説明

半導体レーザ装置の製造方法、半導体レーザ装置および光装置

【課題】接合時の過剰な加熱プロセスに起因して、半導体レーザ素子の発光特性の低下および半導体レーザ素子の寿命が短くなることを抑制することが可能な半導体レーザ装置の製造方法を提供する。
【解決手段】この2波長半導体レーザ装置100(半導体レーザ装置)の製造方法は、放熱基台10の電極11aに、融点T1を有する半田層12aを形成する工程と、放熱基台10の電極11b上に、バリア層13を介して融点T1を有する半田層14を形成する工程と、半田層12aを融解させることにより、電極11aと半田層12aとを反応させて融点T1よりも高い融点T3を有する反応半田層12を形成して、放熱基台10に赤色半導体レーザ素子20を接合する工程と、その後に、加熱温度T2で加熱することにより半田層14を融解させて、放熱基台10に青紫色半導体レーザ素子30を接合する工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体レーザ装置の製造方法、半導体レーザ装置および光装置に関し、特に、基台に第1半導体レーザ素子および第2半導体レーザ素子が接合される半導体レーザ装置の製造方法、半導体レーザ装置および光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基台に第1半導体レーザ素子および第2半導体レーザ素子が接合された半導体レーザ装置の製造方法などが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、シリコン基板の上面上に異なる融点を有する半田を用いて個々の光源チップが接合された半導体光源モジュールが開示されている。この半導体光源モジュールの製造方法では、シリコン基板の上面上に形成されたAuなどからなる一対の金属めっき層上に、第1の半田(高融点半田)および第2の半田(低融点半田)をそれぞれ塗布する工程と、第1の半田(高融点半田)上に第1の光源チップを配置した状態で300℃に加熱することにより、第1の半田を融解させて、シリコン基板に第1の光源チップを接合する工程と、シリコン基板に第1の光源チップを接合した後に、第1の半田よりも融点の低い第2の半田(低融点半田)上に第2の光源チップを配置した状態で200℃に加熱することにより、第2の半田を融解させて、シリコン基板に第2の光源チップを接合する工程とを備えている。また、この半導体光源モジュールの製造方法では、シリコン基板に第1の光源チップを接合する際に、第1の半田(高融点半田)のみならず後の接合工程で用いられる第2の半田(低融点半田)も融解する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−268387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示された半導体光源モジュールの製造方法では、シリコン基板に第1の光源チップを接合する際に、第1の半田のみならず後の接合工程で用いられる第2の半田も融解するため、融解した第2の半田と、第2の半田の下部の金属めっき層とが反応して合金化する場合があると考えられる。このように、2種類以上の材料からなる金属層(合金層)を構成する個々の金属材料の組成が金属層の合金化に伴って変化する場合、合金化後の金属層の融点が合金化前の金属層の融点よりも高くなる場合がある。この場合、より高い温度で第2の半田を加熱および融解させる必要があるため、過剰な加熱に伴って、第2の光源チップ内に生じる熱応力が増大してしまう。この結果、第2の光源チップの発光特性が低下したり寿命が短くなったりするという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、接合時の過剰な加熱プロセスに起因して、半導体レーザ素子の発光特性の低下および半導体レーザ素子の寿命が短くなることを抑制することが可能な半導体レーザ装置の製造方法、半導体レーザ装置および光装置を提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面による半導体レーザ装置の製造方法は、第1電極および第2電極が表面上に形成された基台の第1電極上に、第1融点を有する第1半田層を形成する工程と、基台の第2電極上に、バリア層を介して第2融点を有する第2半田層を形成する工程と、第1融点を有する第1半田層を融解させることにより、第1電極と第1半田層とを反応させて第2融点よりも高い第3融点を有する反応半田層を形成するとともに、反応半田層を介して基台に第1半導体レーザ素子を接合する工程と、基台に第1半導体レーザ素子を接合する工程の後に、所定の加熱温度で加熱することにより第3融点よりも低い第2融点を有する第2半田層を融解させて、第2半田層を介して基台に第2半導体レーザ素子を接合する工程とを備える。
【0008】
この発明の第1の局面による半導体レーザ装置の製造方法では、上記のように、基台の第2電極上に、バリア層を介して第2融点を有する第2半田層を形成する工程を備えることによって、基台に第1半導体レーザ素子を接合する際に、第1融点を有する第1半田層を融解させる熱が第2半田層に加えられたとしても、第2半田層と第2電極との間にバリア層が介在して第2半田層と第2電極とが直接接触するのが抑制される。これにより、たとえば、第2半田層と第2電極とが直接接触した状態で加熱されることに起因して第2半田層と第2電極の合金化が進み第2半田層の融点が高くなる場合と異なり、第2半田層の融点が高くなるのを抑制することができる。この結果、基台に第2半導体レーザ素子を接合する際に、加熱温度をより高い温度に引き上げることなく、第2半田層を融解させて第2半導体レーザ素子を接合することができる。したがって、基台に第2半導体レーザ素子を接合する際に過剰な加熱を行う必要がないので、第2半導体レーザ素子内に生じる熱応力が増大するのを抑制することができる。その結果、第2半導体レーザ素子の発光特性の低下および第2半導体レーザ素子の寿命が短くなることを抑制することができる。
【0009】
上記第1の局面による半導体レーザ装置の製造方法において、好ましくは、所定の加熱温度は、第2融点以上第3融点未満の温度である。このように構成すれば、基台に第2半導体レーザ素子を接合する際に、第2半田層を第2融点以上の加熱温度で容易に融解させることができる。さらに、この際、第2半田層を融解させる際に生じる熱が反応半田層に加えられても、加熱温度は第3融点未満であることから、反応半田層が融解するのを抑制することができる。これにより、反応半田層を介して基台に接合された第1半導体レーザ素子が所定の接合位置からずれるのを抑制することができる。
【0010】
上記第1の局面による半導体レーザ装置の製造方法において、好ましくは、第1半田層の第1融点は、第2半田層の第2融点と同一または近傍の温度で、かつ、反応半田層の第3融点よりも低い温度である。このように構成すれば、第1半田層と第2半田層とに略同じ材料を用いることができるので、半導体レーザ装置の製造プロセスを簡素化することができる。また、第1半田層を融解させて基台に第1半導体レーザ素子を接合する際に、第1半田層の第1融点と同一または近傍の温度である第2融点を有する第2半田層が融解した場合にも、第2半田層と第2電極との間のバリア層によって、第2半田層の融点が変化する(高くなる)のを容易に抑制することができる。
【0011】
上記第1の局面による半導体レーザ装置の製造方法において、好ましくは、第1電極および第2電極は、共にAuを含み、第1融点を有する第1半田層と、第2融点を有する第2半田層とは、共に、AuおよびSnを含むAu−Sn合金半田層からなり、基台に第1半導体レーザ素子を接合する工程は、第1電極のAuと第1半田層のAu−Sn合金半田層とを反応させて第2融点よりも高い第3融点を有する反応半田層を形成する工程を含む。このように構成すれば、基台に第1半導体レーザ素子を接合する際に、第1電極のAuと第1半田層のAu−Sn合金とが合金化されるので、反応半田層の融点を第2半田層の第2融点よりも高い第3融点に容易に引き上げることができる。一方、バリア層によって第2半田層の第2融点は変化しないので、反応半田層の第3融点と第2半田層の第2融点との融点の差を容易に生じさせることができる。
【0012】
この場合、好ましくは、第1半田層と第2半田層とは、共に、Au−Sn合金の共晶点における組成と同一または近傍の組成を有する同一のAu−Sn合金半田層からなる。このように構成すれば、第1半田層を形成する工程と第2半田層を形成する工程とを1つの工程で行うことができるので、半導体レーザ装置の製造プロセスをより簡素化することができる。また、共晶点における融点はAu−Sn合金の他の組成における融点よりも低いので、共晶点における組成と同一または近傍の組成を有する第1半田層の第1融点と第2半田層の第2融点とを、Au−Sn合金の他の組成における融点よりも低くすることができる。これにより、第1半田層および第2半田層をそれぞれ融解させる際の加熱温度を小さくすることができるので、基台に第1半導体レーザ素子を接合する際、および、基台に第2半導体レーザ素子を接合する際に、第1半導体レーザ素子および第2半導体レーザ素子内に生じる熱応力が増大するのを抑制することができる。
【0013】
上記基台に第1半導体レーザ素子を接合する工程が第1電極のAuと第1半田層のAu−Sn合金半田層とを反応させて反応半田層を形成する工程を含む半導体レーザ装置の製造方法において、好ましくは、第1電極のAuと第1半田層のAu−Sn合金とを反応させて形成した反応半田層は、第1半田層のAu−Sn合金半田層よりもAuの含有率が大きいとともに、第1半田層の第1融点よりも高い第3融点を有するAu−Sn合金反応半田層からなる。このように構成すれば、第1電極のAuを第1半田層のAu−Sn合金中に拡散させることにより、第1半田層の第1融点よりも高い第3融点を有するAu−Sn合金反応半田層からなる反応半田層を容易に形成することができる。
【0014】
上記第1の局面による半導体レーザ装置の製造方法において、好ましくは、バリア層は、Pt、Ti、W、MoおよびHfのうちのいずれか1つ以上からなる。このように構成すれば、基台に第1半導体レーザ素子を接合する際および基台に第2半導体レーザ素子を接合する際に、Pt、Ti、W、MoおよびHfのうちのいずれか1つ以上からなるバリア層により第2電極を構成する材料が第2半田層中に拡散するのが抑制されるので、第2半田層の融点が高くなるのを確実に抑制することができる。
【0015】
この発明の第2の局面による半導体レーザ装置は、表面上に形成された第1電極および第2電極と、第1融点を有する第1半田層と第1電極とが反応することにより第1電極上に形成された反応半田層と、第2電極上に形成されたバリア層と、バリア層上に形成され、第2融点を有する第2半田層とを含む基台と、反応半田層を介して基台に接合された第1半導体レーザ素子と、第2半田層を介して基台に接合された第2半導体レーザ素子とを備え、反応半田層の第3融点は、第2半田層の第2融点よりも高い。
【0016】
この発明の第2の局面による半導体レーザ装置では、上記のように、基台に、第2電極上に形成されたバリア層と、バリア層上に形成され、第2融点を有する第2半田層とを形成することによって、基台に第1半導体レーザ素子を接合する際に、第1融点を有する第1半田層を融解させる熱が第2半田層に加えられたとしても、第2半田層と第2電極との間にバリア層が介在して第2半田層と第2電極とが直接接触するのが抑制される。これにより、たとえば、第2半田層と第2電極とが直接接触した状態で加熱されることに起因して第2半田層と第2電極の合金化が進み第2半田層の融点が高くなる場合と異なり、第2半田層の融点が高くなるのを抑制することができる。この結果、基台に第2半導体レーザ素子を接合する際に、加熱温度をより高い温度に引き上げることなく、第2半田層を融解させて第2半導体レーザ素子を接合することができる。したがって、基台に第2半導体レーザ素子を接合する際に過剰な加熱を行う必要がないので、第2半導体レーザ素子内に生じる熱応力が増大するのを抑制することができる。その結果、第2半導体レーザ素子の発光特性の低下および第2半導体レーザ素子の寿命が短くなることを抑制することができる。
【0017】
上記第2の局面による半導体レーザ装置において、好ましくは、第1半田層の第1融点は、第2半田層の第2融点と同一または近傍の温度で、かつ、反応半田層の第3融点よりも低い温度である。このように構成すれば、第1半田層と第2半田層とに略同じ材料を用いることができるので、半導体レーザ装置の製造プロセスを簡素化することができる。また、基台に第1半導体レーザ素子を接合する際に、第1融点と同一または近傍の温度である第2融点を有する第2半田層が融解した場合にも、第2半田層と第2電極との間のバリア層によって、第2半田層の融点が変化する(高くなる)のを容易に抑制することができる。
【0018】
上記第2の局面による半導体レーザ装置において、好ましくは、第1半導体レーザ素子は、レーザ光が出射される第1発光層を含み、第2半導体レーザ素子は、レーザ光が出射される第2発光層を含み、第1半導体レーザ素子の第1発光層と第2半導体レーザ素子の第2発光層とが互いに同一または近傍の高さ位置に位置するように、バリア層の厚みが含まれない、第1半導体レーザ素子の第1発光層から基台までの高さ方向における第1距離と、バリア層の厚みが含まれる、第2半導体レーザ素子の第2発光層から基台までの高さ方向における第2距離とが、互いに同一または近傍の距離になるように調節されている。このように構成すれば、第2半導体レーザ素子側にのみバリア層が形成された半導体レーザ装置において、第1半導体レーザ素子の第1発光層と第2半導体レーザ素子の第2発光層とを互いに同一または近傍の高さ位置に位置させることができる。これにより、この半導体レーザ装置を光ピックアップ装置などに搭載した場合、第1半導体レーザ素子からのレーザ光の高さ方向の照射位置と、第2半導体レーザ素子からのレーザ光の高さ方向の照射位置とのずれが大きくなるのを抑制することができる。
【0019】
この発明の第3の局面による光装置は、第1または第2の局面における半導体レーザ装置と、半導体レーザ装置の出射光を制御する光学系とを備える。このように構成すれば、第1半導体レーザ素子および第2半導体レーザ素子の各々から出射されるレーザ光の照射位置における高さ方向のずれが大きくなるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態による2波長半導体レーザ装置の上面図である。
【図2】本発明の第1実施形態による2波長半導体レーザ装置のレーザ光の出射方向から見た正面図である。
【図3】本発明の第1実施形態による2波長半導体レーザ装置の半田層(反応半田層)の組成を説明するためのAu−Sn合金の状態図である。
【図4】本発明の第1実施形態による2波長半導体レーザ装置の製造プロセスを説明するためのグラフである。
【図5】本発明の第1実施形態による2波長半導体レーザ装置の製造プロセスを説明するための上面図である。
【図6】本発明の第1実施形態による2波長半導体レーザ装置の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図7】本発明の第1実施形態による2波長半導体レーザ装置の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図8】本発明の第1実施形態による2波長半導体レーザ装置の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図9】本発明の第2実施形態による3波長半導体レーザ装置のレーザ光の出射方向から見た正面図である。
【図10】本発明の第2実施形態による3波長半導体レーザ装置の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図11】本発明の第2実施形態による3波長半導体レーザ装置の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図12】本発明の第2実施形態による3波長半導体レーザ装置の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図13】本発明の第3実施形態による光ピックアップ装置の構成を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
(第1実施形態)
まず、図1〜図6を参照して、本発明の第1実施形態による2波長半導体レーザ装置100の構造について説明する。なお、2波長半導体レーザ装置100は、本発明の「半導体レーザ装置」の一例である。
【0023】
本発明の第1実施形態による2波長半導体レーザ装置100は、図1および図2に示すように、所定の厚みを有する平板状の放熱基台10と、放熱基台10に接合された約650nmの発振波長を有する赤色半導体レーザ素子20および約405nmの発振波長を有する青紫色半導体レーザ素子30と、放熱基台10を下方(Z2側)から支持するベース部40とを備えている。また、放熱基台10は、接合層50(図2参照)を介してベース部40に接合されている。なお、放熱基台10は、本発明の「基台」の一例である。また、赤色半導体レーザ素子20は、本発明の「第1半導体レーザ素子」の一例であり、青紫色半導体レーザ素子30は、本発明の「第2半導体レーザ素子」の一例である。
【0024】
また、図2に示すように、放熱基台10の上面上(Z1側)には、レーザ光の出射方向(Y方向)と直交するX方向の一方側(X1側)に形成された電極11aと、X方向の他方側(X2側)に形成された電極11bとが互いに近接した状態で形成されている。これら電極11aおよび11bは、共にAuからなる金属電極である。なお、電極11aおよび11bは、それぞれ、本発明の「第1電極」および「第2電極」の一例である。
【0025】
また、赤色半導体レーザ素子20は、放熱基台10のX1側において、電極11aに反応半田層12を介して接合されている。また、赤色半導体レーザ素子30は、放熱基台10のX2側において、電極11bに半田層14を介して接合されている。
【0026】
ここで、第1実施形態では、反応半田層12は、80質量%よりも大きい含有率を有するAuと、20質量%よりも小さい含有率を有するSnとから構成されたAu−Sn合金からなる。この反応半田層12は、赤色半導体レーザ素子20を放熱基台10に接合する前に電極11a上に形成されたAu−Sn合金からなる半田層12a(図5および図6参照)が、電極11aのAuと反応(合金化)することによって形成されている。なお、半田層12aは、約80質量%のAuと約20質量%のSnとから構成されたAu−Sn合金からなり、約280℃の融点T1を有する。一方、図3および図4に示すように、反応半田層12の融点T3は、半田層12aの融点T1およびAu−Sn合金の約80質量%のAuおよび約20質量%のSnの組成を有する共晶点における融点よりも高い温度である。なお、半田層12aは、本発明の「第1半田層」の一例である。また、半田層12aの融点T1は、本発明の「第1融点」であり、反応半田層12の融点T3は、本発明の「第3融点」の一例である。
【0027】
また、半田層14は、約80質量%のAuと約20質量%のSnとから構成されたAu−Sn合金からなる。また、半田層14は、放熱基台10の電極11bの表面上に形成されたPtからなるバリア層13を介して、電極11bの表面上に形成されている。このバリア層13は、電極11bのAuが半田層14側に拡散するのを抑制する機能を有する。なお、半田層14は、本発明の「第2半田層」の一例である。
【0028】
また、図1に示すように、半田層14の下面側に配置されているバリア層13のX方向の両端部およびY方向の両端部は、それぞれ、半田層14のX方向の両端部およびY方向の両端部から外側の領域に露出するように形成されている。すなわち、バリア層13は、少なくとも半田層14が形成される領域に渡って形成されている。これにより、バリア層13は、電極11bと半田層14とが直接接触しないように形成されている。
【0029】
また、第1実施形態では、半田層14は、上記した半田層12aと同一の組成を有するAu−Sn合金からなり、半田層12aと同一の融点T1(約280℃)を有する。また、半田層12aおよび14は、図3に示す約280℃の融点を有する共晶点の組成と略一致するように構成されている。なお、図4に示すように、半田層14の融点T1は、半田層14よりもAuの含有率が大きい反応半田層12の融点T3よりも低い。なお、半田層14の融点T1は、本発明の「第2融点」の一例である。
【0030】
また、図2に示すように、バリア層13の厚み(Z方向)t1は、電極11bの厚みt2および半田層14の厚みt3よりも小さくなるように構成されている。
【0031】
赤色半導体レーザ素子20は、n型GaAs基板21の下面上に、AlGaInPからなるn型クラッド層22が形成されている。n型クラッド層22の下面上には、GaInPからなる量子井戸層(図示せず)とAlGaInPからなる障壁層(図示せず)とが交互に積層されたMQW構造を有する活性層23が形成されている。また、活性層23の下面上には、AlGaInPからなるp型クラッド層24が形成されている。なお、活性層23は、本発明の「第1発光層」の一例である。
【0032】
また、赤色半導体レーザ素子20のX方向の略中央におけるp型クラッド層24には、レーザ光の出射方向であるY方向に沿って延びるリッジ部(凸部)25が形成されている。また、p型クラッド層24のリッジ部25以外の下面上と、リッジ部25の両側面上とには、SiOからなる電流ブロック層27が形成されている。
【0033】
また、リッジ部25の下面上および電流ブロック層27の下面上には、Auなどからなるp側電極28が形成されている。このp側電極28は、反応半田層12を介して、電極11aおよび図示しないリード端子(正極側)に接続されている。また、n型GaAs基板21の上面上の略全領域には、n型GaAs基板21に近い側から順に、AuGe層、Ni層およびAu層の順に積層されたn側電極29が形成されている。
【0034】
また、p側電極28と放熱基台10の上面とが接合されることによって、赤色半導体レーザ素子20は、活性層23およびリッジ部25がn型GaAs基板21の下側に位置するように、放熱基台10の上面上に接合されている。すなわち、赤色半導体レーザ素子20は、ジャンクションダウン方式で放熱基台10に接合されている。また、赤色半導体レーザ素子20の活性層23は、放熱基台10の上面に対して上方(Z1側)に高さH1の位置になるように、放熱基台10に接合されている。なお、高さH1は、本発明の「第1距離」の一例である。
【0035】
青紫色半導体レーザ素子30は、n型GaN基板31の下面上に、n型AlGaNからなるn型クラッド層32が形成されている。n型クラッド層32の下面上には、InGaNからなる量子井戸層(図示せず)とGaNからなる障壁層(図示せず)とが交互に積層された多重量子井戸(MQW)構造を有する活性層33が形成されている。また、活性層33の下面上には、p型AlGaNからなるp型クラッド層34が形成されている。なお、活性層33は、本発明の「第2発光層」の一例である。
【0036】
また、青紫色半導体レーザ素子30のX方向の略中央におけるp型クラッド層34には、レーザ光の出射方向であるY方向に沿って延びるリッジ部(凸部)35が形成されている。また、p型クラッド層34のリッジ部35以外の下面上と、リッジ部35の両側面上とには、SiOからなる電流ブロック層37が形成されている。また、リッジ部35の下面上および電流ブロック層37の下面上には、Auなどからなるp側電極38が形成されている。このp側電極38は、半田層14およびバリア層13を介して、電極11bおよび図示しないリード端子(正極側)に接続されている。また、n型GaN基板31の上面上の略全領域には、n型GaN基板31に近い側から順に、Al層、Pt層およびAu層の順に積層されたn側電極39が形成されている。
【0037】
また、p側電極38と放熱基台10の上面とが接合されることによって、青紫色半導体レーザ素子30は、活性層33およびリッジ部35がn型GaN基板31の下側に位置するように、放熱基台10の上面上に接合されている。すなわち、青紫色半導体レーザ素子30は、ジャンクションダウン方式で放熱基台10に接合されている。また、青紫色半導体レーザ素子30の活性層33は、放熱基台10の上面に対して上方(Z1側)に高さH2の位置になるように、放熱基台10に接合されている。なお、高さH2は、本発明の「第2距離」の一例である。
【0038】
また、図2に示すように、赤色半導体レーザ素子20では、電流ブロック層27の厚み(Z方向)が、バリア層13の厚みt1の分だけ大きく形成されている。これにより、赤色半導体レーザ素子20の活性層23から放熱基台10の上面までの高さH1と、青紫色半導体レーザ素子30の活性層33から放熱基台10の上面までの高さH2とが略同一になるように構成されている。これにより、赤色半導体レーザ素子20の活性層23と、青紫色半導体レーザ素子30の活性層33とが略同一の高さ位置に位置するように構成されている。
【0039】
また、ワイヤ60によって、放熱基台10に形成された電極11aと図示しないリード端子(正極側)とが電気的に接続されている。また、ワイヤ61によって、放熱基台10に形成された電極11bと図示しないリード端子(正極側)とが電気的に接続されている。また、ワイヤ62によって、赤色半導体レーザ素子20のn側電極29とベース部40とが電気的に接続されている。また、ワイヤ63によって、青紫色半導体レーザ素子30のn側電極39とベース部40とが電気的に接続されている。また、ベース部40は、図示しない負極端子に接続されている。
【0040】
次に、図4〜図8を参照して、第1実施形態による2波長半導体レーザ装置100の製造プロセスについて説明する。
【0041】
まず、図5および図6に示すように、放熱基台10の上面上のX1側およびX2側に、それぞれ、Auからなる電極11aおよび11bを形成する。その後、電極11bの表面上に、Ptからなるバリア層13を形成する。なお、この際、バリア層13の厚みt1を、電極11bの厚みt2よりも小さくなるように形成する。
【0042】
その後、電極11aの上面上およびバリア層13の上面上に、それぞれ、約80質量%のAuと約20質量%のSnとから構成されたAu−Sn合金半田層からなる半田層12aおよび14を形成する。また、この際、半田層14を、半田層14のX方向の両端部およびY方向の両端部が、それぞれ、バリア層13のX方向の両端部およびY方向の両端部よりも内側に位置するように形成するとともに、半田層14の厚みt3が、バリア層13の厚みt1よりも大きくなるように形成する。
【0043】
また、所定の製造プロセスを用いて、赤色半導体レーザ素子20(図7参照)および青紫色半導体レーザ素子30(図8参照)を形成する。この際、赤色半導体レーザ素子20における電流ブロック層27の厚み(Z方向)を、バリア層13の厚みt1の分だけ大きくなるように形成する。
【0044】
その後、図7に示すように、赤色半導体レーザ素子20のp側電極28と半田層12aとが対向するように、コレット70を用いて赤色半導体レーザ素子20のn側電極29側を上方(Z1側)から保持する。そして、赤色半導体レーザ素子20のp側電極28と電極11aとを半田層12aによって接合する。この際、第1実施形態の製造プロセスでは、半田層12aに対して、融点T1(約280℃)よりも高い加熱温度T2(約300℃)の熱を加える。これにより、電極11aのAuが半田層12a側に拡散して半田層12aのAu−Sn合金と反応して、Auの含有率が80質量%よりも相対的に増加した状態の反応半田層12(図8参照)が形成される。したがって、図4に示すように、反応半田層12の融点T3は、半田層12aと電極11aとが反応(合金化)する前の半田層12aの融点T1(約280℃)よりも高くなり、かつ、半田層12aおよび14を融解する際の加熱温度T2(約300℃)よりも高くなる。
【0045】
また、第1実施形態の製造プロセスでは、半田層12aを融解させる際に、半田層12aに近接する半田層14にも半田層12aを融解させるための熱の一部が加えられる。しかしながら、バリア層13によって、半田層14と半田層14の下方の電極11bとの反応は抑制されるので、半田層14の組成(約80質量%のAuおよび約20質量%のSn)は略変化せず、半田層14の融点T1も略変化しない。つまり、図4に示すように、半田層14は、放熱基台10に赤色半導体レーザ素子20を接合する際において、融点T1が保たれる。
【0046】
なお、赤色半導体レーザ素子20は、赤色半導体レーザ素子20の活性層23が放熱基台10の上面に対して上方(Z1側)に高さH1(図8参照)の位置になるように接合される。また、赤色半導体レーザ素子20は、活性層23およびリッジ部25がn型GaAs基板21の下方に位置するように、放熱基台10の上面上にジャンクションダウン方式で接合される。
【0047】
その後、図8に示すように、青紫色半導体レーザ素子30のp側電極38と半田層14とが対向するように、コレット70を用いて青紫色半導体レーザ素子30のn側電極39側を上方(Z1側)から保持する。そして、青紫色半導体レーザ素子30のp側電極38と電極11bとを半田層14によって接合する。この際、第1実施形態の製造プロセスでは、半田層14に対して、融点T1(約280℃)よりも高い温度で、かつ、反応半田層12における融点T3よりも低い温度である加熱温度T2(約300℃)の熱を加える。
【0048】
ここで、放熱基台10に赤色半導体レーザ素子20を接合した際(半田層12aを融解させた際)に、半田層14の融点T1は略変化していないので、半田層14は加熱温度T2で融解する。一方、図4に示すように、半田層12aと電極11aとが反応(合金化)することにより形成された反応半田層12の融点T3は、半田層14を融解する際の加熱温度T2よりも高いので、半田層14を融解させる際に、半田層14に近接する反応半田層12に半田層14を融解させるための熱の一部が加えられても、反応半田層12は略融解しない。これにより、先に放熱基台10に接合されている赤色半導体レーザ素子20の接合位置はずれない。
【0049】
なお、青紫色半導体レーザ素子30は、青紫色半導体レーザ素子30の活性層33が放熱基台10の上面に対して上方(Z1側)に高さH2(図2参照)の位置になるように接合される。また、青紫色半導体レーザ素子30は、活性層33およびリッジ部35がn型GaN基板31の下方に位置するように、放熱基台10の上面上にジャンクションダウン方式で接合される。
【0050】
その後、図2に示すように、接合層50によって、ベース部40に放熱基台10を接合する。そして、図1に示すように、ワイヤ60によって、電極11aと図示しないリード端子(正極側)とを接続する。また、ワイヤ61によって、電極11bと図示しないリード端子(正極側)とを接続する。また、ワイヤ62によって、赤色半導体レーザ素子20のn側電極29とベース部40とを接続する。また、ワイヤ63によって、青紫色半導体レーザ素子30のn側電極39とベース部40とを接続する。これにより、2波長半導体レーザ装置100が形成される。
【0051】
第1実施形態では、上記のように、放熱基台10の電極11bの表面上(Z1側)に、Ptからなるバリア層13を形成し、バリア層13の上面上に半田層14を形成することによって、放熱基台10に赤色半導体レーザ素子20を接合する際に、融点T1を有する半田層12aを融解させる熱が半田層14に加えられたとしても、半田層14と電極11bとの間にバリア層13が介在して半田層14と電極11bとが直接接触するのが抑制される。これにより、半田層14と電極11bとが直接接触した状態で加熱されることにより、半田層14と電極11bとの合金化が進み半田層14の融点が高くなる場合と異なり、半田層14の融点が融点T1よりも高くなるのを抑制することができるので、赤色半導体レーザ素子20を接合した放熱基台10に青紫色半導体レーザ素子30を接合する際に、加熱温度T2をより高い温度に引き上げることなく、半田層14を融解させて青紫色半導体レーザ素子30を接合することができる。この結果、過剰な加熱を行う必要がないので、青紫色半導体レーザ素子30内に生じる熱応力が増大するのを抑制することができる。したがって、放熱基台10に青紫色半導体レーザ素子30を接合する際に青紫色半導体レーザ素子30の発光特性の低下および青紫色半導体レーザ素子30の寿命が短くなることを抑制することができる。また、放熱基台10に赤色半導体レーザ素子20を接合する際および放熱基台10に青紫色半導体レーザ素子30を接合する際に、Ptからなるバリア層13により電極11bを構成する材料が半田層14中に拡散するのが抑制されるので、半田層14の融点T1が高くなるのを確実に抑制することができる。
【0052】
また、第1実施形態では、半田層14を融解させるための加熱温度T2(約300℃)を半田層14における融点T1(約280℃)よりも高い温度にすることによって、半田層14を融点T1以上の加熱温度T2で容易に融解させることができる。
【0053】
また、第1実施形態では、加熱温度T2(約300℃)を反応半田層12における融点T3未満にすることによって、半田層14を融解させる際に生じる熱が反応半田層12に加えられても、加熱温度T2は融点T3未満であることから、反応半田層12が融解するのを抑制することができる。これにより、反応半田層12が融解することに起因して、反応半田層12を介して放熱基台10に接合された赤色半導体レーザ素子20が所定の接合位置からずれるのを抑制することができる。
【0054】
また、第1実施形態では、半田層12aと半田層14とを同一の融点T1を有するように構成することによって、半田層12aを融解させて放熱基台10に赤色半導体レーザ素子20を接合する際に、半田層14が融解した場合にも、半田層14と電極11bとの間のバリア層13によって、半田層14の融点T1が高くなるのを容易に抑制することができる。
【0055】
また、第1実施形態では、放熱基台10の上面上のX1側およびX2側に、それぞれ、Auからなる電極11aおよび11bを形成するとともに、電極11b上に、Ptからなるバリア層13を形成する。そして、電極11aの上面上およびバリア層13の上面上に、それぞれ、約80質量%のAuと約20質量%のSnとから構成され、反応半田層12の融点T3よりも低い融点T1(約280℃)を有するAu−Sn合金半田層からなる半田層12aおよび14を形成する。これにより、放熱基台10に赤色半導体レーザ素子20を接合する際に、電極11aのAuと半田層12aのAu−Sn合金とが合金化されるので、反応半田層12の融点を半田層14の融点T1よりも高い融点T3に容易に引き上げることができる。一方、バリア層13によって半田層14の融点T1は変化しないので、反応半田層12の融点T3と半田層14の融点T1との融点の差を容易に生じさせることができる。
【0056】
また、第1実施形態では、半田層12aと半田層14とを、共に、約280℃の融点を有する共晶点における組成と略同一の組成である約80質量%のAuと約20質量%のSnとから構成されたAu−Sn合金半田層からなるように構成することによって、半田層12aを形成する工程と半田層14を形成する工程とを1つの工程で行うことができるので、2波長半導体レーザ装置100の製造プロセスをより簡素化することができる。また、半田層12aと半田層14とが、共に、約280℃の融点を有する共晶点の組成(約80質量%のAuおよび約20質量%のSn)と略同一の組成を有することによって、共晶点における融点(約280℃)はAu−Sn合金の他の組成における融点よりも低いので、共晶点における組成と同一の組成を有する半田層12aの融点T1と半田層14の融点T1とを、Au−Sn合金の他の組成における融点よりも低くすることができる。これにより、半田層12aおよび半田層14をそれぞれ融解させる際の加熱温度T2を小さくすることができるので、放熱基台10に赤色半導体レーザ素子20を接合する際、および、放熱基台10に青紫色半導体レーザ素子30を接合する際に、赤色半導体レーザ素子20および青紫色半導体レーザ素子30内に生じる熱応力が増大するのを抑制することができる。また、p側電極28をAuにより形成すれば、半田層12aのAuおよび半田層14のAuだけてなく、p側電極28のAuも反応半田層12に取り込まれるので、反応半田層12におけるAuの含有率をより増加させることができる。これにより、反応半田層12の融点T3をより高くすることができ、より効果的である。
【0057】
また、第1実施形態では、電極11aのAuが半田層12a側に拡散して半田層12aのAu−Sn合金と反応(合金化)することによって、電極11aのAuを半田層12aのAu−Sn合金中に拡散させることにより、半田層12aの融点T1よりも高い融点T3を有するAu−Sn合金反応半田層からなる反応半田層12を半田層12aの位置に容易に形成することができる。
【0058】
また、第1実施形態では、赤色半導体レーザ素子20を放熱基台10に接合した後に青紫色半導体レーザ素子30を放熱基台10に接合することによって、赤色半導体レーザ素子20と青紫色半導体レーザ素子30とを放熱基台10に同時に接合する場合と比べて、赤色半導体レーザ素子20および青紫色半導体レーザ素子30を、それぞれ、放熱基台10の所定の接合位置により正確に接合することができる。
【0059】
(第2実施形態)
次に、図3、図4および図9〜図12を参照して、第2実施形態について説明する。この第2実施形態による3波長半導体レーザ装置200では、上記第1実施形態の赤色半導体レーザ素子20の代わりに、赤色半導体レーザ素子220および赤外半導体レーザ素子290が同一のGaAs基板281にモノリシックに形成された2波長半導体レーザ素子280を用いている。また、図中において、上記第1実施形態と同様の構成には同じ符号を付している。なお、3波長半導体レーザ装置200は、本発明の「半導体レーザ装置」の一例である。
【0060】
まず、図3、図4および図9〜図11を参照して、本発明の第2実施形態による3波長半導体レーザ装置200の構造について説明する。
【0061】
第2実施形態による3波長半導体レーザ装置200は、図9に示すように、放熱基台10と、約650nmの発振波長を有する赤色半導体レーザ素子220および約780nmの発振波長を有する赤外半導体レーザ素子290がモノリシックに形成された2波長半導体レーザ素子280と、約405nmの発振波長を有する青紫色半導体レーザ素子230と、ベース部40とを備えている。また、2波長半導体レーザ素子280は、放熱基台10の上面上のX1側に接合されているとともに、青紫色半導体レーザ素子230は、放熱基台10の上面上のX2側に接合されている。なお、赤色半導体レーザ素子220および赤外半導体レーザ素子290は、本発明の「第1半導体レーザ素子」の一例である。また、青紫色半導体レーザ素子230は、本発明の「第2半導体レーザ素子」の一例である。
【0062】
また、放熱基台10の上面上には、X1側からX2側に向かって、電極211c、211aおよび11bがこの順に形成されている。これら電極211a、11bおよび211cは、共にAuからなる金属電極である。また、電極211a上には、2波長半導体レーザ素子280の赤色半導体レーザ素子220が反応半田層12を介して接合されている。また、電極211c上には、2波長半導体レーザ素子280の赤外半導体レーザ素子290が反応半田層215を介して接合されている。また、電極11b上には、バリア層13が形成されているとともに、バリア層13上には、青紫色半導体レーザ素子230が半田層14を介してジャンクションダウン方式で接合されている。
【0063】
また、電極211c上(Z1側)の反応半田層215は、80質量%よりも大きい含有率を有するAuと、20質量%よりも小さい含有率を有するSnとからなる。この反応半田層215は、赤外半導体レーザ素子290を放熱基台10に接合する前に電極211c上に形成されたAu−Sn合金からなる半田層215a(図10および図11参照)が、電極211cのAuと反応(合金化)することによって形成されている。なお、半田層215aは、半田層12aと略同一の組成(約80質量%のAuおよび約20質量%のSn)を有するとともに、半田層12aの融点と略同一の融点T1(約280℃)を有する。一方、反応半田層215は、反応半田層12と略同一の組成を有するとともに、反応半田層12の融点と略同一の融点T3を有する。なお、半田層215aは、本発明の「第1半田層」の一例である。また、半田層215aの融点T1は、本発明の「第1融点」であり、反応半田層215の融点T3は、本発明の「第3融点」の一例である。
【0064】
また、2波長半導体レーザ素子280では、赤色半導体レーザ素子220と赤外半導体レーザ素子290とが、共に、共通(同一)のn型GaAs基板281上にモノリシックに形成されている。また、赤色半導体レーザ素子220は、n型GaAs基板281の下面上のX2側に形成されているとともに、赤外半導体レーザ素子290は、n型GaAs基板281の下面上のX1側に形成されている。また、赤色半導体レーザ素子220と赤外半導体レーザ素子290とは、n型GaAs基板281の下面におけるX方向の略中央に形成された溝部282によって、互いに離間するように構成されている。
【0065】
また、赤色半導体レーザ素子220には、n型GaAs基板281の下面上のX2側に、n型クラッド層22と、活性層23と、p型クラッド層24と、電流ブロック層227と、p側電極28とが形成されている。また、赤色半導体レーザ素子220のp型クラッド層24に形成されたリッジ部225は、赤色半導体レーザ素子220のX方向(水平方向)の中央よりも青紫色半導体レーザ素子230側(X2側)に寄せて形成されている。また、電流ブロック層227は、赤外半導体レーザ素子290における後述する電流ブロック層297と一体的に形成されている。
【0066】
また、赤外半導体レーザ素子290は、n型GaAs基板281の下面上のX1側に、AlGaAsからなるn型クラッド層292が形成されている。n型クラッド層292の下面上には、Al組成の低いAlGaAsからなる量子井戸層とAl組成の高いAlGaAsからなる障壁層とが交互に積層されたMQW構造を有する活性層293が形成されている。また、活性層293の下面上には、AlGaAsからなるp型クラッド層294が形成されている。なお、活性層293は、本発明の「第1発光層」の一例である。
【0067】
また、赤外半導体レーザ素子290のX方向(水平方向)の中央よりも青紫色半導体レーザ素子230側(X2側)におけるp型クラッド層294には、レーザ光の出射方向であるY方向に沿って延びるリッジ部(凸部)295が形成されている。また、p型クラッド層294のリッジ部295以外の下面上と、リッジ部295の両側面上とには、赤色半導体レーザ素子220の電流ブロック層227と一体的に形成された電流ブロック層297が形成されている。また、リッジ部295の下面上および電流ブロック層297の下面上には、Auなどからなるp側電極298が形成されている。このp側電極298は、反応半田層215を介して、電極211cおよび図示しないリード端子(正極側)に接続されている。
【0068】
また、n型GaAs基板281の上面上の略全領域には、n型GaAs基板281に近い側から順に、AuGe層、Ni層およびAu層の順に積層されたn側電極283が形成されている。
【0069】
また、p側電極298と放熱基台10の上面とが接合されることによって、赤外半導体レーザ素子290は、活性層293およびリッジ部295がn型GaAs基板281の下側に位置するように、放熱基台10の上面上にジャンクションダウン方式で接合されている。また、赤外半導体レーザ素子290の活性層293は、放熱基台10の上面に対して上方(Z1側)に高さH1の位置になるように、放熱基台10に接合されている。
【0070】
また、赤色半導体レーザ素子220では、電流ブロック層227の厚み(Z方向)が、バリア層13の厚みt1の分だけ大きく形成されている。また、赤外半導体レーザ素子290では、電流ブロック層297の厚みが、バリア層13の厚みt1の分だけ大きく形成されている。これらにより、赤色半導体レーザ素子220の活性層23から放熱基台10の上面までの高さH1と、赤外半導体レーザ素子290の活性層293から放熱基台10の上面までの高さH1と、青紫色半導体レーザ素子230の活性層33から放熱基台10の上面までの高さH2とが略同一になるように構成されている。これにより、赤色半導体レーザ素子220の活性層23と、赤外半導体レーザ素子290の活性層293と、青紫色半導体レーザ素子230の活性層33とが略同一の高さ位置に位置するように構成されている。
【0071】
また、青紫色半導体レーザ素子230のp型クラッド層34に形成されたリッジ部235は、青紫色半導体レーザ素子230のX方向(水平方向)の中央よりも2波長半導体レーザ素子280(X1側)に寄せて形成されている。
【0072】
また、ワイヤ60によって、放熱基台10に形成された電極211aと図示しないリード端子(正極側)とが電気的に接続されている。また、ワイヤ62によって、2波長半導体レーザ素子280のn側電極283とベース部40とが電気的に接続されている。また、ワイヤ264によって、放熱基台10に形成された電極211cと図示しないリード端子(正極側)とが電気的に接続されている。
【0073】
なお、第2実施形態による3波長半導体レーザ装置200のその他の構成は、上記第1実施形態の2波長半導体レーザ装置100と同様である。
【0074】
次に、図4および図9〜図12を参照して、第2実施形態による3波長半導体レーザ装置200の製造プロセスについて説明する。
【0075】
まず、図10に示すように、放熱基台10の上面上のX1側からX2側に向かって、Auからなる電極211c、211aおよび11bをこの順に形成する。その後、電極11b上に、Ptからなるバリア層13を形成する。そして、電極211a、11bおよび211cの上面上に、それぞれ、約80質量%のAuと約20質量%のSnとから構成されたAu−Sn合金半田層からなる半田層12a、14および215aを形成する。
【0076】
また、所定の製造プロセスを用いて、リッジ部225がX方向(水平方向)の中央よりも赤外半導体レーザ素子290とは反対側(X2側)に寄せられた状態の赤色半導体レーザ素子220と、リッジ部295がX方向(水平方向)の中央よりも赤色半導体レーザ素子220側(X2側)に寄せられた状態の赤外半導体レーザ素子290(図11参照)とを、同一(共通)のn型GaAs基板281上にモノリシックに形成する。また、赤色半導体レーザ素子220における電流ブロック層227の厚みおよび赤外半導体レーザ素子290における電流ブロック層297の厚みを、共にバリア層13の厚みt1の分だけ大きくなるように形成する。これにより、2波長半導体レーザ素子280が形成される。また、所定の製造プロセスを用いて、リッジ部235がX方向(水平方向)の中央よりも一方側に寄せられた状態の青紫色半導体レーザ素子230(図12参照)を形成する。
【0077】
その後、図11に示すように、赤色半導体レーザ素子220のp側電極28と反応半田層12とが対向するとともに、赤外半導体レーザ素子290のp側電極298と反応半田層215とが対向するように、コレット70を用いて2波長半導体レーザ素子280のn側電極283側を上方(Z1側)から保持する。そして、赤色半導体レーザ素子220のp側電極28と電極211aとを半田層12aによって接合する。同様に、赤外半導体レーザ素子290のp側電極298と電極211cとを半田層215aによって接合する。この際、第2実施形態の製造プロセスでは、半田層12aおよび215aに対して、半田層12aおよび215aにおける融点T1(約280℃)よりも高い加熱温度T2(約300℃)の熱をそれぞれ加える。
【0078】
これにより、電極211aのAuが半田層12a側に拡散して半田層12aのAu−Sn合金と反応して、Auの含有率が80質量%よりも相対的に増加した状態の反応半田層12(図12参照)が形成される。同様に、電極211cのAuが半田層215a側に拡散して半田層215aのAu−Sn合金と反応して、Auの含有率が80質量%よりも相対的に増加した状態の反応半田層215(図12参照)が形成される。したがって、図4に示すように、反応半田層12および215の融点T3は、半田層12aの融点T1(約280℃)よりも高くなり、かつ、加熱温度T2(約300℃)よりも高くなる。
【0079】
また、第2実施形態の製造プロセスでは、半田層12aおよび215aを融解させる際に、半田層14にも半田層12aおよび215aを融解させるための熱の一部が加えられる。しかしながら、バリア層13によって、半田層14と半田層14の下方の電極11bとの反応は抑制されるので、半田層14の組成(約80質量%のAuおよび約20質量%のSn)は略変化せず、半田層14の融点T1も略変化しない。
【0080】
なお、赤色半導体レーザ素子220および赤外半導体レーザ素子290は、それぞれ、赤色半導体レーザ素子220の活性層23および赤外半導体レーザ素子290の活性層293が放熱基台10の上面に対して上方(Z1側)に高さH1(図12参照)の位置になるように接合される。また、赤色半導体レーザ素子220および赤外半導体レーザ素子290は、それぞれ、リッジ部225および295が下方で、かつ、赤色半導体レーザ素子220および赤外半導体レーザ素子290のX方向(水平方向)の中央よりも青紫色半導体レーザ素子230側(X2側)に位置するように、放熱基台10の上面上にジャンクションダウン方式で接合される。
【0081】
その後、図12に示すように、加熱温度T2(約300℃)の熱を加えることによって融解させた半田層14を介して、青紫色半導体レーザ素子230を放熱基台10の上面上に接合する。なお、青紫色半導体レーザ素子230は、リッジ部235が下方で、かつ、青紫色半導体レーザ素子230のX方向(水平方向)の中央よりも2波長半導体レーザ素子280側(X1側)に位置するように、放熱基台10の上面上にジャンクションダウン方式で接合される。また、青紫色半導体レーザ素子230は、放熱基台10の下面から青紫色半導体レーザ素子230の活性層33までの鉛直方向(Z方向)の高さがH2(図9参照)になるように上面上に接合される。
【0082】
その後、図9に示すように、接合層50によって、ベース部40に放熱基台10を接合する。そして、ワイヤ60によって、電極211aと図示しないリード端子(正極側)とを接続する。また、ワイヤ61によって、電極11bと図示しないリード端子(正極側)とを接続する。また、ワイヤ62によって、n側電極283とベース部40とを接続する。また、ワイヤ63によって、n側電極39とベース部40とを接続する。また、ワイヤ264によって、電極211cと図示しないリード端子(正極側)とを接続する。これにより、3波長半導体レーザ装置200が形成される。
【0083】
なお、第2実施形態による3波長半導体レーザ装置200のその他の製造プロセスは、上記第1実施形態と同様である。
【0084】
第2実施形態では、上記のように、3波長半導体レーザ装置200が、赤色半導体レーザ素子220および赤外半導体レーザ素子290がモノリシックに形成された2波長半導体レーザ素子280と、青紫色半導体レーザ素子230とを備える場合に、放熱基台10の電極11bの表面上(Z1側)に、Ptからなるバリア層13を形成し、バリア層13の上面上に半田層14を形成する。これによって、放熱基台10に赤色半導体レーザ素子220および赤外半導体レーザ素子290を接合する際に、融点T1を有する半田層12aおよび215aを融解させる熱が半田層14に加えられたとしても、半田層14と電極11bとの間にバリア層13が介在して半田層14と電極11bとが直接接触するのが抑制される。これにより、半田層14と電極11bとが直接接触した状態で加熱されることに起因して半田層14と電極11bとの合金化が進み半田層14の融点が高くなる場合と異なり、半田層14の融点が融点T1よりも高くなるのを抑制することができる。この結果、赤色半導体レーザ素子220および赤外半導体レーザ素子290を接合した放熱基台10に青紫色半導体レーザ素子230を接合する際に、加熱温度T2をより高い温度に引き上げることなく、半田層14を融解させて青紫色半導体レーザ素子230を接合することができる。なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0085】
(第3実施形態)
次に、図4、図9、図10および図13を参照して、本発明の第3実施形態による光ピックアップ装置300について説明する。なお、光ピックアップ装置300は、本発明の「光装置」の一例である。
【0086】
本発明の第3実施形態による光ピックアップ装置300は、図13に示すように、上記第2実施形態による3波長半導体レーザ装置200(図9参照)が搭載されたキャン型の3波長半導体レーザ装置310と、3波長半導体レーザ装置310から出射されたレーザ光を調整する光学系320と、レーザ光を受光する光検出部330とを備えている。
【0087】
また、光学系320は、偏光ビームスプリッタ(PBS)321、コリメータレンズ322、ビームエキスパンダ323、λ/4板324、対物レンズ325、シリンドリカルレンズ326および光軸補正素子327を有している。
【0088】
また、PBS321は、3波長半導体レーザ装置310から出射されるレーザ光を全透過するとともに、光ディスク340から帰還するレーザ光を全反射する。コリメータレンズ322は、PBS321を透過した3波長半導体レーザ装置310からのレーザ光を平行光に変換する。ビームエキスパンダ323は、凹レンズ、凸レンズおよびアクチュエータ(図示せず)から構成されている。アクチュエータは、凹レンズおよび凸レンズの距離を変化させることにより、3波長半導体レーザ装置310から出射されたレーザ光の波面状態を補正する機能を有している。
【0089】
また、λ/4板324は、コリメータレンズ322によって略平行光に変換された直線偏光のレーザ光を円偏光に変換する。また、λ/4板324は光ディスク340から帰還する円偏光のレーザ光を直線偏光に変換する。この場合の直線偏光の偏光方向は、3波長半導体レーザ装置310から出射されるレーザ光の直線偏光の方向に直交する。これにより、光ディスク340から帰還するレーザ光は、PBS321によって略全反射される。対物レンズ325は、λ/4板324を透過したレーザ光を光ディスク340の表面(記録層)上に収束させる。なお、対物レンズ325は、対物レンズアクチュエータ(図示せず)により移動可能にされている。
【0090】
また、PBS321により全反射されるレーザ光の光軸に沿うように、シリンドリカルレンズ326、光軸補正素子327および光検出部330が配置されている。シリンドリカルレンズ326は、入射されるレーザ光に非点収差作用を付与する。光軸補正素子327は、回折格子により構成されており、シリンドリカルレンズ326を透過した青紫色、赤色および赤外の各レーザ光の0次回折光のスポットが後述する光検出部330の検出領域上で一致するように配置されている。
【0091】
また、光検出部330は、受光したレーザ光の強度分布に基づいて再生信号を出力する。このようにして、3波長半導体レーザ装置310を備えた光ピックアップ装置300が構成される。
【0092】
この光ピックアップ装置300では、3波長半導体レーザ装置310は、赤色半導体レーザ素子220、青紫色半導体レーザ素子230および赤外半導体レーザ素子290(図9参照)から、赤色、青紫色および赤外のレーザ光を独立的に出射することが可能に構成されている。また、3波長半導体レーザ装置310から出射されたレーザ光は、上記のように、PBS321、コリメータレンズ322、ビームエキスパンダ323、λ/4板324、対物レンズ325、シリンドリカルレンズ326および光軸補正素子327により調節された後、光検出部330の検出領域上に照射される。
【0093】
ここで、光ディスク340に記録されている情報を再生する場合には、赤色半導体レーザ素子220、青紫色半導体レーザ素子230および赤外半導体レーザ素子290から出射される各々のレーザパワーが一定になるように制御しながら、光ディスク340の記録層にレーザ光を照射するとともに、光検出部330から出力される再生信号を得ることができる。また、光ディスク340に情報を記録する場合には、記録すべき情報に基づいて、赤色半導体レーザ素子220(赤外半導体レーザ素子290)および青紫色半導体レーザ素子230から出射されるレーザパワーを制御しながら、光ディスク340にレーザ光を照射する。これにより、光ディスク340の記録層に情報を記録することができる。このようにして、3波長半導体レーザ装置310を備えた光ピックアップ装置300を用いて、光ディスク340への記録および再生を行うことができる。
【0094】
第3実施形態では、上記のように、光ピックアップ装置300が、上記第2実施形態の3波長半導体レーザ装置200を搭載した3波長半導体レーザ装置310を備える場合に、3波長半導体レーザ装置200の放熱基台10(図9参照)の電極11b(図9参照)の表面上に、Ptからなるバリア層13(図9参照)を形成し、バリア層13の上面上に半田層14(図9参照)を形成する。これによって、放熱基台10に赤色半導体レーザ素子220および赤外半導体レーザ素子290を接合する際に、融点T1(図4参照)を有する半田層12aおよび215a(図10参照)を融解させる熱が半田層14に加えられたとしても、半田層14と電極11bとの間にバリア層13が介在して半田層14と電極11bとが直接接触するのが抑制される。これにより、半田層14と電極11bとが直接接触した状態で加熱されることに起因して半田層14と電極11bとの合金化が進み半田層14の融点が高くなる場合と異なり、半田層14の融点が融点T1よりも高くなるのを抑制することができる。この結果、赤色半導体レーザ素子220および赤外半導体レーザ素子290を接合した放熱基台10に青紫色半導体レーザ素子230を接合する際に、加熱温度T2をより高い温度に引き上げることなく、半田層14を融解させて青紫色半導体レーザ素子230を接合することができる。
【0095】
また、第3実施形態では、上記第2実施形態の3波長半導体レーザ装置200において、赤色半導体レーザ素子220の電流ブロック層227(図9参照)における厚みと、赤外半導体レーザ素子290の電流ブロック層297(図9参照)における厚みとを調節することにより、赤色半導体レーザ素子220の活性層23(図9参照)から放熱基台10の上面までの高さH1と、赤外半導体レーザ素子290の活性層293(図9参照)から放熱基台10の上面までの高さH1と、青紫色半導体レーザ素子230の活性層33から放熱基台10の上面までの高さH2とが略同一になるように構成する。これにより、青紫色半導体レーザ素子230側にのみバリア層13が形成された3波長半導体レーザ装置200(310)において、赤色半導体レーザ素子220の活性層23と、赤外半導体レーザ素子290の活性層293と、青紫色半導体レーザ素子230の活性層33とを互いに略同一高さ位置に位置させることができる。この結果、光ピックアップ装置300において、赤色半導体レーザ素子220からのレーザ光の高さ方向の照射位置と、赤外半導体レーザ素子290からのレーザ光の高さ方向の照射位置と、青紫色半導体レーザ素子230からのレーザ光の高さ方向の照射位置とのずれが大きくなるのを抑制することができる。
【0096】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0097】
たとえば、上記第1および第2実施形態では、青紫色半導体レーザ素子30および230が接合される側の放熱基台10(電極11b)上にバリア層13を形成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、赤色半導体レーザ素子20および220ならびに赤外半導体レーザ素子290が接合される側の放熱基台10(電極11a)上にバリア層を形成し、青紫色半導体レーザ素子30および230が接合される側の放熱基台10(電極11b)上にバリア層を形成しないように構成してもよい。この場合、青紫色半導体レーザ素子が放熱基台上に接合された後に、赤色半導体レーザ素子および赤外半導体レーザ素子が放熱基台上に接合される。
【0098】
また、上記第1および第2実施形態では、バリア層が設けられていない側の半田層12aおよび215aと、バリア層13が設けられている側の半田層14とを略同一の組成(約80質量%のAuおよび約20質量%のSn)を有するAu−Sn合金半田層からなるように形成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、バリア層が設けられていない側の本発明の「第1半田層」と、バリア層が設けられている側の本発明の「第2半田層」とを異なる組成を有するAu−Sn合金半田層からなるように構成してもよい。この際、バリア層が設けられていない側の第1半田層の第1融点は、反応半田層の第3融点よりも低い方が好ましい。
【0099】
また、上記第1および第2実施形態では、電極11a、211aおよび211cと、電極11bとが共にAuからなるとともに、半田層12aおよび215aと、半田層14と、反応半田層12および215とがAu−Sn合金からなる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第1電極と第1半田層とが反応して、第2半田層の第2融点よりも高い第3融点を有する反応半田層になるような構成であれば、電極がAu以外の金属などからなるとともに、第1半田層と第2半田層と反応半田層とがAu−Sn合金以外の半田材料からなるように構成してもよい。
【0100】
また、上記第1および第2実施形態では、半田層12a、212aおよび215aと半田層14とが、共に約280℃の融点を有する共晶点の組成(約80質量%のAuおよび約20質量%のSn)と略同一の組成からなるように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第1半田層および第2半田層を、Au−Sn合金の約217℃の融点を有する共晶点における組成(約16質量%のAuと約84質量%のSn(図3参照))と略同一の組成になるように構成してもよい。これにより、第1半田層の第1融点および第2半田層の第2融点をさらに低くすることが可能である。一方、第1半田層の第1融点と反応半田層の第3融点との差をより容易に生じさせるためには、第1半田層および第2半田層が、Auの含有率の変化量に対する融点の上昇量が大きい約280℃の融点を有する共晶点の組成(約80質量%のAuおよび約20質量%のSn)と略同一の組成である方が好ましい。
【0101】
また、上記第1および第2実施形態では、バリア層13がPtからなる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、バリア層がTiからなるように構成してもよい。また、バリア層がPtまたはTi以外のW、MoおよびHfなどの導電性材料からなるように構成してもよいし、Pt、Ti、W、MoおよびHfのいずれか2つ以上からなるように構成してもよい。
【0102】
また、上記第1実施形態では、2波長半導体レーザ装置100が、赤色半導体レーザ素子20と青紫色半導体レーザ素子30とからなるとともに、上記第2実施形態では、3波長半導体レーザ装置200が、赤色半導体レーザ素子220および赤外半導体レーザ素子290がモノリシックに形成された2波長半導体レーザ素子280と青紫色半導体レーザ素子230とからなる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、上記第1および第2実施形態の青紫色半導体レーザ素子の代わりに、窒化物系半導体からなる緑色半導体レーザ素子や青色半導体レーザ素子を用いてもよい。また、上記第1実施形態の赤色半導体レーザ素子の代わりに、赤外半導体レーザ素子を用いてもよい。さらに、上記第2実施形態の3波長半導体レーザ装置を、赤色半導体レーザ素子と、緑色半導体レーザ素子と、青色半導体レーザ素子とからなるように構成してもよい。これにより、RGBの3原色を有する3波長半導体レーザ装置を形成することが可能である。
【0103】
また、上記第1および第2実施形態では、青紫色半導体レーザ素子30および230と、赤色半導体レーザ素子20および220と、赤外半導体レーザ素子290とを、活性層およびリッジ部が基板の下方に位置するように、ジャンクションダウン方式で放熱基台10上に接合した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、青紫色半導体レーザ素子、赤色半導体レーザ素子および赤外半導体レーザ素子を、活性層およびリッジ部が基板の上方に位置するように、ジャンクションアップ方式で放熱基台上に接合してもよい。
【0104】
また、上記第1および第2実施形態では、バリア層が形成されていない側の半導体レーザ素子の電流ブロック層における厚みを、バリア層の厚みの分だけ大きく形成することによって、バリア層が形成されていない側の半導体レーザ素子の活性層と、バリア層が形成されている側の半導体レーザ素子の活性層とが略同一の高さ位置に位置するように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、バリア層が形成されていない側の半導体レーザ素子と放熱基台の上面との間に配置されたp側パッド電極などの厚みを調節することによって、半導体レーザ素子の活性層同士が互いに同一または近傍の高さ位置になるように構成してもよい。また、バリア層が形成されている側の半導体レーザ素子と放熱基台の上面との間に位置する層の厚みを調節することによって、半導体レーザ素子の活性層同士が互いに同一または近傍の高さ位置になるように構成してもよい。
【0105】
また、上記第1および第2実施形態では、電流ブロック層27、37、227および297がSiOからなる例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、電流ブロック層として、SiNなどの他の絶縁性材料や、AlInPやAlGaNなどの半導体材料を用いてもよい。
【0106】
また、上記第3実施形態では、上記第2実施形態による3波長半導体レーザ装置200をキャン型の3波長半導体レーザ装置310に搭載した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、平板状の平面構造を有するフレーム型の3波長半導体レーザ装置に、上記第2実施形態における3波長半導体レーザ装置200を搭載してもよい。
【符号の説明】
【0107】
10 放熱基台(基台)
11a、211a、211c 電極(第1電極)
11b 電極(第2電極)
12、212、215 反応半田層
12a、212a、215a 半田層(第1半田層)
13 バリア層
14 半田層(第2半田層)
20、220 赤色半導体レーザ素子(第1半導体レーザ素子)
23、293 活性層(第1発光層)
30、230 青紫色半導体レーザ素子(第2半導体レーザ素子)
33 活性層(第2発光層)
100 2波長半導体レーザ装置(半導体レーザ装置)
200 3波長半導体レーザ装置(半導体レーザ装置)
290 赤外半導体レーザ素子(第1半導体レーザ素子)
H1 高さ(第1距離)
H2 高さ(第2距離)
T1 融点(第1融点、第2融点)
T2 加熱温度
T3 融点(第3融点)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極および第2電極が表面上に形成された基台の前記第1電極上に、第1融点を有する第1半田層を形成する工程と、
前記基台の第2電極上に、バリア層を介して第2融点を有する第2半田層を形成する工程と、
前記第1融点を有する前記第1半田層を融解させることにより、前記第1電極と前記第1半田層とを反応させて前記第2融点よりも高い第3融点を有する反応半田層を形成するとともに、前記反応半田層を介して前記基台に第1半導体レーザ素子を接合する工程と、
前記基台に前記第1半導体レーザ素子を接合する工程の後に、所定の加熱温度で加熱することにより前記第3融点よりも低い前記第2融点を有する前記第2半田層を融解させて、前記第2半田層を介して前記基台に第2半導体レーザ素子を接合する工程とを備える、半導体レーザ装置の製造方法。
【請求項2】
前記所定の加熱温度は、前記第2融点以上前記第3融点未満の温度である、請求項1に記載の半導体レーザ装置の製造方法。
【請求項3】
前記第1半田層の第1融点は、前記第2半田層の第2融点と同一または近傍の温度で、かつ、前記反応半田層の第3融点よりも低い温度である、請求項1または2に記載の半導体レーザ装置の製造方法。
【請求項4】
前記第1電極および前記第2電極は、共にAuを含み、
前記第1融点を有する前記第1半田層と、前記第2融点を有する前記第2半田層とは、共に、AuおよびSnを含むAu−Sn合金半田層からなり、
前記基台に前記第1半導体レーザ素子を接合する工程は、前記第1電極のAuと前記第1半田層のAu−Sn合金半田層とを反応させて前記第2融点よりも高い前記第3融点を有する前記反応半田層を形成する工程を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体レーザ装置の製造方法。
【請求項5】
前記第1半田層と前記第2半田層とは、共に、Au−Sn合金の共晶点における組成と同一または近傍の組成を有する同一の前記Au−Sn合金半田層からなる、請求項4に記載の半導体レーザ装置の製造方法。
【請求項6】
前記第1電極のAuと前記第1半田層のAu−Sn合金とを反応させて形成した前記反応半田層は、前記第1半田層のAu−Sn合金半田層よりもAuの含有率が大きいとともに、前記第1半田層の第1融点よりも高い前記第3融点を有するAu−Sn合金反応半田層からなる、請求項4または5に記載の半導体レーザ装置の製造方法。
【請求項7】
前記バリア層は、Pt、Ti、W、MoおよびHfのうちのいずれか1つ以上からなる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の半導体レーザ装置の製造方法。
【請求項8】
表面上に形成された第1電極および第2電極と、第1融点を有する第1半田層と前記第1電極とが反応することにより前記第1電極上に形成された反応半田層と、前記第2電極上に形成されたバリア層と、前記バリア層上に形成され、第2融点を有する第2半田層とを含む基台と、
前記反応半田層を介して前記基台に接合された第1半導体レーザ素子と、
前記第2半田層を介して前記基台に接合された第2半導体レーザ素子とを備え、
前記反応半田層の第3融点は、前記第2半田層の第2融点よりも高い、半導体レーザ装置。
【請求項9】
前記第1半田層の第1融点は、前記第2半田層の第2融点と同一または近傍の温度で、かつ、前記反応半田層の第3融点よりも低い温度である、請求項8に記載の半導体レーザ装置。
【請求項10】
前記第1半導体レーザ素子は、レーザ光が出射される第1発光層を含み、
前記第2半導体レーザ素子は、レーザ光が出射される第2発光層を含み、
前記第1半導体レーザ素子の第1発光層と前記第2半導体レーザ素子の第2発光層とが互いに同一または近傍の高さ位置に位置するように、前記バリア層の厚みが含まれない、前記第1半導体レーザ素子の第1発光層から前記基台までの高さ方向における第1距離と、前記バリア層の厚みが含まれる、前記第2半導体レーザ素子の第2発光層から前記基台までの高さ方向における第2距離とが、互いに同一または近傍の距離になるように調節されている、請求項8または9に記載の半導体レーザ装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1つの半導体レーザ装置と、
前記半導体レーザ装置の出射光を制御する光学系とを備える、光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−49440(P2012−49440A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−192185(P2010−192185)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(504464070)三洋オプテックデザイン株式会社 (315)
【Fターム(参考)】