説明

半導体層の製造方法および光電変換装置の製造方法

【課題】光電変換効率の高い半導体層およびそれを用いた光電変換装置を提供すること。
【解決手段】半導体層の製造方法は、金属元素を含む前駆体層を、水素の濃度が徐々にあるいは段階的に低くなる水素含有気体雰囲気下で加熱し、半導体層3を形成する工程を含む。これにより、半導体層3を所望の組成で良好に結晶化させることができ、光電変換効率の高い半導体層3および光電変換装置10を形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体層の製造方法およびそれを用いた光電変換装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽電池として、CISやCIGSのようなI-III-VI族化合物半導体等のカルコゲン化合物半導体層から成る光吸収層を具備する光電変換装置を用いたものがある。この光電変換装置は、例えば、ソーダライムガラスからなる基板上に裏面電極となる、例えば、Moからなる第1の電極層が形成され、この第1の電極層上にI-III-VI族化合物半導体からなる光吸収層が形成されている。さらに、その光吸収層上には、ZnS、CdSなどからなるバッファ層を介して、ZnOなどからなる透明の第2の電極層が形成されている。
【0003】
このような光吸収層の作製方法としては、I-B族元素およびIII-B族元素の有機金属塩の溶液を塗布乾燥して前駆体層を形成し、この前駆体層をVI-B族元素が存在する非酸化性雰囲気中で加熱することによってI-III-VI族化合物半導体を形成する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−274176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された方法では、光吸収層の組成が所望のものとなり難く、光電変換効率を高めることが困難であるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みて完成されたものであり、その目的は、所望の組成の半導体層を良好に形成することが可能な半導体層の製造方法および光電変換装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係る半導体層の製造方法は、金属元素を含む前駆体層を、水素の濃度が徐々にあるいは段階的に低くなる水素含有気体雰囲気下で加熱し、半導体層を形成する工程を含むことを特徴とする。
【0008】
このような製造方法によれば、半導体層に含まれる不純物を水素によって良好に除去することができ、半導体層を良好に結晶化することができる。また、加熱処理が進むにつれ、水素濃度を減少させることにより、半導体層の構成成分が水素との化合物となって抜け出すことを有効に抑制し、所望の組成の半導体層を良好に形成することができる。以上の結果、光電変換効率の高い半導体層となる。
【0009】
上記半導体層の製造方法において好ましくは、前記水素含有気体雰囲気は、水素と不活性気体とを含む混合気体雰囲気である。
【0010】
上記半導体層の製造方法において好ましくは、前記水素含有気体雰囲気は、水素とカルコゲン元素含有気体とを含む混合気体雰囲気である。
【0011】
上記半導体層の製造方法において好ましくは、前記金属元素は、I-B族元素およびIII-B族元素を含む。
【0012】
上記半導体層の製造方法において好ましくは、前記前駆体層は、さらにVI-B族元素を含む。
【0013】
上記半導体層の製造方法において好ましくは、前記前駆体層は、前記金属元素とカルコゲン元素含有有機化合物とルイス塩基性有機溶剤とを含む半導体層形成用溶液を塗布して乾燥させたものである。
【0014】
本発明の一実施形態に係る光電変換装置の製造方法は、第1の電極層上に、上記いずれかの半導体層の製造方法により第1の半導体層を形成する工程と、前記第1の半導体層上に、該第1の半導体層と異なる組成の第2の半導体層を形成する工程と、前記第2の半導体層上に第2の電極層を形成する工程と、を具備することを特徴とする。
【0015】
このような製造方法によれば、第1の半導体層を所望の組成で良好に結晶化させることにより、第1の半導体層の表面を平滑にすることができ、この平滑な第1の半導体層上に第2の半導体層を良好にヘテロ接合させることができる。その結果、光電変換効率の高い光電変換装置とすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、半導体層を所望の組成で良好に結晶化させることができ、光電変換効率の高い半導体層および光電変換装置を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】半導体層を用いた光電変換装置の実施の形態の一例を示す断面図である。
【図2】半導体層を用いた光電変換装置の実施の形態の他の例を示す断面図である。
【図3】図2の光電変換装置の斜視図である。
【図4】本発明の半導体層の製造方法における製造条件の一例を示すグラフである。
【図5】本発明の半導体層の製造方法における製造条件の他の例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の半導体層の製造方法および光電変換装置の製造方法について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
図1は、半導体層を用いた光電変換装置の実施の形態の一例を示す断面図である。光電変換装置10は、基板1と、第1の電極層2と、第1の半導体層3と、第2の半導体層4と、第2の電極層5とを含んで構成される。本実施例においては、第1の半導体層3が光吸収層であり、第2の半導体層4が第1の半導体層3に接合されたバッファ層である例を示すがこれに限定されず、第2の半導体層4が光吸収層であってもよい。
【0020】
図1において、光電変換装置10は複数並べて形成されている。そして、光電変換装置10は、第1の半導体層3の基板1側に第1の電極層2と離間して設けられた第3の電極層6を具備している。そして、第1の半導体層3に設けられた接続導体7によって、第2の電極層5と第3の電極層6とが電気的に接続されている。この第3の電極層6は、隣接する光電変換装置10の第1の電極層2と一体化されている。この構成により、隣接する光電変換装置10同士が直列接続されている。なお、一つの光電変換装置10内において、接続導体7は第1の半導体層3および第2の半導体層4を貫通するように設けられており、第1の電極層2と第2の電極層5とで挟まれた第1の半導体層3と第2の半導体層4とで光電変換が行なわれる。
【0021】
基板1は、光電変換装置10を支持するためのものである。基板1に用いられる材料としては、例えば、ガラス、セラミックス、樹脂および金属等が挙げられる。
【0022】
第1の電極層2および第3の電極層6は、Mo、Al、TiまたはAu等の導電体が用いられ、基板1上にスパッタリング法または蒸着法等で形成される。
【0023】
第1の半導体層3は、光電変換可能な半導体であればよく、特に限定されない。例えば、カルコゲン化合物半導体が挙げられる。カルコゲン化合物半導体は、カルコゲン元素を含む半導体である。カルコゲン元素とは、VI-B族元素のうちのS、Se、Teをいう。カルコゲン化合物半導体としては、例えば、I-III-VI族化合物半導体やII-VI族化合物半導体が挙げられる。
【0024】
I-III-VI族化合物半導体とは、I-B族元素(11族元素ともいう)とIII-B族元素(13族元素ともいう)とVI-B族元素(16族元素ともいう)との化合物半導体であり、カルコパイライト構造を有し、カルコパイライト系化合物半導体と呼ばれる(CIS系化合物半導体ともいう)。I-III-VI族化合物半導体としては、例えば、Cu(In,Ga)Se(CIGSともいう)、Cu(In,Ga)(Se,S)(CIGSSともいう)、およびCuInS(CISともいう)が挙げられる。なお、Cu(In,Ga)Seとは、CuとInとGaとSeとから主に構成された化合物をいう。また、Cu(In,Ga)(Se,S)とは、CuとInとGaとSeとSとから主に構成された化合物をいう。10μm以下の薄層でも光電変換効率を高めることができるという観点からは、第1の半導体層3はこのようなI-III-VI族化合物半導体であることが好ましい。
【0025】
また、II-VI族化合物半導体とは、II-B族元素(12族元素ともいう)とVI-B族元素との化合物半導体である。II-VI族化合物半導体としては、例えば、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS,CdSe、CdTe等が挙げられる。
【0026】
このような第1の半導体層3は、例えば、次のようにして作製される。先ず、第1の電極層2を有する基板1上に、金属元素(例えばI-B族元素およびIII-B族元素、またはII-B族元素)を有機溶媒等に溶解させた原料溶液を塗布することにより前駆体層を形成する。これらの前駆体層にはVI-B族元素を含ませておいても良い。また、これらの前駆体層は、異なる組成の複数の積層体であってもよい。
【0027】
次に、窒素やアルゴン等の不活性ガスに水素を混合させ、水素の濃度が徐々にあるいは段階的に低くなるような雰囲気下で前駆体層を加熱する。水素を含むガスを供給する際に、前駆体層を300〜600℃に加熱して結晶化を行い第1の半導体層3を形成する。前駆体層の加熱は、水素を含むガスを供給すると同時に加熱を開始してもよく、水素を含むガスをある程度供給してから加熱を開始してもよい。後者の場合、前躯体内に水素が良好に浸透し、不純物の脱離をより効果的に促進することができる。あるいは、水素を含まない不活性ガスを供給しながら加熱を開始し、その後、水素を供給してもよい。
【0028】
前駆体層を加熱処理する際の雰囲気ガスの水素濃度は、半導体層中の不純物の除去を良好に行なうという観点からは、0.01mol%以上、より好ましくは0.1mol%以上であるのがよい。また、水素濃度は100%以下であればよい。
【0029】
このように前駆体層を水素を含む雰囲気下で加熱して第1の半導体層3を形成することにより、第1の半導体層3に含まれる不純物を水素で良好に除去することができ、第1の半導体層3を良好に結晶化することができる。第1の半導体層3に含まれる不純物としては、前駆体層形成時に用いた有機物があり得る。また、第1の半導体層3に含まれる不純物としては、所望とする半導体以外の化合物などであり、例えば、酸化物や、第1の半導体層3がCIGSの場合、不純物としてセレン化銅等が挙げられる。そして、加熱処理が進むにつれ、水素濃度を減少させることにより、第1の半導体層3の構成成分が水素との化合物となって抜け出す(例えば、第1の半導体層3がCIGSの場合、Seがセレン化水素となって脱離する)ことを有効に抑制し、所望の組成の第1の半導体層3を良好に形成することができる。以上の結果、光電変換効率の高い第1の半導体層3となる。
【0030】
また、このようにして作製した第1の半導体層3は、所望の組成で良好に結晶化されているため、表面を平滑にすることができる。よって、そのような平滑な表面に組成の異なる第2の半導体層4を良好にヘテロ接合することができ、光電変換効率が非常に高い光電変換装置となる。
【0031】
前駆体層を加熱処理する際の雰囲気ガスには、第1の半導体層3に含まれる元素を含めてもよい。例えば、第1の半導体層3がカルコゲン化合物半導体である場合、雰囲気ガスにカルコゲン元素を含めることができる。カルコゲン元素とは、VI-B族元素のうちのS、Se、Teをいう。カルコゲン化合物半導体とは、カルコゲン元素を含む化合物半導体であり、例えば、VI-B族元素としてカルコゲン元素を含むI-III-VI族化合物半導体や、VI-B族元素としてカルコゲン元素を含むII-VI族化合物半導体が挙げられる。雰囲気ガスにカルコゲン元素を含める方法としては、セレン蒸気、硫黄蒸気、セレン化水素、または硫化水素等を雰囲気ガスに混合すればよい。なお、前駆体層を加熱処理する際の雰囲気ガスに不活性ガスを含めず、水素とカルコゲン元素を含むガスとの混合ガスであってもよい。このように、第1の半導体層3にカルコゲン元素を含む場合、雰囲気ガスにもカルコゲン元素を含めることにより、第1の半導体層3の結晶化を促進することができ、光電変換効率をより高めることができる。
【0032】
図4に第1の半導体層3を形成する時の製造条件の一例を示す。図4は、前駆体層を設けた基板1を反応炉に載置し、10mol%の水素を含む窒素ガス中で前駆体層を580℃にして約10加熱し、その後、水素濃度を6mol%にして約50分加熱している。
【0033】
また、図5に第1の半導体層3を形成する時の製造条件の他の例を示す。図5は、前駆体層を設けた基板1を反応炉に載置し、10mol%の水素を含む窒素ガス中で前駆体層を580℃にして10加熱し、その後、水素濃度を6mol%にするとともに前駆体層を520℃にして約50分加熱している。このように前駆体層の加熱工程において、温度を減少させる工程を含めることにより、第1の半導体層3の結晶化が第1の電極層2と良好に密着した状態で進行することとなり、密着性の高いものとなる。
【0034】
上記第1の半導体層3の形成工程において、上記前駆体層は多孔質であるのが好ましい。このように多孔質であると、水素が前駆体層全体に行き渡りやすくなり、第1の半導体層3の不純物をより良好に除去することができる。
【0035】
このような多孔質の前駆体層を形成する方法としては、例えば、第1の半導体層3を構成する金属元素を含む原料溶液を塗布し、溶媒を乾燥して除去することにより多孔質の前駆体層を形成することができる。
【0036】
このような塗布に用いる原料溶液としては、例えば、第1の半導体層3を構成する金属元素(例えばI-B族元素およびIII-B族元素、またはII-B族元素)と、カルコゲン元素含有有機化合物と、ルイス塩基性有機溶剤とを含んだものが好ましい。このような原料溶液は、カルコゲン元素含有有機化合物とルイス塩基性有機溶剤とを含む溶媒(以下、カルコゲン元素含有有機化合物とルイス塩基性有機溶剤とを含む溶媒を混合溶媒Sともいう)を用いることによって、金属元素を良好に溶解させて6wt%以上(混合溶媒Sに対する、金属元素の合計の濃度)の原料溶液を作製できる。つまり、このような混合溶媒Sを用いることにより、カルコゲン元素含有有機化合物のみ、またはルイス塩基性有機溶剤のみで金属元素の溶液を作製した場合に比べ、非常に高濃度の溶液を得ることができる。よって、この原料溶液を用いて被膜状の前駆体層を形成することにより、一度の塗布でも比較的厚い良好な前駆体を得ることができ、その結果、所望の厚みの第1の半導体層3を容易にかつ良好に作製することができる。
【0037】
カルコゲン元素含有有機化合物とは、カルコゲン元素を含む有機化合物である。カルコゲン元素とは、VI-B族元素のうちのS、Se、Teをいう。カルコゲン元素がSである場合、カルコゲン元素含有有機化合物としては、例えば、チオール、スルフィド、ジスルフィド、チオフェン、スルホキシド、スルホン、チオケトン、スルホン酸、スルホン酸エステルおよびスルホン酸アミド等が挙げられる。好ましくは、金属と錯体を形成して金属溶液を良好に作製できるという観点からは、チオール、スルフィド、ジスルフィド等が良い。特に塗布性を高めるという観点からは、フェニル基を有するものが好ましい。このようなフェニル基を有するものとしては、例えば、チオフェノール、ジフェニルスルフィド等およびこれらの誘導体が挙げられる。
【0038】
カルコゲン元素がSeである場合、カルコゲン元素含有有機化合物としては、例えば、セレノール、セレニド、ジセレニド、セレノキシド、セレノン等が挙げられる。好ましくは、金属と錯体を形成して金属溶液を良好に作製できるという観点からは、セレール、セレニド、ジセレニド等が良い。特に塗布性を高めるという観点からは、フェニル基を有するものが好ましい。このようなフェニル基を有するものとしては、例えば、フェニルセレノール、フェニルセレナイド、ジフェニルジセレナイド等およびこれらの誘導体が挙げられる。
【0039】
カルコゲン元素がTeである場合、カルコゲン元素含有有機化合物としては、例えば、テルロール、テルリド、ジテルリド、等が挙げられる。
【0040】
ルイス塩基性有機溶剤とは、ルイス塩基となり得る有機溶剤である。ルイス塩基性有機溶剤としては、ピリジン、アニリン、トリフェニルフォスフィン等およびこれらの誘導体が挙げられる。特に塗布性を高めるという観点からは、沸点が100℃以上であるものが好ましい。
【0041】
混合溶媒Sは、取り扱い性の観点からは、室温で液状となるような組み合わせであることが好ましい。カルコゲン元素含有有機化合物のmol数は、ルイス塩基性有機溶剤のmol数に対して0.1〜10倍であるのがよい。これにより、金属元素とカルコゲン元素含有有機化合物との化学結合およびカルコゲン元素含有有機化合物とルイス塩基性有機溶剤との化学結合を良好に形成することができ、高濃度の金属元素の溶液を得ることができる。
【0042】
混合溶媒Sに、金属元素を溶解させて溶液を作製する方法としては、上記混合溶媒Sに金属元素の単体金属または合金を直接溶解させればよい。なお、これらの金属元素は、いずれかが有機金属化合物や金属塩であってもよい。第1の半導体層3に所望の半導体成分以外の不純物が残るのを抑制するという観点からは、単体金属あるいは合金の地金を混合溶媒Sに直接溶解させることが好ましい。これにより、単体金属の地金または合金の地金を、一旦、他の化合物(例えば有機金属化合物や金属塩)に変化させた後に溶媒に溶解させるという余計な工程は必要なく、工程が簡略化できるとともに、第1の半導体層3を構成する元素以外の元素が含まれるのを抑制することができ、第1の半導体層3の純度を高めることができる。
【0043】
上記の原料溶液を用いて前駆体を形成する方法としては、上記原料溶液を第1の電極層2を有する基板1の表面に塗布して被膜状にする。原料溶液は、スピンコータ、スクリーン印刷、ディッピング、スプレーまたはダイコータなどを用いて塗布され、乾燥されて被膜状の前駆体となる。乾燥は、還元雰囲気下で行うことが望ましい。乾燥時の温度は、例えば、50〜300℃で行う。
【0044】
光電変換装置10は、上記半導体層を第1の半導体層3として用い、この第1の半導体層3上に第2の半導体層4が形成される。第2の半導体層4は、第1の半導体層3に対してヘテロ接合を行う第2の半導体層である。第1の半導体層3と第2の半導体層4とは異なる導電型であることが好ましく、例えば、第1の半導体層3がp型半導体である場合、第2の半導体層4はn型半導体である。好ましくはリーク電流を低減するという観点からは、第2の半導体層は、抵抗率が1Ω・cm以上の層であるのがよい。第2の半導体層4としては、CdS、ZnS、ZnO、InSe、In(OH,S)、(Zn,In)(Se,OH)、および(Zn,Mg)O等が挙げられ、例えばケミカルバスデポジション(CBD)法等で形成される。なお、In(OH,S)とは、InとOHとSとから主に構成された化合物をいう。(Zn,In)(Se,OH)は、ZnとInとSeとOHとから主に構成された化合物をいう。(Zn,Mg)Oは、ZnとMgとOとから主に構成された化合物をいう。第2の半導体層4は第1の半導体層3の吸収効率を高めるため、第1の半導体層3が吸収する光の波長領域に対して光透過性を有するものが好ましい。
【0045】
第2の電極層5は、例えばITO、ZnO等の0.05〜3.0μmの透明導電膜である。第2の電極層5は、スパッタリング法、蒸着法または化学的気相成長(CVD)法等で形成される。第2の電極層5は、第2の半導体層4よりも抵抗率の低い層であり、第1の半導体層3で生じた電荷を取り出すためのものである。電荷を良好に取り出すという観点からは、第2の電極層5の抵抗率が1Ω・cm未満でシート抵抗が50Ω/□以下であるのがよい。
【0046】
第2の電極層5は第1の半導体層3の吸収効率を高めるため、第1の半導体層3の吸収光に対して光透過性を有するものが好ましい。光透過性を高めると同時に光反射ロス防止効果および光散乱効果を高め、さらに光電変換によって生じた電流を良好に伝送するという観点から、第2の電極層5は0.05〜0.5μmの厚さとするのが好ましい。また、第2の電極層5と第2の半導体層4との界面での光反射ロスを防止する観点からは、第2の電極層5と第2の半導体層4の屈折率は等しいのが好ましい。
【0047】
光電変換装置10は、複数個を並べてこれらを電気的に接続し、光電変換モジュール11とすることができる。隣接する光電変換装置10同士を容易に直列接続するために、図1に示すように、光電変換装置10は、第1の半導体層3の基板1側に第1の電極層2と離間して設けられた第3の電極層6を具備している。そして、第1の半導体層3に設けられた接続導体7によって、第2の電極層5と第3の電極層6とが電気的に接続されている。
【0048】
接続導体7は、第2の電極層5を形成する際に同時形成して一体化することが好ましい。これにより、工程を簡略化できるとともに第2の電極層5との電気的な接続信頼性を高めることができる。
【0049】
接続導体7は、第2の電極層5と第3の電極層6とを接続するとともに、隣接する光電変換装置10の各第1の半導体層3も分断するように形成されている。このような構成により、隣接する第1の半導体層3でそれぞれ光電変換を良好に行い、直列接続で電流を取り出すことができる。
【0050】
次に本発明の光電変換装置の実施の形態の他の例を図2、図3に基づき説明する。図2は他の実施形態である光電変換装置20の断面図であり、図3は光電変換装置20の斜視図である。図2、図3は、第2の電極層5上に集電電極8が形成されている点で図1の光電変換装置10と異なっている。図2、図3において、図1と同じ構成のものには、同じ符号を付しており、図1と同様、光電変換装置20が複数接続されて光電変換モジュール21を構成している。集電電極8は、第2の電極層5の電気抵抗を小さくするためのものである。光透過性を高めるという観点からは、第2の電極層5の厚さはできるだけ薄いことが好ましいが、薄いと導電性が低下してしまう。しかしながら、第2の電極層5上に集電電極8が設けられていることにより、第1の半導体層3で発生した電流を効率よく取り出すことができる。その結果、光電変換装置20の発電効率を高めることができる。
【0051】
集電電極8は、例えば、図3に示すように、光電変換装置20の一端から接続導体7にかけて線状に形成されている。これにより、第1の半導体層3の光電変換により生じた電荷を第2の電極層5を介して集電電極8に集電し、これを接続導体7を介して隣接する光電変換装置20に良好に導電することができる。よって、集電電極8が設けられていることにより、第2電極層5を薄くしても第1の半導体層3で発生した電流を効率よく取り出すことができる。その結果、発電効率を高めることができる。
【0052】
集電電極8は第1の半導体層3への光を遮るのを抑制するとともに良好な導電性を有するという観点からは、50〜400μmの幅を有するのが好ましい。また、集電電極8は、枝分かれした複数の分岐部を有していてもよい。
【0053】
集電電極8は、例えば、Ag等の金属粉を樹脂バインダー等に分散させた金属ペーストをパターン状に印刷し、これを硬化することによって形成することができる。
【0054】
なお、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更を施すことは何等差し支えない。本実施形態では、第1の半導体層3について本発明の半導体層の製造方法を適用しているが、第2の半導体層4に適用してもよい。
【符号の説明】
【0055】
1:基板
2:第1の電極層
3:第1の半導体層
4:第2の半導体層
5:第2の電極層
6:第3の電極層
7:接続導体
8:集電電極
10、20:光電変換装置
11、21:光電変換モジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属元素を含む前駆体層を、水素の濃度が徐々にあるいは段階的に低くなる水素含有気体雰囲気下で加熱し、半導体層を形成する工程を含むことを特徴とする半導体層の製造方法。
【請求項2】
前記水素含有気体雰囲気は、水素と不活性気体とを含む混合気体雰囲気である請求項1に記載の半導体層の製造方法。
【請求項3】
前記水素含有気体雰囲気は、水素とカルコゲン元素含有気体とを含む混合気体雰囲気である請求項1に記載の半導体層の製造方法。
【請求項4】
前記金属元素は、I-B族元素およびIII-B族元素を含む請求項1乃至3のいずれかに記載の半導体層の製造方法。
【請求項5】
前記前駆体層は、さらにVI-B族元素を含む請求項4に記載の半導体層の製造方法。
【請求項6】
前記前駆体層は、前記金属元素とカルコゲン元素含有有機化合物とルイス塩基性有機溶剤とを含む半導体層形成用溶液を塗布して乾燥させたものである請求項1乃至5のいずれかに記載の半導体層の製造方法。
【請求項7】
第1の電極層上に、請求項1乃至6のいずれかに記載の半導体層の製造方法により第1の半導体層を形成する工程と、
前記第1の半導体層上に、該第1の半導体層と異なる組成の第2の半導体層を形成する工程と、
前記第2の半導体層上に第2の電極層を形成する工程と、
を具備することを特徴とする光電変換装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−114109(P2011−114109A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−268297(P2009−268297)
【出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】