説明

半導体オンインシュレータの構造を処理するための方法

【課題】半導体オンインシュレータ構造を処理するための方法を提供すること。
【解決手段】本発明の方法は、(i)薄い層(3)の表面上に、露出領域と呼ばれる薄い層の領域(3a)を画定するマスク(4)と、そのマスクで覆われる領域(3b)とを形成するステップと、(ii)酸化物又は酸窒化物の層(2)中の酸素の少なくとも一部が露出領域(3a)を通って拡散するための要因となる熱処理を施すステップとを含む。
ステップ(ii)の前又は最中に、薄い層(3)の半導体の窒化物又は酸窒化物の層(5)は、露出領域(3a)上に形成され、上記層(5)の厚さは、露出領域(3a)を通る酸素の拡散速度とマスク(4)で覆われる領域(3b)を通る酸素の拡散速度との比が2より大きくなるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続する支持基板、半導体の酸化物又は酸窒化物の層、及び半導体の薄い半導体層を含む半導体オンインシュレータ(SeOI)の構造を処理するための方法に関する。その半導体層は、酸化物又は酸窒化物の層中の酸素の少なくとも一部を薄い半導体層を通って拡散させるために、低酸素空気中かつ制御された温度及び時間の条件下で熱処理が施され、それによって、埋められた酸化物又は酸窒化物の層の完全な又は部分的な溶解(すなわち消失)を導いている。
【背景技術】
【0002】
上記処理を、好都合に局所的に適用することができ、すなわち、他の領域内で初期の酸化物又は酸窒化物の層を維持しながら、所望のパターンに対応する、SeOI構造の画定された領域で部分的又は完全に酸化物又は酸窒化物の層を溶解することができる。これは、その後、酸化物又は酸窒化物の層の「局所溶解」と呼ばれる。
【0003】
「酸窒化物」の化学式は、一般式(Se)OxNyを有する化合物を意味すると理解され、ここで、Seが考えられる半導体のシンボル(例えばシリコン)であり、xとyがそれぞれゼロ以外の酸素と窒素の含有量であると定義される。酸化物は、y=0の場合に相当する。
【0004】
このような処理のおかげで、図1に示すように、さらに可変厚さの酸化物又は酸窒化物の層(部分的な溶解の場合)を有するSeOI構造、又は図2に示すように、すなわち、酸化物又は酸窒化物の層が保持されている「SeOI」ゾーン、及び完全に溶解した層内のゾーンの両方を含むハイブリッド構造を取得することが可能である。
【0005】
酸窒化物の層の場合には、窒素も半導体の薄い層を通って拡散し、溶解処理後、酸化物又は酸窒化物が目的の半導体中に変換される。
【0006】
図1のSeOI構造は、支持基板1、溶解処理によって局所的に削減された厚さの酸化物又は酸窒化物の層2、及び薄い半導体層3を備える。
【0007】
図2のハイブリッド構造は、支持基板1と薄い半導体層3を備え、その間に、酸化物又は酸窒化物の層2が(「SeOI」ゾーンが形成できるように)特定の領域で保存される、(Bを参照したバルク半導体ゾーンが形成できるように)その他の中で完全に溶解されている。
【0008】
このような構造を、1つの同じウェハ上の異なる基板を必要とする電子部品(例えば、「メモリ」コンポーネント及びロジックコンポーネント)の製造に用いることができる。
【0009】
言い換えれば、それは、それぞれ1つの同じチップ内にSeOI基板上とバルク基板上で動作する回路の共同統合を可能にする。
【0010】
局所溶解の利点は、「バルク」と「SeOI」のゾーンを備えるウェハと集積回路の製造を提供することであり、それらの実証済みの技術を維持しながら、バルクゾーンを必要とするコンポーネントとSeOIゾーンを必要とするコンポーネントの両方が作製できるようになる。
【0011】
特に、局所溶解の技術の精度は、コンポーネントのスケールでバルクゾーンとSeOIゾーンを画定することが可能になる。
【0012】
局所溶解は、一般的に薄い半導体層の表面にマスクを形成することによって、及び、その後の半導体層の表面に向かって酸化物又は酸窒化物の層からの酸素の拡散を促進する熱処理を施すことによって実行される。
【0013】
マスクは一般的に酸素の拡散に対して完全に又は部分的にバリアを形成する材料で作られているので、酸素が薄い半導体層の露出ゾーンを通じるときのみ簡単に拡散することができるが、すなわちそれらのゾーンはマスクで覆われていない。マスクが酸素の部分的な拡散を可能にする場合には、それにもかかわらず、溶解がマスクの欠如が要因でより容易になっている露出(マスクフリー)ゾーンのそれよりはるかに低い溶解速度を保証する。
【0014】
文献WO 2008/114099は、マスクが酸化して完全に拡散をブロックすることによって得られる、このような方法を説明する。
【0015】
しかし、このようなマスクの使用は、薄い半導体層で、マスクのエッジでのトレンチの出現を含むいくつかの欠点があるかもしれない。
【0016】
これらのトレンチでは、半導体によるマスクの濡れや、マスクと半導体との間の反応等のいくつかの発現があるかもしれない。
【0017】
すべてのケースで、半導体原子の高い表面移動度がこれらのトレンチの作成に関与している。
【0018】
上記表面移動度は、処理温度及び、還元性の又は弱酸性の処理気圧に依存している。
【0019】
これらの局所的な欠陥は、半導体層の厚さに達することができる深さで、薄い半導体層上のコンポーネントの製造に有害である。
【0020】
特に、マスクエッジの欠陥は、表面形状の変化を増幅する。
【0021】
この変化は、後段の回路を製造するステップの実行を困難にさせ、半導体のディウェッティング(dewetting )につながる可能性がある。すなわち、薄い半導体層での凝集(cohesion)の損失につながり、薄い半導体層は解離して酸化物又は酸窒化物の層の表面に小滴を形成する。
【0022】
これらの局所的な欠陥を除去又は最小化するために、化学的機械的に研磨することは、表面を平坦化する目的と共に(半導体層のたるみと関係するレベルの違いを防ぐために)、除去する半導体層の厚みが大きすぎるため、それを想定することが困難であり、この層の初期厚さは、酸素の拡散を容易にするために小さくなるように選択されている。
【0023】
さらに、研磨は、半導体層の厚さの均一性を減少させる傾向がある。
【0024】
それゆえ、前述の欠点を持っていない、酸化物又は酸窒化物の層を局所に溶解するための方法が求められている。
【0025】
本発明の一つの目的は、このような薄い半導体層の表面形状が改善されるまでの局所溶解方法を提供することである。
【発明の概要】
【0026】
本発明によれば、方法は、連続する支持基板、半導体の酸化物又は酸窒化物の層、及び上記半導体の薄い半導体層を含む半導体オンインシュレータ構造を処理するために提供される。上記方法は、以下のステップを含む。
【0027】
(i)薄い層の表面上に、マスクで覆われていない露出領域と呼ばれる薄い層の領域であって第1のパターンに従って分布された領域と、マスクで覆われた領域であって第1のパターンの補完的な第2のパターンに従って分布された領域とを画定するマスクを形成するステップと、
(ii)不活性又は還元性の大気中で、並びに制御された温度及び時間の条件下で、熱処理を施し、酸化物又は酸窒化物の層中の酸素の少なくとも一部を薄い半導体層の露出領域を通って拡散させ、上記第1のパターンに従って配置される酸化物又は酸窒化物の層の領域で酸化物又は酸窒化物の厚さの減少を導くステップとを含み、
上記方法は、ステップ(ii)の前又は最中に、薄い層の半導体の窒化物又は酸窒化物の層は、露出領域上に形成され、上記窒化物又は酸窒化物の層の厚さは、薄い層の露出領域を通る酸素の拡散速度とマスクで覆われた領域を通る酸素の拡散速度との比が2以上大きくなるようにすることを特徴とする。
【0028】
本発明の第1の実施形態によると、薄い層の半導体の窒化物又は酸窒化物の層を形成するステップは、ステップ(ii)の熱処理が適用される前に実行される。
【0029】
また、薄い層の半導体の窒化物又は酸窒化物の層を形成するステップは、ステップ(ii)の少なくとも一部の熱処理の間に実行される。
【0030】
薄い層の半導体の窒化物又は酸窒化物の層を、次のいずれかの方法で形成することができる。
【0031】
窒素を含有する大気に薄い層の露出領域を露出することにより、
窒素プラズマを上記薄い層に適用することにより、又は
窒素を含有する大気中にアニールすることにより、形成することができる。
【0032】
変形例によれば、ステップ(ii)の熱処理の大気は窒素を含み、ステップ(ii)中に、薄い層の半導体の窒化物又は酸窒化物の層が、露出領域の表面上に形成される。
【0033】
従って、ステップ(ii)の処理を、好ましくは0.1〜1%の間にある濃度の窒素を含む大気中に、1100〜1300℃の間の温度で、5〜500分の間実行することができる。
【0034】
本発明の他の特徴及び利点は、添付図面を参照して、以下の発明の詳細な説明から明らかになるだろう。ここで、実施形態の説明を容易にするために、様々な層は必ずしも縮尺が示されていない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明によって得られた構造の第1類型の断面図である。
【図2】本発明によって得られた構造の第2類型の断面図である。
【図3】画定されたパターンに従う薄い半導体層上のマスクの第1の実施形態を示す。
【図4】図3中の構造の薄い半導体層の露出ゾーンの窒化物又は酸窒化物の層の形成を示す。
【図5】画定されたパターンに従う薄い半導体層上のマスクの第2の実施形態を示す。
【図6】図5中の構造の薄い半導体層の露出ゾーンの窒化物又は酸窒化物の層の形成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
(半導体オンインシュレータ構造)
図3を参照して、溶解処理は、基盤から表面へ連続して、支持基板1と、半導体の酸化
物又は酸窒化層2と、局所的なマスクで事前に覆われている半導体層3を含む半導体オンインシュレータ構造(SeOI)、に適用される。
【0037】
支持基板1は、基本的にSeOI構造に剛性を提供する。
【0038】
この目的のために、支持基板1は典型的に約百数ミクロンの厚さを有する。
【0039】
支持基板は、バルク基板又は他の複合基板とすることができる。つまり、様々な材料の少なくとも2層からなる多層で構成される。
【0040】
支持基板は、このように、次の材料、単結晶又は多結晶の形態のシリコン、窒化ガリウム又はサファイアのいずれかを含むことができる。
【0041】
半導体層3は、例えばシリコン、ゲルマニウム又はシリコンゲルマニウムなどの少なくとも1つの半導体を含む。
【0042】
半導体層3は、任意に混合でき、すなわち、それは半導体の多層で構成することができる。
【0043】
半導体層の材料は、単結晶又は多結晶アモルファスとすることができる。それは、ドープされた又はドープされていない多孔性又は非多孔性とすることができる。
【0044】
電子部品を受信するのに適していることが半導体層にとって特に有利である。
【0045】
薄い半導体層は、酸素の十分急速な普及を可能にするために、5〜200nm、好ましくは30〜100nmの間の厚さを有する。
【0046】
酸化物又は酸窒化物の層2は、支持基板1と半導体層3との間で、構造内に埋められており、それゆえ、技術用語で、BOX(埋められた酸化物)の頭字語で一般的に言及される。
【0047】
層2は、薄い層3を構成する半導体の酸化物又は酸窒化物から形成され、薄い層中の上記窒化物又は酸窒化物の分解が起こる。
【0048】
溶解処理の期間を制限するために、SeOI構造の酸化物又は酸窒化物の層は、一般的に薄く又は超薄型になって、すなわち、その厚さは5〜100nm、好ましくは10〜25nmの間である。
【0049】
SeOI構造は、結合を含む、当業者に知られている任意の層を転送するテクニックにより作製される。
【0050】
これらのテクニックの中で、主に以下のステップを含むSmartCut(登録商標)方法に言及することができる。
【0051】
i)支持基板上又はドナー基板上に半導体層を含む酸化物又は酸窒化物の層を形成するステップと、
ii)ドナー基板上に弱くなったゾーンを形成し、弱くなったゾーンが転送される薄い半導体層を画定するステップと、
iii)支持基板へドナー基板を結合し、酸化物又は酸窒化物の層が結合する表面に配置されるステップと、
iv)支持基板へ薄い半導体層を転送するように弱くなったゾーンに沿ってドナー基板を壊すステップ。
【0052】
この方法は、当業者に知られているため、ここでは詳しく説明しない。参考文献には、例えば、Jean-Pierre Colinge作、Kluwer Academic Publishersの「シリコンオンインシュレータ技術であるVLSIの材料」第2版の50から51ページに言及されている。
【0053】
ドナー基板を結合すること、酸化物又は酸窒化物の層で覆われている1つ及び/又は他の基板の支持基板に半導体層を含むこと、及びその後、支持基板上に唯一の薄い半導体層を残すためにその裏面を通じてドナー基板の厚さを削減することを含む方法を用いることも可能である。
【0054】
こうして得られたSeOI構造は、その後、従来の仕上げ処理(研磨、平坦化、洗浄、等)を施すことができる。
【0055】
SeOI構造を形成するためのこれらの方法では、酸化物層は、熱酸化(その場合、酸化物が酸化を受けた基板材料の酸化物である)によって又は他の堆積、例えばシリコン酸化物(SiO2)の堆積によってドナー基板上又は支持基板上に形成される。
【0056】
酸化物層も、大気と接触するドナー基板及び/又は支持基板の自然酸化に起因する、自然酸化層となることができる。
【0057】
任意の適切な方法を使用して、例えば酸窒化物の堆積などのような窒化に続いて酸化する酸窒化物の層を形成するか、又は他の窒素プラズマの酸化物を露出する。
【0058】
対照的に、SIMOX方法によって得られたSOI構造で実施した試験は、酸化物の溶解を観察できないが、これはそれが取得された方法による低い酸化物の品質に起因している。読本では、L. Zhongら作の応用物理学文学67、3951(1995年)であるこの論文に対する敬意に言及することができる。
【0059】
それには、結合が実行される前のことが記述されており、接触表面の一方及び/又は他の上で、エネルギー結合を増加するために、当業者に周知のステップのクリーニング又はプラズマ活性化を実施することが可能である。
【0060】
残りの説明では、薄い半導体層3の構造は、シリコン、すなわちシリコンオンインシュレータ(SOI)構造で作られる溶解処理の適用が実施例として得られる。
【0061】
(マスクの形成)
図3に示すように、マスク4は、薄い層3の表面上に形成され、拡散してはならない酸素を通す表面の領域3bを覆う、又は少なくとも露出領域3aよりも非常に低い拡散
率を持っていなければならない。
【0062】
マスク4で覆われていない薄い層3の表面の領域3aは、「露出領域」と呼ばれる。
【0063】
酸素及び必要ならば窒素の簡単な拡散を可能にしなければならない、酸化物又は酸窒化
物の層2の上記領域3aは、酸化物又は酸窒化物の層の厚さの全て又は一部を溶解するた
めに望まれるパターンに従って分布している。
【0064】
言い換えれば、マスク4は、酸化物又は酸窒化物の層の厚さの全て又は一部を溶解する
ために望まれるパターンと補完的なパターンに従って薄い層3の上に分布している。
【0065】
この目的のために、マスクは、基板から来る酸素に対するバリアを形成する材料で作ら
れている。
【0066】
例えば排他的ではないが、文献WO 2008年114099及びWO 2010年034696に記載された
方法のいずれかに従って、マスクを形成することができる。
【0067】
このように、第1の実施形態によれば、マスクは薄い層3の表面上に窒化物又は酸化物
の局所堆積によって生成される。
【0068】
図5に示す第2の実施形態によれば、マスクは薄い層3bのゾーンの熱酸化によって形
成され、ゾーン3aはそのような酸化から保護される露出ゾーンを形成することを意図さ
れている。
【0069】
前述の実施形態と比較して、そのようなマスクの形成は、消費されている薄い層3の小
さい厚さを引き起こし、薄い層3の部分的に「埋められた」マスクにつながる。
【0070】
第3の実施形態(図示していない)によると、マスクは、原子が埋められた酸化物又は
酸窒化物の層から拡散しなければならない元素である酸素、及び必要ならば窒素を通す領
域より厚い薄い層3の領域から構成されている。
【0071】
(露出領域の処理)
図4を参照して、又はもし適切ならば図6を参照して、マスク4が形成された後、処理は薄い層3の露出領域3aに適用され、その処理は、上記領域3aの表面上に、層3の半導体の窒化物又は酸窒化物の薄い層5を形成することを目指す。
【0072】
第1の実施形態によれば、上記処理は、溶解する熱処理が実施される前に実行される。
【0073】
処理は、窒素プラズマを適用することを含むことができる。
【0074】
実施例として、N2RIE(reactive ion etching)プラズマは、500W及び50mTorrの圧力で30秒間適用される。
【0075】
あるいは、処理は窒素アニールを含むことができる。
【0076】
例えば、上記窒素アニールは、99%のアルゴン及び1%の窒素を含む大気中の1000℃で30分間実行される。
【0077】
第2の実施形態によれば、露出ゾーンの処理は、溶解する熱処理中に実施される。
【0078】
この目的のために、窒素は、熱処理の全て又は一部中に溶解する処理の不活性又は還元性の大気中に導入される。
【0079】
窒素濃度は、通常、0.1〜1%の間にある。
【0080】
例えば、溶解する熱処理は、1時間の間、1100〜1300℃の間の温度で、0.1%〜1%の窒素を含有するアルゴン大気中で行われている。
【0081】
窒素濃度は、高温、高濃度で、温度の関数として変化する。
【0082】
このように露出領域3aの表面上に形成される窒化物又は酸窒化物の層5の厚さは、典型的には、1〜10nmの間である。
【0083】
これにより、露出領域3aを通る酸素の拡散速度とマスク4で覆われる領域3bを通る酸素の拡散速度との比が2以上となることを得ることができる。
【0084】
(溶解する熱処理)
熱処理のため、SOI構造は、ガスの流れが不活性又は還元性の大気を形成するように生成される炉内に配置される。
【0085】
ガスの流れはこのように、アルゴン、水素及び/又はこれらのガスの混合物、並びに必要ならば窒素を含むことができる。
【0086】
埋められた層が、大気中の酸素濃度と酸化物又は酸窒化物の層の表面の酸素濃度との間に十分な勾配があるときに、すなわち大気中の酸素含有量が十分に低いときに、唯一溶解すること、に注意することは重要である。
【0087】
このように、炉内の大気の酸素含有量は、例えば10ppm以下の、一定の適切なしきい値より低くなければならないと考えられており、リークを考慮すると、ガスの流れが1ppbより低い酸素含有量を有していなければならないことを意味する。
【0088】
この点の参照を、Ludsteckらの論文「薄い酸化物と酸化物の最適化のための成長モデル」、応用物理学会誌、Vol.95、第5号、2004年3月で行うことができる。
【0089】
これらの条件は、従来の炉で得ることができない。従来の炉は、あまりにも多くのリークを生成しすぎてこのような低酸素の含有量の気密性(結合を避けるための部品数の削減、不可欠な部品の使用など)を達成させるようにすることができず、炉は、最適なリークのために特別に設計されなければならない。
【0090】
対照的に、前述のしきい値を超えて、例えば約10ppmの大気中の高すぎる酸素濃度は、溶解を停止し、露出したシリコンの酸化を促進する。
【0091】
SOI構造の酸化物の溶解の機構は、読者が参照可能なO. Kononchukらの「SOIウェハ中の埋められた酸化物の内部溶解」、ソリッドステートフェノミナ、vols.131〜133(2008)、PP 113‐118の記事で詳しく説明されている。
【0092】
熱処理の影響の下で、酸化物又は酸窒化物の層の酸素原子、及び、もし使用するならば窒素原子は、窒化物又は酸窒化物の層5によって覆われた領域内に薄い層3を通じて拡散する。
【0093】
層5は、拡散が遅くなる場合であっても、マスク4を通って可能であるよりも速く拡散を可能にするほど十分に薄い。
【0094】
満足いくように溶解させるために、層5で覆われる領域を通る拡散速度とマスク4で覆われる領域を通る拡散速度との比がおよそ2より大きくなければならないと考えられる。
【0095】
露出ゾーンでは、特に層5の存在による溶解速度の低下は、後者の材料及びその厚さに依存する。
【0096】
表面層を通じて酸素の拡散速度は、埋められた酸窒化物の層の溶解速度から計算される。
【0097】
溶解モデルが知られており、キャリブレーションされる。
【0098】
当業者は、表面の化学的性質を変更するとき、観測した溶解速度と何も変更がない場合に期待される速度との間の差を測定することで酸素の拡散によるこの層の効果を決定することができる。
【0099】
さらに、層5は、シリコン原子の表面移動度又は薄い層3の半導体の表面移動度を減らす。
【0100】
このように、形状の欠陥は、上記の導入で記載したトレンチ及びディウェッティングの形成を防止させるか、少なくとも大幅に減少させる。
【0101】
このように、厚さ100nmのシリコンの薄い層の下に厚さ2nmの酸化物を溶解するための熱処理の条件は、1100℃で2時間、1200℃で10分、又は1250℃で4分間である。
【0102】
しかしながら、これらの値は、溶解炉内及び層5の性質上の残余の酸素濃度に特に依存していることが注目されるであろう。このように、厚さより大きい溶解も観測されている。
【0103】
溶解する処理後に、マスク4及び窒化物又は酸窒化物の層5は、エッチングのような任意の適切な手段によって除去される。
【0104】
このように、さらに層5を形成することを通じて、半導体層3の表面粗さを増加させることができ、例えば、化学エッチングを介してこの粗さを改善することが可能である。
【0105】
最後に、平坦化ステップは、一般的に平坦な面及び十分な粗さで薄い層3を提供する必要がある。この目的のためにあらゆる適切な方法(研磨、化学的薄型化、等)を用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続する支持基板(1)、半導体の酸化物又は酸窒化物の層(2)、及び前記半導体の薄い半導体層(3)を含む半導体オンインシュレータ構造を処理するための方法であって、
(i)薄い層(3)の表面上に、マスクで覆われていない露出領域と呼ばれる前記薄い層の領域(3a)であって第1のパターンに従って分布された領域と、前記マスクで覆われた領域(3b)であって前記第1のパターンの補完的な第2のパターンに従って分布された領域とを画定するマスク(4)を形成するステップと、
(ii)不活性又は還元性の大気中で、並びに制御された温度及び時間条件の下で、熱処理を施し、酸化物又は酸窒化物の層(2)中の酸素の少なくとも一部を前記薄い半導体層の前記露出領域(3a)を通って拡散させ、前記第1のパターンに従って配置される前記酸化物又は酸窒化物の層(2)の領域(3b)で前記酸化物又は酸窒化物の厚さの減少を導くステップとを含み、
ステップ(ii)の前又は最中に、前記薄い層(3)の前記半導体の窒化物又は酸窒化物の層(5)は、前記露出領域(3a)上に形成され、前記窒化物又は酸窒化物の層(5)の厚さは、前記薄い層(3)の前記露出領域(3a)を通る酸素の拡散速度と前記マスク(4)で覆われた前記領域(3b)を通る酸素の拡散速度との比が2以上大きくなるようにすることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記薄い層の前記半導体の前記窒化物又は酸窒化物の前記層(5)を形成するステップは、ステップ(ii)の前記熱処理前に実行されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記薄い層の前記半導体の前記窒化物又は酸窒化物の前記層(5)を形成するステップは、ステップ(ii)の前記熱処理の少なくとも一部の間に実行されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記薄い層の前記半導体の前記窒化物又は酸窒化物の前記層(5)は、窒素を含む大気に薄い層(3)の前記露出領域(3a)を露出することによって形成されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記薄い層の前記半導体の前記窒化物又は酸窒化物の前記層(5)は、前記薄い層(3)に窒素プラズマを適用することによって形成されることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記薄い層の前記半導体の前記窒化物又は酸窒化物の前記層(5)は、窒素を含む大気中でアニールすることによって形成されることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(ii)の前記熱処理の前記大気は窒素を含み、ステップ(ii)の間のように、前記薄い層(3)の前記半導体の前記窒化物又は酸窒化物の層(5)が、前記露出領域(3a)の表面上に形成されることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(ii)の前記熱処理は、5〜500分間の時間、1100〜1300℃の間の温度、及び、前記大気が好ましくは0.1〜1%の間にある濃度の窒素を含む中で実行されることを特徴とする請求項7に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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