医薬品賦形剤としての有用性を有する微結晶性セルロースとリン酸カルシウムの組成物
リン酸カルシウムと微結晶性セルロースを含む共処理組成物は、医薬品有効成分を含む固形剤を製造するとき、特に、複数の圧縮ステップを含むプロセスで固形剤を製造するときに、賦形剤として有用である。このような組成物は、微結晶性セルロースとリン酸カルシウムの水性スラリーを調製し、該スラリーを乾燥し、粒子製品を生成して得ることができる。共処理製品は、同じ成分の物理混合物の乾燥品と比べて、成形性が改善される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、賦形剤や医薬品有効成分などを含む医薬製剤、顆粒物および固形剤において、賦形剤としての有用性を有する粒子組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
経口投与に適した医薬品組成物を個別に投与する場合には、典型的には錠剤のような、固形剤の投与が便利である。錠剤には、1または複数種の治療成分(一般に、「有効成分」、「医薬品有効成分」、または「API」と称される)に加えて、賦形剤として公知の薬学的に許容可能な物質が含まれる。該物質は、有効性を示さないし、薬学的効果も生じさせないが、錠剤処方物に加えられて、有効成分の活性には関与しない所定の性質を付与する。
【0003】
錠剤の製造には、一般的に3種の方法がある。つまり、(1)直接打錠法、(2)乾式顆粒法、および(3)湿式顆粒法である。直接打錠法においては、錠剤に含まれるべき1または複数種の粉末材料(有効成分と賦形剤が含まれる)が、混合され直接打錠され、顆粒法のような中間の処理を経ることはない。直接打錠法は、錠剤のような固形剤を製造するのに、最も有効かつ有利な製造工程であるが、流動性が低いこと、あるいは嵩密度が低いこと、のような剤型の特定の性質のために、直接打錠法による処理ができない錠剤処方物が多数ある。例えば、流動性が低いために、錠剤ごとの投薬量に許容できない大きな差が生じることがある。
【0004】
直接打錠する混合物の流動性が低いため、あるいは嵩密度が低いために、直接打錠法による打錠が妨げられる場合では、顆粒法を用いることができる。また、顆粒法によれば、有効成分の含量の均一性が改善され、ダストの発生が減少される。乾式顆粒法には、(バインダ、フィラー、崩壊剤、または潤滑剤などの1または複数種の賦形剤とともに、有効成分を含む)成分を混合し、混合物をローラー圧縮またはスラッギングし、乾燥状態で篩い分けまたは摩砕して粗製の乾燥顆粒化物にし、顆粒を圧縮することが含まれる。前記顆粒は、再圧縮される前に、さらに、1または複数種の賦形剤(バインダ、崩壊剤、潤滑剤など)と混合できる。湿式顆粒法には、成分のいくつかまたは全てを混合し、次に混合した粉末に水を添加することが含まれる(これに代えて、1または複数種の成分、特にバインダを他の成分と組み合わせたときに、懸濁あるいは溶解されるようにしてもよい)。得られた湿った塊は、篩い分けされ、乾燥され、必要に応じて、潤滑剤、バインダ、フィラー、または崩壊剤などの1または複数種のさらなる賦形剤と組み合わされて、錠剤に圧縮される。
【0005】
乾式顆粒法では、錠剤成分は、水分、溶媒および熱に曝されない。そのため、乾式顆粒法は、水分、溶媒および/または熱に敏感な有効成分を処理するのに使用できる。乾式顆粒法は、スラッギングにより、またはローラー圧縮により実施できる。スラッギングは圧縮を2回行うプロセスである。錠剤になるべき材料は、大きな圧縮された塊、または「スラッグ」に圧縮され、該圧縮された塊は、顆粒に粉砕された後、第2の圧縮プロセスにより錠剤に転換される。スラッギングは、時間がかかり、非経済的なプロセスであるので、乾式顆粒法にとって、ローラー圧縮が、選択される方法になりつつある。ローラー圧縮では、顆粒化プロセスの利点の全て、例えば、材料の流動挙動を改善し、含量を均一にするという利点が得られる。さらに、ローラー圧縮は、容量が大きく、湿式顆粒法よりも操作するのに経済的である。
【0006】
ローラー圧縮プロセスの間、錠剤処方物(「顆粒処方物」)の少なくとも一部は、2個の逆回転高圧ローラーによって、圧縮されて高密度化され、得られた材料は、均一な大きさに粉砕される。続いて、得られた顆粒は打錠されて錠剤が形成されるが、その際に、追加の賦形剤が加えられることもあれば、加えられないこともある。錠剤は、打錠機のダイ中で、錠剤処方物に圧縮作用を及ぼして、形成されてもよい。打錠機には、底部からダイに嵌合する下部ポンチと、下部ポンチに対応する形状と寸法を有する上部ポンチが含まれる。上部ポンチは、錠剤処方物がダイキャビティを満たした後に、頂部からダイキャビティに入る。下部および上部ポンチでダイ中の錠剤処方物に圧力を加えて、錠剤が形成される。
【0007】
固有の成形性のために、微結晶性セルロース(MCC)は、医薬製剤中の賦形剤として、広く使用されることが分かった。また、MCCを錠剤処方物中に用いた場合、結合性と崩壊性が良くなる。
【0008】
ローラー圧縮に続いて打錠する錠剤の形成には、2種の圧縮ステップが含まれる。しかしながら、第1の圧縮ステップの後、MCC顆粒物は、第2の圧縮、つまり、打錠ステップに対して、十分な成形性を有さない場合がある。そのため、複数の圧縮ステップ、例えば、ローラー圧縮および打錠、またはスラッギングを含むプロセスにより固形剤を製造するのに使用できる微結晶セルロース含有バインダが求められている。バインダは、第2の圧縮ステップに対して、十分な成形性を有する必要がある。残念ながら、このような十分な成形性を有するバインダは、実現に向けての挑戦段階にある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、医薬品賦形剤として有用な、共処理(coprocessed)組成物を提供する。該共処理組成物には、少なくとも1種のリン酸カルシウムと微結晶セルロース粒子が含まれる(該組成物は、以後、「本発明の粒子製品」と称される場合がある。)。本明細書で使用される「共処理」は、微結晶性セルロースとリン酸カルシウムを一緒に物理的に処理して、共処理混合物の物理的特性を改善することを意味している。この物理的性質の改善は、微結晶性セルロースまたはリン酸カルシウム単独、あるいは微結晶性セルロースとリン酸カルシウムとの単純混合物または乾燥混合物の何れによっても示されない。このような共処理は、例えば、水性媒体中に分散された2種の成分を混合し、次に、共処理組成物を取り出すために乾燥することにより実施できる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、医薬品賦形剤として有用な物質を含む組成物は、微結晶性セルロースとリン酸カルシウムを共処理した粒子によって得られる。一実施形態において、2種の成分は、微結晶性セルロース:リン酸カルシウムの重量比が、約85:15〜約55:45である。微結晶性セルロールとリン酸カルシウムは、本発明の組成物中において、密接な関係を有し、2種の成分の凝集粒子として存在してもよい。例えば、リン酸カルシウム粒子の少なくとも一部は、微結晶性セルロース粒子の細孔に埋め込むことができる。本発明の粒子製品は、2種の成分からなる水性スラリーを形成した後、該スラリーを乾燥して得ることができる。
【0011】
微結晶性セルロースと二塩基性のリン酸カルシウムは、一般に、乾式顆粒プロセス(つまり、スラッギングまたはローラー圧縮)において、物理的な乾燥混合物の形態を取る別個の成分として使用されていた。しかしながら、本発明に係る水性スラリーの共処理および共乾燥プロセスによって製造された粒子製品は、同じ成分からなる類似の物理的な乾燥混合物と比べて、相乗的な性能を示すことが予期せずに発見された。成形性(圧縮機でのスラッジまたはリボンの製造時)と再成形性(最初の圧縮で得られた顆粒物を用いた打錠機での錠剤の製造時)の両方が改善される。つまり、(本発明の粒子製品を用いて製造された)リボンまたは錠剤は、所定の圧縮圧において、微結晶性セルロースとリン酸カルシウムとの物理的な乾燥混合物である賦形剤を用いて製造された類似のリボンまたは錠剤と比べて、高い引っ張り強度を有する。これに代えて、リボンまたは錠剤において所望の引っ張り強度を得るために、本発明の粒子製品が、微結晶性セルロースとリン酸カルシウムからなる類似の物理的な乾燥混合物の代わりに使用される場合、圧縮圧を低くする必要がある。本発明の粒子製品の機能を高めれば、ローラー圧縮された高強度のリボンまたはスラッグが得られるので、成形性に乏しい他の医薬品有効成分を十分にローラー圧縮できる。本発明によれば、粒子製品の再圧縮特性を改善できるので、顆粒外層(extragranular)賦形剤を使用する必要性を低減したり、該賦形物を完全に不要にできる。
【0012】
したがって、本発明の一実施形態では、顆粒は、本発明の粒子製品と少なくとも1種の医薬品有効成分(API)を含み、さらに、必要に応じて、少なくとも1種の崩壊剤および/または少なくとも1種の潤滑剤および/または少なくとも1種のフィラーを含む、乾燥混合物をローラー圧縮し、得られた圧縮後のリボンを破砕(粉砕)して製造される。次に、該顆粒は、圧縮されて錠剤または他の固形剤に形成される。これに代えて、顆粒は、例えば、(再圧縮されずに)小包剤(sachet)または硬カプセル剤中などで使用されてもよい。
【0013】
さらに、乾燥粒子の凝集体を含む医薬品賦形剤として有用な組成物が提供される。該凝集体は、微結晶性セルロース粒子と少なくとも1種のリン酸カルシウム粒子が十分に分散された水性スラリーを形成して、該水性スラリーを乾燥して得られる。
【0014】
別の態様では、本発明によれば、医薬品賦形剤に有用な組成物を製造するプロセスが提供される。該プロセスには、a)微結晶性セルロースと少なくとも1種のリン酸カルシウムが十分に分散された水性スラリーを形成することと、b)該水性スラリーを乾燥し、該水性スラリーから水分を除去して、粒子製品を得ることが含まれる。
【0015】
さらに別の態様では、顆粒または錠剤処方物が提供される。該顆粒または錠剤処方物には、少なくとも1種の有効成分(つまり、API)と、a)微結晶性セルロースと少なくとも1種のリン酸カルシウムが十分に分散されたスラリーを形成することと、b)該水性スラリーを乾燥し、該水性スラリーから水分を除去して、粒子製品を得ることを含むプロセスによって得られた、粒子製品が含まれる。
【0016】
本発明のさらに別の態様によれば、顆粒を形成する方法が提供される。該方法には、a)顆粒処方物を加圧して圧縮物を形成するステップと、b)該圧縮物を粉砕して、顆粒を形成するステップが含まれる。顆粒処方物には、少なくとも1種の有効成分(つまり、API)と、a)微結晶性セルロースと少なくとも1種のリン酸カルシウムが十分に分散された水性スラリーを形成することと、b)該水性スラリーを乾燥し、該水性スラリーから水分を除去して、粒子製品を得ることを含むプロセスによって得られた、粒子製品が含まれる。
【0017】
このように得られた顆粒を再圧縮して、錠剤のような固形剤を得てもよい。
【0018】
さらに本発明によって提供されるのは、圧縮された錠剤の形態をなし、粒子製品、少なくとも1種の有効成分、および必要に応じて、少なくとも1種の追加の賦形剤(例えば、フィラー、バインダ、潤滑剤、崩壊剤、および/または滑剤)を含む固形剤である。前記粒子製品は、a)微結晶性セルロースと少なくとも1種のリン酸カルシウムが十分に分散された水性スラリーを形成することと、b)該水性スラリーを乾燥し、該水性スラリーから水分を除去して、粒子製品を得ることを含むプロセスによって得られる。
【0019】
本発明の粒子製品を医薬品賦形剤として用いた場合、以下の1または複数の利点または利益を得ることができる。顆粒化/打錠プロセスにおいて、複数種の異なる賦形剤を用いたり、同一の賦形剤の大部分を異なる場所に導入する必要性を低減でき、あるいは該必要性を完全に除去できるので、該プロセスは簡単になり、製造コストが低減し、および/または品質管理が改善される。本発明の粒子製品を用いて製造された圧縮材料によれば、粉砕され顆粒に篩い分けされるときに、微細になる傾向を低減できる。これにより、廃棄物を最小にでき、および/または、以後の打錠ステップで使用するには小さすぎる粒子をリサイクルする必要をなくすことができる。同様に、本発明の粒子製品を含む錠剤によれば、他のバインダ(例えば、微結晶性セルロースとリン酸カルシウム粒子との物理混合物)を用いて製造された錠剤と比べて、破砕性を低減できる。したがって、該錠剤によれば、物理的な処理に対する耐性を改善できる。この特性は、消費者に届けるときに、該錠剤を確実に無傷かつ無損傷の状態にするのに役立つ。また、本発明の粒子製品を含む錠剤処方物によれば、所望の引っ張り強度を得るための圧縮圧を小さくできるので、打錠装置の磨耗を小さくできる。さらに、必要となる引っ張り強度の最小値を満たさない錠剤が少なくなるので、収率を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】ビタミンC、ステアリン酸マグネシウム、および種々の賦形剤を含む処方物の成形性を比較したグラフである。
【図2】ビタミンC、ステアリン酸マグネシウム、および種々の賦形剤を含む処方物の再成形性を比較したグラフである。
【図3】所定の打錠圧において、ビタミンC、ステアリン酸マグネシウム、および種々の賦形剤を含む処方物の再成形性を比較したチャートである。
【図4】ビタミンC、ステアリン酸マグネシウム、および比率の異なる無水の二塩基性のリン酸カルシウムと微結晶性セルロースを含む共処理賦形剤を含む処方物の再成形性を比較したグラフである。
【図5】ビタミンC、ステアリン酸マグネシウム、および賦形剤を含む処方物の再成形性に対して、共処理賦形剤中での無水の二塩基のリン酸カルシウムの比率が及ぼす影響を比較したグラフである。
【図6】ビタミンC、ステアリン酸マグネシウム、および賦形剤を含む処方物の再成形性に対して、種類の異なる共処理賦形剤中での無水の二塩基のリン酸カルシウムの比率が及ぼす影響を比較したグラフである。
【図7】ビタミンC、ステアリン酸マグネシウム、および共処理賦形剤を含む処方物の再成形性に対して、共処理賦形剤の製造に使用する微結晶性セルロースの種類を変えたときの影響を示すグラフである。
【図8】ビタミンC、ステアリン酸マグネシウム、および無水の二塩基のリン酸カルシウムと微結晶性セルロースを用いて製造した共処理賦形剤を含む処方物の再成形性に対して、微結晶性セルロースの粒径が及ぼす影響を示すグラフである。
【図9】ビタミンC、ステアリン酸マグネシウム、および二塩基のリン酸カルシウムと微結晶性セルロースを用いて製造した共処理賦形剤を含む処方物の再成形性に対して、等級の異なる二塩基のリン酸カルシウムが及ぼす影響を示すグラフである。
【図10】ビタミンC、ステアリン酸マグネシウム、および二塩基のリン酸カルシウムと微結晶性セルロースを用いて製造した共処理賦形剤を含む処方物の再成形性に対して、二塩基のリン酸カルシウムの粒径が及ぼす影響を示すグラフである。
【図11】粒子製品を用いて製造された顆粒の再成形性能に対して、本発明に係る粒子製品の粒径が及ぼす影響を示すグラフである。
【図12】粒子製品を用いて製造された細粒の再成形性能に対して、本発明に係る粒子製品の粒径が及ぼす影響を示すグラフである。
【図13】本発明に係る共処理粒子製品で製造された顆粒の再成形性能において、ロット間再現性を示すグラフである。
【図14】微結晶性セルロースと二塩基のリン酸カルシウムからなる対応する物理混合物を用いて製造された顆粒の再成形性能と、本発明に係る共処理粒子製品を用いて製造された顆粒の再成形性能を比較したグラフである。
【図15】微結晶性セルロースと二塩基のリン酸カルシウムからなる対応する物理混合物を用いて製造された顆粒の再成形性能と、本発明に係る共処理粒子製品を用いて製造された顆粒の再成形性能を比較したグラフである。
【図16】種々の賦形剤を用いて製造された顆粒の再成形性能を比較したグラフである。
【図17】崩壊剤を有する場合と有さない場合の両方について、本発明に係る共処理粒子製品を用いて製造された顆粒処方物の再成形性を示すグラフである。
【図18】種々の賦形剤を用いて製造された顆粒の再成形性能を比較したグラフである。
【図19】種々の賦形剤を用いて製造された顆粒の再成形性能を比較したグラフである。
【図20】種々の賦形剤を用いて製造された顆粒の再成形性能を比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
全ての図面は、実施例の項において、より詳細に説明される。
【0022】
本発明の粒子製品は、噴霧乾燥された物質であると好ましい。該粒子製品の粒径は、実質的に全ての粒子の粒径が60番の篩(250μm)よりも小さく、好ましくは、メジアン粒径が20μmから150μmの範囲にあるようにする必要がある。
【0023】
粒子製品は、微結晶性セルロースとリン酸カルシウムが十分に分散された水性スラリーを形成して製造されると都合がよく、両者は、粒子形態で存在する。本発明の一態様では、各成分の量は、粒子製品に対する微結晶性セルロース:リン酸カルシウムの成分比が、(重量基準で)85:15〜55:45の範囲となるように選ばれる。水性スラリーから水分を除去して水性スラリーが乾燥され、本発明の粒子製品が得られる。
【0024】
2種の成分が十分に分散された水性スラリーは、固形分を10重量%以上40重量%以下まで相対的に濃縮したスラリーが得られる量で、微結晶性セルロースとリン酸カルシウムを水性媒体中に導入して形成されると好ましい。成分を添加する順番は、特に重要ではないと考えられている。スラリーは、液状(非ペースト状)であり、流動自在であり、比較的粘度が低いのが好ましい。本発明の種々の実施形態において、スラリーの粘度は、約40000cp未満、約10000cp未満、または約5000cp未満である。水性スラリーが噴霧乾燥によって乾燥されて、粒子製品が得られると好ましい。
【0025】
本発明の粒子製品には、2種の必須の成分、つまり、微結晶性セルロースとリン酸カルシウムが含まれる。2種の成分は、製品中に、微結晶性セルロース:リン酸カルシウムの重量比が、約90:10〜約50:50、または、約85:15〜約55:45、または、約80:20〜約60:40で含まれると好ましいが、成分、粒径などを特別に選べば、他の比率であっても満足な性能を得ることができる。
【0026】
本発明の一態様では、微結晶性セルロースとリン酸カルシウムは、粒子製品の要素に過ぎない。もっとも、1または複数種の他の成分が、製造時に、粒子製品に含まれてもよい。これらは、通常、比較的少量で、つまり、粒子製品の総重量に対して、30%未満、好ましくは、20%未満の値を示すように存在する。特に、乾燥ステップの間に、共処理工程を促進するために、または、医薬品賦形剤として使用したときに、粒子製品に対する特性を高めるために、このような添加剤を含むことができる。これらの範疇にある添加剤の例は、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドンのような水溶性ゴムなどのバインダ、例えば、パルミチン酸やステアリン酸のような長鎖脂肪酸のエステルまたはそれらの塩などの潤滑剤、および架橋カルボキシメチルセルロース、スターチのような崩壊剤である。本発明の一実施形態では、粒子製品には、メチルセルロースのような水溶性バインダが約5〜約15重量%含まれる。
【0027】
本発明の粒子製品には、微結晶性セルロース粒子やリン酸カルシウム粒子からなる対応する乾燥混合物では示されない、望ましい性能の属性がある。本発明に係る共処理工程の間に生じるメカニズムは、十分に理解されていないが、該メカニズムによって、粒子製品が得られると思われる。該粒子製品中において、2種の必須の成分は、互いに密接な関係を有する。微結晶性セルロースとリン酸カルシウムの、この密接な関係または混合物は、これらの材料の単なる乾燥混合物では得ることができないし、ペーストのように湿式混合しても得ることができない。
【0028】
2種の成分の密接な関係は、微結晶性セルロースとリン酸カルシウムの両方を含む凝集粒子の外観に現れる。凝集粒子の外観は、スラリーの乾燥後に生じる。リン酸カルシウム粒子の少なくとも一部は、微結晶性セルロース粒子の細孔内に埋め込むことができると考えられている。概して、微結晶性セルロースのメジアン粒径が、リン酸カルシウムのメジアン粒径よりも大きいと望ましい。例えば、特定の実施形態では、微結晶性セルロースのメジアン粒径は、リン酸カルシウムのメジアン粒径よりも少なくとも2、3、4または5倍大きい。
【0029】
この粒子製品を製造できるプロセスに関して、粒子製品の種々の特性、例えば、粒径、含水量、嵩密度は、以下に詳述される。これらの物理的特性は、微結晶性セルロースとリン酸カルシウムを共処理する方法に、大いに依存する。その理由は、共処理工程の乾燥ステップで採用する条件が、一般に、重要であると考えられるからである。噴霧乾燥が、乾燥ステップを実行するのに好適な方法であるのは、上記の理由による。
【0030】
簡単に言えば、本発明の粒子製品を製造するプロセスには、微結晶性セルロースとリン酸カルシウムが十分に分散された水性スラリーを形成することが含まれ、スラリー中において、両材料は、固形粒子として存在する。2種の成分の相対的な量は、取り出された共処理製品中において特定の望ましい重量比が得られるように、スラリー中で調整される。粒子製品中での2種の成分の重量比は、前駆物質が十分に分散されたスラリー中での2種の成分の重量比に密接に対応するので、この比率の調整は、比較的簡単である。
【0031】
次に、該プロセスには、水性スラリーから水分を除去して水性スラリーを乾燥し、粒子製品を得ることが含まれる。先に述べたように、噴霧乾燥が、好適な乾燥法であるが、他の乾燥法、例えば、フラッシュ乾燥、流動層乾燥、リング乾燥、ミクロン乾燥、棚段乾燥、真空乾燥、オーブン乾燥、高周波乾燥、およびマイクロ波乾燥も、この共処理ステップでの使用に適している。
【0032】
十分に分散されたスラリーを形成するのに用いられる2種の成分は、微結晶性セルロースとリン酸カルシウムであるが、必要に応じて、1または複数種の追加の成分を使用してもよい。これらの成分の供給源と性質は、重要だとは考えられない。一実施形態では、微結晶性セルロースは、従来の微結晶性セルロースの製造プロセスで得られる湿潤ケーキ(wet cake)である。湿潤ケーキは、未だ乾燥されていない材料であり、「未乾燥(never dried)」または水和セルロースと呼ばれる場合がある。また、微結晶性セルロース源は、乾燥済の従来の製品であってもよい。
【0033】
水性スラリー中で用いられる微結晶性セルロースの粒径は、一般に、従来の微結晶性セルロース製品中、または前駆体である湿潤ケーキ、つまり、未乾燥製品中で見られる大きさである。粒径は、全ての粒子の大きさが、実質的に60番の篩(250μm)よりも小さいのが望ましい。一実施形態では、微結晶性セルロースのメジアン粒径は、約20μm〜約250μmである。
【0034】
微粒子の大きさに関して要求される特定の大きさは、必要に応じて、望ましくない粗粒材料を篩い分けすることによって、あるいは、従来の湿潤状態または乾燥状態での磨耗工程によって、満たすことができる。このような磨耗は、水性スラリー中において、微結晶性セルロースを用いて実現されてもよい。これらのサイズ低減工程は、通常、現在市販されている微結晶性セルロースを用いる場合は必要ない。
【0035】
本発明で用いられるリン酸カルシウムは、当該技術分野、特に、医薬品賦形剤分野で公知の、リンを含む酸(例えば、リン酸)の種々のカルシウム塩の何れであってもよい。一塩基、二塩基および三塩基のリン酸カルシウムが、無水または含水形態で用いられてもよい。含水と無水の二塩基のリン酸カルシウム(例えば、二塩基のリン酸カルシウム二水和物と無水の二塩基のリン酸カルシウム)が特に好ましい。二塩基のリン酸カルシウムは、リン酸二カルシウム、リン酸一水素カルシウム、オルトリン酸二カルシウム、または第二リン酸カルシウムと呼ばれる場合がある。米国薬局方または欧州薬局方グレードのリン酸カルシウムを使用するのも好ましい。例えば、JRS Pharma GmbH & Co.KGから商標名ECOMPRESS(登録商標)で販売された二塩基のリン酸カルシウムやBudenheimから商標名Di−Cafos(登録商標)で販売された二塩基のリン酸カルシウムは、本発明で使用するのに適している。
【0036】
リン酸カルシウムの大きさは、実質的に全ての粒子の大きさが200μm未満、好ましくは、50μm未満であると好ましい。リン酸カルシウムのメジアン粒径は、100μm未満であると望ましく、50μm未満または20μm未満であるとより好ましい。一実施形態では、リン酸カルシウムのメジアン粒径は、約5〜約10μm、例えば、約7μmである。
【0037】
微結晶性セルロースとリン酸カルシウムの両者は、実質的に水に不溶であることを知っておく必要がある。したがって、水性スラリーに十分に分散して存在する材料の粒径は、スラリーに導入される2種の成分の大きさに直接関係する。つまり、(微結晶セルロースが磨耗する可能性はあるが、)2種の成分のいずれも水性スラリー中にほとんど溶解しない。
【0038】
これら2種の成分の水性スラリーは、数種の方法の内のいずれかで調製できる。2種の固体成分は、両方が単一の水性媒体に導入されてもよいし、または、それぞれが、後に組み合わされる別個の水性媒体に別々に導入されてもよい。あるいは、他の類似の方法が考案されてもよい。
【0039】
ある方法には、微結晶セルロースだけを水性溶液中、好ましくは水中に分散することが含まれる。この水性混合物での典型的な固体濃度では、微結晶性セルロースは5〜25重量%存在しているが、微結晶性セルロースは10〜20重量%存在しているのが好ましい。
【0040】
微結晶性セルロースが水性スラリー中に十分に分散されると、次に、適当量のリン酸カルシウムを、乾燥形態で攪拌しながら添加できる。添加されるリン酸カルシウムの正確な量は、スラリーに含まれるリン酸カルシウム含量と共処理製品で望まれる2種の成分の比率による。希釈されたスラリーが望ましければ、水を添加してもよいが、これは通常必要ない。そのように望まれる場合、スラリーのpHは、酸または塩基などの1または複数種のpH調整剤を添加して調整できる。典型的には、水性スラリーのpHは、約3〜約9の範囲内にある。
【0041】
2種の成分を含む水性スラリーを十分に混合して、該成分を、水性媒体全体に確実に均一に分散する必要がある。このため、水性スラリーを乾燥して製造された粒子製品において、成分比率は一貫して均一になる必要がある。
【0042】
水性スラリーに含まれる固体の総含有量は、スラリーの総重量を基準にして、少なくとも10重量%であると好ましく、少なくとも20重量%であるとより好ましい。乾燥ステップ中に除去される必要がある水分の量は、乾燥に伴って減少するので、固体の含有レベルが高いのが望ましい。もっとも、固体の含有量は、スラリーが液体としての性質を失って、容易に攪拌できなくなるようなレベルよりも低いレベルに維持されるのが望ましい。
【0043】
また、水性スラリー中の固体の含有量の上限は、典型的には、使用される乾燥機器の運転制約によって決まる。好適な噴霧乾燥法の場合、固体の含有量が20〜30重量%であるのが、簡単に処理できる水性スラリーの代表例である。
【0044】
水性スラリーの温度は重要ではない。約10〜約25℃の周囲温度が望ましい。高いスラリー温度を使用することもでき、この温度は、特定の種類の乾燥装置の場合に望ましい場合がある。
【0045】
十分に分散された水性スラリーは、スラリーを噴霧乾燥して乾燥されると好ましい。従来の乾燥装置を用いることができ、噴霧乾燥の分野で実施される運転手順に類似した運転手順を本プロセスの噴霧乾燥ステップに適用できる。乾燥機(乾燥ガス)出口温度は、通常、共処理製品に残存する水分レベルを制御するために用いられる。
【0046】
水分レベルは、一般に、粒子、つまり、乾燥製品中において、約5重量%以下であるのが望ましいが、含水量は、当然5重量%よりも高くできる。含水量は、乾燥条件を変えることにより簡単に調節できる。
【0047】
(好適な)噴霧乾燥プロセスでは、微結晶性セルロースとリン酸カルシウムの水性スラリーは、液滴に霧化され、液滴を蒸発し乾燥するのに十分な量の熱風で集められる。微結晶セルロースとリン酸カルシウムが分散されたスラリーは、吸い上げることができ、霧化できるのが好ましい。前記スラリーは、暖かい濾過空気の流れの中に噴霧される。該濾過空気の流れによって、蒸発用の熱が供給され、乾燥製品が収集装置まで運搬される。次に、空気は、除去された水分とともに排出される。本発明の一実施形態では、得られた噴霧乾燥粉末粒子は、ほぼ球形状を有し、比較的均一な大きさを有するので、流動性が良好である。共処理製品には、互いに密接な関係にある、微結晶性セルロースとリン酸カルシウム粒子が含まれる。
【0048】
噴霧乾燥手段では、乾燥機の出口温度は、通常、約40〜約100℃の範囲にある。該乾燥機の入口温度は、さらに高く、通常、約90〜約300℃の範囲にある。
【0049】
乾燥運転から取り出される共処理製品は、流動自在な(free−flowing)固体粒子である。該固体粒子の外観は、典型的には、顆粒状の白色粉末である。製品の粒径は、水性スラリー中の微結晶性セルロースとリン酸カルシウムの粒子の大きさと、スラリーから水を除去するのに用いる乾燥条件で表される関数として表される。粒径は、例えば、液滴の直径、温度、生産速度、スラリー中の固体の割合、噴霧器の種類、噴霧器の速度、空気の流量、およびチャンバの大きさなどの噴霧乾燥機の運転条件の影響を受けてもよい。さらに、粒子サイズと粒度分布を、必要に応じて変えたり、または選択するために、乾燥した共処理製品を分別または機械を用いて変更することも、本発明の範囲内である。
【0050】
本発明の一実施形態の粒子製品は、実質的に、全ての粒子が、60番の篩(250μm)よりも小さい大きさを有するような粒子サイズを有する。一実施形態では、粒子材料のメジアン粒径は、約20μm〜約200μmの範囲にあり、別の実施形態では、約30μm〜約50μmの範囲にある。本願明細書で用いられる「メジアン粒径」は、Malvern Mastersizer 2000を用いて、レーザー回折によって測定されるD50の値を意味している。本願明細書に開示された種々の粒子材料のメジアン粒径も、Malvern Mastersizer 2000を用いて、レーザー回折によって測定できる。粒子製品の粗填嵩密度(loose bulk density)は、0.60g/ccより小さく、0.20g/ccより大きい。粒子製品のpHは、一般に、約3〜約12であり、あるいは別の実施形態では、約5〜約8である。
【0051】
本発明の粒子製品は、ローラー圧縮、顆粒化、および/または打錠化を含むプロセスにおいて、賦形剤またはバインダとして特に有用である。
【0052】
例えば、粒子材料は、以下のプロセスで用いることができる。
1)粒子製品は、API、フィラー、および崩壊剤と混合される。
2)圧縮ローラー上での固着を低減する必要があれば、ステップ1で得られた混合物は、さらに、潤滑剤と混合される。
3)ローラー圧縮機を用いて、混合物を圧縮する。
4)ローラー圧縮で得られたリボンを顆粒化および/または粉砕する。
5)(必要に応じて、あるいは所望により、顆粒の粒子サイズを調節および/または修正するために、)ステップ4で得られた顆粒を篩い分けする。
6)篩い分けされた顆粒を再圧縮し、錠剤に成形する。
【0053】
安定性を改善したり、または錠剤の崩壊時間や溶解速度またはプロフィールを変える必要があれば、ステップ6の前に、顆粒外(extragranular)崩壊剤および/または潤滑剤を、篩い分けされた顆粒と混合してもよい。もっとも、本発明の少なくともある実施形態では、乾式顆粒化プロセスの生産能力(運転コスト)は、本願明細書に記載された粒子製品以外に、バインダとフィラーが用いられる従来のローラー圧縮プロセスにおいて、一般に必要であると考えられる、そのような追加のステップを省くことによって改善される。
【0054】
(当該技術分野において「ロール圧縮」としても知られる)ローラー圧縮は、錠剤形成用の乾式の圧縮/顆粒化プロセスであり、錠剤処方物が、錠剤形成に必要な流動特性または十分に高いバルク密度を有さない場合に使用される。ローラー圧縮機では、錠剤処方物を圧縮し細密化し粉末を顆粒中に結合する圧力が使用される。ローラー圧縮で処理される有効成分には、例えば、アセチルサリチル酸(アスピリン)、アセトアミノフェン、アモキシシリン、イブプロフェン、ペニシリン、ラニチジン、およびストレプトマイシンが含まれる。
【0055】
本発明の共処理粒子製品は、顆粒化プロセスで使用するのに特に適している。顆粒化は、元の粒子がなお確認できるように、小型の粒子を凝集して大きな集合体にする、大きさを拡大するプロセスである。均一に混合された粉末(顆粒処方物)は、逆回転ローラー間で圧縮され、圧縮された材料のリボンが形成される。該リボンは、次に、顆粒に粉砕される。そのため、共処理粒子製品は、後に顆粒に転換される顆粒処方物中において、成分として用いることができる。ローラー圧縮機の概略図は、米国特許出願公開第2008/0213360号明細書に図示され、全ての目的のために、その全体が参照されて、ここに包含される。ローラー圧縮機は、ローラー部、プレスフレーム、油圧システム、およびフィードシステムからなる。フィードシステムは、ローラーの直前に配置され、該フィードシステムによって、ローラーに対する顆粒処方物の流速が決められる。フィードシステムは、圧縮ローラー間に顆粒処方物を押し出す1または複数個の送りねじからなる。顆粒処方物は、2個の圧縮ローラーを通過するときに圧縮される。顆粒処方物の体積は、最大圧を示す領域を通過するときに減少される。最大圧を示す領域において、顆粒処方物は、シートまたはリボンとして知られる固体状の圧縮材料に成形される。圧縮圧は、油圧システムによって得られる。該油圧システムは、所望の圧縮圧を生じるように調節できる。油圧システムは、ローラーの一つに作用する。米国特許出願公開第2008/0213360号明細書の図3に示されたように、ローラー圧縮プロセスは、圧縮、粉砕、篩い分け、および過大な粒剤(「超過粒剤」)と過小な粒剤(「微細粒剤」)をプロセスに戻すリサイクルからなる連続プロセスであってもよい。本発明の利点の一つは、本発明の粒子製品が賦形剤として使用される場合に、このようなプロセス中に生成する微細粒剤の量を低減することである。
【0056】
ローラーの種々の構成は、当該技術分野において公知であり、例えば、A.M.Falzone、博士論文、Purdue University,1990(U.M.I.,Ann Arbor,Mich.,Order Number 9313940)に開示されている。ローラー圧縮装置は、アメリカ合州国のイリノイ州のエルムハーストにあるFitzpartrick Companyから、CHILSONATOR(登録商標)ローラー圧縮機として市販されている。この装置は、Fitzpatrick Company Europeによって刊行された”Introduction to Roll Compaction and the Fitpatrick CHILSONATOR”に開示されている。
【0057】
本発明の粒子製品は、錠剤の成分として使用するにも適している。該錠剤の成分は、例えば、粒子製品を、APIなどの1または複数種の追加の成分と組み合わせて物理的に乾式混合して直接製造できるし、あるいは本願明細書で先述したように調製された(1または複数種の追加の成分と組み合わされる可能性もある)顆粒から直接製造することもできる。打錠は、錠剤形成の分野における当業者に公知である。錠剤は、打錠機上にある錠剤処方物に圧力を加えて形成される。打錠機には、底部からダイに嵌合する下部ポンチと、下部ポンチに対応する形状と寸法を有する上部ポンチが含まれる。上部ポンチは、錠剤処方物がダイキャビティを満たした後に、頂部からダイキャビティに入る。錠剤は、ダイ中において、下部および上部ポンチで錠剤処方物に圧力を加えて形成される。ホッパーからダイまで連続的に流れる錠剤処方物で、ダイを確実に均一に満たすために、錠剤処方物が、自由にダイ中に流入できることが重要である。圧縮後のダイから錠剤を簡単に取り出せ、ポンチ面への固着を防ぐために、ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤が加えられてもよい。打錠は、A.GENNARO,Remington:The Science and Practice of Pharmacy,20th Ed.,Lippincott Williams & Wilkins,Baltimore,Md.,2000などの薬学の教本に詳細に開示されている。
【0058】
一態様では、本発明によれば、本発明の粒子製品、1または複数種の有効成分、および、必要に応じて、1または複数種の薬学的に許容可能な賦形剤を含む錠剤のような固形剤が提供される。該錠剤は、従来の薬学的な配合技術に従って、1または複数の有効成分と少なくとも1種の賦形剤とを混合して、錠剤処方物から製造できる。直接的な圧縮によって、固形剤または錠剤を製造するために、錠剤処方物は、必須の物理的特性を有する必要がある。特に、錠剤処方物は、流動自在(free flowing)である必要があり、潤滑性を有する必要があり、重要なこととして、圧縮後に固形剤の形態を維持し、出荷、コーティング、および梱包などの以後の操作に対して十分に堅牢であることを保証するような成形性を有する必要がある。本発明の粒子製品によれば、錠剤処方物は、特に、成形性と再成形性について、予想外に改善された特性を有することが分かった。
【0059】
錠剤は、打錠機上で、錠剤処方物に圧力を加えて形成できる。打錠機には、底部からダイに嵌合する下部ポンチと、下部ポンチに対応する形状と寸法を有する上部ポンチが含まれる。上部ポンチは、錠剤処方物がダイキャビティを満たした後に、頂部からダイキャビティに入る。錠剤は、下部および上部ポンチに圧力を加えて形成される。ダイが均一に満たされ、錠剤処方物の供給源、例えば、フィーダーホッパーから、材料を連続的に確実に移動させるために、錠剤処方物が自由にダイ中に流入できることが重要である。圧縮された材料をポンチ面から簡単に取り出す必要があるので、錠剤処方物の潤滑性は、固形剤を製造するときに重要である。また、錠剤は、圧縮後のダイからきれいに取り出される必要がある。
【0060】
有効成分は、これらの性質を常に有する訳ではないので、これらの望ましい性質を錠剤処方物に付与するために、錠剤を処方する方法が開発されてきた。典型的には、錠剤処方物には、所望の流動自在性(free flowing)、潤滑性および結合特性を錠剤処方物に付与する1または複数種の添加剤または賦形剤が含まれる。
【0061】
乾燥した顆粒処方物の賦形剤は、顆粒を錠剤に圧縮できる良好な再成形性と希釈能を有する必要がある。賦形剤によって、有効成分の化学的および/または物理的な分解が加速されるべきではなく、生物学的利用能が妨げられるべきではない。賦形剤は、生理学的に不活性であるべきであり、錠剤の崩壊または有効成分の分解を意図せずに妨げるべきではない。賦形剤は、潤滑剤としての感度が低い必要があり、賦形剤によって、有効成分の含量は、許容できる程度に確実に均一になる必要がある。典型的な賦形剤は、バインダ、崩壊剤、滑剤、フィラー、希釈剤、着色剤、香料、安定化剤、および潤滑剤からなる群の中から選ばれる。賦形剤の選択と錠剤処方物の組成は、有効成分、処方物中での有効成分の量、錠剤の種類、錠剤処方物と得られた錠剤の両方にとって望ましい特性、および使用される製造プロセスによって決まる。これらには、迅速放出型(prompt release)、即時放出型(immediate release)、および放出制御型(modified release)が含まれる。迅速放出型は、薬が極短時間で溶解し、即時放出型と放出制御型には、飲み込まれる経口投与型の錠剤の大部分が含まれる。
【0062】
薬学的に許容できる賦形剤は、当該技術分野の当業者にとって公知であり、例えば、Staniforthの米国特許第6936277号明細書とLeeの米国特許第6936628号明細書に開示されている。その開示内容は、全ての目的のために、その全体が参照されてここに包含される。微結晶性セルロースを添加すると、錠剤の成形性が改善される。打錠操作をより有効にするために、希釈剤、バインダ、滑剤、および潤滑剤などの賦形剤が、加工助剤として添加される。さらに別の種類の賦形剤によれば、錠剤の崩壊速度が増加または低減され、(例えば、甘味料の場合)錠剤の味が改善され、あるいは、錠剤に色と風味が付与される。
【0063】
錠剤の製造中にポンチに処方物が固着するのを防ぐために、1または複数種の潤滑剤が、本発明の粒子製品を含む錠剤処方物に加えられてもよい。好適な潤滑剤には、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、フマル酸ステアリルナトリウム、水素化された植物油などの脂肪酸、脂肪酸塩、および脂肪酸エステルが含まれる。潤滑剤は、典型的には、処方物に対して、約0.1重量%〜約3.0重量%、または約0.5重量%〜1重量%含まれる。ポンチ面とダイの壁に錠剤処方物が固着するのを防ぐために、抗粘着剤(antiadherent)が用いられてもよい。固着が問題となる場合、抗粘着剤は、ステアリン酸マグネシウムと組み合わせて用いられる。一般的に使用される抗粘着剤は、コーンスターチとタルクである。錠剤を実用的な大きさにすることを目的として、打錠する材料のバルク重量を増すために、本発明の粒子製品に加えて、希釈剤、フィラー、または充填剤が加えられてもよい。これは、有効成分の投与量が比較的少ない場合に、必要となることが多い。これらに限定される訳ではないが、この目的を達成するために好適なフィラーには、ラクトース、二塩基のリン酸カルシウム、リン酸カルシウム、粉末状セルロース、デキストレート、イソマルト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、でんぷん、アルファ化でんぷん、およびこれらの組み合わせが含まれる。ソルビトール、マンニトール、およびキシリトールなどの糖アルコールが、特に、咀嚼可能な錠剤処方物において、フィラーとして使用されてもよい。ソルビトールとマンニトールの間の最も顕著な違いは、吸湿性と溶解性である。ソルビトールの吸湿性は、相対湿度で65%よりも高いが、マンニトールは非吸湿性である。ソルビトールの水溶性は、マンニトールの水溶性よりも高い。
【0064】
粒子材料の接着性をさらに変えるために、本発明の粒子材料に加えて、1または複数種のバインダが加えられてもよい。好適な追加のバインダには、でんぷん、微結晶性セルロース、およびスクロース、グルコース、デキストロース、およびラクトースなどの砂糖が含まれる。有効成分が分解する速度を低下させるために、錠剤処方物中に、1または複数種の安定化剤が含まれてもよい。好適な安定化剤には、アスコルビン酸などの抗酸化剤が含まれる。さらに、錠剤が、(消化管などの)使用される環境において、許容できる分解速度を有することを保証するために、1または複数種の崩壊剤が、錠剤処方物に含まれてもよい。崩壊剤によって、錠剤は崩壊され、有効成分と賦形剤を含む顆粒になる。クロスカルメロースナトリウム、テンプングリコール酸ナトリウム、またはクロスポビドンなどの超崩壊剤(super−disintegrant)が使用されてもよい。
【0065】
流動性を改善するために、1または複数種の滑剤が、錠剤処方物で使用されてもよい。粒子の形状と大きさのために、滑剤は、低濃度で流動性を改善できる。滑剤は、錠剤処方物の最終的な形態である乾燥形態中に混合されてもよい。好適な滑剤には、例えば、ステアリン酸のアルカリ金属塩、(商標名CAB−O−SIL(登録商標)、SYLOID(登録商標)、およびAEROSIL(登録商標)として販売される材料を含む)コロイド状の二酸化シリコン、およびタルクが含まれる。
【0066】
着色剤(つまり、色素および顔料)、天然または人口甘味料、および香料によって、錠剤に所望の特性が付与されてもよい。表面活性剤または界面活性剤とも呼ばれる、湿潤剤が存在してもよい。錠剤は、被膜されてもよい。
【0067】
ポリソルベート、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、脂肪酸エステル、またはポリエチレングリコールエステル塩などの界面活性剤が、処方物中に存在してもよい。APIの放出特性を変えるために、HPMC、カラギーナン、またはアルギネートなどの1または複数種のマトリックス形成剤が、必要に応じて含まれてもよい。
【0068】
本発明に係る錠剤は、何らかの所望の形状と大きさを有してもよい。例えば、球状の錠剤の大きさは、約50mg〜500mgであり、カプセル形状の錠剤は、約200mg〜1200mgの大きさである。もっとも、本発明に従って調製された他の処方物は、他の用途または部位に好適な大きさと形状を有する。他の部位とは他の体腔、例えば、歯周ポケット、手術痕、および膣(vaginally)などのことである。特定の用途、このような咀嚼剤、制酸剤、膣剤、および移植片錠の場合は、錠剤は大型であってもよい。
【0069】
組成物は、固形剤に調製するエンロービングプロセスで使用するのに適している。例えば、固形剤は、本発明に係る錠剤処方物または顆粒処方物を軽く圧縮し、圧縮粒子を形成し、圧縮粒子をフィルム状にエンローブ処理して調製される。エンローブ処理された固形剤を形成する方法と装置は、国際公開第03/096963号、国際公開第2005/030115号、国際公開第2005/030116号、国際公開第2005/030379号、および国際公開第2006/032828号に開示されている。その開示内容の全ては、全ての目的のために、その全体が参照されてここに包含される。前記装置と方法は、例えば、本発明の粒子製品を用いて調製された固形剤に使用されるのに適していてもよい。
【0070】
本発明のMCC/リン酸カルシウムを含む材料は、錠剤のような固形剤においてバインダとして使用されてもよい。固形剤には、1または複数種の有効成分と、必要に応じて、1または複数種の他の賦形剤が含まれる。該固形剤は、直接圧縮によって、または圧縮、顆粒化、および再圧縮を含むプロセスによって調製された処方物用のバインダとして、特に有用である。主に、医薬品と獣医学用途で有用であるが、固形剤は、農業、食品、化粧品、および他の産業用途などの他の分野で使用されてもよい。
【実施例】
【0071】
(用語説明)
・無水EMCOMPRESS(登録商標):直打グレードの二塩基のリン酸カルシウム無水物(JRS Pharma、ドイツ)
・AVICEL(登録商標) HFE−102:100μmの共処理MCC/マンニトール(FMC、フィラデルフィア)
・AVICEL(登録商標) PH−105:20μmの微結晶性セルロース(FMC、ペンシルぺニア州フィラデルフィア)
・AVICEL(登録商標) PH−101:50μmの微結晶性セルロース(FMC、ペンシルぺニア州フィラデルフィア)
・AVICEL(登録商標) PH−102:100μmの微結晶性セルロース(FMC、ペンシルぺニア州フィラデルフィア)
・AVICEL(登録商標) PH−200:200μmの微結晶性セルロース(FMC、ペンシルぺニア州フィラデルフィア)
・Di−Cafos(登録商標) C92−04:7μmの二塩基のリン酸カルシウム無水物の微粉(ブデンハイム、ドイツ)
・Di−Cafos(登録商標) C92−05:7μmの二塩基のリン酸カルシウム無水物(ブデンハイム、ドイツ)
・Di−Cafos(登録商標) C92−12:80μmの二塩基のリン酸カルシウム無水物の粗粉(ブデンハイム、ドイツ)
・Di−Cafos(登録商標) C92−01:14μmの二塩基のリン酸カルシウム二水和物(ブデンハイム、ドイツ)
・EMCOMPRESS(登録商標)プレミアム:直打グレードの二塩基のリン酸カルシウム二水和物(JRS Pharma、ドイツ)
・SuperTab(登録商標) 11SD:直打グレードのラクトース一水和物(DMV Fonterra)
・SuperTab(登録商標) 21AN:直打グレードのラクトース無水物(DMV Fonterra)
・ステアリン酸マグネシウム:ベジタブル2257(Tyco Mallinckrodt、アメリカ合衆国ミズーリ州セントルイス)
・MicroceLac(登録商標) 100:共処理MCC/ラクトース(重量比25:75)(Meggle Pharma、ドイツのウォーターバーグ)
・ビタミンC:アスコルビン酸(結晶)(Jiangsu Jiangshan Pharmaceutical Co.,Ltd)
【0072】
特に明記しない限り、本願明細書で表記された全ての百分率または比率は、重量を基準とした百分率または比率として記載される。
【0073】
(調製とその方法)
ロール圧縮されたリボンと顆粒を、以下のように調製し、試験した。モデル薬剤として、バインダ賦形剤6.95kgとビタミンC3kgとの予備混合物(preblend)を作成し、Pharmatech 50 Litre V Container中で、毎分28回転で回転させて10分間混合して、ビタミンCを30重量%含む処方物を調製した。次に、予備混合物に、ステアリン酸マグネシウム50グラムを潤滑剤として添加し、28rpmで2分間混合した。総量で10kgの混合物が吐出された。同じ成分を用いて、同じステップを繰り返して、第2の混合物10kgを生成した。次に、第2の混合物を第1の混合物と同じ袋に吐出し、20kgにした。処方物は、(例えば、錠剤を製造する)直接圧縮または(錠剤または他の固形剤を形成するために再圧縮できる)顆粒の形成に使用できる。
【0074】
処方物をロール圧縮した後、パイロットスケールのフィットパトリック(Fitzpatrick Company Europe,Entrepotstraat 8,B−9100 セントニクラス,ベルギー)ChilsonatorモデルIR−520/D6Aで粉砕して、顆粒を形成した。ローラー圧縮機は、ナール(溝付)ロールに取り付けられる。供給オーガまたは水平スクリューは、12rpmで回転され、充填オーガまたは垂直スクリューは、200rpmで回転された。これらのスクリュー速度は、実験中、一定に保たれた。圧縮圧は、20、30、または40バールに設定され、顆粒処方物は、リボンに圧縮された。圧縮ロール間の隙間または距離は、粉末/圧縮物に加えられる圧縮圧と圧縮される顆粒処方物に応じて、1.2〜1.8ミリメーターの範囲にされた。使用された粉砕機は、(500rpmで回転する)バーローター型であり、1.0ミリメーターの開口を有する、やすり網(rasping screen)と組み合わせて用いられた。各圧縮圧ごとに、約2kgの顆粒を集めて、各顆粒処方物を評価した。次に、30バールで圧縮されたリボンから得られた顆粒は、13ミリメートルの丸型をなす平坦なポンチを備えるESH Compaction Simulator上で、圧縮されて錠剤に成形された。上部ポンチだけで圧縮力を加えて、下部ポンチは、圧縮中、固定した。圧縮シミュレータは、上部ポンチの平均圧縮(垂直)速度が毎秒300ミリメートルになるように設定された。この速度は、約6ミリ秒の滞在時間に相当する。滞在時間は、最大の力の90%以上が加えられている時間として定義される。
【0075】
(実施例1)
共処理型の微結晶性セルロース/二塩基のリン酸カルシウム組成物は、微結晶性セルロースであるAVICEL(登録商標)PH−101と二塩基のリン酸カルシウム無水物であるDi−Cafos(登録商標)C92−05を重量比65:35で含む水性スラリーを混合し、該スラリーを噴霧乾燥して調製された。乾燥した後の凝集した粒子製品は、110℃での乾燥減量(LOD)が3.1%であり、二塩基のリン酸カルシウム(DCP)の分析値は33.7%であり、嵩密度(LBD)は0.44グラム/cm2であり、15重量%が、200メッシュの篩上に残存する篩上画分であった。
【0076】
共処理型の微結晶性セルロース組成物は、(「MCCウェットケーキ」として公知の)未乾燥の微結晶性セルロースと二塩基のリン酸カルシウム無水物であるDi−Cafos(登録商標)C92−05を含む水性スラリーを混合し、該スラリーを噴霧乾燥して同様に調製された。MMCウェットケーキから製造され、乾燥後に凝集した共処理粒子製品は、LODが2.9%であり、DCPの分析値が36.7%であり、嵩密度(LBD)が0.48グラム/cm2であり、20重量%が、200メッシュの篩上に残存する篩上画分であった。
【0077】
MCC:DCPが65:35である粒子製品と数種の比較対象となる賦形剤の機能は、69.5%のバインダ、30.0%のビタミンC、および0.5%のステアリン酸マグネシウム(潤滑剤)からなる処方物を用いて、直接圧縮とローラー圧縮の両方で形成された錠剤用のバインダ賦形剤として評価された。評価された比較対象となる賦形剤は、微結晶性セルロースであるAVICEL(登録商標)PH−102、50重量%の微結晶性セルロールであるAVICEL(登録商標)PH−102と50重量%の(直接圧縮グレードのラクトース一水和物である)SuperTab(登録商標)11SDとの物理混合物、および65重量%のAVICEL(登録商標)PH−102と35重量%の(直接圧縮グレードの二塩基のリン酸カルシウム二水和物である)Emcompress(登録商標)プレミアムとの物理混合物であった。
【0078】
直接圧縮中の5種の処方物の打錠性(成形性)を図1に示した。図1では、打錠圧に対して錠剤の引っ張り強度がプロットされている。MCC:DCPが65:35である共処理粒子製品の両方には、AVICEL(登録商標)PH−102とラクトースとの物理混合物またはAVICEL(登録商標)OH−102と二塩基のリン酸カルシウムとの物理混合物の何れと比べても、(同じ打錠圧において引っ張り強度が高くなるという)成形性の向上が見られる。AVICEL(登録商標)PH−102は、極めて塑性変形し易く、110MPaを下回る打錠圧において、高い成形性を示す。この圧力を上回ると、AVICEL(登録商標)PH−102を含む処方物の引っ張り強度は約2.5MPaで安定化する。打錠圧が、例えば、150MPaまで増加した場合、AVICEL(登録商標)PH−102処方物の引っ張り強度は、錠剤内に形成される層状組織などの欠陥のために、減少する可能性がある。比べてみると、MCC:DCPが65:35である共処理粒子製品は、打錠圧が低い場合、AVICEL(登録商標)PH−102よりも、やや成形性が低いが、試験された圧力の範囲に渡って、引っ張り強度のプラトーは観察されなかった。両者は、試験された最大の圧力(200〜225MPa)において、最大で約4.0MPaの引っ張り強度を有し、引っ張り強度の最大値は、AVICEL(登録商標)PH−102よりも高く、高い圧力でも欠陥が生じる傾向は認められなかった。
【0079】
共処理型のMCC:DCP(65:35)粒子製品の再成形性は、微結晶性セルロース単独または市販の物理混合物と比べて改善されている。これは、ローラー圧縮されたビタミンCを含む顆粒を打錠することによって説明された。ビタミンCを30%含む処方物において試験された賦形剤は、MCC:DCPが65:35である共処理粒子製品、微結晶性セルロースであるAVICEL(登録商標)PH−102、AVICEL(登録商標)PH−102とラクトースの物理混合物、およびAVICEL(登録商標)PH−102と二塩基性のリン酸カルシウム二水和物であるEMCOMPRESS(登録商標)プレミアムの物理混合物であった。ビタミンCを30%含む顆粒処方物は、異なる賦形剤を含み、(30バールでローラー圧縮してリボンを形成する)第1の圧縮ステップで圧縮され、粉砕されて顆粒にされた後、該顆粒を(打錠する)第2の圧縮ステップで圧縮した。その結果を、打錠圧に対して錠剤の引っ張り強度をプロットして、図2に示した。微結晶性セルロースと二塩基のリン酸カルシウムが65:35である共処理粒子製品によれば、再成形性が顕著に向上した。AVICEL(登録商標)PH−102、AVICEL(登録商標)PH−102とラクトース一水和物の混合比が50:50である物理混合物、またはAVICEL(登録商標)PH−102と二塩基のリン酸カルシウムの混合比が65:35である物理混合物を用いて調製された対応する顆粒から形成された錠剤の引っ張り強度と比べると、MCCとDCPを含む顆粒からなる錠剤の引っ張り強度は、各圧縮圧において高い。共処理型のMCC:DCP粒子製品(65:35)をローラー圧縮した顆粒を用いた錠剤の引っ張り強度は、2MPaに近い値を示した。これは、処方物が堅牢であることを示している。他の3種の顆粒処方物を用いた錠剤の引っ張り強度は、辛うじて1MPaを上回っていた。これは、弱く、脆く、かつ磨耗する典型的な錠剤を示している。共処理型のMCC:DCP粒子製品の性能は、AVICEL(登録商標)単独、あるいはAVICEL(登録商標)とラクトース一水和物または二塩基のリン酸カルシウムの何れかとの物理混合物よりも優れていた。
【0080】
物理混合物と比べた、共処理型の微結晶性セルロースと二塩基のリン酸カルシウムの粒子製品(65:35)の優れた再圧縮能は、図2に示した打錠圧に対する錠剤の引っ張り強度の直線回帰(「最良適合性」)によって特徴付けられる。引っ張り強度データの各組に対して図に示された直線回帰情報は、どの測定点が試験された各試料に関連するかを示す手掛かりとして、同じ次数で表示される。120MPaの打錠圧で種々の顆粒処方物から製造された錠剤の引っ張り強度の計算値が、図2で報告された各直線回帰に基づいて、図3に示される。比較対象となる賦形剤の物理混合物を含む顆粒処方物に比べて、共処理型のMCC:DCP粒子製品を含むビタミンCの顆粒処方物の再成形性は、約2倍大きい。微結晶性セルロースと二塩基のリン酸カルシウムを65:35で含む、新規な共処理粒子製品は、典型的な市販の賦形剤と比べて錠剤の堅牢性を高める、市販の賦形剤と比べて低い圧縮圧で同じ硬さを有する錠剤を得る、または医薬品有効成分または他の賦形剤のレベルにおいて、配合寛容度を高める、あるいは十分な引っ張り強度を有する小型の剤型を得るのに適している。
【0081】
(実施例2)
MCC:DCPの成分比率を変えたときの、微結晶性セルロースと二塩基のリン酸カルシウムの共処理粒子製品の再成形性は、69.5%の共処理粒子製品、30.0%のビタミンC、および0.5%のステアリン酸マグネシウムからなる顆粒処方物をローラー圧縮したリボンから得られた顆粒を打錠することによって評価された。
【0082】
共処理粒子製品は、微結晶性セルロースであるAVICEL(登録商標)PH−101と、10%、20%、22.5%、30%、および50%の二塩基のリン酸カルシウム無水物であるDi−Cafos(登録商標)C92−04を含む水性スラリーを噴霧乾燥して製造された。これらの乾燥済の共処理型のMCC:DCP組成物の特性は、表1に示される。
【0083】
【表1】
【0084】
共処理型のMCC:DCP粒子製品は、バインダとして69.5%の粒子製品、30.0%のビタミンC、および0.5%のステアリン酸マグネシウムを含む処方物として製造された。顆粒処方物は、それぞれ20、30、および40バールでローラー圧縮されてリボンにされた後に、粉砕して顆粒にされた。30バールでローラー圧縮されて形成されたリボンから得られた顆粒は、圧縮シミュレータ中で打錠された。打錠圧に対する引っ張り強度のデータは、各組成物に対する直線回帰の最良適合性とともに、図4に示される。図5には、組成物中の二塩基のリン酸カルシウムの百分率に対する、(図4の直線回帰データに基づいて計算された)120MPaでの引っ張り強度が示されている。二塩基のリン酸カルシウムを10%または50%含む共処理型のMCC:DCP粒子製品は、ローラー圧縮された顆粒を再圧縮(打錠)して得られた引っ張り強度が低い値になるという特徴が示すように、やや低い再成形性を有する。さらに、10%の二塩基のリン酸カルシウムを含む共処理型のMCC:DCP粒子製品を用いて調製された顆粒を圧縮した錠剤は、150MPaを上回る高い打錠圧において、崩壊する傾向を示した。圧縮された結果によって、重量比が80:20〜65:35である共処理型のMCC:DCP粒子製品を用いて調製された顆粒の再成形性が、良好になることが示された。
【0085】
図6は、ローラー圧縮されたMCC:DCP組成物から製造された、打錠済の顆粒の再成形性データを示している。該組成物は、DCPの量を変えて、AVICEL(登録商標)PH−102やAVICEL(登録商標)PH−101とのスラリーの共処理によって調製された。
【0086】
(実施例3)
粒径を変えた微結晶性セルロースから製造された共処理型の微結晶性セルロースと二塩基のリン酸カルシウムの粒子製品の再成形性は、69.5%の共処理粒子製品、30.0%のビタミンC、および0.5%のステアリン酸マグネシウムからなる顆粒処方物を(30バールで)ローラー圧縮して形成されたリボンから得られた顆粒を打錠して評価された。
【0087】
共処理型の賦形剤は、種類を変えた微結晶セルロース製品(AVICEL(登録商標)PH−105、AVICEL(登録商標)PH−101、AVICEL(登録商標)PH−102、およびAVICEL(登録商標)PH−200)と二塩基のリン酸カルシウム無水物を用いた水性スラリーを噴霧乾燥して調製された。AVICEL(登録商標)PH−105のメジアン粒径は、典型的には約20マイクロメートルであり、AVICEL(登録商標)PH−101のメジアン粒径は、約50マイクロメートルであり、AVICEL(登録商標)PH−102のメジアン粒径は、約100マイクロメートルであり、粗製グレードのAVICEL(登録商標)PH−200のメジアン粒径は、約200マイクロメートルである。表2には、これらの共処理型の賦形剤の特性が示されている。
【0088】
【表2】
【0089】
これらの4種の処方物を用いて調製したローラー圧縮された顆粒の成形性と打錠性を試験した。図7は、打錠圧に対して、錠剤の引っ張り強度をプロットしている。データは、30%のビタミンCを含む顆粒を圧縮して得たものである。30%のビタミンCを含む顆粒の再成形性が最大になる、つまり、錠剤の引っ張り強度が最大になる顆粒処方物は、AVICEL(登録商標)PH−102で形成された共処理粒子製品を用いたものであった。AVICEL(登録商標)PH−200またはAVICEL(登録商標)PH−101で、それぞれ作成された共処理粒子製品によって、同様な再成形性を有する顆粒が得られた。30バールでローラー圧縮された、30%のビタミンCを含む顆粒処方物で試験した場合、AVICEL(登録商標)PH−105と二塩基のリン酸カルシウムを共処理すれば、再成形性が低い顆粒を生成する共処理粒子製品が得られる。図8は、(図7からデータの最適な線形近似を用いて)打錠圧が120MPaでの錠剤の引っ張り強度の計算値に基づいて、共処理粒子製品中で使用されたAVICEL(登録商標)PHの粒径の関数として、共処理粒子製品の再成形性を比較したものを示している。
【0090】
(実施例4)
粒径と二塩基のリン酸カルシウムの組成を変えて製造した、微結晶性セルロースと二塩基のリン酸カルシウムの共処理型の粒子製品は、69.5%の共処理粒子製品、30.0%のビタミンC、および0.5%のステアリン酸マグネシウムからなる顆粒処方物を(30バールで)ローラー圧縮して形成されたリボンから得られた顆粒を打錠して評価された。
【0091】
共処理粒子製品は、AVICEL(登録商標)PH−101と4種のグレードの二塩基のリン酸カルシウムの水性スラリーを噴霧乾燥して製造された。二塩基のリン酸カルシウムは、無水物の微粉(メジアン粒径7μm)であるDi−Cafos(登録商標)C92−04、無水物の粉末(メジアン粒径7μm)であるDi−Cafos(登録商標)C92−05、二水和物の粉末(メジアン粒径14μm)であるDi−Cafos(登録商標)C92−01、および無水物の粗粒(メジアン粒径80μm)であるDi−Cafos(登録商標)C92−12である。
【0092】
【表3】
【0093】
これら4種の処方物を用いて調製されたローラー圧縮型の顆粒の再成形性または打錠性は、図9に示される。図9では、打錠圧に対して錠剤の引っ張り強度がプロットされる。30%のビタミンCを含む再成形性が最適な顆粒、つまり、錠剤の引っ張り強度が高くなる顆粒処方物では、77.5%のAVICEL(登録商標)PH−101とメジアン粒径が7ミクロンである22.5%の二塩基のリン酸カルシウムで形成される共処理粒子製品が使用された。30バールでローラー圧縮された30%のビタミンCを含む顆粒処方物で試験した場合、77.5%のAVICEL(登録商標)PH−101と14ミクロンと80ミクロンの大型の粒径を有する22.5%の二塩基のリン酸カルシウムを共処理して生成された粒子製品によれば、再成形性の低い顆粒を生成する共処理粒子製品が得られる。図10は、(図9からデータの最適な線形近似を用いて)打錠圧が120MPaでの錠剤の引っ張り強度の計算値に基づいて、共処理粒子製品中で使用された二塩基のリン酸カルシウムの粒径の関数として、共処理粒子製品の再成形性を比較したものを示している。
【0094】
(実施例5)
メジアン粒径が約40〜50ミクロンまたは約70ミクロンである、微結晶性セルロースと二塩基のリン酸カルシウムの共処理粒子製品の再成形性は、69.5%の共処理粒子製品、30.0%のビタミンC、および0.5%のステアリン酸マグネシウムからなる処方物を(30バールで)ローラー圧縮して形成されたリボンから得られた顆粒を打錠して評価された。
【0095】
共処理粒子製品は、AVICEL(登録商標)PH−101またはAVICEL PH−102と二塩基のリン酸カルシウムの無水物であるDi−Cafos(登録商標)C92−04の水性スラリーを噴霧乾燥し、噴霧乾燥プロセスの条件を変えて、種々の粒径を製造して調製された。これらの粒子製品の特性は、表4に示される。
【0096】
【表4】
【0097】
図11は、打錠圧に対して、(30バールでローラー圧縮して形成されたリボンから得られた顆粒を用いて製造した)30%のビタミンCを含む錠剤の引っ張り強度をプロットしている。粒径が35〜50ミクロンの粒子製品から製造された顆粒の再成形性は高く、粒径が約70マイクロメーターまで増加すると、再成形性は減少した。顆粒の再成形性に対する粒径の影響は、図12に示されている。図12では、共処理型のMCC:DCP粒子製品の粒径(Malvern Mastersizer 2000を用いて、レーザー回折で測定されたD50)に対して、(図11からデータの最適な線形近似を用いて計算された)打錠圧120MPaでの錠剤の引っ張り強度をプロットしている。
【0098】
(実施例6)
微粉のDCPを用いたMCC:DCPの比率が75:25である共処理粒子製品の再成形性は、69.5%のMCC:DCP賦形剤、30.0%のビタミンC、および0.5%のステアリン酸マグネシウムからなる顆粒処方物を(30バールで)ローラー圧縮して形成されたリボンから得られた顆粒を打錠して評価された。
【0099】
共処理型のMCC:DCP粒子製品は、AVICEL(登録商標)PHと、受け入れ後に、DCPを2ミクロンのメジアン粒径に粉砕した二塩基のリン酸カルシウム無水物であるDi−Cafos C92−04との水性スラリーを噴霧乾燥して製造された。表5は、これらの粒子製品の特性を示している。
【0100】
【表5】
【0101】
図13は、再成形能についての優れたロット間再現性を示している。
【0102】
(実施例7)
MCC:DCP粒子製品(75:25)のローラー圧縮されたリボンの破砕性は、微結晶性セルロースとラクトース無水物の物理混合物(50:50)および微結晶性セルロースと二塩基のリン酸カルシウム無水物の物理混合物(65:35と75:25)と比べられて、評価された。
【0103】
共処理型のMCC:DCP粒子製品(75:25)は、AVICEL(登録商標)PH−102と二塩基のリン酸カルシウム無水物であるDi−Cafos(登録商標)C92−04との水性スラリーを噴霧乾燥して製造された。物理混合物試料は、30%のビタミンCを含む顆粒処方物に含まれ69.5%の割合を示す賦形剤として、AVICEL(登録商標)PH−101とSuperTab(登録商標)21ANまたは無水EMCOMPRESS(登録商標)を適当な重量比率で用いて調製された。
【0104】
リボンは、30%のビタミンCを含む顆粒処方物を、20、30、および40バールでローラー圧縮して製造された。約5センチメートルのリボン幅を有するリボン部分は、長さ約2.5〜3.5センチメートルの破片に分けられた。(総重量が約10〜20グラムの)3個のリボンの破片は、始めに、柔らかいブラシを用いて、1000ミクロンの篩上で脱じんされ、次に、重量を測定された。脱じんされた破片は、Pharma test PTF1破砕性試験機(friability tester)のドラムに、100回転(毎分25回転で4分間)の間導入された。ドラムの内容物は、試験後に取り除かれ、粉末画分は1000ミクロンの篩上で分離された。篩上に残存した過大な画分は、脱じんされた後に、重量を測定され、リボンの初期重量と比べられた。
【0105】
表6には、AVICEL(登録商標)PH−101とSuperTab(登録商標)21ANとの物理混合物(50:50)または無水EMCOMPRESS(登録商標)との物理混合物(65:35および75:25)と比べて、共処理型のMCC:DCP粒子製品(75:25)によれば、各圧縮圧(20、30、および40バール)で、破砕性が低い堅牢に圧縮されたリボンが作成されることが示されている。同程度の破砕性を有する堅牢なリボンは、共処理型のMCC:DCP粒子製品の場合、混合処方物の場合よりも低い圧縮圧で得ることができる。本発明に係る粒子製品によれば、意外なことに、リボンの破砕性の低減と再成形性の改善を両立できる。
【0106】
【表6】
【0107】
(実施例8)
MCC:DCPの比率が80:20、75:25、および65:35である共処理粒子製品と、同じ組成の物理混合物の再成形性は、賦形剤として69.5%の粒子製品または混合物、30.0%のビタミンC、および0.5%のステアリン酸マグネシウムからなる顆粒処方物を(30バールで)ローラー圧縮して形成されたリボンから得られた顆粒を打錠して評価された。
【0108】
物理混合物試料は、30%のビタミンCを含む顆粒処方物に含まれ69.5%の割合を示す賦形剤として、MCC:DCPの比率が75:25または65:35で調製された。物理混合物には、AVICEL(登録商標)PH−101と直接圧縮グレードの二塩基のリン酸カルシウム無水物である無水EMCOMPRESS(登録商標)との混合物、またはAVICEL(登録商標)PH−102と直接圧縮グレードの二塩基のリン酸カルシウム二水和物であるEMCOMPRESS(登録商標)プレミアムとの混合物が用いられた(図14)。また、物理混合試料は、30%のビタミンCを含む顆粒処方物中で69.5%の割合を示す賦形剤において、AVICEL(登録商標)PH−102とEMCOMPRESS(登録商標)プレミアムとを重量比率80:20と65:35でそれぞれ混合して調製された(図15)。
【0109】
共処理型のMCC:DCP粒子製品は、AVICEL(登録商標)PH−101と二塩基のリン酸カルシウム無水物であるDi−Cafos(登録商標)C92−04の水性スラリー(比率は、それぞれ80:20と65:35、図15)、および比率が75:25であるAVICEL(登録商標)PH−102と二塩基のリン酸カルシウム無水物であるDi−Cafos(登録商標)C92−04の水性スラリー(図14)を噴霧乾燥して調製された。これらの粒子製品の特性は、表7に示される。
【0110】
【表7】
【0111】
顆粒処方物は、30バールでローラー圧縮されてリボンに形成された後、粉砕されて顆粒になり、該顆粒が打錠されるときに圧縮された。
【0112】
再成形性データは、打錠圧に対する錠剤の引っ張り強度として、図14と図15に示される。図14は、AVICEL(登録商標)PH−102とDi−Cafos(登録商標)92−04無水物が75:25である水性スラリーから噴霧乾燥された共処理型のMCC:DCP粒子製品の再成形性が、組成が75:25と65:35である3種の物理混合物の再成形性に比べて遙かに高かったことを示している。図15は、比率が80:20と65:35である共処理型のMCC:DCP粒子製品が、対応する物理混合物に比べて、遙かに再成形性に優れることを示している。
【0113】
(実施例9)
共処理型のMCC:DCP粒子製品(75:25)の性能と潤滑剤を節約できる能力は、99%の賦形剤と1.0%のリン酸マグネシウムを用いた顆粒処方物を30バールでローラー圧縮して形成されたリボンから得られた顆粒を打錠して、微結晶性セルロース、微結晶性セルロースとラクトースの物理混合物およびDCP賦形剤と比べて評価された。
【0114】
ローラー圧縮された顆粒処方物から形成された顆粒を打錠して得られた再成形性データは、打錠圧に対する錠剤の引っ張り強度として、図16に示される。共処理型のMCC:DCP粒子製品(75:25)は、AVICEL(登録商標)PH−102単独、または、AVICEL(登録商標)PH−102とラクトース一水和物であるSuperTab(登録商標)11SDまたは二塩基のリン酸カルシウム二水和物であって、直接圧縮型の賦形剤であるEMCOMPRESS(登録商標)プレミアムとの物理混合物と比べて、再成形性が改善され、潤滑剤を節約する能力が遙かに向上していた。
【0115】
(実施例10)
共処理型のMCC:DCP粒子製品(75:25)の再成形性は、30%のビタミンCを含み、3%のクロカルメロースナトリウムと0.5%のステアリン酸マグネシウム含有または未含有である顆粒処方物を30バールでローラー圧縮して形成されたリボンから得られた顆粒を打錠して評価された。
【0116】
(比較例1)
再成形性(再成形性能)は、共処理型のMCC:DCP粒子製品(15:85)、MicroLac(登録商標)微結晶性セルロースとラクトース一水和物を共処理した直接圧縮グレードのMicroceLac(登録商標)(25:75)、AVICEL(登録商標)PH−101と直接圧縮グレードの賦形剤である無水EMCOMPRESS(登録商標)を含む対応する物理混合物(15:85)、AVICEL(登録商標)PH−101とSuperTab(登録商標)を含む対応する物理混合物(25:75)を含むとともに、30%のビタミンCを含む顆粒処方物を30バールでローラー圧縮して形成されたリボンから得られた顆粒を打錠して評価された。
【0117】
共処理型のMCC:DCP粒子製品(15:85)は、AVICEL(登録商標)PH−102と二塩基のリン酸カルシウム無水物であるDi−Cafos(登録商標)C92−04からなる水性スラリーを噴霧乾燥して製造された。このような粒子製品の特性は、表8に示される。
【0118】
【表8】
【0119】
打錠性データは、図18に示される。共処理型のMCC:DCP粒子製品(15:85)を含み、30%のビタミンCを含む顆粒処方物を再圧縮すると、最低の打錠圧(97.6MPa)において、錠剤は極めて脆弱になるが、120MPa〜250MPaより大きい打錠圧で、引っ張り強度が0.2〜0.4MPaの範囲にあることが観察された。MCCとDCPとの物理混合物は、51.5MPa〜267.6MPaの打錠圧で試験されたが、必要な打錠圧は、十分に硬い錠剤(少なくとも10N、少なくとも0.2MPaの引っ張り強度に相当)を得ることができる120MPaを上回る値であった。
【0120】
(実施例11)
再成形性は、共処理型のMCC:DCP粒子製品(75:25)、市販の微結晶性セルロース製品であるAVICEL(登録商標)PH−102とAVICEL(登録商標)HFE−102、およびAVICEL(登録商標)PH−102と二塩基のリン酸カルシウムまたはマンニトールの物理混合物の顆粒処方物を30バールでローラー圧縮して形成されたリボンから得られた顆粒を打錠して評価された。(賦形剤が69.5%、ビタミンCが30.0%、ステアリン酸マグネシウムが0.5%である)ビタミンCを含む顆粒処方物から圧縮された顆粒の打錠データは、図19に示される。(賦形剤が99%でステアリン酸マグネシウムが1%である)偽薬の顆粒処方物から圧縮された顆粒の打錠データは、図20に示される。MCC:DCP粒子製品は、30%のビタミンCまたは偽薬処方物のいずれで試験した場合でも、両方の市販の賦形剤と比べて、優れた再成形性を示していた。
【0121】
(実施例12)
破砕性と崩壊性は、MCC:DCP粒子製品を含むビタミンCの錠剤について、微結晶性セルロースまたは市販の賦形剤の物理混合物と比較して試験された。
【0122】
錠剤は、12mmの円形のありふれた凹面をなす型押しを用いたManesty D4回転圧縮機を用いて、30rpmで、(種々の賦形剤を含む顆粒組成物を30バールでローラー圧縮して形成されたリボンを粉砕して得られた)30%のビタミンCを含む顆粒から製造された。錠剤の破砕性は、Pharma Test PTF1破砕性試験機内において、20個の錠剤を毎分25回転で4分間回転(全部で100回転)させることによって、損失重量の%として測定された。錠剤は、Manesty D4回転圧縮機において、15kNの圧縮力で圧縮された。得られた結果を表9に示した。
【0123】
【表9】
【0124】
同様な硬さを得るための打錠力を変えて、ビタミンCを含む顆粒から製造された錠剤についての崩壊性データを表10に示す。崩壊時間は、Pharma Test PTZ2崩壊性試験機を用いて測定された。共処理型のMCC:DCP粒子製品(75:25)を用いて製造された錠剤の崩壊時間は、AVICEL(登録商標)PH−101または物理混合物のいずれかを用いて製造された錠剤の崩壊時間よりも短かった。
【0125】
【表10】
【技術分野】
【0001】
本発明は、賦形剤や医薬品有効成分などを含む医薬製剤、顆粒物および固形剤において、賦形剤としての有用性を有する粒子組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
経口投与に適した医薬品組成物を個別に投与する場合には、典型的には錠剤のような、固形剤の投与が便利である。錠剤には、1または複数種の治療成分(一般に、「有効成分」、「医薬品有効成分」、または「API」と称される)に加えて、賦形剤として公知の薬学的に許容可能な物質が含まれる。該物質は、有効性を示さないし、薬学的効果も生じさせないが、錠剤処方物に加えられて、有効成分の活性には関与しない所定の性質を付与する。
【0003】
錠剤の製造には、一般的に3種の方法がある。つまり、(1)直接打錠法、(2)乾式顆粒法、および(3)湿式顆粒法である。直接打錠法においては、錠剤に含まれるべき1または複数種の粉末材料(有効成分と賦形剤が含まれる)が、混合され直接打錠され、顆粒法のような中間の処理を経ることはない。直接打錠法は、錠剤のような固形剤を製造するのに、最も有効かつ有利な製造工程であるが、流動性が低いこと、あるいは嵩密度が低いこと、のような剤型の特定の性質のために、直接打錠法による処理ができない錠剤処方物が多数ある。例えば、流動性が低いために、錠剤ごとの投薬量に許容できない大きな差が生じることがある。
【0004】
直接打錠する混合物の流動性が低いため、あるいは嵩密度が低いために、直接打錠法による打錠が妨げられる場合では、顆粒法を用いることができる。また、顆粒法によれば、有効成分の含量の均一性が改善され、ダストの発生が減少される。乾式顆粒法には、(バインダ、フィラー、崩壊剤、または潤滑剤などの1または複数種の賦形剤とともに、有効成分を含む)成分を混合し、混合物をローラー圧縮またはスラッギングし、乾燥状態で篩い分けまたは摩砕して粗製の乾燥顆粒化物にし、顆粒を圧縮することが含まれる。前記顆粒は、再圧縮される前に、さらに、1または複数種の賦形剤(バインダ、崩壊剤、潤滑剤など)と混合できる。湿式顆粒法には、成分のいくつかまたは全てを混合し、次に混合した粉末に水を添加することが含まれる(これに代えて、1または複数種の成分、特にバインダを他の成分と組み合わせたときに、懸濁あるいは溶解されるようにしてもよい)。得られた湿った塊は、篩い分けされ、乾燥され、必要に応じて、潤滑剤、バインダ、フィラー、または崩壊剤などの1または複数種のさらなる賦形剤と組み合わされて、錠剤に圧縮される。
【0005】
乾式顆粒法では、錠剤成分は、水分、溶媒および熱に曝されない。そのため、乾式顆粒法は、水分、溶媒および/または熱に敏感な有効成分を処理するのに使用できる。乾式顆粒法は、スラッギングにより、またはローラー圧縮により実施できる。スラッギングは圧縮を2回行うプロセスである。錠剤になるべき材料は、大きな圧縮された塊、または「スラッグ」に圧縮され、該圧縮された塊は、顆粒に粉砕された後、第2の圧縮プロセスにより錠剤に転換される。スラッギングは、時間がかかり、非経済的なプロセスであるので、乾式顆粒法にとって、ローラー圧縮が、選択される方法になりつつある。ローラー圧縮では、顆粒化プロセスの利点の全て、例えば、材料の流動挙動を改善し、含量を均一にするという利点が得られる。さらに、ローラー圧縮は、容量が大きく、湿式顆粒法よりも操作するのに経済的である。
【0006】
ローラー圧縮プロセスの間、錠剤処方物(「顆粒処方物」)の少なくとも一部は、2個の逆回転高圧ローラーによって、圧縮されて高密度化され、得られた材料は、均一な大きさに粉砕される。続いて、得られた顆粒は打錠されて錠剤が形成されるが、その際に、追加の賦形剤が加えられることもあれば、加えられないこともある。錠剤は、打錠機のダイ中で、錠剤処方物に圧縮作用を及ぼして、形成されてもよい。打錠機には、底部からダイに嵌合する下部ポンチと、下部ポンチに対応する形状と寸法を有する上部ポンチが含まれる。上部ポンチは、錠剤処方物がダイキャビティを満たした後に、頂部からダイキャビティに入る。下部および上部ポンチでダイ中の錠剤処方物に圧力を加えて、錠剤が形成される。
【0007】
固有の成形性のために、微結晶性セルロース(MCC)は、医薬製剤中の賦形剤として、広く使用されることが分かった。また、MCCを錠剤処方物中に用いた場合、結合性と崩壊性が良くなる。
【0008】
ローラー圧縮に続いて打錠する錠剤の形成には、2種の圧縮ステップが含まれる。しかしながら、第1の圧縮ステップの後、MCC顆粒物は、第2の圧縮、つまり、打錠ステップに対して、十分な成形性を有さない場合がある。そのため、複数の圧縮ステップ、例えば、ローラー圧縮および打錠、またはスラッギングを含むプロセスにより固形剤を製造するのに使用できる微結晶セルロース含有バインダが求められている。バインダは、第2の圧縮ステップに対して、十分な成形性を有する必要がある。残念ながら、このような十分な成形性を有するバインダは、実現に向けての挑戦段階にある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、医薬品賦形剤として有用な、共処理(coprocessed)組成物を提供する。該共処理組成物には、少なくとも1種のリン酸カルシウムと微結晶セルロース粒子が含まれる(該組成物は、以後、「本発明の粒子製品」と称される場合がある。)。本明細書で使用される「共処理」は、微結晶性セルロースとリン酸カルシウムを一緒に物理的に処理して、共処理混合物の物理的特性を改善することを意味している。この物理的性質の改善は、微結晶性セルロースまたはリン酸カルシウム単独、あるいは微結晶性セルロースとリン酸カルシウムとの単純混合物または乾燥混合物の何れによっても示されない。このような共処理は、例えば、水性媒体中に分散された2種の成分を混合し、次に、共処理組成物を取り出すために乾燥することにより実施できる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、医薬品賦形剤として有用な物質を含む組成物は、微結晶性セルロースとリン酸カルシウムを共処理した粒子によって得られる。一実施形態において、2種の成分は、微結晶性セルロース:リン酸カルシウムの重量比が、約85:15〜約55:45である。微結晶性セルロールとリン酸カルシウムは、本発明の組成物中において、密接な関係を有し、2種の成分の凝集粒子として存在してもよい。例えば、リン酸カルシウム粒子の少なくとも一部は、微結晶性セルロース粒子の細孔に埋め込むことができる。本発明の粒子製品は、2種の成分からなる水性スラリーを形成した後、該スラリーを乾燥して得ることができる。
【0011】
微結晶性セルロースと二塩基性のリン酸カルシウムは、一般に、乾式顆粒プロセス(つまり、スラッギングまたはローラー圧縮)において、物理的な乾燥混合物の形態を取る別個の成分として使用されていた。しかしながら、本発明に係る水性スラリーの共処理および共乾燥プロセスによって製造された粒子製品は、同じ成分からなる類似の物理的な乾燥混合物と比べて、相乗的な性能を示すことが予期せずに発見された。成形性(圧縮機でのスラッジまたはリボンの製造時)と再成形性(最初の圧縮で得られた顆粒物を用いた打錠機での錠剤の製造時)の両方が改善される。つまり、(本発明の粒子製品を用いて製造された)リボンまたは錠剤は、所定の圧縮圧において、微結晶性セルロースとリン酸カルシウムとの物理的な乾燥混合物である賦形剤を用いて製造された類似のリボンまたは錠剤と比べて、高い引っ張り強度を有する。これに代えて、リボンまたは錠剤において所望の引っ張り強度を得るために、本発明の粒子製品が、微結晶性セルロースとリン酸カルシウムからなる類似の物理的な乾燥混合物の代わりに使用される場合、圧縮圧を低くする必要がある。本発明の粒子製品の機能を高めれば、ローラー圧縮された高強度のリボンまたはスラッグが得られるので、成形性に乏しい他の医薬品有効成分を十分にローラー圧縮できる。本発明によれば、粒子製品の再圧縮特性を改善できるので、顆粒外層(extragranular)賦形剤を使用する必要性を低減したり、該賦形物を完全に不要にできる。
【0012】
したがって、本発明の一実施形態では、顆粒は、本発明の粒子製品と少なくとも1種の医薬品有効成分(API)を含み、さらに、必要に応じて、少なくとも1種の崩壊剤および/または少なくとも1種の潤滑剤および/または少なくとも1種のフィラーを含む、乾燥混合物をローラー圧縮し、得られた圧縮後のリボンを破砕(粉砕)して製造される。次に、該顆粒は、圧縮されて錠剤または他の固形剤に形成される。これに代えて、顆粒は、例えば、(再圧縮されずに)小包剤(sachet)または硬カプセル剤中などで使用されてもよい。
【0013】
さらに、乾燥粒子の凝集体を含む医薬品賦形剤として有用な組成物が提供される。該凝集体は、微結晶性セルロース粒子と少なくとも1種のリン酸カルシウム粒子が十分に分散された水性スラリーを形成して、該水性スラリーを乾燥して得られる。
【0014】
別の態様では、本発明によれば、医薬品賦形剤に有用な組成物を製造するプロセスが提供される。該プロセスには、a)微結晶性セルロースと少なくとも1種のリン酸カルシウムが十分に分散された水性スラリーを形成することと、b)該水性スラリーを乾燥し、該水性スラリーから水分を除去して、粒子製品を得ることが含まれる。
【0015】
さらに別の態様では、顆粒または錠剤処方物が提供される。該顆粒または錠剤処方物には、少なくとも1種の有効成分(つまり、API)と、a)微結晶性セルロースと少なくとも1種のリン酸カルシウムが十分に分散されたスラリーを形成することと、b)該水性スラリーを乾燥し、該水性スラリーから水分を除去して、粒子製品を得ることを含むプロセスによって得られた、粒子製品が含まれる。
【0016】
本発明のさらに別の態様によれば、顆粒を形成する方法が提供される。該方法には、a)顆粒処方物を加圧して圧縮物を形成するステップと、b)該圧縮物を粉砕して、顆粒を形成するステップが含まれる。顆粒処方物には、少なくとも1種の有効成分(つまり、API)と、a)微結晶性セルロースと少なくとも1種のリン酸カルシウムが十分に分散された水性スラリーを形成することと、b)該水性スラリーを乾燥し、該水性スラリーから水分を除去して、粒子製品を得ることを含むプロセスによって得られた、粒子製品が含まれる。
【0017】
このように得られた顆粒を再圧縮して、錠剤のような固形剤を得てもよい。
【0018】
さらに本発明によって提供されるのは、圧縮された錠剤の形態をなし、粒子製品、少なくとも1種の有効成分、および必要に応じて、少なくとも1種の追加の賦形剤(例えば、フィラー、バインダ、潤滑剤、崩壊剤、および/または滑剤)を含む固形剤である。前記粒子製品は、a)微結晶性セルロースと少なくとも1種のリン酸カルシウムが十分に分散された水性スラリーを形成することと、b)該水性スラリーを乾燥し、該水性スラリーから水分を除去して、粒子製品を得ることを含むプロセスによって得られる。
【0019】
本発明の粒子製品を医薬品賦形剤として用いた場合、以下の1または複数の利点または利益を得ることができる。顆粒化/打錠プロセスにおいて、複数種の異なる賦形剤を用いたり、同一の賦形剤の大部分を異なる場所に導入する必要性を低減でき、あるいは該必要性を完全に除去できるので、該プロセスは簡単になり、製造コストが低減し、および/または品質管理が改善される。本発明の粒子製品を用いて製造された圧縮材料によれば、粉砕され顆粒に篩い分けされるときに、微細になる傾向を低減できる。これにより、廃棄物を最小にでき、および/または、以後の打錠ステップで使用するには小さすぎる粒子をリサイクルする必要をなくすことができる。同様に、本発明の粒子製品を含む錠剤によれば、他のバインダ(例えば、微結晶性セルロースとリン酸カルシウム粒子との物理混合物)を用いて製造された錠剤と比べて、破砕性を低減できる。したがって、該錠剤によれば、物理的な処理に対する耐性を改善できる。この特性は、消費者に届けるときに、該錠剤を確実に無傷かつ無損傷の状態にするのに役立つ。また、本発明の粒子製品を含む錠剤処方物によれば、所望の引っ張り強度を得るための圧縮圧を小さくできるので、打錠装置の磨耗を小さくできる。さらに、必要となる引っ張り強度の最小値を満たさない錠剤が少なくなるので、収率を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】ビタミンC、ステアリン酸マグネシウム、および種々の賦形剤を含む処方物の成形性を比較したグラフである。
【図2】ビタミンC、ステアリン酸マグネシウム、および種々の賦形剤を含む処方物の再成形性を比較したグラフである。
【図3】所定の打錠圧において、ビタミンC、ステアリン酸マグネシウム、および種々の賦形剤を含む処方物の再成形性を比較したチャートである。
【図4】ビタミンC、ステアリン酸マグネシウム、および比率の異なる無水の二塩基性のリン酸カルシウムと微結晶性セルロースを含む共処理賦形剤を含む処方物の再成形性を比較したグラフである。
【図5】ビタミンC、ステアリン酸マグネシウム、および賦形剤を含む処方物の再成形性に対して、共処理賦形剤中での無水の二塩基のリン酸カルシウムの比率が及ぼす影響を比較したグラフである。
【図6】ビタミンC、ステアリン酸マグネシウム、および賦形剤を含む処方物の再成形性に対して、種類の異なる共処理賦形剤中での無水の二塩基のリン酸カルシウムの比率が及ぼす影響を比較したグラフである。
【図7】ビタミンC、ステアリン酸マグネシウム、および共処理賦形剤を含む処方物の再成形性に対して、共処理賦形剤の製造に使用する微結晶性セルロースの種類を変えたときの影響を示すグラフである。
【図8】ビタミンC、ステアリン酸マグネシウム、および無水の二塩基のリン酸カルシウムと微結晶性セルロースを用いて製造した共処理賦形剤を含む処方物の再成形性に対して、微結晶性セルロースの粒径が及ぼす影響を示すグラフである。
【図9】ビタミンC、ステアリン酸マグネシウム、および二塩基のリン酸カルシウムと微結晶性セルロースを用いて製造した共処理賦形剤を含む処方物の再成形性に対して、等級の異なる二塩基のリン酸カルシウムが及ぼす影響を示すグラフである。
【図10】ビタミンC、ステアリン酸マグネシウム、および二塩基のリン酸カルシウムと微結晶性セルロースを用いて製造した共処理賦形剤を含む処方物の再成形性に対して、二塩基のリン酸カルシウムの粒径が及ぼす影響を示すグラフである。
【図11】粒子製品を用いて製造された顆粒の再成形性能に対して、本発明に係る粒子製品の粒径が及ぼす影響を示すグラフである。
【図12】粒子製品を用いて製造された細粒の再成形性能に対して、本発明に係る粒子製品の粒径が及ぼす影響を示すグラフである。
【図13】本発明に係る共処理粒子製品で製造された顆粒の再成形性能において、ロット間再現性を示すグラフである。
【図14】微結晶性セルロースと二塩基のリン酸カルシウムからなる対応する物理混合物を用いて製造された顆粒の再成形性能と、本発明に係る共処理粒子製品を用いて製造された顆粒の再成形性能を比較したグラフである。
【図15】微結晶性セルロースと二塩基のリン酸カルシウムからなる対応する物理混合物を用いて製造された顆粒の再成形性能と、本発明に係る共処理粒子製品を用いて製造された顆粒の再成形性能を比較したグラフである。
【図16】種々の賦形剤を用いて製造された顆粒の再成形性能を比較したグラフである。
【図17】崩壊剤を有する場合と有さない場合の両方について、本発明に係る共処理粒子製品を用いて製造された顆粒処方物の再成形性を示すグラフである。
【図18】種々の賦形剤を用いて製造された顆粒の再成形性能を比較したグラフである。
【図19】種々の賦形剤を用いて製造された顆粒の再成形性能を比較したグラフである。
【図20】種々の賦形剤を用いて製造された顆粒の再成形性能を比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
全ての図面は、実施例の項において、より詳細に説明される。
【0022】
本発明の粒子製品は、噴霧乾燥された物質であると好ましい。該粒子製品の粒径は、実質的に全ての粒子の粒径が60番の篩(250μm)よりも小さく、好ましくは、メジアン粒径が20μmから150μmの範囲にあるようにする必要がある。
【0023】
粒子製品は、微結晶性セルロースとリン酸カルシウムが十分に分散された水性スラリーを形成して製造されると都合がよく、両者は、粒子形態で存在する。本発明の一態様では、各成分の量は、粒子製品に対する微結晶性セルロース:リン酸カルシウムの成分比が、(重量基準で)85:15〜55:45の範囲となるように選ばれる。水性スラリーから水分を除去して水性スラリーが乾燥され、本発明の粒子製品が得られる。
【0024】
2種の成分が十分に分散された水性スラリーは、固形分を10重量%以上40重量%以下まで相対的に濃縮したスラリーが得られる量で、微結晶性セルロースとリン酸カルシウムを水性媒体中に導入して形成されると好ましい。成分を添加する順番は、特に重要ではないと考えられている。スラリーは、液状(非ペースト状)であり、流動自在であり、比較的粘度が低いのが好ましい。本発明の種々の実施形態において、スラリーの粘度は、約40000cp未満、約10000cp未満、または約5000cp未満である。水性スラリーが噴霧乾燥によって乾燥されて、粒子製品が得られると好ましい。
【0025】
本発明の粒子製品には、2種の必須の成分、つまり、微結晶性セルロースとリン酸カルシウムが含まれる。2種の成分は、製品中に、微結晶性セルロース:リン酸カルシウムの重量比が、約90:10〜約50:50、または、約85:15〜約55:45、または、約80:20〜約60:40で含まれると好ましいが、成分、粒径などを特別に選べば、他の比率であっても満足な性能を得ることができる。
【0026】
本発明の一態様では、微結晶性セルロースとリン酸カルシウムは、粒子製品の要素に過ぎない。もっとも、1または複数種の他の成分が、製造時に、粒子製品に含まれてもよい。これらは、通常、比較的少量で、つまり、粒子製品の総重量に対して、30%未満、好ましくは、20%未満の値を示すように存在する。特に、乾燥ステップの間に、共処理工程を促進するために、または、医薬品賦形剤として使用したときに、粒子製品に対する特性を高めるために、このような添加剤を含むことができる。これらの範疇にある添加剤の例は、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドンのような水溶性ゴムなどのバインダ、例えば、パルミチン酸やステアリン酸のような長鎖脂肪酸のエステルまたはそれらの塩などの潤滑剤、および架橋カルボキシメチルセルロース、スターチのような崩壊剤である。本発明の一実施形態では、粒子製品には、メチルセルロースのような水溶性バインダが約5〜約15重量%含まれる。
【0027】
本発明の粒子製品には、微結晶性セルロース粒子やリン酸カルシウム粒子からなる対応する乾燥混合物では示されない、望ましい性能の属性がある。本発明に係る共処理工程の間に生じるメカニズムは、十分に理解されていないが、該メカニズムによって、粒子製品が得られると思われる。該粒子製品中において、2種の必須の成分は、互いに密接な関係を有する。微結晶性セルロースとリン酸カルシウムの、この密接な関係または混合物は、これらの材料の単なる乾燥混合物では得ることができないし、ペーストのように湿式混合しても得ることができない。
【0028】
2種の成分の密接な関係は、微結晶性セルロースとリン酸カルシウムの両方を含む凝集粒子の外観に現れる。凝集粒子の外観は、スラリーの乾燥後に生じる。リン酸カルシウム粒子の少なくとも一部は、微結晶性セルロース粒子の細孔内に埋め込むことができると考えられている。概して、微結晶性セルロースのメジアン粒径が、リン酸カルシウムのメジアン粒径よりも大きいと望ましい。例えば、特定の実施形態では、微結晶性セルロースのメジアン粒径は、リン酸カルシウムのメジアン粒径よりも少なくとも2、3、4または5倍大きい。
【0029】
この粒子製品を製造できるプロセスに関して、粒子製品の種々の特性、例えば、粒径、含水量、嵩密度は、以下に詳述される。これらの物理的特性は、微結晶性セルロースとリン酸カルシウムを共処理する方法に、大いに依存する。その理由は、共処理工程の乾燥ステップで採用する条件が、一般に、重要であると考えられるからである。噴霧乾燥が、乾燥ステップを実行するのに好適な方法であるのは、上記の理由による。
【0030】
簡単に言えば、本発明の粒子製品を製造するプロセスには、微結晶性セルロースとリン酸カルシウムが十分に分散された水性スラリーを形成することが含まれ、スラリー中において、両材料は、固形粒子として存在する。2種の成分の相対的な量は、取り出された共処理製品中において特定の望ましい重量比が得られるように、スラリー中で調整される。粒子製品中での2種の成分の重量比は、前駆物質が十分に分散されたスラリー中での2種の成分の重量比に密接に対応するので、この比率の調整は、比較的簡単である。
【0031】
次に、該プロセスには、水性スラリーから水分を除去して水性スラリーを乾燥し、粒子製品を得ることが含まれる。先に述べたように、噴霧乾燥が、好適な乾燥法であるが、他の乾燥法、例えば、フラッシュ乾燥、流動層乾燥、リング乾燥、ミクロン乾燥、棚段乾燥、真空乾燥、オーブン乾燥、高周波乾燥、およびマイクロ波乾燥も、この共処理ステップでの使用に適している。
【0032】
十分に分散されたスラリーを形成するのに用いられる2種の成分は、微結晶性セルロースとリン酸カルシウムであるが、必要に応じて、1または複数種の追加の成分を使用してもよい。これらの成分の供給源と性質は、重要だとは考えられない。一実施形態では、微結晶性セルロースは、従来の微結晶性セルロースの製造プロセスで得られる湿潤ケーキ(wet cake)である。湿潤ケーキは、未だ乾燥されていない材料であり、「未乾燥(never dried)」または水和セルロースと呼ばれる場合がある。また、微結晶性セルロース源は、乾燥済の従来の製品であってもよい。
【0033】
水性スラリー中で用いられる微結晶性セルロースの粒径は、一般に、従来の微結晶性セルロース製品中、または前駆体である湿潤ケーキ、つまり、未乾燥製品中で見られる大きさである。粒径は、全ての粒子の大きさが、実質的に60番の篩(250μm)よりも小さいのが望ましい。一実施形態では、微結晶性セルロースのメジアン粒径は、約20μm〜約250μmである。
【0034】
微粒子の大きさに関して要求される特定の大きさは、必要に応じて、望ましくない粗粒材料を篩い分けすることによって、あるいは、従来の湿潤状態または乾燥状態での磨耗工程によって、満たすことができる。このような磨耗は、水性スラリー中において、微結晶性セルロースを用いて実現されてもよい。これらのサイズ低減工程は、通常、現在市販されている微結晶性セルロースを用いる場合は必要ない。
【0035】
本発明で用いられるリン酸カルシウムは、当該技術分野、特に、医薬品賦形剤分野で公知の、リンを含む酸(例えば、リン酸)の種々のカルシウム塩の何れであってもよい。一塩基、二塩基および三塩基のリン酸カルシウムが、無水または含水形態で用いられてもよい。含水と無水の二塩基のリン酸カルシウム(例えば、二塩基のリン酸カルシウム二水和物と無水の二塩基のリン酸カルシウム)が特に好ましい。二塩基のリン酸カルシウムは、リン酸二カルシウム、リン酸一水素カルシウム、オルトリン酸二カルシウム、または第二リン酸カルシウムと呼ばれる場合がある。米国薬局方または欧州薬局方グレードのリン酸カルシウムを使用するのも好ましい。例えば、JRS Pharma GmbH & Co.KGから商標名ECOMPRESS(登録商標)で販売された二塩基のリン酸カルシウムやBudenheimから商標名Di−Cafos(登録商標)で販売された二塩基のリン酸カルシウムは、本発明で使用するのに適している。
【0036】
リン酸カルシウムの大きさは、実質的に全ての粒子の大きさが200μm未満、好ましくは、50μm未満であると好ましい。リン酸カルシウムのメジアン粒径は、100μm未満であると望ましく、50μm未満または20μm未満であるとより好ましい。一実施形態では、リン酸カルシウムのメジアン粒径は、約5〜約10μm、例えば、約7μmである。
【0037】
微結晶性セルロースとリン酸カルシウムの両者は、実質的に水に不溶であることを知っておく必要がある。したがって、水性スラリーに十分に分散して存在する材料の粒径は、スラリーに導入される2種の成分の大きさに直接関係する。つまり、(微結晶セルロースが磨耗する可能性はあるが、)2種の成分のいずれも水性スラリー中にほとんど溶解しない。
【0038】
これら2種の成分の水性スラリーは、数種の方法の内のいずれかで調製できる。2種の固体成分は、両方が単一の水性媒体に導入されてもよいし、または、それぞれが、後に組み合わされる別個の水性媒体に別々に導入されてもよい。あるいは、他の類似の方法が考案されてもよい。
【0039】
ある方法には、微結晶セルロースだけを水性溶液中、好ましくは水中に分散することが含まれる。この水性混合物での典型的な固体濃度では、微結晶性セルロースは5〜25重量%存在しているが、微結晶性セルロースは10〜20重量%存在しているのが好ましい。
【0040】
微結晶性セルロースが水性スラリー中に十分に分散されると、次に、適当量のリン酸カルシウムを、乾燥形態で攪拌しながら添加できる。添加されるリン酸カルシウムの正確な量は、スラリーに含まれるリン酸カルシウム含量と共処理製品で望まれる2種の成分の比率による。希釈されたスラリーが望ましければ、水を添加してもよいが、これは通常必要ない。そのように望まれる場合、スラリーのpHは、酸または塩基などの1または複数種のpH調整剤を添加して調整できる。典型的には、水性スラリーのpHは、約3〜約9の範囲内にある。
【0041】
2種の成分を含む水性スラリーを十分に混合して、該成分を、水性媒体全体に確実に均一に分散する必要がある。このため、水性スラリーを乾燥して製造された粒子製品において、成分比率は一貫して均一になる必要がある。
【0042】
水性スラリーに含まれる固体の総含有量は、スラリーの総重量を基準にして、少なくとも10重量%であると好ましく、少なくとも20重量%であるとより好ましい。乾燥ステップ中に除去される必要がある水分の量は、乾燥に伴って減少するので、固体の含有レベルが高いのが望ましい。もっとも、固体の含有量は、スラリーが液体としての性質を失って、容易に攪拌できなくなるようなレベルよりも低いレベルに維持されるのが望ましい。
【0043】
また、水性スラリー中の固体の含有量の上限は、典型的には、使用される乾燥機器の運転制約によって決まる。好適な噴霧乾燥法の場合、固体の含有量が20〜30重量%であるのが、簡単に処理できる水性スラリーの代表例である。
【0044】
水性スラリーの温度は重要ではない。約10〜約25℃の周囲温度が望ましい。高いスラリー温度を使用することもでき、この温度は、特定の種類の乾燥装置の場合に望ましい場合がある。
【0045】
十分に分散された水性スラリーは、スラリーを噴霧乾燥して乾燥されると好ましい。従来の乾燥装置を用いることができ、噴霧乾燥の分野で実施される運転手順に類似した運転手順を本プロセスの噴霧乾燥ステップに適用できる。乾燥機(乾燥ガス)出口温度は、通常、共処理製品に残存する水分レベルを制御するために用いられる。
【0046】
水分レベルは、一般に、粒子、つまり、乾燥製品中において、約5重量%以下であるのが望ましいが、含水量は、当然5重量%よりも高くできる。含水量は、乾燥条件を変えることにより簡単に調節できる。
【0047】
(好適な)噴霧乾燥プロセスでは、微結晶性セルロースとリン酸カルシウムの水性スラリーは、液滴に霧化され、液滴を蒸発し乾燥するのに十分な量の熱風で集められる。微結晶セルロースとリン酸カルシウムが分散されたスラリーは、吸い上げることができ、霧化できるのが好ましい。前記スラリーは、暖かい濾過空気の流れの中に噴霧される。該濾過空気の流れによって、蒸発用の熱が供給され、乾燥製品が収集装置まで運搬される。次に、空気は、除去された水分とともに排出される。本発明の一実施形態では、得られた噴霧乾燥粉末粒子は、ほぼ球形状を有し、比較的均一な大きさを有するので、流動性が良好である。共処理製品には、互いに密接な関係にある、微結晶性セルロースとリン酸カルシウム粒子が含まれる。
【0048】
噴霧乾燥手段では、乾燥機の出口温度は、通常、約40〜約100℃の範囲にある。該乾燥機の入口温度は、さらに高く、通常、約90〜約300℃の範囲にある。
【0049】
乾燥運転から取り出される共処理製品は、流動自在な(free−flowing)固体粒子である。該固体粒子の外観は、典型的には、顆粒状の白色粉末である。製品の粒径は、水性スラリー中の微結晶性セルロースとリン酸カルシウムの粒子の大きさと、スラリーから水を除去するのに用いる乾燥条件で表される関数として表される。粒径は、例えば、液滴の直径、温度、生産速度、スラリー中の固体の割合、噴霧器の種類、噴霧器の速度、空気の流量、およびチャンバの大きさなどの噴霧乾燥機の運転条件の影響を受けてもよい。さらに、粒子サイズと粒度分布を、必要に応じて変えたり、または選択するために、乾燥した共処理製品を分別または機械を用いて変更することも、本発明の範囲内である。
【0050】
本発明の一実施形態の粒子製品は、実質的に、全ての粒子が、60番の篩(250μm)よりも小さい大きさを有するような粒子サイズを有する。一実施形態では、粒子材料のメジアン粒径は、約20μm〜約200μmの範囲にあり、別の実施形態では、約30μm〜約50μmの範囲にある。本願明細書で用いられる「メジアン粒径」は、Malvern Mastersizer 2000を用いて、レーザー回折によって測定されるD50の値を意味している。本願明細書に開示された種々の粒子材料のメジアン粒径も、Malvern Mastersizer 2000を用いて、レーザー回折によって測定できる。粒子製品の粗填嵩密度(loose bulk density)は、0.60g/ccより小さく、0.20g/ccより大きい。粒子製品のpHは、一般に、約3〜約12であり、あるいは別の実施形態では、約5〜約8である。
【0051】
本発明の粒子製品は、ローラー圧縮、顆粒化、および/または打錠化を含むプロセスにおいて、賦形剤またはバインダとして特に有用である。
【0052】
例えば、粒子材料は、以下のプロセスで用いることができる。
1)粒子製品は、API、フィラー、および崩壊剤と混合される。
2)圧縮ローラー上での固着を低減する必要があれば、ステップ1で得られた混合物は、さらに、潤滑剤と混合される。
3)ローラー圧縮機を用いて、混合物を圧縮する。
4)ローラー圧縮で得られたリボンを顆粒化および/または粉砕する。
5)(必要に応じて、あるいは所望により、顆粒の粒子サイズを調節および/または修正するために、)ステップ4で得られた顆粒を篩い分けする。
6)篩い分けされた顆粒を再圧縮し、錠剤に成形する。
【0053】
安定性を改善したり、または錠剤の崩壊時間や溶解速度またはプロフィールを変える必要があれば、ステップ6の前に、顆粒外(extragranular)崩壊剤および/または潤滑剤を、篩い分けされた顆粒と混合してもよい。もっとも、本発明の少なくともある実施形態では、乾式顆粒化プロセスの生産能力(運転コスト)は、本願明細書に記載された粒子製品以外に、バインダとフィラーが用いられる従来のローラー圧縮プロセスにおいて、一般に必要であると考えられる、そのような追加のステップを省くことによって改善される。
【0054】
(当該技術分野において「ロール圧縮」としても知られる)ローラー圧縮は、錠剤形成用の乾式の圧縮/顆粒化プロセスであり、錠剤処方物が、錠剤形成に必要な流動特性または十分に高いバルク密度を有さない場合に使用される。ローラー圧縮機では、錠剤処方物を圧縮し細密化し粉末を顆粒中に結合する圧力が使用される。ローラー圧縮で処理される有効成分には、例えば、アセチルサリチル酸(アスピリン)、アセトアミノフェン、アモキシシリン、イブプロフェン、ペニシリン、ラニチジン、およびストレプトマイシンが含まれる。
【0055】
本発明の共処理粒子製品は、顆粒化プロセスで使用するのに特に適している。顆粒化は、元の粒子がなお確認できるように、小型の粒子を凝集して大きな集合体にする、大きさを拡大するプロセスである。均一に混合された粉末(顆粒処方物)は、逆回転ローラー間で圧縮され、圧縮された材料のリボンが形成される。該リボンは、次に、顆粒に粉砕される。そのため、共処理粒子製品は、後に顆粒に転換される顆粒処方物中において、成分として用いることができる。ローラー圧縮機の概略図は、米国特許出願公開第2008/0213360号明細書に図示され、全ての目的のために、その全体が参照されて、ここに包含される。ローラー圧縮機は、ローラー部、プレスフレーム、油圧システム、およびフィードシステムからなる。フィードシステムは、ローラーの直前に配置され、該フィードシステムによって、ローラーに対する顆粒処方物の流速が決められる。フィードシステムは、圧縮ローラー間に顆粒処方物を押し出す1または複数個の送りねじからなる。顆粒処方物は、2個の圧縮ローラーを通過するときに圧縮される。顆粒処方物の体積は、最大圧を示す領域を通過するときに減少される。最大圧を示す領域において、顆粒処方物は、シートまたはリボンとして知られる固体状の圧縮材料に成形される。圧縮圧は、油圧システムによって得られる。該油圧システムは、所望の圧縮圧を生じるように調節できる。油圧システムは、ローラーの一つに作用する。米国特許出願公開第2008/0213360号明細書の図3に示されたように、ローラー圧縮プロセスは、圧縮、粉砕、篩い分け、および過大な粒剤(「超過粒剤」)と過小な粒剤(「微細粒剤」)をプロセスに戻すリサイクルからなる連続プロセスであってもよい。本発明の利点の一つは、本発明の粒子製品が賦形剤として使用される場合に、このようなプロセス中に生成する微細粒剤の量を低減することである。
【0056】
ローラーの種々の構成は、当該技術分野において公知であり、例えば、A.M.Falzone、博士論文、Purdue University,1990(U.M.I.,Ann Arbor,Mich.,Order Number 9313940)に開示されている。ローラー圧縮装置は、アメリカ合州国のイリノイ州のエルムハーストにあるFitzpartrick Companyから、CHILSONATOR(登録商標)ローラー圧縮機として市販されている。この装置は、Fitzpatrick Company Europeによって刊行された”Introduction to Roll Compaction and the Fitpatrick CHILSONATOR”に開示されている。
【0057】
本発明の粒子製品は、錠剤の成分として使用するにも適している。該錠剤の成分は、例えば、粒子製品を、APIなどの1または複数種の追加の成分と組み合わせて物理的に乾式混合して直接製造できるし、あるいは本願明細書で先述したように調製された(1または複数種の追加の成分と組み合わされる可能性もある)顆粒から直接製造することもできる。打錠は、錠剤形成の分野における当業者に公知である。錠剤は、打錠機上にある錠剤処方物に圧力を加えて形成される。打錠機には、底部からダイに嵌合する下部ポンチと、下部ポンチに対応する形状と寸法を有する上部ポンチが含まれる。上部ポンチは、錠剤処方物がダイキャビティを満たした後に、頂部からダイキャビティに入る。錠剤は、ダイ中において、下部および上部ポンチで錠剤処方物に圧力を加えて形成される。ホッパーからダイまで連続的に流れる錠剤処方物で、ダイを確実に均一に満たすために、錠剤処方物が、自由にダイ中に流入できることが重要である。圧縮後のダイから錠剤を簡単に取り出せ、ポンチ面への固着を防ぐために、ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤が加えられてもよい。打錠は、A.GENNARO,Remington:The Science and Practice of Pharmacy,20th Ed.,Lippincott Williams & Wilkins,Baltimore,Md.,2000などの薬学の教本に詳細に開示されている。
【0058】
一態様では、本発明によれば、本発明の粒子製品、1または複数種の有効成分、および、必要に応じて、1または複数種の薬学的に許容可能な賦形剤を含む錠剤のような固形剤が提供される。該錠剤は、従来の薬学的な配合技術に従って、1または複数の有効成分と少なくとも1種の賦形剤とを混合して、錠剤処方物から製造できる。直接的な圧縮によって、固形剤または錠剤を製造するために、錠剤処方物は、必須の物理的特性を有する必要がある。特に、錠剤処方物は、流動自在(free flowing)である必要があり、潤滑性を有する必要があり、重要なこととして、圧縮後に固形剤の形態を維持し、出荷、コーティング、および梱包などの以後の操作に対して十分に堅牢であることを保証するような成形性を有する必要がある。本発明の粒子製品によれば、錠剤処方物は、特に、成形性と再成形性について、予想外に改善された特性を有することが分かった。
【0059】
錠剤は、打錠機上で、錠剤処方物に圧力を加えて形成できる。打錠機には、底部からダイに嵌合する下部ポンチと、下部ポンチに対応する形状と寸法を有する上部ポンチが含まれる。上部ポンチは、錠剤処方物がダイキャビティを満たした後に、頂部からダイキャビティに入る。錠剤は、下部および上部ポンチに圧力を加えて形成される。ダイが均一に満たされ、錠剤処方物の供給源、例えば、フィーダーホッパーから、材料を連続的に確実に移動させるために、錠剤処方物が自由にダイ中に流入できることが重要である。圧縮された材料をポンチ面から簡単に取り出す必要があるので、錠剤処方物の潤滑性は、固形剤を製造するときに重要である。また、錠剤は、圧縮後のダイからきれいに取り出される必要がある。
【0060】
有効成分は、これらの性質を常に有する訳ではないので、これらの望ましい性質を錠剤処方物に付与するために、錠剤を処方する方法が開発されてきた。典型的には、錠剤処方物には、所望の流動自在性(free flowing)、潤滑性および結合特性を錠剤処方物に付与する1または複数種の添加剤または賦形剤が含まれる。
【0061】
乾燥した顆粒処方物の賦形剤は、顆粒を錠剤に圧縮できる良好な再成形性と希釈能を有する必要がある。賦形剤によって、有効成分の化学的および/または物理的な分解が加速されるべきではなく、生物学的利用能が妨げられるべきではない。賦形剤は、生理学的に不活性であるべきであり、錠剤の崩壊または有効成分の分解を意図せずに妨げるべきではない。賦形剤は、潤滑剤としての感度が低い必要があり、賦形剤によって、有効成分の含量は、許容できる程度に確実に均一になる必要がある。典型的な賦形剤は、バインダ、崩壊剤、滑剤、フィラー、希釈剤、着色剤、香料、安定化剤、および潤滑剤からなる群の中から選ばれる。賦形剤の選択と錠剤処方物の組成は、有効成分、処方物中での有効成分の量、錠剤の種類、錠剤処方物と得られた錠剤の両方にとって望ましい特性、および使用される製造プロセスによって決まる。これらには、迅速放出型(prompt release)、即時放出型(immediate release)、および放出制御型(modified release)が含まれる。迅速放出型は、薬が極短時間で溶解し、即時放出型と放出制御型には、飲み込まれる経口投与型の錠剤の大部分が含まれる。
【0062】
薬学的に許容できる賦形剤は、当該技術分野の当業者にとって公知であり、例えば、Staniforthの米国特許第6936277号明細書とLeeの米国特許第6936628号明細書に開示されている。その開示内容は、全ての目的のために、その全体が参照されてここに包含される。微結晶性セルロースを添加すると、錠剤の成形性が改善される。打錠操作をより有効にするために、希釈剤、バインダ、滑剤、および潤滑剤などの賦形剤が、加工助剤として添加される。さらに別の種類の賦形剤によれば、錠剤の崩壊速度が増加または低減され、(例えば、甘味料の場合)錠剤の味が改善され、あるいは、錠剤に色と風味が付与される。
【0063】
錠剤の製造中にポンチに処方物が固着するのを防ぐために、1または複数種の潤滑剤が、本発明の粒子製品を含む錠剤処方物に加えられてもよい。好適な潤滑剤には、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、フマル酸ステアリルナトリウム、水素化された植物油などの脂肪酸、脂肪酸塩、および脂肪酸エステルが含まれる。潤滑剤は、典型的には、処方物に対して、約0.1重量%〜約3.0重量%、または約0.5重量%〜1重量%含まれる。ポンチ面とダイの壁に錠剤処方物が固着するのを防ぐために、抗粘着剤(antiadherent)が用いられてもよい。固着が問題となる場合、抗粘着剤は、ステアリン酸マグネシウムと組み合わせて用いられる。一般的に使用される抗粘着剤は、コーンスターチとタルクである。錠剤を実用的な大きさにすることを目的として、打錠する材料のバルク重量を増すために、本発明の粒子製品に加えて、希釈剤、フィラー、または充填剤が加えられてもよい。これは、有効成分の投与量が比較的少ない場合に、必要となることが多い。これらに限定される訳ではないが、この目的を達成するために好適なフィラーには、ラクトース、二塩基のリン酸カルシウム、リン酸カルシウム、粉末状セルロース、デキストレート、イソマルト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、でんぷん、アルファ化でんぷん、およびこれらの組み合わせが含まれる。ソルビトール、マンニトール、およびキシリトールなどの糖アルコールが、特に、咀嚼可能な錠剤処方物において、フィラーとして使用されてもよい。ソルビトールとマンニトールの間の最も顕著な違いは、吸湿性と溶解性である。ソルビトールの吸湿性は、相対湿度で65%よりも高いが、マンニトールは非吸湿性である。ソルビトールの水溶性は、マンニトールの水溶性よりも高い。
【0064】
粒子材料の接着性をさらに変えるために、本発明の粒子材料に加えて、1または複数種のバインダが加えられてもよい。好適な追加のバインダには、でんぷん、微結晶性セルロース、およびスクロース、グルコース、デキストロース、およびラクトースなどの砂糖が含まれる。有効成分が分解する速度を低下させるために、錠剤処方物中に、1または複数種の安定化剤が含まれてもよい。好適な安定化剤には、アスコルビン酸などの抗酸化剤が含まれる。さらに、錠剤が、(消化管などの)使用される環境において、許容できる分解速度を有することを保証するために、1または複数種の崩壊剤が、錠剤処方物に含まれてもよい。崩壊剤によって、錠剤は崩壊され、有効成分と賦形剤を含む顆粒になる。クロスカルメロースナトリウム、テンプングリコール酸ナトリウム、またはクロスポビドンなどの超崩壊剤(super−disintegrant)が使用されてもよい。
【0065】
流動性を改善するために、1または複数種の滑剤が、錠剤処方物で使用されてもよい。粒子の形状と大きさのために、滑剤は、低濃度で流動性を改善できる。滑剤は、錠剤処方物の最終的な形態である乾燥形態中に混合されてもよい。好適な滑剤には、例えば、ステアリン酸のアルカリ金属塩、(商標名CAB−O−SIL(登録商標)、SYLOID(登録商標)、およびAEROSIL(登録商標)として販売される材料を含む)コロイド状の二酸化シリコン、およびタルクが含まれる。
【0066】
着色剤(つまり、色素および顔料)、天然または人口甘味料、および香料によって、錠剤に所望の特性が付与されてもよい。表面活性剤または界面活性剤とも呼ばれる、湿潤剤が存在してもよい。錠剤は、被膜されてもよい。
【0067】
ポリソルベート、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、脂肪酸エステル、またはポリエチレングリコールエステル塩などの界面活性剤が、処方物中に存在してもよい。APIの放出特性を変えるために、HPMC、カラギーナン、またはアルギネートなどの1または複数種のマトリックス形成剤が、必要に応じて含まれてもよい。
【0068】
本発明に係る錠剤は、何らかの所望の形状と大きさを有してもよい。例えば、球状の錠剤の大きさは、約50mg〜500mgであり、カプセル形状の錠剤は、約200mg〜1200mgの大きさである。もっとも、本発明に従って調製された他の処方物は、他の用途または部位に好適な大きさと形状を有する。他の部位とは他の体腔、例えば、歯周ポケット、手術痕、および膣(vaginally)などのことである。特定の用途、このような咀嚼剤、制酸剤、膣剤、および移植片錠の場合は、錠剤は大型であってもよい。
【0069】
組成物は、固形剤に調製するエンロービングプロセスで使用するのに適している。例えば、固形剤は、本発明に係る錠剤処方物または顆粒処方物を軽く圧縮し、圧縮粒子を形成し、圧縮粒子をフィルム状にエンローブ処理して調製される。エンローブ処理された固形剤を形成する方法と装置は、国際公開第03/096963号、国際公開第2005/030115号、国際公開第2005/030116号、国際公開第2005/030379号、および国際公開第2006/032828号に開示されている。その開示内容の全ては、全ての目的のために、その全体が参照されてここに包含される。前記装置と方法は、例えば、本発明の粒子製品を用いて調製された固形剤に使用されるのに適していてもよい。
【0070】
本発明のMCC/リン酸カルシウムを含む材料は、錠剤のような固形剤においてバインダとして使用されてもよい。固形剤には、1または複数種の有効成分と、必要に応じて、1または複数種の他の賦形剤が含まれる。該固形剤は、直接圧縮によって、または圧縮、顆粒化、および再圧縮を含むプロセスによって調製された処方物用のバインダとして、特に有用である。主に、医薬品と獣医学用途で有用であるが、固形剤は、農業、食品、化粧品、および他の産業用途などの他の分野で使用されてもよい。
【実施例】
【0071】
(用語説明)
・無水EMCOMPRESS(登録商標):直打グレードの二塩基のリン酸カルシウム無水物(JRS Pharma、ドイツ)
・AVICEL(登録商標) HFE−102:100μmの共処理MCC/マンニトール(FMC、フィラデルフィア)
・AVICEL(登録商標) PH−105:20μmの微結晶性セルロース(FMC、ペンシルぺニア州フィラデルフィア)
・AVICEL(登録商標) PH−101:50μmの微結晶性セルロース(FMC、ペンシルぺニア州フィラデルフィア)
・AVICEL(登録商標) PH−102:100μmの微結晶性セルロース(FMC、ペンシルぺニア州フィラデルフィア)
・AVICEL(登録商標) PH−200:200μmの微結晶性セルロース(FMC、ペンシルぺニア州フィラデルフィア)
・Di−Cafos(登録商標) C92−04:7μmの二塩基のリン酸カルシウム無水物の微粉(ブデンハイム、ドイツ)
・Di−Cafos(登録商標) C92−05:7μmの二塩基のリン酸カルシウム無水物(ブデンハイム、ドイツ)
・Di−Cafos(登録商標) C92−12:80μmの二塩基のリン酸カルシウム無水物の粗粉(ブデンハイム、ドイツ)
・Di−Cafos(登録商標) C92−01:14μmの二塩基のリン酸カルシウム二水和物(ブデンハイム、ドイツ)
・EMCOMPRESS(登録商標)プレミアム:直打グレードの二塩基のリン酸カルシウム二水和物(JRS Pharma、ドイツ)
・SuperTab(登録商標) 11SD:直打グレードのラクトース一水和物(DMV Fonterra)
・SuperTab(登録商標) 21AN:直打グレードのラクトース無水物(DMV Fonterra)
・ステアリン酸マグネシウム:ベジタブル2257(Tyco Mallinckrodt、アメリカ合衆国ミズーリ州セントルイス)
・MicroceLac(登録商標) 100:共処理MCC/ラクトース(重量比25:75)(Meggle Pharma、ドイツのウォーターバーグ)
・ビタミンC:アスコルビン酸(結晶)(Jiangsu Jiangshan Pharmaceutical Co.,Ltd)
【0072】
特に明記しない限り、本願明細書で表記された全ての百分率または比率は、重量を基準とした百分率または比率として記載される。
【0073】
(調製とその方法)
ロール圧縮されたリボンと顆粒を、以下のように調製し、試験した。モデル薬剤として、バインダ賦形剤6.95kgとビタミンC3kgとの予備混合物(preblend)を作成し、Pharmatech 50 Litre V Container中で、毎分28回転で回転させて10分間混合して、ビタミンCを30重量%含む処方物を調製した。次に、予備混合物に、ステアリン酸マグネシウム50グラムを潤滑剤として添加し、28rpmで2分間混合した。総量で10kgの混合物が吐出された。同じ成分を用いて、同じステップを繰り返して、第2の混合物10kgを生成した。次に、第2の混合物を第1の混合物と同じ袋に吐出し、20kgにした。処方物は、(例えば、錠剤を製造する)直接圧縮または(錠剤または他の固形剤を形成するために再圧縮できる)顆粒の形成に使用できる。
【0074】
処方物をロール圧縮した後、パイロットスケールのフィットパトリック(Fitzpatrick Company Europe,Entrepotstraat 8,B−9100 セントニクラス,ベルギー)ChilsonatorモデルIR−520/D6Aで粉砕して、顆粒を形成した。ローラー圧縮機は、ナール(溝付)ロールに取り付けられる。供給オーガまたは水平スクリューは、12rpmで回転され、充填オーガまたは垂直スクリューは、200rpmで回転された。これらのスクリュー速度は、実験中、一定に保たれた。圧縮圧は、20、30、または40バールに設定され、顆粒処方物は、リボンに圧縮された。圧縮ロール間の隙間または距離は、粉末/圧縮物に加えられる圧縮圧と圧縮される顆粒処方物に応じて、1.2〜1.8ミリメーターの範囲にされた。使用された粉砕機は、(500rpmで回転する)バーローター型であり、1.0ミリメーターの開口を有する、やすり網(rasping screen)と組み合わせて用いられた。各圧縮圧ごとに、約2kgの顆粒を集めて、各顆粒処方物を評価した。次に、30バールで圧縮されたリボンから得られた顆粒は、13ミリメートルの丸型をなす平坦なポンチを備えるESH Compaction Simulator上で、圧縮されて錠剤に成形された。上部ポンチだけで圧縮力を加えて、下部ポンチは、圧縮中、固定した。圧縮シミュレータは、上部ポンチの平均圧縮(垂直)速度が毎秒300ミリメートルになるように設定された。この速度は、約6ミリ秒の滞在時間に相当する。滞在時間は、最大の力の90%以上が加えられている時間として定義される。
【0075】
(実施例1)
共処理型の微結晶性セルロース/二塩基のリン酸カルシウム組成物は、微結晶性セルロースであるAVICEL(登録商標)PH−101と二塩基のリン酸カルシウム無水物であるDi−Cafos(登録商標)C92−05を重量比65:35で含む水性スラリーを混合し、該スラリーを噴霧乾燥して調製された。乾燥した後の凝集した粒子製品は、110℃での乾燥減量(LOD)が3.1%であり、二塩基のリン酸カルシウム(DCP)の分析値は33.7%であり、嵩密度(LBD)は0.44グラム/cm2であり、15重量%が、200メッシュの篩上に残存する篩上画分であった。
【0076】
共処理型の微結晶性セルロース組成物は、(「MCCウェットケーキ」として公知の)未乾燥の微結晶性セルロースと二塩基のリン酸カルシウム無水物であるDi−Cafos(登録商標)C92−05を含む水性スラリーを混合し、該スラリーを噴霧乾燥して同様に調製された。MMCウェットケーキから製造され、乾燥後に凝集した共処理粒子製品は、LODが2.9%であり、DCPの分析値が36.7%であり、嵩密度(LBD)が0.48グラム/cm2であり、20重量%が、200メッシュの篩上に残存する篩上画分であった。
【0077】
MCC:DCPが65:35である粒子製品と数種の比較対象となる賦形剤の機能は、69.5%のバインダ、30.0%のビタミンC、および0.5%のステアリン酸マグネシウム(潤滑剤)からなる処方物を用いて、直接圧縮とローラー圧縮の両方で形成された錠剤用のバインダ賦形剤として評価された。評価された比較対象となる賦形剤は、微結晶性セルロースであるAVICEL(登録商標)PH−102、50重量%の微結晶性セルロールであるAVICEL(登録商標)PH−102と50重量%の(直接圧縮グレードのラクトース一水和物である)SuperTab(登録商標)11SDとの物理混合物、および65重量%のAVICEL(登録商標)PH−102と35重量%の(直接圧縮グレードの二塩基のリン酸カルシウム二水和物である)Emcompress(登録商標)プレミアムとの物理混合物であった。
【0078】
直接圧縮中の5種の処方物の打錠性(成形性)を図1に示した。図1では、打錠圧に対して錠剤の引っ張り強度がプロットされている。MCC:DCPが65:35である共処理粒子製品の両方には、AVICEL(登録商標)PH−102とラクトースとの物理混合物またはAVICEL(登録商標)OH−102と二塩基のリン酸カルシウムとの物理混合物の何れと比べても、(同じ打錠圧において引っ張り強度が高くなるという)成形性の向上が見られる。AVICEL(登録商標)PH−102は、極めて塑性変形し易く、110MPaを下回る打錠圧において、高い成形性を示す。この圧力を上回ると、AVICEL(登録商標)PH−102を含む処方物の引っ張り強度は約2.5MPaで安定化する。打錠圧が、例えば、150MPaまで増加した場合、AVICEL(登録商標)PH−102処方物の引っ張り強度は、錠剤内に形成される層状組織などの欠陥のために、減少する可能性がある。比べてみると、MCC:DCPが65:35である共処理粒子製品は、打錠圧が低い場合、AVICEL(登録商標)PH−102よりも、やや成形性が低いが、試験された圧力の範囲に渡って、引っ張り強度のプラトーは観察されなかった。両者は、試験された最大の圧力(200〜225MPa)において、最大で約4.0MPaの引っ張り強度を有し、引っ張り強度の最大値は、AVICEL(登録商標)PH−102よりも高く、高い圧力でも欠陥が生じる傾向は認められなかった。
【0079】
共処理型のMCC:DCP(65:35)粒子製品の再成形性は、微結晶性セルロース単独または市販の物理混合物と比べて改善されている。これは、ローラー圧縮されたビタミンCを含む顆粒を打錠することによって説明された。ビタミンCを30%含む処方物において試験された賦形剤は、MCC:DCPが65:35である共処理粒子製品、微結晶性セルロースであるAVICEL(登録商標)PH−102、AVICEL(登録商標)PH−102とラクトースの物理混合物、およびAVICEL(登録商標)PH−102と二塩基性のリン酸カルシウム二水和物であるEMCOMPRESS(登録商標)プレミアムの物理混合物であった。ビタミンCを30%含む顆粒処方物は、異なる賦形剤を含み、(30バールでローラー圧縮してリボンを形成する)第1の圧縮ステップで圧縮され、粉砕されて顆粒にされた後、該顆粒を(打錠する)第2の圧縮ステップで圧縮した。その結果を、打錠圧に対して錠剤の引っ張り強度をプロットして、図2に示した。微結晶性セルロースと二塩基のリン酸カルシウムが65:35である共処理粒子製品によれば、再成形性が顕著に向上した。AVICEL(登録商標)PH−102、AVICEL(登録商標)PH−102とラクトース一水和物の混合比が50:50である物理混合物、またはAVICEL(登録商標)PH−102と二塩基のリン酸カルシウムの混合比が65:35である物理混合物を用いて調製された対応する顆粒から形成された錠剤の引っ張り強度と比べると、MCCとDCPを含む顆粒からなる錠剤の引っ張り強度は、各圧縮圧において高い。共処理型のMCC:DCP粒子製品(65:35)をローラー圧縮した顆粒を用いた錠剤の引っ張り強度は、2MPaに近い値を示した。これは、処方物が堅牢であることを示している。他の3種の顆粒処方物を用いた錠剤の引っ張り強度は、辛うじて1MPaを上回っていた。これは、弱く、脆く、かつ磨耗する典型的な錠剤を示している。共処理型のMCC:DCP粒子製品の性能は、AVICEL(登録商標)単独、あるいはAVICEL(登録商標)とラクトース一水和物または二塩基のリン酸カルシウムの何れかとの物理混合物よりも優れていた。
【0080】
物理混合物と比べた、共処理型の微結晶性セルロースと二塩基のリン酸カルシウムの粒子製品(65:35)の優れた再圧縮能は、図2に示した打錠圧に対する錠剤の引っ張り強度の直線回帰(「最良適合性」)によって特徴付けられる。引っ張り強度データの各組に対して図に示された直線回帰情報は、どの測定点が試験された各試料に関連するかを示す手掛かりとして、同じ次数で表示される。120MPaの打錠圧で種々の顆粒処方物から製造された錠剤の引っ張り強度の計算値が、図2で報告された各直線回帰に基づいて、図3に示される。比較対象となる賦形剤の物理混合物を含む顆粒処方物に比べて、共処理型のMCC:DCP粒子製品を含むビタミンCの顆粒処方物の再成形性は、約2倍大きい。微結晶性セルロースと二塩基のリン酸カルシウムを65:35で含む、新規な共処理粒子製品は、典型的な市販の賦形剤と比べて錠剤の堅牢性を高める、市販の賦形剤と比べて低い圧縮圧で同じ硬さを有する錠剤を得る、または医薬品有効成分または他の賦形剤のレベルにおいて、配合寛容度を高める、あるいは十分な引っ張り強度を有する小型の剤型を得るのに適している。
【0081】
(実施例2)
MCC:DCPの成分比率を変えたときの、微結晶性セルロースと二塩基のリン酸カルシウムの共処理粒子製品の再成形性は、69.5%の共処理粒子製品、30.0%のビタミンC、および0.5%のステアリン酸マグネシウムからなる顆粒処方物をローラー圧縮したリボンから得られた顆粒を打錠することによって評価された。
【0082】
共処理粒子製品は、微結晶性セルロースであるAVICEL(登録商標)PH−101と、10%、20%、22.5%、30%、および50%の二塩基のリン酸カルシウム無水物であるDi−Cafos(登録商標)C92−04を含む水性スラリーを噴霧乾燥して製造された。これらの乾燥済の共処理型のMCC:DCP組成物の特性は、表1に示される。
【0083】
【表1】
【0084】
共処理型のMCC:DCP粒子製品は、バインダとして69.5%の粒子製品、30.0%のビタミンC、および0.5%のステアリン酸マグネシウムを含む処方物として製造された。顆粒処方物は、それぞれ20、30、および40バールでローラー圧縮されてリボンにされた後に、粉砕して顆粒にされた。30バールでローラー圧縮されて形成されたリボンから得られた顆粒は、圧縮シミュレータ中で打錠された。打錠圧に対する引っ張り強度のデータは、各組成物に対する直線回帰の最良適合性とともに、図4に示される。図5には、組成物中の二塩基のリン酸カルシウムの百分率に対する、(図4の直線回帰データに基づいて計算された)120MPaでの引っ張り強度が示されている。二塩基のリン酸カルシウムを10%または50%含む共処理型のMCC:DCP粒子製品は、ローラー圧縮された顆粒を再圧縮(打錠)して得られた引っ張り強度が低い値になるという特徴が示すように、やや低い再成形性を有する。さらに、10%の二塩基のリン酸カルシウムを含む共処理型のMCC:DCP粒子製品を用いて調製された顆粒を圧縮した錠剤は、150MPaを上回る高い打錠圧において、崩壊する傾向を示した。圧縮された結果によって、重量比が80:20〜65:35である共処理型のMCC:DCP粒子製品を用いて調製された顆粒の再成形性が、良好になることが示された。
【0085】
図6は、ローラー圧縮されたMCC:DCP組成物から製造された、打錠済の顆粒の再成形性データを示している。該組成物は、DCPの量を変えて、AVICEL(登録商標)PH−102やAVICEL(登録商標)PH−101とのスラリーの共処理によって調製された。
【0086】
(実施例3)
粒径を変えた微結晶性セルロースから製造された共処理型の微結晶性セルロースと二塩基のリン酸カルシウムの粒子製品の再成形性は、69.5%の共処理粒子製品、30.0%のビタミンC、および0.5%のステアリン酸マグネシウムからなる顆粒処方物を(30バールで)ローラー圧縮して形成されたリボンから得られた顆粒を打錠して評価された。
【0087】
共処理型の賦形剤は、種類を変えた微結晶セルロース製品(AVICEL(登録商標)PH−105、AVICEL(登録商標)PH−101、AVICEL(登録商標)PH−102、およびAVICEL(登録商標)PH−200)と二塩基のリン酸カルシウム無水物を用いた水性スラリーを噴霧乾燥して調製された。AVICEL(登録商標)PH−105のメジアン粒径は、典型的には約20マイクロメートルであり、AVICEL(登録商標)PH−101のメジアン粒径は、約50マイクロメートルであり、AVICEL(登録商標)PH−102のメジアン粒径は、約100マイクロメートルであり、粗製グレードのAVICEL(登録商標)PH−200のメジアン粒径は、約200マイクロメートルである。表2には、これらの共処理型の賦形剤の特性が示されている。
【0088】
【表2】
【0089】
これらの4種の処方物を用いて調製したローラー圧縮された顆粒の成形性と打錠性を試験した。図7は、打錠圧に対して、錠剤の引っ張り強度をプロットしている。データは、30%のビタミンCを含む顆粒を圧縮して得たものである。30%のビタミンCを含む顆粒の再成形性が最大になる、つまり、錠剤の引っ張り強度が最大になる顆粒処方物は、AVICEL(登録商標)PH−102で形成された共処理粒子製品を用いたものであった。AVICEL(登録商標)PH−200またはAVICEL(登録商標)PH−101で、それぞれ作成された共処理粒子製品によって、同様な再成形性を有する顆粒が得られた。30バールでローラー圧縮された、30%のビタミンCを含む顆粒処方物で試験した場合、AVICEL(登録商標)PH−105と二塩基のリン酸カルシウムを共処理すれば、再成形性が低い顆粒を生成する共処理粒子製品が得られる。図8は、(図7からデータの最適な線形近似を用いて)打錠圧が120MPaでの錠剤の引っ張り強度の計算値に基づいて、共処理粒子製品中で使用されたAVICEL(登録商標)PHの粒径の関数として、共処理粒子製品の再成形性を比較したものを示している。
【0090】
(実施例4)
粒径と二塩基のリン酸カルシウムの組成を変えて製造した、微結晶性セルロースと二塩基のリン酸カルシウムの共処理型の粒子製品は、69.5%の共処理粒子製品、30.0%のビタミンC、および0.5%のステアリン酸マグネシウムからなる顆粒処方物を(30バールで)ローラー圧縮して形成されたリボンから得られた顆粒を打錠して評価された。
【0091】
共処理粒子製品は、AVICEL(登録商標)PH−101と4種のグレードの二塩基のリン酸カルシウムの水性スラリーを噴霧乾燥して製造された。二塩基のリン酸カルシウムは、無水物の微粉(メジアン粒径7μm)であるDi−Cafos(登録商標)C92−04、無水物の粉末(メジアン粒径7μm)であるDi−Cafos(登録商標)C92−05、二水和物の粉末(メジアン粒径14μm)であるDi−Cafos(登録商標)C92−01、および無水物の粗粒(メジアン粒径80μm)であるDi−Cafos(登録商標)C92−12である。
【0092】
【表3】
【0093】
これら4種の処方物を用いて調製されたローラー圧縮型の顆粒の再成形性または打錠性は、図9に示される。図9では、打錠圧に対して錠剤の引っ張り強度がプロットされる。30%のビタミンCを含む再成形性が最適な顆粒、つまり、錠剤の引っ張り強度が高くなる顆粒処方物では、77.5%のAVICEL(登録商標)PH−101とメジアン粒径が7ミクロンである22.5%の二塩基のリン酸カルシウムで形成される共処理粒子製品が使用された。30バールでローラー圧縮された30%のビタミンCを含む顆粒処方物で試験した場合、77.5%のAVICEL(登録商標)PH−101と14ミクロンと80ミクロンの大型の粒径を有する22.5%の二塩基のリン酸カルシウムを共処理して生成された粒子製品によれば、再成形性の低い顆粒を生成する共処理粒子製品が得られる。図10は、(図9からデータの最適な線形近似を用いて)打錠圧が120MPaでの錠剤の引っ張り強度の計算値に基づいて、共処理粒子製品中で使用された二塩基のリン酸カルシウムの粒径の関数として、共処理粒子製品の再成形性を比較したものを示している。
【0094】
(実施例5)
メジアン粒径が約40〜50ミクロンまたは約70ミクロンである、微結晶性セルロースと二塩基のリン酸カルシウムの共処理粒子製品の再成形性は、69.5%の共処理粒子製品、30.0%のビタミンC、および0.5%のステアリン酸マグネシウムからなる処方物を(30バールで)ローラー圧縮して形成されたリボンから得られた顆粒を打錠して評価された。
【0095】
共処理粒子製品は、AVICEL(登録商標)PH−101またはAVICEL PH−102と二塩基のリン酸カルシウムの無水物であるDi−Cafos(登録商標)C92−04の水性スラリーを噴霧乾燥し、噴霧乾燥プロセスの条件を変えて、種々の粒径を製造して調製された。これらの粒子製品の特性は、表4に示される。
【0096】
【表4】
【0097】
図11は、打錠圧に対して、(30バールでローラー圧縮して形成されたリボンから得られた顆粒を用いて製造した)30%のビタミンCを含む錠剤の引っ張り強度をプロットしている。粒径が35〜50ミクロンの粒子製品から製造された顆粒の再成形性は高く、粒径が約70マイクロメーターまで増加すると、再成形性は減少した。顆粒の再成形性に対する粒径の影響は、図12に示されている。図12では、共処理型のMCC:DCP粒子製品の粒径(Malvern Mastersizer 2000を用いて、レーザー回折で測定されたD50)に対して、(図11からデータの最適な線形近似を用いて計算された)打錠圧120MPaでの錠剤の引っ張り強度をプロットしている。
【0098】
(実施例6)
微粉のDCPを用いたMCC:DCPの比率が75:25である共処理粒子製品の再成形性は、69.5%のMCC:DCP賦形剤、30.0%のビタミンC、および0.5%のステアリン酸マグネシウムからなる顆粒処方物を(30バールで)ローラー圧縮して形成されたリボンから得られた顆粒を打錠して評価された。
【0099】
共処理型のMCC:DCP粒子製品は、AVICEL(登録商標)PHと、受け入れ後に、DCPを2ミクロンのメジアン粒径に粉砕した二塩基のリン酸カルシウム無水物であるDi−Cafos C92−04との水性スラリーを噴霧乾燥して製造された。表5は、これらの粒子製品の特性を示している。
【0100】
【表5】
【0101】
図13は、再成形能についての優れたロット間再現性を示している。
【0102】
(実施例7)
MCC:DCP粒子製品(75:25)のローラー圧縮されたリボンの破砕性は、微結晶性セルロースとラクトース無水物の物理混合物(50:50)および微結晶性セルロースと二塩基のリン酸カルシウム無水物の物理混合物(65:35と75:25)と比べられて、評価された。
【0103】
共処理型のMCC:DCP粒子製品(75:25)は、AVICEL(登録商標)PH−102と二塩基のリン酸カルシウム無水物であるDi−Cafos(登録商標)C92−04との水性スラリーを噴霧乾燥して製造された。物理混合物試料は、30%のビタミンCを含む顆粒処方物に含まれ69.5%の割合を示す賦形剤として、AVICEL(登録商標)PH−101とSuperTab(登録商標)21ANまたは無水EMCOMPRESS(登録商標)を適当な重量比率で用いて調製された。
【0104】
リボンは、30%のビタミンCを含む顆粒処方物を、20、30、および40バールでローラー圧縮して製造された。約5センチメートルのリボン幅を有するリボン部分は、長さ約2.5〜3.5センチメートルの破片に分けられた。(総重量が約10〜20グラムの)3個のリボンの破片は、始めに、柔らかいブラシを用いて、1000ミクロンの篩上で脱じんされ、次に、重量を測定された。脱じんされた破片は、Pharma test PTF1破砕性試験機(friability tester)のドラムに、100回転(毎分25回転で4分間)の間導入された。ドラムの内容物は、試験後に取り除かれ、粉末画分は1000ミクロンの篩上で分離された。篩上に残存した過大な画分は、脱じんされた後に、重量を測定され、リボンの初期重量と比べられた。
【0105】
表6には、AVICEL(登録商標)PH−101とSuperTab(登録商標)21ANとの物理混合物(50:50)または無水EMCOMPRESS(登録商標)との物理混合物(65:35および75:25)と比べて、共処理型のMCC:DCP粒子製品(75:25)によれば、各圧縮圧(20、30、および40バール)で、破砕性が低い堅牢に圧縮されたリボンが作成されることが示されている。同程度の破砕性を有する堅牢なリボンは、共処理型のMCC:DCP粒子製品の場合、混合処方物の場合よりも低い圧縮圧で得ることができる。本発明に係る粒子製品によれば、意外なことに、リボンの破砕性の低減と再成形性の改善を両立できる。
【0106】
【表6】
【0107】
(実施例8)
MCC:DCPの比率が80:20、75:25、および65:35である共処理粒子製品と、同じ組成の物理混合物の再成形性は、賦形剤として69.5%の粒子製品または混合物、30.0%のビタミンC、および0.5%のステアリン酸マグネシウムからなる顆粒処方物を(30バールで)ローラー圧縮して形成されたリボンから得られた顆粒を打錠して評価された。
【0108】
物理混合物試料は、30%のビタミンCを含む顆粒処方物に含まれ69.5%の割合を示す賦形剤として、MCC:DCPの比率が75:25または65:35で調製された。物理混合物には、AVICEL(登録商標)PH−101と直接圧縮グレードの二塩基のリン酸カルシウム無水物である無水EMCOMPRESS(登録商標)との混合物、またはAVICEL(登録商標)PH−102と直接圧縮グレードの二塩基のリン酸カルシウム二水和物であるEMCOMPRESS(登録商標)プレミアムとの混合物が用いられた(図14)。また、物理混合試料は、30%のビタミンCを含む顆粒処方物中で69.5%の割合を示す賦形剤において、AVICEL(登録商標)PH−102とEMCOMPRESS(登録商標)プレミアムとを重量比率80:20と65:35でそれぞれ混合して調製された(図15)。
【0109】
共処理型のMCC:DCP粒子製品は、AVICEL(登録商標)PH−101と二塩基のリン酸カルシウム無水物であるDi−Cafos(登録商標)C92−04の水性スラリー(比率は、それぞれ80:20と65:35、図15)、および比率が75:25であるAVICEL(登録商標)PH−102と二塩基のリン酸カルシウム無水物であるDi−Cafos(登録商標)C92−04の水性スラリー(図14)を噴霧乾燥して調製された。これらの粒子製品の特性は、表7に示される。
【0110】
【表7】
【0111】
顆粒処方物は、30バールでローラー圧縮されてリボンに形成された後、粉砕されて顆粒になり、該顆粒が打錠されるときに圧縮された。
【0112】
再成形性データは、打錠圧に対する錠剤の引っ張り強度として、図14と図15に示される。図14は、AVICEL(登録商標)PH−102とDi−Cafos(登録商標)92−04無水物が75:25である水性スラリーから噴霧乾燥された共処理型のMCC:DCP粒子製品の再成形性が、組成が75:25と65:35である3種の物理混合物の再成形性に比べて遙かに高かったことを示している。図15は、比率が80:20と65:35である共処理型のMCC:DCP粒子製品が、対応する物理混合物に比べて、遙かに再成形性に優れることを示している。
【0113】
(実施例9)
共処理型のMCC:DCP粒子製品(75:25)の性能と潤滑剤を節約できる能力は、99%の賦形剤と1.0%のリン酸マグネシウムを用いた顆粒処方物を30バールでローラー圧縮して形成されたリボンから得られた顆粒を打錠して、微結晶性セルロース、微結晶性セルロースとラクトースの物理混合物およびDCP賦形剤と比べて評価された。
【0114】
ローラー圧縮された顆粒処方物から形成された顆粒を打錠して得られた再成形性データは、打錠圧に対する錠剤の引っ張り強度として、図16に示される。共処理型のMCC:DCP粒子製品(75:25)は、AVICEL(登録商標)PH−102単独、または、AVICEL(登録商標)PH−102とラクトース一水和物であるSuperTab(登録商標)11SDまたは二塩基のリン酸カルシウム二水和物であって、直接圧縮型の賦形剤であるEMCOMPRESS(登録商標)プレミアムとの物理混合物と比べて、再成形性が改善され、潤滑剤を節約する能力が遙かに向上していた。
【0115】
(実施例10)
共処理型のMCC:DCP粒子製品(75:25)の再成形性は、30%のビタミンCを含み、3%のクロカルメロースナトリウムと0.5%のステアリン酸マグネシウム含有または未含有である顆粒処方物を30バールでローラー圧縮して形成されたリボンから得られた顆粒を打錠して評価された。
【0116】
(比較例1)
再成形性(再成形性能)は、共処理型のMCC:DCP粒子製品(15:85)、MicroLac(登録商標)微結晶性セルロースとラクトース一水和物を共処理した直接圧縮グレードのMicroceLac(登録商標)(25:75)、AVICEL(登録商標)PH−101と直接圧縮グレードの賦形剤である無水EMCOMPRESS(登録商標)を含む対応する物理混合物(15:85)、AVICEL(登録商標)PH−101とSuperTab(登録商標)を含む対応する物理混合物(25:75)を含むとともに、30%のビタミンCを含む顆粒処方物を30バールでローラー圧縮して形成されたリボンから得られた顆粒を打錠して評価された。
【0117】
共処理型のMCC:DCP粒子製品(15:85)は、AVICEL(登録商標)PH−102と二塩基のリン酸カルシウム無水物であるDi−Cafos(登録商標)C92−04からなる水性スラリーを噴霧乾燥して製造された。このような粒子製品の特性は、表8に示される。
【0118】
【表8】
【0119】
打錠性データは、図18に示される。共処理型のMCC:DCP粒子製品(15:85)を含み、30%のビタミンCを含む顆粒処方物を再圧縮すると、最低の打錠圧(97.6MPa)において、錠剤は極めて脆弱になるが、120MPa〜250MPaより大きい打錠圧で、引っ張り強度が0.2〜0.4MPaの範囲にあることが観察された。MCCとDCPとの物理混合物は、51.5MPa〜267.6MPaの打錠圧で試験されたが、必要な打錠圧は、十分に硬い錠剤(少なくとも10N、少なくとも0.2MPaの引っ張り強度に相当)を得ることができる120MPaを上回る値であった。
【0120】
(実施例11)
再成形性は、共処理型のMCC:DCP粒子製品(75:25)、市販の微結晶性セルロース製品であるAVICEL(登録商標)PH−102とAVICEL(登録商標)HFE−102、およびAVICEL(登録商標)PH−102と二塩基のリン酸カルシウムまたはマンニトールの物理混合物の顆粒処方物を30バールでローラー圧縮して形成されたリボンから得られた顆粒を打錠して評価された。(賦形剤が69.5%、ビタミンCが30.0%、ステアリン酸マグネシウムが0.5%である)ビタミンCを含む顆粒処方物から圧縮された顆粒の打錠データは、図19に示される。(賦形剤が99%でステアリン酸マグネシウムが1%である)偽薬の顆粒処方物から圧縮された顆粒の打錠データは、図20に示される。MCC:DCP粒子製品は、30%のビタミンCまたは偽薬処方物のいずれで試験した場合でも、両方の市販の賦形剤と比べて、優れた再成形性を示していた。
【0121】
(実施例12)
破砕性と崩壊性は、MCC:DCP粒子製品を含むビタミンCの錠剤について、微結晶性セルロースまたは市販の賦形剤の物理混合物と比較して試験された。
【0122】
錠剤は、12mmの円形のありふれた凹面をなす型押しを用いたManesty D4回転圧縮機を用いて、30rpmで、(種々の賦形剤を含む顆粒組成物を30バールでローラー圧縮して形成されたリボンを粉砕して得られた)30%のビタミンCを含む顆粒から製造された。錠剤の破砕性は、Pharma Test PTF1破砕性試験機内において、20個の錠剤を毎分25回転で4分間回転(全部で100回転)させることによって、損失重量の%として測定された。錠剤は、Manesty D4回転圧縮機において、15kNの圧縮力で圧縮された。得られた結果を表9に示した。
【0123】
【表9】
【0124】
同様な硬さを得るための打錠力を変えて、ビタミンCを含む顆粒から製造された錠剤についての崩壊性データを表10に示す。崩壊時間は、Pharma Test PTZ2崩壊性試験機を用いて測定された。共処理型のMCC:DCP粒子製品(75:25)を用いて製造された錠剤の崩壊時間は、AVICEL(登録商標)PH−101または物理混合物のいずれかを用いて製造された錠剤の崩壊時間よりも短かった。
【0125】
【表10】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のリン酸カルシウム粒子と微結晶性セルロース粒子を含む医薬品賦形剤として有用な共処理組成物。
【請求項2】
少なくとも1種のリン酸カルシウム粒子の少なくとも一部が、微結晶性セルロースの細孔に埋め込まれている、
請求項1に記載の共処理組成物。
【請求項3】
前記組成物は、乾燥済の粒子集合体である、
請求項1に記載の共処理組成物。
【請求項4】
前記集合体は、微結晶性セルロースと少なくとも1種の粒子状のリン酸カルシウムとが十分に分散された水性スラリーを形成し、前記水性スラリーを乾燥して得られる、
請求項3に記載の共処理組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1種のリン酸カルシウムには、二塩基のリン酸カルシウムが含まれる、
請求項1に記載の共処理組成物。
【請求項6】
微結晶性セルロースと少なくとも1種のリン酸カルシウムは、微結晶性セルロース:リン酸カルシウムの重量比率が約85:15〜約55:45で存在する、
請求項1に記載の共処理組成物。
【請求項7】
微結晶性セルロースと少なくとも1種のリン酸カルシウムは、微結晶性セルロース:リン酸カルシウムの重量比率が約80:20〜約60:40で存在する、
請求項1に記載の共処理組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1種のリン酸カルシウムのメジアン粒径は、約50μm未満である、
請求項1に記載の共処理組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1種のリン酸カルシウムのメジアン粒径は、約20μm未満である、
請求項1に記載の共処理組成物。
【請求項10】
前記リン酸カルシウムには、二塩基のリン酸カルシウム二水和物または無水の二塩基のリン酸カルシウムの内の少なくとも1種が含まれる、
請求項1に記載の共処理組成物。
【請求項11】
前記微結晶性セルロースのメジアン粒径は、約20μm〜約250μmである、
請求項3に記載の共処理組成物。
【請求項12】
a)微結晶性セルロースと少なくとも1種のリン酸カルシウムとが十分に分散された水性スラリーを形成することと、
b)前記水性スラリーを乾燥し、前記水性スラリーから水分を除去して、粒子製品を得ることと、を含む、
医薬品賦形剤として有用な組成物を調製する方法。
【請求項13】
乾燥を噴霧乾燥で行う、
請求項12に記載の医薬品賦形剤として有用な組成物を調製する方法。
【請求項14】
前記水性スラリーは、固形分を10〜30重量%含む、
請求項12に記載の医薬品賦形剤として有用な組成物を調製する方法。
【請求項15】
請求項1に記載の共処理組成物と少なくとも1種の有効成分を含む顆粒または錠剤処方物。
【請求項16】
さらに少なくとも1種の潤滑剤を含む、
請求項15に記載の顆粒または錠剤処方物。
【請求項17】
さらに少なくとも1種の崩壊剤を含む、
請求項15に記載の顆粒または錠剤処方物。
【請求項18】
a)顆粒処方物に圧力を加えて、圧縮物を形成するステップ、および、
b)前記圧縮物を粉砕して、顆粒を形成するステップ、を有し、
前記顆粒処方物には、請求項1に記載の共処理組成物と少なくとも1種の有効成分が含まれる、
方法。
【請求項19】
c)前記顆粒を再圧縮して、固形剤を形成するステップをさらに有する、
請求項18に記載の方法。
【請求項20】
請求項1に記載された共処理組成物と、少なくとも1種の有効成分と、必要に応じて、少なくとも1種の追加の賦形剤とを含む、圧縮錠剤の形態の固形剤。
【請求項1】
少なくとも1種のリン酸カルシウム粒子と微結晶性セルロース粒子を含む医薬品賦形剤として有用な共処理組成物。
【請求項2】
少なくとも1種のリン酸カルシウム粒子の少なくとも一部が、微結晶性セルロースの細孔に埋め込まれている、
請求項1に記載の共処理組成物。
【請求項3】
前記組成物は、乾燥済の粒子集合体である、
請求項1に記載の共処理組成物。
【請求項4】
前記集合体は、微結晶性セルロースと少なくとも1種の粒子状のリン酸カルシウムとが十分に分散された水性スラリーを形成し、前記水性スラリーを乾燥して得られる、
請求項3に記載の共処理組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1種のリン酸カルシウムには、二塩基のリン酸カルシウムが含まれる、
請求項1に記載の共処理組成物。
【請求項6】
微結晶性セルロースと少なくとも1種のリン酸カルシウムは、微結晶性セルロース:リン酸カルシウムの重量比率が約85:15〜約55:45で存在する、
請求項1に記載の共処理組成物。
【請求項7】
微結晶性セルロースと少なくとも1種のリン酸カルシウムは、微結晶性セルロース:リン酸カルシウムの重量比率が約80:20〜約60:40で存在する、
請求項1に記載の共処理組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1種のリン酸カルシウムのメジアン粒径は、約50μm未満である、
請求項1に記載の共処理組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1種のリン酸カルシウムのメジアン粒径は、約20μm未満である、
請求項1に記載の共処理組成物。
【請求項10】
前記リン酸カルシウムには、二塩基のリン酸カルシウム二水和物または無水の二塩基のリン酸カルシウムの内の少なくとも1種が含まれる、
請求項1に記載の共処理組成物。
【請求項11】
前記微結晶性セルロースのメジアン粒径は、約20μm〜約250μmである、
請求項3に記載の共処理組成物。
【請求項12】
a)微結晶性セルロースと少なくとも1種のリン酸カルシウムとが十分に分散された水性スラリーを形成することと、
b)前記水性スラリーを乾燥し、前記水性スラリーから水分を除去して、粒子製品を得ることと、を含む、
医薬品賦形剤として有用な組成物を調製する方法。
【請求項13】
乾燥を噴霧乾燥で行う、
請求項12に記載の医薬品賦形剤として有用な組成物を調製する方法。
【請求項14】
前記水性スラリーは、固形分を10〜30重量%含む、
請求項12に記載の医薬品賦形剤として有用な組成物を調製する方法。
【請求項15】
請求項1に記載の共処理組成物と少なくとも1種の有効成分を含む顆粒または錠剤処方物。
【請求項16】
さらに少なくとも1種の潤滑剤を含む、
請求項15に記載の顆粒または錠剤処方物。
【請求項17】
さらに少なくとも1種の崩壊剤を含む、
請求項15に記載の顆粒または錠剤処方物。
【請求項18】
a)顆粒処方物に圧力を加えて、圧縮物を形成するステップ、および、
b)前記圧縮物を粉砕して、顆粒を形成するステップ、を有し、
前記顆粒処方物には、請求項1に記載の共処理組成物と少なくとも1種の有効成分が含まれる、
方法。
【請求項19】
c)前記顆粒を再圧縮して、固形剤を形成するステップをさらに有する、
請求項18に記載の方法。
【請求項20】
請求項1に記載された共処理組成物と、少なくとも1種の有効成分と、必要に応じて、少なくとも1種の追加の賦形剤とを含む、圧縮錠剤の形態の固形剤。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公表番号】特表2013−510157(P2013−510157A)
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−537933(P2012−537933)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【国際出願番号】PCT/US2010/055068
【国際公開番号】WO2011/056775
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(391022452)エフ エム シー コーポレーション (74)
【氏名又は名称原語表記】FMC CORPORATION
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【国際出願番号】PCT/US2010/055068
【国際公開番号】WO2011/056775
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(391022452)エフ エム シー コーポレーション (74)
【氏名又は名称原語表記】FMC CORPORATION
【Fターム(参考)】
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