説明

半導体装置

【課題】複数のマスタやスレーブを接続する場合のインターコネクトを低レイテンシ及び低コストで実現する。
【解決手段】データ転送に使用される第1インタフェース(201,301)と、データ転送の競合を調停するための信号の伝達に使用される第2インタフェース(202,302)とを含んで転送系回路(13)を形成する。上記第1インタフェースは、パラレル形式のデータをシリアル形式に変換するパラレル・シリアル変換回路(132,142)を含む。上記パラレル・シリアル変換回路の出力データの転送速度は、上記第2インタフェースにおける信号伝達速度に比べて高速に設定される。上記第2インタフェースは、上記複数の送信側回路からのデータ転送の競合を調停するアービタ(133,143)を含む。上記アービタによる調停後に、上記第1インタフェースを介して多量のデータを転送可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置、さらにはそれにおける回路ブロック間のインターコネクト技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電子回路の構成要素同士を互いに接続する技術をインターコネクト(相互接続)技術という。このインターコネクト技術には、半導体チップ上の回路ブロック同士の接続に向けた技術も含まれる。一つの半導体チップに多数の機能を搭載する技術をシステム・オン・チップ(SoC)という。このSoCでは、半導体チップ上に作り込む回路ブロック間のインターコネクトによってシステム全体の処理性能が決まってしまうことが少なくない。従ってSoCの設計においては、回路ブロック間のインターコネクトをどのように設計するかが極めて重要とされる。インターコネクトはパラレルからシリアルへと進化しており、PCI ExpressやSATA(Serial Advanced Technology Attachment)など、数GHzで動作する1−16ビットのシリアルインターコネクトが業界標準として広く用いられている。
【0003】
特許文献1には、バス調停要求とバス調停の応答の二つを高速に動作させ、データ/アドレス用を低速に動作させるようにした技術や、優先度付きのバス調停要求を高速に扱うための技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】2000−250851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のシリアルインタコネクトによれば、同時に複数のマスタから一つのスレーブに対して同時にアクセスアクセスが発生したときの調停が困難である。例えばPCI ExpressやSATAでは、1対1のインターコネクトであるから、複数のマスタやスレーブを接続する場合には、複数のインターコネクトを有する「ハブ」を介在させる必要がある。ハブは、これらのインタフェースから受信したパケットを一旦取り込んでから再送信するため、パケットの通過に要する時間が長い。また、受信したパケットを格納するための大容量のバッファが必要となることから製造コストの低減が困難とされる。尚、このような課題は、特許文献1では考慮されていない。
【0006】
本発明の目的は、複数のマスタやスレーブを接続する場合のインターコネクトを低レイテンシ及び低コストで実現するための技術を提供することにある。
【0007】
本発明の前記並びにその他の目的と新規な特徴は本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願において開示される発明のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば下記の通りである。
【0009】
すなわち、複数の送信側回路と、上記送信側回路の出力データを受信する受信側回路と、上記送信側回路と上記受信側回路との間に介在された転送系回路とを含んで半導体装置が構成される。このとき、上記転送系回路は、上記送信側回路から上記受信側回路へのデータ転送に使用される第1インタフェースと、上記複数の送信側回路からのデータ転送の競合を調停するための信号の伝達に使用される第2インタフェースとを含む。上記第1インタフェースは、上記送信側回路からのパラレル形式のデータをシリアル形式に変換するパラレル・シリアル変換回路を含み、且つ、上記パラレル・シリアル変換回路の出力データの転送速度は、上記第2インタフェースにおける信号伝達速度に比べて高速に設定される。上記第2インタフェースは、上記送信側回路からパラレル形式で出力される信号に基づいて上記複数の送信側回路からのデータ転送の競合を調停するアービタを含む。
【0010】
上記の構成によれば、上記第1インタフェースにより、多量の情報を送信側回路から受信側回路に転送することができるので、送信側回路から受信側回路への通信において低レイテンシ及び高スループットを実現することができる。また上記の構成によれば、受信したパケットを格納するための大容量のバッファが不要となり、このことが、半導体装置のコストの低下を達成する。
【発明の効果】
【0011】
本願において開示される発明のうち代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば下記のとおりである。
【0012】
すなわち、複数のマスタやスレーブを接続する場合のインターコネクトを低レイテンシ及び低コストで実現するための技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明にかかる半導体装置の一例とされるSoCの構成例ブロック図である。
【図2】上記SoCにおけるリクエストパケット転送系回路の構成例ブロック図である。
【図3】上記SoCにおけるレスポンスパケット転送系回路の構成例ブロック図である。
【図4】コモンクロック方式の基本的な構成例回路図である。
【図5】ソース同期方式の基本的な構成例回路図である。
【図6】上記リクエストパケット転送系回路におけるアドレスデコーダ及びパラレル・シリアル変換回路の構成例回路図である。
【図7】上記リクエストパケット転送系回路におけるリピータの構成例回路図である。
【図8】上記リクエストパケット転送系回路におけるシリアル・パラレル変換回路の構成例ブロック図である。
【図9】上記シリアル・パラレル変換回路に含まれるシフトレジスタの構成例回路図である。
【図10】上記SoCにおける主要部の動作タイミング図である。
【図11】上記SoCにおける主要部の別の動作タイミング図である。
【図12】リクエストパケット転送における各信号の説明図である。
【図13】レスポンスパケット転送における各信号の説明図である。
【図14】イニシエータとターゲットとの接続状態の説明図である。
【図15】上記SoCの別の構成例を示すブロック図である。
【図16】図15に示される構成における主要部の動作タイミング図である。
【図17】上記SoCの別の構成例における主要部の動作タイミング図である。
【図18】リクエストパケット転送における各信号の説明図である。
【図19】レスポンスパケット転送における各信号の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1.実施の形態の概要
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。代表的な実施の形態についての概要説明で括弧を付して参照する図面中の参照符号はそれが付された構成要素の概念に含まれるものを例示するに過ぎない。
【0015】
〔1〕本発明の代表的な実施の形態に係る半導体装置(10)は、複数の送信側回路(11,12)と、上記送信側回路の出力データを受信する受信側回路(14,15)と、上記送信側回路と上記受信側回路との間に介在された転送系回路(13)とを含む。このとき、上記転送系回路は、データ転送に使用される第1インタフェース(201,301)と、上記複数の送信側回路からのデータ転送の競合を調停するための信号の伝達に使用される第2インタフェース(202,302)とを含む。上記第1インタフェースは、上記送信側回路からのパラレル形式のデータをシリアル形式に変換するパラレル・シリアル変換回路(132,142,152,162)を含み、且つ、上記パラレル・シリアル変換回路の出力データの転送速度は、上記第2インタフェースにおける信号伝達速度に比べて高速に設定される。上記第2インタフェースは、上記送信側回路からパラレル形式で出力される信号に基づいて上記複数の送信側回路からのデータ転送の競合を調停するアービタ(133,143,153,163)を含む。
【0016】
〔2〕上記〔1〕において、上記パラレル・シリアル変換回路の出力信号を選択的に後段回路に伝達するためのセレクタ(134,145,154,164)と、上記セレクタの後段に配置され、上記セレクタの出力信号の波形整形を行うリピータ(135,145,155,165)とを設けることができる。
【0017】
〔3〕上記〔2〕において、上記パラレル・シリアル変換回路は、上記パラレル形式のデータを順次選択することでシリアル形式の情報伝達信号を形成する選択回路(132F)と、上記選択回路の選択動作を制御可能な制御信号を形成するフリップフロップ回路(132D)とを設けることができる。
【0018】
〔4〕上記〔3〕において、上記リピータの後段には、上記リピータの出力信号をパラレル形式のデータに変換するシリアル・パラレル変換回路(136,146,156,166)を配置することができる。
【0019】
〔5〕上記〔3〕において、第1クロック信号を生成する第1クロック生成回路(16)と、上記第1クロック信号に基づいて、上記第1クロック信号よりも周波数が高い第2クロック信号を形成する第2クロック生成回路(132G)とを設けることができる。この場合に、上記複数の送信側回路からのデータ転送の競合を調停するための信号の伝達は、コモンクロック方式により上記第1クロック信号に同期して行われ、
上記選択回路の出力データの転送は、ソース同期方式により上記第2クロック信号に同期して行われる。
【0020】
〔6〕上記〔5〕において、第1インタフェースにおける配線は、上記第2インタフェースにおける配線よりも細くすることができる。
【0021】
〔7〕上記〔5〕において、上記第2クロック生成回路は、上記第1クロック信号を逓倍することで上記第2クロック信号を形成するPLL回路を含んで構成することができる。
【0022】
〔8〕上記〔5〕において、上記シリアル・パラレル変換回路は、上記第2クロック信号に同期して上記リピータの出力信号をパラレル形式のデータに変換するように構成することができる。
【0023】
〔9〕上記〔3〕において、所定周波数のクロック信号を生成するクロック生成回路(16)を設け、上記複数の送信側回路からのデータ転送の競合を調停するための信号の伝達は、上記第1クロック信号の波形立ち上がりエッジに同期して行い、上記選択回路の出力データの転送は、上記クロック信号の波形立ち上がりエッジ及び波形立ち下がりエッジに同期して行うことができる。
【0024】
〔10〕上記〔8〕において、上記受信側回路を複数設け、上記アービタ(133,143)は、入力アドレス信号をデコードすることで、上記複数の受信側回路のうちの一つを選択可能なデコーダを含んで構成することができる。
【0025】
2.実施の形態の詳細
実施の形態について更に詳述する。
【0026】
<実施の形態1>
図1には、本発明にかかる半導体装置の一例とされるSoC(System On a Chip)が示される。このSoC10は、特に制限されないが、イニシエータ11,12、パケット転送系回路13、ターゲット14,15、及び低速クロック生成部16を含み、公知の半導体集積回路製造技術により単結晶シリコン基板などのひとつの半導体基板に形成される。上記イニシエータ11,12は、SCSI(Small Computer System Interface)規格により接続された機器に命令を発するデバイスであり、例えばCPU(中央処理装置)などのマスタである。ターゲット14,15は、上記イニシエータ11,12からの命令を受け取る側のデバイスであり、例えば半導体メモリなどのスレーブとされる。例えば上記イニシエータ11(又は12)がリクエストパケット(アクセス要求)をターゲット14(又は15)に送信し、このターゲット14(又は15)が上記イニシエータ11(又は12)にレスポンスパケット(アクセス応答)を送信することで転送が行われる。パケット転送系回路13は、上記イニシエータ11,12と上記ターゲット14,15との間のパケット転送を行う。そのようなパケット転送系回路13は、リクエストパケット転送系回路13Aとレスポンスパケット転送系回路13Bとを含む。上記リクエストパケット転送系回路13Aは、上記イニシエータ11又は12からのリクエストパケットを上記ターゲット14又は15に転送する。上記レスポンスパケット転送系回路13Bは、上記イニシエータ11又は12からのレスポンスパケットを上記イニシエータ11又は12に転送する。上記イニシエータ11,12からのリクエストパケットの調停は、リクエストパケット転送系回路13Aで行われ、上記ターゲット14,15からのレスポンスパケットの調停は、上記レスポンスパケット転送系回路13Bで行われる。低速クロック生成部16は、このSoC10の基本クロック信号とされる低速クロック信号を形成する。この低速クロック信号は、上記イニシエータ11,12、上記パケット転送系回路13、及び上記ターゲット14,15に伝達される。
【0027】
図2には、上記リクエストパケット転送系回路13Aの構成例が示される。
【0028】
上記リクエストパケット転送系回路13Aは、アドレスデコーダ131,141、パラレル・シリアル変換回路132,142、アービタ133,143、セレクタ134,144、リピータ135,145、シリアル・パラレル変換回路136,146を含む。
【0029】
上記イニシエータ11,12は、アクセス要求送信信号req、アドレス信号add、アクセス要求終了信号eop、排他制御要求信号lck、アクセス優先度信号pri、アクセス種別信号opc、ライトデータdata、バイトイネーブル信号be、アクセス元識別子信号src、アクセス識別子信号tidを出力する。
【0030】
上記アドレスデコーダ131は、上記イニシエータ11からアクセス要求送信信号req及びアドレス信号addを取り込み、それをデコードすることによって、各アービタ133,143に対するアクセス要求信号を生成する。アービタ133に対するアクセス要求信号はアービタ133に伝達され、アービタ143に対するアクセス要求信号はアービタ143に伝達される。
【0031】
上記アドレスデコーダ141は、上記イニシエータ12からアクセス要求送信信号req及びアドレス信号addを取り込み、それをデコードすることによって、各アービタ133,143に対するアクセス要求信号を生成する。アービタ133に対するアクセス要求信号はアービタ133に伝達され、アービタ143に対するアクセス要求信号はアービタ143に伝達される。
【0032】
上記パラレル・シリアル変換回路132は、上記イニシエータ11からアクセス要求送信信号req、アドレス信号add、アクセス種別信号opc、ライトデータdata、バイトイネーブル信号be、アクセス元識別子信号src、アクセス識別子信号tidを取り込んで、高速クロック信号に同期する情報伝達信号CADを形成する。形成された情報伝達信号CADは、セレクタ134,144に伝達される。
【0033】
上記パラレル・シリアル変換回路142は、上記イニシエータ12からアクセス要求送信信号req、アドレス信号add、アクセス種別信号opc、ライトデータdata、バイトイネーブル信号be、アクセス元識別子信号src、アクセス識別子信号tidを取り込んで、高速クロック信号に同期する情報伝達信号CADを形成する。形成された情報伝達信号CADは、セレクタ134,144に伝達される。
【0034】
上記アービタ133は、上記ターゲット14に対応するもので、上記イニシエータ11,12から上記ターゲット14へのアクセス要求を調停する機能を有する。上記アービタ133には、上記アドレスデコーダ131,141からアクセス要求がなされる。また、上記アービタ133には、上記イニシエータ11,12からアクセス要求終了信号eop、排他制御要求信号lck、アクセス優先度信号priが伝達される。上記アービタ133は、上記ターゲット14へのアクセス要求が競合した場合にその調停を行う。この調停において、排他制御要求信号lckにより他のイニシエータが排除されているか否かの判別や、当該アクセスの優先度が判別される。そして上記アービタ133は、上記調停結果に基づいて、上記パラレル・シリアル変換回路132,142へのアクセス許可信号や、セレクタ134への選択信号を形成する。例えば上記イニシエータ11からのアクセス要求が優先される場合には、上記パラレル・シリアル変換回路132へのアクセス許可信号がアサートされ、セレクタ134によってパラレル・シリアル変換回路132からの情報伝達信号CADが選択的に上記リピータ135に伝達される。また、上記イニシエータ12からのアクセス要求が優先される場合には、上記パラレル・シリアル変換回路142へのアクセス許可信号がアサートされ、セレクタ134によってパラレル・シリアル変換回路142からの情報伝達信号CADが選択的に上記リピータ135に伝達される。
【0035】
上記セレクタ134は、上記アービタ133からの選択信号に基づいて、上記パラレル・シリアル変換回路132,142からの情報伝達信号CADを選択的に後段のリピータ135に伝達する。上記リピータ135は、上記セレクタ134から伝達された情報伝達信号CADを波形整形してから上記シリアル・パラレル変換回路136に伝達する。
【0036】
上記アービタ143は、上記ターゲット15に対応するもので、上記イニシエータ11,12から上記ターゲット15へのアクセス要求を調停する機能を有する。上記アービタ143には、上記アドレスデコーダ131,141からアクセス要求信号がなされる。また、上記アービタ143には、上記イニシエータ11,12からアクセス要求終了信号eop、排他制御要求信号lck、アクセス優先度信号priが伝達される。上記アービタ143は、上記ターゲット15へのアクセス要求が競合した場合にその調停を行う。この調停において、排他制御要求信号lckにより他のイニシエータが排除されているか否かの判別や、当該アクセスの優先度が判別される。そして上記アービタ143は、上記調停結果に基づいて、上記パラレル・シリアル変換回路132,142へのアクセス許可信号や、セレクタ144への選択信号を形成する。例えば上記イニシエータ11からのアクセス要求が優先される場合には、上記パラレル・シリアル変換回路132へのアクセス許可信号がアサートされ、セレクタ144によってパラレル・シリアル変換回路132からの情報伝達信号CADが選択的に上記リピータ145に伝達される。また、上記イニシエータ12からのアクセス要求が優先される場合には、上記パラレル・シリアル変換回路142へのアクセス許可信号がアサートされ、セレクタ144によってパラレル・シリアル変換回路142からの情報伝達信号CADが選択的に上記リピータ145に伝達される。
【0037】
上記セレクタ144は、上記アービタ143からの選択信号に基づいて、上記パラレル・シリアル変換回路132,142からの情報伝達信号CADを選択的に後段のリピータ145に伝達する。上記リピータ145は、上記セレクタ144から伝達された情報伝達信号CADを波形整形してから上記シリアル・パラレル変換回路146に伝達する。
【0038】
上記シリアル・パラレル変換回路136は、上記アービタ133や上記ターゲット14との間で、アクセス要求送信信号req、アクセス許可信号gnt、及びアクセス終了信号eopのやり取りを行う。また、上記シリアル・パラレル変換回路136は、上記リピータ135から伝達された情報伝達信号CADをパラレルデータに変換する。そしてこの変換により得られた各信号、すなわち、アドレス信号add、アクセス種別信号opc、ライトデータdata、バイトイネーブル信号be、アクセス元識別子信号src、アクセス識別子信号tidがターゲット14に伝達される。
【0039】
上記シリアル・パラレル変換回路146は、上記アービタ143や上記ターゲット15との間で、アクセス要求送信信号req、アクセス許可信号gnt、及びアクセス終了信号eopのやり取りを行う。また、上記シリアル・パラレル変換回路146は、上記リピータ145から伝達された情報伝達信号CADをパラレルデータに変換する。そしてこの変換により得られた各信号、すなわち、アドレス信号add、アクセス種別信号opc、ライトデータdata、バイトイネーブル信号be、アクセス元識別子信号src、アクセス識別子信号tidがターゲット15に伝達される。
【0040】
上記パラレル・シリアル変換回路132,142を含んで高速側インタフェース201が形成され、上記アービタ133,143を含んで低速側インタフェース202が形成される。
【0041】
図3には、上記レスポンスパケット転送系回路13Bの構成例が示される。
【0042】
上記レスポンスパケット転送系回路13Bは、ソースデコーダ151,161、パラレル・シリアル変換回路152,162、アービタ153、セレクタ154、リピータ155、シリアル・パラレル変換回路156,166を含む。
【0043】
上記ターゲット14,15は、アクセス要求信号r_req、アクセス元識別子信号r_src、アクセス終了信号r_eop、アクセス応答種別信号r_opc、リードデータr_data、アクセス識別子信号r_tidを出力する。
【0044】
上記ソースデコーダ151は、上記ターゲット14からアクセス要求信号r_req及びアクセス元識別子信号r_srcを取り込み、それをデコードすることによって、各アービタ153,163に対するアクセス要求信号を生成する。アービタ153に対するアクセス要求信号はアービタ153に伝達され、アービタ163に対するアクセス要求信号はアービタ163に伝達される。
【0045】
上記ソースデコーダ161は、上記ターゲット15からアクセス要求信号r_req及びアクセス元識別子信号r_srcを取り込み、それをデコードすることによって、各アービタ153,163に対するアクセス要求信号を生成する。アービタ153に対するアクセス要求信号はアービタ153に伝達され、アービタ163に対するアクセス要求信号はアービタ163に伝達される。
【0046】
上記パラレル・シリアル変換回路152は、上記ターゲット14からアクセス応答送信信号r_req、アクセス元識別子信号r_src、アクセス応答種別信号r_opc、リードデータr_data、アクセス識別子信号r_tidを取り込んで、高速クロック信号に情報伝達信号R_CADを形成する。形成された情報伝達信号R_CADは、セレクタ154,164に伝達される。
【0047】
上記アービタ153は、上記イニシエータ11に対応するもので、上記ターゲット14,15から上記イニシエータ11へのアクセス要求を調停する機能を有する。上記アービタ153には、上記ソースデコーダ151,161からアクセス要求信号が伝達され、上記ターゲット14,15からアクセス応答終了信号r_eopが伝達される。上記アービタ153は、上記イニシエータ11へのアクセス要求の調停結果に基づいて、上記パラレル・シリアル変換回路152,162へのアクセス許可信号や、セレクタ154への選択信号を形成する。
【0048】
上記セレクタ154は、上記アービタ153からの選択信号に基づいて、上記パラレル・シリアル変換回路152,162からの情報伝達信号R_CADを選択的に後段のリピータ155に伝達する。リピータ155は、上記セレクタ154から伝達された情報伝達信号R_CADを波形整形してから上記シリアル・パラレル変換回路136に伝達する。
【0049】
上記アービタ163は、上記イニシエータ12に対応するもので、上記ターゲット14,15から上記イニシエータ12へのアクセス要求を調停する機能を有する。上記アービタ163には、上記ソースデコーダ151,161からアクセス要求信号が伝達され、上記ターゲット14,15からアクセス応答終了信号r_eopが伝達される。上記アービタ163は、上記イニシエータ12へのアクセス要求の調停結果に基づいて、上記パラレル・シリアル変換回路152,162へのアクセス許可信号や、セレクタ164への選択信号を形成する。
【0050】
上記セレクタ164は、上記アービタ163からの選択信号に基づいて、上記パラレル・シリアル変換回路152,162からの情報伝達信号R_CADを選択的に後段のリピータ165に伝達する。リピータ165は、上記セレクタ164から伝達された情報伝達信号R_CADを波形整形してから上記シリアル・パラレル変換回路166に伝達する。
【0051】
上記シリアル・パラレル変換回路156は、上記アービタ153や上記イニシエータ11との間で、アクセス要求信号r_req、アクセス許可信号r_gnt、及びアクセス終了信号r_eopのやり取りを行う。また、上記シリアル・パラレル変換回路156は、上記リピータ155から伝達された情報伝達信号R_CADをパラレルデータに変換する。そしてこの変換により得られた各信号、すなわち、アクセス元識別子信号r_src、アクセス応答種別信号r_opc、リードデータr_data、アクセス識別子信号r_tidがイニシエータ11に伝達される。
【0052】
上記シリアル・パラレル変換回路166は、上記アービタ163や上記イニシエータ12との間で、アクセス要求信号r_req、アクセス許可信号r_gnt、及びアクセス終了信号r_eopのやり取りを行う。また、上記シリアル・パラレル変換回路156は、上記リピータ155から伝達された情報伝達信号R_CADをパラレルデータに変換する。そしてこの変換により得られた各信号、すなわち、アクセス元識別子信号r_src、アクセス応答種別信号r_opc、リードデータr_data、アクセス識別子信号r_tidがイニシエータ11に伝達される。
【0053】
上記パラレル・シリアル変換回路152,162を含んで高速側インタフェース301が形成され、上記アービタ153,163を含んで低速側インタフェース302が形成される。
【0054】
ここで、上記リクエストパケット転送系回路13Aや上記レスポンスパケット転送系回路13Bで行われるパケット転送における同期方式について説明する。
【0055】
データ転送における同期方式として、コモンクロック方式とソース同期方式とを挙げることができる。
【0056】
コモンクロック方式は、例えば図4に示されるように、データの送信側回路401と受信側回路402とは、共通のクロック生成部403から、同じクロック信号を受けて動作する。しかし、動作周波数が高い回路では、データを受け渡しするタイミングで互いのデータに食い違いが起きてしまう虞れがある。そこでより高速な回路では、ソース同期方式が使われる。このソース同期方式は、例えば図5に示されるように、クロック生成部503で生成されたクロック信号は、データと並列に送信側回路501から送信されて、同じ遅延時間で受信側回路502に受信される。クロック生成部503で生成されたクロック信号に対するデータ信号のタイミングは、そのまま受信側回路502に伝達されるので、良好なデータ転送が可能になる。本例では、低速側インタフェース202,302の信号は、コモンクロック方式で伝達し、高速側インタフェース201,301の信号は、ソース同期方式で転送するようにしている。例えば送信側回路401がイニシエータ11又は12とされるとき、受信側回路402は上記ターゲット14又は15とされる。例えば送信側回路501がパラレル・シリアル変換回路132又は142とされるとき、受信側回路502はリピータ135又は145とされる。また、送信側回路501がリピータ135又は145とされるとき、受信側回路502はシリアル・パラレル変換回路136又は146とされる。図2に示されるリクエストパケット転送系回路13Aにおいて、低速側インタフェース202の信号には、アクセス要求の調停のために必要となる信号、すなわち、アクセス要求送信信号req、アクセス要求許可信号gnt、アクセス要求終了信号eop、排他制御要求信号lck、アクセス優先度信号priが含まれる。図2に示されるリクエストパケット転送系回路13Aにおいて、高速側インタフェース201の信号には、情報伝達を行うための情報伝達信号CADが含まれる。図3に示されるレスポンスパケット転送系回路13Bにおいて、低速側インタフェース302の信号には、アクセス要求の調停のために必要となる信号、すなわち、アクセス応答送信信号r_req、アクセス応答許可信号r_gnt、アクセス応答終了信号r_eopが含まれ、高速側インタフェース301の信号には、情報伝達信号R_CADが含まれる。尚、コモンクロック方式では低速クロック生成部16で生成された低速クロック信号が用いられ、ソース同期方式では、上記低速クロック信号に基づいて生成された高速クロック信号が用いられる。
【0057】
図6には、上記アドレスデコーダ131及び上記パラレル・シリアル変換回路132の構成例が示される。
【0058】
上記アドレスデコーダ131は、2入力のアンドゲート131A,131Bを含む。このアンドゲート131A,131Bにおいて、イニシエータ11からのアクセス要求送信信号reqと、イニシエータ11からの第39ビット目のアドレス信号add〔39〕との論理演算が行われることで、アクセス要求信号が形成されるようになっている。かかる構成によれば、第39ビット目のアドレス信号add〔39〕の論理に応じて、アービタ133へのアクセス要求信号とアービタ143へのアクセス要求信号とが選択的にアサートされる。
【0059】
上記パラレル・シリアル変換回路132は、gnt生成回路132A、加算回路132B、制御信号選択回路132C、フリップフロップ回路132D、strobe生成回路132E、選択回路132F、及び高速クロック生成部132Gを含む。
【0060】
上記高速クロック生成部132Gは、例えばPLL(Phase Locked Loop)回路とされ、上記低速クロック生成部16で生成された低速クロック信号を逓倍することで、上記低速クロック信号に同期し、且つ上記低速クロック信号よりも高い周波数の高速クロック信号を形成する。形成された高速クロック信号は、ソース同期のため、フリップフロップ回路132Dや、セレクタ134,144などに伝達される。上記gnt生成回路132Aは、アクセス要求送信信号reqとアクセス許可信号とに基づいてデータを送信できるか否かを判断する回路であり、上記シリアル・パラレル変換回路156が低速クロック信号1サイクル分のデータを送信できればアクセス要求許可信号gntがハイレベルとされる。加算回路132Bは、上記フリップフロップ回路132Dの出力信号に「1」を加算する。制御信号選択回路132Cは、アクセス要求許可信号gntがハイレベルのとき、加算回路132Bの出力信号を選択し、アクセス要求許可信号gntがローレベルのとき、フリップフロップ回路132Dの出力信号を選択する。上記フリップフロップ回路132Dは、高速クロック信号に同期して上記制御信号選択回路132Cの出力信号を取り込む。フリップフロップ回路132Dの出力信号は3ビット構成の制御信号とされる。この3ビット構成の制御信号は選択回路132Fやstrobe生成回路132Eに伝達される。strobe生成回路132Eは、パラレル・シリアル変換回路132の出力信号の有効性を示すストローブ信号strobeを形成する。上記3ビット構成の制御信号が「000」のとき、ストローブ信号strobeはローレベルとされ、上記3ビット構成の制御信号が「000」以外のとき、ストローブ信号strobeはハイレベルとされる。上記ストローブ信号strobeはセレクタ134,144に伝達される。上記選択回路132Fは、上記フリップフロップ回路132Dの出力信号に従って、イニシエータ11からのパラレル出力信号を順次選択することでシリアル信号に変換する。上記選択回路132Fの選択動作により、32ビット構成の情報伝達信号CAD〔31:0〕が形成される。この情報伝達信号CAD〔31:0〕はセレクタ134,144に伝達される。
【0061】
ここで、イニシエータ11からのパラレル出力信号を、add〔39:28〕,0、add〔27:4〕,opc〔7:0〕、data〔127:96〕、data〔95:64〕、data〔63:32〕、data〔31:0〕、be〔15:0〕、src〔7:0〕、tid〔7:0〕とすると、情報伝達信号CAD〔31:0〕は次のように形成される。
【0062】
制御信号が「001」のとき、情報伝達信号CAD〔31:0〕は、add〔39:28〕,0とされる。制御信号が「010」のとき、情報伝達信号CAD〔31:0〕は、add〔27:4〕,opc〔7:0〕制御信号が「011」のとき、情報伝達信号CAD〔31:0〕は、data〔127:96〕とされる。制御信号が「100」のとき、情報伝達信号CAD〔31:0〕は、data〔95:64〕とされる。制御信号が「101」のとき、情報伝達信号CAD〔31:0〕は、data〔63:32〕とされる。制御信号が「110」のとき、情報伝達信号CAD〔31:0〕は、data〔31:0〕とされる。制御信号が「111」のとき、情報伝達信号CAD〔31:0〕は、be〔15:0〕、src〔7:0〕、tid〔7:0〕とされる。
【0063】
上記アドレスデコーダ141は、上記アドレスデコーダ131と同一構成とされ、上記パラレル・シリアル変換回路142は、上記パラレル・シリアル変換回路132と同一構成とされる。また、ソースデコーダ151,161は、上記アドレスデコーダ131と同様に構成することができ、パラレル・シリアル変換回路152,162は、上記パラレル・シリアル変換回路132と同様に構成することができる。
【0064】
図7には、上記リピータ135の構成例が示される。
【0065】
上記リピータ135は、フリップフロップ回路135A,135Bと、インバータ135C,135Dとが結合されて成る。フリップフロップ回路135Aの出力信号は後段のフリップフロップ回路135Bのデータ入力端子Dに伝達される。インバータ135C,135Dは互いに直列接続される。インバータ135Cの出力はフリップフロップ回路135Aのクロック入力端子に伝達され、インバータ135Dの出力はフリップフロップ回路135Bのクロック入力端子に伝達される。フリップフロップ回路135Aのデータ入力端子には、上記セレクタ134を介してストローブ信号strob又は情報伝達信号CAD〔31:0〕の1ビットが伝達される。インバータ135Cには、上記セレクタ134を介して高速クロック信号が伝達される。このような回路構成は、リピータ135への入力信号の数だけ設けられる。本例では、セレクタ134を介してストローブ信号strob及びCAD〔31:0〕が伝達されるため、フリップフロップ回路135A,135Bと、インバータ135C,135Dとが結合されて成る回路は33個設けられ、各回路において、それぞれ対応する入力信号の波形整形が行われる。
【0066】
尚、他のリピータ145,155,165には、上記リピータ135と同一構成のものを適用することができる。
【0067】
図8には、上記シリアル・パラレル変換回路136の構成例が示される。
【0068】
上記シリアル・パラレル変換回路136は、シフトレジスタ136A,136B,136C,136D、書き込み制御回路136E、読み出し選択回路136F、読み出し制御回路136G、アクセス許可信号生成回路136Hを含む。上記シフトレジスタシフトレジスタ136A,136B,136C,136Dには、上記リピータ135を介して、ストローブ信号strobe、CAD〔31:0〕、及び高速クロック信号が伝達される。また、上記シフトレジスタ136A,136B,136C,136Dには、書き込み制御回路136Eからマスク信号が伝達される。上記シフトレジスタ136A,136B,136C,136Dは、上記マスク信号によって書き込みがマスクされる。上記書き込み制御回路136Eには、上記リピータ135を介してストローブ信号strobe及び高速クロック信号が伝達される。書き込み制御回路136Eは、低速クロック信号の1サイクル分のデータが上記シフトレジスタ136A,136B,136C,136Dに伝達される毎に、マスク信号の値を変更することにより、上記シフトレジスタ136A,136B,136C,136Dの順に書き込みが行われるように制御する。上記読み出し選択回路136Fは、読み出し制御信号136Gに基づいて上記シフトレジスタ136A,136B,136C,136Dの出力信号を選択することによって、add〔39:28〕,0、add〔27:4〕,opc〔7:0〕、data〔127:96〕、data〔95:64〕、data〔63:32〕、data〔31:0〕、be〔15:0〕、src〔7:0〕、tid〔7:0〕を得る。上記読み出し制御回路136Gには、アクセス要求送信信号req、アクセス許可信号gnt、アクセス終了信号eopが伝達される。上記読み出し制御回路136Gは、低速クロック信号の1サイクル分のデータを読み出す毎に、読み出し制御信号の値を変更することにより、上記シフトレジスタ136A,136B,136C,136Dの順に読み出しが行われるように制御する。上記アクセス許可信号生成回路136Hは、このシリアル・パラレル変換回路136Hがデータを受信できる場合にアクセス許可信号をハイレベルにする。また上記アクセス許可信号生成回路136Hは、アクセス要求送信信号reqとアクセス許可信号gntとに基づいて、送出したデータ量を算出し、アクセス要求信号とアクセス終了信号とに基づいて、受信したデータ量を計測する。ここで、送出したデータ量と受信したデータ量との差分が一定値以内であれば、アクセス許可信号をアサートする。本例では、シフトレジスタ136A,136B,136C,136Dが、低速クロック信号の4サイクル分のデータを保持できる構成であるため、低速クロック信号の4サイクル分のデータを受信したら、アクセス許可信号をネゲートするようにしている。また、受信したデータ量が、送出したデータ量よりも多い場合には、アクセス要求信号erqをアサートする。
【0069】
シリアル・パラレル変換回路146は、上記シリアル・パラレル変換回路136と同一構成とされる。また、他のシリアル・パラレル変換回路156,166は、上記シリアル・パラレル変換回路136と同様に構成することができる。
【0070】
図9には、上記シフトレジスタ136Aの構成例が示される。
【0071】
上記シフトレジスタ136Aは、2入力アンドゲート901と、イネーブル端子を備えたフリップフロップ回路902〜908を含む。マスク信号とストローブ信号strobeとのアンド論理がアンドゲート901で得られ、このアンドゲート901の出力信号が上記フリップフロップ回路902〜908のイネーブル端子ENに伝達される。CAD〔31:0〕は、上記フリップフロップ回路902のデータ入力端子Dに伝達され、高速クロック信号は、上記フリップフロップ回路902のクロック入力端子に伝達される。上記フリップフロップ回路902〜908のイネーブル端子ENがハイレベルとされるとき、データ出力端子Qの値は、高速クロック信号の波形立ち上がりエッジに同期してデータ入力端子Dの値で更新される。上記フリップフロップ回路902〜908のイネーブル端子ENがローレベルとされるとき、データ出力端子Qの値は更新されない。
【0072】
尚、他のシフトレジスタ136B,136C,136Dには、上記シフトレジスタ136と同一構成のものを適用することができる。
【0073】
図10には、上記リクエストパケット転送系回路13Aにおける主要部の動作タイミングが示される。
【0074】
アクセス要求、アクセス許可、アクセス終了に関する信号、すなわち、req、gnt、eopや、r_req、r_gnt、r_eopは、コモンクロック方式(図4参照)により、低速クロック生成部16で生成された低速クロック信号に同期して後段回路に伝達される。これに対して、情報伝達信号CADやR_CADは、ソース同期方式(図5参照)により、高速クロック生成部132Gで生成された高速クロック信号に同期して後段回路に転送される。
【0075】
実施の形態1によれば、以下の作用効果を奏する。
【0076】
(1)一般に低速クロック信号に同期する信号は、回路での処理が比較的容易である反面、一定時間内に伝達できる情報量は少ない。一方、高速クロック信号に同期する信号は取り扱いが難しい反面、一定時間内に多量の情報を伝達できる。そこで、リクエストパケット転送系回路13A及びレスポンスパケット転送系回路13Bにおいては、それぞれ送信側から受信側へのデータ転送に使用される高速側インタフェース201,301と、上記データ転送の競合を調停するための信号の伝達に使用される低速側インタフェース202,302とを設ける。高速側インタフェース201,301では、高速クロック信号に同期してデータ転送を行い、低速側インタフェース202,302では、低速クロック信号に同期して、調停のための信号の伝達を行うようにしている。上記高速側インタフェース201,301は、パラレル形式のデータをシリアル形式に変換するパラレル・シリアル変換回路132,142,152,162を含む。上記パラレル・シリアル変換回路の出力データの転送速度は、上記低速側インタフェース202,302における信号伝達速度に比べて高速に設定される。かかる構成によれば、調停のための信号が、低速側インタフェース202,302に伝達されることで、上記データ転送の競合が調停される。この調停後に、上記高速側インタフェース201,301を介して多量の情報をシリアル形式で高速に転送することができるので、送信側から受信側への通信において低レイテンシ及び高スループットを実現することができる。またそのようなデータ転送においては、複数のインタコネクトを有するハブを介在させる必要がないので、受信したパケットを格納するための大容量のバッファが不要となり、SoC10のコストの低下を図ることができる。
【0077】
(2)上記高速側インタフェース201,301では、上記送信側回路からのパラレル形式のデータをパラレル・シリアル変換回路132,142,152,162でシリアルデータに変換して転送することにより、一本の信号線で単位時間内に伝送できる情報量を増やすことで、データ転送に使用される信号線数を低減することができ、それによって回路規模の削減を図ることができる。このことは、SoC10のコスト低下を図る上で有利となる。
【0078】
ここでリクエストパケット転送における各信号として、例えば図12に示されるように、req、gnteop、lck、pri〔3:0〕、add〔39:16〕、add〔15:3〕、opc〔7:0〕、data〔127:0〕、be〔15:0〕、src〔7:0〕、tid〔7:0〕が存在する場合を考える。この場合、実施の形態1に従えば、add〔39:16〕、add〔15:3〕、opc〔7:0〕、data〔127:0〕、be〔15:0〕、src〔7:0〕、tid〔7:0〕を、CAD〔31:0〕に集約することができるので、CAD〔31:0〕に集約しない場合(従来方式)に比べて、データ転送に使用される信号線数を大幅に低減することができる。また、レスポンスパケット転送における各信号として、例えば図13に示されるように、r_req、r_gnt、r_eop、r_src〔7:0〕、r_opc〔7:0〕、r_data〔127:0〕、r_tid〔7:0〕が存在する場合、r_src〔7:0〕、r_opc〔7:0〕、r_data〔127:0〕、r_tid〔7:0〕を、CAD〔31:0〕に集約することができる。それによれば、CAD〔31:0〕に集約しない場合(従来方式)に比べて、データ転送に使用される信号線数を大幅に低減することができる。
【0079】
(3)上記のように、高速側インタフェース201,301では、高速クロック信号に同期してデータ転送を行い、低速側インタフェース202,302では、低速クロック信号に同期して、調停のための信号の伝達を行うようにしており、低速側インタフェース202,302を介して伝達される信号を半導体基板の上層配線に割り当てることができる。一般に、半導体基板の多層配線では、上層になるほど、配線幅が広く、配線の厚みが厚くなっているため、配線抵抗が少なく、そこでのCR時定数が小さい。このため、低速側インタフェース202,302を介して伝達される信号を半導体基板の上層配線に割り当てることで、低速側インタフェース202,302での伝達速度が不所望に低下するのを回避することができる。
【0080】
また、上記のように、低速側インタフェース202,302を介して伝達される信号を半導体基板の上層配線に割り当てた場合には、高速側インタフェース201,301を介して伝達される信号を半導体基板の上層配線に割り当てることができなくなる。この結果、高速側インタフェース201,301を介して伝達される信号を伝達するための信号配線は、低速側インタフェース202,302に比べて、配線幅が狭く、配線の厚みが薄くなるため、配線が細くなる。このため、そこでの配線抵抗が大きくなることから、CR時定数も大きくなる。そこでSoC10では、高速側インタフェース201,301にソース同期方式(図5参照)を採用している。これにより、高速クロック生成部132Gで生成された高速クロック信号は、情報伝達信号CADと並列に送信側から送信され、同じ遅延時間で受信側に受信されるため、配線が細いにもかかわらず、情報伝達信号CADの転送を支障なく行うことができる。また、上記のように配線を細くすることで、より多くの配線を基板に形成することができる。
【0081】
(4)例えば特開2005−228981号公報に記載されているような誘導結合(3次元結合)方式が採用される場合には、多量の配線が必要となるため、上記(2)の作用効果は顕著になる。
【0082】
(5)例えば図2及び図3において、リピータをセレクタ134,144,154,164の入力側に配置する場合には、リピータをセレクタ134,144,154,164における入力端子の数に相当するリピータが必要となる。これに対して図2及び図3に示されるように、それぞれセレクタ134,144,154,164の後段にリピータ135,145,155,165を配置する場合には、リピータの数はセレクタの数だけ設ければ良いので、セレクタの数が少なくて済む。
【0083】
<実施の形態2>
例えば図14(A)に示されるように、イニシエータ(I)とターゲット(T)とを完全に一対一で接続することは、信号線数が少ないシリアルインタフェースであっても困難とされる。イニシエータ(I)の数が100、ターゲット(T)の数が100であれば、イニシエータ(I)とターゲット(T)との間の結合数は、10000(=100×100)となる。そこで、図14(B)に示されるように、イニシエータ(I)とターゲット(T)との間に、ルータ(R)を介在させることで、リンク数を削減する必要がある。ルータの先に複数のターゲットが存在する場合、ターゲットの特定はアドレス信号によって行うため、ルータにアドレスを取り込む必要がある。
【0084】
図15には、上記のようにルータの先に複数のターゲットが存在する場合のリクエストパケット転送系回路13Aの構成例が示される。
【0085】
図15に示されるリクエストパケット転送系回路13Aが、図2に示されるのと大きく相違するのは、ルータとしての機能を発揮させるため、アービタ133,143にアドレスデコーダが内蔵され、上記アービタ133に対応して二つのターゲット14,17が設けられている点である。また、アクセス要求送信信号の処理を行う要求処理回路138,148が設けられているが、ここではアドレス信号のデコードは行われない。アドレス信号のデコードはアービタ133で行われ、このデコード結果によって、アクセス要求先がターゲット14又は17に決定される。上記ターゲット14,17に対応して、シリアル・パラレル変換回路136,137が設けられる。シリアル・パラレル変換回路136,137は互いに同一構成とされる。
【0086】
図16には、図15に示されるリクエストパケット転送系回路13Aにおける主要部の動作タイミングが示される。図16に示されるように、アドレス信号の上位ビットが低速クロック信号に同期してアービタ133に伝達され、当該アドレス信号の上位ビットがアービタ133内のデコーダによってデコードされる。このデコード結果に基づいてアクセス要求先が決定される。
【0087】
ここで、リクエストパケット転送における各信号として、例えば図18に示されるように、req、gnteop、lck、pri〔3:0〕、add〔39:16〕、add〔15:3〕、opc〔7:0〕、data〔127:0〕、be〔15:0〕、src〔7:0〕、tid〔7:0〕が存在する場合を考える。この場合、実施の形態2に従えば、req、gnteop、lck、pri〔3:0〕、add〔39:16〕は、低速側インタフェース202により、コモンクロック方式により低速クロック信号に同期して伝達される。一方、add〔15:3〕、opc〔7:0〕、data〔127:0〕、be〔15:0〕、src〔7:0〕、tid〔7:0〕は、CAD〔31:0〕に集約され、高速側インタフェース201により高速クロック信号に同期して転送される。このため、図15に示される構成においても、CAD〔31:0〕に集約しない場合(従来方式)に比べて、データ転送に使用される信号線数を大幅に低減することができる。
【0088】
また、レスポンスパケット転送系回路13Bにおいても、図15に示されるように、ルータとしての機能を有するアービタにアドレスデコーダが内蔵され、上記アービタに対応して二つのターゲットを設けることができる。この場合、レスポンスパケット転送における各信号として、例えば図13に示されるように、r_req、r_gnt、r_eop、r_src〔7:0〕、r_opc〔7:0〕、r_data〔127:0〕、r_tid〔7:0〕が存在する場合、r_src〔7:0〕は低速側インタフェース202により、コモンクロック方式により低速クロック信号に同期して伝達される。r_opc〔7:0〕、r_data〔127:0〕、r_tid〔7:0〕は、CAD〔31:0〕に集約され、高速側インタフェース201により高速クロック信号に同期して転送される。従って、レスポンスパケット転送系回路においても、CAD〔31:0〕に集約しない場合(従来方式)に比べて、データ転送に使用される信号線数を大幅に低減することができる。
【0089】
以上本発明者によってなされた発明を実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0090】
例えば、複数のイニシエータからのデータ転送の競合を調停するための信号の伝達は、低速クロック信号の波形立ち上がりエッジに同期して行われ、上記選択回路の出力データの転送は、上記低速クロック信号の波形立ち上がりエッジ及び波形立ち下がりエッジに同期して行われるようにしても良い。例えば図6に示される構成において、高速クロック生成部132Gに代えて、低速クロック生成部16で生成された低速クロック信号の波形立ち上がりエッジ及び波形立ち下がりエッジに同期してクロック信号を形成する回路を設けることにより、図11に示されるように、低速クロック信号の波形立ち上がりエッジ及び波形立ち下がりエッジに同期してCADの転送を行うことができる。同様のことは、図15に示される構成を採用する場合にも言える。すなわち、図15に示される構成を採用する場合には、図17に示されるように、アドレス上位のデコード結果に基づいてアクセス先が決定され、当該アクセス先に対して、低速クロック信号の波形立ち上がりエッジ及び波形立ち下がりエッジに同期してCADの転送が行われる。
【符号の説明】
【0091】
10 SoC
11,12 イニシエータ
13 パケット転送系回路
13A リクエストパケット転送系回路
13B レスポンスパケット転送系回路
14,15 ターゲット
16 低速クロック生成部
131,141 アドレスデコーダ
131A,131B アンドゲート
132,142 パラレル・シリアル変換回路
132A gnt生成回路
132B 加算回路
132C 制御信号選択回路
132D フリップフロップ回路
132E strobe生成回路
132F 選択回路
132G 高速クロック生成部
133,143 アービタ
134,144 セレクタ
135,145 リピータ
136,146 シリアル・パラレル変換回路
136A,136B,136C,136D シフトレジスタ
136E 書き込み制御回路
136F 読み出し選択回路
136G 読み出し制御回路
136H アクセス許可信号生成回路
151,161 ソースデコーダ
152,162 パラレル・シリアル変換回路
153,163 アービタ
154,164 セレクタ
155,165 リピータ
155A,155B フリップフロップ回路
156,166 シリアル・パラレル変換回路
201,301 高速側インタフェース
202,302 低速側インタフェース
902〜907 フリップフロップ回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の送信側回路と、
上記送信側回路の出力データを受信する受信側回路と、
上記送信側回路と上記受信側回路との間に介在された転送系回路と、を含む半導体装置であって、
上記転送系回路は、データ転送に使用される第1インタフェースと、
上記複数の送信側回路からのデータ転送の競合を調停するための信号の伝達に使用される第2インタフェースと、を含み、
上記第1インタフェースは、上記送信側回路からのパラレル形式のデータをシリアル形式に変換するパラレル・シリアル変換回路を含み、且つ、上記パラレル・シリアル変換回路の出力データの転送速度は、上記第2インタフェースにおける信号伝達速度に比べて高速に設定され、
上記第2インタフェースは、上記送信側回路からパラレル形式で出力される信号に基づいて上記複数の送信側回路からのデータ転送の競合を調停するアービタを含むことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
上記パラレル・シリアル変換回路の出力信号を選択的に後段回路に伝達するためのセレクタと、
上記セレクタの後段に配置され、上記セレクタの出力信号の波形整形を行うリピータと、を含む請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
上記パラレル・シリアル変換回路は、上記パラレル形式のデータを順次選択することでシリアル形式の情報伝達信号を形成する選択回路と、
上記選択回路の選択動作を制御可能な制御信号を形成するフリップフロップ回路と、を含む請求項2記載の半導体装置。
【請求項4】
上記リピータの後段には、上記リピータの出力信号をパラレル形式のデータに変換するシリアル・パラレル変換回路が配置された請求項3記載の半導体装置。
【請求項5】
第1クロック信号を生成する第1クロック生成回路と、
上記第1クロック信号に基づいて、上記第1クロック信号よりも周波数が高い第2クロック信号を形成する第2クロック生成回路と、を含み、
上記複数の送信側回路からのデータ転送の競合を調停するための信号の伝達は、コモンクロック方式により上記第1クロック信号に同期して行われ、
上記選択回路の出力データの転送は、ソース同期方式により上記第2クロック信号に同期して行われる請求項3記載の半導体装置。
【請求項6】
第1インタフェースにおける配線は、上記第2インタフェースにおける配線よりも細くされて成る請求項5記載の半導体装置。
【請求項7】
上記第2クロック生成回路は、上記第1クロック信号を逓倍することで上記第2クロック信号を形成するPLL回路を含む請求項5記載の半導体装置。
【請求項8】
上記シリアル・パラレル変換回路は、上記第2クロック信号に同期して上記リピータの出力信号をパラレル形式のデータに変換する請求項5記載の半導体装置。
【請求項9】
所定周波数のクロック信号を生成するクロック生成回路を含み、
上記複数の送信側回路からのデータ転送の競合を調停するための信号の伝達は、上記第1クロック信号の波形立ち上がりエッジに同期して行われ、
上記選択回路の出力データの転送は、上記クロック信号の波形立ち上がりエッジ及び波形立ち下がりエッジに同期して行われる請求項3記載の半導体装置。
【請求項10】
上記受信側回路が複数設けられ、
上記アービタは、入力アドレス信号をデコードすることで、上記複数の受信側回路のうちの一つを選択可能なデコーダを含む請求項8記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−96172(P2011−96172A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−251888(P2009−251888)
【出願日】平成21年11月2日(2009.11.2)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】