説明

半導体装置の検査方法および検査装置

【課題】Overkillそのものを防止する半導体装置の検査方法および検査装置を提供する。
【解決手段】検査用ソケットに複数の半導体装置を順に装着し、電気的特性を検査して各半導体装置毎に検査データを蓄積し、検査済み半導体装置を検査データに基づいて良否選別する半導体装置の検査方法において、前記電気的特性の検査には、接触テストが含まれ、該接触テストに合格した半導体装置の、接触テストにおける測定値を蓄積する工程と、該蓄積された接触テストの測定値から演算値を生成する工程と、予め定めた基準値と前記接触テストでの測定値から得られた演算値とを比較して、検査用ソケットの不良を予測する工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の電気的検査方法に関し、特に、被検査半導体装置(Device Under Test。以下、DUTと称する。)が装着されるテスタの検査用ソケット欠陥と関連した、半導体装置の検査方法および検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
テスタは、半導体素子を電気的に検査する機能を有するハードウェアとソフトウェアとが結合された自動化装置である。一般的に、半導体装置は多ピン化の傾向となっている為、テスタとDUTとの接続は、検査用ソケットを介して行われる。半導体装置の電気的特性の検査では、DUTと検査用ソケットを介したテスタとの間で、導通があるかどうかの接触テストが、最初に行われる。このテスト項目で合格(あるいはPassと呼ばれる。)が得られないと、それ以降のテスト項目は実行されず、不良品と判定される。しかし、それらの不良品の中には、前述の検査用ソケットが原因(例えば、検査用ソケット端子の劣化や、当該端子への付着物による導通不良)となって、誤って不良と判定されたものもが含まれている可能性があった。言い換えれば、良品の半導体装置を無駄に廃棄していた可能性があった。
【0003】
そこで、特許文献1や特許文献2のように、接触テストの結果をテスタ内に蓄積し、この接触テストの不良発生頻度がある一定の基準を超えた場合には、そのソケットに半導体装置を供給しないようにして、良品である半導体装置の無駄な廃棄(以降、Overkillとも呼ぶ。)を回避し、無駄な廃棄分を低減していた。
【特許文献1】特開2000−162273号公報
【特許文献2】特開2004−317513号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1や特許文献2の場合、実際に接触不具合が発生し始めてからある程度の頻度になるまでは、依然として検査は続けられるため、Overkillを低減するには自ずと限界がある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決し、Overkillそのものを防止する半導体装置の検査方法および検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
Overkillを低減するには、不具合の状態にある検査用ソケットを、極力早い段階で見つける必要がある。そこで、電気的特性検査の最初に行われる接触テストの結果を収集し、それらの結果の傾向から、各検査用ソケットの良あるいは不良を予測できないかを検討した。その結果、接触テストでPassした被検査半導体装置の、接触テストにおける測定値のみを、テスタ内の保存手段に蓄積し、この蓄積された測定値から、現在の検査を基点に遡って複数回分を選んで基準値を生成し、さらに、この基準値(この基準値は、接触テストでは合格判定値内であるが、テスタ使用開始時の値よりは高い。)に測定値が達した場合に、その検査用ソケットの使用を中止できるようにすれば良いことがわかった。
【0007】
本発明は、以上の知見に基づいてなされたもので、その特徴は以下の通りである。
(1)本発明に係る半導体装置の検査方法は、検査用ソケットに複数の半導体装置を順に装着し、電気的特性を検査して各半導体装置毎に検査データを蓄積し、検査済み半導体装置を検査データに基づいて良否選別する半導体装置の検査方法において、前記電気的特性の検査には、接触テストが含まれ、該接触テストに合格した半導体装置の、接触テストにおける測定値を蓄積する工程と、該蓄積された接触テストの測定値から演算値を生成する工程と、予め定められた基準値と前記接触テストでの測定値から得られた演算値とを比較して、検査用ソケットの不良を予測する工程とを有することを特徴とする。
(2)上記(1)において、検査用ソケットの不良が予測された場合に、その旨を表示させる工程をさらに有することを特徴とする。
(3)本発明に係る半導体装置用テスタは、半導体装置が装着される検査用ソケットと、接触テストにおける測定値を保存する保存手段と、前記接触テストにおける測定値を前記保存手段から読み出して、演算値を生成する演算値生成手段と、予め定められた基準値と前記接触テストでの測定値から得られた演算値とを比較して、前記検査用ソケットの不良を予測する予測手段と、該予測手段により不良が予測された検査用ソケットの使用を中止させる信号を生成する信号生成手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、検査用ソケットの不良を予測して対処できるようになるため、半導体装置の良品が誤って不良品と判定されることを未然に防ぐことができる。また、Overkillを原因とする歩留りの低下を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に係る実施の形態として、CMOSの半導体装置を検査する方法について説明する。接触テストは、電源ピンとGNDピンを0Vに固定し、半導体装置の各端子ピンに対して数十〜数百μAの電流を印加した時の電圧を測定し、その値の絶対値が、良品と判定される最小順方向電圧VminLと最大順方向電圧VmaxLの範囲内にあれば、接触テストはPassと判定するものとする。また、検査を開始する前のソケットは十分クリーニングされており、接触不具合は生じないものとする。図1に、本実施の形態による半導体装置の電気的検査方法を説明するためのフローチャートを示す。以下の説明は、この図1のフローチャートに沿って行い、実施する工程の順番は(1)から(8)までの番号順に行う。
【0010】
(1)先ず、ハンドラとテスタとが結合された準備状態にある検査装置をセットアップする。
【0011】
(2)次いで、テスタのDUTボード上の検査用ソケットに、DUTをハンドラによって設置する(S1001)。
【0012】
(3)次いで、テスタで検査プログラムを運用して、DUTボード上のDUTに対して電気的特性の検査を開始する。先ず、接触テストを行う(S1002)。
【0013】
(4)接触テストの合否判定を行う(S1003)。接触テストが、不合格(以降、failとも呼ぶ。)ならば、検査中のDUTは廃棄し、次の半導体装置の検査に移る(S1013)。接触テストがPassならば、Passの通算の数Nとその時の測定電圧値の絶対値Vm(N)を、テスタに備えられている保存手段に保存する(S1004)。この場合の保存手段は、容量とアクセス速度の点から内蔵されたハードディスクとした。
【0014】
(5)現在の検査から10回分を遡った測定値(Vm(N)からVm(N-9)まで)を選び、これらの測定値から演算値Vav(N)を、a)の式によって算出する。もし、検査回数Nが10回未満である場合は、b)の式を用いる。何れの場合も、Nは任意の整数を示している(S1005)。
a)N≧10の場合
Vav(N)={Vm(N)+Vm(N-1)+Vm(N-2)+Vm(N-3)+Vm(N-4)+Vm(N-5)
+Vm(N-6)+Vm(N-7)+Vm(N-8)+Vm(N-9)}/10
b)N<10の場合
Vav(N)={Vm(N)+Vm(N-1)+Vm(N-2)+Vm(N-3)+…+Vm(4)+Vm(3)+Vm(2)+Vm(1)}/N
なお、演算値Vav(N)の算出は、テスタに設けられた演算値生成手段によって行われる。より具体的には、テスタに設けられた検査プログラムの制御によってソフトウェア的な方法で行われる。
【0015】
(6)上記算出した演算値Vav(N)と予め定めた基準値VCとを比較して、検査用ソケットの不良を予測する(S1006)。具体的には、以下のa)、b)又はc)の何れかの判定となる。
a)N=1の場合、検査用ソケットの不良が予測されないと判定する。
b)N>1で、かつ、Vav(N)>VCの場合、検査用ソケットの不良が予測されると判定する。
c)N>1で、かつ、Vav(N)≦VCの場合、検査用ソケットの不良が予測されないと判定する。
ここで、基準値VCと基準値VCの作成に用いられるVcentは、以下の式にて算出する。
VC=Vcent+{(VmaxL−Vcent)/2}
Vcent=(VminL+VmaxL)/2
【0016】
このように、演算値として、現在の検査から所定回数遡った範囲の検査における測定値の算術平均を採用し、これを基準値と比較することにより、確実に検査用ソケットの不良判定が行える。すなわち、測定誤差によるばらつきの影響を避けながら、検査用ソケットの接触状態の劣化を確実に検出することができる。
【0017】
S1006の判定において、検査用ソケットの不良が予測された場合(上記b)の場合)は、不良判定をハンドラに伝送する。不良判定を受信したハンドラのマイクロプロセッサは、ハンドラ内部のハードウェアを制御して不良状態のソケットに対する使用を中止させる(S1016)。一方、検査用ソケットの不良が予測されない場合(上記a)またはc)の場合)は、そのまま他の電気的特性の検査を継続する(S1007)。上記基準値VCの作成に用いられるVcentの算出、基準値VCの算出、演算値Vav(N)と基準値VCとの比較、および不良の予測判定は、テスタに設けられた予測手段によって行われる。より具体的には、テスタに設けられた検査プログラムの制御によってソフトウェア的な方法で行われる。
【0018】
(7)次いで、前記テスタで電気的特性の検査結果を収集し、テスタに備えられている結果保存手段にこれを保存する(S1008)。電気的特性の検査結果を収集し、テスタ内部に設けられた結果保存手段にそれぞれDUT別に保存する一連の作業は、検査プログラム内部でソフトウェア的に行われる。なお、上述の電気的特性の検査結果には、機能検査結果、漏れ電流検査結果、タイミング検査結果などが含まれる。参考までに、半導体素子の電気的検査においては、あらゆる検査項目に対する詳細な検査結果が、テスタの結果保存手段に記録されて保存される。
【0019】
(8)次いで、結果保存手段に累積された電気的特性の検査結果から、DUTの合否を判定する(S1009)。判定結果は、今まで収集保存された電気的特性の測定結果と共に、DUT別にテスタの結果保存手段に保存される。その後、合格/不合格を判定する分類データをハンドラに伝送する。前記合格/不合格を判定する分類データをテスタから受信したハンドラは、内部のマイクロプロセッサの制御によって、検査が完了したDUTを分類する処理を物理的に行う。不合格と判定されたDUTは、ハンドラにより廃棄されるべき領域に移動される(S1019)。上記DUTの合否の判定は、テスタに設けられた検査プログラムの制御によってソフトウェア的な方法で行われる。
【0020】
以上の検査方法によれば、Passした半導体装置の検査履歴を管理することによって、良品と判定される最小順方向電圧VminLと最大順方向電圧VmaxLの範囲内で検査用ソケットの不良を予測することができる。その結果、半導体装置のOverkillを極力低減することが可能となり、さらに、余分な検査を行う必要がなくなるため、時間と労力の短縮にもなる。
【0021】
なお、本実施の形態では、S1016において、ハンドラ内部のハードウェアを制御して不良状態のソケットに対する使用を中止させたが、その前に、テスタから作業者へ、検査用ソケットのクリーニングや交換を促す警告を発するプログラムを備えても良い。
【0022】
なお、測定電圧値の絶対値Vm(N)を保存する保存手段と、検査結果を保存する結果保存手段は、同一領域(あるいは装置)または別領域(あるいは装置)のどちらであっても良い。保存するデータ量やテスタ装置の条件により、これらを適宜選択すれば良い。また、保存手段と結果保存手段は、必ずしもテスタに内蔵されている必要は無く、電気的にテスタと接続されてデータのやり取りが可能であれば良い。即ち、外付けのハードディスクドライブを用意し、これをテスタと結線することによって実現しても良い。
【0023】
さらに、本実施の形態において、保存手段はハードディスクとしたが、これ以外の記憶手段(RAMやROM等のメモリ類、MO、記録型CDや記録型DVD等の書き込みや書き換えが可能なメディア)によっても、本発明の効果を奏する。
【0024】
なお、上記(5)では、演算値として、測定時点より遡る最大10回分の平均値を算出したが、本発明における演算値算出に係る回数は、これに限定されるものでは無い。DUTのパッケージの種類やピン数、検査用ソケットの使用頻度等によって、演算値算出の回数を適宜選択すれば良い。同様に、上記(5)の基準値の算出方法や(6)の判定条件も、DUTのパッケージの種類やピン数、検査用ソケットの使用頻度等によって、適宜設定することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る実施の形態による半導体装置の検査方法を説明するためのフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査用ソケットに複数の半導体装置を順に装着し、電気的特性を検査して各半導体装置毎に検査データを蓄積し、検査済み半導体装置を検査データに基づいて良否選別する半導体装置の検査方法において、
前記電気的特性の検査には、接触テストが含まれ、
該接触テストに合格した半導体装置の、接触テストにおける測定値を蓄積する工程と、
該蓄積された接触テストの測定値から演算値を生成する工程と、
予め定めた基準値と前記接触テストでの測定値から得られた演算値とを比較して、検査用ソケットの不良を予測する工程とを有することを特徴とする半導体装置の検査方法。
【請求項2】
検査用ソケットの不良が予測された場合に、その旨を表示させる工程をさらに有する
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の検査方法。
【請求項3】
半導体装置が装着される検査用ソケットと、
接触テストにおける測定値を保存する保存手段と、
前記接触テストにおける測定値を前記保存手段から読み出して、演算値を生成する演算値生成手段と、
予め定めた基準値と前記接触テストでの測定値から得られた演算値とを比較して、前記検査用ソケットの不良を予測する予測手段と、
該予測手段により不良が予測された検査用ソケットの使用を中止させる信号を生成する信号生成手段とを有することを特徴とする半導体装置用テスタ。

【図1】
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【公開番号】特開2007−263575(P2007−263575A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−85099(P2006−85099)
【出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【出願人】(501285133)川崎マイクロエレクトロニクス株式会社 (449)
【Fターム(参考)】