説明

医薬適用のための乾燥した再構成したベシクル形成

本発明は、乾燥した再構成されるベシクル(DRV)組成物及びこの水ベースの処方物に関し、これは、1種以上の治療剤(例えば親水性タンパク質)を含有する。より有利には、本発明は、少なくとも1種の脂質及び融合促進剤を含有するDRVに関し、これは再構成後に水相中で活性剤をカプセル化するマルチラメラー状大リポソームを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の詳細な説明
本発明は、乾燥した再構成したベシクル(DRV)組成物及びこの水ベースの処方物に関し、これは、1種以上の治療剤(例えば親水性タンパク質)を含有する。より有利には、本発明は、少なくとも1種の脂質及び融合促進剤を含有するDRVに関し、これは再構成後に水相中で活性剤をカプセル化するマルチラメラー状大リポソームを形成する。
【0002】
リポソームは、生物学的な及び治療的な活性のある化合物の担体として使用可能であり、身体へのこの化合物の配送を容易化することが知られている。リポソームは一般的には、水性媒体中に化合物を典型的には含有するコアを有する閉鎖された脂質液滴を含有する。特定の実施態様において、この化合物は、脂質成分に化学的に結合しているか又は単に、このリポソームの水性の内部区画内に含有されている。リポソームには様々な種類が存在する:それぞれのリポソーム粒子内に複数の非同心性の(non-concentric)内部水性室を有するマルチベシクルリポソーム(MLVs);直径5μm以上の範囲の、水性層でもって相互に散在した脂質二重層から形成される一連の実質的に球状のシェルを有するマルチラメラーベシクル(MLVs);直径600nm〜1μm以上の範囲の、大きな、構造化されていない水性相を取り囲む脂質二重層を有するユニラメラー状大ベシクル(LUVs);及び直径が約0.2μm未満であることを除き、LUVsと類似の構造であるユニラメラー状小ベシクル(SUVs)。
【0003】
リポソームの製造のための種々の方法がこの分野において公知であり、このうちの複数は、Liposome Technology 第2版、G. Gregoriadis, CRC Press Inc., Boca Raton (1993)中に説明されている。リポソーム技術の主要な挑戦は、高レベルの活性剤のリポソーム中への負荷及びこの負荷を取り扱い及び貯蔵の間に安定にすることである。他の挑戦は、この活性剤の放出速度をリポソーム処方物の特定の目的に適合させることである。生物学的な材料のリポソーム中へのカプセル化は、著しい可能性を、ヒト中へのドラッグデリバリーのために有するものの、このカプセル化された材料の市販規模での製造は、しばしば問題である。
【0004】
非経口的な適用のための大抵の医薬的適用は、不所望な副作用、例えば、大きなリポソームで説明されている塞栓を回避するために小さなリポソームに焦点をあてている。更に、小さなリポソームを用いて、安定な生成物を製造することはより容易であるように見える。
【0005】
MLVカプセル化した材料を、小規模で又は工業的な規模で製造するためには幾つかの知られた方法が存在する(Rao, "Preparation of Liposomes on the Industrial Scale. Problems And Perspectives," in Liposome Technology 第2版、G. Gregoriadis, CRC Press Inc., Boca Raton, pp 49-65 (1993))。大抵の場合には、薄い脂質フィルムが、無機の溶媒から、容器の壁に対して堆積され、カプセル化されるべき材料の水溶液が添加され、そして、容器が撹拌される。この方法は、活性剤のMLVs中へのカプセル化を生じる。このような方法の主要な欠点は、生物学的剤の崩壊及びこのリポソーム懸濁液の貯蔵不安定性に加え、カプセル化における変形及びしばしば低くかつ再現可能でない、リポソーム中への生物学的剤の封入である。
【0006】
EP0678017中に説明された方法は、凍結及び融解マルチラメラーベシクル(FATMLVs)を製造する。このFATMLV方法は、封入されるべき材料の存在下で凍結及び融解が為されることを要求する。しかしながら、敏感な材料、例えばタンパク質をこのような厳しい物理的な操作に付すことは、この材料の不活性化又は崩壊を生じる。更に、頻繁な凍結及び融解のサイクルは、大規模な製造のためには実現可能でなく、かつ、高い技術的な操作の手間を要求する。
【0007】
リポソーム及びその内容物が水性分散体中では比較的不安定である可能性があることが知られている。従って、脱水によるリポソーム処方物の短い貯蔵寿命を増加させる試みは、複数の製造方法の焦点であり続けている。
【0008】
リポソームを含有する活性剤の改善した能動的な封入及び貯蔵は、脱水−再水和方法を用いて達成されていて(EP0485143, WO90/03795, EP0678017及びこの中の参照文献)、この際に実施されるリポソームは、活性剤を含有する水溶液に添加されるか又は凍結乾燥されたタンパク質と混合され、この後にこの混合物の脱水及び引き続く水性媒体中での再水和が引き続く。この溶液が高度に粘性のある液体混合物へと乾燥される場合には、この個々のリポソームは、MLVsを形成すべく融合し、これは、このラメラの間に活性剤をカプセル化する。再水和すると、脂質ベシクルが形成され、この中では前記材料がカプセル化されている。この方法は、カプセル化されるべき薬剤に依存するかなり低いカプセル化効率を生じ、これは、リポソームの不安定性、活性剤の漏れ又はこのカプセル化されるべき材料の物理的な不活性化又は崩壊のためである。
【0009】
乾燥脂質粉末の脱水及び形成前の糖保護剤(例えば増量剤)の添加が、凍結乾燥を伴うリポソームを保護できることが知られている。増量剤は、EP0678017, WO90/03795, WO97/42936, WO92/02208, EP190315 及びLiposomes 第2版, A Practical Approach, Vladimir P. Torchilin 及び Volkmar Weissig編, Oxford University Press (2002)中に説明されている。これらは、凍結乾燥の間の活性剤の損傷及び漏れからベシクルを保護し、かつ、ユニラメラー状小ベシクルが大マルチラメラー構造へと融合することを回避する。
【0010】
WO97/42936は、凍結乾燥したMLVsのための製造方法を説明し、これは、膜安定化剤としてのソルビトールに加えて両親媒性薬剤組成物をカプセル化する。
【0011】
WO90/03795は、低温保護剤、例えば糖(例えばスクロース、マンニトール、ラクトース、トレハロース、マルトース)及び少なくとも1種のタンパク質(例えばアルブミン、ゼラチン又はカゼイン)のリポソーム調製物の乾燥の間の使用を説明し、これは凍結乾燥及び引き続く再構成の間の損傷からこの脱水された生成物を保護するため、このリポソーム二重層の統合性を維持するため(例えば、融合又は凝集がほとんど観察されないか又は全く観察されない)、そして、このリポソームの漏れを回避するためである。
【0012】
いかなる低温保護剤も添加されないと、このリポソームは乾燥及び再水和後に完全に崩壊し、かつ、内容物が大幅に失われ、かつ、大きなサイズのために全身の適用のための適した分布を妨げるMLVsが形成される。
【0013】
Ozer et al.は、膜二重層の構造及び統合性を保存するための、そして、脱水及び凍結によるベシクル融合及び凝集を妨げるための低温保護剤、例えばポリアルコール及びサッカリド及びタンパク質又はアミノ酸の使用を説明する(Ozer, Y. et al. (1988) Influence of Freezing and Freeze-drying on the Stability of Liposomes Dispersed in Aqeous Media. Acta Pharm.Technol. 34: 129-139)。
【0014】
EP0560138は、親油性物質、例えばニフェジピン(Nifedipin)の包含のための乾燥した再構成したリポソーム及びリン脂質、酸化防止剤、低温保護剤及びpH安定剤を含有するこのリポソームの製造方法を開示する。しかしながら、この開示された方法は、活性剤、例えばタンパク質にとっては有害である。低温保護剤、例えば還元性の糖(例えばグルコース)は、タンパク質を化学反応により変性し、かつ、小さいベシクル、例えば、平均直径40〜200nmのベシクルの形成を生じる。
【0015】
U.S. 5,290.563は、不均一な物質、例えばタンパク性アレルゲン及び/又はアレルゲン性抽出物の、少なくとも1種のイオン性脂質を含有するリポソーム中への、低温保護剤の添加なしのカプセル化方法を開示する。このような不均一な物質の存在は、リポソームを安定化する。
【0016】
Kim et al.は、水中に懸濁したクロロホルムエーテル球状体からの有機溶媒の蒸発によるリポソームの製造方法を教示する(Kim, S. et al. (1983) Preparation of multivesicular liposomes. Biochim. Biophys. Acta 728: 339-348)。
【0017】
Cruz et al.及びこの中の参照文献は、タンパク質のための担体系としてのリポソームを教示する。開示されたこの方法は、上記したものと類似の欠点を有し、例えば、有機溶剤の使用、低いカプセル化効率の発生、又は、大規模の製造のためには使用可能ではないことである(Cruz, M. E. et al. (1989) Liposomes as carrier systems for proteins: factors affecting protein encapsulation. Liposomes in the Therapy of Infectious Diseases and Cancer 417-426)。
【0018】
WO2007/067784は、一般的に、リポソーム医薬組成物に関し、これは、1種以上の疎水性治療剤(例えば薬物)を含有する。しかしながら、WO2007/067784は、タンパク質をカプセル化するリポソームの問題には言及しない。実際、前記刊行物は、低温保護剤の使用を教示し、これは、脂質膜を安定化し、かつ/又は再水和後のMLVsの形成を妨げる。
【0019】
従って、本発明の課題は、乾燥した形態にあり、再水和されることができ、かつ、大規模の製造のために使用可能であるタンパク質をカプセル化するリポソームの製造方法を提供することである。
【0020】
本発明の別の課題は、再水和され、脱水された間に延長された期間にわたり貯蔵されることができ、かつ、再構成の後にリポソームの水性相中にカプセル化された活性剤を有する、マルチラメラー状ベシクルの分散体に移行することができる、リポソーム調製物を提供することである。
【0021】
本発明の別の課題は、活性剤の分解及び不活性化を妨げるために、活性剤をカプセル化するMLVsの製造のために、数回の凍結及び融解工程の必要性を回避することである。
【0022】
本発明の別の課題は、リポソームの脱水のための及び活性剤の存在下での乾燥した脂質処方物としての貯蔵のための方法を提供することであり、乾燥した脂質処方物は、次いで、活性剤の高いカプセル化率を有するマルチラメラーリポソームを形成すべく水溶液を添加すると再水和されることができ、これにより、前記乾燥生成物の便利な再構成が可能である。
本発明の別の課題は、簡易であり、実現可能であり、かつ、コスト高でない、乾燥した再構成したMLVsの大規模製造のための方法を提供することである。
【0023】
本発明の別の課題は、疾病、例えば骨及び/又は軟骨疾病、例えば骨軟骨性欠陥及び変形性関節症の治療のための、1μmよりも大きいサイズを有する乾燥した再構成したベシクルを提供することである。
【0024】
本発明の基礎となる別の課題は、親水性タンパク質の高いカプセル化効率を可能にするリポソームの製造方法を提供することであり、この方法においては、有機溶媒又は洗剤を回避し、容易に大規模で実施されることができ、貯蔵した場合にタンパク質の分解のない安定な生成物を製造し、タンパク質の徐放性を可能にし、かつ、適用場所からの迅速なクリアランスを回避すべく十分に大きいリポソームを提供する。
【0025】
一観点において、本発明は、a)少なくとも1種の脂質、
b)少なくとも1種の活性剤、
c)融合促進剤を含み、及び
d)膜安定化剤を含まない、
ベシクルを含む凍結乾燥した活性剤を含む乾燥医薬組成物であって、この乾燥医薬組成物の再水和が、1μmよりも大きい平均リポソーム直径を有する、活性剤をカプセル化するマルチラメラー状リポソームの形成を生じる、乾燥医薬組成物に関する。
【0026】
本発明による乾燥した医薬組成物は、長期間安定に貯蔵されることができる。有利には、本発明の乾燥した医薬組成物は、凍結乾燥組成物である。この組成物が乾燥又は凍結乾燥された形態において安定である一方で、これは水溶液の添加により容易に再構成されることができる。水溶液の添加は、1μmよりも大きい、有利には約1.5μm以上の平均リポソーム直径を有する、マルチラメラーリポソームの形成を生じる。このマルチラメラーリポソーム中では、活性剤は有利には少なくとも40%、特に少なくとも50%、より有利には少なくとも55%、更に有利には少なくとも60%、最も有利には少なくとも80%の高いカプセル化効率でもってカプセル化される。
【0027】
本発明の乾燥した医薬組成物の組成は、少なくとも1種の脂質、少なくとも1種の活性剤、少なくとも1種の融合促進剤を含み、膜安定化剤を含まない。有利には、この少なくとも1種の活性剤は、タンパク質、特に親水性タンパク質又はこの活性断片である。特に有利には、骨及び/又は軟骨再生剤であるタンパク質、有利にはCD−RAPである。有利な融合促進剤は、アルカリ性アミノ酸、特に、アルギニン、ヒスチジン、リシン又はシトルリンから選択されるアミノ酸である。更に、膜安定化剤を含有しない乾燥した医薬組成物を提供することが有利であることが見出され、即ち、特に、保護糖、糖アルコール又はグリコシドの非存在下である。更に、本発明の幾つかの有利な実施態様においては、この組成物は、無機の又は有機のアニオン、例えばスクシナート、フマラート、シトラート、マレアート、ホスファート、アセタート又はクリリドをも含有する。
【0028】
この乾燥した医薬組成物は、有利には、滅菌組成物である。
【0029】
リポソームでのカプセル化がない場合には、大きなタンパク質ですら迅速に、この適用位置から排出され、即ち、滑液から滑膜を通じて排出され、かつ、従って、欠損した組織、例えば軟骨又は骨の再生を誘発するために十分に内外間利用可能ではない。活性剤、例えば成長因子の局所的な維持時間を適用場所、例えば椎間板(disc)又はこれを包囲する場所及び/又は関節内で延長するためには、本発明者らは、タンパク質、例えば親水性タンパク質、例えばCD−RAP又はBMPのマルチラメラー状大ベシクル(MLVs)のリポソーム処方物を、高い封入率及びこのタンパク質の制御された放出でもって提供することができた。
【0030】
本発明者らは、長期間の貯蔵において崩壊に対して安定であり、かつ、親水性タンパク質を含有するマルチラメラー大リポソームを製造するために再構成されることができる、凍結乾燥したタンパク質リポソーム組成物を含む非経口医薬組成物を提供する。この発明において使用される乾燥した再構成されたベシクルは、例えば、乾燥粒状生成物であり、これは、水性媒体を添加すると、生物学的に活性のある成分を含有するマルチラメラーリポソーム処方物を形成するために分散する。有利には、安定性の問題、例えば、この活性剤の凝集又は酸化は、本発明の乾燥したリポソームを使用すると回避される。更に、親水性成分、例えばタンパク質、例えば骨−及び/又は軟骨再生剤、BMPs及び/又はCD/RADを含む、の高いカプセル化効率が達成される。先行技術とは対照的に、本発明者らは、今や、活性剤のわずかな改変でもって、安定な凍結ケーク(lyo cake)を形成する、安定な医薬組成物を提供することができ、これは、容易かつ迅速に、活性剤の再現可能な包含封入、貯蔵時の改善された安定性及び再水和された場合に、マルチラメラーリポソームのサイズ分布における著しい増加でもって水性媒体により再構成されることがでる。
【0031】
本発明の再水和されたリポソームは、in situで、例えば、滑液、関節内空間、円板又は円板を包囲する空間中への注射後に、持続された抵抗性を示し、この結果、軟骨疾病の治療の分野における現在の技術水準の制限を克服する。このタンパク質は、リポソームの外側での活性剤の存在のためにすぐさまの作用を有し、かつ、リポソームの分解の場合には遅延するか又は維持された作用を有する。長期間の活性剤の存在は、維持した連続的な作用を細胞、例えば軟骨形成性の及び滑膜細胞、プロテオグリカンの産生に有し、これにより、活性剤により媒介される再生的な作用又は疾病進行の遅延化が保証される。本発明の生じる処方物を侵された関節(例えば骨関節)中に投与する場合には、この生じる処方物は、この関節の構造及び活性剤により媒介される抗炎症性の及び/又は再生性の作用に対して保護的な作用、このリポソームの潤滑性作用、粘性補充性作用(visculosupplementary effect)及び/又は滑液の置換の作用を発揮することができる。
【0032】
また、本発明の範囲内にあるのは、
a)脂質、脂質混合物又は脂質フィルムの有機溶媒の非存在下での水和(hydratization)工程、
b)有利には平均直径50〜200nmを有するユニラメラー状小ベシクルの発生工程、
c)活性剤の水溶液の添加工程、
d)工程c)の後、前又は一緒に、融合促進剤及び場合により無機の又は有機のアニオンの添加工程、及び
e)膜安定化剤の添加なしでの前記脂質分散体の再水和工程
を含む、水溶液を用いた再水和後に、1μmよりも大きい平均リポソーム直径を有する、活性剤をカプセル化するマルチラメラー状リポソームを生じる乾燥リポソーム組成物の製造方法である。
【0033】
工程b)中で調整されたユニラメラー状小ベシクルは有利には、少なくとも50、特に少なくとも60、より有利には少なくとも70nmの平均直径を有し、かつ、有利には200nm、特に150nm、より有利には120nmの最大直径を有する。
【0034】
本発明の方法のとりわけの利点は、この滅菌濾過が、工程b)及びc)の後に実施できることである。従って、滅菌乾燥医薬組成物が提供されることができる。
【0035】
工程a)及びd)の調整後に、この処方物は、例えば真空下で4℃で、有利には室温で貯蔵されることができる。
【0036】
MLVリポソームのサイズのために、及び、多くの活性剤、例えばタンパク質の熱感受性のために、既知のこのような医薬組成物の滅菌濾過又は最終的な滅菌(terminal sterilization)は実現可能でない。これらの障害は、本発明による感染予防性の製造方法でもって克服された。
【0037】
本発明は、従って、更に、a)脂質、脂質混合物又は脂質フィルムの有機溶媒の非存在下での水和工程、
b)有利には平均直径50〜200nmを有する小さなユニラメラー状ベシクルの発生工程、
c)活性剤の水溶液の添加工程、
d)工程c)の後、前又は一緒に、融合促進剤及び場合により無機の又は有機のアニオンの添加工程、
e)膜安定化剤の添加なしでの前記脂質分散体の脱水工程、
f)水溶液での再水和及びマルチラメラー状の、1μmよりも大きい平均リポソーム直径を有する、活性剤をカプセル化するベシクルの形成工程
を含み、滅菌濾過の工程が、工程b)及び/又はc)の後に実施される、1μmよりも大きい平均リポソーム直径を有する、活性剤をカプセル化するマルチラメラー状リポソームを含有する投与可能なリポソーム組成物の製造方法を提供する。
【0038】
特に、工程f)において滅菌水溶液を使用すると、MLVリポソームを含有する滅菌組成物が得ることができる。
【0039】
また、包含されるのは、本願明細書中で、特に、請求項1において説明したとおりの乾燥した医薬組成物及びこの乾燥した医薬組成物の再水和のための水溶液を含有するキットの提供である。
【0040】
先行技術においては、低温保護剤は、凍結乾燥が所望される場合に説明される。二糖、例えばスクロース、ラクトース及びトレハロースは、最も有利な低温保護剤である。単糖、例えばグルコース又はソルビトール又は低分子量を有する助剤、例えばアミノ酸及び無機塩は、回避されることが望ましく、というのも、凍結状態におけるこれらの低い転移及び崩壊温度のためである(Liposomes 第2版, A Practical Approach, Vladimir P. Torchilin 及び Volkmar Weissig編, Oxford University Press, 第157頁 (2002))。しかしながら、本発明者らは、アルカリ性アミノ酸、例えばアルギニンを増量剤として使用することは、凍結乾燥の間にベシクルを保護しないが、しかしながら、意外にも、直径1μm以上を有するマルチラメラーベシクルを得るためには本質的である、融合方法を促進することを見出した。この作用に加えて、これらのアミノ酸の使用は、意外にも、この処方されるタンパク質の凍結乾燥の間の安定性を支持する。一方では、脂質膜の脱安定化、そして、他方では、薬剤の安定化に対するこれらの2種の作用の連結は、これまでに完全に未知であった。
【0041】
先行技術の、例えばKim et al.により説明されているリポソーム、例えばMLVs(Kim, S. et al. (1983) Preparation of multivesicular liposomes. Biochim.Biophys.Acta 728: 339-348)とは対照的に、本発明のリポソームの利点は、有機溶媒、例えばクロロホルムを回避できることにある。本発明のリポソーム調製物は、有利には、有機溶媒不含であり、かつ、特に2質量%未満の、有利には1質量%未満の、より有利には0.1質量%未満の、最も有利には0%の有機溶媒を含有する。更に、本発明は、医薬適用のための、再水和の際にMLVsを形成する、乾燥した、再構成したベシクルの大規模の製造方法の確立を提供する。
【0042】
本発明の方法の1つの利点は、更なるリポソーム精製工程が回避されることができることであり、この工程は、先行技術の方法においてこの水性のリポソームのコア又はこのリポソームのシェルの間にとらわれていない材料を除去するためであると説明されている。有利には非共有的に、このリポソームの表面に取り付けられている、組み込まれていないタンパク質の一部が、必要な被験体に対して医薬組成物を投与すると、この活性剤、例えば遊離のタンパク質の最初は迅速な放出を可能にすることがむしろ有利である。
【0043】
本発明の方法の更なる1つの利点は、先行技術の方法により製造されたMLVsのより低いカプセル化効率に比較しての、本発明の方法を用いたタンパク質(例えばCD−RAP)のMLVs中への高いカプセル化である。更に、本発明の方法の使用により、マルチラメラーリポソームが、先行技術の方法、例えば、タンパク質溶液での凍結乾燥した脂質粉末の再構成、の大きなユニラメラーリポソームの代わりに形成される。
【0044】
「マルチラメラーベシクル(MLVs)」との用語は、複数の脂質二重層を含有し、2つ以上のシェルを、特には、二相のマルチラメラー脂質ベシクルに対して含有するリポソームを意味する。この二相の脂質ベシクルは、複数の空間を空けた脂質二重層を含有し、これは、リポソーム形成成分と、場合により、生物学的に活性のある剤とを含有する。この脂質ベシクルは、この脂質二重層の間に形成された周辺の水溶液区画と、中心コア区画とを含有し、これは、活性剤を場合により含む水溶液を含む。
【0045】
「カプセル化、取り込み又は閉じ込み」は、本願明細書中では、物質の配置のために使用され、特に、親水性物質が、水性コア中に又はリポソームの隣接する2つのシェルの間にある。リポソームの内側に閉じこめられる材料の量は、先行技術において公知である方法により決定されることができ、これは例えば、Liposomes 第2版, A Practical Approach, P. Torchilin 及び Volkmar Weissig編, Oxford University Press (2002)中に説明されるような遠心分離による精製、Liposomes, A Practical Approach R. R. C編. New, IRL Press (1990)中に説明されるような透析又は本発明の実施例中に説明されるような方法である。
【0046】
「膜安定化剤の添加無し」とは、リポソーム断片又はベシクルの融合を阻害する、例えば、マルチラメラーベシクルの形成を阻害する量で物質が添加されないか又は存在しないことを意味する。膜安定化剤の例は、内側及び/又は外側表面での保護的な量での、保護糖、糖アルコール又はグリコシドである。糖、例えばトレハロースの50mMの濃度では、ベシクルは一般的には、脱水前と同じサイズである。糖濃度、例えば、トレハロース濃度125mM以上では、脱水前又は後でのベシクルの間には、認識可能な構造的な差異はほとんどない。しかしながら、少量のこのような膜安定化剤は、乾燥、例えばMLVsの形成の際にリポソームの融合をこれらが阻害しない場合には、包含されていてよい。膜安定化剤は有利には、本発明の組成物中で、≦5%(w/v)、有利には≦2.5%(w/v)、より有利には≦1%(w/v)、更に有利には≦0.1%(w/v)、最も有利には0%(w/v)の量で存在する。
【0047】
「活性剤、生物学的活性剤又は生物学的活性化合物」とは、治療的な、生物学的な、薬理学的な、医薬的な(例えば、1種以上の疾病、疾患又は症状又はこの症候の治療、制御、改善、予防、この開始の遅延、この発達の危険性の減少)及び/又は化粧的な作用を有する任意の剤を意味するものである。この治療的な作用は、局所的又は全身的であってよく、かつ、客観的又は主観的であってよい。有利には、活性剤は、タンパク質であり、特に、親水性タンパク質であり、より有利には、骨及び/又は軟骨再生タンパク質である。
【0048】
「膜安定化剤」とは、特定の濃度又は濃度範囲で添加される場合に、リポソームを、乾燥の間に、カプセル化された活性剤の破壊又は漏れを保護する任意の剤を意味するものである。保護糖、糖アルコール又はグリコシド、特に単糖又は二糖又はアミノグリコシドであってよい。保護糖及びグリコシドは、助剤、例えばトレハロース、マルトース、スクロース、グルコース、ラクトース、デキストラン、ストレプトマイシン及びジヒドロストレプトマイシンを含む。
【0049】
「融合促進剤」とは、MLVsへの脂質アセンブリーの融合を促進又は可能にする。更に、融合促進剤は有利には、助剤又は成分であって、活性剤、例えばタンパク質の天然の構造を安定化するものを意味する。更に、融合促進剤は、有利には、乾燥の間にSUVsを保護せず又はSUV脂質二重層の破壊(例えば、氷の結晶の形成による)から保護しない。融合促進剤は、無定形の又は部分的に結晶化する物質又は緩衝物質であることができ、これは、引き続く再水和によりMLVsの形成の間の活性剤のカプセル化を可能にするための脂質膜の脱水プロセス、例えば凍結乾燥の間の断片化、破断又は開放化を生じ、このような物質は、アミノ酸、特にアルカリ性アミノ酸を含み、有利にはアルギニン、ヒスチジン、シトルリン、リシン及び相応する塩、例えばリン酸塩、硫酸塩又は塩化物又はこの混合物を含む。有利には、融合促進剤は、乾燥したリポソーム形成(乾燥した再構成したベシクル、DRVs)の再水和の後に等張性な状態を可能にするのに十分な量で添加される。更に、融合促進剤は、有利には、不利な影響(例えば酸化)を、カプセル化されるべき活性剤、例えばタンパク質に対して有しない。
【0050】
「退行性椎間板変性症(DDD)」との用語は、慢性的なプロセスであり、部分的に、プロテオグリカンの進行性の損失及び髄核中の水含有量により特徴付けられ、これは、複数の疾病、例えば特発性腰痛、椎間板ヘルニア、内部椎間板破壊又は亀裂した椎間板、神経根障害、脊柱管狭窄、ヘルニア化した髄核誘発座骨神経痛、座骨神経痛、特発性側彎症及び/又は脊髄症において発現することができる。この椎間板の変性程度は、病前MRIの分析によりランク付けされることができる。
【0051】
本発明の目的のためには、「経椎間板的に(trandiscally)」との用語は、椎間円板中への、特に椎間円板の髄核(NP)中への注射を含むが、これに限定されず、これは、完全な円板、異なる段階の変性した円板、ヘルニア化した円板、破損した円板、脱層した円板又は亀裂した円板を含み、注入されるべき容積が、このNPの圧力を引き起こす可能性がある場合には、少なくとも一部のNPは、脊柱のためのインプラントの注入又は適用前に除去されることができる。幾つかの場合には、この除去された材料の容積は、おおよそ適用されるべきこの容積±20%の量である。経椎間板的にとの用語は、また、NPについて説明したとおりの変性するか又は完全な椎間板の線椎輪(AF)中への注射も含む。より大きなサイズの担体材料の適用の場合には、部分的な又は完全なこの円板の除去が、本発明による医薬組成物の適用前に必要である可能性がある。これは更に、外側ではあるがしかしながらAF壁又は背椎骨の隣接する終板に近接する位置へのインプラントの提供を含み、これは、AFの穿刺を、そして、従って、円板に対する可能性のある負荷を回避する可能性がある。
【0052】
「脂質」との用語は、本願明細書中で使用される場合には、脂質二重層の調整のために使用されることができる任意の物質を指定すると意図される。典型的な脂質は、糖脂質、レシチン、リン脂質、セラミド及びこの混合物を含む。
【0053】
適した脂質は、水素化されていようといまいと、これは、個々で又は混合して本発明によれば存在し、中性の又は正に荷電した脂質、例えば中性レシチン又はリン脂質を含む。脂質の例は、ホスファチジルコリン(PC)、卵ホスファチジルコリン(EPC)、ホスファチジルセリン(PS)、コレステロール(Chol)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、スフィンゴミエリン(SM)、ジオレイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジオレイルホスファチジグリセロール(DOPQ)、ジラウロイルホスファチジルコリン(DLPC)、ホスファチジルグリセロール(PG)、ジミリストリルホスファチジルコリン(SMPC)、ジパルミトリルホスファチジルコリン(DPPC)、ガングリオシド、セラミド、ホスファチジルイノシトール(PI)、リン酸(PA)、ジセチルホスファート(DcP)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ガングリオシド及び他の糖脂質、ステアリルアミン、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、及び他の合成の又は半合成の脂質である。リン脂質は、卵の白身、大豆又は他の動物又は植物由来の天然の脂質、例えば白身レシチン、大豆レシチン及び類似物であってよい。このリポソーム処方物は、典型的には、少なくとも1種、より有利には少なくとも2種の脂質、例えばコレステロール及びホスファチジルコリン、より有利には3種以上の脂質の混合物である。
【0054】
更なる有利な一実施態様においては、脂質は、この全体の脂質量に対して不飽和脂質20、15、10、8、5、3、1質量%(wt%)未満を含有する。有利には、この脂質は飽和中性脂質である。
【0055】
不飽和及び/又は中性脂質は、本発明によれば、形成されるリポソームの安定性を増加させ、かつ、本発明の目的のための医薬適用のために徐放性の放出を改善するために、明細書の範囲内で説明したとおり、有利な脂質である。不飽和脂質は、極めて低い転移温度を有する。脂質は、全ての製造相の間に脂質の結晶相中に存在するものであるので、この取り扱い、例えば、リポソームへの分散又は再水和は、極めてより容易かつ迅速である。周囲温度が、脂質の相転移温度の付近であるか又はこれを超える場合には、この結果は、組み込まれた化合物の強力な損失となるであろう。
【0056】
有利には、本願明細書中で説明された非経口的な医薬組成物は、2種の脂質、有利には2種の中性脂質、より有利にはホスファチジルコリン(PC)及びコレステロール(Chol)を含有する。有利には、この2種の脂質(例えばPC:Chol)のパーセント比は、この脂質の全量に対して、約2〜約7、約2〜約6、約2〜約5、約3〜約7、約3〜約6、約3〜約5、約2.7〜約5.4、約2.8〜約5.2、約2.8〜約4.2、約2.8〜約3.2(例えば3.4又は5)であることができる。
【0057】
中性脂質は、しばしば、MLVsの凝集を生じることが説明されているにもかかわらず、本発明のMLVsについては凝集は観察されることができなかった。
【0058】
有利には、この脂質ミックスが装入される。カチオン性脂質の例は、ジオクテデシルデメチルアンモニウムクロリド(DOPAC)、N−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル−N,N,N−トリメチルアンモニウム(DOTMA)、ジドデシルアンモニウムブロミド(DDAB)、1,2−ジオレイルオキシ−3−トリメチルアンモニオプロパン(DOTAP)、3−N−(N′,N′,−ジメチルアミノエタン)−カルバモールコレステロール(DC−Chol)、1,2−ジミリストリルオキシプロピル−3−ジメチルヒドロキシエチルアンモニウム(DMRIE)、2,3−ジオレイルオキシ−N−[2[スペルミンカルボキサミド]エチル]−N,N−ジメチル−1−プロパンアンモニウムトリフルオロアセター(DOSPA)及びこの類似物を含む。
【0059】
アニオン性脂質の例は、当業者に良く知られていて、かつ、カルジオリピン、アスコルビルパルミタート、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ホスファチジン酸及びホスファチジルセリン(PS)を含むがこれに限定されない。他のアニオン性脂質は、ホスファチジルエタノールアミンのアミド、例えばアンアンダミド及びメタンアンダミド、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール及びこの脂肪酸エステル、ホスファチジルエチレングリコール、酸性リソ脂質(lysolipid)、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキドン酸、オレイン酸、リノレン酸、リノール酸、ミリスチン酸、スルホ脂質及びスルファチド、遊離脂肪酸、飽和及び不飽和の、そして、負に荷電したこの誘導体を含む。より有利には、アニオン性脂質は、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルグリセロール脂肪酸エステル、ホスファチジルエタノールアミンアンアンダミド、ホスファチジルエタノールアミンメタンアンダミド、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルイノシトール脂肪酸エステル、カルジオリピン、ホスファチジルエチレングリコール、酸性リソ脂質、スルホ脂質、スルファチド、飽和した遊離脂肪酸、不飽和遊離脂肪酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキドン酸、オレイン酸、リノレン酸、リノール酸又はミリスチン酸である。本願明細書中で説明された任意のアニオン性脂質は、少なくとも1つの水素原子を、フッ素原子で置換することにより、フッ素化されていてよい。
【0060】
水溶性物質、例えばCD−RAPの改善されたカプセル化のためには、脂質成分は有利には、少なくとも1種の脂質が、この活性剤のカプセル化を増加させるように帯電されているように選択される。従って、別の一実施態様においては、非経口的な医薬組成物は、20%、15%、10%、5%、2%、1%までの、約10%〜1%の、約5%〜1%の、0.1%〜0.5%(w/v)の、帯電した脂質を、全体の脂質量に対して含有する。
【0061】
有利には、帯電した脂質は、カルジオリピン又はアスコルビルパルミタートであり、有利には、全脂質の0.1〜5%(w/w)、0.1〜3%(w/w)、0.1%〜1.5%(w/w)、0.1%〜1%(w/v)のカルジオリピン又はアスコルビルパルミタートである。
【0062】
適した脂質混合物の有利な一例は、ホスファチジルコリン(Pc)、コレステロール(Chol)及びアスコルビルプスコルビルパルミタート、有利にはPC:Chol:アスコルビルパルミタートは全脂質含有量の、60%〜1%:0%〜40%:0%〜5%の比、より有利には70%〜90%:7%〜30%:0.1%〜3%の比、最も有利には70%〜80%:20%〜28%:0.1%〜1.5%(w/w)の比である。
【0063】
帯電したリン脂質種は、リポソームのサイズの減少のために重要であるかも知れない(Liposomes 第2版, A Practical Approach, Vladimir P. Torchilin 及び Volkmar Weissig編, Oxford University Press (2002), 第7 頁、第1段落)、そして、凍結乾燥/再水和後に物質維持量に対して負の作用を有するかも知れないことを教示する、技術水準から予期されることとは対照的に、本発明者らは、帯電した脂質の添加は、再構成の後にMLVsのサイズを増加させることを意外にも見出した(図3参照)。
【0064】
このリポソームは、更に、脂質ポリマーを形成するために、親水性ポリマーで誘導体化された脂質を含んでよい。このような脂質ポリマーは有利には、その頭基で、ポリマーでもって、共有的に又は非共有結合により、修飾された脂質を含有する。この脂質ポリマーは、このリポソーム中に、この脂質ポリマーをリポソームを形成する脂質混合物に添加することにより、又は、最初にリポソームを形成し、次いで脂質ポリマーを、この予備形成されたリポソームの外側層に対して組み込むこよにより、導入されてよい。脂質ポリマーは、例えば、WO2006/027786中に説明され、かつ、これは参照により本願明細書に取り込まれる。
【0065】
本発明によるタンパク質は、例えば、親水性タンパク質を含む。
【0066】
有利には、親水性タンパク質は、軟骨又は骨の再生剤であり、例えば、軟骨促進剤又は骨形態形成タンパク質である。このような剤は、特に、TGF−β−ファミリー(トランスフォーミング成長因子、Roberts and Sporn, Handbook of Experimental Pharmacology 95 (1990), 第419-472頁)、DVRグループ(Hoetten et al., Biochem. Biophys. Res. Comm. 206 (1995), 第608-613 頁及びこの中に引用される更なる文献)(BMP(骨形態形成タンパク質、Rosen and Thies, Growth Factors in Perinatal Development (1993), 第39-58頁)を含む)、及びGDFs(成長分化因子)、インヒビン/アクチビン(Vale et al., The Physiology of Reproduction,第2版 (1994), 第1861 -1878頁)、GDNF、SOX、IGF及びEGFタンパク質ファミリーのメンバーを構成する。
【0067】
TGF−β−スーパーファミリー又はその活性のある変形の興味深いメンバーは、TGF−β−タンパク質、例えばTGF-β1 , TGF-β2, TGF-β3, TGF-β4, TGFβ5 (U.S. 5.284.763: EP 0376785; U.S. 4,886,747: DNA 7 (1988), 第1-8頁), EMBO J. 7 (1988), 第3737-3743頁), MoI. Endo. 2 (1988), 第1186-1195頁), J. Biol. Chem. 265 (1990), 第1089-1093頁), OP1 , OP2及びOP3 タンパク質 (U.S. 5.011.691. U.S. 5.652.337. WO91/05802) また同様に BMP-2, BMP-3, BMP-4 (WO88/00205, U.S. 5.013.649 及びWO89/10409, Science 242 (1988), 第1528-1534頁), BMP-5, BMP-6 及び BMP-7 (OP1 ) (Proc. Natl. Acad. Sci. 87 (1990), 第9841-9847頁, WO90/1 1366), BMP-8 (OP2) (WO91/18098), BMP-9 (W 093/00432), BMP-10 (WO94/26893), BMP-1 1 (WO94/26892), BMP-12 (WO95/16035), BMP-13 (WO95/16035), BMP-15 (WO96/36710), BMP-16 (WO98/12322), BMP-3b (Biochem. Biophys. Res. Comm. 219 (1996), 第656-662頁), GDF-1 (WO92/00382 及びProc. Natl. Acad. Sci. 88 (1991 ), 第4250-4254頁), GDF-8 (WO94/21681 ), GDF-10 (WO95/10539), GDF-11 (WO96/01845), GDF-5 (CDMP1 , MP52) (WO95/04819; WO96/01316; WO94/15949, WO96/14335及びWO93/16099及びNature 368 (1994),第639-643頁), GDF-6 (CDMP2, BMP-13) (WO95/01801 , WO96/14335及びWO95/16035), GDF-7 (CDMP3, BMP-12) (WO95/01802及びWO95/10635), GDF-14 (WO97/36926), GFD-15 (WO99/06445), GDF-16 (WO99/06556), 6OA (Proc.Natl. Acad. Sci. 88 (1991), 第9214-9218頁), DPP (Nature 325 (1987), 第81 -84頁), VgM (Proc. Natl. Acad. Sci. 86 (1989), 第4554-4558頁) Vg-1 , (Cell 51 (1987),第861 -867頁), ドーサリン (Cell 73 (1993), 第687-702頁), MIS (Cell 45 (1986), 第685-698頁), pCL13 (WO97/00958), BIP (WO94/01557), インヒビン a, アクチビンβA及びアクチビン βB (EP 0222491 ), アクチビンβC (MP121 ) (WO96/01316), アクチビン βE及びGDF-12 (WO96/02559及びWO98/22492), アクチビンβD (Biochem. Biophys. Res. Comm. 210 (1995), 第581 -588頁), GDNF (Science 260 (1993), 第1130-1132頁, WO93/06116), ノイルツリン(Neurturin )(Nature 384 (1996),第467-470頁), パラセプチン(Parsephin) (Neuron 20 (1998), 第245-253頁, WO97/3391 1 ), アルテミン(Artemin) (Neuron 21 (1998), 第1291 -1302頁), Mic-1 (Proc. Natl. Acad. Sci USA 94 (1997), 第11514-1 1519頁), ユニビン(Univin )(Dev. Biol. 166 (1994), 第149-158頁), ADMP (Development 121 (1995), 第4293-4301頁), Nodal (Nature 361 (1993), 第543-547頁), スクリュー(Screw) (Genes Dev. 8 (1994), 第2588-2601頁)又はこれらの組み合わせを含む。他の適した使用可能なタンパク質は、生物学的に活性のある生合成されたコンストラクト、例えば生合成されたタンパク質であって、2種以上の既知の形態学的なタンパク質からの配列を用いて設計されたものである。生合成されたコンストラクトの例は、U.S. 5.011.691中(例えば、COP-1 , COP-3, COP-4, COP-5, COP-7及びCOP-16)に開示されている。使用可能なSOXタンパク質ファミリーメンバー(例えばSOX−9)の例は、WO96/17057中に開示されている。この特許文献又は特許出願を含む引用された刊行物の開示は、本願明細書中に参照により組み込まれる。
【0068】
一実施態様において、軟骨又は骨の再生剤は、SH3ドメインを有するか又はSH3様ドメイン折りたたみを採用するドメインを有するタンパク質、例えばCD−RAPからなる群から選択されている。SH3ドメイン又はSH3様ドメインは、例えば、Stoll et al. (Stoll, R. et al. (2003) Backbone dynamics of the human MIA protein studied by (15)N NMR relaxation: implications for extended interactions of SH3 domains. Protein Sci. 12: 510-519; Stoll, R. et al. (2001) The extracellular human melanoma inhibitory activity (MIA) protein adopts an SH3 domain-like fold. Embo J 20: 340-349)中に説明されていて、かつ、Kelley, L. A. et al.(Kelley, L. A. et al. (2000) Enhanced genome annotation using structural profiles in the program 3DPSSM. J MoI. Biol 299: 499-520)中に刊行された3D−PSSMウェブによるSH3折りたたみの予想により決定される。SH3ドメインは、Srcホモロジードメインとも呼ばれ、多くの細胞内タンパク質中で見出されるタンパク質分子である。これまでには、SH3ドメインタンパク質が、脊髄疾患の治療に使用可能であることは説明されていない。
【0069】
別の実施態様において、軟骨又は骨の再生剤は、特異的に、フィブロネクチン、フィブロネクチン断片及び/又はプロリンリッチ配列、例えば、文献(Stoll, R. et al. (2001 ) The extracellular human melanoma inhibitory activity (MIA) protein adopts an SH3 domain-like fold. Embo J 20: 340-349; Homandberg, G. A. and Hui, F. (1996) Association of proteoglycan degradation with catabolic cytokine and stromelysin release from cartilage cultured with fibronectin fragments. Arch. Biochem. Biophys. 334: 325-331 ; Homandberg, G. A. et al. (1997) Fibronectin-fragment-induced cartilage chondrolysis is associated with release of catabolic cytokines. Biochem. J 321 (Pt 3): 751-757)中に説明されているものに結合することができるタンパク質である。
【0070】
一実施態様において、軟骨又は骨の再生剤は、フィブロネクチン又はインテグリン結合ドメインを含有する。軟骨分化及び維持因子の、細胞外タンパク質、例えばフィブロネクチン又はフィブロネクチン断片、また同様にインテグリンへの結合は、例えばELISAにより決定されることができる。フィブロネクチン、この断片又はインテグリンは、プラスチック表面上に被覆されることができ、かつ、軟骨分化及び維持因子に暴露されることができる。結合の量は、軟骨分化及び維持因子に対するペルオキシダーゼ結合したモノクローナル抗体により決定されることができる。インテグリン結合もまた、Bauer et alにより説明されたとおりに決定されることができ、参照により本願明細書に組み込まれる(Bauer, R. et al. (2006) Regulation of integrin activity by MIA. J Biol Chem 281 : 11669-11677)。
【0071】
有利には、軟骨又は骨の再生剤は、a)CD−RAP(配列番号1)の成熟配列及びその機能的断片を含有するか又は有する軟骨細胞タンパク質又はその変異体、b)CD−RAPのC末端の4つのシステイン骨格、配列番号1のアミノ酸12〜107と少なくとも63%、有利には80%、より有利には90%のアミノ酸配列ホモロジーを有するタンパク質、又はc)この中に定義された任意の一般的な遺伝子配列1〜3を有するタンパク質(配列番号2、3及び4)として定義されたものである。
【0072】
CD−RAPとしての生物学的機能を有する機能的断片は、有利には、少なくとも20、特に少なくとも40、より有利には少なくとも50、最も有利には80の、配列番号1中に示される配列の隣接するアミノ酸の長さを有する。有利には、この機能的断片は、配列番号1の1〜50、1〜70、1〜80、20〜80、20〜107の位置からのアミノ酸を含有する。
【0073】
成熟CD−RAP配列(配列番号1)
【表1】

一般的配列1(配列番号02)
【表2】

一般的配列2(配列番号03)
【表3】

一般的配列3(配列番号04)
【表4】

その際、「X」は、それぞれの出現時に、独立して、任意のアミノ酸を示し、かつ、小文字でのこの数は、任意のアミノ酸の数を示す。有利には、「X」は独立して、天然に発生するアミノ酸を示し、かつ、特に、A、R、N、D、B、C、Q、E、Z、G、H、I、L、K、M、F、P、S、T、W、Y又はVである。
【0074】
特に有利には、軟骨又は骨の再生剤は、CD−RAP(軟骨由来のレチノイン酸感受性タンパク質)、MIA(メラノーマ阻害性活性)、OTOR(フィブロサイト由来のタンパク質、FDP、MIA様、MIAL)及びTANGO120とも呼ばれ、これは分泌されたタンパク質のクラスに属する(Bosserhoff, A. K. et al. (2004) Characterization and expression pattern of the novel MIA homolog TANGO. Gene Expr. Patterns. 4: 473-479; Bosserhoff, A. K. and Buettner, R. (2003) Establishing the protein MIA (melanoma inhibitory activity) as a marker for chondrocyte differentiation. Biomaterials 24: 3229-3234; Bosserhoff, A. K. et al. (1997) Mouse CDRAP/MIA gene: structure, chromosomal localization, and expression in cartilage and chondrosarcoma. Dev. Dyn. 208: 516-525; WO00/12762)。CD−RAP又はMIAは、130アミノ酸タンパク質(EP 0710248, EP 1146897、参照により完全に本願明細書中に取り込まれる)であり、これは、軟骨分化のための高度に特異的なマーカーである。
【0075】
有利には、本発明によるタンパク質は、CD−RAP(MIA)、BMP−2、BMP−7、BMP−12、BMP−13、GDF−5(MP−52)、TGF−ベータ1、TGFベータ2、TGFベータ3、TGFアルファ又はこの活性のある断片又は組み合わせを含み、最も有利にはCD−RAP(MIA)である。
【0076】
本願明細書中で考慮されるタンパク質は、完全な又は短縮したゲノムDNA又はcDNAから、又は合成のDNAsから、真核性の又は原核性の宿主細胞中で発現されることができる。タンパク質は、培地又は封入体から単離されるか及び/又は生物学的に活性の組成物を形成するために再フォールディングされることができる。例えば、EP 0710248及びLougheed et al.をCD−RAPの組み換えタンパク質精製のための例示的なプロトコルについては参照のこと(Lougheed, J. C. et al. (2001 ) Structure of melanoma inhibitory activity protein, a member of a recently identified family of secreted proteins. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A 98: 5515-5520)。このような単離されたタンパク質の活性(例えば軟骨形成)をどのように試験するかの詳細な説明は、Tscheudschilsuren et al.及びStoll et al中に説明されていて(Tscheudschilsuren, G. et al. (2005) Regulation of mesenchymal stem cell and chondrocyte differentiation by MIA. Experimental Cell Research 1 -10; Stoll, R. et al. (2003) Backbone dynamics of the human MIA protein studied by (15)N NMR relaxation: implications for extended interactions of SH3 domains. Protein Sci. 12: 510-519)、この開示は、参照により本願明細書中に組み込まれる。軟骨誘導のためのバイオアッセイは、EP 1146897中の実施例2〜5中に説明され、これは、本願明細書中に参照により取り込まれる。
【0077】
有利には、融合促進剤は、浸透圧ストレスを回避するために、生理学的な環境中で及び/又は非経口適用のための等イソモル(isoosmolar)条件を維持するために十分な量で使用される。有利には、乾燥前の粒子材料に対して、融合促進剤は、8(m/v)%未満、有利には5%未満、有利には2〜5%での量で使用される。
【0078】
有利な一実施態様において、ベシクルを含有する凍結乾燥したタンパク質を含有するこの非経口的な医薬組成物は、融合促進剤を、水溶液を用いた再水和後に、等張性のリポソーム分散液を形成すべく十分な量で含有する。有利には、この再水和されたリポソーム分散体のpHは、pH4〜pH9、pH5〜pH8、有利にはpH6〜pH7.5である。
【0079】
適した無機の又は有機のアニオンは、例えばスクシナート、フマラート、シトラート、マレアート、ホスファート、アセタート、クロリド、有利にはホスファートである。
【0080】
有利には、この融合促進剤は、凍結乾燥したリポソームの再構成後に、リン酸アルギニン、有利には100〜800mM、より有利には100〜600mM、最も有利には280〜400mMリン酸アルギニンである。
【0081】
他の添加剤又は更なる物質、例えば酸化防止剤、例えばメチオニン、アスコルビン酸、トコフェロール、ブチルヒドロキシトルエン(BTH)、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸プロピル、帯電した物質、例えばステアリルアミン、オレイルアミン、リン酸ジセチル又はこの類似物が、適当に適合されることができる。有利には、この添加剤は、ブチルヒドロキシトルエン(BTH)、ブチルヒドロキシアニソール及び/又はメチオニンであり、有利には全体の脂質の0.1〜5%(w/w)、0.1〜3%(w/w)、0.1〜1.5%%(w/w)、全体の脂質の0.1〜1%(w/w)の酸化防止剤、例えば、ブチルヒドロキシトルエン、及び/又は、5〜100mMの再水和したリポソームのメチオニン終濃度、有利には5〜50mM、最も有利には10〜25mMの再水和したリポソームのメチオニン終濃度である。更なる物質は、徐放性放出を改善するために機能する物質であることができ、これは、リポソームの半減値を増加させ、リポソームを標的化し、従って、この薬剤を特定の組織又は細胞種類に対して標的化するものである。
【0082】
前記活性剤に加えて、本発明のリポソーム性医薬的組成物は、更なる治療的な又は生物学的に活性のある剤を含有することができる。例えば、特定の症状、例えば変形性関節症の治療において使用可能である治療的な因子、例えば、関節軟骨又は滑膜成分の破壊に関連する、抗金属プロテイナーゼ、サイクリン化合物、サイトカインアンタゴニスト、コルチコステロイド、TNF阻害剤、IL−阻害剤、抗血管由来物質、アグレカナーゼ阻害剤、p38キナーゼ阻害剤、アポトーシス阻害剤、ヒアルロニダーゼ阻害剤及びタンパク質加水分解酵素の阻害剤に限定されない阻害剤1種以上が存在することができる。炎症を制御する因子、例えばインフリキシマブ(infliximab)、エタネルセプト(etanercerpt)、アダリムラブ(adalimulab)、ネレリモンマブ(nerelimonmab)、レネルセプト(lenercerpt )及びこの類似物又はこの組み合わせもまた、この組成物の一部であることができる。このリポソーム性医薬組成物が、細胞外マトリックス成分、例えばヒアルロン酸又はこの誘導体、例えば塩、エステル、内部エステル及び硫酸化した誘導体、有利にはヒアルロン酸の部分エステルを含有してよいことも想起される。
【0083】
本発明はまた、非経口医薬組成物又は本発明の任意の実施態様による製造方法をカバーすることも想起されるものであり、その際、水溶液で再水和すると、形成されるリポソームの70%、80%、90%、95%、98%より多くが、活性剤がマルチラメラーリポソームであるカプセル化を生じる。より詳細には、この上記のパーセンテージは、再水和すると、形成されるリポソームを意味し、このうち、この上に示したパーセンテージは、形成される全体のリポソームの部分を示す。
【0084】
一実施態様において、この水溶液は緩衝化されるか又は緩衝化されず、有利には緩衝化されず、有利には、注射のための水である。
【0085】
有利な一実施態様において、このマルチラメラーリポソームは、これは有利には、リポソームの分散液であるが、200〜400mosmol、有利には250〜350mosumolのオスモル濃度を有する。
【0086】
一実施態様において、本発明による非経口的医薬組成物はリポソーム脂質のμmolにつきタンパク質少なくとも0.125pmol、有利にはCD−RAP1.25pmolを含有する。
【0087】
一実施態様において、本発明によるマルチラメラーリポソームは、上記したとおり脱水及び再水和プロセスにより調整され、これは、溶液中に、有利には等浸透圧の溶液中に、内部に又は外部に、リポソーム性活性剤を含有する。
【0088】
他の有利な実施態様は、a)ホスファチジルコリン、コレステロール及びアスコルビルパルミタートを、全脂質の約78〜80%:19.5〜28%:0.5〜2%の比で、b)骨及び/又は軟骨誘導剤、有利にはCD−RAP及びc)融合促進剤、有利にはリン酸アルギニンを、pH4〜pH9、有利にはpH5〜pH8、最も有利にはpH6〜pH7.5のpH値で含有するベシクルを含有する凍結乾燥したタンパク質を含有する医薬組成物を包含し、その際、この内部の水性空間を有するマルチラメラーリポソームは、骨及び/又は軟骨誘導剤を有し、これは、1μmよりも大きい、有利には1〜2.5μmの平均リポソーム直径を有し、活性剤をカプセル化する水溶液で乾燥組成物を再水和すると形成される。
【0089】
本発明の方法は、乾燥したリポソーム組成物、また同様に、再構成したリポソーム組成物を提供する。この乾燥したリポソーム組成物は、有利には、凍結乾燥され、かつ/又は滅菌性である。この再構成したリポソーム組成物は、有利には、非経口的に投与可能であり、かつ、滅菌性である。特に、高いカプセル化効率及び水性媒体中での再水和後のリポソーム内の高いタンパク質濃度及びマルチラメラーリポソームの形成を可能にする。
【0090】
この方法は、有機溶媒の非存在下での脂質、脂質混合物又は脂質フィルムの水和の工程を含み、これにより、大MLVsが形成され、及び、引き続く、平均直径50〜200nm、50〜150nm、50〜120nm、70〜120nmを有利に有するユニラメラー小ベシクル又はリポソームの発生の工程を含む。
【0091】
本発明によれば、脂質又は脂質混合物、例えば脂質粉末が、水溶液の添加により水和されることができる。この水溶液は、緩衝化されているか又は緩衝化されていないことができる(例えば、緩衝化したか又は緩衝化していないタンパク質バルク溶液)。有利には、この水溶液は、水少なくとも50%(w/w)、より有利には少なくとも90%(w/w)、最も有利には少なくとも99%(w/w)を含有する。脂質フィルムは、この脂質の有機溶媒、例えばtert−ブタノール中への溶解及び窒素流下での引き続く乾燥又は凍結乾燥により調整されることができる。
【0092】
ユニラメラー状小リポソームを発生させ、かつリポソームをサイズ化する複数の技術が入手可能である。これらの方法は、このリポソームのサイズを減少させ、かつ、より小さいユニラメラーベシクルを形成するために十分な力を提供する種々の技術を含む。このような方法は、均質化を含み、これは、大リポソームをより小リポソームへと剪断により断片化する。典型的な均質化手順においては、このリポソームは、所望のサイズ、例えば平均直径50〜200nm、50〜150nm、50〜120nm、又は、70〜120nmが達成されるまで、エマルションホモジェナイザーを通じて再循環される。リポソーム製造のために使用される高圧ホモジェナイザーは、例えば、Liposomes 第2版, A Practical Approach, Vladimir P. Torchilin 及び Volkmar Weissig編, Oxford University Press 第17頁(2002)中に説明されている。他の方法は、加圧下に多孔性のポリカーボネート膜を通過させるリポソームの押出を含む。一般的には、このリポソーム分散液は、複数回、この膜を通じて循環される。連続するより小さい孔の膜は、このサイズのゆるやかな減少化のために使用されることができる。有利なフィルター又は膜は、250nm、200nm、150nm、100um、80nm、50nm又は15nm以下のサイズを有する。サイクルの有利な経過は1、有利には2、最も有利には3回以上である。更なる方法は、超音波、マイクロ流動化又は機械的な剪断、また同様に様々な方法の組み合わせである。このリポソームのサイズは、慣用の方法、例えば光散乱を用いてモニターされることができる。
【0093】
ユニラメラー小リポソームの形成後に、このユニラメラー小リポソームに水性のタンパク質溶液が添加される。この工程の後、前又はこの工程と共に、融合促進剤が添加される。
【0094】
滅菌工程は、SUVsの形成後及び/又はこの水性のタンパク質溶液の添加後に包含されることができる。滅菌工程、例えば滅菌濾過は、孔径0.22μmを有する滅菌フィルターを通じた濾過により実施されることができる。このような滅菌フィルターの例は、Ultipor N66 (PALL), Acrodisc 4455T (PALL)又はMillex GV SLGV025LS (Millipore)である。
【0095】
有利な一実施態様において、タンパク質の濃度は、25μg/ml〜10mg/mlであり、しかし、より典型的には、250μg/ml〜2.5mg/ml再構成したマルチラメラーリポソーム調製物である。
【0096】
有利には、融合促進剤は、本発明の生成物及び方法中において、等張のリポソーム性分散液が水溶液での再水和後に形成されるべく十分な量で含有され、有利には50mM〜800mM、200mM〜600mM、最も有利には250mM〜400mMの濃度である。有利には、この再水和されたマルチラメラーリポソーム及び/又はリポソーム性分散液のpHは、pH4〜pH9、より有利にはpH5〜pH8、最も有利にはpH6〜pH7.5である。
【0097】
前記脂質分散液の脱水は、凍結乾燥又はフリーズドライを含む。凍結乾燥以外の乾燥方法、例えば真空乾燥、窒素の流の下での乾燥、噴霧、トレー及びドラム乾燥が、本発明において使用できることが理解されるものである。別の実施態様において、前記脂質分散液の脱水は、ユニラメラー小ベシクルの、脱水による、例えば凍結乾燥又はフリーズドライによる断片化、破断又は開放である。
【0098】
選択的に、更なる工程、例えば膜、例えばポリカーボネート膜を通じた濾過工程が、上記した製造工程の任意の工程の後に包含されることができ、これにより、例えば、親油性物質の結晶が除去される。
【0099】
上述したものを含む添加剤(例えば酸化防止剤、安定化剤)は、本発明の方法工程の任意の段階で包含されることができる。
【0100】
脱水、即ち、乾燥、特に凍結乾燥された形態において、この組成物は、長期にわたり安定に貯蔵されることができる。
【0101】
この脱水された生成物(例えば、凍結乾燥した「ケーク」)は、次いで、蒸留水、水性の又は他の適した、緩衝化されているか又は緩衝化されていない溶液の添加により、再構成されてよい。このリポソームは、溶液の穏やかな撹拌により、水溶液中に再懸濁されるか又は再水和されることができる。この再水和は、室温で又はこのリポソームの組成物及びその内部含有物にとって適した他の温度で実施されることができる。この凍結乾燥した処方物の再水和は、乾燥前の当初のリポソーム懸濁液に比較して増加したサイズ分布及び形態を有するマルチラメラーリポソームの懸濁液又は分散液を形成する。
【0102】
別の有利な一実施態様において、タンパク質をカプセル化するマルチラメラーベシクルは、実質的に、この凍結乾燥されたリポソーム組成物の再水和(工程e))の間に形成され、より有利には、その際、このマルチラメラーリポソームは、この脂質分散液の脱水の間には形成されない(工程b))。
【0103】
有利には、少なくとも1種の生物学的に活性のある化合物の取り込み効率又は高い組み込みは、活性剤の40%、55%より多く、60%より多く、70%より多く、80%より多い。
【0104】
本発明は、ベシクルを含有する凍結乾燥したタンパク質を含有する乾燥した再構成可能なベシクルを含有する医薬組成物を及び活性剤のほとんど検出可能でないか又は検出可能でない凝集又は分解を有するこの製造方法カバーする。
【0105】
有利な一実施態様において、60%、80%、90%、95%より多い又は約100%の再水和されたMLVリポソームは、1μmより大きい、有利には1.0μm〜5μm、1.5μm〜5μm、1.0μm〜3μm、最も有利には1.2μm〜2.5μmのサイズ分布を維持するか又は有する。平均ベシクル直径は、電子顕微鏡検査、光子相関顕微鏡、レーザー光散乱、レーザー回折(例えばMastersizerTM)又は光オブスキュレーション技術(例えばAccusizerTM)又はLiposomes 第2版, A Practical Approach, Vladimir P. Torchilin 及び Volkmar Weissig編, Oxford University Press (2002)中に説明された更なる方法により決定されることができ、参照により本願明細書中にこの説明は組み込まれる。
【0106】
有利な方法は、光子相関顕微鏡である。
【0107】
本発明の更なる観点は、本発明の方法により得ることができる凍結乾燥した医薬組成物、また同様に、本願明細書中で説明した方法により得ることができる再構成された医薬組成物を含む。
【0108】
活性剤、例えば骨及び/又は軟骨再生剤、例えばCD−RAPをカプセル化するマルチラメラーリポソームは、種々の治療領域、例えば骨軟骨性の欠損の場合における軟骨再生、全層欠損、部分層欠損、関節、例えば変形性関節症、関節リウマチ、乾癬性関節炎、若年慢性関節炎、肢根型偽性関節炎、リウマチ性多発性関節炎、滑膜炎又は絨毛結節性滑膜炎、脊髄疾患、変性性椎間板疾病、腱及び/又は靱帯誘導、腱炎、半月板損傷及び/又は膝前十字靭帯(ACL)損傷において、利点を提供することができる。活性剤のこのようなリポソームによる配送の利点は、所望される周辺組織へのより効率的、局所的な配送である。このリポソームは、標的化された位置での徐放性放出デポー及びカプセル化された薬剤の徐放性を提供するために設計されることができる。
【0109】
例えばSUVsに照らした本発明のMLVsの他の利点は、滑液中への注射を介した変形性関節症の治療の場合には、MLVsを含有する薬剤が、この大きなサイズのために適用場所で制止され、かつ、このカプセル化された薬剤を徐放性放出することがである。
【0110】
従って、本発明の別の観点は、骨及び/又は軟骨欠損、免疫学的疾患、有利には変形性関節症、関節リウマチ及び脊髄疾患、例えば変性性椎間板疾患の、被験体中での、有利には水溶液でのこの凍結乾燥した組成物を再水和した後の、1回又は繰り返した注射による治療のための医薬組成物を製造するための、本発明の滅菌性の凍結乾燥医薬組成物の使用である。
【0111】
有利な一実施態様において、この脊髄疾患は、特発性腰痛、椎間板ヘルニア、内部椎間板破断又は亀裂した椎間板、神経眼損傷、脊髄狭窄、ヘルニア化した髄核誘発した座骨神経痛、座骨神経痛、特発性側弯又は脊髄症である。
【0112】
有利な一実施態様において、注射は、局所的な又は非全身的な注射、有利には、滑液、滑液空間、髄核、髄核空間への、椎間板中への又は経椎間板的的な注射である。
【0113】
この用量スキームは、一週間に複数回から一ヶ月に複数回に及ぶことができ、その際3日おきに1回以下の有利な間隔を有する。この全体の治療期間は、有利には、1週間に少なくとも1回、より有利には1ヶ月に少なくとも1回である。
【0114】
この医薬組成物は、また、少なくとも3ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも12ヶ月、18ヶ月まで、24ヶ月まで、又は更に長期である長期間の投与のために適していることもできる。
【0115】
本発明の医薬組成物は、有利には、リポソームタンパク質、約0.25mgから約25mgまでの、特に約0.5mg〜約15mgまでの、より有利には約5mg〜15mgまでの単一用量単位で投与されることができる。
【0116】
更なる有利な治療プロトコルは、本発明の医薬組成物を、
a)少なくとも1回、特に最初の週に少なくとも1〜3回、この後に、1〜5週間の投与無しの間隔をおき、そして、場合により、この投与プロトコルを1回以上繰り返す、
b)1週間に1回又は連続した数週間に1回、又は
c)1ヶ月に1回又は連続した数ヶ月に1回投与することを含み、
その際、この月毎の用量は、有利には、リポソームタンパク質、約1mg〜約100mgまで、特に約2mg〜約60mgまで、より有利には約20mg〜約50mgまでである。
【0117】
貯蔵時のリポソーム安定性は、少なくとも3ヶ月、有利には少なくとも6ヶ月、より有利には少なくとも1年間である。
【0118】
全ての開示された参照文献は、本願明細書中に、参照により明示的に全体が取り込まれる。
【0119】
有利な実施態様が説明及び描写される一方で、この変更が、この分野の通常の技術に一致して、本発明を逸脱することばく、特許請求の範囲により定義されるより広い観点において為されることができることが理解されるべきである。
【0120】
本発明は、更に、添付した図面及び以下の実施例により説明される。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】図1は、実施例3に応じた凍結及び融解方法(A)により製造されたリポソームの形態を、本発明の(B)の実施例1に応じた方法に比較して示す。
【図2】図2は、二重偏光中での光学的顕微鏡により分析された再水和されたリポソームの形態を示す。
【図3】図3は、アスコルビルパルミタートの使用量に依存した再構成後の実施例6Bに応じて製造されたMLVs±標準偏差の平均サイズ分布を示す。
【0122】
実施例
実施例1:融合促進剤を用いた、凍結乾燥した再構成されたリポソーム(DRVs)の調整
A:ホスファチジルコリン(Lipoid S100)750mg、コレステロール250mgを、アスコルビルパルミタート10mg有り又は無しで、20mlのエタノール中に丸底フラスコ中で溶解させた。この溶媒を回転蒸発器中で定量的に除去した。この生じる脂質薄膜を、水10ml中で再水和し、室温での穏やかな撹拌によりリポソーム(10%(w/v)脂質)を得た。ユニラメラーベシクル(SUV)を、約100nmの直径でもって、引き続く超音波処理により調製した。SUV300μlを、CD−RAP溶液(420mMアルギニン/H3PO4、pH7.5中に3mg/ml) 250μlと混合し、凍結乾燥させる。このカプセル化は、この凍結ケークの蒸留水300μlでの再水和及び穏やかなボルテックスの間に生じる。これは、40%よりも多い、平均直径1.5μmを有するMLV中への取り込み効率を、この取り込まれた薬剤の化学的な変更無しに生じ、これは、HPLC及び酵素連結イムノアッセイ(ELISA)により決定されるとおりである。
【0123】
B:ホスファチジルコリン(Lipoid S100)111.4g、コレステロール37.1g及びアスコルビルパルミタート1.5gを、tert−ブタノール800ml中に溶解し、分子分散された混合物を得た。この溶媒を、凍結乾燥により定量的に除去した。この乾燥脂質を、1.5Lの水で水和し、強力に振盪することにより、数マイクロメーターの直径を有する複数の層で積層したリポソームが形成された。この脂質分散液を、高圧ホモジェナイザーを用いて均質化し、引き続き、100nmの膜を通じて押出、単分散性のユニラメラー状小ベシクル(SUV)を得た。SUV 3mlをCD−RAP溶液(420mMアルギニン/H3PO4、pH7.5中の3mg/ml) 2.5ml中に添加し、凍結乾燥させた。この安定な均質な凍結ケークを、蒸留水3mlで再構成及び引き続き振盪すると、約1.5μmの直径を有し、かつ、40%よりも多いカプセル化効率を有する複数の層が積層したリポソーム(DRV)の均質な分散液を生じた。
【0124】
実施例2:様々な助剤、例えば融合促進剤を用いたDRVsの調製
様々な助剤又は添加剤、例えば融合促進剤の、親水性タンパク質、例えば、様々な疾病、軟骨及び骨の疾患、例えば変形性関節症、骨軟骨性欠損又は変性性椎間板疾患の治療に使用可能である、CD−RAPを含有する乾燥した再構成したベシクル(DRVs)の形成に対する影響を、分析した。実施例1のようにアルギニン/H3PO4、pH7.5を添加剤及び/又は融合促進剤として使用する代わりに、複数の他の添加剤及び/又は緩衝化系を試験し、かつ、表1中に要約した。次のパラメーターが分析される:光子相関分光法(PCS)によるサイズ分布、浸透圧計によるオスモル濃度、HPLCによるタンパク質安定性、再構成されたベシクルの視覚による外観及びカプセル効率。
【0125】
表1:様々な融合促進剤を使用したDRVsの特性決定
【表5】

【0126】
タンパク質安定性、リポソームの平均サイズ、均質な分散液及びカプセル化効率(EE)を、乾燥したリポソームの再水和後に決定した。nd:決定せず、パラメーターは、他の要求が満たされていない場合には、決定しなかった。
【0127】
低温保護剤としてトレハロース、マンニトール及びこの混合物を使用することにより、タンパク質及びこのリポソーム膜の両方の安定化効果が得られ、大きいMLVsの代わりに、影響されていない、ユニラメラー状小ベシクルを生じた。他の処方物は、低温保護剤としてポリエチレングリコール4000を含有し、これは、凍結ケークをリポソームに再水和した後に、均質な分散液の規格に不合格であった。良く知られた処方物緩衝液系としてのリン酸緩衝された食塩水の適用は、酢酸pH6.0及びpH4.2単独での添加により、タンパク質は乾燥工程において安定化されることができず、タンパク質の強力な破壊を生じた。しかしながら、本発明者らは、アミノ酸を含有する処方物は、意外な結果を生じることを見出した。添加剤としてのグリセリンは、タンパク質安定性の維持のために塩の添加を必要とし、しかしながら、非生理学的な媒体中での再構成されたリポソーム性処方物を生じた。しかしながら、意外にも、塩基性アミノ酸、例えばアルギニン、ヒスチジン及びリシン(これに限定されない)は、高い取り込み効率(≧40%)でCD−RAPが複数の大リポソーム(>1.5μm)中にカプセル化された均質なリポソーム性溶液又は分散液を得るための全ての要求性を、製造プロセスの間のタンパク質の化学的な変更無しに満たした。
【0128】
実施例3:「凍結融解」方法を用いたリポソームの製造
ホスファチジルコリン(Lipoid S100)742mg、コレステロール248mg及びアスコルビルパルミタート10mgを、20mlのエタノール中に丸底フラスコ中で溶解させた。この溶媒を回転蒸発器中で定量的に除去した。この生じる脂質薄膜を、水7.8ml中で再水和し、室温での穏やかな撹拌によりリポソーム(12.8%(w/v)脂質)を得た。ユニラメラーベシクル(SUV)を、約100nmの直径でもって、引き続く超音波処理により調製した。SUV溶液234.8μlを、CD−RAP溶液(420mMアルギニン/H3PO4、pH7.5中に1.15mg/ml)65.2μlと混合した。このリポソーム性分散液は、3回の凍結及び融解サイクル後(液体N2中での冷却及び室温でのその後の凍結)にミルク状になり、これは、脂質膜の融合と、リポソームの形成のためである。このリポソームの形態は、凍結及び融解サイクルの回数の例えば5回への増加と共に、維持される。この生成物は、カプセル化効率(実施例5の方法Aに応じて測定)が40%より多い、粘性のあるミルク状の懸濁液である。しかしながら、本発明の方法に応じて調製されたMLVsとは対照的に、このリポソームの主要部は、凍結及び融解方法により産生され、そして、ユニラメラーのみであった。二重偏光中での光学顕微鏡によるラメラ性の決定は、5%よりも少ないマルタクロス(malteser cross)(複数の層が積層したリポソーム中での検出パラメーター)を示し、その一方で、本発明による凍結乾燥により調製されたリポソーム(例えば、実施例1)は、≧95%の複数の層が積層したリポソームを生じた(図1)。凍結及び溶融方法の場合の、MLVsの代わりのユニラメラーリポソームの形成は、更に、文献(Liposomes, A Practical Approach edited by R. R. C. New, IRL Press (1990), 第58頁、最後の段落)により支持されている。
【0129】
実施例4:脂質粉末再構成の際に製造されたリポソーム
ホスファチジルコリン(Lipoid S100)750mg、コレステロール250mg及びアスコルビルパルミタート10mgを、20mlのエタノール中に丸底フラスコ中で溶解させた。この溶媒を回転蒸発器中で定量的に除去した。この生じる脂質薄膜を、200mMアルギニン/H3PO4、pH7.5 10ml中で再水和し、室温での穏やかな撹拌によりリポソーム(10%(w/v)脂質)を得た。ユニラメラーベシクル(SUV)を、約100nmの直径でもって、引き続く超音波処理により調製した。3000μlのSUVを、2500μlの蒸留水と混合し、凍結乾燥した。このカプセル化は、3000μlのCD−RAP溶液(0.3mg/ml、150mM Arg/PO4 pH7.5)を用いた脂質凍結ケークの再水和及び穏やかなボルテックスの間に生じた。
【0130】
このように産出されたリポソームを、実施例1Aに応じて製造したものと比較した。この取り込み効率は、実施例5Aに応じて決定した。
【0131】
意外にも、この凍結乾燥した脂質ケークのCD−RAP溶液での水和は、CD−RAPの20%±4%(n=4)の極めて乏しい取り込み効率を生じ、その一方で、実施例1Aによる、CD−RAPと脂質との共凍結乾燥物(co-lyophilisate)は、60%±10%(n=10)の3倍に増加したカプセル化取り込みを生じた。
【0132】
取り込みに寄与されるべき、脂質とタンパク質の両者の均質な近密な接触は、高い取り込み効率のために本質的であり、これは成分の共凍結乾燥により最適に達成される。
【0133】
実施例5:CD−RAPのカプセル化効率の決定
3つの異なる方法を使用して、上述した実施例に応じて製造されたリポソーム中のCD−RAPの取り込み効率を決定した。方法Aを、リポソーム内部のカプセル化されたCD−RAPを、遠心分離により、取り込まれていないCD−RAPから分けるために使用した。方法Bは、透析段階を使用して、カプセル化を決定した。方法Cは、遠心分離/限外濾過による変更された決定である。
【0134】
方法A:遠心分離ステップによる決定
再水和したリポソーム溶液100μlを、極めて注意深くかつゆっくりと、注射用の水300μlで、リポソーム間での密度差を得るために、希釈した。より迅速な希釈は、取り込まれたタンパク質の損失の他にリポソームの破壊を生じた。この希釈ステップは、リポソームと取り囲む溶媒との間に差異を作成するために必要であり、これは次いで、このリポソームの成功した回転(spinning down)のために必要である。この希釈されたリポソーム性溶液を室温で16000rcfで15分間遠心分離し、大量のペレットと透明な上清が生じた。この上清を注意深く除去し、このタンパク質レベル(=取り込まれていないタンパク質)を、リン酸緩衝化した食塩水及び0.01%(v/v)Tweenでの希釈後に、逆相HPLCにより決定した。
【0135】
このペレットを、300μlの20%(w/v)のTriton X−100溶液で可溶化し、この後に強力に振盪した。意外にも、本発明者らは、ポリ−L−リシン、例えば50μlの2%(w/v)のポリ−L−リシン溶液の添加が、イオン結合によりこの脂質に結合したタンパク質の解離のために必要であることを見出した。550μlの50%(v/v)のアセトニトリル/0.1%(v/v)トリフルオロ酢酸での希釈後に、このタンパク質濃度を、逆相HPLCにより決定した。
【0136】
方法B:透析による決定
再構成したリポソーム1mlを、ニトロセルロースエステル膜のホース中に移した。この溶液を引き続き、350mMアルギニン/H3PO4、pH7.5/0.1%(w/v)ウシ血清アルブミン 30mlに対して透析した。リポソーム性溶液の精製を、4時間の4℃でのインキュベーション及び穏やかな振盪後に終了した。受容媒体中へと透析されたカプセル化されていないタンパク質の量を、逆相HPLCにより直接的に決定した。
【0137】
方法C:遠心分離/限外濾過による決定
再水和したリポソーム溶液125μlを、限外濾過ユニット(Amicon Microcon Ultracel YM -100 units, Millipore, CAT.No.: 42413, 100'000 Da カットオフ)中で、13200rcfで60分間遠心分離した。このステップにより、周囲の溶液からのリポソームの分離が生じた。この濾過物中で、カプセル化されていないBMP−2の量を、標準曲線及びこの透過物の容積を用いて、RP−HPLCによるBMP−2の濃度の測定により決定した。
【0138】
実施例6:様々な脂質を用いたDRVsの調製
ホスファチジルコリン及びコレステロールを、リポソームの調製のための成分として使用する代わりに、複数の他の脂質を、脂質組成物のための全体的な置換又は部分的的付加のために試験した。
【0139】
A.完全に飽和した脂質について
完全に飽和した大豆レシチン(LIPOID SPC-3)1gを、エタノール20ml中に溶解させ、かつ、10%SUVの溶液を、実施例1Aによる調製後に得ることができる。SUVの溶液300μlを、CD−RAP溶液(0.3mg/ml、420mMArg/PO4。pH7.5)250μlと混合し、かつ、ガラスのバイアル中で凍結乾燥して、極めて安定な凍結ケークを得た。蒸留水300μlの添加後に、この凍結ケークの再水和を、極めてゆっくりと20分間未満でなく実施し、これは、迅速な注射可能な生成物のための要求を満たさなかった。
【0140】
B:負に帯電した脂質の添加
DRV中のCD−RAPのリポソーム性処方物を、負に帯電した脂質の、大豆レシチン及びコレステロールの脂質組成物中への導入を除き、実施例1Aに応じて実施した。
【0141】
1.カルジオリピンの添加
カルジオリピンを、0mg、5mg、10mg、15mg、25mg及び100mgの量で、ホスファチジルコリン(Lipoid S100)375mg及びコレステロール125mgに対して添加し、そして、引き続きエタノール10ml中で溶解した。この更なる手順、例えば、SUVの調製、処方、凍結乾燥を、実施例1Aに応じて実施した。脂質/タンパク質ケークの、蒸留水0.3mlでの再水和及び振盪後に、マルチラメラーベシクルを、0.mg〜25mgのカルジオリピンを含有する試料中に得、これは粘度の迅速な増加を示す。100mgのカルジオリピンを含有する試料は、ゲル様の溶液を生じ、これは高い粘度を有し、かつ、非常に小さいベシクル(光子相関分光法により測定して400nm)を有した。
【0142】
このリポソーム直径を、光子相関分光法により決定し、これは、カルジオリピン添加25mgを用いて、平均直径1500nmから開始して最終的に2500nmに増加した。
【0143】
2.アスコルビルパルミタートの添加
アスコルビルパルミタートを、0mg、2.5mg、5mg、10mg、25mg、50mg及び100mgの量で、ホスファチジルコリン(Lipoid S100)750mg及びコレステロール250mgに対して添加し、そして、エタノール20ml中で溶解した。この更なる手順、例えば、SUVの調製、処方、凍結乾燥を、実施例1Aに応じて実施した。脂質/タンパク質ケークの、蒸留水0.3mlでの再水和及び振盪後に、マルチラメラーベシクルを、0mg〜50mgのアスコルビルパルミタートを含有する試料中に得、これはカルジオリピンの添加に応じて粘度の迅速な増加を示す。100mgのアスコルビルパルミタートを含有する試料は、極めて高い粘性を有するゲル様溶液を生じる。
【0144】
しかしながら、意外にも、このマルチラメラーリポソームは、再水和後に、例えば1%以上のアスコルビルパルミタート(図2)の多い量及びより大きい直径(図3)と共に、アスコルビルパルミタートの増加する量と共に、アグロメレーションの強力な傾向を示し、これは文献(Liposomes 第2版, A Practical Approach, Vladimir P. Torchilin 及び Volkmar Weissig編, Oxford University Press (2002), 第7頁)中に説明されていることとは対照的であり、これは、参照により本願明細書中に取り込まれる。
【0145】
実施例7:再構成されたDRVs中のrhBMP−2のカプセル化
凍結乾燥したリポソームを、実施例1Aに応じて、ホスファチジルコリン750mg(Lipoid S100)及びコレステロール250mgを用いて製造した。SUVs300μlを、rh−BMP−2溶液250μl(0.50mg/ml、420mMアルギニン/H3PO4、pH7.5及び5.0中)と混合し、引き続き凍結乾燥した。2つの異なるrh−BMP−2調製物を使用し、大腸菌由来のrhBMP−2(Ruppert, R. et al. (1996) Human bone morphogenetic protein 2 contains a heparinbinding site which modifies its biological activity. Eur.J Biochem. 237: 295302)及びCHO由来のrhBMP−2(InductOs, Wyeth Pharma GmbH)である。300μlでの再水和により、約1.5μmの直径を有する、MLV中への80%より多くの取り込み効率を生じた。このカプセル化効率を、方法C−遠心分離/限外濾過に応じて決定した。全ての測定を二重に実施した。この結果は表2中に示される。
【0146】
表2:様々なpH変形でのアルギニン/H3PO4中でのrhBMP−2のリポソームカプセル化の物質収支
【表6】

【0147】
実施例8:ウサギ前側十字靱帯離断モデル
MIA/CD−RAPが軟骨崩壊を、変形性関節炎の動物モデル中で緩和又は妨げるかどうかを評価するために、ウサギ前側十字靱帯離断モデルを使用した。一般的な麻酔及び滅菌条件下で、ウサギの股関節を、内側の膝蓋骨周辺切開を介して処理した(側副靱帯及び膝蓋骨靱帯の間)。この膝蓋骨を、外側から置き換え、膝蓋下で脂肪パッドを固定化し、かつ、この全体の前側十字靱帯を暴露するために開創した。この切開を層において縫合し、かつ、接着包帯をこの縫合後に適用した。この関節内注射を、X線透視検査及び鎮静下で実施した。この手術及び注射スケジュールは次のとおりであった:一群につき6匹の動物を使用した(群1;偽(ACLを切開しなかった、群2:リポソーム、群3:リポソーム+低用量のMIA/CD−RAP、群4:リポソーム+中間用量のMIA/CD−RAP、群5:リポソーム+高用量のMIA/CD−RAP)n=30)。偽群中の動物を除く動物を5回注射した。この注射を10日毎に実施した。動物を、この最終的な注射の10日間後に殺し、かつ、X線を得た。
【0148】
引き続き、試料を10%の中性に緩衝化したホルマリン中に固定し、EDTA中で脱石灰し、かつパラフィン中に包理した。この切片を、サフラニンO−ファーストグリーン(safranin O-fast green)及びヘマトキシリン及びエオシンで染色し、組織学的に分析した。
【0149】
このモデル中で、CD−RAPを配送するマルチラメラー状リポソームは、軟骨破壊及び進行を減少させた。この組織学的な分析は、中用量及び高用量のCD−RAPでの、リポソーム中にカプセル化されたCD−RAPの、関節空間中への注射の効率を示し、これはOAの進展(p<0.05)を減少させた。中用量で配送されたCD−RAPは、OAの発達の防げに最も有効であるようにみえ、これは、サファリンO染色の強度により示され、これは、偽群に比較して中用量群において維持された(p<0.05)。この放射線学的な分析は、OAの発達の妨げを、全ての治療群中で、CD−RAP低、中及び高用量群で示した(p<0.05)。
【0150】
実施例9:線椎輪穿刺モデル
この例においては、CD−RAPの注射は、ウサギの椎輪穿刺モデルにおいて、椎間円板高さを部分的に回復させるのに効果的である。
【0151】
椎間円板の変性は、規定のニードルゲージを用いた、円板中への線椎輪の穿刺により青年期のニュージーランド白ウサギ中で誘発されることができる(Singh, K. et al. (2005) Animal models for human disc degeneration. Spine J 5: 267S-279S)。円板の背面領域へのリドカインの注射による局所的な麻酔の提供後に、外側単純撮影を得て、IVD高さのための前注射ベースラインを決定した。引き続き、ウサギを側方の腹臥位に配置し、後外側の腹膜後のアプローチを使用して、腰部のIVDsを暴露した。それぞれのウサギ中で、AFを18Gニードルで穿刺した。4週間後に、この動物には、緩衝化した食塩水(PBS中)又はビヒクルリポソームが対照として注射され、又は2.5mg/mlのCD−RAP(PBS中)のタンパク質溶液又はリポソームによりカプセル化されたCD−RAP(2.5mg/ml)が髄核中に注射され、かつ、12週間継続した。前臨床的な結果を、腰椎の磁気共鳴画像(MRI)スキャンにより分析し、IVD高さを放射線学観察によりモニターし、この際、イメージングソフトウェアを用いた慣用のプログラムを用いて測定し、かつ、%DHI(術後DHI/術前DHI×100)を計算した。IVDsの組織学的な分析のためには、切開部をヘマトキシリンエオシン及びサフラニンOで染色した。群の間の相違を、統計学的な差異について一元配置分散分析法(One-Way Analysis of Variance;. One-Way)(ANOVA)を使用して、評価した。
【0152】
それぞれのウサギは、1つの椎間円板を食塩水中のCD−RAPで、もう一方の椎間円板を食塩水又はリポソーム又はリポソームによりカプセル化したCD−RAPで処理されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)少なくとも1種の脂質
b)少なくとも1種の活性剤
c)融合促進剤を含み、かつ
d)膜安定化剤を含まない
ベシクルを含む凍結乾燥した活性剤を含む乾燥医薬組成物であって、この乾燥医薬組成物の水溶液を用いた再水和が、1μmよりも大きい平均リポソーム直径を有する、活性剤をカプセル化するマルチラメラー状リポソームの形成を生じる、乾燥医薬組成物。
【請求項2】
少なくとも1種の活性剤が、タンパク質、特に、親水性タンパク質又はその活性断片である、請求項1記載の乾燥医薬組成物。
【請求項3】
融合促進剤が、アルギニン、ヒスチジン、リシン又はシトルリンから選択されたアルカリ性アミノ酸である、請求項1又は2記載の乾燥医薬組成物。
【請求項4】
保護糖、糖アルコール又はグリコシドが存在しない、請求項1から3までのいずれか1項記載の乾燥医薬組成物。
【請求項5】
更に、無機の又は有機のアニオン、特に、スクシナート、フマラート、シトラート、マレアート、ホスファート、アセタート及びクリリドから選択された無機の又は有機のアニオンを含有する、請求項1から4までのいずれか1項記載の乾燥医薬組成物。
【請求項6】
親水性タンパク質が、骨及び/又は軟骨再生剤である、請求項2記載の非経口医薬組成物。
【請求項7】
a)脂質、脂質混合物又は脂質フィルムの有機溶媒の非存在下での水和工程、
b)有利には平均直径50〜200nmを有するユニラメラー状小ベシクルの発生工程、
c)活性剤の水溶液の添加工程、
d)工程c)の後、前又は一緒に、融合促進剤及び場合により無機の又は有機のアニオンの添加工程、及び
e)膜安定化剤の添加なしでの前記脂質分散体の脱水工程
を含む、水溶液を用いた再水和後に、1μmよりも大きい平均リポソーム直径を有する、活性剤をカプセル化するマルチラメラー状リポソームを形成する乾燥リポソーム組成物の製造方法。
【請求項8】
滅菌濾過工程が、工程b)及び/又は工程c)の後に実施される、請求項7記載の方法。
【請求項9】
a)脂質、脂質混合物又は脂質フィルムの有機溶媒の非存在下での水和工程、
f)有利には平均直径50〜200nmを有するユニラメラー状小ベシクルの発生工程、
g)活性剤の水溶液の添加工程、
h)工程c)の後、前又は一緒に、融合促進剤及び場合により無機の又は有機のアニオンの添加工程、
i)膜安定化剤の添加なしでの前記脂質分散体の脱水工程、
j)水溶液での再水和及び、1μmよりも大きい平均リポソーム直径を有する、活性剤をカプセル化するマルチラメラー状ベシクルの形成工程
を含み、滅菌濾過の工程が、工程b)及び/又はc)の後に実施される、1μmよりも大きい平均リポソーム直径を有する、活性剤をカプセル化するマルチラメラー状リポソームを含有する投与可能なリポソーム組成物の製造方法。
【請求項10】
脂質が、少なくとも1種の中性脂質、有利には少なくとも2種の中性脂質、より有利にはホスファチジルコリン(PC)及びコレステロール(Chol)を含む、請求項7から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
融合促進剤が、アルギニン、ヒスチジン、リシン又はシトルリンの群から選択されたアミノ酸である、請求項7から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
無機の又は有機のアニオンが、スクシナート、フマラート、シトラート、マレアート、ホスファート、アセタート及びクロリドの群から選択される、請求項7から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
生じるマルチラメラー状リポソームが、凍結乾燥したリポソーム組成物の再水和の間に形成される、請求項7から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
活性剤が、タンパク質、有利には親水性タンパク質である、請求項7から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
活性剤が、骨及び/又は軟骨再生剤、有利にはCD−RAP又はその活性断片である、請求項14記載の方法。
【請求項16】
活性剤のカプセル化効力が40%よりも多い、請求項7から15までのいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
請求項7から8までのいずれか1項記載の方法により得られる、凍結乾燥医薬組成物。
【請求項18】
請求項9から16までのいずれか1項記載の方法により得られる、医薬組成物。
【請求項19】
被験体中への水溶液での凍結乾燥組成物の再水和後の注射による、骨及び/又は軟骨欠陥、免疫学的疾病、有利には変形性関節症、関節リウマチ及び脊髄疾患の治療のための医薬組成物の製造のための請求項1から6までのいずれか1項又は請求項17記載の凍結乾燥医薬組成物の使用。
【請求項20】
注射が局所的又は非全身的注射であり、有利には滑液、滑液空間、髄核、髄核空間への、椎間板中への又は経椎間板的な注射である、請求項10記載の凍結乾燥医薬組成物の使用。
【請求項21】
注射が、1週間に少なくとも1回実施される、請求項19又は20記載の凍結乾燥医薬組成物の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−505785(P2010−505785A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−530810(P2009−530810)
【出願日】平成19年10月5日(2007.10.5)
【国際出願番号】PCT/EP2007/008659
【国際公開番号】WO2008/040556
【国際公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(504439252)エスシーアイエル テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (4)
【Fターム(参考)】