説明

半導体基板の酸化された表面を活性化するための溶液及び方法

【課題】半導体基板の酸化された表面を活性化するための溶液及び方法の提供。
【解決手段】本発明は、その後の工程で無電解法により金属層を堆積させて被覆できるように、基板、特に半導体基板の酸化された表面を活性化するための溶液及び方法に関する。本発明によれば、この組成物は、A)1以上のパラジウム錯体からなる活性化剤と;B)1以上の有機シラン錯体からなる二官能性有機結合剤と;C)上記活性化剤及び上記結合剤を溶解させるための1以上の溶媒からなる溶媒系とを含有する。用途:電子デバイス、特に集積回路、とりわけ3次元集積回路などの製造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、電子デバイスの製造に関し、電子デバイスのなかでも特に集積回路、とりわけ3次元集積回路に関する。また、本発明は特に、その後の工程で無電解法により金属層を堆積させて被覆できるように、酸化された誘電体表面を含む基板を活性化するための溶液及び方法に関する。
【0002】
本発明は本質的に、マイクロエレクトロニクス分野における貫通ビア(シリコン貫通ビア、又は、ウェハ貫通ビア、又は、ウェハ貫通配線ともいう)の金属被覆(メタライゼーション)、特に銅を用いた金属被覆の分野において応用できる。貫通ビアは、電子チップ又はダイの3次元(3D)集積又は垂直集積の要となるものである。本発明はまた、絶縁層及び非連続的バリア層で被覆された貫通ビアを有する基板を処理してビアの全面にわたって連続的バリア層を形成させる必要がある他のエレクトロニクス分野にも応用できる。その例としては、プリント回路(プリント回路板又はプリント配線板ともいう)における配線の作製、及び、集積回路やマイクロシステム(微小電気機械システムともいう)における受動素子(インジケータ等)や電気機械素子の作製などが挙げられる。
【背景技術】
【0003】
最近の電子システムは、複数の集積回路又は部品で構成されているものが大半であり、各集積回路は1以上の機能を実現する。例えば、コンピュータは少なくとも1つのマイクロプロセッサと複数のメモリ回路を備える。各集積回路は、通常、それ自体が封入されたパッケージ内の電子チップに相当する。各集積回路は、例えばプリント回路板、別名PCBへとはんだづけ又はプラグ接続され、これにより集積回路間は確実に接続される。
【0004】
電子システムの機能密度を高めて欲しいという要望はとどまることがなく、その結果、チップを積層し、垂直配線により相互に接続することを特徴とする「3次元(3D)集積」又は「垂直集積」という手法が生まれた。そのようなことから、得られた積層体は、能動部品又はチップの層を複数有し、3D集積回路(すなわち3D−IC)となっている。
【0005】
例えば接合等により積層した後で、各チップはワイヤボンディングによって個別にパッケージの端子に接続することができる。チップは、通常、貫通ビアを用いて相互に接続される。
【0006】
3次元集積回路の製造に必要な基本技術には、特に、シリコンウェハの薄化、層間の位置合わせ、層の接合、並びに、各層における貫通ビアのエッチング及び金属被覆が含まれる。
【0007】
シリコンウェハの薄化は、貫通ビアを製造する前に行うこともできる(例えば特許文献1及び2)。
【0008】
あるいは、シリコンウェハの薄化の前にビアのエッチング及び金属被覆を行うこともできる(例えば特許文献1及び3)。この場合、非貫通ビア又は「ブラインド」ビアをシリコン内にエッチングしてから、所望の深さまで金属被覆した後、シリコンウェハを薄化して、貫通ビアを得る。
【0009】
銅は、導電性が良好で、エレクトロマイグレーションへの耐性が高い、すなわち、動作不良の主原因となり得る電流密度の影響による銅原子の移動が少ないため、特に貫通ビアを金属被覆するための材料として選ばれやすい。
【0010】
通常、3D集積回路の貫通ビアは、マイクロエレクトロニクス分野において集積回路の配線を作製するために採用される「ダマシン(damascene)」プロセスと同様に、以下の工程を順次行うことで製造される。
・シリコンウェハ内に、又は、シリコンウェハを貫通して、ビアをエッチングする;
・絶縁誘電体層を堆積させる;
・銅の移動又は拡散を防ぐためのバリア層又はライナーを堆積させる;
・銅下地層(copper seed layer:銅シード層)を堆積させる;
・銅を電着することによりビアを充填する;
・化学機械研磨により余分な銅を取り除く。
【0011】
絶縁誘電体層は、化学気相成長(CVD)法などの方法により堆積させた無機層(通常、例えば、二酸化ケイ素(SiO)、窒化ケイ素(SiN)、又は、酸化アルミニウムなどからなるもの)であってもよいし、液体媒体中への浸漬、又は、SOG(スピン・オン・ガラス)法により堆積させた有機層(例えば、パリレンC、N若しくはD、ポリイミド、ベンゾシクロブテン、又は、ポリベンゾオキサゾールなど)であってもよい。
【0012】
銅拡散バリア層は、通常、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、窒化タンタル(TaN)、窒化チタン(TiN)、チタン−タングステン合金(TiW)、炭窒化タングステン(WCN)、又は、これらの物質の組み合わせからなり、通常、気相法(PVD、CVD、又は、ALD)で堆積させる。
【0013】
上記バリア層は、特にニッケル系又はコバルト系合金などの他の金属から無電解法により形成させることもできる。
【0014】
このように、特許文献4には、パラジウム含有化合物で表面改質した有機シラン系単分子膜で被覆されたシリカ系絶縁中間層を含む半導体デバイスを製造する方法が記載されており、このようにして改質された膜を、バリアを形成するコバルト系又はニッケル系の層で無電解法により被覆し、このバリア上に銅層を電着により堆積させることができる。
【0015】
実質的に同様な方法が特許文献5に記載されており、半導体デバイスの各種層間の接着性を高めるために、ニッケル系化合物(NiB)で処理した後、コバルト系化合物(CoWP)で処理する2つの連続的な無電解処理を行うことが推奨されている。
【0016】
これらの先行特許出願に記載された方法では、無電解堆積のための活性化剤として機能するパラジウム化合物を中間絶縁面上に固定するために、異なる2つの溶液を使用し、異なる2つの処理を行うことが必要である。
【0017】
近年、特許文献6において、その後の工程で無電解法により金属層を堆積できるように、酸化された誘電体基板を単一工程で活性化するための溶液が提案されている。この溶液は、無電解プロセスを開始することが可能な金属由来の一群の塩から選択される金属塩と、その金属塩に配位することが可能なキレート基を含むシラン系化合物と、水溶性溶媒と、一定の量(通常1%〜10%)の水とを含有する。上記発明の主成分として記載の水は、上記活性化溶液中の上記金属塩を溶解させるために使用されている。実際には、シラン化合物を含有する溶液中に水が存在すると、使用する溶媒系により異なるが、約2〜45分間という比較的短時間でシランの重合が起こり、その後、得られたポリシラン化合物の大量の析出物が生じることが明らかとなった。この析出物は活性化溶液を不安定化させる。
【0018】
特許文献6には、金属塩、溶媒、シラン、及び、水含量について考えられる多くの組み合わせが記載されているが、活性化溶液の詳細な例は記載されていない。
【0019】
上記先行文献には好ましいものとして記載されているものの、上記組み合わせには、その後の工程で無電解法により金属層を堆積させることが不可能なものがあることが明らかであり、また、可能なものであっても、通常、約15〜30分後には不活性化するため、それらの工業的規模での使用が想定できないことは明らかである。
【0020】
銅下地層(銅シード層)は、通常、気相を用いた物理堆積法又は化学堆積法により作製される。これらの方法による欠点を考慮して鋭意検討を行った結果、銅下地層を電気化学的方法で作製するための新規組成物を得た。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】米国特許第7060624号明細書
【特許文献2】米国特許第7148565号明細書
【特許文献3】米国特許第7101792号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2005/0110149号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2008/0079154号明細書
【特許文献6】国際公開第2009/086230号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
以上を鑑みて、本発明は、その現段階で好ましい適用例において、絶縁誘電体層が酸化されており、且つ、該層を無電解法により金属層で被覆した後、銅下地層で被覆する必要がある3次元集積回路の貫通ビアの製造に関する。
【0023】
よって、本発明の目的は、その後の工程で無電解法により金属層を堆積させて被覆した後に銅下地層で被覆できるように、半導体基板等の基板の酸化された誘電体表面を活性化するための全成分を、工業的規模で使用可能な単一溶液の範囲内で、組み合わせた組成物を提供し、層間接着力に優れた多層構造体を提供する、という技術的課題を解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
このように、第一の態様によれば、本発明は、その後の工程で無電解法により金属層を堆積させて被覆できるように基板、特にケイ素含有基板の酸化された表面を活性化するための溶液であって、
A)
・式(I)のパラジウム錯体:
【0025】
【化1】

(式中、
・R1及びR2は同一で、−H、−CHCHNH、−CHCHOHであるか;又は
R1はHであり、且つ、R2は−CHCHNHであるか;又は
R1は−CHCHNHであり、且つ、R2は−CHCHNHCHCHNHであるか;又は
R1は−Hであり、且つ、R2は−CHCHNHCHCHNHCHCHNHであり、
・Xは、Cl;Br;I;HO,NO;CHSO;CFSO;CH−Ph−SO;CHCOOからなる群から選択される配位子である)、
・式IIa又はIIbのパラジウム錯体:
【0026】
【化2】

(式中、
・R1及びR2は上記と同義であり、
・Yは、
・2つのモノアニオン、好ましくは、Cl;PF;BF;NO;CHSO;CFSO;CHSO;CHCOOからなる群から選択される2つのモノアニオンか、又は
・ジアニオン、好ましくはSO2−
からなる2つの負電荷を含む対イオンである)
からなる群から選択される1以上のパラジウム錯体からなる活性化剤と;
B)
・一般式:
{X−(L)}4−n−Si(OR) (Va)
(式中、
・Xは、チオール、ピリジル、エポキシ(オキサシクロプロパニル)、グリシジル、1級アミン、塩素からなる群から選択され、且つ、上記式Iのパラジウム化合物と反応することができる官能基であり、
・Lは、CH、CHCH、CHCHCH、CHCHCHCH、CHCHNHCHCH、CHCHCHNHCHCH、CHCHCHNHCHCHNHCHCH、CHCHCHNHCHCHCHCHCHCH、Ph、Ph−CH、及び、CHCH−Ph−CH(Phはフェニル基を表す)からなる群から選択されるスペーサー基であり、
・Rは、CH−、CHCH−、CHCHCH−、及び、(CHCH−からなる群から選択される基であり、
・nは、1、2又は3の整数である);又は
・一般式:
(OR)Si−(L)−Si(OR) (Vb)
(式中、
・Lは、CHCHCHNHCHCHNHCHCHCH、及び、CHCHCH−S−S−CHCHCHからなる群から選択されるスペーサー基であり、
・Rは、CH−、CHCH−、CHCHCH−、及び、(CHCH−からなる群から選択される基である)
で表される1以上の有機シラン化合物からなる二官能性有機結合剤と;
C)上記活性化剤及び上記有機シラン溶剤を溶解させるのに適した1以上の溶媒からなる溶媒系と
を含有することを特徴とする溶液に関する。
【0027】
以下、式(IIa)及び(IIb)の化合物をまとめて「式(II)の化合物」と称することもある。
【0028】
本発明の具体的な一特徴によれば、上記溶液は、
水を含有しないか、又は、
水を0.5体積%未満、好ましくは0.2体積%未満、より好ましくは0.1体積%未満の濃度でしか含有しない。この水の限られた含量と、錯体型の活性化剤の形態という条件を組み合わせることによって、時間がたっても溶液の不活性化が起こらず、それ故、工業的規模での使用が可能となる。
【0029】
本発明の具体的な別の特徴によれば、上記溶液は、
・上記活性化剤を10−6M〜10−2M、好ましくは10−5M〜10−3M、より好ましくは5×10−5M〜5×10−4Mの濃度で、
・上記結合剤を10−5M〜10−1M、好ましくは10−4M〜10−2M、より好ましくは5×10−4M〜5×10−3Mの濃度で含有する。
【0030】
全く独創的であることには、本発明に係る溶液の活性化剤は、上述の式(I)及び(II)で表される1以上のパラジウム錯体からなる。
【0031】
式(I)の錯体は、下記反応スキームに従って、式(III)のパラジウム塩を式(IV)の含窒素二座配位子と反応させることにより調製することができる。
【0032】
【化3】

式中、X、R1及びR2は上で定義したものと同義である。
【0033】
より具体的には、式(III)のパラジウム塩を0.2M塩酸水溶液中に40℃〜80℃、好ましくは約60℃の温度で10〜20分間、好ましくは約20分間、溶解させて、式:HPdClの可溶性錯体を得る。
【0034】
反応終了時に、反応媒体に式(IV)の含窒素二座配位子を1当量添加し、40℃〜80℃、好ましくは約60℃の温度で1〜3時間、好ましくは約2時間保持し、式(I)の錯体を得る。配位子を添加することで反応媒体の色が変化する。
【0035】
次に、上記溶媒を留去し、固体残留物に対してエタノール等の溶媒中で再結晶処理を施す。
【0036】
出発物質であるパラジウム化合物は、塩化パラジウム(PdCl)であることが好ましい。
【0037】
あるいは、式(III)のパラジウム塩は、式[PdX2−のパラジウム塩、例えば、KPdCl、LiPdCl、NaPdCl、又は、(NHPdClなどに置き換えることもできる。
【0038】
本発明において使用するのに適した式(IV)のアミン誘導体の好ましい例として、特に以下の化合物が挙げられる。
・ジエチレントリアミン(R1が水素原子であり、R2が−CHCHNH基である場合の式(IV)の化合物);
・N,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン(R1及びR2が同一で、−CHCHOHである場合の式(IV)の化合物)。
【0039】
本発明において特に好ましいアミン化合物は、ジエチレントリアミンである。
【0040】
式(II)の錯体は、下記反応スキームに従って、式(I)の錯体の調製と同様にして調製することができる。
【0041】
【化4】

式中、X、R1及びR2は上で定義したものと同義である。
【0042】
より具体的には、式:HPdClの可溶性錯体は上で説明した方法と同じ方法により形成される。
【0043】
反応終了時に、反応媒体に式(IV)の含窒素二座配位子を2当量添加し、60℃〜80℃の温度で8〜15時間、好ましくは約12時間保持し、式(IIa)及び(IIb)の錯体を得る。
【0044】
あるいは、式(II)の錯体は、式(I)の錯体に、適当な溶媒に混ぜた含窒素二座配位子を1当量添加し、60℃〜80℃、好ましくは約70℃の温度で、8〜15時間、好ましくは約12時間、反応媒体を保持することによって、式(I)の錯体から調製することもできる。これら2つの場合において、反応媒体に銀塩を添加することで反応を促進することもできる。
【0045】
上記反応スキームには、反応によって2つのcis及びtrans錯体が得られることが示されているが、これらは、R1がHであり、R2が−CHCHNHである場合に限って形成される錯体である。当業者であれば、R1及びR2が共に−CHCHNH基以上の分子量を有する遊離基である場合に、統計学に基づいた複数の錯体の混合物が得られることを容易に理解するであろう。このような混合物は工業的規模で使用することができ、所望の結果を得る上で必ずしも精製する必要がないことは明らかである。
【0046】
本発明の溶液の必須成分の1つである2官能性有機結合剤は、上述した式Va又はVbで表される1以上の化合物からなる。この化合物は、基板の酸化された表面との化学結合に適したアルコキシシラン型の官能基を少なくとも1つ、及び、上述した式(I)又は(II)のパラジウム錯体との化学結合を形成させるのに適したアミン官能基を少なくとも1つ含む。
【0047】
上記化合物によって、酸化物から形成された表面を有する基板の連続層の層間接着力が良好となるが、上記表面が、その後の工程において、銅拡散バリアを形成する金属層、特にNiB金属層により被覆される場合に、特に良好となる。なお、この金属層は銅下地層により被覆される。
【0048】
式(Va)又は(Vb)の化合物は、例えば、以下の化合物からなる群から選択される。
(3−アミノプロピル)トリエトキシシラン、
(3−アミノプロピル)トリメトキシシラン、
m−アミノフェニルトリメトキシシラン、
p−アミノフェニルトリメトキシシラン、
p,m−アミノフェニルトリメトキシシラン、
4−アミノブチルトリエトキシシラン、
m,p−(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン、
N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、
N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、
2−(4−ピリジルエチル)トリエトキシシラン、
ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、
(3−トリメトキシシリルプロピル)ジエチレントリアミン、
N−(3−トリメトキシシリルエチル)エチレンジアミン、
N−(6−アミノヘキシル)アミノプロピルトリメトキシシラン、
(3−グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン、
(3−グリシドキシプロピル)トリエトキシシラン、
5,6−エポキシヘキシルトリエトキシシラン、
(3−メルカプトプロピル)トリメトキシシラン、
(3−メルカプトプロピル)トリエトキシシラン、
ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]ジスルフィド、
3−クロロプロピルトリメトキシシラン、
3−クロロプロピルトリエトキシシラン、
(p−クロロメチル)フェニルトリメトキシシラン、
m,p−((クロロメチル)フェニルエチル)トリメトキシシラン。
【0049】
本発明において使用するのに適した好ましい有機シラン化合物の例として、特に以下のものが挙げられる。
・式(Va)の化合物(式中、
XがNHである場合に、
LがCHCHCHであり、且つ、RがCHである((3−アミノプロピル)トリメトキシシラン又はAPTMSと呼ばれる化合物)か、又は
LがCHCHCHであり、且つ、RがCHCHである((3−アミノプロピル)トリエトキシシラン又はAPTESと呼ばれる化合物)か、又は
LがCHCHNHCHCHであり、且つ、RがCHである([3−(2−アミノエチル)アミノプロピル]トリメトキシシラン又はDATMS又はDAMOと呼ばれる化合物)か;又は
XがSHであり、LがCHCHCHであり、且つ、RがCH−CHである((3−メルカプトプロピル)トリメトキシシラン又はMPTESと呼ばれる化合物)か;又は
XがCNであり、LがCHCHであり、且つ、RがCH−CHである(2−(4−ピリジルエチル)トリエトキシシラン又はPETESと呼ばれる化合物)か;又は
XがCHCHOであり、LがCHCHCHであり、且つ、RがCHである((3−グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン又はEPTMSと呼ばれる化合物)か;又は
XがClであり、LがCHCHCHであり、且つ、RがCHである(3−クロロプロピルトリメトキシシラン又はCPTMSと呼ばれる化合物))。
【0050】
本発明において特に好ましい有機シラン化合物は、(3−アミノプロピル)トリメトキシシラン(APTMS)である。
【0051】
上記2官能性有機結合剤は、通常10−5M〜10−1M、好ましくは10−4M〜10−2M、より好ましくは5×10−4M〜5×10−3Mの量で活性化溶液中に存在するのが有利である。
【0052】
本発明の具体的な一特徴によれば、上記活性化溶液は、グリシジル官能基を少なくとも2つ含む化合物、及び、イソシアネート官能基少なくとも2つを含む化合物を含有しない。
【0053】
本発明に係る溶液用の溶媒系は、上述の活性化剤及び結合剤を溶解させるのに適したものでなければならない。
【0054】
上記溶媒系は、N−メチルピロリジノン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アルコール類、エチレングリコールエーテル類、例えばモノエチルジエチレングリコール、プロピレングリコールエーテル類、ジオキサン、及び、トルエンからなる群から選択される1以上の溶媒からなるものであってもよい。
【0055】
通常、溶媒系は、パラジウム錯体を溶解させるのに適した溶媒とエチレングリコールエーテルやプロピレングリコールエーテルなどの溶媒を組み合わせた混合物からなることが有利である。
【0056】
本発明において、とりわけ毒性が非常に低いことから、特に好ましい溶媒系は、N−メチルピロリジノン(NMP)とジエチレングリコールモノエチルエーテルの混合物からなる。これらの化合物は、1:200〜1:5、好ましくは概ね1:10の体積比で使用してもよい。
【0057】
本発明において特に好ましい活性化溶液は、
(i)5×10−5M〜5×10−4Mの濃度の、下記錯体:
・式(I)の錯体(式中、
・R1はHであり、R2はCHCHNHであり、且つ、XはClである((ジエチレントリアミン)(ジクロロ)パラデート(II)と呼ばれる錯体)か;又は
・R1及びR2は同一で、CHCHOHであり、且つ、XはClである((N,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン)(ジクロロ)パラデート(II)と呼ばれる錯体))、
・式(IIa)の錯体(式中、
・R1はHであり、R2はCHCHNHであり、且つ、Yは2つのClである(trans−ビス(ジエチレントリアミン)パラデート(II)と呼ばれる錯体))、
・式(IIb)の錯体(式中、
・R1はHであり、R2はCHCHNHであり、且つ、Yは2つのClである(cis−ビス(ジエチレントリアミン)パラデート(II)と呼ばれる錯体))
からなる群から選択される1以上のパラジウム錯体からなる活性化剤と;
(ii)10−3M〜10−2Mの濃度の式(Va)の化合物(式中、
XがNHである場合に、
LがCHCHCHであり、且つ、RがCHである(APTMS)か、又は
LがCHCHCHであり、且つ、RがCHCHである(APTES)か、又は
LがCHCHNHCHCHであり、且つ、RがCHである(DATMS又はDAMO)か;又は
XがSHであり、LがCHCHCHであり、且つ、RがCHCHである(MPTES)か;又は
XがCNであり、LがCHCHであり、且つ、RがCHCHである(PETES)か;又は
XがCHCHOであり、LがCHCHCHであり、且つ、RがCHである(EPTMS)か;又は
XがClであり、LがCHCHCHであり、且つ、RがCHである(CPTMS))
からなる群から選択される1以上の有機シラン化合物からなる結合剤とを含有する。
【0058】
第二の態様によれば、本発明は、その後の工程で無電解法により金属層を堆積させて被覆できるように基板、特にケイ素含有基板の表面を活性化するための上記溶液の使用であって、上記表面は1以上の酸化物のみからなることを特徴とする使用に関する。
【0059】
本発明を行うことで表面が活性化される基板は、特にケイ素含有半導体基板、特に電子デバイス製造を目的としたもの、とりわけ、3次元集積回路用の貫通ビアの製造を目的としたものであってもよい。
【0060】
活性化される基板表面は、酸化物、有利には、電子技術に適合した酸化物からなる。上記表面は、シリカ(SiO)からなることが好ましいが、誘電率の低い任意の酸化物(例えば、SiOC、SiOCH、SiON、SiOCN、SiOCHN等)からなるものでもよい。
【0061】
第三の態様によれば、本発明は、その後の工程で無電解法により金属層を堆積させて被覆できるように基板の酸化された表面を活性化するための方法であって、
上記表面は1以上の酸化物、特に酸化ケイ素からなるものであり、
上記基板表面を上記溶液と接触させることを特徴とする方法に関する。
【0062】
この活性化方法は、好ましくは50〜90℃の温度で1〜30分間、より好ましくは65〜70℃の温度で5〜15分間行う。
【0063】
酸化物層で被覆された基板を活性化溶液中に浸漬することによって、基板表面を本発明に係る活性化溶液と接触させることが有利である。
【0064】
上記活性化溶液と接触させる前に、基板の酸化された表面に対して、その表面上に水酸基を存在させ易くするための表面処理を施すことが有利である。この処理は、通常、以下の工程を含む。
a)上記表面をピラニア(Piranha)混合液(H/HSO=20/50(v/v))等の酸性溶液によって30〜90分間、例えば約60分間、60〜90℃、例えば約70℃の温度で処理する工程、
b)このようにして得られた表面を水、好ましくは脱イオン水によって30〜90分間、例えば約60分間、60〜90℃、例えば約70℃の温度で処理する工程、
c)このように処理した表面を窒素気流下などで乾燥させる工程。
【0065】
別の方法として、この基材の酸化された表面の前処理は、オゾン気流下、波長254nmで10〜30分間、好ましくは15分間行う28000μW/cmのUV処理であってもよい。
【0066】
また、第四の態様によれば、本発明は、
a)基板、特にケイ素含有基板などの、1以上の酸化物、特に酸化ケイ素からなる酸化された表面を上記溶液と、好ましくは50〜90℃の温度で1〜30分間、より好ましくは65〜70℃の温度で5〜15分間、接触させることによって上記酸化された表面を活性化する工程;及び
b)その活性化した表面を無電解法により金属層、特にニッケル含有金属層を堆積させて被覆する工程
を含むことを特徴とする、電子デバイスを製造するための方法に関する。
【0067】
このような方法は、導電性又は半導電性の基板の表面が、電気絶縁皮膜を形成する酸化物、特にシリコンでできた第一内層、銅拡散バリアを形成する金属中間層、及び、銅下地外層で順次被覆される3次元集積回路用貫通ビアの製造に特に有用である。
【0068】
本発明のこの第四の態様に係る方法では、活性化された基板表面に無電解法により堆積可能な金属であればどのようなものを使用してもよい。
【0069】
本発明の好ましい用途では、貴金属及び遷移金属、及び、それらの合金から選択される金属を使用することが好ましい。これらの金属は、リンやホウ素などの元素、又は、それらの化合物の混合物と合金化してもよい。
【0070】
そのような物質、特にニッケル系物質又はコバルト系物質は、銅の移動又は拡散を防ぐために特に有利なバリア層を構成する。
【0071】
本発明においては、ホウ素と合金化したニッケルを使用した場合に優れた結果が得られた。
【0072】
無電解法による金属層の堆積は、当業者に周知の方法である。
【0073】
本発明においては、
・少なくとも1つの金属塩を好ましくは10−3M〜1Mの濃度で含有し、
・少なくとも1つの還元剤を好ましくは10−4M〜1Mの量で含有し、
・場合によっては、少なくとも1つの安定剤を好ましくは10−3M〜1Mの量で含有し、且つ、
・pHを6〜11の値、好ましくは8〜10の値に調整するための薬剤を含有する
溶液、好ましくは水溶液と、活性化した基板表面を、少なくとも30nmの厚み、好ましくは30nm〜100μmの厚み、より好ましくは70nm〜200nmの厚みの金属皮膜を形成できる条件下で、接触させることによって、上記活性化した基板表面の被覆を行う。
【0074】
上記金属の金属塩は、上記金属の酢酸塩、アセチルアセトネート、ヘキサフルオロリン酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、硫酸塩又はテトラフルオロホウ酸塩からなる群から選択される水溶性塩であることが有利である。
【0075】
本発明において、好ましい金属塩は硫酸ニッケル六水和物である。
【0076】
上記還元剤は、次亜リン酸及びその塩、ボラン誘導体、グルコース、ホルムアルデヒド、及び、ヒドラジンからなる群から選択することが有利である。
【0077】
本発明において、好ましい還元剤は、ボラン誘導体、特にジメチルアミノボラン(DMAB)等である。
【0078】
上記安定剤は、エチレンジアミン、クエン酸、酢酸、コハク酸、マロン酸、アミノ酢酸、リンゴ酸、又は、これらの化合物のアルカリ金属塩からなる群から選択することができる。
【0079】
本発明において、好ましい安定剤はクエン酸である。
【0080】
通常、上記金属層は、層の所望の厚みに応じて、40〜90℃、好ましくは70℃の温度で、30秒〜20分間、上述の溶液中に浸漬することによって作製することができる。
【0081】
有利な一実施形態によれば、上記層に対して、不活性又は還元的雰囲気下、200〜400℃、好ましくは250℃の温度で、1分〜30分間、好ましくは約10分間、アニールを行ってもよい。
【0082】
本発明の好ましい用途において、上述の方法には、銅下地層をさらに形成させるための工程が付け加えられる。
【0083】
上記銅下地層(銅シード層)は、
a)・少なくとも1つの溶媒と、
・14〜120mM、好ましくは16〜64mMの濃度の銅イオンと、
・エチレンジアミンと
を含有し、
・エチレンジアミン及び銅のモル比が1.80〜2.03であり、
・上記組成物のpHが6.6〜7.5である
溶液と、基板の金属表面を接触させる工程;及び
b)上記銅下地層を形成させるのに充分な時間、上記表面を分極させる工程
を含む湿式電着法により作製することが有利である。
【0084】
好ましい一実施形態によれば、上記溶液には、銅イオンが16〜64mMの濃度であり、銅イオン及びエチレンジアミンのモル比が好ましくは1.96〜2.00であるものが含まれる。
【0085】
溶媒の種類は本質的に限定されない(但し、溶液の活性種を充分に溶解させ、電着を妨げないものとする)が、水であることが好ましい。
【0086】
通常、銅イオン源は、銅塩、特に、硫酸銅、塩化銅、硝酸銅、酢酸銅などであり、好ましくは硫酸銅であり、より好ましくは硫酸銅五水和物である。
【0087】
好ましい一実施形態によれば、被覆対象の表面と上記溶液との接触は、電着工程前に電気分極させることなく、すなわち、対電極、又は、上記表面の参照電極に電流又は電位を印加することなく行う。
【0088】
皮膜形成後に上記銅下地層で被覆された基板を分離するための工程は本質的に限定されない。
【0089】
この方法では、電着により皮膜を形成させるための工程を、所望の皮膜を形成させるのに充分な時間行う。この時間は当業者であれば容易に設定できる。これは、皮膜の成長度合いが、堆積時間内に回路に流れた電流の時間積分に等しい電荷の関数であるためである(ファラデーの法則)。
【0090】
皮膜形成工程中、定電流(galvanostatic)モード(印加電流固定)、又は、定電圧(potential static)モード((場合によっては参照電極に対して)印加電位固定)、又は、パルスモード(パルス電流又はパルス電圧)のいずれかで被覆対象の表面を分極させてもよい。
【0091】
通常は、パルスモードで、好ましくは矩形波電流を印加するようにして、分極させれば、特に良好な皮膜が得られることが明らかとなった。
【0092】
通常、単位面積当たりの最大電流が0.6mA/cm〜10mA/cm、特に1mA/cm〜5mA/cmの範囲、及び、単位面積当たりの最小電流が0mA/cm〜5mA/cm、好ましくは0mA/cmの範囲に相当する矩形波電流を印加して上記工程を行うことができる。
【0093】
より具体的には、最大電流での分極時間は、2×10−3〜1.6秒、好ましくは0.1〜0.8秒、例えば約0.36秒であってもよく、一方、最小電流での分極時間は、2×10−3〜1.6秒、好ましくは0.1〜0.8秒、例えば約0.24秒であってもよい。
【0094】
この工程中に行うサイクル数は、皮膜の所望の厚みによって決まる。
【0095】
上述した好適な条件下において堆積速度が約0.3nm/秒となることが明らかとなったことから、当業者であれば、通常、実行サイクル数を容易に設定できる。
【0096】
この方法により、貫通ビア型構造の、銅拡散バリアを形成する金属表面上に50nm〜1μm、好ましくは200〜800nm、例えば約300nm等の厚みを有する銅下地層を作製することができた。
【0097】
以下の添付図面を関連づけて示された下記実施例の説明を参照することにより本発明の理解がより深まるであろう。但し、下記実施例は本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】銅下地層を形成させるために用いられる定電流パルスモードのプロトコルを概略的に表す。
【図2】実施例1で得られたSi−SiO−NiB−Cu積層体の走査電子顕微鏡法を示す。
【図3】実施例4で得られたSi−SiO−NiB−Cu積層体の走査電子顕微鏡法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0099】
下記実施例は実験室規模で行ったものである。特に断りのない限り、下記実施例は、周囲空気中、標準的な温度及び圧力条件(約25℃、約1atm)で調製し、使用試薬は、市販されているものを直接、それ以上精製せずに用いた。
【0100】
これらの実施例において、以下の略号を用いた。
・g/l:グラム/リットル
・m/m:質量/質量
・min:分
【実施例】
【0101】
実施例1:無電解堆積のための、パラジウム錯体とアミノシラン系化合物を含有する本発明に係る溶液による二酸化ケイ素(SiO)層で被覆された基板の活性化
【0102】
a)表面の浄化:
この実施例で使用した基板は、辺長4cm(4×4cm)、厚み750μmのシリコンクーポンを約300nmの厚みの二酸化ケイ素(SiO)層で被覆したものであった。試験体を、濃硫酸(HSO)50mlと過酸化水素(H)20mlを含む溶液中に70℃で30分間、続いて脱イオン水中に70℃で30分間浸漬して、二酸化ケイ素の表面上に水酸基を存在させ易くした。続いて、脱イオン水で試験体を充分にすすいだ後、工程b)に従って活性化した。
【0103】
b)基板表面の活性化
b1)パラジウム錯体の調製
250ml容一口フラスコ内に塩化パラジウム(PdCl)802mg(4.52mmol)、脱イオン水50ml、及び、濃塩酸(37%、d=1.17、すなわち酸濃度0.2M)1mlを投入した。混合物を60℃で20分間加熱し、塩化パラジウムを溶解させて、HPdClの赤茶色溶液を得た。
【0104】
このようにして得た溶液にジエチレントリアミン0.500ml(4.58mmol)を添加した。この添加により、溶液の色が赤茶色から橙黄色に変化した。
【0105】
反応媒体をさらに2時間、60℃に保持した。
【0106】
ロータリーエバポレータで溶媒を留去した。固体残留物を熱エタノールから再結晶し、1.268gの、式:C13PdClを有するパラジウム錯体を黄色がかった針状結晶体として得た(収率=88%)。H NMR(DO):2.62(ddd,2H);2.82−2.94(m,4H);3.02(td,2H).
【0107】
b2)本発明に係る活性化溶液の調製:
工程b1)で得た錯体8mgをN−メチルピロリジノン(NMP)10ml中に溶解させた。
【0108】
ジエチレングリコールモノエチルエーテル50mlを清浄な、乾燥したビーカー内に投入し、さらに、上記パラジウム錯体を含有するNMP溶液10mlとアミノプロピルトリメトキシシラン(APTMS、純度95%)0.6mlを加えた。混合物を撹拌した。
【0109】
b3)基板表面の処理:
上記工程b2)で得た混合物を約65℃に加熱し、上記工程a)で調製した基板をその中に約10分間浸漬した。次に、このように処理した基板を充分に脱イオン水ですすいで窒素気流下で乾燥させた。3つの試験体に対して上記操作を行い、その時点をt=0とした。溶液を周囲温度に戻して、デシケータ内に保管した。t=6.5時間において、工程a)に従って調製した3つの試験体を、再び65℃に加熱した同溶液中に浸漬した。デシケータ内に保管後、t=15時間の時点で操作を繰り返した。処理した全試験体を充分に脱イオン水ですすいだ後、以下の処理を施した。
【0110】
このように、以下の記載において「基板」という用語は、このように処理した各基板を意味する。
【0111】
c)無電解法によるNiB金属層の堆積:
c1)無電解溶液の用時調製:
1l容器内に硫酸ニッケル六水和物31.11g(0.118mol)、クエン酸44.67g(0.232mol)、及び、N−メチルエタノールアミン58g(0.772mol)を順次投入した。塩基で最終pHを9に調整し、蒸留水で全容積を1lに調整した。チオジグリコール酸0.111g(0.739mmol)で溶液を安定化させた。
【0112】
上記溶液の9体積部に対して、次の工程を行う直前に、28g/lのジメチルアミノボラン(DMAB;0.475mol)を含有する還元溶液1体積部を添加した。
【0113】
c2)拡散バリアを形成させるためのNiB金属層の形成:
上述の通り調製した無電解溶液中に浸漬することによって、工程b)で得た「活性化した」基板表面にNiB金属層を作製し、所望の厚みに応じて30秒〜20分間、70℃に加熱した。この実施例では、浸漬時間を5分とすることで、約70nmの厚みの金属層を得た。
【0114】
このように得た金属層を還元的雰囲気(N+H混合物(5%H))下、250℃で10分間アニールした。
【0115】
d)銅下地層の形成:
溶液:
工程c)で被覆された基板上に、2.1ml/l(32mM)のエチレンジアミンと4g/l(16mM)のCuSO(HO)を含有する電着水溶液を使用して銅下地層を堆積させた。
【0116】
プロトコル:
この実施例で用いた電着方法は銅成長工程を含み、この工程中、工程c)で得た処理基板に対して定電流パルスモードでカソード分極を行い、同時に処理基板を40回転/分の速度で回転させた。
【0117】
図1は、用いた定電流パルスモードのプロトコルを詳しく説明するものであり、その合計時間Pが0.6秒;分極時間Tonが0.36秒、この間に印加された単位面積当たりの電流が2.77mA/cm;分極なしの休止時間Toffが0.24秒間であった。理解されるであろうが、この工程の継続時間は銅下地層の所望の厚みによって決まる。皮膜の成長度合いは回路に流れた電荷の関数であるため、上記継続時間は当業者であれば容易に設定できる。回路に流れた電荷1クーロン当たり約1.5nmの堆積速度となる上記条件下では、電着工程を約15分間行うことによって、約300nmの厚みの皮膜を得ることができた。
【0118】
回転速度を0にして約2秒以内に電着溶液からこのように銅で被覆された基板を取り出した後、脱イオン水ですすいで窒素気流下で乾燥させた。
【0119】
接着力測定:
MTS synergy100引張試験機(Cofrac)を用いて接着力の値をJ/m単位で測定した。引張試験機は、クロスビーム(棒)に対して垂直に動く力センサーに連結している。測定範囲は1〜20J/mである。
【0120】
結果:
この実施例において調製された全試験体について、上記プロトコルで測定された接着力は20J/mよりも高く(表1、エントリー1、2及び3)、引張試験後の各層の層間剥離は全く見られなかった。従って、本発明に係る活性化溶液は有効であり、その有効性は、時間がたっても、少なくとも工業的使用に適合した時間内は、低下することがない。15時間たっても活性化溶液中に析出物は見られなかった。
【0121】
実施例2:無電解堆積のための、パラジウム錯体とアミノシラン化合物を含有する本発明に係る溶液によるAl型酸化アルミニウムで被覆された基板の活性化
【0122】
a)表面の浄化:
この実施例で使用した基板は、辺長4cm(4×4cm)、厚み750μmのアルミニウムクーポンを5nmの厚みのAl型酸化アルミニウム層で被覆したものであった。実施例1と同じ条件で浄化を行った。
【0123】
b)基板表面の活性化:
活性化溶液は実施例1で使用したものと同一であった。
【0124】
c)無電解法によるNiB金属層の堆積:
実施例1と同様にしてNiB層を堆積させた。
【0125】
d)銅下地層の形成:
実施例1と同様にして銅下地層を堆積させた。
【0126】
結果:
この実施例において測定された接着力は20J/mよりも高く(表1、エントリー4)、引張試験後の各層の層間剥離は全く見られなかった。活性化溶液中に析出物は見られなかった。
【0127】
比較例3:無電解堆積のための、パラジウム化合物とアミノシラン化合物と水/アセトニトリル混合物を含有する国際公開第2009/086230号に記載の溶液による二酸化ケイ素(SiO)層で被覆された基板の活性化
【0128】
比較目的で、国際公開第2009/086230号の記載と同様に水存在下で市販のパラジウム塩から得た活性化溶液を使用して、実施例1を繰り返した。
【0129】
a)表面の浄化:
実施例1と同じ条件で表面を浄化した。
【0130】
b)基板表面の活性化:
水2.5ml(4% m/m)、アセトニトリル60ml(95% m/m)、及び、アミノプロピルトリメトキシシラン0.6ml(APTMS、純度95%、1% m/m)の中にNaPdCl 4mg(0.014mmol、すなわち0.065g/l)を溶解させて活性化溶液を調製した。SiO試験体をこの活性化溶液中に65℃で10分間浸漬した。数分後、活性化溶液中に大量の白色析出物が見られたため、水存在下でシラン化合物の重合が起こったことが示された。
【0131】
c)無電解法によるNiB金属層の堆積:
上記工程b)で得られた試験体を、実施例1の工程c)に記載のプロトコルに従って処理した。この工程後に金属の堆積は見られなかった(表1、エントリー5)。
【0132】
比較例4:無電解堆積のための、パラジウム化合物とアミノシラン化合物と水/DMSO混合物を含有する国際公開第2009/086230号に記載の溶液による二酸化ケイ素(SiO)層で被覆された基板の活性化
【0133】
比較目的で、国際公開第2009/086230号の記載と同様に、アセトニトリルをジメチルスルホキシド(DMSO)に変え、水存在下で市販のパラジウム塩から得た活性化溶液を使用して、比較例3を繰り返した。
【0134】
a)表面の浄化:
実施例1と同じ条件で浄化を行った。
【0135】
b)基板表面の活性化:
水2.5ml(4% m/m)、DMSO60ml(95% m/m)、及び、アミノプロピルトリメトキシシラン0.6ml(APTMS、純度95%、1% m/m)の中にNaPdCl 4mg(0.014mmol、すなわち0.065g/l)を溶解させて活性化溶液を調製した。試験体をこの活性化溶液(t=0)中に65℃で10分間浸漬し、その後、脱イオン水で充分にすすいで窒素気流下で乾燥させた。活性化溶液をデシケータ内に保管した。1時間後(t=1時間)、活性化溶液を再び65℃に加熱し、新しいSiO試験体をその中に10分間浸漬した後、脱イオン水で充分にすすいだ。2時間後(t=2時間)に同じプロトコルを繰り返した。1時間後、活性化溶液中に大量の白色析出物が浮遊しているのが見られたため、水存在下でシラン化合物の重合が起こったことが示された。
【0136】
c)無電解法によるNiB金属層の堆積:
上記工程b)で得られた試験体を、実施例1の工程c)に記載のプロトコルに従って処理した。この実施例では、t=0及びt=1時間で調製した各試験体について、期待通り金属皮膜の形成が見られた。
【0137】
d)銅下地層の形成:
実施例1と同様にして銅下地層を堆積させた。
【0138】
結果:
接着力の結果から、t=0の時点の場合、接着力は20J/mよりも高いものの(表1、エントリー6)、t=1時間で調製した試験体では、12.7J/mまで低下する(表1、エントリー7)ことが示された。また、t=1時間での試験体の浸漬の際、無電解溶液中にパラジウム塩の析出も見られた。この塩の析出は無電解溶液を不安定化させ、大量に沈殿が生じた。このようなことから、パラジウムと基板表面の接着力の低下は、活性化溶液の不安定化(ポリシランの白色析出物の形成)によるものであることが確認された。2時間後には金属の堆積は見られなかった(表1、エントリー8)。従って、活性化溶液の活性は1時間後の方が高かった。
【0139】
比較例5:無電解堆積のための、銅化合物とアミノシラン化合物と水/DMSO混合物を含有する国際公開第2009/086230号に記載の溶液による二酸化ケイ素(SiO)層で被覆された基板の活性化
【0140】
比較目的で、国際公開第2009/086230号の記載と同様に、パラジウム化合物を銅化合物に変えて比較例4を繰り返した。
【0141】
a)表面の浄化:
実施例1と同じ条件で浄化を行った。
【0142】
b)基板表面の活性化:
水2.5ml(4% m/m)、DMSO60ml(95% m/m)、及び、アミノプロピルトリメトキシシラン0.6ml(APTMS、純度95%、1% m/m)の中にCuSO・5HO5.9mg(0.094g/l)を溶解させて活性化溶液を調製した。試験体をこの活性化溶液(t=0)中に65℃で10分間浸漬し、その後、脱イオン水で充分にすすいで窒素気流下で乾燥させた。数秒後、活性化溶液中に大量の青色析出物が見られたため、水存在下でシラン化合物の重合が起こったことが示された。
【0143】
c)無電解法によるNiB金属層の堆積:
実施例1と同様にしてNiB層を堆積させた。この実施例では、金属皮膜の形成は見られなかった(表1、エントリー9)。
【0144】
【表1】

【0145】
上記表1に示された結果から、本発明に係る溶液が、その後の工程で無電解法により金属層を堆積させて被覆した後に銅下地層で被覆できるように、半導体基板等の基板の酸化された誘電体表面を活性化するよう機能することが明らかであり、その結果、層間接着力に優れた多層構造体が得られることが分かった。
【0146】
また、上記結果から、先行技術の公知組成物とは異なり、時間がたっても、少なくとも15時間の間は、溶液の効果が保たれ、工業的規模での使用に適合することも明らかとなった。
【0147】
実施例6:無電解堆積のための、パラジウム錯体とチオシラン化合物を含有する本発明に係る溶液による二酸化ケイ素(SiO)層で被覆された基板の活性化
【0148】
a)表面の浄化:
実施例1と同じ条件で浄化を行った。
【0149】
b)基板表面の活性化:
b1)活性化溶液の調製
実施例1の工程b1)で得た錯体8mgをN−メチルピロリジノン(NMP)10ml中に溶解させた。
【0150】
清浄な、乾燥したビーカー内に、ジエチレングリコールモノエチルエーテル50ml、上記パラジウム錯体を含有するNMP溶液10ml、及び、(3−メルカプトプロピル)トリメトキシシラン(3MPTMS、純度95%)0.6mlを投入した。混合物を撹拌した。
【0151】
b2)基板表面の処理
実施例1と同様にして基板表面の処理を行った。
【0152】
c)無電解法によるNiB金属層の堆積:
実施例1と同様にしてNiB層を堆積させた。
【0153】
d)銅下地層の形成:
実施例1と同様にして銅下地層を堆積させた。
【0154】
結果:
この実施例において測定された接着力は20J/mよりも高く、引張試験後の各層の層間剥離は全く見られなかった。活性化溶液中に析出物は見られなかった。
【0155】
実施例7:無電解堆積のための、パラジウム錯体とピリジルシラン化合物を含有する本発明に係る溶液による二酸化ケイ素(SiO)層で被覆された基板の活性化
【0156】
a)表面の浄化:
実施例1と同じ条件で浄化を行った。
【0157】
b)基板表面の活性化:
b1)活性化溶液の調製
実施例1の工程b1)で得た錯体8mgをN−メチルピロリジノン(NMP)10ml中に溶解させた。
【0158】
清浄な、乾燥したビーカー内に、ジエチレングリコールモノエチルエーテル50ml、上記パラジウム錯体を含有するNMP溶液10ml、及び、2−(4−ピリジルエチル)トリエトキシシラン(PETES、純度95%)0.6mlを投入した。混合物を撹拌した。
【0159】
b2)基板表面の処理
実施例1と同様にして基板表面の処理を行った。
【0160】
c)無電解法によるNiB金属層の堆積:
実施例1と同様にしてNiB層を堆積させた。
【0161】
d)銅下地層の形成:
実施例1と同様にして銅下地層を堆積させた。
【0162】
結果:
この実施例において測定された接着力は20J/mよりも高く、引張試験後の各層の層間剥離は全く見られなかった。活性化溶液中に析出物は見られなかった。
【0163】
実施例8:無電解堆積のための、パラジウム錯体とグリシジルシラン化合物を含有する本発明に係る溶液による二酸化ケイ素(SiO)層で被覆された基板の活性化
【0164】
a)表面の浄化:
実施例1と同じ条件で浄化を行った。
【0165】
b)基板表面の活性化:
b1)活性化溶液の調製
実施例1の工程b1)で得た錯体8mgをN−メチルピロリジノン(NMP)10ml中に溶解させた。
【0166】
清浄な、乾燥したビーカー内に、ジエチレングリコールモノエチルエーテル50ml、上記パラジウム錯体を含有するNMP溶液10ml、及び、(3−グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン(GPTMS、純度95%)0.6mlを投入した。混合物を撹拌した。
【0167】
b2)基板表面の処理
実施例1と同様にして基板表面の処理を行った。
【0168】
c)無電解法によるNiB金属層の堆積:
実施例1と同様にしてNiB層を堆積させた。
【0169】
d)銅下地層の形成:
実施例1と同様にして銅下地層を堆積させた。
【0170】
結果:
この実施例において測定された接着力は20J/mよりも高く、引張試験後の各層の層間剥離は全く見られなかった。活性化溶液中に析出物は見られなかった。
【0171】
実施例9:無電解堆積のための、パラジウム錯体とアミノシラン化合物を含有する本発明に係る溶液による、直径5μm、深さ50μmの貫通ビアを有する二酸化ケイ素(SiO)層で被覆された基板の活性化
【0172】
a)表面の浄化:
この実施例で使用した基板は、辺長4cm(4×4cm)、厚み750μmのシリコンクーポンを約300nmの厚みの二酸化ケイ素(SiO)層で被覆したものであり、直径5μm、深さ50μmの貫通ビアを有していた。試験体を、濃硫酸(HSO)50mlと過酸化水素(H)20mlを含む溶液中に70℃で30分間、続いて脱イオン水中に70℃で30分間浸漬して、二酸化ケイ素の表面上に水酸基を存在させ易くした。続いて、脱イオン水で充分に試験体をすすいだ後、工程b)に従って活性化した。
【0173】
b)基板表面の活性化:
活性化溶液は実施例1で使用したものと同一であった。
【0174】
c)無電解法によるNiB金属層の堆積:
実施例1と同様にしてNiB層を堆積させた。ビア内への溶液の湿潤性が確実に良好となるように、無電解堆積中、短時間(3秒)、超音波を当てた。
【0175】
d)銅下地層の形成:
実施例1と同様にして銅下地層を堆積させた。
【0176】
結果:
この実施例において測定された接着力は20J/mよりも高く、引張試験後の各層の層間剥離は全く見られなかった。活性化溶液中に析出物は見られなかった。ビアの被覆について、ビア上への堆積の均一性が全てのビアで優れていることが明らかとなった。ビア底部で測定された厚みは、表面で測定された厚みの67%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その後の工程で無電解法により金属層を堆積させて被覆できるように基板、特にケイ素含有基板の酸化された表面を活性化するための溶液であって、
A)
・式(I)のパラジウム錯体:
【化1】

(式中、
・R1及びR2は同一で、−H、−CHCHNH、−CHCHOHであるか;又は
R1はHであり、且つ、R2は−CHCHNHであるか;又は
R1は−CHCHNHであり、且つ、R2は−CHCHNHCHCHNHであるか;又は
R1は−Hであり、且つ、R2は−CHCHNHCHCHNHCHCHNHであり、
・Xは、Cl;Br;I;HO,NO;CHSO;CFSO;CH−Ph−SO;CHCOOからなる群から選択される配位子である)、
・式IIa又はIIbのパラジウム錯体:
【化2】

(式中、
・R1及びR2は前記と同義であり、
・Yは、
・2つのモノアニオン、好ましくは、Cl;PF;BF;NO;CHSO;CFSO;CHSO;CHCOOからなる群から選択される2つのモノアニオンか、又は
・ジアニオン、好ましくはSO2−
からなる2つの負電荷を含む対イオンである)
からなる群から選択される1以上のパラジウム錯体からなる活性化剤と;
B)
・一般式:
{X−(L)}4−n−Si(OR) (Va)
(式中、
・Xは、チオール、ピリジル、エポキシ(オキサシクロプロパニル)、グリシジル、1級アミン、塩素からなる群から選択され、且つ、前記式Iのパラジウム化合物と反応することができる官能基であり、
・Lは、CH、CHCH、CHCHCH、CHCHCHCH、CHCHNHCHCH、CHCHCHNHCHCH、CHCHCHNHCHCHNHCHCH、CHCHCHNHCHCHCHCHCHCH、Ph、Ph−CH、及び、CHCH−Ph−CH(Phはフェニル基を表す)からなる群から選択されるスペーサー基であり、
・Rは、CH−、CHCH−、CHCHCH−、及び、(CHCH−からなる群から選択される基であり、
・nは、1、2又は3の整数である);又は
・一般式:
(OR)Si−(L)−Si(OR) (Vb)
(式中、
・Lは、CHCHCHNHCHCHNHCHCHCH、及び、CHCHCH−S−S−CHCHCHからなる群から選択されるスペーサー基であり、
・Rは、CH−、CHCH−、CHCHCH−、及び、(CHCH−からなる群から選択される基である)
で表される1以上の有機シラン化合物からなる二官能性有機結合剤と;
C)前記活性化剤及び前記結合剤を溶解させるのに適した1以上の溶媒からなる溶媒系と
を含有することを特徴とする溶液。
【請求項2】
水を含有しないか、又は、
水を0.5体積%未満、好ましくは0.2体積%未満、より好ましくは0.1体積%未満の濃度でしか含有しない
ことを特徴とする、請求項1に記載の溶液。
【請求項3】
・前記活性化剤を10−6M〜10−2M、好ましくは10−5M〜10−3M、より好ましくは5×10−5M〜5×10−4Mの濃度で、
・前記結合剤を10−5M〜10−1M、好ましくは10−4M〜10−2M、より好ましくは5×10−4M〜5×10−3Mの濃度で
含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の溶液。
【請求項4】
前記二官能性有機結合剤は、前記式(Va)(式中、
XがNHである場合に、
LがCHCHCHであり、且つ、RがCHである((3−アミノプロピル)トリメトキシシラン又はAPTMSと呼ばれる化合物)か、又は
LがCHCHCHであり、且つ、RがCHCHである((3−アミノプロピル)トリエトキシシラン又はAPTESと呼ばれる化合物)か、又は
LがCHCHNHCHCHであり、且つ、RがCHである([3−(2−アミノエチル)アミノプロピル]トリメトキシシラン又はDATMS又はDAMOと呼ばれる化合物)か;又は
XがSHであり、LがCHCHCHであり、且つ、RがCH−CHである((3−メルカプトプロピル)トリメトキシシラン又はMPTESと呼ばれる化合物)か;又は
XがCNであり、LがCHCHであり、且つ、RがCH−CHである(2−(4−ピリジルエチル)トリエトキシシラン又はPETESと呼ばれる化合物)か;又は
XがCHCHOであり、LがCHCHCHであり、且つ、RがCHである((3−グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン又はEPTMSと呼ばれる化合物)か;又は
XがClであり、LがCHCHCHであり、且つ、RがCHである(3−クロロプロピルトリメトキシシラン又はCPTMSと呼ばれる化合物))
で表される1以上の有機シラン化合物からなることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の溶液。
【請求項5】
前記溶媒系は、N−メチルピロリジノン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アルコール類、エチレングリコールエーテル類、例えばモノエチルジエチレングリコール、プロピレングリコールエーテル類、ジオキサン、及び、トルエンからなる群から選択される1以上の溶媒からなることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の溶液。
【請求項6】
前記活性化剤は、5×10−5M〜5×10−4Mの濃度の、下記錯体:
・式(I)の錯体(式中、
・R1はHであり、R2はCHCHNHであり、且つ、XはClである((ジエチレントリアミン)(ジクロロ)パラデート(II)と呼ばれる錯体)か;又は
・R1及びR2は同一で、CHCHOHであり、且つ、XはClである((N,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン)(ジクロロ)パラデート(II)と呼ばれる錯体))、
・式(IIa)の錯体(式中、
・R1はHであり、R2はCHCHNHであり、且つ、Yは2つのClである(trans−ビス(ジエチレントリアミン)パラデート(II)と呼ばれる錯体))、
・式(IIb)の錯体(式中、
・R1はHであり、R2はCHCHNHであり、且つ、Yは2つのClである(cis−ビス(ジエチレントリアミン)パラデート(II)と呼ばれる錯体))
からなる群から選択される1以上のパラジウム錯体からなることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の溶液。
【請求項7】
その後の工程で無電解法により金属層を堆積させて被覆できるように基板の酸化された表面を活性化するための、請求項1〜6のいずれか一項に記載の溶液の使用であって、
前記表面は1以上の酸化物、特に酸化ケイ素のみからなることを特徴とする使用。
【請求項8】
その後の工程で無電解法により金属層を堆積させて被覆できるように基板の酸化された表面を活性化するための方法であって、
前記表面は1以上の酸化物、特に酸化ケイ素からなるものであり、
前記基板表面を請求項1〜6のいずれか一項に記載の溶液と、好ましくは50〜90℃の温度で1〜30分間、より好ましくは65〜70℃の温度で5〜15分間、接触させることを特徴とする方法。
【請求項9】
a)基板、特にケイ素含有基板などの、1以上の酸化物、特に酸化ケイ素からなる酸化された表面を請求項1〜6のいずれか一項に記載の溶液と、好ましくは50〜90℃の温度で1〜30分間、より好ましくは65〜70℃の温度で5〜15分間、接触させることによって前記酸化された表面を活性化する工程;及び
b)その活性化した表面を無電解法により金属層、特にニッケル含有金属層を堆積させて被覆する工程
を含むことを特徴とする、電子デバイスを製造するための方法。
【請求項10】
・少なくとも1つの金属塩を好ましくは10−3M〜1Mの濃度で含有し、
・少なくとも1つの還元剤を好ましくは10−4M〜1Mの量で含有し、
・場合によっては、少なくとも1つの安定剤を好ましくは10−3M〜1Mの量で含有し、且つ、
・pHを6〜11の値、好ましくは8〜10の値に調整するための薬剤を含有する
溶液、好ましくは水溶液と前記活性化した表面を、少なくとも30nmの厚み、好ましくは30nm〜100μmの厚み、より好ましくは70nm〜200nmの厚みの金属皮膜を形成できる条件下で、接触させることによって、前記工程b)を行うことを特徴とする、請求項9に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−506755(P2013−506755A)
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−531429(P2012−531429)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際出願番号】PCT/EP2010/064565
【国際公開番号】WO2011/039310
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(508084928)
【Fターム(参考)】