説明

半導体ナノ粒子の製造方法及びその製造装置

【課題】粒径を精度よく制御できる半導体ナノ粒子の製造方法及び製造装置を提供する。
【解決手段】半導体ナノ粒子の核を形成する反応と、核を成長させる反応を段階的に行う半導体ナノ粒子の製造方法。半導体ナノ粒子の核形成反応を行う連続式反応装置40と、半導体ナノ粒子の成長反応を行う回分式反応装置70、を備えた半導体ナノ粒子製造装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体ナノ粒子の製造方法及びその製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高耐久性蛍光材料として半導体ナノ粒子が注目されている。
半導体ナノ粒子を色変換媒体(CCM)方式のディスプレイに適用する場合、半導体ナノ粒子の蛍光ピーク波長を緑もしくは赤の領域に合わせるとともに、半値幅を80nm以下にしなければならない。
半導体ナノ粒子において蛍光波長を所望の値に合わせるためには、半導体ナノ粒子の粒径を精密に制御する必要があり、精密かつ効率の良い半導体ナノ粒子の製造法が求められていた。
【0003】
特許文献1において、回分式反応装置のみを用いた蛍光性半導体ナノ粒子が開示されているが、半導体ナノ粒子の核形成と成長を同一の反応容器で進行させるため、半導体ナノ粒子の核形成と成長が同時に起こり、半導体ナノ粒子の粒径制御が難しいことから、粒径制御可能な半導体種が限られていた。
【0004】
特許文献2及び3において、連続式反応装置のみを用い反応管の温度を制御することによって半導体ナノ粒子の核形成と成長を別個に行う技術が開示されているが、連続した装置ではそれぞれの反応条件を最適化することが難しかった。また、半導体ナノ粒子の成長にともない反応管が閉塞するおそれがあった。さらに、半導体ナノ粒子の成長速度が遅い場合には反応管が長大となり、送液の抵抗が増して製造に要するエネルギーが増大してしまう問題があった。
【0005】
また、半導体ナノ粒子の表面に異種の半導体層(シェル)を形成して半導体ナノ粒子を保護する技術が公知(特許文献4)であるが、シェル合成においてはシェルのみからなるナノ粒子の形成を抑制するためにシェル原料を徐々に滴下することが有効であることが知られている。しかしながら、連続式反応装置のみではこのような逐次的な原料の追加が難しかった。
【特許文献1】特表2001−523758号公報
【特許文献2】米国特許6,179,912明細書
【特許文献3】特開2003−160336号公報
【特許文献4】米国特許6,322,901明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、粒径を精度よく制御できる半導体ナノ粒子の製造方法及び製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、以下の半導体ナノ粒子の製造方法等が提供される。
1.半導体ナノ粒子の核を形成する反応と、
前記核を成長させる反応を段階的に行う半導体ナノ粒子の製造方法。
2.前記核形成反応において、
反応溶媒及び半導体ナノ粒子原料を混合し、
前記混合物を加熱し、半導体ナノ粒子の核を形成させ、
核形成後、冷却して前記核の成長及び新たな核形成を抑制する1に記載の半導体ナノ粒子の製造方法。
3.前記核を形成させる温度に到達するまでの加熱時間が、1分以内であり、
前記核の成長及び新たな核形成を抑制する温度に到達するまでの冷却時間が、1分以内である、2に記載の半導体ナノ粒子の製造方法。
4.前記成長反応において、
前記核に半導体ナノ粒子原料を加え、
前記核と半導体ナノ粒子原料を加熱して前記核を成長させる1〜3のいずれかに記載の半導体ナノ粒子の製造方法。
5.前記半導体ナノ粒子原料を逐次的に加える4に記載の半導体ナノ粒子の製造方法。
6.前記核形成反応を連続式反応装置で行い、前記成長反応を回分式反応装置で行う1〜5のいずれかに記載の半導体ナノ粒子の製造方法。
7.前記連続式反応装置がマイクロリアクターである1〜6のいずれかに記載の半導体ナノ粒子の製造方法。
8.前記核を成長させた後、さらにシェル原料を加えてシェルを形成する1〜7のいずれかに記載の半導体ナノ粒子の製造方法。
9.半導体ナノ粒子の核形成反応を行う連続式反応装置と、半導体ナノ粒子の成長反応を行う回分式反応装置、を備えた半導体ナノ粒子製造装置。
10.前記連続式反応装置が、マイクロリアクターである9に記載の半導体ナノ粒子製造装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、粒径を精度よく制御できる半導体ナノ粒子の製造方法及び製造装置が提供できる。
本発明の製造方法は、半導体ナノ粒子の核形成と成長をそれぞれ最適条件で行えるため、半導体ナノ粒子の粒径制御を精度よく行うことができる。その結果、所望の発光波長の半導体ナノ粒子を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の半導体ナノ粒子の製造方法は、核を形成する反応(核形成反応)と核を成長させる反応(成長反応)を段階的に行うことを特徴とする。
ここで、「段階的に」とは、核を形成したら、そのままの状態で成長反応を続けないことである。即ち、核を形成した後、一度温度を下げて核の形成を止め、その後に温度を上げて核を成長させることである。核形成反応と成長反応は同じ場所で実施してもよいし、異なる場所で実施してもよい。核形成反応の後速やかに成長反応を実施してもよいし、間隔が開いてもよい。
【0010】
(1)核形成反応
核形成反応は、半導体ナノ粒子原料から半導体ナノ粒子の核を形成する反応である。
この反応は、例えば、反応溶媒及び半導体ナノ粒子原料を混合し、この混合物を加熱して半導体ナノ粒子の核を形成させ、次いで冷却して核の成長及び新たな核形成を抑制する。
【0011】
加熱して半導体ナノ粒子の核を形成するときに、反応系内を急速に加熱させることが好ましい。反応系内を加熱して、半導体ナノ粒子の核を形成する温度に到達する時間は、好ましくは、1分以内である。半導体ナノ粒子の核を形成する温度に到達する時間が長いと原料物質が分解してしまい半導体ナノ粒子の収率が低下する恐れがある。
半導体ナノ粒子の核を形成する温度は、製造する半導体の種類や使用する原料によって異なるが、例えば、InPの場合、通常280〜350℃である。
【0012】
半導体ナノ粒子の核を形成した後、反応系内を冷却し核の成長及び新たな核形成を抑制するときは、反応系内を急速に冷却させることが好ましい。冷却して半導体ナノ粒子の成長温度以下まで到達する時間は、好ましくは、1分以内である。核の形成を抑制する温度に到達する時間が長いとすでに形成した核が成長を続けるとともに新たな核が形成され粒径の分布が広がってしまう恐れがある。
半導体ナノ粒子の成長温度以下の冷却温度は、製造する半導体の種類によって異なるが、例えば、InPの場合、通常180℃以下である。
【0013】
この反応によって形成されるInPからなる半導体ナノ粒子の核の粒子径は、好ましくは、1nm〜2nmである。また、半導体ナノ粒子の核の粒子径は、加熱時間を調節することによって制御することが可能である。
【0014】
(2)成長反応
成長反応は、半導体ナノ粒子の核を成長させる反応である。
この反応は、例えば、半導体ナノ粒子原料と上記(1)の反応で製造された半導体ナノ粒子の核を必要量混合し、加熱して半導体ナノ粒子を成長させる。
粒子の成長状態によっては、逐次的に半導体ナノ粒子原料を加えてもよい。これにより半導体ナノ粒子の粒径が制御できる。
半導体ナノ粒子の核を成長させる温度は、製造する半導体の種類によって異なるが、例えば、InPの場合、通常180〜310℃である。
この反応により得られるInPからなる半導体ナノ粒子の粒径は、緑色発光を目的とする場合、好ましくは4nm〜4.8nmである。半導体ナノ粒子の粒子径は、半導体ナノ粒子原料と半導体ナノ粒子の核の比率及び反応時間を調節することによって制御することが可能である。
【0015】
このように核形成反応と成長反応を別の反応系で行うことにより、それぞれの反応条件の最適化が可能となり、半導体ナノ粒子の粒径を制御しやすくなる。
その結果、蛍光性半導体ナノ粒子では発光がシャープになるとともに、発光波長を制御しやすくなる。
【0016】
本発明の半導体ナノ粒子製造装置は、連続式反応装置と回分式反応装置からなる。ここで、連続式反応装置とは装置の一方から原料を連続的に供給して他方から生成物を連続的に取り出す装置であり、回分式反応装置とは装置に原料を供給し反応を進行させ、その反応物を取り出した後、次回の反応の原料を供給する装置である。
核形成反応は、上記のように、反応系内の急速な昇温・降温が要求される。このため核形成反応は、反応系の温度制御がしやすい連続式反応装置で行うことが好ましい。
【0017】
核形成反応を行う連続式反応装置は、具体的には、マイクロリアクター、管状反応装置が挙げられる。特に好ましくは、マイクロリアクターである。
マイクロリアクターとは、数μm〜数百μmのマイクロ流路を有する微小反応器の総称である。
【0018】
一方、成長反応は、半導体ナノ粒子の粒径が目的とする大きさに成長したことを確認して反応を停止させるため、回分式反応装置で行うことが好ましい。
【0019】
本発明の製造方法は、あらゆる半導体種のナノ粒子を製造する場合において使用できるが、その中でもII−VI族半導体及びIII−V族半導体のナノ粒子を製造する場合において特に有効である。
II−VI族半導体として、例えば、ZnTe,ZnSe,ZnS等を挙げることができる。
III−V族半導体として、例えば、InP等を挙げることができる。
【0020】
本発明の製造方法で、使用する反応溶媒又は原料は公知のものを使用できる。例えば、InPからなる半導体ナノ粒子を製造する場合、使用する反応溶媒は、トリオクチルホスフィンオキサイド(TOPO)、トリオクチルホスフィン(TOP)、1−オクタデセン等を使用できる。
【0021】
本発明の製造方法は、複数の半導体種からなる、いわゆるコアシェル型の半導体ナノ粒子も製造することができる。
コアシェル型の半導体ナノ粒子は、半導体ナノ粒子の核を上記の方法で成長させた後、さらに核を形成する半導体ナノ粒子原料と異なる種の半導体ナノ粒子原料を添加し、反応させることによって製造することができる。
【実施例】
【0022】
実施例において、半導体ナノ粒子は、図1に示す装置を使用して製造した。
図1の半導体ナノ粒子製造装置1は、原料を入れる原料容器10、反応溶媒を入れる溶媒容器20、送液ポンプ31,32、マイクロリアクター40、バルブ50,60、回分式反応容器70を備えている。
原料容器10とマイクロリアクター40は、途中、送液ポンプ32及びバルブ50をこの順に介して配管で接続され、溶媒容器20とマイクロリアクター40は、途中、送液ポンプ31及びバルブ50をこの順に介して配管で接続されている。マイクロリアクター40と回分式反応容器70は、途中、バルブ60を介して配管で接続されている。
【0023】
図2は、図1のマイクロリアクター40の内部構造を示す概略図である。
マイクロリアクター40は、加熱部41及び冷却部42を備える。加熱部41と冷却部42は、それぞれヒーター及び温度センサーからなる温度調整装置44,冷媒循環部及び温度センサーからなる温度調整装置46を備えており、これにより加熱部41と冷却部42の温度を調節する。
尚、マイクロリアクター40に内蔵されている配管は、以下の通りである。
加熱部:長さ 120cm、管1本の断面積 0.0009cm
冷却部:長さ 40cm、管1本の断面積 0.0009cm
【0024】
実施例1
(1)核形成反応
トリオクチルホスフィンオキサイド(TOPO)4.3g、トリオクチルホスフィン(TOP)3.2g、塩化インジウム0.26g、ヘキサエチルホスホラストリアミド0.32gを混合し、140℃にて1時間真空乾燥した。乾燥した混合物を窒素雰囲気下100℃に保温した原料容器10に充填した。
TOPO、TOPを上記と同じ重量比で混合した反応溶媒を窒素雰囲気下100℃に保温した溶媒容器20に充填した。
送液ポンプ31にて反応溶媒を0.3ml/分で加熱部41の温度を330℃に保ったマイクロリアクター40に送り込み、マイクロリアクター内を定常状態に保った。また、冷却部42には100℃に保った媒体を流し、反応溶液を100℃まで冷却できるようにした。さらにマイクロリアクター40以降の配管部分は100℃に保温した。
マイクロリアクター内が定常状態になったことを確認した後、バルブ50を切り替えて送液ポンプ32にて原料溶液を0.3ml/分で75秒間マイクロリアクター40に送り込んだ。
注入された反応溶液は、加熱部41の入り口から5cmの地点では、すでにInPからなる半導体ナノ粒子の核が形成する温度(330℃)に到達していた。反応溶液が、加熱部41の入り口から5cmの地点に到達する時間は約2秒であった。
加熱部41を通過した反応溶液が、冷却部42に導入された後、冷却部42の入り口から3cmの地点では、すでに半導体ナノ粒子の核が形成あるいは成長する温度(180℃)以下に到達していた。反応溶液が、冷却部42の入り口から3cmの地点に到達する時間は約4.5秒であった。
この反応により、粒径1nm〜1.5nmの半導体ナノ粒子の核が形成された。このとき半導体ナノ粒子の核の粒径は、TEM観察にて測定した。
【0025】
(2)成長反応
あらかじめ真空乾燥したTOPO16g、TOP8gを、撹拌装置を備えた回分式反応容器70に入れ、窒素雰囲気で100℃に加熱した。マイクロリアクター出口の先にあるバルブ60を操作して、マイクロリアクター内部で形成された半導体ナノ粒子の核を含んだ反応溶液を、回分式反応容器70に注入した。
次いで、あらかじめ真空乾燥した半導体ナノ粒子成長反応のための原料溶液(TOP4g、塩化インジウム0.25g、ヘキサエチルホスホラストリアミド0.31gを含む)を回分式反応容器70に加えた。
反応温度を300℃に上昇させ、3時間撹拌を続けた。
この反応により、粒径4.1nm〜4.6nmに成長したInPからなる半導体ナノ粒子を得た。このとき半導体ナノ粒子の粒径は、動的レーザー散乱法にて測定した。
【0026】
(3)半導体ナノ粒子の分離
(2)で得られた反応溶液を60℃まで冷却し、1−ブタノール6mlを加え、室温まで冷却した。
脱水メタノール40mlを加え30秒間撹拌し静置した。分離した下層を集めた。
集めた下層に1−ブタノール3mlとアセトニトリル40mlを加え30秒間撹拌し静置した。分離した下層を集めた。この操作をさらに2回繰り返した。
上記の操作によって分離した固形物を遠心分離(3,000rpm、10分)により集め、トルエンに再分散して、半導体ナノ粒子分散液を得た。
得られた半導体ナノ粒子分散液を450nmの光で励起したところ、ピーク波長530nm、半値幅55nmの蛍光を観測した。
【0027】
実施例2
(1)核形成反応
酢酸亜鉛0.06gにTOP1.6gを加え減圧下に100℃に加熱して酢酸亜鉛を溶解させた。
テルル0.039gをヘキサプロピルホスホラストリアミド0.3gに溶解させた。
あらかじめ真空乾燥したTOPO8g、ミリスチン酸0.015gを窒素雰囲気下100℃に保温した原料容器10に充填し、そこに上記の酢酸亜鉛溶液、テルル溶液を加え、原料溶液とした。
TOPO、TOPを上記原料溶液と同じ重量比で混合した反応溶媒を窒素雰囲気下100℃に保温した溶媒容器20に充填した。
送液ポンプ31にて反応溶媒を0.3ml/分で、加熱部41の温度を310℃に保ち、冷却部42の温度を100℃に保ったマイクロリアクター40に送り込み、マイクロリアクター40内を定常状態に保った。
マイクロリアクター内が定常状態になったことを確認した後、バルブ50を切り替えて送液ポンプ32にて原料を0.3ml/分で40秒間マイクロリアクター40に送り込んだ。
注入された反応溶液は、加熱部41の入り口から5cmの地点では、すでにZnTeからなる半導体ナノ粒子の核が形成する温度(310℃)に到達していた。反応溶液が、加熱部41の入り口から5cmの地点に到達する時間は約2秒であった。
加熱部41を通過した反応溶液が、冷却部42に導入された後、冷却部42の入り口から3cmの地点では、すでに半導体ナノ粒子の核が形成あるいは成長する温度(180℃)以下に到達していた。反応溶液が、冷却部42の入り口から3cmの地点に到達する時間は約4.5秒であった。
この反応により、粒径3.3nm〜3.8nmの半導体ナノ粒子の核が形成された。
【0028】
(2)成長反応
(1)と同組成の原料溶液10gを回分式反応容器70に入れ、窒素雰囲気で200℃に加熱した。
マイクロリアクター出口の先にあるバルブ60を操作してマイクロリアクター内部で形成された半導体ナノ粒子の核を含んだ反応溶液を、回分式反応容器70に注入した。
反応温度を280℃に上昇させ、3時間撹拌を続けた。
この反応により、粒径6.6nm〜7.5nmに成長したZnTeからなる半導体ナノ粒子(コア部)を得た。
【0029】
(3)シェル形成
(2)で得られた反応溶液を回分式反応容器70において150℃に冷却した。
そこに、TOP2gに1mol/lジエチル亜鉛/ヘキサン溶液0.22ml、ビストリメチルシリルセレナイド0.05gを溶解させたシェル原料溶液を30分かけて滴下した。
滴下終了後、150℃にて1時間撹拌を続け、さらに100℃にて2時間撹拌を続けた。
これにより、粒径8nm〜9nmのコア部がZnTeでシェル部がZnSeである半導体ナノ粒子を得た。
【0030】
(4)半導体ナノ粒子の分離
(3)で得られた反応溶液を60℃まで冷却し、1−ブタノール6mlを加え、室温まで冷却した。
アセトニトリル40mlを加え30秒間撹拌し静置した。分離した下層を集めた。
集めた下層に1−ブタノール3mlとアセトニトリル40mlを加え30秒間撹拌し静置した。分離した下層を集めた。この操作をさらに2回繰り返した。
上記の操作によって分離した固形物を遠心分離(3,000rpm、10分)により集め、ヘキサンに再分散して、半導体ナノ粒子分散液を得た。
得られた半導体ナノ粒子分散液を450nmの光で励起したところ、ピーク波長522nm、半値幅65nmの蛍光を観測した。
【0031】
比較例1
(1)半導体ナノ粒子の合成
トリオクチルホスフィンオキサイド(TOPO)2.0g、トリオクチルホスフィン(TOP)1.75g、塩化インジウム0.26g、ヘキサエチルホスホラストリアミド0.32gを混合し、140℃にて1時間真空乾燥し原料溶液とした。
あらかじめ真空乾燥したTOPO14g、TOP10gを回分式反応容器に充填し、窒素雰囲気下330℃に加熱した。そこへ上記の原料溶液を一度に注入した。
この時、反応溶液の温度は275℃まで低下し、約2分を要して300℃まで温度上昇した。
反応温度を300℃に保って、3時間撹拌を続けた。
これにより、粒径3.8nm〜5.2nmのInPからなる半導体ナノ粒子を得た。
【0032】
(2)半導体ナノ粒子の分離
(1)で得られた反応溶液を実施例1と同様に後処理し、半導体ナノ粒子分散液を得た。
得られた半導体ナノ粒子分散液を450nmの光で励起したところ、ピーク波長530nm、半値幅124nmの蛍光を観測した。
【0033】
回分式反応容器のみで半導体ナノ粒子を合成した場合には蛍光の半値幅が広くなってしまい、そのままディスプレイに用いるとディスプレイの色純度が低下してしまう。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の製造方法で製造された半導体ナノ粒子は、工業用、民生用(携帯、車載、屋内)のディスプレイ全般に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実施例で使用した半導体ナノ粒子の製造装置を示す概略図である。
【図2】マイクロリアクターの内部構造を示す概略図である。
【符号の説明】
【0036】
1 半導体ナノ粒子の製造装置
10 原料容器
20 溶媒容器
31,32 送液ポンプ
40 マイクロリアクター
41 加熱部
42 冷却部
44,46 温度調節装置
50,60 バルブ
70 回分式反応容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ナノ粒子の核を形成する反応と、
前記核を成長させる反応を段階的に行う半導体ナノ粒子の製造方法。
【請求項2】
前記核形成反応において、
反応溶媒及び半導体ナノ粒子原料を混合し、
前記混合物を加熱し、半導体ナノ粒子の核を形成させ、
核形成後、冷却して前記核の成長及び新たな核形成を抑制する請求項1に記載の半導体ナノ粒子の製造方法。
【請求項3】
前記核を形成させる温度に到達するまでの加熱時間が、1分以内であり、
前記核の成長及び新たな核形成を抑制する温度に到達するまでの冷却時間が、1分以内である、請求項2に記載の半導体ナノ粒子の製造方法。
【請求項4】
前記成長反応において、
前記核に半導体ナノ粒子原料を加え、
前記核と半導体ナノ粒子原料を加熱して前記核を成長させる請求項1〜3のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子の製造方法。
【請求項5】
前記半導体ナノ粒子原料を逐次的に加える請求項4に記載の半導体ナノ粒子の製造方法。
【請求項6】
前記核形成反応を連続式反応装置で行い、前記成長反応を回分式反応装置で行う請求項1〜5のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子の製造方法。
【請求項7】
前記連続式反応装置がマイクロリアクターである請求項1〜6のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子の製造方法。
【請求項8】
前記核を成長させた後、さらにシェル原料を加えてシェルを形成する請求項1〜7のいずれか一項に記載の半導体ナノ粒子の製造方法。
【請求項9】
半導体ナノ粒子の核形成反応を行う連続式反応装置と、半導体ナノ粒子の成長反応を行う回分式反応装置、を備えた半導体ナノ粒子製造装置。
【請求項10】
前記連続式反応装置が、マイクロリアクターである請求項9に記載の半導体ナノ粒子製造装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−224233(P2007−224233A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−49724(P2006−49724)
【出願日】平成18年2月27日(2006.2.27)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】