説明

半導体封止用エポキシ樹脂組成物の製造方法

【課題】サイズの大きな金属異物が混入し難い、半導体封止用エポキシ樹脂組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】エポキシ樹脂、硬化剤、無機充填剤を含む原材料を混合後、混練装置11にて混練して混練物を得る工程、前記混練物を圧延ロール12でシート状に圧延して、圧延物を得る工程、前記圧延物を冷却コンベア13にて搬送しながら、低温の気体中で冷却し、冷却コンベア13の終端部のシートを粗砕する部分により圧延物(シート)を粗砕して粗砕物を得る工程、前記粗砕物を粉砕機にて粉砕して粉砕品を得る工程、磁性金属を捕捉する工程、磁性金属が捕捉され除外された粉砕品を圧縮成形する工程を有し、前記冷却コンベア13が、メッシュ状のエンドレスネットの側面に平行配置されたエンドレスチェーンにおいてエンドレスチェーンの内側近傍に仕切板を配置したものである、半導体封止用エポキシ樹脂組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体封止用エポキシ樹脂組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、半導体封止用樹脂組成物は、電気特性、耐熱性、量産性等に優れるエポキシ樹脂とその硬化剤、触媒、離型剤、難燃剤、着色剤等の添加剤及び無機充填剤から構成されている。又その製造方法としては、樹脂組成物を構成する成分を所定量配合、混合後、ロール、1軸押出機、1軸押出機とロールの組み合わせ、又は2軸押出機により混練を行い、混練物をシート状に圧延、冷却後、ハンマーミルや回転羽根等を用いて粉砕を行い、必要に応じて円柱状のタブレットに加工するといった工程がとられている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
又、混練物や粉砕品が水分と接触する機会を皆無とし、シート化冷却工程においてトラブルが極めて少ない半導体封止用エポキシ樹脂組成物の製造方法、半導体封止用エポキシ樹脂組成物及びそれを用いた半導体装置を提供するため、エポキシ樹脂、硬化剤、無機充填剤を含む半導体封止用エポキシ樹脂組成物の製造方法において、エポキシ樹脂、硬化剤、無機充填剤を含む原材料を混合後、混練装置にて混練して混練物を得る工程、前記混練物を圧延ロールでシート状に圧延して、圧延物を得る工程、前記圧延物を冷却コンベアにて搬送しながら、低温の気体中で冷却し、冷却されたシートを装置端部で粗砕する工程、前記粗砕物を粉砕機にて粉砕して粉砕品を得る工程、磁性金属を捕捉する工程、磁性金属が捕捉され除外された粉砕品を圧縮成形する工程がとられている(特許文献2参照)。
【0004】
上記のうち、冷却コンベアにおいて搬送する工程においては空気が容易に通過するような支持体を持った、たとえばチェーン付ワイヤコンベアベルト(関西金網)が一般的に使用される。このチェーン付ワイヤコンベアベルトは、エンドレス状になっており、冷却コンベア端部ではチェーンと噛み合うスプロケットと組み合わされており、どちらか一端で駆動される。
この駆動時においてエンドレスチェーンのローラー軸部での摺動時の金属磨耗粉、ローラーとレール間での金属磨耗やチェーンとスプロケットなどの接触部分で金属削れ屑が、粗砕物に混入して金属異物となる。この混入した金属異物は、半導体を封止した後の半導体装置内の複数のボンディングワイヤと接触して短絡することにより、機能を発揮しない可能性が出てくる。そのため金属異物の少ない半導体封止用エポキシ樹脂組成物が必要となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−64398号公報
【特許文献2】特開2006−297701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、半導体封止用エポキシ樹脂組成物に、サイズの大きな金属異物が混入し難い冷却コンベアを提供し、半導体装置への影響を少なくした、半導体封止用エポキシ樹脂組成物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、以下の通りである。
(1) エポキシ樹脂、硬化剤、無機充填剤を含む半導体封止用エポキシ樹脂組成物の製造方法において、エポキシ樹脂、硬化剤、無機充填剤を含む原材料を混合後、混練装置にて混練して混練物を得る工程、前記混練物を圧延ロールでシート状に圧延して、圧延物を得る工程、前記圧延物を冷却コンベアにて搬送しながら、低温の気体中で冷却し、冷却コンベアの終端部のシートを粗砕する部分により圧延物(シート)を粗砕して粗砕物を得る工程、前記粗砕物を粉砕機にて粉砕して粉砕品を得る工程、磁性金属を捕捉する工程、磁性金属が捕捉され除外された粉砕品を圧縮成形する工程を有し、前記冷却コンベアが、メッシュ状のエンドレスネットの側面に平行配置されたエンドレスチェーンにおいてエンドレスチェーンの内側近傍に仕切板を配置したものである、半導体封止用エポキシ樹脂組成物の製造方法。
(2) 冷却コンベアの終端部でのシートを粗砕する部分において、櫛状の部材が固定されており、その固定された櫛状の隙間を通過するように構成された突起物を有した回転体で、櫛歯と回転体突起物がシートを挟み込む回転方向で回転している、(1)に記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物の製造方法。
(3) 櫛状の部材及び突起物の材質が、セラミック又は硬度HRC(ロックウェル)40以上の金属材料である、(2)に記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
粗砕品へのサイズの大きな金属異物が混入する機会を低減し、粗砕物への金属異物が少ない半導体封止用エポキシ樹脂組成物の製造方法を提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物の製造方法に係る装置の概略図である。
【図2】図1に示す装置のA−A線での概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に示したように、エポキシ樹脂、硬化剤、無機充填剤を含む原材料を混合後、混練装置11にて混練して混練物16を得る工程においては、各種材料を均一に分散混合できるのであれば、いかなる手法を用いても調製できるが、一般的な手法として、所定の配合量の各種材料をミキサー等によって十分混合した後、混練装置11であるミキシングロールや押出機等によって溶融混練して混練物16を得てもよい。本発明に用いる混練装置11は、特に限定しないが、同方向回転二軸押出機などが挙げられ、使用するスクリュー、シリンダーの形状及び材質には特に限定はないが多量に充填されている無機充填剤に対する摩耗抵抗の高いものが望ましい。
【0011】
前記混練物16を圧延ロール12でシート状に圧延して、圧延物とする。圧延物をメッシュ状のエンドレスネット27で搬送する際、両側面に平行配置されたエンドレスチェーン26の内側近傍に仕切板を配置した冷却コンベアが好ましい(図2参照)。以下、圧延物はシートとも表す。
この仕切板は、図2に示すように仕切A23、仕切B231、仕切A,B支持体232、仕切C24、仕切C支持体241、仕切D25、仕切E251、仕切D,E支持体252で構成される。仕切A23はメッシュ状のエンドレスネット27の上側にあり、ネットの側面に平行配置されたエンドレスチェーン26の中央寄りにあり、垂直平面板または、ネット上面から延びた他辺が冷却コンベア矩体20側面に固定された板で、この場合は勾配を持っている仕切B231が好ましい。ネット上面との隙間は10mm以下でネットと干渉しない限りネット近傍が好ましい。
【0012】
仕切C24はメッシュ状のエンドレスネット27の中間にあり、ネットの側面に平行配置されたエンドレスチェーン26の中央寄りにあり、たとえば垂直平面板で構成されることが好ましい。ネット内側面近傍の垂直平面板の両辺との隙間は10mm以下でネットと干渉しない限りネット近傍が好ましい。
【0013】
仕切D25、仕切E251はメッシュ状のエンドレスネット27の下面にあり、ネットの側面に平行配置されたエンドレスチェーン26の中央寄りにあり、ネット下面側から延びた他辺が冷却コンベア矩体20側面に固定される。ネット下面近傍の辺との隙間は10mm以下でネットと干渉しない限りネット近傍が好ましい。この仕切板の効果により、エンドレスチェーン26のローラー軸28部での摺動時の金属磨耗粉、ローラーとレール29間での金属磨耗やチェーンとスプロケットなどの接触部分での金属削れ屑の金属磨耗粉が、シート搬送室内へ侵入することを防止出来る。
【0014】
冷却コンベア13の終端部のシートを粗砕する部分においては、終端部のスプロケット軸に対向する向きにネットと干渉しないように、櫛状部材191が近接して固定されており、その固定された櫛状の隙間を通過するように構成された突起物を有した回転体19で、櫛状部材191と回転体突起物がシート30を挟み込む回転方向で回転しシート30を粗砕する。
【0015】
櫛状部材191および回転体19の突起物は、金属の場合は、特に材質は拘らないが、硬度HRC(ロックウェル)40以上が好ましく、金属以外の場合はセラミックが好ましい。セラミックの材質は特に限定しないが、ジルコニア,アルミナがより好ましい。硬度HRC40以上の金属材料としては、炭素鋼(S45C)、合金鋼、ダイス鋼、ステンレスなどが挙げられる。
【実施例】
【0016】
以下、本発明の好適な実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1〜2)
エポキシ樹脂としてエポキシ当量186、融点75℃のビスフェノールF型エポキシ樹脂(新日鉄化学株式会社製商品名:ESLV−80XY)を85質量部、及びエポキシ当量375、軟化点80℃、臭素含量48質量%のビスフェノールA型ブロム化エポキシ樹脂(住友化学工業株式会社製商品名:ESB−400T)を15質量部、硬化剤として水酸基当量199、軟化点80℃のビフェニル型フェノール樹脂(明和化成株式会社製商品名:MEH−7851)を99質量部、硬化促進剤としてトリフェニルホスフィンとp−ベンゾキノンとの付加物を3.5質量部、無機充填剤として平均粒径17.5μm、比表面積3.8m/gの球状溶融シリカを1983質量部、カップリング剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(エポキシシラン)を4.5質量部、その他の添加剤として三酸化アンチモンを6.0質量部、カルナバワックス(株式会社セラリカNODA製)を2質量部、カーボンブラック(三菱化学株式会社製商品名:MA−100)を3.5質量部、それぞれを含む原材料をミキサーで混合し、混練温度80℃、混練時間10分の条件で混練装置11である同方向回転二軸押出機で混練を行い、混練物16を作製した。
【0017】
前記混練物を、仕切A23、仕切B231、仕切A,B支持体232、仕切C24、仕切C支持体241、仕切D25、仕切E251、仕切D,E支支持体252を有する、図1及び図2に示した構造の装置により、粉砕し、磁性金属を含んだ粗砕物を得た。また、粗砕部ではHRC40以上の金属製の突起物および金属製の櫛状部材、またはセラミック製の突起物およびセラミック製の櫛状部材191を有する冷却コンベアで冷却した。
なお、HRC40以上の金属材料としては、炭素鋼(S45C)、または、ステンレスを、セラミックはアルミナを使用した。
【0018】
(比較例1)
仕切板として、仕切A23、仕切B231、仕切A,B支持体232、仕切C24、仕切C支持体241、仕切D25、仕切E251、仕切D,E支支持体252を有していない装置を使用した以外は、実施例と同様に行い、磁性金属を含んだ粗砕物を得た。
【0019】
試料はそれぞれ特定品種を3回製造したものを用いた。試料の採取は工程途中の粗砕物とした。測定方法は下記方法により測定し、測定結果は比較例1の磁性金属の大きさの最大値を100として示した。結果を表1に示した。
(1)プラスチック製容器に半導体封止用エポキシ樹脂組成物を溶解可能な有機溶剤を600ml入れ、磁性金属を含んだ粗砕物を、300gを秤量し、有機溶剤が入った前記プラスチック製容器に入れ、金属製以外の材質の攪拌羽根で15分間攪拌する。
(2)20mm径のカバー付棒状永久磁石を前記溶解液に入れ、約1秒間に1回転の回転速度で2分間回転させ、磁性金属を回収する。
(3)プラスチック製容器内でカバー内から棒状永久磁石を抜く。
(4)カバーに付着した付着物を有機溶剤で洗浄し付着物を含んだ洗液をプラスチック製容器で受ける。
(5)再度カバー付棒状永久磁石をプラスチック製容器に入れ、磁性金属を付着させる。
(6)プラスチック製容器内でカバー内から棒状永久磁石を抜く。
(7)カバーに付着した付着物を、有機溶剤を使用してプラスチック製容器内に落とす。
(8)回収用永久磁石をプラスチック製容器の底に当て、磁性金属を吸着させたまま有機溶剤を廃棄する。
(9)ロートにあらかじめ重量を計量した濾紙を設置し、プラスチック製容器内の磁性物を有機溶剤で洗浄しながら濾紙に流しだす。
(10)濾紙をロートより取り出し、5分間風乾させる。
(11)乾燥後、濾紙の重量を計量し、回収前の重量から回収量を計算する。
(12)磁性金属の大きさは、前記濾紙を実体顕微鏡で、目視で観察し、最も大きいもの幾つかを選び拡大可能な測定器で拡大し、長手方向の長さ(サイズ;指数)を測定して求めた。
【0020】
【表1】

【0021】
表1に示すように、実施例1〜2の磁性金属の大きさ(最大値)は、比較例1の磁性金属の大きさの最小値(77)より、小さいことがわかる。
冷却コンベアにおいて、仕切板を配置したことにより、比較的サイズの大きな金属異物を排除することが可能となった。
【符号の説明】
【0022】
11 混練装置、12 圧延ロール、13 冷却コンベア、15 低温気体、16 混練物、18 圧延物、19 回転体、191 櫛状部材、20 冷却コンベア矩体、21 冷風吹き出し口、23 仕切A、231 仕切B、232 仕切A,B支持体、24 仕切C、241 仕切C支持体、25 仕切D、251 仕切E、252 仕切D,E支持体、26 エンドレスチェーン、27 エンドレスネット、28 ローラー軸、29 レール、30 シート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂、硬化剤、無機充填剤を含む半導体封止用エポキシ樹脂組成物の製造方法において、エポキシ樹脂、硬化剤、無機充填剤を含む原材料を混合後、混練装置にて混練して混練物を得る工程、前記混練物を圧延ロールでシート状に圧延して、圧延物を得る工程、前記圧延物を冷却コンベアにて搬送しながら、低温の気体中で冷却し、冷却コンベアの終端部のシートを粗砕する部分により圧延物(シート)を粗砕して粗砕物を得る工程、前記粗砕物を粉砕機にて粉砕して粉砕品を得る工程、磁性金属を捕捉する工程、磁性金属が捕捉され除外された粉砕品を圧縮成形する工程を有し、前記冷却コンベアが、メッシュ状のエンドレスネットの側面に平行配置されたエンドレスチェーンにおいてエンドレスチェーンの内側近傍に仕切板を配置したものである、半導体封止用エポキシ樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
冷却コンベアの終端部でのシートを粗砕する部分において、櫛状の部材が固定されており、その固定された櫛状の隙間を通過するように構成された突起物を有した回転体で、櫛歯と回転体突起物がシートを挟み込む回転方向で回転している、請求項1に記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
櫛状の部材及び突起物の材質が、セラミック又は硬度HRC(ロックウェル)40以上の金属材料である、請求項2に記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−126847(P2012−126847A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−280684(P2010−280684)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】