説明

医薬品用の包装材料

医薬品用の包装材料が開示する。包装材料は、約38℃で部分的に退色してマークを現出させる有色要素を備える。この要素は、従来のインクで印刷されるマークを形成する第1部分と、サーモクロミックインクで印刷される第2部分とにより形成される。サーモクロミックインクは、約38℃未満では有色であり、この温度以上になると無色になる。2つの部分は、第1部分が約38℃未満で不可視だがこの温度以上になると可視になるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品用の包装材料及びこのような包装材料を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱を下げることができる医薬品の存在が知られている。この医薬品は、解熱剤という品名で知られている。典型的な解熱薬は、パラセタモール、アセチルサリチル酸、ニフルム酸、ニメスリド、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、及びそれらのいくつかの誘導体である。
【0003】
所定の温度で色が変わることが可能な物質の存在も知られている。この物質は、「サーモクロミック(thermochromic:熱変色性)」であると称される。概して、この物質は、液晶の範疇の一部をなす。
【0004】
この数十年間で、サーモクロミック物質をベースにしたインクが数多く研究されてきた。これらのインクは、「サーモクロミックインク」と呼ばれ、シルクスクリーン印刷、フレキソ印刷、ウェットオフセット印刷、リソグラフィ印刷等に使用される。
【0005】
これらのインクには、有色であり所定の温度で色が変わるものがある。無色であり所定の温度で発色するサーモクロミックインクもある。有色であり所定の温度で無色になる他のインクもある。
【0006】
特許文献1(米国特許出願第2006/0241355号)は、使用者が摂取するための健康関連物質を入れる瓶を収容する領域を含むヘルスケアベース(healthcare base)を開示している。瓶には、サーモクロミック塗料で得られる体温計が設けることができる。体温センサは、2つの軸線を有するアレイとして配置した一連のドットを含む。一方の軸線は1゜間隔であり、他方の軸線は0.2゜間隔である。この体温計を使用するには、使用者が瓶を自身の額に一定時間当てることができる。その後、使用者は額から瓶を離して温度を読む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願第2006/0241355号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者は、特許文献1に開示されている体温計を備える瓶が快適かつ目立たずに使用できないことに気付いている。実際には、体温を測るために、患者/使用者が体温計(すなわち瓶)を皮膚表面に当てがい、アレイの各ドットが患者の身体(例えば額)に接触しなければならない。しかしながら、瓶を額に当てるのは注目を集める姿勢であり、状況によっては(例えば、旅行中、オフィス内等)患者/使用者がその姿勢をとりたくない場合がある。
【0009】
本発明者は、患者/使用者の体温が正確に測られなくても、患者/使用者に熱があるか否か、したがって患者/使用者が薬剤を服用する必要があるか否かを、より単純かつより目立たない方法で患者/使用者に示すことが可能な要素を、解熱薬の包装に設けることが有用であることを認識した。これは、特に患者/使用者が自由に使用できる体温計を持っていない場合に有用であろう。実際には、患者/使用者は、熱があるか否かを確認するために最初にパッケージを使用し、その後(例えば、帰宅したら)体温を測るために体温計を使用することができる。
【0010】
さらに、本発明者は、使用されるサーモクロミックインクの特性に応じて様々な程度の欠点が数多くあるため、これまでサーモクロミックインクの技術が広く採用されてきていないことに気付いている。
【0011】
特に、本発明者は、遷移温度未満で有色でありこの温度以上になると無色になるようなサーモクロミックインクは極めて不利であることを認識した。実際、このインクで印刷されたマークは、遷移温度に達すると消え、これにより、この温度に達しているか否かについての明確かつ正確な情報又はメッセージを患者/使用者に伝えることができなくなる。
【0012】
したがって、本発明者は、上記欠点を克服する医薬品用の包装材料を提供するという課題に取り組んできた。
【0013】
特に、本発明者は、上記既知の解決手段よりも単純かつ目立たない方法で、ある温度に達しているか否かに関する明確なメッセージを患者/使用者に伝えることが可能なマークを用いて、患者/使用者に熱があるか否かを示すことが可能な医薬品用の包装材料を提供するという問題に取り組んできた。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本明細書及び特許請求の範囲において、
「包装材料」は、医薬品の包装に存在する任意の容器、任意のラベル、任意のタグ、又は任意の紙を示すために用いられる。「包装材料」という表現は、本明細書では、製造会社により流通、発表、及び/又は販売される医薬品を伴う任意な他のタイプの材料を示すためにも用いられる。本発明による典型的な容器は、ケース、箱、薬瓶、バイアル、ブリスターパック、サシェ等である。
「マーク」は、任意のデザイン、図、アルファベット文字、単語、数字、記号、ロゴ、及びそれらの任意の組み合わせを示すために用いられる。通常、このマークは、情報、警告、メッセージ、又はアラーム状態を施術者及び/又は患者/使用者に示す。
「可視」は、正常な注意力のある人が見た場合にマークが人間の目で明確に区別可能であることを示すために用いられる。他方、「不可視」という用語は、正常な注意力のある人が見た場合にマークが人間の目で明確に区別不可能であることを示すために用いられる。
「約38℃」は、38℃±0.5℃の温度を示す。
「従来のインク」は、30℃〜45℃の温度範囲で、正常な注意力のある人が見た場合に人間の目に可視である色の変化を起こさない、また無色状態から有色状態又はその逆に変化しないインクを示すために用いる。
【0015】
本発明の第1の態様によれば、本発明は、約38℃で部分的に退色してマークを現出させる有色要素を有する医薬品用の包装材料であって、
(a)上記要素は、従来のインクで印刷される上記マークを形成する第1部分と、サーモクロミックインクで印刷される第2部分とにより形成され、
(b)上記サーモクロミックインクは、約38℃未満の温度で有色であり、該温度以上になると無色になり、
(c)上記第1部分及び上記第2部分は、上記第1部分が約38℃未満の温度では不可視だが該温度以上になると可視になるように構成する、
医薬品用の包装材料に関する。
【0016】
上述の有色要素に関する「部分的に退色する」という上述の表現は、第2部分ではなく第1の部分のみが退色することを意味するためのものである。
【0017】
好ましくは、サーモクロミックインクは、可逆型であり、すなわち温度が約38℃未満になると有色状態に戻る。
【0018】
本発明による包装材料の第1の好適な実施形態では、上記第2部分を第1部分に重ね合わせる。
【0019】
本発明による包装材料の第2の好適な実施形態では、上記有色要素の上記第1部分及び上記第2部分は、互いに隣接して併存させる。
【0020】
好ましくは、第1部分が従来のインクを含まない空間を有する場合、有色要素の第2部分が上記空間も覆う。
【0021】
好ましくは、この第2の実施形態では、サーモクロミックインクの色は、約38℃未満では従来のインクの色と極めて類似する。
【0022】
さらにより好ましくは、サーモクロミックインクの色は、約38℃未満では従来のインクの色にできる限り類似する。
【0023】
好ましくは、上記医薬品は解熱薬である。
【0024】
本発明の第2の態様によれば、本発明は、約38℃で部分的に退色してマークを現出させる有色要素を有する医薬品用の包装材料を製造する方法であって、上記有色要素の作製は、
a)包装材料を得るステップと、
b)従来型のインクを使用して上記マークを上記包装材料に印刷するステップと、
c)約38℃の温度未満で有色であるが該温度に達すると無色になるサーモクロミックインクを塗布するステップであって、上記マークが上記温度未満では実質的に不可視だが上記温度以上になると可視になるようにする、ステップと、
を含む、医薬品用の包装材料を製造する方法に関する。
【0025】
好ましくは、サーモクロミックインクは可逆型であり、すなわち温度が約38℃未満になると有色状態に戻る。
【0026】
本発明による方法の第1の好適な実施形態では、上記サーモクロミックインクは、マークに重ね合わせられる層を形成する。
【0027】
本発明による方法の第2の好適な実施形態では、上記サーモクロミックインクは、上記マークに隣接して併存する層を形成するように塗布する。
【0028】
好ましくは、マークが従来のインクを含まない空間を有する場合、該空間もサーモクロミックインクの層により覆う。
【0029】
好ましくは、この第2の実施形態では、サーモクロミックインクの色は、約38℃未満では、マークを印刷した従来のインクの色と極めて類似するものとする。
【0030】
さらにより好ましくは、サーモクロミックインクの色は、約38℃未満では、マークを印刷した従来のインクの色とできる限り類似するものとする。
【0031】
次に、非限定的な例として提供される添付図面を参照して、本発明をさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】有色要素の温度が約38℃未満である、本発明の第1の好適な実施形態による包装材料の概略斜視図である。
【図2】熱っぽい患者/使用者が自身の親指を有色要素に押し付けている、図1による材料の概略図である。
【図3】患者/使用者が自身の親指を有色要素から離した直後の図1による材料の概略図である。
【図4】本発明の第2の好適な実施形態による包装材料における、有色要素の温度が約38℃未満である状況を示す、概略斜視図である。
【図5】図4による材料の、有色要素の温度が約38℃以上である状況を示す、概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1〜図3は、本発明の第1の好適な実施形態による包装材料1を示す。包装材料1は、医薬品を収容する平行六面体形の箱である。好ましくは、この医薬品は、発熱時に服用が有用又は必要な薬剤である。より好ましくは、この医薬品は解熱薬である。
【0034】
すでに述べたように、このタイプの包装材料は限定的なものではなく、ラベル、タグ、バイアル、サシェ、ブリスターパック、薬瓶、ケース、粉末サシェ、又は医薬品部門で一般的に使用される任意の他の包装材料とすることができる。包装材料1は、製造会社により流通、発表、及び/又は販売される医薬品を伴う任意な他のタイプの材料とすることもできる。
【0035】
本発明の好適な実施形態によれば、有色要素2を包装材料1に関連付ける。
【0036】
この有色要素2は、有利には箱1の開閉フラップ3の外面に配置し、これにより、有色要素に親指で一定の圧力を加えなければならない熱っぽい患者/使用者にとって把持し易くなる(図2参照)。
【0037】
好ましくは、この有色要素2は、従来の赤色インク及び約38℃で赤色から無色状態に変わるサーモクロミックインクを含む。好ましくは、このサーモクロミックインクの色は、温度が上記温度未満になると再度赤色になるため、その色の変化は可逆的である。
【0038】
より詳細には、上記従来のインクは、苦しそうな(painstricken)顔の絵からなるマーク2′を形成することが好ましく、上記サーモクロミックインクは、マーク2′に重ね合わせる層2″を形成する。
【0039】
要素2の温度が約38℃未満である場合、上記サーモクロミックインクの層2″は、マーク2′を完全に覆って不可視にする(図1参照)。
【0040】
しかしながら、要素2の温度が38℃以上になると、上記サーモクロミックインクの層2″は、無色になって上記マーク2′を可視化することが好ましい(図3参照)。
【0041】
したがって、マーク2′の出現は、患者/使用者に本当に熱があって箱1に収容されている解熱薬を服用する必要があることを患者/使用者に知らせるものである。
【0042】
代替的に、苦しそうな顔の絵からなる代わりに、マーク2′は、患者/使用者の体温が約38℃であることを患者/使用者に教えることが可能な任意の他の絵、記号、又は単語からなっていてもよい。例えば、マーク2′は、単に「38℃」という表記にすることができる。
【0043】
図4及び図5は、本発明の第2の好適な実施形態による包装材料11を示す。
【0044】
この包装材料11が図1〜図3の包装材料と異なるのは、主に包装材料1の温度が上記所定の温度未満である限りマーク12′が不可視となる有色要素12を形成するように、サーモクロミックインクが、マーク12′を囲み、マーク12′の脇に位置し、また従来のインクを含まない空間(すなわち、両目及び口)を埋める層12″を形成するという点である(図4参照)。
【0045】
図4の実施形態では、マーク12′をほぼ不可視化するように、約38℃未満ではマーク12′を印刷した従来のインクの色とほぼ同じ色であるサーモクロミックインクを使用した。
【0046】
最後に、図5は、熱っぽい患者の親指が要素12を押した後に現れるマーク12′を示す。
【0047】
本発明の好適な実施形態による適当なサーモクロミックインクの例は、米国特許第4,385,844号に記載のものである。
【0048】
本発明の好適な実施形態による他の適当なサーモクロミックインクは、米国コロラド州スプリングスのC.T.I(Chromatic Technologies Incorporated)社により製造されるオフセットインクDYNACOLOR(商標)である。このインクは、米国特許第5,591,255号及び同第5,997,849号により記載されている。
【0049】
本発明の好適な実施形態による他の適当なサーモクロミックインクは、スイス国プリーのSICPA社(SICPA SA)により製造されるインクである。
【0050】
本発明の好適な実施形態によれば、印刷技法は、シルクスクリーン印刷及びフレキソ印刷である。
【0051】
本発明の好適な実施形態の包装材料は、特に解熱薬用の包装に関して上記で詳細に説明されたが、発熱時に服用すべき任意の他の医薬品に関連して有利に用いることもできることが明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
約38℃で部分的に退色してマーク(2′,12′)を現出させる有色要素(2、12)を有する医薬品用の包装材料(1,11)であって、
(a)前記有色要素(2,12)は、従来のインクで印刷される前記マーク(2′,12′)を形成する第1部分と、サーモクロミックインクで印刷される第2部分(2″,12″)とにより形成され、
(b)前記サーモクロミックインクは、約38℃未満の温度で有色であり、該温度以上になると無色になり、
(c)前記第1部分(2′,12′)及び前記第2部分(2″,12″)は、前記第1部分(2′,12′)が約38℃未満の温度では不可視だが該温度以上になると可視になるように構成した、
医薬品用の包装材料。
【請求項2】
請求項1に記載の包装材料(1,11)であって、前記サーモクロミックインクは可逆型とした、包装材料。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の包装材料(1)であって、前記第2部分(2″)を第1部分(2′)上に重ね合わせた、包装材料。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の包装材料(11)であって、前記有色要素(12)の第1部分(12′)及び第2部分(12″)を、互いに隣接して併存させた、包装材料。
【請求項5】
請求項4に記載の包装材料(11)であって、前記第1部分(12′)が従来のインクを含まない空間を有する場合、前記有色要素(12)の前記第2部分(12″)は、前記空間も覆う、包装材料。
【請求項6】
請求項1,2,4及び5のいずれか1項に記載の包装材料(11)であって、前記サーモクロミックインクの色は、約38℃未満では前記従来のインクの色に極めて類似する、包装材料。
【請求項7】
請求項1,2,4及び5のいずれか1項に記載の包装材料(11)であって、前記サーモクロミックインクの色は、約38℃未満では前記従来のインクの色とできる限り類似する、包装材料。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の包装材料(11)であって、前記医薬品は解熱薬である、包装材料。
【請求項9】
約38℃で部分的に退色してマーク(2′,12′)を現出させる有色要素(2,12)を有する医薬品用の包装材料(1,11)を製造する方法であって、前記有色要素(2,12)の作製は、
a)包装材料(1,11)を得るステップと、
b)従来型のインクを使用して前記マーク(2′,12′)を前記包装材料(1,11)に印刷するステップと、
c)約38℃の温度未満で有色であるが該温度に達すると無色になるサーモクロミックインクを塗布するステップであって、前記マーク(2″,12″)が前記温度未満では実質的に不可視だが該温度以上になると可視になるようにする、ステップと、
を含む、医薬品用の包装材料を製造する方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、前記サーモクロミックインクは可逆型である、方法。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の方法であって、前記サーモクロミックインクは、前記マーク(2′)に重ね合わせる層(2″)を形成する、方法。
【請求項12】
請求項9又は10に記載の方法であって、前記サーモクロミックインクは、前記マーク(12′)に隣接して位置付けられる層(12″)を形成するように塗布する、方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であって、前記マーク(12′)は、従来のインクを含まない空間を有し、該空間も、サーモクロミックインクの層(12″)により覆われる、方法。
【請求項14】
請求項9,10,12及び13のいずれか1項に記載の方法であって、前記サーモクロミックインクの色は、約38℃未満では前記マーク(12′)を印刷した前記従来のインクの色と極めて類似する、方法。
【請求項15】
請求項9,10,12及び13のいずれか1項に記載の方法であって、前記サーモクロミックインクの色は、約38℃未満では前記マーク(12′)を印刷した前記従来のインクの色とできる限り類似する、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−510047(P2012−510047A)
【公表日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−536833(P2011−536833)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【国際出願番号】PCT/EP2009/065113
【国際公開番号】WO2010/060813
【国際公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(592160973)アジェンデ・キミケ・リウニテ・アンジェリニ・フランチェスコ・ア・チ・エレ・ア・エフェ・ソシエタ・ペル・アチオニ (36)
【氏名又は名称原語表記】AZIENDE CHIMICHE RIUNITE ANGELINI FRANCESCO A.C.R.A.F.SOCIETA PER AZIONI
【Fターム(参考)】