベル4の後端縁は、容器本体2の掛止部25に近接している。ここで、栓体5は、通常、肉厚も厚くガスバリア性を有するので、栓体5をラベル4によって被覆しなくても、プレフィルドシリンジ1のガスバリア性は保持される。
尚、ラベル4には、必要に応じて、例えば商品名、注意書き、目盛りなどの印刷表示(図示せず)を公知の印刷法によって印刷してもよい。
【0020】
上記ラベル4を構成するフィルム7は、透明性に優れるものであれば特に限定されず、例えば、ポリスチレンなどのスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂、ポリカーボネート、塩化ビニル系樹脂などの熱可塑性樹脂からから選ばれる1種単独、又は2種以上の混合物などからなる透明な熱収縮性フィルムを用いることができる。また、熱収縮性を有する2種以上の透明なフィルムが積層された積層フィルムでもよい。中でも、透明性に優れていることから、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂の熱収縮性フィルムを用いることが好ましい。フィルムは公知の製法で製膜し延伸処理することにより熱収縮性フィルムを得ることができる。延伸処理は、通常、70〜110℃程度の温度で、縦方向に2.0〜8.0倍、好ましくは3.0〜7.0倍程度延伸することにより行われる。さらに、幅方向にも、例えば1.5倍以下の低倍率で延伸処理を行ってもよい。得られたフィルムは、一軸延伸フィルム又は主延伸方向と直交する方向に若干延伸された二軸延伸フィルムとなる。フィルム7の厚みは、概ね20〜60μm程度のものが好ましい。
尚、後述するように、予め筒状に成形された筒状態様の熱収縮性のラベルを用いる場合には、その製造上、フィルム7の幅方向が容器本体2の周方向となるように、フィルム7を筒状成形する。従って、筒状態様のラベル4に用いられるフィルム7は、幅方向(容器本体2に装着した際、容器本体2の周方向)に上記延伸処理が施される。つまり、巻付態様のラベルと筒状態様のラベルでは、その製造上、用いられるフィルム7の主たる延伸方向(熱収縮方向)が異なる点を除いて、同様のものを用いることができる。
【0021】
上記熱収縮性フィルムの熱収縮率としては、容器本体2に密着可能な程度に熱収縮可能なものであれば特に限定されないが、通常、縦方向(筒状態様に用いる場合には、幅方向。以下同様)に於ける熱収縮率(90℃温水中に10秒間浸漬)が約30%以上、好ましくは約40%以上のものが例示される。また、熱収縮性フィルムは幅方向に若干熱収縮してもよく、かかるフィルムの幅方向に於ける熱収縮率(90℃温水中に10秒間浸漬)は、約−3〜15%程度のものが例示される。
但し、熱収縮率(%)=[{(縦方向(又は幅方向)の元の長さ)−(縦方向(又は幅方向)の浸漬後の長さ)}/(縦方向(又は幅方向)の元の長さ)]×100。
【0022】
更に、ラベル4を構成するフィルム7は、上記熱収縮性フィルムの透明性を損ねずにガスバリア性が付与されたもの、例えば、上記熱収縮性フィルムに、酸化アルミニウムやシリカなどの1種又は2種以上を蒸着した透明蒸着フィルム、熱収縮性フィルムに、ガスバリア性を有する合成樹脂製フィルム(例えば、6ナイロン/MXDナイロン/6ナイロン、6ナイロン/エチレン−ビニルアルコール共重合体/6ナイロンなどの層構成からなるフィルム等)を積層した透明積層フィルム、熱収縮性フィルムに、ポリ塩化ビニリデン、エチレンビニルアルコール共重合体などの合成樹脂、無機微粒子を含有するコーティング剤などをコーティングした透明塗工フィルムなどを用いることができる。また、蒸着フィルムは、熱収縮時に蒸着割れを生じ、ガスバリア性が低下する虞があるため、ラベル4のフィルム7としては、上記積層フィルムや塗工フィルムを用いることが好ましい。
【0023】
次に、ラベル4の裏面に設けられた透明な感熱性接着剤は、溶融押出にてフィルム7に塗工される感熱性接着剤が用いられる。
溶融押出にて塗工可能な感熱性接着剤は、加熱溶融することによって塗工可能なものであって、塗工後、常温で接着性又は粘着性を示さず、加熱することによって接着可能となるものである。このように溶融押出にて塗工される感熱性接着剤は結晶化する可塑剤が含まれることもなく、貼付後においても透明性に優れており、また、塗工時に細かい気泡を取り込むことによって白化することもなく、優れた透明性を保ったままで塗工でき、非常に透明性の高いラベル4を構成できる。
また、該ラベル4は、離型紙に貼付しないで供給することができる。
【0024】
かかる感熱性接着剤としては、例えば、ベース樹脂及び粘着付与剤、更に、必要に応じてワックス、滑剤、安定剤、シリコーン系ポリマー、老化防止剤、紫外線吸収剤などの各種添加剤が配合されたものが挙げられる。ベース樹脂としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体などのエチレン共重合体;エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、エチレン−ブテンゴムなどのオレフィン系エラストマー;スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン−ブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)などの熱可塑性エラストマーなどを用いることができる。ベース樹脂は1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。粘着付与剤としては、例えば、テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、ロジン系樹脂、脂肪族系・芳香族系・脂環族系などの石油系樹脂、及びそれら樹脂の水添物などを1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
中でも、特に透明性に優れていることから、エチレン共重合体(例えば、三井デュポンポリケミカル(株)製、商品名:エバフレックス EV250。MFR:30、VA量:28%)を20〜60重量%、及びオレフィン系エラストマー(例えば、三井化学(株)製、商品名:タフマー P−0280。MFR:2.9)を20〜60重量%、及び粘着付与剤(例えば、ヤスハラケミカル(株)製、商品名:クリアロン P115。環球法軟化点115℃)を10〜30重量%を含み、更に必要に応じてパラフィンワックスなどを含む感熱性接着剤を用いることが好ましい。
感熱性接着剤(接着部8)の厚みは、概ね10〜30μm程度が好ましい。
【0025】
上記プレフィルドシリンジ1は、例えば、下記の製法によって得ることができる。
少なくとも縦方向に熱収縮性を有する透明なフィルム原反の裏面全体に、溶融押出機を用いて感熱性接着剤を所定温度(例えば、150℃〜230℃)に加熱溶融させ、ダイスのスリットから溶融させた接着剤を薄膜状に塗工する。
その後、所定の幅(ラベル一列分)に切断し、一旦ロール状に巻取り、ラベリング装置に装填する。ラベリング装置に於いて、このラベル原反を引き出し、縦方向に所定長さに切断することによって一のラベル4が得られる。このラベル4を加熱することで感熱性接着剤を接着可能な状態にした後、順次供給される容器本体2の胴部21に、図2(a)に示すように、ラベル4の一側端部4aを貼着し、ラベル4に張力を加えながら容器本体2を回転させることにより、ラベル4を胴部21に巻き付ける。そして、他側端部4b裏面を一側端部4a表面に重ね合わせ、接着部8を介して接着することにより、容器本体2の周囲にラベル4を筒状に貼付することができる。
最後に、これをシュリンクトンネルなどを通過させて所定温度(例えば80〜120℃程度)に加熱することにより、ラベル4が縦方向に熱収縮し、図1(a)に示すようなプレフィルドシリンジ1を得ることができる。
【0026】
上記プレフィルドシリンジ1は、透明なフィルム7に溶融押出にて塗工された透明な感熱性接着剤を有するラベル4が貼付されている。溶融押出にて塗工された透明な感熱性接着剤は、透明性に優れているので、これが積層されたラベル4も透明性に優れ、該ラベル4を介して、外部から収納部26を明瞭に視認することができる。従って、プレフィルドシリンジ1内に入れられた医薬品の変質、異物混入の有無等を目視によって確実にチェックすることができる。
尚、ラベル4は、加熱活性化前の感熱性接着剤表面が微細な凹凸状表面(マット状又は艶消し状)を有し、従って、加熱活性化前に於いて外観上透明性に劣るものであっても、加熱活性化(軟化)した後、平滑な容器本体2に密着状に貼付された状態で透明性に優れるものであればよい。
【0027】
また、上記プレフィルドシリンジ1は、容器本体2の胴部21から容器本体2の前方閉塞面22に至るまで、ガスバリア性を有するラベル4によって覆われていると共に、ラベル4の前端部4c及び後端部4dは接着部8を介して容器本体2に気密状に密着されているので、ラベル4の前端縁及び後端縁からラベル4と容器本体2の間に空気が入り込むことがない。従って、上記プレフィルドシリンジ1は、酸素などが外部から容器本体2を通過し、収納部26内に侵入することを防止できる。
特に、ラベル4の裏面全体には、接着部8がベタ状に設けられ、更に、該ラベル4が、容器本体2に巻付けて装着されるので、熱収縮後のラベル4と容器本体2の胴部21との間に、空気が残存し難く、従って、残存空気が容器本体2内へ侵入することを防止できる。また、巻き付けて貼付するラベル4は、このように空気が残存し難いので、透明性が向上する。特に、該ラベル4は、巻き付けてその裏面全体を接着剤を介して接着し、更に熱収縮性させるので、容器本体2の表面に強く密着し、透明性に優れたものとなる。
【0028】
また、本実施形態に係るラベル4は、容器本体2に巻付けた後に熱収縮させる巻付け態様のラベルからなるので、予め筒状に形成された熱収縮性筒状ラベルを嵌挿収縮させて装着する場合に比して、収縮量を小さくすることができる。つまり、熱収縮性筒状ラベルの場合、容器本体2の胴部21に嵌挿するため、該胴部21の周長よりも大きく形成する必要がある。一方、巻付けて装着される巻付け態様のラベルの場合、巻付けることで筒状に形成されるため、装着時(熱収縮前)に於けるラベルの周長は、胴部の周長に略等しくなる。従って、巻付け態様のラベル4は、筒状態様のラベル4に比して、熱収縮時の収縮量が小さくなるのである。
かかる巻付け態様のラベル4の場合、例えば、目盛り(医薬品量の指標用)などのような高い精度の要求される高精度印刷表示を、ラベル4の胴部21装着位置に施しても、ラベル4の熱収縮に起因して、該高精度印刷表示が歪み難いという利点がある。また、ラベル4として酸化アルミニウムなどを蒸着した蒸着フィルムを用いた場合には、ラベル4の収縮量が大き過ぎると、蒸着層がひび割れてガスバリア性を損ねる虞もあるが、巻付態様のラベル4の場合、蒸着層のひび割れを防止できる。
但し、本発明のラベル4は、巻付け態様に限定されず、熱収縮性フィルム7が筒状に形成され、且つ裏面に溶融押出にて感熱性接着剤が設けられた筒状態様のラベル4を用いることもできる。
【0029】
次に、本実施形態の変形例を示す。
図3(a)は、ラベル4の前端部4c裏面が、前方閉塞面22に気密状に接着され、且つこの前端部4b表面に、栓体5の後端面が当接されているプレフィルドシリンジ1を示す。
また、図3(b)は、栓体5が、注射針装着部23の全体に嵌着されており、ラベル4の前端部4cが、接着部8を介して前方閉塞面22に気密状に接着され、更に、少なくともその前端縁が栓体5に接しているプレフィルドシリンジ1を示す。
さらに、図3(c)は、ラベル4が、容器本体2の胴部21のみに貼付されているプレフィルドシリンジ1を示す。
何れのプレフィルドシリンジ1も、容器本体2の胴部21にラベル4が貼付されているが、ラベル4の透明性より、収納部26内の医薬品を目視でチェックできる。
【0030】
次に、図4は、熱収縮により、ラベル4の前端部4cが栓体5の周面に接着されており、ラベル4には、該ラベル4を、前端部4cとそれ以外の部分に分断するため、該前端部4cの内側寄りに分断手段が設けられているプレフィルドシリンジ1を示す。
図5は、熱収縮により、ラベル4の前端部4cが栓体5の前面に接着されており、ラベル4には、同様の分断手段が設けられているプレフィルドシリンジ1を示す。
【0031】
分断手段は、縦方向(容器本体2の周方向)に引裂性を有するラベル4に施され(縦方向に熱収縮性を有するフィルム7は、一般に縦方向に延伸処理されて作製されるため、別途加工を施さなくても、縦方向に引裂性を有する)、このラベル4のオーバーラップ部6を形成する他側端部4bのうち、前端部4cの内側寄りに2箇所の切れ目91を形成すると共に、ラベル4の容器本体2接触面のうち、該2箇所の切れ目91の縦方向延長線によって囲われる帯状領域に、(接着剤を設けず)非接着部92を周設することにより、構成することができる。
尚、図4(c)に示すように、ラベル4の他側端部4bのうち2箇所の切れ目91の間は、一側端部4a表面に接着されてオーバーラップ部6の一部を構成しているが、2箇所の切れ目91で挟まれた外縁部4eは、摘み代を形成するため一側端部4a表面に非接着とされている。
【0032】
本変形例のプレフィルドシリンジ1は、ラベル4が栓体5の周面や全面にまで貼付されているので、栓体5の不用意な離脱を防止できる。さらに、該プレフィルドシリンジ1は、縦方向に引裂性を有するラベル4と、この他側端部4bに形成された2本の切れ目91と、ラベル4の容器本体2接触面のうち切れ目91で囲われる周方向帯状領域に少なくとも設けられた非接触部92と、からなる分断手段が設けられている。この切れ目91で挟まれた外縁部4eを摘み、これを容器本体2の周方向へ回すことにより、ラベル4は、その引裂性に従い、非接着部92に沿って切り取られる。従って、ラベル4を、前端部4cとそれ以外の部分とに容易に分断して、栓体5を取り外すことができる。
【0033】
尚、本変形例に於いて、分断手段は、上記の構成のものを例示したが、分断手段はこの構成に限られず、例えば、分断手段として、ラベル4の裏面であって前端部4cの内側寄り位置に、テアテープを周設してもよく、又、ミシン目を刻設してもよい。
【0034】
(第2実施形態)
第2実施形態は、ラベルが貼付されたアンプル(医薬品用収納容器)に関する。以下、主として上記各実施形態と異なる構成及び作用効果について説明し、同様の構成などについては、その説明を省略し、図番を援用することがある。
図6に於いて、アンプル11は、医薬品を封入する収納部26の形成された密閉型の容器本体2と、容器本体2の一部分に形成された切断用の縊れ部27と、を備えており、容器本体2は、透明な合成樹脂によって形成されている。
この容器本体2の外面には、上記第1実施形態で例示したラベル4が貼付されている。具体的には、ラベル4は、容器本体2の胴部21に貼付され、その前端部4cが縊れ部27の近傍に位置し、且つ後端部4dが底面の一部を覆うように、容器本体2の外面に貼付されている。
【0035】
上記アンプル11についても同様に、溶融押出にて塗工された透明な感熱性接着剤が設けられたラベル4を熱収縮により密着させて貼付しているので、該ラベル4を介して、収納部26内を明瞭に視認することができる。また、ラベル4のガスバリア性により、医薬品の劣化も防止できる。
【0036】
本実施形態に於いて、ラベル4を、容器本体2の略全体に貼付することも可能である。この場合、縊れ部27にもラベル4が貼付されるので、アンプル11の使用時、アンプル11の使用時、縊れ部27にてアンプル11を切断するため、縊れ部27の対応位置に、上記第1実施形態で示した分断手段を設けることが好ましい。
【0037】
(第3実施形態)
第3実施形態は、ラベルが貼付されたバイアルビン(医薬品用収納容器)に関する。以下、主として上記各実施形態と異なる構成及び作用効果について説明し、同様の構成などについては、その説明を省略し、図番を援用することがある。
図7に於いて、バイアルビン12は、医薬品を入れる収納部26が形成された上面開口型の容器本体2と、この開口部に嵌着され且つ注射針などを貫通可能なゴム製の栓体5と、を備えており、容器本体2は、透明な合成樹脂によって形成されている。
この容器本体2の外面には、上記第1実施形態で例示したラベル4が貼付されている。具体的には、ラベル4は、容器本体2の胴部21に貼付され、その前端部4cが栓体5の端部に接着され、且つ後端部4dが底面の一部を覆うように、容器本体2の外面に貼付されている。
【0038】
上記バイアルビン12についても同様に、溶融押出にて塗工された透明な感熱性接着剤が設けられたラベル4を熱収縮により密着させて貼付しているので、該ラベル4を介して、収納部26内を明瞭に視認することができる。また、ラベル4のガスバリア性により、医薬品の劣化も防止できる。
【0039】
本実施形態に於いて、ラベル4の前端部4cを、第1実施形態の図4や図5で示す例と同様に、栓体5の周面にまで貼付してもよい。
また、第1実施形態の図3(c)で示す例と同様に、ラベル4を、容器本体2の胴部21のみに貼付してもよい。
【0040】
(第4実施形態)
第4実施形態は、ラベルが貼付された真空採血管(検体用収納容器)に関する。以下、主として上記各実施形態と異なる構成及び作用効果について説明し、同様の構成などについては、その説明を省略し、図番を援用することがある。
図8に於いて、真空採血管13は、血液を入れる収納部26が形成された開口型の容器本体2と、この開口部に嵌着され且つ注射針などを貫通可能なゴム製の栓体5と、を備えており、容器本体2は、透明な合成樹脂によって形成され、更に、収納部26内は真空状に保たれている。
この容器本体2の外面には、上記第1実施形態で例示したラベル4が貼付されている。具体的には、ラベル4は、容器本体2の胴部21に貼付され、その前端部4cが栓体5の端部に接着され、且つ後端部4dが底面の一部を覆うように、容器本体2の外面に貼付されている。
【0041】
上記真空採血管13についても同様に、溶融押出にて塗工された透明な感熱性接着剤が設けられたラベル4を熱収縮により密着させて貼付しているので、該ラベル4を介して、収納部26内を明瞭に視認することができる。また、ラベル4のガスバリア性により、医薬品の劣化も防止できる。
【0042】
本実施形態に於いて、ラベル4の前端部4cを栓体5の周面にまで貼付してもよいし、ラベル4を容器本体2の胴部21のみに貼付してもよい。
【0043】
(他の実施形態)
上記各実施形態に示す医薬品又は検体用収納容器に於いて、ラベル4は、少なくとも容器本体2の胴部21の外周面全体を被覆する巻付け態様又は筒状態様のものを例示しているが、ラベル4は、必ずしもかかる態様に限定されるものではなく、容器本体2の胴部21の周方向の一部分を被覆する態様でもよい。
【0044】
さらに、上記各実施形態に示す医薬品又は検体用収納容器に於いて、ラベル4が貼付される容器本体2は、合成樹脂製のものを例示したが、透明な容器本体2であれば特に限定されず、例えば、ガラス製のものでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】(a)は、第1実施形態に係るプレフィルドシリンジを縦方向に於いて切断した状態を示す断面図、(b)は、容器本体を被覆する巻付け態様のラベルを示す斜視図。
【図2】ラベルを容器本体に巻付け装着する過程を示す側面図。
【図3】(a)〜(c)は、変形例に係るプレフィルドシリンジを縦方向に於いて切断した状態を示す断面図。
【図4】(a)は、変形例に係るプレフィルドシリンジを示す側面図、(b)は、同A−Aで縦方向に於いて切断した断面図、(c)は、同B−B線断面図。
【図5】(a)は、変形例に係るプレフィルドシリンジを示す側面図、(b)は、同C−Cで縦方向に於いて切断した断面図。
【図6】第2実施形態に係るアンプルを縦方向に於いて切断した状態を示す断面図。
【図7】第3実施形態に係るバイアルビンを縦方向に於いて切断した状態を示す断面図。
【図8】第4実施形態に係る真空採血管を縦方向に於いて切断した状態を示す断面図。
【符号の説明】
【0046】
1…プレフィルドシリンジ、11…アンプル、12…バイアルビン、13…真空採血管、2…容器本体、21…胴部、22…前方閉塞面、23…注射針装着部、24…後方開口部、25…掛止部、26…収納部、27…縊れ部、3…プランジャー栓部、4…ラベル、4a…ラベルの一側端部、4b…ラベルの他側端部、4c…ラベルの前端部、4d…ラベルの後端部、5…栓体、6…オーバーラップ部、7…フィルム、8…接着部、91…切れ目、92…非接着部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明なフィルムの一面に接着剤が設けられたラベルが、医薬品又は検体を入れる透明な容器本体の外面に貼付された医薬品又は検体用収納容器に於いて、
前記接着剤が、前記フィルムの一面に溶融押出によって形成された透明な感熱性接着剤からなることを特徴とする医薬品又は検体用収納容器。
【請求項2】
前記感熱性接着剤が、エチレン共重合体20〜60重量%、オレフィン系エラストマー20〜60重量%、粘着付与剤10〜30重量%を含む請求項1記載の医薬品又は検体用収納容器。
【請求項3】
前記ラベルが、ガスバリア性を有し、少なくとも容器本体の胴部周囲に覆われている請求項1又は2記載の医薬品又は検体用収納容器。
【請求項4】
前記ラベルを構成するフィルムが、容器本体の周方向に熱収縮性を有し、前記ラベルが、容器本体の周方向に巻き付けて貼付されている請求項1〜3の何れかに記載の医薬品又は検体用収納容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−61477(P2007−61477A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−253395(P2005−253395)
【出願日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(000238005)株式会社フジシールインターナショナル (641)
【Fターム(参考)】