説明

半導体検出器の診断装置及びその診断方法

【課題】検出器性能劣化の要因である検出器のリーク電流や真空状態を監視することが可能な半導体検出器の診断装置を提供する。
【解決手段】核種の多重波高分析に用いられる半導体検出器の診断装置において、核種の多重波高分析を行う半導体検出器1と、半導体検出器1で分析された核種の出力信号を増幅する前置増幅器2と、半導体検出器1の検出器リーク電流5を監視するリーク電流監視手段52と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多重波高分析装置に用いられる半導体検出器等の診断を行う半導体検出器の診断装置及びその診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、放射線計測のうち線種弁別において、例えば中性子とγ線との弁別、あるいはα線とβ(γ)線との弁別に対し、シンチレーション検出器を用いた弁別法が広く適用されている。このうち前者、即ち中性子とγ線との弁別については、液体シンチレータを用いる時間弁別方式、別名ゼロクロッシング法と呼ばれる手法が良く用いられる。このゼロクロッシング法は、波形を二度微分すると立ち上がり時間が異なる場合、ゼロクロスする時間に差ができることを利用するものである。
【0003】
また、後者のα線とβ(γ)線との分別については、立ち上がり時間弁別法がしばしば用いられる。この立ち上がり時間の時間弁別法は、1つの信号から遅延させた信号と振幅を減衰させた信号のクロスポイント間の時間が立ち上がり時間に比例した情報として取り出し、これを一旦波高情報に変換するものである。α、βの弁別のために、この立ち上がり時間弁別を用いた方式はホスイッチ検出器として知られている。
【0004】
特にα線とβ線、α線とγ線、α線と陽子線またはイオンビームの電荷量や質量数の違いなどの弁別を高効率で行うことができる線種弁別型放射線検出器に関して、
シンチレーション検出器を用いて放射線計測を行うに際し種々の混成場における線種弁別を行う技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、この種の高い測定精度が要求される核種分析システムにおいて、半導体検出器を利用した多重波高分析装置が知られている。この半導体検出器は、高い測定精度、すなわち、直線性及び分解能が要求されるために、検出器性能の劣化対策を講じなければならない。ところが、従来の技術では、性能劣化の要因である検出器のリーク電流や真空状態を監視する手段が存在しない。
【0006】
このために、現状において、検出器保護の観点から、液体窒素液位レベルを監視しそのレベルがある所定の設定値より低下した場合に、半導体検出器の高圧印加電圧を遮断する技術を用いている。
【特許文献1】特開2001−42043号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した従来の高い測定精度が要求される核種分析システムにおいて、半導体検出器を利用した多重波高分析装置が用いられている。この半導体検出器は、高い測定精度、すなわち、直線性及び分解能が要求されるために、検出器性能の劣化対策を講じなければならない。
【0008】
しかし、従来の技術では、性能劣化の要因である検出器のリーク電流や真空状態を監視する手段が存在しないという課題があった。このために、現状では、測定データから測定精度に関連する直線性及び分解能の悪化が判明して初めて検出器の性能劣化を知ることができる状況にある。
【0009】
また、現状において、検出器保護の観点から、液体窒素液位レベルを監視しそのレベルがある所定の設定値より低下した場合に、半導体検出器の高圧印加電圧を事後的に遮断しているに過ぎない、という課題があった。
【0010】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、検出器の劣化の要因を監視する手段を設けて、この得られた監視データから検出器の性能劣化が検知されたときに警報を発生させ事前に操作員に知らせ、また、この監視データがある設定値を越えたときに半導体検出器の高圧印加電圧を遮断する条件を付加することができる半導体検出器の診断装置及びその診断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明は、放射性核種の多重波高分析に用いられる半導体検出器の診断装置において、前記核種を検出する半導体検出器と、この半導体検出器で分析された核種の出力信号を増幅する前置増幅器と、前記半導体検出器の検出器リーク電流を監視するリーク電流監視手段と、を有することを特徴とするものである。
【0012】
上記目的を達成するため、本発明は、放射性核種の多重波高分析に用いられる半導体検出器の診断装置において、前記核種を検出する半導体検出器と、この半導体検出器の結晶を冷却し低温状態に保持するクライオスタットと、このクライオスタットにより冷却された半導体検出器の結晶の真空状態を監視する真空状態監視手段と、を有することを特徴とするものである。
【0013】
また、上記目的を達成するため、本発明は、放射性核種の多重波高分析に用いられる半導体検出器の診断方法において、前記核種の検出を半導体検出器により行う波高分析ステップと、この半導体検出器で分析された核種の出力信号を前置増幅器により増幅する増幅ステップと、前記半導体検出器よりリークした検出器リーク電流をリーク電流監視手段により監視するリーク電流監視ステップと、を有することを特徴とするものである。
【0014】
また、上記目的を達成するため、本発明は、放射性核種の多重波高分析に用いられる半導体検出器の診断方法において、前記核種の検出を半導体検出器により行う波高分析ステップと、この半導体検出器の結晶をクライオスタットにより冷却し低温状態に保持する冷却ステップと、このクライオスタットにより冷却された半導体検出器の結晶の真空状態を真空状態監視手段により監視する真空状態監視ステップと、を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の半導体検出器の診断装置及びその方法によれば、検出器性能劣化の要因である検出器のリーク電流や真空状態を監視する手段を設けることにより、核種分析等の測定精度の悪化が測定データとして現れる以前に事前に把握することが可能となり、警報を発することができる。また、リーク電流や真空状態の警報を半導体検出器への高圧印加電圧の遮断条件として付加することも可能となり、検出器による測定データの精度の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る半導体検出器の診断装置及びその方法の実施の形態について、図面を参照して説明する。ここで、同一又は類似の部分には共通の符号を付すことにより、重複説明を省略する。
【0017】
図1は、半導体検出器1と前置増幅器2の電気的回路を示すブロック図である。
【0018】
核種の多重波高分析に用いられる半導体検出器の診断装置は、半導体検出器1及び前置増幅器2を有する。この半導体検出器1において、核種の多重波高分析が行われる。この半導体検出器1で分析された核種の出力信号は、前置増幅器2に伝達され増幅される。さらに、この半導体検出器1からリークする検出器リーク電流5を監視する図2に示すリーク電流監視手段52が設けられている。
【0019】
次に、半導体検出器1及び前置増幅器2の基本構成について図1を用いて説明する。
【0020】
本図に示すように、半導体検出器1の結晶7において、核種の多重波高分析が行われる。一方、前置増幅器2には、プリアンプ電源コネクタ4を介して給電される。半導体検出器1で分析された核種の出力信号は、前置増幅器2に伝達され増幅される。この増幅された出力信号は、信号出力端子6から出力される。また、この半導体検出器1からリークする検出器リーク電流5は、前置増幅器2に伝達され増幅される。
【0021】
また、この前置増幅器2には、テストポイント(TP)電圧端子3が設けられている。半導体検出器1からリークした検出器リーク電流(IL)5は、半導体検出器1への放射線入力がない状態(以下、無信号時という。)のときに、このTP電圧端子3においてテストポイント電圧(以下、TP電圧という。)を測定することにより知ることができる。一般に、保守点検時または異常発生時において、このTP電圧をオフラインの場合に測定し、半導体検出器1の性能確認に用いている。
【0022】
次に、リーク電流監視手段52の詳細について図2を用いて説明する。
【0023】
図2は、本発明の第1の実施の形態の半導体検出器の診断装置を示すブロック図である。
【0024】
本図に示すように、半導体検出器の診断装置は、検出部31、信号処理部32及び演算処理診断部33を有する。この検出部31は、主に、半導体検出器1及び前置増幅器2を有する。この半導体検出器1において、核種の多重波高分析が行われる。この半導体検出器1で分析された核種の出力信号は、前置増幅器2に伝達され増幅される。さらに、この半導体検出器1からリークする検出器リーク電流5を監視するリーク電流監視手段52が設けられている。
【0025】
このリーク電流監視手段52は、信号処理部32及び演算処理診断部33を有する。
【0026】
上記前置増幅器2において増幅された検出器リーク電流5は、この信号処理部32の入力信号処理部13に伝達され処理される。この検出器リーク電流5は、入力信号処理部13を介してスペクトルメモリ制御部12にも伝達される。また、後述する検出器リーク電流5を用いて必要に応じて前置増幅器2への高圧印加電圧を遮断するための高圧電源印加部14が設けられている。さらに、検出部31の液体窒素容器9の液体窒素レベルを液体窒素液位監視部15で監視している。この液体窒素液位監視部15に伝達された液体窒素レベル低下信号は、高圧電源印加部14に伝達され前置増幅器2の高圧印加電圧を遮断するのに用いられる。
【0027】
上記のスペクトルメモリ制御部12、入力信号処理部13及び高圧電源印加部14からの信号は、伝送インターフェース17を介して、演算処理診断部33の伝送インターフェース17を介してコマンド・データ授受機能20に伝達される。このコマンド・データ授受機能20で受けた信号は、データ収集診断部19に伝達される。また、処理周期管理部21にも伝達される。
【0028】
このように構成された本実施の形態において、半導体検出器1からリークする検出器リーク電流5は、リーク電流監視手段52を構成する信号処理部32及び演算処理診断部33により処理される。この信号処理部32の入力信号処理部13において、通常の検出器信号出力以外に、前置増幅器2のTP電圧(Vtp)を測定システム内に取り込める構成としている。このように、前置増幅器2のTP電圧を測定システム内に伝達できるように構成しているので、半導体検出器1からリークした検出器リーク電流(IL)5を自動的に常時監視することができる。
【0029】
本実施の形態によれば、TP電圧(Vtp)の測定データをシステム内に取り込むことにより、半導体検出器1からリークしたリーク電流(IL)5の常時監視が可能となる。上述のように、半導体検出器1からリークしたリーク電流(IL)5を人間系を介さないで自動的に常時監視できるので、半導体検出器1の性能劣化診断を精度よく行うことができる。
【0030】
このように、検出器性能劣化の要因である検出器のリーク電流5を監視することが可能となり、従来技術では不可能であったような核種分析等の測定精度の悪化が測定データとして現れる以前に警報を発することができ、事前に検出器性能劣化対策を講じることが可能となった。また、リーク電流の警報を半導体検出器への高圧印加電圧の遮断条件として付加することも可能となり、半導体検出器1による測定データの精度の向上を図ることができる。
【0031】
次に、リーク電流監視手段52の変形例について説明する。ここでは、バックグラウンド(以下、BGという。)測定時において自動的に検出器性能劣化を診断できるリーク電流監視手段52について述べる。
【0032】
上記半導体検出器1からのリーク電流(IL)5は一般に値が小さいために、リーク電流監視手段52は、検出器への入力信号が極めて少ないときに用いると有効である。
【0033】
このために、BG測定時等のように測定対象試料が半導体検出器1に装荷されていないことが判断できるとき(以下、無信号時という。)に、自動的にリーク電流を監視するものである。
【0034】
このように構成された本実施の形態において、図2の演算処理診断部33において、処理周期管理部21により無信号時と判断されたときに、信号処理部32へコマンドが送信される。このコマンドは信号処理部32を経由して検出部31に送信される。検出部31の前置増幅器2の図1に示すTP電圧端子3においてテストポイント電圧(Vtp)が測定される。このテストポイント電圧(Vtp)を測定することにより、BG測定時の検出器リーク電流(IL)5に相当するデータを取得することができる。
【0035】
本実施の形態によれば、BG測定等を定期的に実施することにより、特別な操作を必要とせずに半導体検出器1等の検出器性能診断データを収集することができる。すなわち、検出器性能劣化の要因である検出器の検出器リーク電流5を監視することが可能となり、従来技術では不可能であったような核種分析等の測定精度の悪化が測定データとして現れる以前に事前に把握することが可能となり、警報を発することができる。また、リーク電流に係る警報を半導体検出器への高圧印加電圧の遮断条件として付加することも可能となり、検出器による測定データの精度の向上を図ることができる。
【0036】
次に、リーク電流監視手段52の他の変形例について説明する。ここでは、演算処理診断部33のデータ収集診断部19において無信号時に自動的に監視された検出器リーク電流5が保存され、さらにこのデータのドリフトがある設定値を越えたときに異常警報信号を発生する警報手段について述べる。このドリフトとは、半導体検出器1の指示値が、入力の変化がないのに周囲条件の変化等が原因でゆっくりと変化することをいう。
【0037】
上記検出部31において前置増幅器2のTP電圧端子3においてテストポイント電圧(Vtp)が測定される。この測定されたテストポイント電圧(Vtp)は、信号処理部32を経由して演算処理診断部33のデータ収集診断部19に伝達される。このデータ収集診断部19において、テストポイント電圧(Vtp)は時系列順に並べて管理される。また、データ収集診断部19において、時系列順に並べられて管理されているテストポイント電圧(Vtp)は、長期的なドリフト傾向の有無を判定するのに用いられる。このデータドリフトがある所定の設定値を越えたときは、半導体検出器1が性能劣化していると診断される。この診断結果は、図示しない警報手段を介して警報が発信される。
【0038】
本実施の形態によれば、半導体検出器1の性能劣化を短期的又は単発的な点検ではチェック出来ないようなときに、長期的なドリフト傾向の有無を監視し判定して、長期的傾向により半導体検出器1の性能劣化を自動的に診断することができる。
【0039】
次に、リーク電流監視手段52のさらに他の変形例について説明する。ここでは、演算処理診断部33のデータ収集診断部19において無信号時に自動的に監視された検出器リーク電流5が保存され、さらに、このデータドリフトがある設定値を越えたときに異常警報信号を発生する警報手段について述べる。つまり、上記リーク電流監視手段52を設けることにより、無信号時における検出器リーク電流5を用いて操作員が必要に応じて警報信号を発生させることにより、半導体検出器1の性能劣化を診断するものである。
【0040】
このように構成された本実施の形態において、まず、操作員が実行を選択する。そうすると、演算処理診断部33から信号処理部32へコマンドが送信される。この信号処理部32において、高圧電源印加部14から印加する高圧電源電圧が加減制御される。この加減制御された高圧電源電圧は、検出部31内の前置増幅器2に出力電圧として印加される。なお、上記の演算処理診断部33には、検出器リーク電流5に相当するデータが収集されている。
【0041】
また、演算処理診断部33のデータ収集診断部19において、各高圧電源電圧値毎の出力電圧値変化が特性情報として収集されている。この収集された出力電圧値変化と事前に定めた特性パターンの基準値とを比較検討する。この出力電圧値変化が基準値を超える場合には、半導体検出器1の性能劣化と診断し、図示しない警報手段より警報を発生させることができる。
【0042】
本実施の形態によれば、通常運用時には煩雑な作業を必要とする高圧電源電圧の加減制御によるリーク電流値の変化特性を自動的に把握することができる。かくして、半導体検出器1の性能劣化を自動的に診断することが可能となる。
【0043】
次に、リーク電流監視手段52のさらに他の変形例について説明する。ここでは、リーク電流監視手段52の検出器リーク電流5を用いて操作員が検出器性能劣化を診断し必要に応じて警報信号を発生させる警報手段について述べる。
【0044】
演算処理診断部33において、図1に示す半導体検出器1の検出器リーク電流5を監視することができる。この検出器リーク電流5を監視することにより、半導体検出器1の検出器性能劣化の警報信号を発生することができる。この警報信号をリーク電流異常信号として信号処理部32の高圧電源印加部14に伝達することにより、検出部31の半導体検出器1の高圧印加電圧を遮断することができる。
【0045】
本実施の形態によれば、従来より検出器保護のために用いられている液体窒素液位監視部15による液体窒素レベル低下信号を受けて前置増幅器2への高圧印加電圧の遮断と同様に、検出器リーク電流異常信号を用いて必要に応じて前置増幅器2への高圧印加電圧を遮断することができる。かくして、半導体検出器1の性能劣化の診断を自動的に精度よく行うことができる。
【0046】
図3は、本発明の第2の実施の形態の半導体検出器の診断装置の概略構成を示す正面図である。本図において、半導体検出器1及びクライオスタット8の真空密封状態部42を示している。
【0047】
一般に、図1に示す半導体検出器1の結晶7は、熱振動によるリーク電流を低減するためにクライオスタット(cryostat)8に内蔵され液体窒素により冷却されている。クライオスタット8は、低温恒温装置や低温恒温槽といわれている。クライオスタット8は、低温を保持し制御するための装置で、この容器の壁には真空を利用する等して高度の断熱性を持たせている。ここでは、冷熱源として、図2に示す液体窒素容器9から供給される液体窒素により冷却されている。この半導体検出器1の熱絶縁及び結晶7表面への不純物付着を防止するために、半導体検出器1及びクライオスタット8の液体窒素冷却部であるコールドフィンガ45は真空密封状態部42により仕切られ真空密封状態に保持されている。この半導体検出器1及びクライオスタット8を真空密封状態に保持する真空密封状態部42には、真空状態監視手段53を構成する真空計43がバルブ44を介して装着されている。
【0048】
このように構成された本実施の形態において、半導体検出器1は、結晶7の熱振動によるリーク電流を低減するためにクライオスタット8に内蔵され液体窒素により冷却される。また、この半導体検出器1及びクライオスタット8を真空密封状態に保持する真空密封状態部42には、真空計43が装着されている。この真空計43により真空度を自動的に測定することができる。この測定された真空度に関する真空度データは、演算処理診断部33のデータ収集診断部19に伝達される。
【0049】
本実施の形態によれば、半導体検出器1及びクライオスタット8を内蔵する真空密封状態部42に真空状態監視手段53を構成する真空計43を設けることにより、半導体検出器1の真空密封状態を長期的にわたって監視することができ、半導体検出器1の性能劣化を自動的に診断することができる。また、検出器性能劣化の要因である真空状態を監視することが可能となり、核種分析等の直線性や分解能等の測定精度の悪化が測定データとして現れる以前に事前に把握することが可能となり、操作員に警報として通知することができる。さらに、真空状態の警報を半導体検出器への高圧印加電圧の遮断条件としても付加することも可能となり、検出器による測定データの精度の向上を図ることができる。
【0050】
次に、真空状態監視手段53の他の変形例について説明する。ここでは、真空状態監視手段53において監視された真空度がある所定の設定値を越えたときに警報信号を発生する図示しない警報手段について述べる。
【0051】
図3に示す真空状態監視手段53を用いて、半導体検出器1及びクライオスタット8を内蔵する真空密封状態部42の真空度が測定される。この測定された真空度に関する真空度データは、図2に示す演算処理診断部33のデータ収集診断部19へ伝達される。この演算処理診断部33において、伝達された真空度データは、データ収集診断部19において時系列順に並べて管理される。このデータ収集診断部19において、長期的な真空度低下傾向の有無が判定される。この真空度の低下がある所定の設定値を越えたときに、半導体検出器1の真空度が低下したと診断され、図示しない警報手段により警報を発生させることができる。
【0052】
本実施の形態によれば、半導体検出器1の真空度の低下の値を用いて必要に応じて高圧電源印加部14を用いて高圧印加電圧を遮断することができる。かくして、これまで監視できなかった半導体検出器1の真空密封状態が監視可能となり、長期的傾向にある真空度低下を自動的に診断することができる。
【0053】
次に、真空状態監視手段53のさらに他の変形例について説明する。ここでは、真空状態監視手段53において監視された真空度がある所定の設定値を越えたときに半導体検出器1の高圧印加電圧を遮断する手段について述べる。
【0054】
演算処理診断部33において、真空状態監視手段53を用いて、半導体検出器1及びクライオスタット8を内蔵する真空密封状態部42の真空度が測定される。この真空度を監視することにより検出器真空度低下の警報を発することができる。この警報を真空度異常信号として信号処理部32の高圧電源印加部14に伝達される。この高圧電源印加部14から真空度異常信号が伝達され半導体検出器1の高圧印加電圧が遮断される。
【0055】
本実施の形態によれば、真空度異常信号を用いて必要に応じて高圧印加電圧を遮断することができる。かくして、半導体検出器1の性能劣化の診断を自動的に精度よく行うことができる。
【0056】
さらに、本発明は、上述したような各実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の各実施の形態を組み合わせて、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】半導体検出器及び前置増幅器の電気的回路を示すブロック図。
【図2】本発明の第1の実施の形態の半導体検出器の診断装置を示すブロック図。
【図3】本発明の第2の実施の形態の半導体検出器の診断装置の概略構成を示す正面図。
【符号の説明】
【0058】
1…半導体検出器、2…前置増幅器、3…TP電圧端子、4…プリアンプ電源コネクタ、5…検出器リーク電流、6…信号出力端子、7…結晶、8…クライオスタット、9…液体窒素容器、12…スペクトルメモリ制御部、13…入力信号処理部、14…高圧電源印加部、15…液体窒素液位監視部、17、18…伝送インターフェース、19…データ収集診断部、20…コマンド・データ授受機能、21…処理周期管理部、22…液体窒素液位監視部、31…検出部、32…信号処理部、33…演算処理診断部、42…真空密封状態部、43…真空計、44…バルブ、45…コールドフィンガ(液体窒素冷却部)、52…リーク電流監視手段、53…真空状態監視手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性核種の多重波高分析に用いられる半導体検出器の診断装置において、
前記核種を検出する半導体検出器と、
この半導体検出器で分析された核種の出力信号を増幅する前置増幅器と、
前記半導体検出器の検出器リーク電流を監視するリーク電流監視手段と、
を有することを特徴とする半導体検出器の診断装置。
【請求項2】
前記リーク電流監視手段は、無信号時に検出器リーク電流を監視し検出器性能劣化を診断するデータ収集診断部を具備すること、を特徴とする請求項1記載の半導体検出器の診断装置。
【請求項3】
前記データ収集診断部において前記無信号時に自動的に監視された検出器リーク電流が保存され、この検出器リーク電流に係るデータドリフトがある設定値を越えたときに警報信号を発生する警報手段をさらに具備すること、を特徴とする請求項2記載の半導体検出器の診断装置。
【請求項4】
前記リーク電流監視手段の検出器リーク電流を用いて操作員が検出器性能劣化を診断し必要に応じて警報信号を発生させる警報手段をさらに具備すること、を特徴とする請求項1記載の半導体検出器の診断装置。
【請求項5】
前記警報信号が入力され前記半導体検出器の高圧印加電圧を遮断する高圧印加電圧部をさらに具備すること、を特徴とする請求項3又は4記載の半導体検出器の診断装置。
【請求項6】
放射性核種の多重波高分析に用いられる半導体検出器の診断装置において、
前記核種を検出する半導体検出器と、
この半導体検出器の結晶を冷却し低温状態に保持するクライオスタットと、
このクライオスタットにより冷却された半導体検出器の結晶の真空状態を監視する真空状態監視手段と、
を有することを特徴とする半導体検出器の診断装置。
【請求項7】
前記真空状態監視手段において監視された真空度がある所定の設定値を越えたときに警報信号を発生する警報手段をさらに具備すること、を特徴とする請求項6記載の半導体検出器の診断装置。
【請求項8】
前記警報信号が入力され前記半導体検出器の高圧印加電圧を遮断する高圧印加電圧遮断手段をさらに具備すること、を特徴とする請求項7記載の半導体検出器の診断装置。
【請求項9】
放射性核種の多重波高分析に用いられる半導体検出器の診断方法において、
前記核種の検出を前記半導体検出器により行う波高分析ステップと、
この半導体検出器で分析された核種の出力信号を前置増幅器により増幅する増幅ステップと、
前記半導体検出器よりリークした検出器リーク電流をリーク電流監視手段により監視するリーク電流監視ステップと、
を有することを特徴とする半導体検出器の診断方法。
【請求項10】
放射性核種の多重波高分析に用いられる半導体検出器の診断方法において、
前記核種の検出を前記半導体検出器により行う波高分析ステップと、
この半導体検出器の結晶をクライオスタットにより冷却し低温状態に保持する冷却ステップと、
このクライオスタットにより冷却された半導体検出器の結晶の真空状態を真空状態監視手段により監視する真空状態監視ステップと、
を有することを特徴とする半導体検出器の診断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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