説明

半導体装置

【目的】 誘導負荷駆動時に誤作動を生じず、かつコンパクトな形状で充分な出力電流が得られる。
【構成】 半導体基板3内に基板の一面に開放する箱形に絶縁層4を形成して、該箱形絶縁層に囲まれた半導体層内に横型二重拡散MOS電界効果トランジスタ2A,2Bを形成するとともに、上記箱形絶縁層外の半導体層内に縦型二重拡散MOS電界効果トランジスタ1A,1Bを形成してある。誘導負荷駆動時の逆起電力により出力1,2端子の電位がアース電位を下回っても、素子分離を絶縁層によって行っているから寄生トランジスタは生じておらず、これが導通して誤作動する問題は生じない。縦型二重拡散MOS電界効果トランジスタはON抵抗が小さいから、その形成面積を小さくしても充分な出力電流が得られる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は半導体基板内に素子分離をして複数の二重拡散MOS電界効果トランジスタを形成した半導体装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、モータを正逆駆動するHブリッジ(図2)の二重拡散MOS電界効果トランジスタ(DMOS)1A,1B,2A,2Bを、図3に示す如く1チップの半導体基板3上にモノリシック形成することが試みられており、この場合の素子分離を図に示すJI(Junction Isolation)方式により行ったものが知られている(日刊工業新聞刊 電子技術 1989−6)。
【0003】このJI方式はSI(Self Isolation)方式等に比して良好な素子分離を実現することができるが、その原理は基本的にPN接合に逆バイアス電圧を印加することによって素子間を電気的に分離するものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、かかるJI方式で素子分離をしたHブリッジ駆動回路でモータを駆動すると、そのインダクタンスにより生じる逆起電力によって、図3の出力1端子がアース電位より低下することがあり、素子分離のために拡散形成したP層とこれを挟むN層により生じる寄生トランジスタTrが導通して誤作動を生じるという問題がある。
【0005】また、上記方式により半導体基板内に形成される電界効果トランジスタ(FET)は横型(Lateral)二重拡散MOSFETであるため導通抵抗(RON)が比較的高く、所定の出力電流を確保するためにはチップ面積を大きくする必要がある。
【0006】本発明はかかる課題を解決するもので、寄生トランジスタが導通して誤作動することがなく、かつチップ面積を小さくできる半導体装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明に係る半導体装置は、半導体基板内において基板の一面に開放する箱形の絶縁層が形成され、該箱形絶縁層に囲まれた半導体層内に横型二重拡散MOS電界効果トランジスタが形成されるとともに、上記箱形絶縁層外の半導体層内に縦型二重拡散MOS電界効果トランジスタが形成されており、この縦型二重拡散MOS電界効果トランジスタにてハイサイドスイッチを構成するとともに、上記横型二重拡散MOS電界効果トランジスタにてローサイドスイッチを構成するものである。
【0008】
【作用】上記構成においては、ハイサイドスイッチ,ローサイドスイッチを各々構成する各トランジスタ素子を箱形の絶縁層により電気的に分離しているから、寄生トランジスタが生じることはなく、誘導負荷駆動時に上記トランジスタが導通して誤作動するという問題は生じない。
【0009】また、ハイサイドスイッチを構成するトランジスタ素子をRONの小さい縦型二重拡散MOS電界効果トランジスタとしているため、特にHブリッジ駆動回路のハイサイド側にこれを使用すれば基板面積を小さくしても充分な出力電流を得ることができる。
【0010】
【実施例】以下本発明を図に示す実施例に従って説明する。図1はHブリッジに適用した本発明一実施例の半導体装置の断面図である。
【0011】図1において、半導体基板3内には基板上面に開放する箱形の絶縁層4が形成され、絶縁層4の縦壁によって互いに区画された3つの半導体層内には各々、論理回路あるいはゲート駆動回路等を構成する制御回路部(図1には一例としてC−MOS回路を図示している)5,及びその左右位置に各々横型二重拡散MOSFET(L−DMOS)2A,2Bが形成されている。これらL−DMOS2A,2Bは不純物拡散により、水平方向へ離れた位置にソース21とドレイン22が形成されており、各L−DMOS2A,2Bのソース21は基板表面からの二重拡散(Double Diffusion)で形成されるとともにアースされている。
【0012】上記箱形絶縁層4外には左右位置にそれぞれ縦型二重拡散MOSFET(V−DMOS)1A,1Bが形成されており、これらV−DMOS1A,1Bは半導体基板3の上面からの不純物の二重拡散によりソース11が形成されているとともに、基板3の下面を共通のドレイン12として電源(+B)に接続されている。なお、図中13,23はゲートである。
【0013】半導体基板3内の絶縁層4は、例えば特開平2−96350号公報に示されるように、一方の鏡面に溝を設けた二枚の半導体基板を互いの鏡面で接着した後、溝表面に絶縁性酸化膜を形成し、必要な場合にはさらに多結晶シリコン等によって溝を埋めて形成する。
【0014】上記V−DMOS1Aのソース11はL−DMOS2Bのドレイン22に接続され、また、V−DMOS1Bのソース11はL−DMOS2Aのドレイン22に接続されて図2に示すHブリッジを構成しており、各ソース11とドレイン22の接続部が出力1,2端子となってモータに接続されている。
【0015】上記構成の半導体装置において、V−DMOS1A,L−DMOS2AおよびV−DMOS1B,L−DMOS2Bの各組を選択的に導通させると、モータへの出力電流が反転してこれが正逆転する。この正逆転切替時にモータに生じる逆起電力により、出力1,2端子の電位がアース電位を下回ることがあるが、素子分離を絶縁層によりなしているから寄生トランジスタは形成されておらず、これが導通して誤作動を生じることはない。
【0016】また、Hブリッジのハイサイド側のMOSFETを縦型としたから、導通抵抗RONを充分小さくすることができ、チップ面積を小さくしても充分な出力電流を確保できる。
【0017】次に、基板上へのハイサイド側V−DMOSとローサイド側L−DMOSの配分方法について説明する。図2に示すようなHブリッジを構成する場合、ハイサイド側V−DMOS1A(1B)とローサイド側L−DMOS2A(2B)のオン抵抗比を最適化することにより、1チップ化した際のV−DMOS,L−DMOS合計面積を最小にすることができる。
【0018】ブリッジとしての導通抵抗RONはV−DMOSのオン抵抗RONとL−DMOSのオン抵抗RONの和として与えられるため、その目標値をA(mΩ),V−DMOSのオン抵抗RONをx(mΩ),L−DMOSの導通抵抗RONをy(mΩ)とすれば、ブリッジとしての導通抵抗RONは次式であらわされる。
【0019】
【数1】x+y=A (一定値)
また、V−DMOS,L−DMOS合計面積S(mm2 )は、V−DMOSの単位面積当たりのオン抵抗a(mΩ・mm2 ),L−DMOSの単位面積当たりのオン抵抗b(mΩ・mm2 )を用いて次式であらわされる。
【0020】
【数2】a/x+b/y=S従って、数1の制約条件の下で、数2の面積Sが最小となるような(x,y)の最適値を求めてV−DMOS,L−DMOS各々の面積配分を決定するようにしてやればよい。V−DMOS,L−DMOS各々のオン抵抗を等しく設計するようにしても両トランジスタ素子をL−DMOSで構成した場合よりチップ面積の縮小化は図れるが、V−DMOS側のオン抵抗分をL−DMOS側のそれより小さく設計し、V−DMOS,L−DMOS各々のオン抵抗を等しく設計した場合よりV−DMOSの占有面積を大きくしても、全体としてのチップ面積をさらに縮小化させることが可能である。
【0021】また、チップ内へのV−DMOS1A,1BおよびL−DMOS2A,2Bの配置に関しても、図4R>4に示すレイアウトのように熱のこもりやすいL−DMOS2A,2Bをチップ周辺に配置して、より熱を逃がしやすくするようにするとよい。図4においては、V−DMOS1Aの表面電極(ソース電極)はL−DMOS2Bのドレインとチップ表面にて接続されているとともに、出力1端子となるパッド部P1を構成している。また、V−DMOS1Bの表面電極(ソース電極)はL−DMOS2Aのドレインとチップ表面にて接続されているとともに、出力2端子となるパッド部P2を構成している。そして、L−DMOS2A,2Bのソース電極は共通とされ、アース電位の設定されるパッド部P3を構成している。なお、論理回路,ゲート駆動回路等を構成する制御回路部5はローサイド側のL−DMOS2A,2Bより遠い位置に配置されて、回路への影響が最小限となるようにされている。また、図4において、L−DMOS2B,2A間にV−DMOS1A,1Bの一部領域を延在させるようにレイアウトすることによりL−DMOS2B,2Aを離し、さらに熱のこもりにくい構造としてもよい。
【0022】なお、本発明は上記Hブリッジへの適用に限られず、ハイサイドマルチチャンネルの如く複数の出力を有するドライバの1チップ化へも適用できる。すなわち1チップマルチチャンネルで、ハイサイドとローサイドの組み合わせが可能である。また、1チップHブリッジにおいて、ハイサイド側のMOSFETのいずれも縦型とする必要はなく、いずれか一方のみでも効果がある。さらにHブリッジを構成する場合に、絶縁分離されたV−DMOSとL−DMOSを各組にして2チップで構成しても良い。
【0023】
【発明の効果】以上の如く、本発明の半導体装置によれば、誘導負荷を駆動した際に誤作動を生じることはなく、また、コンパクトな形状で充分な出力電流を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】半導体装置の断面図である。
【図2】Hブリッジの回路図である。
【図3】従来装置の断面図である。
【図4】チップレイアウトを示す図である。
【符号の説明】
1A,1B 縦型二重拡散MOS電界効果トランジスタ
2A,2B 横型二重拡散MOS電界効果トランジスタ
3 半導体基板
4 絶縁層

【特許請求の範囲】
【請求項1】半導体基板内において基板の一面に開放する箱形に絶縁層が形成され、該箱形絶縁層に囲まれた半導体層内に横型二重拡散MOS電界効果トランジスタが形成されるとともに、上記箱形絶縁層外の半導体層内に縦型二重拡散MOS電界効果トランジスタが形成されており、上記縦型二重拡散MOS電界効果トランジスタにてハイサイドスイッチを構成するとともに、上記横型二重拡散MOS電界効果トランジスタにてローサイドスイッチを構成したことを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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