説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】半導体装置が傾いたり、パッシベーション膜の厚さがばらついても、アライメントマーカー部を精度良く認識すること。回路上に散在するコンタクトホールと明確に区別して、アライメントマーカー部を精度良く認識すること。
【解決手段】層間絶縁膜4に多数の開口部5を形成し、その表面を金属膜6で被うことにより、金属膜6の表面を凹凸状にし、反射光を散乱させる。開口部5の大きさは、素子のコンタクトホールと同程度の大きさであり、画像認識装置で認識できない程度である。金属膜6の大きさは、画像認識装置で認識できる程度にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体装置およびその製造方法に関するものであり、特に、ワイヤボンディングやダイボンディングなどのアセンブリ工程における位置認識用のアライメントマーカー部に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置の基板上には、能動素子および受動素子が設けられている。能動素子は、たとえば、トランジスタやダイオードなどである。また、受動素子は、たとえば、抵抗やコンデンサなどである。さらに、一般的には、半導体装置の基板上には、これらの素子とは別に、アライメントマーカー部が設けられている。
【0003】
アライメントマーカー部は、ウェハ工程で素子を作製する際に、フォトマスクとウェハとの位置合わせを自動でおこなうための位置認識用のパターンとして用いられる。また、アライメントマーカー部は、アセンブリ工程における半導体チップのダイボンディング工程やワイヤボンディング工程において、チップの位置やチップ上の座標を自動認識するためのパターンとして用いられる。
【0004】
一般に、ウェハ工程では、アライメントマーカー部は、100〜400倍程度のレンズを有する画像認識装置により認識される。それに対して、アセンブリ工程では、ウェハ工程での倍率よりも低い、10〜100倍程度のレンズを有する画像認識装置が用いられる。その理由は、以下の通りである。
【0005】
すなわち、レンズの倍率が大きくなると、解像度が高くなり、処理すべき画像データの量が増えるので、一回のアライメント作業に要する時間が長くなる。また、ウェハ工程では、一回のフォト工程につき一回のアライメント作業をおこなえばよいが、アセンブリ工程では、半導体チップの数だけアライメント作業をおこなう必要があるため、アライメント作業の回数が大幅に増える。したがって、アセンブリ工程では、レンズの倍率を小さくして、一回のアライメント作業に要する時間を短縮する必要がある。
【0006】
このような理由から、アセンブリ工程において、アライメントマーカー部の認識精度を向上させるには、アライメントマーカー部のパターンを認識されやすい構造にするのが好ましいと考えられている。その一つの方法として、金属膜下にコンタクトホールを設けることによって、金属膜に凹凸をつける方法が提案されている(たとえば、下記特許文献1参照。)。この方法によれば、製造工程においてCMP(化学的機械的研磨)によって金属膜が平坦化されていても、レーザ光による認識が容易になり、フォトレジスト膜をパターニングすることができる。
【0007】
別の方法として、能動層と金属膜層との間にある絶縁膜にコンタクトホールを設けることによって、金属膜に凹凸をつける方法が提案されている(たとえば、下記特許文献2参照。)。この方法によれば、液相法によって基板上に絶縁膜が形成された場合でも、金属膜の凹凸をアライメントマーカーとして用いることによって、パターニングをおこなうことができる。
【0008】
さらに別の方法として、数字、文字、記号、図形からなる群から選択された一つもしくは複数のアライメントマーカー部を、ボンディングパッド領域内の配線層と、絶縁膜との、一方もしくは両方の積層構造に凹凸を設けることによって形成する方法がある(たとえば、下記特許文献3、下記特許文献4参照。)。この方法によれば、アライメントマーカー部の認識の精度を向上させるとともに、ボンディングパッドとアライメントマーカー部との領域を共有させることで、省スペース化することができる。
【0009】
しかしながら、ボンディングパッドに凹凸を設けると、ワイヤとパッドとの密着面積が減り、パッドにワイヤが着きにくくなるおそれがある。また、パッドに対するワイヤの密着強度が不足するおそれがある。
【0010】
ここで、たとえば、特許文献3に記載の技術において、ボンディングパッドとアライメントマーカー部が別々に設けられている場合について説明する。図12は、従来の半導体装置のアライメントマーカー部を示す平面図である。図12に示すように、アライメントマーカー部は、たとえば、+の形状である。そして、+の形状の金属膜105には、その下のポリシリコン膜103によって+の形状の段差がつけられている。
【0011】
図13は、図12の切断線B−B’における断面の構造を示す断面図である。図13に示すように、従来の半導体装置のアライメントマーカー部は、シリコン基板等の半導体基板101を用いて作製されている。半導体基板101の表面には、SiO2層102が設けられている。SiO2層102の表面の一部には、たとえば、+の平面形状(図12参照)をしたポリシリコン膜103が設けられている。
【0012】
SiO2層102およびポリシリコン膜103の表面には、層間絶縁膜104が設けられている。層間絶縁膜104の表面の一部には、たとえば、+の平面形状(図12参照)をしたアルミニウム等の金属膜105が設けられている。金属膜105および層間絶縁膜104の表面には、水分などによる金属の腐食を防止するために、パッシベーション膜106が設けられている。このように、図12または図13に示す半導体装置のアライメントマーカー部によれば、ワイヤボンディングの密着強度を落とすことなく、アライメントマーカー部の認識の精度を向上させ、かつ腐食に対する信頼性を向上させることができる。
【0013】
つぎに、図12および図13に示すアライメントマーカー部に光が照射された場合について、図14および図15を用いて説明する。図14は、半導体装置が傾いていない場合の、アライメントマーカー部の反射光について示す断面図である。アライメントマーカー部を認識するにあたり、画像認識装置からアライメントマーカー部に対して光が照射される。そして、アライメントマーカー部の金属膜105において反射した光が、画像認識装置のカメラに戻り、画像認識装置によりアライメントマーカー部のパターンとして認識される。
【0014】
従来のアライメントマーカー部では、金属膜105の表面の大部分が平坦である。この平坦な領域に照射された光(入射光)の角度(入射角)に対して、金属膜105において反射する光(反射光)の角度(反射角)は、同じになる。一方、金属膜105の、ポリシリコン膜103によって生じる段差の領域では、金属膜105が湾曲しているので、ここに照射された光の反射光は散乱している状態になる。つまり、入射角と反射角とが規則正しく一定方向を向いている領域と、段差により散乱を起こす領域と、がともにアライメントマーカー部に存在することとなる。この違いを見分けさせることによって、アライメントマーカー部の認識精度が向上する。
【0015】
図15は、半導体装置が傾いている場合の、アライメントマーカー部の反射光について示す断面図である。図15に示すように、従来のアライメントマーカー部では、金属膜105に平坦な領域が多いため、半導体装置が傾いている場合でも、ほとんどの入射角と反射角とが規則正しく一定方向を向く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特許第2590711号公報
【特許文献2】特開2005−236187号公報
【特許文献3】特開平11−135391号公報
【特許文献4】特開2001−326241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、上述した特許文献1または2の技術では、いずれもコンタクトホールによって金属膜に段差が設けられ、この金属膜の段差がアライメントマーカー部として用いられている。半導体装置において、一般に、コンタクトホールの大きさは、0.5〜2.0μm程度である。一方、アセンブリ工程に用いられるレンズの倍率は、上述したように、たとえば、10〜100倍程度であり、このレンズで認識できる最小の大きさ、つまり、一画素の大きさの限界は、8μm程度である。したがって、アセンブリ工程に用いられる画像認識装置では、コンタクトホールが小さすぎるため、コンタクトホールによる段差を利用したアライメントマーカー部を認識できないという問題がある。
【0018】
また、コンタクトホールは、MOSトランジスタや抵抗などでも用いられているため、半導体装置上のほぼ全面に非常に多く散在している。このため、10〜100倍程度のレンズを用いた画像認識装置では、仮にコンタクトホールを認識できたとしても、アライメントマーカー部とは別のコンタクトホールを誤ってアライメントマーカー部と認識する可能性がある。したがって、このようなコンタクトホールは、アセンブリ工程に用いるアライメントマーカー部としては、不適切である。
【0019】
さらに、半導体装置が傾いている場合、アライメントマーカー部に照射された光のほとんどが、光を照射した画像認識装置のカメラとは別の方向へ反射されてしまう。したがって、半導体装置が傾いていないときと比べると、アライメントマーカー部の見え方が大幅に異なるといった問題がある。
【0020】
また、金属膜の上にパッシベーション膜が設けられている場合、パッシベーション膜において光の屈折が発生する。光の屈折は、画像認識装置からの入射光と、金属膜における反射光と、の両方で発生し、パッシベーション膜の厚さによって変化する。したがって、ウェハ工程においてパッシベーション膜の厚さにばらつきが発生すると、入射光、反射光ともに場所によって屈折の程度が変化することとなり、アライメントマーカー部の見え具合が不安定になるという問題がある。
【0021】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、半導体装置が傾いたり、パッシベーション膜の厚さがばらついても、精度良く認識され得るアライメントマーカー部を有する半導体装置およびその製造方法を提供することを目的とする。また、回路上に散在するコンタクトホールと明確に区別されて、精度良く認識され得るアライメントマーカー部を有する半導体装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、この発明にかかる半導体装置は、半導体基板上にアライメントマーカー部が設けられている。アライメントマーカー部は、半導体基板の表面に層間絶縁膜が設けられている。この層間絶縁膜には、複数の開口部が設けられている。また、層間絶縁膜と、開口部と、の表面には、位置検出用の金属膜が選択的に設けられている。層間絶縁膜と、金属膜と、の表面には、パッシベーション膜が設けられている。そして、開口部は、半導体基板に近い部分よりもパッシベーション膜に近い部分の方が広く開口するような断面形状になっていることを特徴とする。
【0023】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、一つの開口部の大きさは、同一の半導体基板上に形成される素子のコンタクトホールと同程度であり、位置検出するために用いる画像認識装置の一画素の大きさよりも小さいことを特徴とする。
【0024】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、アライメントマーカー部の大きさは、位置検出するために用いる画像認識装置の一画素の大きさよりも大きいことを特徴とする。
【0025】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、開口部間の距離は、それぞれ等しいことを特徴とする。
【0026】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、金属膜の端から最も近傍の開口部と、この金属膜の端と、の距離は、開口部間の距離と等しいことを特徴とする。
【0027】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、少なくとも一つのアライメントマーカー部は、他のアライメントマーカー部と異なる形状をしていることを特徴とする。
【0028】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するため、この発明にかかる半導体装置の製造方法は、まず、半導体基板の表面に層間絶縁膜を形成する。ついで、層間絶縁膜を、等方性のエッチングによって選択的にエッチングする。さらに、等方性のエッチングによってエッチングされた領域に、異方性のエッチングによって開口部を形成する。ついで、開口部と、層間絶縁膜と、の表面に位置検出用の金属膜を選択的に形成する。そして、位置検出用の金属膜と、層間絶縁膜と、の表面にパッシベーション膜を形成することを特徴とする。
【0029】
上記各発明によれば、金属膜に複数の凹凸が設けられているため、照射された光がそれぞれの凹凸で散乱する。したがって、半導体装置が傾いている場合でも、半導体装置が傾いていない場合と同様のパターンが画像認識装置によって認識される。また、たとえば、パッシベーション膜の厚さのばらつきによる光の屈折に違いがあっても、画像認識装置による認識に影響を与えない。これによって、アライメントマーカー部の認識の精度を向上させることができる。
【0030】
また、上述した発明によれば、金属膜の凹凸が光の散乱しやすい構造であるため、さらに、アライメントマーカー部の認識の精度を向上させることができる。
【0031】
また、上述した発明によれば、開口部や素子のコンタクトホールの大きさは、画像認識装置によって認識可能な大きさより小さい。また、アライメントマーカー部の大きさは、画像認識装置によって認識可能な大きさより大きい。このため、アライメントマーカー部を素子のコンタクトホールと明確に区別可能であり、アライメントマーカー部の認識の精度を向上させることができる。
【0032】
また、上述した発明によれば、異なる形状のアライメントマーカー部を有することで、相対的に位置を判断することができる。
【0033】
また、上述した発明によれば、金属膜の凹凸を照射された光の散乱しやすい形状に形成することができる。このため、アライメントマーカー部の認識の精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明にかかる半導体装置およびその製造方法によれば、半導体装置が傾いたり、パッシベーション膜の厚さがばらついても、アライメントマーカー部が精度良く認識されるという効果を奏する。また、この発明は、アライメントマーカー部が、回路上に散在するコンタクトホールと明確に区別されて、精度良く認識されるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実施の形態1にかかる半導体装置のアライメントマーカー部の構造について示す平面図である。
【図2】図1の切断線A−A’における断面の構造を示す断面図である。
【図3】実施の形態1にかかる半導体装置のアライメントマーカー部の製造過程について示す断面図である。
【図4】実施の形態1にかかる半導体装置のアライメントマーカー部の製造過程について示す断面図である。
【図5】実施の形態1にかかる半導体装置のアライメントマーカー部の製造過程について示す断面図である。
【図6】実施の形態1にかかる半導体装置のアライメントマーカー部の製造過程について示す断面図である。
【図7】実施の形態1にかかる半導体装置のアライメントマーカー部の製造過程について示す断面図である。
【図8】実施の形態1にかかる半導体装置のアライメントマーカー部の製造過程について示す断面図である。
【図9】実施の形態1にかかる半導体装置が傾いていない場合の、アライメントマーカー部の反射光について示す断面図である。
【図10】実施の形態1にかかる半導体装置が傾いている場合の、アライメントマーカー部の反射光について示す断面図である。
【図11】実施の形態2にかかる半導体装置のアライメントマーカー部の構造を示す平面図である。
【図12】従来の半導体装置のアライメントマーカー部を示す平面図である。
【図13】図12の切断線B−B’における断面の構造を示す断面図である。
【図14】半導体装置が傾いていない場合の、アライメントマーカー部の反射光について示す断面図である。
【図15】半導体装置が傾いている場合の、アライメントマーカー部の反射光について示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる半導体装置およびその製造方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0037】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1にかかる半導体装置のアライメントマーカー部の構造について示す平面図である。図1に示すように、実施の形態1にかかる半導体装置のアライメントマーカー部は、金属膜6の全面に開口部5が設けられている。金属膜6の下には、金属膜6と同様の形状をしたポリシリコン膜3が設けられている。ここで、開口部5間の距離は、等しいのが好ましい。また、金属膜6端部から最も近傍にある開口部5と、金属膜6端部との距離は、開口部5間の距離と等しいのが好ましい。なお、図1においては、金属膜6は、+の平面形状をしているが、これに限るものではない。
【0038】
一つの開口部5の大きさは、画像認識装置の一画素サイズよりも小さい。つまり、画像認識装置は、一つ一つの開口部5を認識できない。一方、金属膜6は、画像認識装置で十分に認識される大きさである。具体的には、アセンブリ工程で用いられる画像認識装置の最小分解能は、たとえば、8μmである。一方、開口部5の直径は、素子に形成される通常のコンタクトホールと同程度の寸法であり、たとえば、1.2μm程度である。また、開口部5間の距離は、開口部5を形成するためのラウンドエッチングによる横方向への広がりを考慮して、たとえば、1.2μm程度、またはそれよりも大きい。
【0039】
また、一般に、ポリシリコン膜3の幅は、たとえば、50〜200μm程度である。したがって、切断線A−A’方向の一列分で、20〜100個程度の開口部5が設けられていることとなる。また、平面方向すべてでは、数百個〜数千個程度の開口部5が設けられていることとなる。
【0040】
図2は、図1の切断線A−A’における断面の構造を示す断面図である。図2に示すように、実施の形態1にかかる半導体装置のアライメントマーカー部は、半導体基板1を用いて作製されている。半導体基板1の表面には、SiO2層2が設けられている。ポリシリコン膜3は、SiO2層2の表面の一部に設けられている。ポリシリコン膜3は、たとえば、図1に示したような+の平面形状をしている。なお、ポリシリコン膜3は、半導体装置の図示しない領域でゲート電極として用いられていてもよい。
【0041】
層間絶縁膜4は、ポリシリコン膜3およびSiO2層2の表面に設けられている。この層間絶縁膜4は、選択的に除去され、開口部5が複数設けられている。この開口部5は、ポリシリコン膜3に達するように設けられている。金属膜6は、開口部5の設けられた層間絶縁膜4の表面に設けられている。したがって、金属膜6は、連続的に凹凸のある形状となる。開口部5は、ポリシリコン膜3に近い部分よりもポリシリコン膜3から遠い部分の方が広く開口するような断面形状になっている。さらに、開口部5の、ポリシリコン膜3から遠ざかるに連れて開口部が広がる部分の面は、曲面になっている。開口部5をこのような形状にすることで、その上に設けられた金属膜6の形状が、画像認識装置から入射された光を散乱しやすい形状となる。また、金属膜6は、たとえば、アルミニウムである。
【0042】
金属膜6は、開口部5においてポリシリコン膜3の表面に接するように設けられている。このことにより開口部5は、コンタクトホールとしての機能を果たすことができる。また、パッシベーション膜7は、金属膜6および層間絶縁膜4の表面に設けられている。パッシベーション膜7があることで、アライメントマーカー部とボンディングパッドとが区別される。
【0043】
このように、実施の形態1によれば、画像認識装置で一つ一つの開口部5を認識することはできないが、開口部5の部分で反射した光が散乱するので、金属膜6に開口部5を多数個並べて模様状に配置すると、光を散乱している箇所が金属膜6の部分に集中する。また、光を散乱している箇所の面積が拡大する。これらのことから、画像認識装置は、散乱光を集中して発している模様を認識することができる。この開口部5による模様を、画像認識装置の最小分解能より大きくすることで、アライメントマーカー部としての機能を果たすことができる。このようなアライメントマーカー部が半導体装置に少なくとも2つ以上設けられている。これによって、相対的に位置が判断される。
【0044】
また、開口部5や素子のコンタクトホールの大きさが、画像認識装置の最小分解能よりも小さいので、画像認識装置で、素子のコンタクトホールを認識することはできない。したがって、アライメントマーカー部と素子のコンタクトホールとの明確な区別が可能であり、素子のコンタクトホールを誤ってアライメントマーカー部と認識してしまうことがない。
【0045】
つぎに、図3〜図8を用いて、実施の形態1にかかる半導体装置のアライメントマーカー部の製造方法について説明する。図3〜図8は、実施の形態1にかかる半導体装置のアライメントマーカー部の製造過程について示す断面図である。まず、図3に示すように、半導体基板1の表面層にSiO2層2を形成する。半導体基板1は、たとえば、シリコン基板である。SiO2層2の表面には、ポリシリコン膜3が形成される。さらに、パターニングとエッチングにより、ポリシリコン膜3の平面形状を、+の形状に形成する。
【0046】
ついで、図4に示すように、ポリシリコン膜3の形成されたSiO2層2の全面に層間絶縁膜4を堆積する。ついで、図5に示すように、層間絶縁膜4をラウンドエッチングと呼ばれる等方性エッチングにより選択的に、かつ浅く除去する。ここでは、層間絶縁膜4を選択的に除去する間隔を等間隔にすることが好ましい。ついで、図6に示すように、図4において層間絶縁膜4が浅く除去された領域を、コンタクトエッチングと呼ばれる異方性エッチングにより、ポリシリコン膜3に到達するまで除去する。これによって、層間絶縁膜4に、半導体基板1に近い部分よりも半導体基板1から遠い部分の方が広く開口するような断面形状の開口部5が形成される。
【0047】
ついで、図7に示すように、図6において開口部5の形成された層間絶縁膜4の表面に金属膜6を形成する。そして、パターニングとエッチングにより、金属膜6をポリシリコン膜3と同様の平面形状にする。ここで、金属膜6は、層間絶縁膜4に開口部5が形成されているため、全面が連続的な凹凸のある形状となる。ついで、図8に示すように、図7において金属膜6の形成された層間絶縁膜4の全面にパッシベーション膜7を形成する。
【0048】
ここで、半導体基板1、SiO2層2、ポリシリコン膜3、層間絶縁膜4、金属膜6、パッシベーション膜7は、MOSトランジスタを製造する際に形成される層を流用することができる。具体的には、たとえば、SiO2層2は、MOSトランジスタを製造する際の、LOCOS層を流用することができる。また、ポリシリコン膜3は、MOSトランジスタのゲート電極に用いるポリシリコン膜を流用することができる。層間絶縁膜4は、一般的に、HTO膜、BPSG膜またはTEOS膜などと呼ばれるSiO2膜を流用することができる。金属膜6は、MOSトランジスタを製造する際の、配線などに用いるアルミニウム膜を流用することができる。パッシベーション膜7についても、MOSトランジスタで用いるものをそのまま流用することができる。本実施の形態のパッシベーション膜7は、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜の積層膜である。さらに、開口部5については、ポリシリコンのゲート電極に金属のゲート電極を接続するためのコンタクトホールを形成する際に、同時に形成することができる。したがって、実施の形態1にかかる半導体装置の構造は、MOSトランジスタを製造するプロセスであれば、容易に集積可能な構造である。
【0049】
なお、実施の形態1にかかる半導体装置において、アライメントマーカー部には、SiO2層2およびポリシリコン膜3がなくてもよい。この場合、半導体基板1の表面に層間絶縁膜4が設けられた構造となる。また、層間絶縁膜4に形成された開口部5は、半導体基板1まで到達しないように形成される。このようにすることで、半導体基板1が電位的な影響を受けないため、信頼性を保つことができる。また、このため、半導体基板1に拡散抵抗などの他の素子を形成することができる。
【0050】
つぎに、図9および10を用いて、実施の形態1にかかる半導体装置のアライメントマーカー部に光が照射された場合について説明する。図9は、実施の形態1にかかる半導体装置が傾いていない場合の、アライメントマーカー部の反射光について示す断面図である。図9に示すように、画像認識装置から半導体装置に入射光が照射されると、金属膜6の凹凸の一つ一つで反射光の散乱が発生する。ここで、凹凸は、金属膜6の全面に形成されている。したがって、反射光の散乱は、金属膜6の全面で発生することとなる。つまり、金属膜6の全面で反射光が均等に散乱される。
【0051】
図10は、実施の形態1にかかる半導体装置が傾いている場合の、アライメントマーカー部の反射光について示す断面図である。図10に示すように、半導体装置が傾いている場合でも、金属膜6の凹凸の一つ一つで反射光の散乱が発生しているため、画像認識装置のカメラ方向への散乱光を安定して確保することができる。
【0052】
このことから、実施の形態1によれば、たとえば、アセンブリ工程の際に、半導体装置が傾いた場合でも、半導体装置が傾いていない場合と同様に、アライメントマーカー部が認識される。これによって、アライメントマーカー部の認識の精度を向上させることができる。
【0053】
ここで、実施の形態1にかかる半導体装置のアライメントマーカー部においてもパッシベーション膜7によって、光が屈折する。図9に示すように、半導体装置が傾いていない場合でも、反射光の散乱が発生するので、パッシベーション膜7の厚さによって光の屈折の程度が変わったとしても、散乱状態であることに変わりはないので、ほとんど影響がない。したがって、実施の形態1によれば、パッシベーション膜7の厚さのばらつきによる影響を受けない。これによって、アライメントマーカー部の認識の精度を向上させることができる。
【0054】
(実施の形態2)
図11は、実施の形態2にかかる半導体装置のアライメントマーカー部の構造を示す平面図である。図11に示すように、実施の形態2にかかる半導体装置のアライメントマーカー部は、断面の構造が実施の形態1にかかる半導体装置のアライメントマーカー部と同様であり、平面形状が台形状である。具体的には、半導体基板10の回路領域11が設けられていない四隅のうち三カ所に、台形状を二つ並べた二重線のような第1のパターン12が設けられており、残りの一カ所に台形状を三つ並べた三重線のような第2のパターン13が設けられている。
【0055】
なお、実施の形態2においては、半導体基板10の四隅にアライメントマーカーが設けられているが、これに限るものではない。たとえば、四隅のうちの一カ所に第2のパターン13が設けられ、残りの三カ所のうち、少なくとも一カ所に第1のパターン12が設けられていてもよい。また、実施の形態2においては、第1のパターン12および第2のパターン13の平面形状を台形状としているが、これに限るものではない。具体的には、たとえば、第1のパターン12と、第2のパターン13と、が異なるパターンであってもよい。
【0056】
実施の形態2によれば、半導体基板10の最外周にアライメントマーカー部が設けられているため、チップのθ方向の位置ズレ(面内における回転のズレ)が最も精度よく認識される。また、異なるタイプのパターンを有しているため、たとえば、チップが90度、180度、もしくは270度回転した状態で搭載された場合でも、この角度のズレが検出される。したがって、アセンブリ工程における不良低減、不良検出感度の向上に非常に有効である。また、一般的に、半導体基板10の四隅は、欠陥が多いなどの理由で、回路領域11として用いられないことが多い。したがって、回路領域11を狭めることなく、アライメントマーカー部が設けられる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
以上のように、本発明にかかる半導体装置およびその製造方法は、車載用、産業用、医療用などに用いられる半導体装置の製造に有用であり、特に、ワイヤボンディングやダイボンディングなどのアセンブリ工程に適している。
【符号の説明】
【0058】
1 半導体基板
2 SiO2
3 ポリシリコン膜
4 層間絶縁膜
5 開口部
6 金属膜
7 パッシベーション膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上にアライメントマーカー部の設けられた半導体装置において、
前記アライメントマーカー部は、
前記半導体基板の表面に設けられた層間絶縁膜と、
前記層間絶縁膜に設けられた複数の開口部と、
前記層間絶縁膜と、前記開口部と、の表面に選択的に設けられた位置検出用の金属膜と、
前記層間絶縁膜と、前記金属膜と、の表面に設けられたパッシベーション膜と、
を備え、
前記開口部は、前記半導体基板に近い部分よりも前記パッシベーション膜に近い部分の方が広く開口するような断面形状になっていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
一つの前記開口部の大きさは、同一の前記半導体基板上に形成される素子のコンタクトホールと同程度であり、位置検出するために用いる画像認識装置の一画素の大きさよりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記アライメントマーカー部の大きさは、位置検出するために用いる画像認識装置の一画素の大きさよりも大きいことを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記開口部間の距離は、それぞれ等しいことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の半導体装置。
【請求項5】
前記金属膜の端から最も近傍の前記開口部と、当該金属膜の端と、の距離は、当該開口部間の距離と等しいことを特徴とする請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
少なくとも一つの前記アライメントマーカー部は、他の前記アライメントマーカー部と異なる形状をしていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の半導体装置。
【請求項7】
半導体基板の表面に層間絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程と、
前記絶縁膜形成工程によって形成された層間絶縁膜を、等方性のエッチングによって選択的にエッチングする第1のエッチング工程と、
前記第1のエッチング工程によってエッチングされた領域に、異方性のエッチングによって開口部を形成する第2のエッチング工程と、
前記第2のエッチング工程によって形成された開口部と、前記層間絶縁膜と、の表面に位置検出用の金属膜を選択的に形成する金属膜形成工程と、
前記金属膜形成工程によって形成された位置検出用の金属膜と、前記層間絶縁膜と、の表面にパッシベーション膜を形成する保護膜形成工程と、
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−64967(P2012−64967A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259548(P2011−259548)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【分割の表示】特願2007−199394(P2007−199394)の分割
【原出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】