説明

半導体装置およびその製造方法ならびに携帯電話機

【課題】封止体の表面に形成されるシールド膜が封止体の表面から剥離して、シールド膜の一部が封止体の表面から膨れることを抑制できる技術を提供する。
【解決手段】本願発明における特徴は、製品識別用マーク形成領域AR1を囲むように剥離防止用マーク形成領域AR2が設けられており、この剥離防止用マーク形成領域AR2の内部に複数の剥離防止用マークEMKが形成されている点にある。つまり、本願発明では、封止体の表面領域のうち、製品識別用マーク形成領域AR1と異なる領域を剥離防止用マーク形成領域AR2と定義し、この剥離防止用マーク形成領域AR2内に複数の剥離防止用マークEMKを形成している点に特徴がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造技術ならびに携帯電話機に関し、特に、シールド膜を備えた半導体装置に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2005−109306号公報(特許文献1)には、パッケージを構成する封止体の表面に対してエッチング処理を施すことにより、封止体と、封止体の表面に形成される無電解銅めっき皮膜との密着性を向上させる技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−109306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、GSM(Global System for Mobile Communications)(登録商標)方式、PCS(Personal Communication Systems)方式、PDC(Personal Digital Cellular)方式、およびCDMA(Code Division Multiple Access)方式といった通信方式に代表される移動体通信機器(例えば、携帯電話機)が世界的に普及している。
【0005】
一般に、携帯電話機では、ベースバンド部で処理されたベースバンド信号をRFIC5で送信信号(無線周波数信号)に変調し、変調された送信信号の電力を電力増幅器で増幅する。そして、送信信号は、送信帯域を通過帯域とする送信フィルタを介して、アンテナから電波として放射される。一方、アンテナで受信された受信信号は、受信帯域を通過帯域とする受信フィルタを介して低雑音増幅器に入力される。そして、低雑音増幅器では、受信信号が増幅され、増幅された受信信号はRFIC5でベースバンド信号に復調される。その後、復調されたベースバンド信号はベースバンド部で処理される。このようにして、携帯電話機では、送受信が可能となっている。
【0006】
上述したように、携帯電話機では、送信信号の電力を増幅するために電力増幅器が使用される。この電力増幅器は、例えば、パワートランジスタとしてのLDMOSFETを形成した半導体チップを有しており、この半導体チップが配線基板上に実装されて電力増幅器を含む電力増幅モジュールが形成されている。この電力増幅モジュールは、大きな電力を取り扱うため、電磁波の大きな発生源となる。このことから、電力増幅モジュールで発生した電磁波が携帯電話機に搭載されている他の半導体装置に影響を及ぼすことを抑制するため、電力増幅モジュールを構成するパッケージの表面にシールド膜を形成することが行なわれている。つまり、パッケージを構成する封止体の表面に基準電位(GND電位)と電気的に接続されたシールド膜を形成することにより、電力増幅モジュールで発生した電磁波が外部へ漏洩することを抑制するとともに、外部に存在する電磁波が電力増幅モジュールの内部へ侵入することも抑制することができる。
【0007】
ところが、本発明者が検討したところ、封止体の表面に形成されるシールド膜が封止体の表面から剥離して、シールド膜の一部が封止体の表面から膨れる(浮く)不具合が生じることが判明した。
【0008】
本発明の目的は、封止体の表面に形成されるシールド膜が封止体の表面から剥離して、シールド膜の一部が封止体の表面から膨れることを抑制できる技術を提供することにある。
【0009】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0011】
代表的な実施の形態による半導体装置は、配線基板の表面に搭載された半導体チップなどを封止する封止体を備える。このとき、封止体の表面には、製品を識別するための凹形状をした製品識別用マークと、封止体の表面からシールド膜が剥離することを防止するための凹形状をした剥離防止用マークとが形成されており、この封止体の表面にシールド膜が形成されている。
【0012】
また、代表的な実施の形態による半導体装置の製造方法は、半導体チップを覆うように、配線基板上に封止体を形成した後、封止体の表面に、凹形状をした製品識別用マークと、凹形状をした剥離防止用マークとを形成する。そして、第1ブレードを使用して、封止体を切断し、かつ、配線基板の途中までダイシングする。これにより、配線基板の側面から基準配線を露出させた後、露出している配線基板の側面および封止体の表面にわたってシールド膜を形成する。続いて、第1ブレードよりも厚さの薄い第2ブレードを使用したダイシングにより、配線基板を切断するものである。
【0013】
また、代表的な実施の形態による半導体装置の製造方法は、半導体チップを覆うように、配線基板上に封止体を形成した後、封止体の表面に、凹形状をした製品識別用マークを形成する。その後、第1ブレードを使用して、封止体を切断し、かつ、配線基板の途中までダイシングすることにより、配線基板の側面から基準配線を露出する。さらに、露出している配線基板の側面および封止体の表面にわたってシールド膜を形成した後、第1ブレードよりも厚さの薄い第2ブレードを使用したダイシングにより、配線基板を切断する。ここで、封止体を形成する工程は、突起部が設けられた上金型と、下金型との間に形成されるキャビティ内に前記半導体チップが配置されるように、半導体チップを搭載した配線基板を上金型と下金型で挟み込む工程と、キャビティ内に樹脂を注入することにより、前記半導体チップを覆う前記封止体を形成する工程とを有する。このとき、封止体の表面には、突起部の形状を反映した凹形状の剥離防止用マークが形成される。
【0014】
代表的な実施の形態による携帯電話機は、電力増幅器を含む電力増幅モジュールを有し、この電力増幅モジュールは、配線基板の表面に搭載された半導体チップなどを封止する封止体を備える。このとき、封止体の表面には、製品を識別するための凹形状をした製品識別用マークと、封止体の表面からシールド膜が剥離することを防止するための凹形状をした剥離防止用マークとが形成されており、この封止体の表面にシールド膜が形成されている。
【発明の効果】
【0015】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0016】
封止体の表面に形成されるシールド膜が封止体の表面から剥離して、シールド膜の一部が封止体の表面から膨れることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】携帯電話機の送受信部の構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態1における電力増幅器の回路ブロックを示したものである。
【図3】増幅回路の構成例を示す図である。
【図4】LDMOSFETの断面構造を示す断面図である。
【図5】電力増幅モジュールの実装構成を示す平面図である。
【図6】従来の電力増幅モジュールの実装構成を示す上面図である。
【図7】実施の形態1における電力増幅モジュールの外観構成を示す上面図である。
【図8】実施の形態1における電力増幅モジュールの断面構造を示す断面図である。
【図9】変形例1における電力増幅モジュールの外観構成を示す平面図である。
【図10】変形例2における電力増幅モジュールの外観構成を示す平面図である。
【図11】実施の形態1における電力増幅モジュールの製造工程の流れを示すフローチャートである。
【図12】実施の形態1における電力増幅モジュールの製造工程を示す平面図である。
【図13】図12に続く電力増幅モジュールの製造工程を示す平面図である。
【図14】図13に続く電力増幅モジュールの製造工程を示す平面図である。
【図15】図14に続く電力増幅モジュールの製造工程を示す平面図である。
【図16】図15に続く電力増幅モジュールの製造工程を示す平面図である。
【図17】図16に続く電力増幅モジュールの製造工程を示す平面図である。
【図18】図17に続く電力増幅モジュールの製造工程を示す平面図である。
【図19】実施の形態1における電力増幅モジュールの製造工程を示す断面図である。
【図20】図19に続く電力増幅モジュールの製造工程を示す断面図である。
【図21】図20に続く電力増幅モジュールの製造工程を示す断面図である。
【図22】図21に続く電力増幅モジュールの製造工程を示す断面図である。
【図23】図22に続く電力増幅モジュールの製造工程を示す断面図である。
【図24】図23に続く電力増幅モジュールの製造工程を示す断面図である。
【図25】図24に続く電力増幅モジュールの製造工程を示す断面図である。
【図26】図25に続く電力増幅モジュールの製造工程を示す断面図である。
【図27】実施の形態2における電力増幅モジュールの製造工程を示す断面図である。
【図28】図27に続く電力増幅モジュールの製造工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
【0019】
また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
【0020】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0021】
同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0022】
また、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、図面をわかりやすくするために平面図であってもハッチングを付す場合がある。
【0023】
(実施の形態1)
<携帯電話機の構成および動作>
図1は、携帯電話機の送受信部の構成を示すブロック図である。図1に示すように、携帯電話機1は、アプリケーションプロセッサ2、メモリ3、ベースバンド部4、RFIC5、電力増幅器6、SAW(Surface Acoustic Wave)フィルタ7、アンテナスイッチ8およびアンテナ9を有している。
【0024】
アプリケーションプロセッサ2は、例えば、CPU(Central Processing Unit、中央処理装置)、画像処理部、音楽処理部等の複数の回路から構成され、携帯電話機1のアプリケーション機能を実現する機能を有している。具体的には、メモリ3から命令を読みだして解読し、解読した結果に基づいて各種の演算や制御することによりアプリケーション機能を実現している。メモリ3は、データを記憶する機能を有しており、例えば、アプリケーションプロセッサ2を動作させるプログラムや、アプリケーションプロセッサ2での処理データを記憶するように構成されている。また、メモリ3は、アプリケーションプロセッサ2だけでなく、ベースバンド部4ともアクセスできるようになっており、ベースバンド部4で処理されるデータの記憶にも使用できるようになっている。
【0025】
ベースバンド部4は、送信時には、操作部を介したユーザ(通話者)からの音声信号(アナログ信号)をデジタル処理してベースバンド信号を生成できるように構成されている。一方、受信時には、デジタル信号であるベースバンド信号から音声信号を生成できるように構成されている。
【0026】
RFIC5は、送信時にはベースバンド信号を変調して無線周波数の信号を生成し、受信時には、受信信号を復調してベースバンド信号を生成することができるように構成されている。電力増幅器6は、微弱な入力信号と相似な大電力の信号を電源から供給される電力で新たに生成して出力する回路である。SAWフィルタ7は、受信信号から所定の周波数帯の信号だけを通過させるように構成されている。
【0027】
アンテナスイッチ8は、携帯電話機1に入力される受信信号と携帯電話機1から出力される送信信号とを分離するためのものであり、アンテナ9は、電波を送受信するためのものである。
【0028】
携帯電話機1は、上記のように構成されており、以下に、その動作について簡単に説明する。まず、信号を送信する場合について説明する。ベースバンド部4で音声信号などのアナログ信号をデジタル処理することにより生成されたベースバンド信号は、RFIC5に入力する。RFIC5では、入力したベースバンド信号を、変調信号源およびミキサによって、無線周波数(RF(Radio Frequency)周波数)の信号に変換する。無線周波数に変換された信号は、RFIC5から電力増幅器6に出力される。電力増幅器6に入力した無線周波数の信号は、電力増幅器6で増幅された後、アンテナスイッチ8を介してアンテナ9より送信される。
【0029】
次に、信号を受信する場合について説明する。アンテナ9により受信された無線周波数の信号(受信信号)は、SAWフィルタ7を通過した後、RFIC5に入力する。RFIC5では、入力した受信信号を増幅した後、変調信号源およびミキサによって、周波数変換を行なう。そして、周波数変換された信号の検波が行なわれ、ベースバンド信号が抽出される。その後、このベースバンド信号は、RFIC5からベースバンド部4に出力される。このベースバンド信号がベースバンド部4で処理され、音声信号が出力される。
【0030】
上述したように、デジタル携帯電話機から信号を送信する際、電力増幅器6によって信号は増幅された後、アンテナスイッチ8を介してアンテナ9から出力される。
【0031】
<電力増幅器の回路ブロック構成>
以下では、上述した電力増幅器6の回路ブロック構成について説明する。図2は、本実施の形態1における電力増幅器6の回路ブロックを示したものである。図2を参照しながら、電力増幅器6の回路ブロックについて説明する。図2において、電力増幅器6は、制御回路CU、複数の増幅部(第1乃至第3増幅部)Q1a〜Q3aおよび複数の増幅部(第4乃至第6増幅部)Q1b〜Q3bを有している。ここで、増幅部Q1a〜Q3aによって増幅回路LBが構成され、増幅部Q1b〜Q3bによって増幅回路HBが構成されている。
【0032】
この電力増幅器6は、2種類の周波数帯域の信号を増幅できるようになっている。すなわち、一方は、第1の周波数を利用したGSM(Global System for Mobile Communication)方式であり、周波数帯域として880MHz〜915MHz(GSM低帯域)を使用している信号を増幅できるようになっている。また、他方は、第2の周波数を利用したDCS(Digital Communication System 1800)方式であり、周波数帯域として1710MHz〜1785MHz(GSM高帯域)を使用している信号を増幅できるようになっている。
【0033】
上記した電力増幅器6の中にある制御回路CUは、制御信号を入力し、入力した制御信号に基づいて、増幅部Q1a〜Q3aおよび増幅部Q1b〜Q3bの各増幅部を制御するように構成されている。この制御回路CUは、増幅部Q1a〜Q3aを制御する制御信号(Vcontrol(GSM))と増幅部Q1b〜Q3bを制御する制御信号(Vcontrol(DCS))とをそれぞれ別に入力することができるようになっており、増幅部Q1a〜Q3aを使用する場合は、制御信号Vcontrol(GSM)に基づいて制御し、増幅部Q1b〜Q3bを使用する場合は、制御信号Vcontrol(DCS)に基づいて制御するようになっている。このようにして、本実施の形態1の電力増幅器6は、2種類の周波数帯域における信号の増幅を制御している。制御回路CUは、例えばMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)などから構成されている。
【0034】
増幅部Q1a〜Q3aは、GSM方式の入力電力(入力信号)Pin(GSM)を入力し、この入力電力Pin(GSM)を3段階にわたって増幅するように構成されている。すなわち、入力電力Pin(GSM)をまず増幅部Q1aで増幅した後、増幅部Q1aで増幅した電力を増幅部Q2aで増幅する。そして、増幅部Q2aで増幅した電力は、終段の増幅部Q3aで増幅された後、電力増幅器6から出力信号(出力電力Pout(GSM))として出力される。このように、増幅部Q1a〜Q3aでは、GSM方式による電力を増幅することができるようになっている。
【0035】
同様に、増幅部Q1b〜Q3bは、DCS方式の入力電力(入力信号)Pin(DCS)を入力して、3段階にわたって増幅するように構成されている。すなわち、入力電力Pin(DCS)を増幅部Q1bで増幅した後、さらに増幅部Q2bで増幅する。続いて、増幅部Q2bで増幅された電力は、増幅部Q3bでさらに増幅された後、電力増幅器6から出力信号(出力電力Pout(DCS))として出力される。このように増幅部Q1b〜Q3bでは、DCS方式による電力を増幅することができるようになっている。
【0036】
<増幅回路の構成>
続いて、図2に示す増幅回路LBの構成例について説明する。図3は、増幅回路LBの構成例を示す図である。なお、図3には図示していないが、図2に示す増幅回路HBも増幅回路LBと同様の構成をしているため説明は省略する。
【0037】
図3に示すように、増幅回路LBは、LDMOSFETからなる複数の増幅部Q1a〜増幅部Q3aと、段間整合回路MMNa、MMNbとを有している。増幅部Q1aのゲート電極は、図示しない入力整合回路に接続されており、増幅部Q1aのドレイン電極は、段間整合回路MMNaの入力と接続されている。そして、段間整合回路MMNaの出力は、増幅部Q2aのゲート電極に接続されており、増幅部Q2aのドレイン電極は段間整合回路MMNbの入力に接続されている。さらに、段間整合回路MMNbの出力は、増幅部Q3aのゲート電極に接続されており、増幅部Q3aのドレイン電極は、図示しない出力整合回路と接続されている。
【0038】
増幅部Q1a〜増幅部Q3aのドレイン電極は電源電位Vdd1に接続されており、増幅部Q1a〜増幅部Q3aのソース電極はグランド電位に接続されている。具体的に、増幅部Q1aのソース電極はグランド電位GND1に接続され、増幅部Q2aのソース電極はグランド電位GND2に接続されている。同様に、増幅部Q3aのソース電極はグランド電位GND3に接続されている。一方、増幅部Q1a〜増幅部Q3aのゲート電極は、制御回路CUと接続されている。
【0039】
このように構成されている増幅回路LBにおいては、図示しない入力整合回路から出力された入力信号が増幅部Q1aに入力する。そして、増幅部Q1aでは、制御回路CUからのバイアス電圧に基づいて入力信号を増幅して増幅信号を出力する。その後、増幅部Q1aで増幅された信号は、段間整合回路MMNaを通って、増幅部Q2aに入力する。増幅部Q2aでは、制御回路CUからのバイアス電圧に基づいて増幅部Q1aから出力された信号を増幅して出力する。その後、増幅部Q2aで増幅された信号は、段間整合回路MMNbを通って、増幅部Q3aに入力する。増幅部Q3aでは、制御回路CUからのバイアス電圧に基づいて増幅部Q2aから出力された信号を増幅して出力する。以上のようにして、増幅部Q1a〜増幅部Q3aを有する増幅回路LBから入力信号を増幅した増幅信号を出力することができる。
【0040】
次に、上述した電力増幅器6のデバイス構成について説明する。電力増幅器6は、例えば、1つの半導体チップに形成されている。半導体チップ内(または表層部分)には、増幅回路LB、HBを構成する半導体増幅素子(例えばLDMOSFET)、制御回路CUを構成する半導体素子(MOSFET)および整合回路(段間整合回路)MMNa、MMNbを構成する受動素子(受動部品)などが形成されている。このように、半導体チップには、電力増幅器6を構成する半導体素子が形成されている。半導体チップは、例えば、単結晶シリコンなどからなる半導体基板(半導体ウェハ)に半導体集積回路を形成した後、必要に応じて半導体基板の裏面研削を行ってから、ダイシングなどにより半導体基板を各半導体チップに分離したものである。以下に、増幅回路LB、HBを構成する半導体増幅素子(パワートランジスタ)であるLDMOSFETのデバイス構造について説明する。
【0041】
<LDMOSFETのデバイス構造>
図4は、LDMOSFETの断面構造を示す断面図である。図4において、p型のシリコン単結晶からなる半導体基板1S上には、p型の半導体層からなるエピタキシャル層EPIが形成されている。そして、半導体基板1Sには、溝DTが形成されており、この溝DTには、例えばp型ポリシリコン膜が埋め込まれてp型打ち抜き層PLが形成されている。さらに、半導体基板1Sの表面には、p型ウェルPWLが形成されている。
【0042】
次に、半導体基板1Sの表面には、ゲート絶縁膜GOXが形成されており、このゲート絶縁膜GOX上にゲート電極Gおよびキャップ絶縁膜CAPが形成されている。ゲート絶縁膜GOXは、例えば、薄い酸化シリコン膜などからなり、ゲート電極Gはポリシリコン膜から形成されている。そして、ゲート電極Gに整合して、n型オフセットドレイン領域ODR1が形成されるとともに、n型ソース領域SR1が形成されている。n型ソース領域SR1に隣接するようにp型ハロー領域HALOが形成されている。
【0043】
ゲート電極Gの両側の側壁には、サイドウォールSWが形成されており、このサイドウォールSWに整合して、n型オフセットドレイン領域ODR2およびn型ドレイン領域DR1が形成されている。同様に、n型ソース領域SR1の外側には、サイドウォールSWに整合して、n型ソース領域SR2が形成されている。そして、n型ソース領域SR2の外側にp型半導体領域PR1が形成されている。
【0044】
このように構成されたLDMOSFET上には、窒化シリコン膜SNおよび酸化シリコン膜の積層膜からなる層間絶縁膜IL1が形成されており、この層間絶縁膜IL1を貫通するコンタクトホールCNT1が形成されている。コンタクトホールCNT1には、例えばバリア膜とタングステン膜からなるプラグPLG1が埋め込まれている。
【0045】
プラグPLG1を形成した層間絶縁膜IL1上には、例えばアルミニウム膜からなる第1層配線L1が形成され、この第1層配線L1を覆うように酸化シリコン膜からなる層間絶縁膜IL2が形成されている。この層間絶縁膜IL2には、第1層配線L1へ貫通する接続孔CNT2が形成されており、この接続孔CNT2にプラグPLG2が埋め込まれている。そして、プラグPLG2を形成した層間絶縁膜IL2上には、第2層配線L2が形成されている。この第2層配線L2より上層には、必要に応じて他の配線層や層間絶縁膜が形成されるが、図4では省略する。なお、図4に示すLDMOSFETが複数個並列に接続されて、例えば、図3に示す増幅部Q1a、増幅部Q2aおよび増幅部Q3aが形成される。
【0046】
このように構成されているLDMOSFETの第1利点は、図4に示すように、n型ソース領域SR2が半導体基板1Sと電気的に接続されている点である。つまり、n型ソース領域SR2は、プラグPLG1→第1層配線L1→p型半導体領域PR1→p型打ち抜き層PLを介して半導体基板1Sと電気的に接続されている。これにより、LDMOSFETにおいては、半導体基板1Sの裏面から基準電位(GND電位)をn型ソース領域SR2に供給することができる。このことは、n型ソース領域SR2に基準電位を供給するために、n型ソース領域SR2を半導体チップの表面に形成されるパッドと多層配線を介して接続し、半導体チップが搭載される配線基板とパッドとをワイヤ(金線)で接続する必要がないことを意味する。すなわち、ワイヤを使用してn型ソース領域SR2に基準電位(GND電位)を供給する場合、ワイヤによる寄生インダクタンスが生じ、電力増幅器6における電力利得が低下してしまうことになるのである。なぜなら、電力利得は、LDMOSFETのn型ソース領域SR2に接続されるインピーダンス(ソースインピーダンス)の大きさに反比例するため、ワイヤによる寄生インダクタンスが発生すると、ソースインピーダンスが大きくなり、電力利得が低下してしまうからである。したがって、LDMOSFETでは、n型ソース領域SR2と半導体基板1Sとを電気的に接続することにより、半導体基板1Sの裏面からn型ソース領域SR2に基準電位を供給する構成を取っている。この結果、n型ソース領域SR2に基準電位を供給するために、寄生インダクタンスが大きくなるワイヤを使用する必要がなくなるので、LDMOSFETによれば、ソースインピーダンスを小さくすることができる。このことから、LDMOSFETによれば、電力利得の低下を抑制することができる。さらに、LDMOSFETでは、半導体基板1Sに導入する導電型不純物の不純物濃度を高くしているため低抵抗(〜mΩ・cm)となっている。この構成により、ソース抵抗を下げることができるので、この観点からも、ソースインピーダンスを下げることができる。つまり、LDMOSFETでは、n型ソース領域SR2と半導体基板1Sとを電気的に接続する構成と、半導体基板1Sの不純物濃度を高濃度とする構成とを採用することにより、ソースインピーダンスを下げることができるため、電力利得の向上を図ることができるのである。
【0047】
さらに、LDMOSFETの第2利点は、図4に示すように、ゲート電極G直下のチャネル領域と、n型ドレイン領域DR1との間にオフセット領域(n型オフセットドレイン領域ODR1およびn型オフセットドレイン領域ODR2)を設けている点にある。これにより、チャネル領域とn型ドレイン領域DR1との距離を離すことができるとともに、オフセット領域における不純物濃度を最適化することにより、LDMOSFETにおけるドレイン耐圧を向上させることができる。
【0048】
<本発明者が新たに見出した課題>
上述した電力増幅器6は、電力増幅モジュールとして実装構成されている。図5は、電力増幅モジュールPAの実装構成を示す平面図である。図5に示すように、電力増幅モジュールPAは、矩形形状をした配線基板WB上に半導体チップCHPと受動部品(チップ部品)SMDが搭載されており、半導体チップCHPと受動部品SMDは、配線基板WBに形成された配線パターンによって電気的に接続されている。具体的に、半導体チップCHPの表面に形成されているパッドPDと、配線基板WBに形成されている配線パターンは、例えば、金線などからなるワイヤWで接続されている。そして、受動部品SMDも配線基板WB上に形成されている配線パターンと接続されていることから、半導体チップCHPと受動部品SMDとは、ワイヤWおよび配線パターンを介して電気的に接続されていることになる。受動部品SMDとしては、例えば、抵抗素子、インダクタ素子、あるいは、容量素子(コンデンサ)などを挙げることができる。
【0049】
半導体チップCHPには、電力増幅器6を構成するLDMOSFETが形成されており、このLDMOSFETのソース領域は、半導体チップCHPの裏面と接続されている。このとき、配線基板WB上には、基準電位(GND電位)を供給するグランドパターン(GNDパターン)が形成されており、このグランドパターン上に半導体チップCHPが搭載されている。このことから、配線基板WBのグランドパターンに印加される基準電位は、このグランドパターンと接続されている半導体チップCHPの裏面を介してLDMOSFETのソース領域に供給されることがわかる。一方、LDMOSFETのドレイン領域は、半導体チップCHPの内部に形成されている多層配線を接続され、最終的に、半導体チップCHPの表面(上面)に形成されているパッドPDと電気的に接続されている。このため、LDMOSFETのドレイン領域は、多層配線を介してパッドPDと接続され、さらに、このパッドPDがワイヤWおよび配線パターンを介して、配線基板WB上に搭載されている受動部品SMDと接続されていることになる。ここで、配線基板WB上に搭載されている受動部品SMDは、出力整合回路やローパスフィルタを構成していることから、LDMOSFETのドレイン領域は、出力整合回路やローパスフィルタと電気的に接続されていることになる。つまり、LDMOSFETで増幅された増幅信号(送信信号)は、ドレイン領域から多層配線→パッドPD→ワイヤWを介して出力整合回路に入力され、その後、出力整合回路から出力された送信信号がローパスフィルタを通過した後、電力増幅モジュールPAから出力されることになる。ここで、出力整合回路は、送信信号の反射を抑制して効率良く送信信号を伝達させる機能を有する回路であり、ローパスフィルタは、送信信号に含まれる高次高調波(ノイズ成分)を除去する機能を有する回路である。
【0050】
以上のようにして、電力増幅モジュールPAが構成されているが、実際には、配線基板WB上に搭載されている半導体チップCHPや受動部品SMDを保護するため、半導体チップCHPや受動部品SMDを覆うように樹脂からなる封止体が形成されている。ここで、電力増幅モジュールPAは、大きな電力を取り扱うため、電磁波の大きな発生源となる。このことから、電力増幅モジュールPAで発生した電磁波が携帯電話機に搭載されている他の半導体装置に影響を及ぼすことを抑制するため、電力増幅モジュールPAを構成する封止体の表面にシールド膜を形成することが行なわれている。つまり、電力増幅モジュールPAを構成する封止体の表面に基準電位(GND電位)と電気的に接続されたシールド膜を形成することにより、電力増幅モジュールPAで発生した電磁波が外部へ漏洩することを抑制するとともに、外部に存在する電磁波が電力増幅モジュールの内部へ侵入することも抑制することができる。
【0051】
ところが、本発明者が検討したところ、従来の電力増幅モジュールでは、封止体の表面に形成されるシールド膜が封止体の表面から剥離して、シールド膜の一部が封止体の表面から膨れる(浮く)不具合が生じることが明らかになった。電力増幅モジュールに、このようなシールド膜の剥離(膨れ)が発生すると、電力増幅モジュールに対して行なわれる電気的特性検査工程や顧客での実装工程で外観不良を引き起こすことになる。
【0052】
そこで、まず、本発明者は、従来の電力増幅モジュールにおいて、シールド膜の剥離(膨れ)が生じるメカニズムについて検討したので、このメカニズムについて説明する。
【0053】
図6は、従来の電力増幅モジュールPA(P)の実装構成を示す上面図である。図6に示すように、従来の電力増幅モジュールPA(P)は、矩形形状をした封止体からなる外形部を有しており、封止体の表面を覆うように、シールド膜SFが形成されている。このシールド膜SFは、例えば、銅膜とニッケル膜の積層膜から構成されている。さらに、封止体の表面には、個々の電力増幅モジュールPA(P)を識別するための製品識別用マークDMKが形成されている。例えば、この製品識別用マークDMKは、アルファベットなどの文字列および数字などの数列との組み合わせから構成されており、個々の電力増幅モジュールPA(P)に固有のマークとなっている。このため、電力増幅モジュールPA(P)に形成されている製品識別用マークDMKによって、個々の電力増幅モジュールPA(P)が他の電力増幅モジュールPA(P)から識別できるようになっている。
【0054】
この製品識別用マークDMKは、製品識別用マーク形成領域AR1に形成されているが、シールド膜SFの剥離は、この製品識別用マーク形成領域AR1の内側では起こらず、製品識別用マーク形成領域AR1の外側で起こることが判明した。すなわち、図6に示すように、製品識別用マーク形成領域AR1の外側領域に剥離部EPが形成されやすいことが明らかになった。この原因を本発明者が鋭意検討した結果、以下に示すようなメカニズムによって生じるものと推測される。
【0055】
まず、電力増幅モジュールPA(P)の製造工程では、配線基板上に半導体チップなどの部品を搭載した後、半導体チップの表面に形成されているパッドと、配線基板に形成されている配線パターンとをワイヤで接続する。そして、半導体チップや受動部品を搭載した配線基板の表面を覆うように樹脂からなる封止体を形成する。次に、例えば、レーザを封止体の表面に照射することにより、図6に示すような製品識別用マーク形成領域AR1に製品識別用マークDMKを形成する。この工程は、レーザを照射した封止体の表面を構成する樹脂を蒸発させることで、封止体の表面に凹凸形状を形成することにより行なわれる。すなわち、製品識別用マークDMKは、封止体の表面に形成された凹凸形状によって形成されることになる。その後、封止体の表面全体に対して粗面化エッチング処理を施した後、封止体の表面にシールド膜SFを形成する。続いて、電力増幅モジュールPA(P)に対して熱処理(ベーク処理)を施す。簡単に説明すると、以上のようにして、電力増幅モジュールPA(P)が形成される。
【0056】
ここで、シールド膜SFを形成する工程に着目すると、まず、封止体の表面に対して粗面化エッチング処理を施している。この粗面化エッチング処理は、封止体の表面に凹凸形状を形成し、その後に封止体の表面に形成するシールド膜SFと封止体との密着性を向上させるために行なわれる処理である。すなわち、粗面化エッチング処理は、封止体の表面に凹凸形状を形成することにより、粗面化された封止体の表面と、シールド膜SFとの界面で生じるアンカー効果による密着性の向上を図るために行なわれる処理である。
【0057】
具体的に、粗面化エッチング処理は、封止体を構成する樹脂をエッチングすることにより行なわれる。つまり、封止体は、熱伝導率を向上させるために、樹脂にフィラーを添加することが行なわれており、上述した粗面化エッチング処理は、フィラーを含む樹脂のうち樹脂だけをエッチングする。このため、粗面化エッチング処理を施した後の封止体の表面には、フィラー間に存在する樹脂が除去されるために、凹凸形状が形成されるのである。
【0058】
ところが、フィラーは樹脂中に均一に分布しているのではなく、ある程度、偏った分布をしている。このことから、フィラーが多く存在する領域では、フィラー間の樹脂が除去されることにより凹凸形状が形成されやすくなるが、フィラーが少ない領域では、樹脂だけが存在し、この樹脂が均等にエッチングされるため、凹凸形状が形成されにくく平坦に近い領域が存在することになる。すなわち、粗面化エッチング処理を実施しても、樹脂に含まれるフィラーの分布が均一でないことに起因して、凹凸形状が形成されずに平坦に近い状態の領域が存在することになる。この結果、平坦に近い状態の表面では、アンカー効果が生じにくくなるため、封止体の表面とシールド膜SFの密着性の向上が図れなくなるものと推測される。
【0059】
さらに、粗面化エッチング処理を実施した後、封止体の表面にシールド膜SFを形成するが、このシールド膜SFは、例えば、無電解めっき法によって形成される。具体的に、無電解めっき法では、封止体をめっき液内に浸漬し、封止体の表面におけるめっき液の化学反応によって、封止体の表面にシールド膜SFが形成される。ここで、封止体をめっき液に浸漬する際、空気を巻き込むことがあり、封止体の表面に気泡が付着することが考えられる。特に、封止体の表面のうち凹凸形状をしている領域よりも、平坦に近い領域には気泡が付着しやすいと考えられる。このようにして、封止体の表面に気泡が付着した状態でシールド膜SFが形成されると、封止体の表面とシールド膜SFの間に気泡が残存することになる。そして、この気泡が、シールド膜SFを形成した後に行なわれる熱処理(ベーク処理)によって加熱されて膨張する。この結果、気泡が膨張することによって、封止体の表面からシールド膜SFが剥離し、剥離部EPが形成されるものと推測される。
【0060】
以上のことをまとめると、まず、封止体を構成する樹脂には、フィラーが含有されているが、樹脂中に含有されているフィラーは均一に分布しているのではなく、ある程度、偏った分布をしている。この状態で、粗面化エッチング処理を施しても、封止体の表面に均一に凹凸形状が形成されずに、平坦に近い領域が存在する。このように、封止体の表面に平坦に近い領域が存在すると、封止体をめっき液に浸漬した場合に気泡が付着しやすいという第1要因と、アンカー効果が生じにくいという第2要因に起因して、封止体の表面とシールド膜SFの間に剥離部EPが生じるものと推測されるのである。特に、シールド膜SFを形成した後に、熱処理(ベーク処理)が実施されることにより、封止体の表面とシールド膜SFの間に剥離部EPが生じることが顕在化するものと考えられる。このメカニズムは、凹凸形状からなる製品識別用マークDMKが形成された製品識別用マーク形成領域AR1において、剥離部EPの発生が生じないことからも裏付けられているものと考えられる。
【0061】
そこで、本実施の形態1では、封止体の表面に平坦に近い領域が存在すると、封止体をめっき液に浸漬した場合に気泡が付着しやすいという第1要因と、アンカー効果が生じにくいという第2要因に起因して、封止体の表面とシールド膜SFの間に剥離部EPが生じやすくなるという知見に基づき、封止体の表面に平坦に近い領域を低減する工夫を施している。以下に、この工夫を施した本実施の形態1における技術的思想について説明する。
【0062】
<本実施の形態1における特徴>
図7は、本実施の形態1における電力増幅モジュールPAの外観構成を示す上面図である。図7に示すように、本実施の形態1における電力増幅モジュールPAは、矩形形状をした封止体からなる外形部を有しており、封止体の表面を覆うように、シールド膜SFが形成されている。このシールド膜SFは、例えば、銅膜とニッケル膜の積層膜から構成されている。これは、銅膜は酸化されやすいため、銅膜だけでシールド膜SFを形成すると、シールド膜SFの表面が酸化されてしまうことから、シールド膜SFの表面の酸化を抑制するために、銅膜上にニッケル膜を形成している。さらに、封止体の表面には、個々の電力増幅モジュールPAを識別するための製品識別用マークDMKが形成されている。例えば、この製品識別用マークDMKは、アルファベットなどの文字列および数字などの数列との組み合わせから構成されており、個々の電力増幅モジュールPAに固有のマークとなっている。このため、電力増幅モジュールPAに形成されている製品識別用マークDMKによって、個々の電力増幅モジュールPAが他の電力増幅モジュールPAから識別できるようになっている。製品識別用マークDMKは、封止体の表面領域のうち、製品識別用マーク形成領域AR1に形成されている。
【0063】
ここで、本実施の形態1における特徴は、製品識別用マーク形成領域AR1を囲むように剥離防止用マーク形成領域AR2が設けられており、この剥離防止用マーク形成領域AR2の内部に複数の剥離防止用マークEMKが形成されている点にある。つまり、本実施の形態1では、封止体の表面領域のうち、製品識別用マーク形成領域AR1と異なる領域を剥離防止用マーク形成領域AR2と定義し、この剥離防止用マーク形成領域AR2内に複数の剥離防止用マークEMKを形成している点に特徴がある。
【0064】
例えば、図6に示す従来の電力増幅モジュールPA(P)では、製品識別用マーク形成領域AR1の外側領域には、何のマークも形成されておらず、封止体の表面が存在するだけである。この場合、封止体の表面とシールド膜SFとの剥離を防止するため、粗面化エッチング処理を施しても、封止体の表面に均一に凹凸形状が形成されずに、製品識別用マーク形成領域AR1の外側領域に平坦に近い領域(平坦領域という)が存在してしまう。このように、封止体の表面に平坦領域が存在すると、封止体をめっき液に浸漬した場合に気泡が付着しやすいという第1要因と、アンカー効果が生じにくいという第2要因に起因して、封止体の表面とシールド膜SFの間に剥離部EPが生じるものと考えられる。
【0065】
これに対し、図7に示す本実施の形態1における電力増幅モジュールPAでは、製品識別用マーク形成領域AR1を囲むように剥離防止用マーク形成領域AR2が設けられており、この剥離防止用マーク形成領域AR2の内部に複数の剥離防止用マークEMKが形成されている。このため、粗面化エッチング処理の有無にかかわらず、製品識別用マーク形成領域AR1だけでなく、剥離防止用マーク形成領域AR2にも凹凸形状が形成される。この結果、平坦領域の存在を低減することができ、これによって、封止体をめっき液に浸漬した場合に気泡が付着しやすいという第1要因や、アンカー効果が生じにくいという第2要因を抑制できる結果、封止体の表面とシールド膜SFの間に剥離部(膨れ部)が生じることを抑制できる。したがって、本実施の形態1によれば、シールド膜SFの剥離(膨れ)による外観不良を抑制することができる。
【0066】
このように本実施の形態1における技術的思想は、製品識別用マーク形成領域AR1を囲むように形成されている剥離防止用マーク形成領域AR2において、なるべく、平坦領域を低減するために、複数の剥離防止用マークEMKを形成して凹凸形状を形成するというものである。これにより、例えば、剥離防止用マーク形成領域AR2に形成されてしまう平坦領域を低減することができる。ただし、複数の剥離防止用マークEMKは、一定の間隔で設けられているため、完全に平坦領域を無くすことはできないが、少なくとも、複数の剥離防止用マークEMKを所定間隔で設けることにより、平坦領域の数を低減することができるとともに、個々の平坦領域の面積を小さくできる。このことは、まず、第1に、平坦領域の面積を小さくできることから、たとえ、封止体をめっき液に浸漬した際でも、平坦領域に付着する気泡のサイズを小さくできることを意味する。平坦領域に付着する気泡のサイズを小さくできるということは、封止体の表面にシールド膜SFを形成した後の熱処理(ベーク処理)によって気泡が膨張したとしても、気泡のサイズが小さいことから、膨張した気泡の体積も小さくすることができることを意味する。このことから、封止体の表面からシールド膜SFが剥がれることを抑制できる。つまり、気泡のサイズが大きければ大きいほど、封止体の表面からシールド膜SFを剥がす力が大きくなるが、本実施の形態1によれば、気泡のサイズを小さくできるため、封止体の表面からシールド膜SFを剥がす力を小さく抑えることができ、これによって、封止体の表面とシールド膜SFの間に剥離部(膨れ部)が生じることを効果的に抑制できるのである。
【0067】
また、個々の平坦領域の面積を小さくできるということは、第2に、アンカー効果の小さくなる領域を低減できることを意味する。したがって、封止体の表面とシールド膜SFとの密着性を向上できる結果、この観点からも、封止体の表面とシールド膜SFの間に剥離部(膨れ部)が生じることを効果的に抑制できることがわかる。
【0068】
以上のように、本実施の形態1の特徴は、剥離防止用マーク形成領域AR2の内部に複数の剥離防止用マークEMKが形成されている点にあるが、上述したように、複数の剥離防止用マークEMKの間隔によって、平坦領域のサイズ(面積)が左右される。このことから、本実施の形態1では、特に、複数の剥離防止用マークEMKを設ける間隔が重要であり、以下に、この点について説明する。まず、本発明者が着目した点は、凹凸形状からなる製品識別用マークDMKが形成された製品識別用マーク形成領域AR1においては、シールド膜SFの剥離が発生していないという事実である。この事実によれば、複数の剥離防止用マークEMKの間隔を製品識別用マークDMKの間隔と同程度にすれば、確実に、シールド膜SFの剥離を防止できるということである。そこで、本実施の形態1では、例えば、複数の剥離防止用マークEMKの間隔を製品識別用マークDMKの間隔と同程度にしている。ここでは、製品識別用マークDMKを構成する文字数列の間隔が均一でない場合も考慮して、複数の剥離防止用マークEMKのピッチ間隔を、製品識別用マークDMKを構成する識別パターンの最小ピッチ間隔と同じにすることが望ましい。なぜなら、複数の剥離防止用マークEMKのピッチ間隔が狭くなればなるほど、平坦領域の数とサイズを低減できることから、シールド膜SFの剥離を効果的に抑制できると考えられるからである。つまり、複数の剥離防止用マークEMKの間隔を製品識別用マークDMKの間隔と同程度にすれば、確実に、シールド膜SFの剥離を防止できるものであり、さらに、確実にシールド膜SFの剥離を防止する観点から、複数の剥離防止用マークEMKのピッチ間隔を、製品識別用マークDMKを構成する識別パターンの最小ピッチ間隔と同じにすることが望ましいのである。具体的に、剥離防止用マークEMKのピッチ間隔は、例えば、0.55mmピッチとなっている。
【0069】
続いて、複数の剥離防止用マークEMKのそれぞれの深さによって、特に、アンカー効果の大きさが左右されると考えられる。したがって、複数の剥離防止用マークEMKのそれぞれの深さも、シールド膜SFの剥離を防止する観点から重要な要素であると考えられるため、以下に、この点についても説明する。例えば、剥離防止用マークEMKの深さが浅ければ浅いほど、この剥離防止用マークEMKにおけるアンカー効果は小さくなる。このことから、アンカー効果を大きくしてシールド膜SFの剥離を防止する観点からは、剥離防止用マークEMKの深さを深くすればするほど望ましいことがわかる。一方、剥離防止用マークEMKの深さを深くしすぎると、剥離防止用マークEMKの底部が封止体で覆っている内部の半導体チップやワイヤや受動部品にまで達してしまい、これらの部品を封止体で覆っている意義が失われることになる。このため、際限なく、剥離防止用マークEMKの深さを深くすることはできない。ここで重要なことは、シールド膜SFの剥離を防止するために充分なアンカー効果が得られればよいことである。ここで、再び、凹凸形状からなる製品識別用マークDMKが形成された製品識別用マーク形成領域AR1においては、シールド膜SFの剥離が発生していないという事実に着目すれば、剥離防止用マークEMKの深さを、製品識別用マークDMKの深さと同程度にすれば、シールド膜SFの剥離を防止できるということである。そこで、本実施の形態1では、剥離防止用マークEMKの深さと、製品識別用マークDMKの深さとを同程度にしている。具体的には、例えば、剥離防止用マークEMKの深さを、製品識別用マークDMKの深さと同程度の50μm程度にしている。これにより、本実施の形態1によれば、確実に、シールド膜SFの剥離を防止できる。
【0070】
ここで、粗面化エッチング処理で形成される凹凸形状(表面粗さ)は、数μm程度である。この粗面化エッチング処理では、シールド膜SFの剥離を充分に抑制できない原因として、封止体を構成する樹脂に含有されているフィラーの分布の不均一性を挙げたが、その他の原因として、凹凸形状が数μm程度しかない点も考えることができる。つまり、粗面化エッチング処理だけでは、充分に、シールド膜SFの剥離を抑制できないことは事実である。このことから、剥離防止用マークEMKの深さを、粗面化エッチング処理と同程度の数μmにすることは、確実にシールド膜SFの剥離を防止する観点から採用することはできないのである。それよりも、凹凸形状からなる製品識別用マークDMKが形成された製品識別用マーク形成領域AR1においては、シールド膜SFの剥離が発生していないという事実に着目して、剥離防止用マークEMKの深さを、製品識別用マークDMKの深さと同程度の50μm程度にするということは、確実にシールド膜SFの剥離を防止する観点から妥当なものであるといえる。
【0071】
次に、剥離防止用マークEMKの平面サイズについて説明する。この場合も、凹凸形状からなる製品識別用マークDMKが形成された製品識別用マーク形成領域AR1においては、シールド膜SFの剥離が発生していないという事実に着目する。例えば、製品識別用マークDMKは、封止体の表面にレーザを照射することにより、レーザ照射領域の温度を上昇させてフィラーを含む樹脂ごと蒸発させて、凹凸形状を形成し、レーザの照射領域を走査することにより所望の文字数列を封止体の表面に形成している。つまり、一回のレーザ照射によって形成される凹凸形状をスポットと定義すると、このスポットを複数個形成することにより、製品識別用マークDMKを構成する文字や数字が形成される。そこで、本実施の形態1では、剥離防止用マークEMKの平面サイズを上述したスポットの平面サイズと同程度としている。具体的に、剥離防止用マークEMKの平面サイズは、0.1mm角程度となっている。
【0072】
以上の説明は、シールド膜SFの剥離を効果的に防止する性能面からの観点からなされたものであるが、電力増幅モジュールPAを実際に製造する観点からは、製造工程の簡略化やスループットの向上も考慮に入れる必要がある。そこで、以下では、製造工程の簡略化やスループットの向上に着目した観点からの剥離防止用マークEMKの構成について説明する。
【0073】
まず、例えば、製品識別用マークDMKは、レーザマーキングによって形成される。このため、製品識別用マークDMKを形成するレーザマーキングを実施する工程で、剥離防止用マークEMKも形成すれば、わざわざ、剥離防止用マークEMKを形成する別工程を追加する必要がなくなる。つまり、製品識別用マークDMKを形成するレーザマーキングを実施する工程で、剥離防止用マークEMKも形成することにより、電力増幅モジュールPAの製造工程を複雑化させることなく、剥離防止用マークEMKを封止体に形成することができる。このことは、シールド膜SFの剥離を効果的に防止する性能面からの観点からも有用である。なぜなら、上述したように、剥離防止用マークEMKのピッチ間隔、深さは、製品識別用マークDMKと同等であり、かつ、剥離防止用マークEMKの平面サイズは、スポットと同じであるため、製品識別用マークDMKと剥離防止用マークEMKとを同じ工程で形成することで、本実施の形態1における特徴を容易に実現できるからである。
【0074】
さらに、本実施の形態1では、スループットを向上させる観点から、剥離防止用マークEMKの平面サイズを一回のレーザ照射で形成できるスポットサイズと同程度にしている。例えば、剥離防止用マークEMKの平面サイズをスポットサイズよりも大きくした場合、1つの剥離防止用マークEMKを形成するために、複数回のレーザ照射が必要となり、スループットが低下してしまう。しかし、本実施の形態1では、剥離防止用マークEMKの平面サイズをスポットサイズと同程度としている。これにより、1つの剥離防止用マークEMKを1回のレーザ照射で形成できるため、本実施の形態1では、剥離防止用マークEMKを形成する際のスループットを向上させることができる。
【0075】
また、本実施の形態1では、複数の剥離防止用マークEMKを同一のパターンから形成している点にも特徴がある。これにより、複数の剥離防止用マークEMKを効率良く形成できる効果が得られる。このようにして、本実施の形態1によれば、例えば、図7に示すような外観構成を有する電力増幅モジュールPAとなる。具体的に、本実施の形態1における電力増幅モジュールPAにおいて、製品識別用マークDMKは、複数の文字数列を含む識別パターンから構成され、複数の剥離防止用マークEMKのそれぞれは、点形状のドットパターンから形成されている。そして、剥離防止用マークEMKを構成する複数個の同一パターン(ドットパターン)の数は、識別パターンを構成する複数の文字数列の数よりも多くなっている。
【0076】
次に、本実施の形態1における電力増幅モジュールPAの構成について断面図を参照しながら説明する。図8は、本実施の形態1における電力増幅モジュールPAの断面構造を示す断面図である。図8に示すように、本実施の形態1における電力増幅モジュールPAは、内部に多層配線層を有する配線基板WBを有しており、この配線基板WB上に半導体チップCHPおよび受動部品SMDが搭載されている。そして、半導体チップCHPは、例えば、配線基板WBに形成されている配線パターンとワイヤWによって電気的に接続されている。
【0077】
配線基板WB上には、半導体チップCHP,ワイヤW、および、受動部品SMDを覆うように、例えば、シリカなどからなるフィラーを添加したエポキシ樹脂からなる封止体MRが形成されている。この封止体MRの表面には、凹部からなる複数の剥離防止用マークEMKが形成されており、この剥離防止用マークEMKを形成した封止体MRの表面にシールド膜SFが形成されている。このシールド膜SFは、例えば、銅膜とニッケル膜の積層膜から形成されている。シールド膜SFは、封止体MRの表面から側面に延在し、さらに、配線基板WBの側面の一部にまで形成されている。そして、配線基板WBの側面において、シールド膜SFは、配線基板WBの内部に形成されている基準配線(基準電位(GND電位)を供給する配線)GLと電気的に接続されている。このことから、シールド膜SFの電位は、基準電位となっていることがわかる。したがって、例えば、LDMOSFETなどの半導体素子が形成された半導体チップCHPは、基準電位に固定されたシールド膜SFで囲まれることがわかる。このため、半導体チップCHPから発生する電磁波は、基準電位に固定されたシールド膜SFによって遮蔽されるため、電力増幅モジュールPAからの電磁波の漏洩を低減することができ、電力増幅モジュールPAで発生した電磁波が他の半導体装置に悪影響を及ぼすことを抑制できる。同様に、基準電位に固定されたシールド膜SFによって、外部に存在する電磁波が電力増幅モジュールPAの内部に到達することも効果的に遮断することができるので、外部で発生した電磁波による電力増幅モジュールPAへの悪影響も低減することができる。
【0078】
そして、本実施の形態1における電力増幅モジュールPAによれば、封止体MRの表面に凹部形状からなる剥離防止用マークEMKが形成されているので、シールド膜SFの封止体MRからの剥離を抑制できる。
【0079】
<変形例>
続いて、本実施の形態1における電力増幅モジュールPAの変形例について説明する。図9は、本変形例1における電力増幅モジュールPAの外観構成を示す平面図である。図9に示すように、本変形例1における電力増幅モジュールPAは、矩形形状をした封止体を有しており、この封止体の表面にシールド膜SFが形成されている。そして、封止体の表面には、製品識別用マーク形成領域AR1と剥離防止用マーク形成領域AR2が存在しており、製品識別用マーク形成領域AR1に製品識別用マークDMKが形成され、剥離防止用マーク形成領域AR2に剥離防止用マークEMKが形成されている。
【0080】
ここで、本変形例1の特徴は、製品識別用マーク形成領域AR1の面積が、剥離防止用マーク形成領域AR2の面積よりも大きくなっている点である。例えば、前記実施の形態1における電力増幅モジュールPAでは、図7に示すように、製品識別用マーク形成領域AR1の面積が、剥離防止用マーク形成領域AR2の面積よりも小さくなっている。この場合、剥離防止用マーク形成領域AR2の面積が大きいことから、剥離防止用マーク形成領域AR2内に形成する剥離防止用マークEMKの数も多くなる。この結果、複数の剥離防止用マークEMKを形成するための時間が長くなってしまう。
【0081】
これに対し、本変形例1における電力増幅モジュールPAでは、図9に示すように、製品識別用マーク形成領域AR1の面積が、剥離防止用マーク形成領域AR2の面積よりも大きくなっているため、剥離防止用マーク形成領域AR2の面積を充分に小さくすることができる。このため、剥離防止用マーク形成領域AR2内に形成する剥離防止用マークEMKの数も少なくなり、これによって、複数の剥離防止用マークEMKを形成するための時間を短くすることができる。つまり、本変形例1によれば、電力増幅モジュールPAの製造工程におけるスループットを向上させることができる。このように本変形例1において、製品識別用マークDMKは、複数の文字数列を含む識別パターンから構成され、剥離防止用マークEMKを構成する複数個の同一パターン(ドットパターン)の数は、識別パターンを構成する複数の文字数列の数よりも少なくなるように構成される。
【0082】
本変形例1のその他の構成は、前記実施の形態1と同様である。すなわち、本変形例1においても、製品識別用マーク形成領域AR1だけでなく、剥離防止用マーク形成領域AR2にも凹凸形状が形成される。この結果、封止体の表面での平坦領域の存在を低減することができ、これによって、封止体をめっき液に浸漬した場合に気泡が付着しやすいという第1要因や、アンカー効果が生じにくいという第2要因を抑制できる結果、封止体の表面とシールド膜SFの間に剥離部(膨れ部)が生じることを抑制できる。したがって、本変形例1においても、シールド膜SFの剥離(膨れ)による外観不良を抑制することができる。
【0083】
次に、本実施の形態1における電力増幅モジュールPAの他の変形例について説明する。図10は、本変形例2における電力増幅モジュールPAの外観構成を示す平面図である。図10に示すように、本変形例2における電力増幅モジュールPAは、矩形形状をした封止体を有しており、この封止体の表面にシールド膜SFが形成されている。そして、封止体の表面には、製品識別用マーク形成領域AR1と剥離防止用マーク形成領域AR2が存在しており、製品識別用マーク形成領域AR1に製品識別用マークDMKが形成され、剥離防止用マーク形成領域AR2に剥離防止用マークEMKが形成されている。
【0084】
ここで、本変形例2の特徴は、剥離防止用マークEMKとして、十字形状の十字パターンから形成している点にある。すなわち、前記実施の形態1では、剥離防止用マークEMKを点形状のドットパターンから形成していたが、本変形例2のように、剥離防止用マークEMKを十字形状の十字パターンから形成してもよい。つまり、本願発明の技術的思想は、封止体の表面からのシールド膜SFの剥離を抑制するために、封止体の表面での平坦領域の存在を低減することを目的とするものである。そして、この目的を達成するため、本願発明では、剥離防止用マーク形成領域AR2に凹形状の剥離防止用マークEMKを形成している。この点に関して重要なことは、剥離防止用マーク形成領域AR2に凹凸形状を設けることになり、凹形状であれば、剥離防止用マークEMKの形状は限定されないことである。つまり、前記実施の形態1では、剥離防止用マークEMKを点形状のドットパターンから形成する例について説明したが、本願発明の技術的思想は、これに限らず、本変形例2にように、剥離防止用マークEMKを十字形状の十字パターンから形成してもよいし、その他の凹形状(例えば、丸、長方形、直線等)のパターンから形成してもよい。
【0085】
本変形例2のその他の構成は、前記実施の形態1と同様である。すなわち、本変形例2においても、製品識別用マーク形成領域AR1だけでなく、剥離防止用マーク形成領域AR2にも凹凸形状が形成される。この結果、封止体の表面での平坦領域の存在を低減することができ、これによって、封止体をめっき液に浸漬した場合に気泡が付着しやすいという第1要因や、アンカー効果が生じにくいという第2要因を抑制できる結果、封止体の表面とシールド膜SFの間に剥離部(膨れ部)が生じることを抑制できる。したがって、本変形例2においても、シールド膜SFの剥離(膨れ)による外観不良を抑制することができる。
【0086】
<電力増幅モジュールの製造方法>
本実施の形態1における電力増幅モジュール(半導体装置)PAは、上記のように構成されており、以下に、その製造方法について図面を参照しながら説明する。まず、本実施の形態1における電力増幅モジュールPAの製造方法についてわかりやすくするために、フローチャートと平面図を使用して説明する。その後、断面図を用いて説明することにする。
【0087】
図11は、本実施の形態1における電力増幅モジュールの製造工程の流れを示すフローチャートである。図12に示すように、配線基板WB上に、例えば、LDMOSFETを形成した半導体チップCHPを搭載する(ダイボンディング)(図11のS101)。なお、配線基板WB上には、半導体チップCHPの他、抵抗素子、容量素子、あるいは、インダクタ素子を含む受動部品SMDも搭載される。
【0088】
続いて、図13に示すように、配線基板WB上に搭載した半導体チップCHPの表面に形成されているパッドPDと、配線基板WB上に形成されている配線パターンとを、例えば、金線からなるワイヤWで接続する(ワイヤボンディング)(図11のS102)。具体的には、キャピラリ(図示せず)を使用して、パッドPD上にボールを圧着した後(ファーストボンディング)、金線(ワイヤW)を引き出しながら、キャピラリを移動させる。そして、金線(ワイヤW)を配線パターン(端子、ランド)にボンディング(セカンドボンディング)することにより、パッドPDと配線パターンとをワイヤWで電気的に接続することができる。
【0089】
次に、図14に示すように、配線基板WB上に搭載された半導体チップCHP、ワイヤW、および、受動部品SMDを覆うように、配線基板WB上にフィラーを含有するエポキシ樹脂(熱硬化性樹脂)からなる封止体MRを形成する(モールド)(図11のS103)。具体的には、半導体チップCHP、ワイヤW、および、受動部品SMDを搭載した配線基板WBを、上金型と下金型で挟みこみ、上金型に設けられたキャビティ内に半導体チップCHP、ワイヤW、および、受動部品SMDが配置されるようにする。この状態で、上述したキャビティ内にエポキシ樹脂を注入することにより、配線基板WB上に封止体を形成する。
【0090】
その後、図15に示すように、封止体MRの表面に、製品識別用マークDMK、および、剥離防止用マークEMKを形成する(図11のS104)。具体的に、封止体MRの表面にレーザを照射し、レーザを照射した封止体MRの表面が加熱することにより樹脂が蒸発して、封止体MRの表面に凹形状のスポットが形成される。そして、レーザを走査することにより、封止体MRの表面に多数のスポットを形成することにより、製品識別用マーク形成領域に文字数列からなる製品識別用マークDMKを形成する。同様に、この工程で、剥離防止用マーク形成領域にドットパターンからなる剥離防止用マークEMKを形成する。これにより、封止体MRの表面全体にわたって、凹凸形状が形成されることになる。このように本実施の形態1では、製品識別用マーク形成領域に製品識別用マークDMKを形成する工程で、剥離防止用マーク形成領域に剥離防止用マークEMKも形成している。このことから、製品識別用マークDMKと剥離防止用マークEMKとを別工程で形成する場合に比べて、製造工程の簡略化を図ることができる。
【0091】
続いて、図16に示すように、封止体MRおよび配線基板WBをハーフカットダイシングする(図11のS105)。これにより、封止体MRを切断し、かつ、配線基板WBの厚さ方向に半分程度切り込まれてダイシングラインDL1が形成される。
【0092】
その後、図17に示すように、封止体MRの表面に対して、粗面化エッチング処理を実施する(図11のS106)。さらに、ダイシングラインDL1の底面および側面から、封止体MRの表面全体にわたってシールド膜SFを形成する(図11のS107)。具体的に、シールド膜SFは、例えば、銅膜とニッケル膜との積層膜から形成され、例えば、無電解めっき法により形成される。無電解めっき法においては、封止体MRを形成した配線基板WBをめっき液に浸漬し、封止体MRの表面における化学反応によって、ダイシングラインDL1の底面および側面から、封止体MRの表面全体にわたってシールド膜SFが形成される。ここで、封止体MRを形成した配線基板WBをめっき液に浸漬する際、空気を巻き込むことがあるが、本実施の形態1においては、封止体MRの表面に、凹形状の製品識別用マークDMKと剥離防止用マークEMKとを形成しているので、気泡の付着しやすい平坦領域の面積は小さくなっている。したがって、封止体MRの表面に比較的大きなサイズの気泡は付着しづらくなっており、たとえ、封止体MRの表面に気泡が付着するにしても、気泡のサイズは小さいものである。このため、シールド膜SFを形成した後、配線基板WBに対してベーク処理(熱処理)が実施されるが(図11のS108)、このときの熱負荷によって、封止体MRの表面とシールド膜SFの間に付着した気泡が膨張しても、サイズが小さいので、封止体MRの表面からシールド膜SFの剥離を抑制できる。特に、本実施の形態1では、封止体MRの表面に、凹形状の製品識別用マークDMKと剥離防止用マークEMKとを形成しているので、封止体MRとシールド膜SFの密着性は、アンカー効果によって向上しているため、この観点からも、本実施の形態1によれば、封止体MRの表面からのシールド膜SFの剥離を効果的に抑制することができる。
【0093】
次に、図18に示すように、配線基板WBをフルカットダイシングして完全に切断する(図11のS109)。このとき形成されるダイシングラインDL2の幅は、ハーフカットダイシングの際に形成されたダイシングラインDL1の幅よりも小さくなっている。以上のようにして、本実施の形態1における電力増幅モジュールPAを製造することができる。
【0094】
さらに、断面図を使用して、本実施の形態1における電力増幅モジュールPAの製造工程を説明する。図19に示すように、配線基板WBの上面(表面)に、複数の半導体チップCHPと複数の受動部品SMDを搭載する。この段階での配線基板WBは、複数の電力増幅モジュールを同時に形成できるように多数個取り基板となっている。
【0095】
続いて、図20に示すように、配線基板WB上に搭載された半導体チップCHPと、配線基板WBに形成されている端子(配線パターン)とを、例えば、金線からなるワイヤWで電気的に接続する。その後、図21に示すように、配線基板WB上に搭載された半導体チップCHP、ワイヤW、および、受動部品SMDを覆うように封止体MRを形成する。
【0096】
次に、図22に示すように、レーザマーキングによって、封止体MRの表面に、製品識別用マーク(図示せず)と剥離防止用マークEMKとを形成する。図22では、剥離防止用マークEMKを構成する凹形状が図示されている。これにより、本実施の形態1によれば、封止体MRの表面全体を凹凸形状にすることができる。
【0097】
その後、図23に示すように、ブレードDB1を使用したハーフカットダイシングにより、封止体MRを切断するとともに、配線基板WBの厚さ方向に切り込みを入れる。このように配線基板WBの途中までダイシングする理由は、配線基板の内部に形成されている基準配線を配線基板WBの側面から露出させるためである。
【0098】
続いて、図24に示すように、封止体MRの表面に対して、粗面化エッチング処理を実施した後、ハーフカットダイシングすることにより形成された溝DITの内壁を含む封止体MRの表面にシールド膜SFを形成する。このとき、溝DITの側面には、配線基板WBの内部に形成されている基準配線が露出しているので、この基準配線と電気的に接続されるようにシールド膜SFが形成される。
【0099】
ここで、シールド膜SFは、例えば、無電解めっき法で形成されるため、封止体MRを形成した配線基板WBをめっき液に浸漬する際、空気を巻き込むことがある。ところが、本実施の形態1においては、封止体MRの表面に、凹形状の製品識別用マークと剥離防止用マークEMKとを形成しているので、気泡の付着しやすい平坦領域の面積は小さくなっている。したがって、封止体MRの表面に比較的大きなサイズの気泡は付着しづらくなっており、たとえ、封止体MRの表面に気泡が付着するにしても、気泡のサイズは小さいものである。このため、シールド膜SFを形成した後、配線基板WBに対してベーク処理(熱処理)が実施されるが、このときの熱負荷によって、封止体MRの表面とシールド膜SFの間に付着した気泡が膨張しても、サイズが小さいので、封止体MRの表面からシールド膜SFの剥離を抑制できる。特に、本実施の形態1では、封止体MRの表面に、凹形状の製品識別用マークと剥離防止用マークEMKとを形成しているので、封止体MRとシールド膜SFの密着性は、アンカー効果によって向上しているため、この観点からも、本実施の形態1によれば、封止体MRの表面からのシールド膜SFの剥離を効果的に抑制することができる。
【0100】
次に、図25に示すように、ブレードDB1よりも幅の狭いブレードDB2を使用して、配線基板WBをフルカットダイシングする。これにより、図26に示すように、配線基板WBは個片化され、個々の電力増幅モジュールPAが製造される。以上のようにして、本実施の形態1における電力増幅モジュールを製造することができる。
【0101】
(実施の形態2)
前記実施の形態1では、封止体MRの表面にレーザを照射することにより、剥離防止用マークEMKを形成する例について説明したが、本実施の形態2では、封止体MRを形成する際に使用する上金型の表面に突起部PRUを設けることにより、剥離防止用マークEMKを形成する例について説明する。
【0102】
なお、本実施の形態2における電力増幅モジュールの構造は、前記実施の形態1における電力増幅モジュールPAの構造と同じであり、相違点は、製造工程にある。このため、以下では、本実施の形態2における電力増幅モジュールの製造方法の特徴点について説明する。
【0103】
図27は、本実施の形態2において、半導体チップCHPを搭載した配線基板WBを上金型UMと下金型BMで挟み込んでいる状態を示す断面図である。図27において、配線基板WB上に搭載されている半導体チップCHPは、配線基板WBと上金型UMの間に形成されるキャビティCAV内に配置される。ここで、本実施の形態2の特徴は、上金型UMに複数の突起部PRUが設けられている点である。この状態で、図27の矢印方向から樹脂を注入すると、図28のようになる。
【0104】
図28は、配線基板WBを上金型UMと下金型BMで挟み込んだ際に形成されるキャビティCAV内に樹脂を注入して封止体MRを形成した状態を示す断面図である。図28に示すように、封止体MRの表面には、上金型UMの突起部PRUの形状を反映して、凹形状の剥離防止用マークEMKが形成される。このようにして、本実施の形態2においても、封止体MRの表面に凹形状の剥離防止用マークEMKを形成することができる。したがって、本実施の形態2における電力増幅モジュールも、前記実施の形態1における電力増幅モジュールPAと同様の効果を得ることができる。すなわち、本実施の形態2における電力増幅モジュールにおいても、製品識別用マーク形成領域だけでなく、剥離防止用マーク形成領域にも凹凸形状が形成される。この結果、封止体の表面での平坦領域の存在を低減することができ、これによって、封止体をめっき液に浸漬した場合に気泡が付着しやすいという第1要因や、アンカー効果が生じにくいという第2要因を抑制できる結果、封止体の表面とシールド膜SFの間に剥離部(膨れ部)が生じることを抑制できる。したがって、本実施の形態2においても、シールド膜の剥離(膨れ)による外観不良を抑制することができる。
【0105】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明は、半導体装置を製造する製造業に幅広く利用することができる。
【符号の説明】
【0107】
1 携帯電話機
1S 半導体基板
2 アプリケーションプロセッサ
3 メモリ
4 ベースバンド部
5 RFIC
6 電力増幅器
7 SAWフィルタ
8 アンテナスイッチ
9 アンテナ
AR1 製品識別用マーク形成領域
AR2 剥離防止用マーク形成領域
BM 下金型
CAP キャップ絶縁膜
CAV キャビティ
CHP 半導体チップ
CNT1 コンタクトホール
CNT2 接続孔
CU 制御回路
DB1 ブレード
DB2 ブレード
DIT 溝
DL1 ダイシングライン
DL2 ダイシングライン
DR1 n型ドレイン領域
DMK 製品識別用マーク
DT 溝
EMK 剥離防止用マーク
EP 剥離部
EPI エピタキシャル層
G ゲート電極
GL 基準配線
GND1 グランド電位
GND2 グランド電位
GND3 グランド電位
GOX ゲート絶縁膜
HALO p型ハロー領域
HB 増幅回路
IL1 層間絶縁膜
IL2 層間絶縁膜
LB 増幅回路
L1 第1層配線
L2 第2層配線
MMNa 段間整合回路
MMNb 段間整合回路
MR 封止体
ODR1 n型オフセットドレイン領域
ODR2 n型オフセットドレイン領域
PA 電力増幅モジュール
PA(P) 電力増幅モジュール
PD パッド
Pin(DCS) 入力電力
Pin(GSM) 入力電力
PL p型打ち抜き層
PLG1 プラグ
PLG2 プラグ
Pout(GSM) 出力電力
Pout(DCS) 出力電力
PRU 突起部
PR1 p型半導体領域
PWL p型ウェル
Q1a 増幅部
Q1b 増幅部
Q2a 増幅部
Q2b 増幅部
Q3a 増幅部
Q3b 増幅部
SF シールド膜
SMD 受動部品
SN 窒化シリコン膜
SR1 n型ソース領域
SR2 n型ソース領域
SW サイドウォール
UM 上金型
Vcontrol(DCS) 制御信号
Vcontrol(GSM) 制御信号
Vdd1 電源電位
W ワイヤ
WB 配線基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)配線基板と、
(b)前記配線基板上に搭載された半導体チップと、
(c)前記半導体チップを覆うように前記配線基板上に形成された封止体と、
(d)前記封止体の表面上に形成され、かつ、前記配線基板に形成されている基準電位を供給する基準配線と電気的に接続されたシールド膜と、を備える半導体装置であって、
前記封止体の表面には、製品を識別するための凹形状をした製品識別用マークと、前記封止体の表面から前記シールド膜が剥離することを防止するための凹形状をした剥離防止用マークとが形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1記載の半導体装置であって、
前記製品識別用マークが形成されている製品識別用マーク形成領域と、前記剥離防止用マークが形成されている剥離防止用マーク形成領域とは異なる領域であることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項2記載の半導体装置であって、
前記剥離防止用マーク形成領域は、平面視において、前記製品識別用マーク形成領域を囲むように形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項1記載の半導体装置であって、
前記製品識別用マークの深さと、前記剥離防止用マークの深さは、同じであることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項1記載の半導体装置であって、
前記剥離防止用マークは、複数個の同一パターンから形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
請求項5記載の半導体装置であって、
前記製品識別用マークは、複数の文字数列を含む識別パターンから構成され、
前記剥離防止用マークを構成する複数個の前記同一パターンのピッチ間隔は、前記製品識別用マークを構成する前記識別パターンの最小ピッチ間隔と同じであることを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
請求項5記載の半導体装置であって、
前記製品識別用マークは、複数の文字数列を含む識別パターンから構成され、
前記剥離防止用マークを構成する複数個の前記同一パターンの数は、前記識別パターンを構成する前記複数の文字数列の数よりも多いことを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
請求項5記載の半導体装置であって、
前記製品識別用マークは、複数の文字数列を含む識別パターンから構成され、
前記剥離防止用マークを構成する複数個の前記同一パターンの数は、前記識別パターンを構成する前記複数の文字数列の数よりも少ないことを特徴とする半導体装置。
【請求項9】
請求項1記載の半導体装置であって、
前記剥離防止用マークは、点形状のドットパターンから形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項10】
請求項1記載の半導体装置であって、
前記剥離防止用マークは、十字形状の十字パターンから形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項11】
請求項1記載の半導体装置であって、
前記シールド膜は、めっき膜から形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項12】
請求項11記載の半導体装置であって、
前記シールド膜は、銅膜と、前記銅膜上に形成されたニッケル膜から形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項13】
請求項1記載の半導体装置であって、
前記封止体は、フィラーを含む樹脂から形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項14】
(a)基準電位を供給する基準配線を内部に形成した配線基板を用意する工程と、
(b)前記(a)工程後、前記配線基板上に半導体チップを搭載する工程と、
(c)前記(b)工程後、前記半導体チップを覆うように、前記配線基板上に封止体を形成する工程と、
(d)前記(c)工程後、前記封止体の表面に、凹形状をした製品識別用マークと、凹形状をした剥離防止用マークとを形成する工程と、
(e)前記(d)工程後、第1ブレードを使用して、前記封止体を切断し、かつ、前記配線基板の途中までダイシングすることにより、前記配線基板の側面から前記基準配線を露出する工程と、
(f)前記(e)工程後、露出している前記配線基板の側面および前記封止体の表面にわたってシールド膜を形成し、前記基準配線と前記シールド膜とを電気的に接続する工程と、
(g)前記(f)工程後、前記第1ブレードよりも厚さの薄い第2ブレードを使用したダイシングにより、前記配線基板を切断する工程と、を備えることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項15】
請求項14記載の半導体装置の製造方法であって、
前記(d)工程は、レーザを前記封止体に照射することにより、前記製品識別用マークと前記剥離防止用マークとを形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項16】
請求項14記載の半導体装置の製造方法であって、
前記(f)工程は、無電解めっき法を使用することにより、前記シールド膜を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項17】
請求項14記載の半導体装置の製造方法であって、
前記(f)工程後、前記(g)工程前に、熱処理工程が存在することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項18】
(a)基準電位を供給する基準配線を内部に形成した配線基板を用意する工程と、
(b)前記(a)工程後、前記配線基板上に半導体チップを搭載する工程と、
(c)前記(b)工程後、前記半導体チップを覆うように、前記配線基板上に封止体を形成する工程と、
(d)前記(c)工程後、前記封止体の表面に、凹形状をした製品識別用マークを形成する工程と、
(e)前記(d)工程後、第1ブレードを使用して、前記封止体を切断し、かつ、前記配線基板の途中までダイシングすることにより、前記配線基板の側面から前記基準配線を露出する工程と、
(f)前記(e)工程後、露出している前記配線基板の側面および前記封止体の表面にわたってシールド膜を形成し、前記基準配線と前記シールド膜とを電気的に接続する工程と、
(g)前記(f)工程後、前記第1ブレードよりも厚さの薄い第2ブレードを使用したダイシングにより、前記配線基板を切断する工程と、を備え、
前記(c)工程は、
(c1)突起部が設けられた上金型と、下金型との間に形成されるキャビティ内に前記半導体チップが配置されるように、前記半導体チップを搭載した前記配線基板を前記上金型と前記下金型で挟み込む工程と、
(c2)前記(c1)工程後、前記キャビティ内に樹脂を注入することにより、前記半導体チップを覆う前記封止体を形成する工程を有し、
前記(c2)工程によって形成される前記封止体の表面には、前記突起部の形状を反映した凹形状の剥離防止用マークが形成されることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項19】
(a)ベースバンド信号を処理するベースバンド部と、
(b)前記ベースバンド部で処理された前記ベースバンド信号を送信信号に変調するRFIC部と、
(c)前記RFIC部で変調された前記送信信号の電力を増幅する電力増幅器と、
(d)前記電力増幅器で増幅された前記送信信号を送信するアンテナと、を備え、
前記RFIC部は、さらに、前記アンテナで受信された受信信号を増幅し、増幅した前記受信信号を復調する機能を有する携帯電話機であって、
前記電力増幅器を含む電力増幅モジュールは、
(e1)配線基板と、
(e2)前記配線基板上に搭載された半導体チップと、
(e3)前記半導体チップを覆うように前記配線基板上に形成された封止体と、
(e4)前記封止体の表面上に形成され、かつ、前記配線基板に形成されている基準電位を供給する基準配線と電気的に接続されたシールド膜と、を有し、
前記封止体の表面には、製品を識別するための凹形状をした製品識別用マークと、前記封止体の表面から前記シールド膜が剥離することを防止するための凹形状をした剥離防止用マークとが形成されていることを特徴とする携帯電話機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2012−243895(P2012−243895A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111193(P2011−111193)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)