説明

半導体プラスチックパッケージ用両面金属箔張積層板の製造方法

【課題】 放熱性、吸湿後の耐熱性などに優れた半導体プラスチックパッケージ用両面金属箔張積層板を得る。
【解決手段】 両面平滑な金属板を中央にし、その両面に基材補強プリプレグの樹脂が、片面は反対面より樹脂層の厚さが50〜300 %厚く、その厚い面を金属側に配置し、さらに、外側に金属箔を置き、積層成形することにより、吸湿後の耐熱性、放熱性等に優れた半導体プラスチックパッケージ用両面金属箔張積層板を製造することができた。
【効果】 放熱性、吸湿後の耐熱性に優れ、大量生産性にも優れた、半導体プラスチックパッケージ用両面金属箔張積層板を製造することができた。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、半導体チップを小型プリント配線板に搭載した形の、新規な半導体プラスチックパッケージに使用する両面金属箔張積層板の製造方法に関する。特に、マイクロプロセッサー、マイクロコントローラー、ASIC、グラフィック等の比較的高ワットで、多端子高密度の半導体プラスチックパッケージに使用する両面金属箔張積層板の製造方法に関するものである。本半導体プラスチックパッケージは、ワイヤボンディングで半導体チップとプリント配線板の回路導体を接続するものであり、ソルダーボールを用いてマザーボードプリント配線板に実装して電子機器として使用される。
【0002】
【従来の技術】従来、半導体プラスチックパッケージとして、プラスチックボールグリッドアレイ(P-BGA)やプラスチックランドグリッドアレイ(P-LGA)等、プラスチックプリント配線板の上面にチップを固定し、チップを、プリント配線板上面に形成された導体回路にワイヤボンディングで結合し、プリント配線板の下面にはソルダーボールを用いて、マザーボードプリント配線板と接続するための導体パッドを形成し、表裏回路導体がメッキされたスルーホールで接続されて、半導体チップが樹脂封止されている構造の半導体プラスチックパッケージが公知である。本公知構造において、半導体から発生する熱をマザーボードプリント配線板に拡散させるため、半導体チップを固定するための上面の金属箔から下面に接続するメッキされた熱拡散スルーホールが形成されている。
【0003】該スルーホールを孔を通して水分が半導体固定に使われている銀粉入り樹脂接着剤に吸湿され、マザーボードへの実装時の加熱により、また、半導体部品をマザーボードから取り外す際の加熱により、層間フクレを発生する危険性があり、これはポップコーン現象と呼ばれている。このポップコーン現象が生じた場合には、パッケージは使用不能となることが多く、この現象を大幅に改善する必要がある。
【0004】また、半導体の高機能化、高密度化は、ますます発熱量の増大を意味し、熱放散用のための半導体チップ直下のスルーホールのみでは熱の放散は不十分となってきている。これに対応するべく、金属芯両面金属箔張積層板を用い、半導体プラスチックパッケージとする試みがなされているが、この樹脂層として、中にガラス織布基材を用い、基材の両面の樹脂層の厚みがほぼ同じプリプレグを使用し、その外両面に銅箔を用いて積層成形して両面銅張積層板を作成しており、積層成形時に金属板のクリアランスホールを埋め込むのに樹脂が使用され、結果として基材が金属板に接触して、吸湿後の加熱によるフクレが生じていた。この対策として、基材の両面に樹脂層を厚く付着させ、積層成形に使用する試みもあるが、この場合、多数枚を一度に成形すると、ズレが生じる、板厚みバラツキが大きい等の問題点が見られ、量産性等に適さないものであった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、以上の問題点を改善した半導体プラスチックパッケージ用のプリント配線板を作成する両面金属箔張積層板を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は、スルーホール用クリアランスホールを形成してある金属板の上下に、少なくとも1 枚ずつの基材補強プリプレグと金属箔を用いて積層成形され、表面に形成された信号伝播回路及び表裏の回路導通用スルーホール導体が、該金属板と熱硬化性樹脂組成物で電気絶縁され、少なくとも1個以上のスルーホールが直接金属板と接続してなる半導体プラスチックパッケージ用プリント配線板を作成するための両面金属箔張積層板の製造方法であり、積層成形に使用するプリプレグの樹脂が、基材の厚さ方向の中心に対し、金属板に接する面の樹脂層の厚さが、その反対面の樹脂層の厚さに対し50〜300 %厚い、厚さ方向にアンバランスな樹脂付着のプリプレグを使って積層成形することを特徴とする半導体プラスチックパッケージ用両面金属箔張積層板の製造方法である。
【0007】本発明においては、該プリプレグの基材が、厚さ50〜150 μmのガラス織布であること、該絶縁樹脂組成物が、多官能性シアン酸エステル、該シアン酸エステルプレポリマーを必須成分とする熱硬化性樹脂組成物であることが好ましい。本発明の半導体プラスチックパッケージ用両面金属箔張積層板は、積層成形時の厚み精度が良好で、成形後の金属板との接触もなく、得られたプリント配線板を用いた半導体プラスチックパッケージは、半導体下面からの吸湿がなく、ポップコーン現象が大幅に改善できるとともに、多官能性シアン酸エステル樹脂組成物を使用することにより、耐熱性、プレッシャークッカー処理後の電気絶縁性、耐マイグレーション性等に優れ、且つ、熱放散性をも大幅に改善できた。加えて大量生産性にも適しており、経済性の改善された、新規な構造の半導体プラスチックパッケージを得ることができる。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明で得られた両面金属箔張積層板を用いたプラスチックパッケージ用プリント配線板は、厚さ方向のほぼ中央に熱放散性の良好な金属板を配置し、表裏の回路導体導通用のメッキされたスルーホールは、金属板にあけられた該スルーホール径より大きめの径の孔とし、埋め込まれた樹脂のほぼ中央に形成することにより、金属板との絶縁性を保持する。
【0009】本発明で得られる両面銅張積層板を用いて作成した半導体プラスチックパッケージ用プリント配線板は、スルーホールを形成しようとする位置にスルーホール径より大きめのクリアランスホールがあけてあり、このクリアランスホールのほぼ中央に、クリアランスホール径より小さいスルーホールを形成し、メッキで表裏回路が導通されており、また、少なくとも、1 個以上のスルーホールが内層金属板と直接接続した構造となっているため、半導体チップを固定し、ワイヤボンディング、樹脂封止したプラスチックパッケージの、半導体から発生する熱は、直接搭載する金属部分から金属板全体に熱伝導されるために、半導体チップ直下以外の場所から、この金属板に接続するスルーホールを通じて下面の金属パッドに伝達し、マザーボードプリント配線板に拡散する構造とする。
【0010】本発明に用いる金属板は、特に限定しないが、高弾性率、高熱伝導性で、厚さ30〜300 μmのものが好適である。具体的には、純銅、無酸素銅、その他、銅のFe,Sn,P,Cr,Zr,Zn等との合金、或いは合金の表面を銅メッキした金属板等が好適には使用される。
【0011】金属板にはスルーホールよりやや大きめのクリアランスホールを、エッチング、ドリル、打ち抜き、UVレーザー等、公知の方法であける。具体的には、該スルーホール壁と金属板クリアランスホール壁とは、50μm以上の距離が、熱硬化性樹脂で絶縁されていることが好ましい。一般には、70〜200 μmである。表裏回路導通用スルーホール径については、特に限定はないが、クリアランスホールより小さい径で、一般には50〜300 μmである。
【0012】金属板全体には、好適には積層成形前に表面化学処理を施す。具体的には、黒色酸化処理、褐色処理、薬品による表面粗化処理等、一般に公知の処理が行われ得る。
【0013】本発明で使用される熱硬化性樹脂組成物の樹脂としては、一般に公知の熱硬化性樹脂が使用される。具体的には、エポキシ樹脂、多官能性シアン酸エステル樹脂、多官能性マレイミド−シアン酸エステル樹脂、多官能性マレイミド樹脂、不飽和基含有ポリフェニレンエーテル樹脂等が挙げられ、1 種或いは2 種類以上が組み合わせて使用される。耐熱性、耐湿性、耐マイグレーション性、吸湿後の電気的特性等の点から多官能性シアン酸エステル樹脂組成物が好適である。
【0014】本発明の好適な熱硬化性樹脂分である多官能性シアン酸エステル化合物とは、分子内に2個以上のシアナト基を有する化合物である。具体的に例示すると、1,3-又は1,4-ジシアナトベンゼン、1,3,5-トリシアナトベンゼン、1,3-、1,4-、1,6-、1,8-、2,6-又は2,7-ジシアナトナフタレン、1,3,6-トリシアナトナフタレン、4,4-ジシアナトビフェニル、ビス(4-ジシアナトフェニル)メタン、2,2-ビス(4-シアナトフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジブロモ-4- シアナトフェニル)プロパン、ビス(4-シアナトフェニル)エーテル、ビス(4-シアナトフェニル)チオエーテル、ビス(4-シアナトフェニル)スルホン、トリス(4-シアナトフェニル)ホスファイト、トリス(4-シアナトフェニル)ホスフェート、およびノボラックとハロゲン化シアンとの反応により得られるシアネート類などである。
【0015】これらのほかに特公昭41-1928 、同43-18468、同44-4791 、同45-11712、同46-41112、同47-26853及び特開昭51-63149等に記載の多官能性シアン酸エステル化合物類も用いられ得る。また、これら多官能性シアン酸エステル化合物のシアナト基の三量化によって形成されるトリアジン環を有する分子量400 〜6,000 のプレポリマーが使用される。このプレポリマーは、上記の多官能性シアン酸エステルモノマーを、例えば鉱酸、ルイス酸等の酸類;ナトリウムアルコラート等、第三級アミン類等の塩基;炭酸ナトリウム等の塩類等を触媒として重合させることにより得られる。このプレポリマー中には一部未反応のモノマーも含まれており、モノマーとプレポリマーとの混合物の形態をしており、このような原料は本発明の用途に好適に使用される。一般には可溶な有機溶剤に溶解させて使用する。
【0016】エポキシ樹脂としては、一般に公知のものが使用できる。具体的には、液状或いは固形のビスフェノールA 型エポキシ樹脂、ビスフェノールF 型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂;ブタジエン、ペンタジエン、ビニルシクロヘキセン、ジシクロペンチルエーテル等の二重結合をエポキシ化したポリエポキシ化合物類;ポリオール、水酸基含有シリコン樹脂類とエポハロヒドリンとの反応によって得られるポリグリシジル化合物類等が挙げられる。これらは1 種或いは2 種類以上が組み合わせて使用され得る。
【0017】ポリイミド樹脂としては、一般に公知のものが使用され得る。具体的には、多官能性マレイミド類とポリアミン類との反応物、特公昭57-005406 に記載の末端三重結合のポリイミド類が挙げられる。
【0018】これらの熱硬化性樹脂は、単独でも使用されるが、特性のバランスを考え、適宜組み合わせて使用するのが良い。
【0019】本発明の熱硬化性樹脂組成物には、組成物本来の特性が損なわれない範囲で、所望に応じて種々の添加物を配合することができる。これらの添加物としては、不飽和ポリエステル等の重合性二重結合含有モノマー類及びそのプレポリマー類;ポリブタジエン、エポキシ化ブタジエン、マレイン化ブタジエン、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリクロロプレン、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリイソプレン、ブチルゴム、フッ素ゴム、天然ゴム等の低分子量液状〜高分子量のelastic なゴム類;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ-4- メチルペンテン、ポリスチレン、AS樹脂、ABS 樹脂、MBS 樹脂、スチレン−イソプレンゴム、ポリエチレン−プロピレン共重合体、4-フッ化エチレン-6- フッ化エチレン共重合体類;ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエステル、ポリフェニレンサルファイド等の高分子量プレポリマー若しくはオリゴマー;ポリウレタン等が例示され、適宜使用される。また、その他、公知の無機或いは有機の充填剤、染料、顔料、増粘剤、滑剤、消泡剤、分散剤、レベリング剤、光増感剤、難燃剤、光沢剤、重合禁止剤、チキソ性付与剤等の各種添加剤が、所望に応じて適宜組み合わせて用いられる。必要により、反応基を有する化合物は硬化剤、触媒が適宜配合される。
【0020】本発明の熱硬化性樹脂組成物は、それ自体は加熱により硬化するが硬化速度が遅く、作業性、経済性等に劣るため使用した熱硬化性樹脂に対して公知の熱硬化触媒を用い得る。使用量は、熱硬化性樹脂 100重量部に対して 0.005〜10重量部、好ましくは0.01〜5 重量部である。
【0021】プリプレグの補強基材として使用するものは、一般に公知の無機或いは有機の織布、不織布が使用される。具体的には、Eガラス、Sガラス、Dガラス等の公知のガラス繊維布、全芳香族ポリアミド繊維布、液晶ポリエステル繊維布等が挙げられる。これらは、混抄でも良い。また、ポリイミドフィルム等のフィルムの表裏に熱硬化性樹脂組成物を塗布、加熱して半硬化状態にしたものも使用できる。好適にはガラス織布が使用される。
【0022】最外層の金属箔は、一般に公知のものが使用できる。好適には厚さ 3〜100 μmの銅箔、ニッケル箔等が使用される。
【0023】本発明の多層プリント配線板用プリプレグを作成する場合、基材に熱硬化性樹脂組成物を含浸、乾燥し、半硬化状態の積層材料とする。基材の厚さ方向の中心に対し、金属面に接する側のプリプレグの樹脂層の厚さが、反対面の樹脂層の厚さに比べて20〜50%厚いものを作成する。この場合、半硬化状態の程度により、ハイフロー化、或いはローフロー化する。いずれにしても、加熱、加圧して積層成形した時、クリアランスホールへの樹脂の流れ込みがなされて十分充填され、内層金属板には接触しないように積層成形する。プリプレグを作成する時の加熱温度は一般的には 100〜180 ℃である。時間は 5〜60分であり、目的とするフローの程度により、適宜選択する。
【0024】本発明の、片面に樹脂層を多めに付ける方法は、いかなる方法でも良い。例えば、ガラス織布の両面に多めに樹脂層を付け、乾燥前に片面の樹脂をこすり落とし、片面のみ樹脂層が多めのプリプレグとする方法、一度両面少なめの樹脂量のもので、半硬化のものを作成し、次に片面のみ樹脂層を塗布、乾燥してプリプレグを作成する方法等がある。
【0025】本発明の金属芯の入った半導体プラスチックパッケージ用プリント配線板に用いる両面金属箔張積層板の製造方法は以下(図1)の方法による。
(1)まず、内層となる金属板の全面を液状エッチングレジストで被覆し、加熱して溶剤を除去した後、クリアランスホール部の光が遮断できるように作成したネガフィルムをあて、紫外線で露光する。クリアランスホール部のエッチングレジストを溶解除去してから、エッチング法にて両側からエッチングし、クリアランスホールを作成する。
(2)エッチングレジストを除去後、金属板全面を化学表面処理し、金属板面側にプリプレグの樹脂層の厚めに付けた面を配置し、その外側に金属箔、片面金属箔張積層板等を置いて、(3)加熱、加圧、真空下に積層成形して両面金属箔張積層板を作成する。
【0026】この両面金属箔張積層板を用いて、所定の位置にドリル、或いはレーザー等でスルーホールを内層金属箔に接触しないようにあけ、熱放散用スルーホールは金属板に接続するようにあけ、デスミア処理を施した後、金属メッキを行う。公知の方法にて上下に回路を作成すると同時に、好適には金属板突起部の金属箔を除去し、貴金属メッキを施し、内層金属板の突起部の表面に半導体チップを接着する。その後、樹脂封止を行い、必要によりハンダボールを接着する。
【0027】半導体から発生する熱は、直接金属板に接続するスルーホールを通して裏面の金属パッドに伝達し、マザーボードプリント配線板に拡散する構造とする。
【0028】金属板の側面については、熱硬化性樹脂組成物で埋め込まれている形、露出している形、いずれの形でも良い。
【0029】半導体チップと反対面のソルダーボール接続用導体パッドに、ソルダーボールを接続してP-BGA を作り、マザーボードプリント配線板上の回路にソルダーボールを重ね、熱によってボールを熔融接続するか、またはパッケージにソルダーボールをつけずにP-LGA を作り、マザーボードプリント配線板に実装する時に、マザーボードプリント配線板面に形成されたソルダーボール接続用導体パッドとP-LGA 用のソルダーボール用導体パッドとを、ソルダーボールを加熱熔融することにより接続する。
【0030】
【実施例】以下に実施例、比較例で本発明を具体的に説明する。尚、特に断らない限り、『部』は重量部を表す。
実施例12,2-ビス(4-シアナトフェニル)プロパン 330部、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン20部を 150℃に熔融させ、撹拌しながら 4時間反応させ、プレポリマーを得た。これをメチルエチルケトンとジメチルホルムアミドの混合溶剤に溶解した。これにクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(商品名:ESCN-220F 、住友化学工業〈株〉製)350 部を加え、均一に溶解混合した。更に、触媒としてオクチル酸亜鉛 0.3部を加え、溶解混合し、これにブタジエン・メタクリル酸メチル・スチレン共重合体(商品名:パラロイドEXL2655 、呉羽化学工業〈株〉製)70部をエポキシ樹脂(商品名:DEN431、ダウ・ケミカル〈株〉製) 230部に 130℃で加熱しながら加え、さらに無機充填剤(商品名:焼成タルク BST-200) 200 部を加え、均一に撹拌混合し、ワニスAを得た。
【0031】このワニスAを厚さ 100μmのガラス織布に、片面をバーでこすりながら塗布し、 150℃で乾燥して、ゲル化時間(at170℃)30秒、 170℃,20kgf/cm2,5分間での樹脂流れ 4mmの半硬化状態のローフロープリプレグ(プリプレグB)を得た。この片面の樹脂層の厚さは14μm、反対側の面の樹脂層の厚みは31μmであった。また、 145℃で乾燥し、ゲル化時間(at170℃)120 秒、樹脂流れ13mm、両面の樹脂層の厚さが共に15μmで、総厚み 130μmのハイフロープリプレグ(プリプレグC)を作成した。
【0032】一方、内層金属板となる厚さ 200μmのCu:97.3 %、Fe:2.5%、P:0.1 %、Zn:0.07 %、Pb:0.03 %よりなる合金を用意し、金属板の全面に液状エッチングレジストを厚さ25μm塗布し、乾燥して溶剤を飛ばした後、ネガフィルムを重ね、クリアランスホール以外を紫外線照射してからクリアランスホール部のレジスト膜を 1%炭酸ナトリウム水溶液で除去した後、両側からエッチングによって 0.6mmφのクリアランスホールをあけた。金属板全面に黒色酸化銅処理を施し、その両側に上記プリプレグBの樹脂層の厚い面を金属板側に被せ、その両外側に厚さ12μmの電解銅箔を配置し、 200℃,20kgf/cm2,30mmHg 以下の真空下で 2時間積層成形し、一体化して両面銅張積層板を得た。
【0033】クリアランスホール箇所は、クリアランスホール部の金属に接触しないように、中央に孔径0.25mmのスルーホールをドリルにてあけ、熱放散箇所は、 4隅に金属板に直接接触するように孔径0.25mmのスルーホールをあけ、デスミア処理後、銅メッキを無電解、電解メッキで行い、孔内に18μmの銅メッキ層を形成した。表裏に液状エッチングレジストを塗布、乾燥してからポジフィルムを重ねて露光、現像し、面積50mm角内の中央に13mm角の半導体チップ搭載部を残し、その周囲及び裏面に回路を形成し、半導体チップ搭載部、ボンディングパッド部及びボールパッド部以外にメッキレジストを形成し、ニッケル、金メッキを施してプリント配線板を完成した。
【0034】半導体チップ搭載部に大きさ13mm角の半導体チップを銀ペーストで接着固定した後、ワイヤボンディングを行い、次いでシリカ入りエポキシ封止用コンパウンドを用い、トランスファーモールドにて樹脂封止し、ハンダボールを付けて半導体パッケージを作成した(図1)。これをエポキシ樹脂マザーボードプリント配線板にハンダボールを熔融して接続した。評価結果を表1、2に示す。
【0035】比較例1実施例1において、プリプレグBの代わりにプリプレグC を用い、同様に積層成形して両面銅張積層板を作成し、プリント配線板を作成し、半導体プラスチックパッケージとした。さらに、マザーボードに搭載し、評価を行った。
【0036】比較例2実施例1のプリプレグCを2枚使用し、上下に12μmの電解銅箔を配置し、200 ℃,20kgf/cm2,30mmHg 以下の真空下に2 時間積層成形し、両面銅張積層板を得た。所定の位置に孔径0.25mmφのスルーホールをドリルであけ、デスミア処理後に銅メッキを施した。この板の上下に公知の方法で回路を形成し、メッキレジストで被覆後、ニッケル、金メッキを施した。これは半導体チップを搭載する箇所に放熱用のスルーホールが形成されており、この上に銀ペーストで半導体チップを接着し、ワイヤボンディング後、エポキシ封止用コンパウンドで実施例1 と同様に樹脂封止し、ハンダボール接合した(図2) 。同様にマザーボードに接合した。評価結果を表1、2に示す。
【0037】比較例3エポキシ樹脂(商品名:エピコート1045)600 部、及びエポキシ樹脂(商品名:ESCN220F)400 部、ジシアンジアミド 300部、2-エチル−4-メチルイミダゾール2 部をメチルエチルケトンとジメチルホルムアミドの混合溶剤に均一溶解させ、これを厚さ 100μmのガラス織布に含浸、乾燥させて、ゲル化時間(at170℃)10秒、樹脂流れ98μm のノーフロープリプレグ(プリプレグD)、ゲル化時間150 秒、樹脂流れ18mmのハイフロープリプレグ(プリプレグE)を作成した。
【0038】プリプレグEを2 枚使用し、 170℃,20kgf/cm2,30mmHg 以下の真空下で 2時間積層成形し、両面銅張積層板を作成した。後は比較例1 と同様にしてプリント配線板を作成し、半導体チップ搭載部分をザグリマシーンにてくりぬき、裏面に厚さ200 μm の銅板を、上記ノーフロープリプレグD を打ち抜いたものを使用して、加熱、加圧下に同様に接着させ、放熱板付きプリント配線板を作成した。これはややソリが発生した。この放熱板に直接銀ペーストで半導体チップを接着させ、ワイヤボンディングで接続後、液状エポキシ樹脂で封止した(図3) 。同様にマザーボードプリント配線板に接合した。評価結果を表1、2に示す。
【0039】
【表1】
実施例1 比較例1 比較例2 比較例3 吸湿後の耐熱性(1) 常態 異常なし 異常なし 異常なし 異常なし 72hrs 異常なし 異常なし 異常なし 異常なし 96hrs 異常なし 異常なし 異常なし 一部剥離 120hrs 異常なし 異常なし 一部剥離 一部剥離 144hrs 異常なし 異常なし 一部剥離 一部剥離 168hrs 異常なし 異常なし 一部剥離 一部剥離 吸湿後の耐熱性(2) 常態 異常なし 異常なし 異常なし 異常なし 24hrs 異常なし 異常なし 一部剥離 一部剥離 48hrs 異常なし 異常なし 剥離大 剥離大 72hrs 異常なし 異常なし ワイヤ 切れ ワイヤ 切れ 120hrs 異常なし 異常なし ワイヤ 切れ ワイヤ 切れ 144hrs 異常なし 一部剥離 − − 168hrs 異常なし 一部剥離 − −
【0040】
【表2】
実施例1 比較例1 比較例2 比較例3 ガラス転移温度 (℃) 215 214 215 144 プレッシャークッカー処理後 異常なし ミーズリ 異常なし ミーズリの耐熱性 ング発生 ング発生 プレッシャークッ 常態 5×1014 6×1014 4×1014 6×1014カー処理後 200hrs 6×1012 5×1012 5×1012 2×108 絶縁抵抗値 500hrs 4×1011 3×1011 2×1011 < 108 (Ω) 700hrs 7×1010 3×1010 2×1010 1000hrs 3×1010 9×109 9×109 耐マイグレーシ 常態 3×1013 3×1013 4×1013 2×1013ョン性 200hrs 5×1011 3×1011 4×1011 7×109 (Ω) 500hrs 3×1011 1×1011 2×1011 < 108 700hrs 2×1011 8×1010 9×1010 1000hrs 9×1010 2×1010 3×1010放熱性 (℃) 38 39 57 48 ソリ (μm) <5 124 <5 254
【0041】<測定方法>1)吸湿後の耐熱性■JEDEC STANDARD TEST METHOD A113-A LEVEL3:30 ℃・60%RHで所定時間処理後、220 ℃リフローソルダー3 サイクル後の基板の異常の有無について、断面観察及び電気的チェックによって確認した。
2)吸湿後の電気絶縁性■JEDEC STANDARD TEST METHOD A113-A LEVEL2:85 ℃・60%RHで所定時間(Max.168hrs.)処理後、220 ℃リフローソルダー3 サイクル後の基板の異常の有無を断面観察及び電気的チェックによって確認した。
3)ガラス転移温度DMA 法にて測定した。
【0042】4)プレッシャークッカー処理後の耐熱性121 ℃・2 気圧で5 時間プリント配線板を処理した後、260 ℃のハンダ中に30秒浸せきし、冷却してから異常の有無を観察した。
5)プレッシャークッカー処理後の絶縁抵抗値端子間(ラーン/スペース=70/70μm )の櫛形パターンを作成し、この上に、それぞれ使用したプリプレグを配置して同様に積層成形したものを、121 ℃・2気圧で所定時間処理した後、25℃・60%RHで2 時間後処理し、500VDCを印加60秒で、その端子間の絶縁抵抗値を測定した。
6)耐マイグレーション性
【0043】5)の試験片を用い、85℃・85%RH、50VDC 印加して端子間の絶縁抵抗値を測定した。
7)放熱性パッケージを同一マザーボードプリント配線板にハンダボールで接着させ、1000時間連続使用してから、パッケージの温度を測定した。
8)ソリ250 ×250mm で積層成形し、多面付けプリント配線板としたものを、パッケージごとに切断(50×50mm)してから、定盤上に置き、ソリの最大値を測定した。
【0044】
【発明の効果】スルーホール用クリアランスホールを形成してある金属板の上下に、少なくとも1 枚ずつの基材補強プリプレグと金属箔を用いて積層成形され、表面に形成された信号伝播回路及び表裏の回路導通用スルーホール導体が、該金属板と多官能性シアン酸エステル樹脂組成物といった熱硬化性樹脂組成物で絶縁されてなる構造の半導体プラスチックパッケージ用プリント配線板に用いる両面金属箔張積層板の製造方法であり、積層成形に使用するプリプレグの樹脂が、基材の厚さ方向の中心に対し、金属板に接する面の樹脂層の厚さが、その反対面の樹脂層の厚さに対し、50〜300 %厚いものを使用することにより、積層成形後の金属板への基材の接触がなく、プリント配線板としたものの吸湿後の耐熱性に優れ、半導体プラスチックパッケージとしたものの、半導体チップの下面からの吸湿がなく、吸湿後の耐熱性、すなわちポップコーン現象が大幅に改善できるとともに、熱放散性も改善でき、加えて大量生産性にも適しており、経済性の改善された、新規な構造の半導体プラスチックパッケージ用プリント配線板に使用する両面金属箔張積層板を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の両面金属箔張積層板の製造工程及びこれを用いたプリント配線板の製造工程と得られた半導体プラスチックパッケージ。
【図2】比較例1 の半導体プラスチックパッケージ製造工程。
【図3】比較例2 の半導体プラスチックパッケージ製造工程。
【符号の説明】
a:金属板、b:金属箔、c:ローフロープリプレグシートB、d:放熱用スルーホール、e:表裏回路導通用スルーホール、f:封止樹脂、g:ボンディングワイヤ、h:半導体チップ、i:銀ペースト、j:ハンダボール、k:メッキレジスト、l:ハイフロープリプレグシートC、m:ノーフロープリプレグシートD

【特許請求の範囲】
【請求項1】 スルーホール用クリアランスホールを形成してある金属板の上下に、少なくとも1 枚ずつの基材補強プリプレグと金属箔を用いて積層成形され、表面に形成された信号伝播回路及び表裏の回路導通用スルーホール導体が、該金属板と熱硬化性樹脂組成物で電気絶縁され、1個以上のスルーホールが直接金属板と接続してなる半導体プラスチックパッケージ用プリント配線板を作成するための両面金属箔張積層板の製造方法であり、積層成形に使用するプリプレグの樹脂が、基材の厚さ方向の中心に対し、金属板に接する面の樹脂層の厚さが、その反対面の樹脂層の厚さに対し50〜300 %厚い、厚さ方向にアンバランスな樹脂付着のプリプレグを使って積層成形することを特徴とする半導体プラスチックパッケージ用両面金属箔張積層板の製造方法。
【請求項2】 該プリプレグの基材が、厚さ50〜150 μmのガラス織布である請求項1記載の半導体プラスチックパッケージ用両面金属箔張積層板の製造方法。
【請求項3】 該絶縁樹脂組成物が、多官能性シアン酸エステル、該シアン酸エステルプレポリマーを必須成分とする熱硬化性樹脂組成物である請求項1または2記載の半導体プラスチックパッケージ用両面金属箔張積層板の製造方法。

【図2】
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【図3】
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【図1】
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