説明

半導体試験治具及びその製造方法

【課題】複数の縦型半導体装置を試験する際の作業性を改善し、試験時間を短縮することができる半導体試験治具及びその製造方法を得る。
【解決手段】半導体試験治具は、下面電極3と上面電極4を有する複数の縦型半導体装置5を試験するために用いられる。導電性の基台1は複数の設置部6を有する。設置部6には、下面電極3が接触した状態で複数の縦型半導体装置5がそれぞれ個別に設置される。基台1上に格子状の絶縁性の枠部2が設けられている。枠部2は複数の設置部6をそれぞれ囲う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下面電極と上面電極を有する複数の縦型半導体装置を試験するための半導体試験治具及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チップ状に細片化した複数の半導体装置の電気的特性を試験する際、それぞれの半導体装置を個別に位置決めして試験していた。このため、作業性が悪く、試験時間が長くなっていた。これに対して、ICパッケージなどの複数の半導体装置を一括して位置決めできる絶縁性の搬送トレイ、及びそれを用いた試験装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。これにより、作業性を改善し、試験時間を短縮することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−292727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
縦型半導体装置は、装置の上面電極と下面電極との間に電流が流れる。この縦型半導体装置を試験する場合には、半導体装置の下面電極が接するステージが測定電極の一つとなる。従って、従来の絶縁性の搬送トレイに縦型半導体装置を設置したままでは、縦型半導体装置の試験を行うことはできかなった。
【0005】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は複数の縦型半導体装置を試験する際の作業性を改善し、試験時間を短縮することができる半導体試験治具及びその製造方法を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る半導体試験治具は、下面電極と上面電極を有する複数の縦型半導体装置を試験するための半導体試験治具であって、前記下面電極が接触した状態で前記複数の縦型半導体装置がそれぞれ個別に設置される複数の設置部を有する導電性の基台と、前記基台上に設けられ、前記複数の設置部をそれぞれ囲う格子状の絶縁性の枠部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、複数の縦型半導体装置を試験する際の作業性を改善し、試験時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態1に係る半導体試験治具を示す上面図である。
【図2】図1のI−IIに沿った断面図である。
【図3】本発明の実施の形態2に係る半導体試験治具を示す断面図である。
【図4】本発明の実施の形態3に係る半導体試験治具を示す断面図である。
【図5】本発明の実施の形態4に係る半導体試験治具を示す断面図である。
【図6】本発明の実施の形態5に係る半導体試験治具を示す上面図である。
【図7】図6のI−IIに沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施の形態に係る半導体試験治具及びその製造方法について図面を参照して説明する。同じ又は対応する構成要素には同じ符号を付し、説明の繰り返しを省略する場合がある。
【0010】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る半導体試験治具を示す上面図である。図2は図1のI−IIに沿った断面図である。図1では説明の簡略化のため、基台1と枠部2からなる搬送トレイのみ示している。この半導体試験治具は、下面電極3と上面電極4を有する複数の縦型半導体装置5を試験するために用いられる。縦型半導体装置5は例えば半導体チップであるが、これに限るものではなく、半導体チップを仮組した基板でもよい。
【0011】
基台1は、アルミニウムなどの導電性を持つ板状の金属からなる。基台1は16個の設置部6を有する。設置部6には、下面電極3が接触した状態で複数の縦型半導体装置5がそれぞれ個別に設置される。設置部6は、縦型半導体装置5の下面電極3にダメージを与えないために、洗浄や研磨工程によりバリや突起が除去されたフラットな面であることが望ましい。設置部6の数量は16個に限られず、試験装置や縦型半導体装置5の大きさに応じて増減してもよい。
【0012】
基台1上に格子状の枠部2が設けられている。枠部2は複数の設置部6をそれぞれ囲う。縦型半導体装置5に対向する枠部2の側面が傾斜面である。枠部2は、隣接する縦型半導体装置5が互いに導通しないように、PPS樹脂などの絶縁性材料からなる。
【0013】
機械加工により基台1に位置決め部7,8が設けられている。位置決め部7は、基台1の少なくとも一つの角部に設けられた切り欠きである。4つの位置決め部8は、基台1に設けられた貫通孔であり、ステージ9の凸部と嵌合する。ただし、位置決め部8は、これに限るものではなく、個数も4つに限るものではない。
【0014】
導電性のステージ9に、基台1の裏面が接触した状態で基台1が設置される。導電性のプローブ10が縦型半導体装置5の上面電極4に接触する。試験装置11は、縦型半導体装置5が設置部6に設置された状態で、基台1、ステージ9及びプローブ10を介して縦型半導体装置5の試験を行う。
【0015】
続いて、上記の半導体試験治具を用いた試験方法を説明する。まず、枠部2の傾斜面を滑らすように、枠部2に囲まれた基台1の設置部6に縦型半導体装置5を設置する。この際に、縦型半導体装置5の下面電極3が基台1の設置部6に接触する。複数の縦型半導体装置5の設置方向が全て同じになるようにする。
【0016】
次に、複数の縦型半導体装置5を設置した搬送トレイをステージ9上に設置する。この際に、位置決め部7を用いて搬送トレイの方向を確認する。
【0017】
次に、位置決め部8を用いて個々の縦型半導体装置5の上面電極4の位置を確定して、プローブ10を縦型半導体装置5の上面電極4に接触させる。そして、試験装置11により縦型半導体装置5の試験を行う。
【0018】
続いて、上記の半導体試験治具の製造方法を説明する。まず、基台1の表面に多孔質形状を形成する。次に、結晶性の絶縁性樹脂を基台1の多孔質形状に充填させて枠部2を形成する。また、枠部2を形成する前に、前処理として超臨界媒質(エチルアルコール、二酸化炭素、水等)中に溶解させた媒体を多孔質形状内に塗布してもよい。
【0019】
以上説明したように、基台1と枠部2からなる搬送トレイにより、複数の縦型半導体装置5を一括して位置決めできる。そして、基台1が導電性であるため、基台1そのものを測定電極として機能させることができる。従って、搬送トレイに設置したままで縦型半導体装置5の試験を行うことができる。よって、複数の縦型半導体装置5を試験する際の作業性を改善し、試験時間を短縮することができる。
【0020】
また、枠部2の側面が傾斜面であるため、縦型半導体装置5の設置が容易である。また、基台1が少なくとも1つの位置決め部7,8を有するため、位置決め時間を短縮でき、位置決め精度を向上させることができる。
【0021】
また、基台1の表面に多孔質形状を形成し、この多孔質形状に結晶性の絶縁性樹脂を充填させて枠部2を形成する。これにより、基台1と枠部2の接着力が増加する。これに伴って、高温下や低温下の試験において枠部2の変形や剥離等の形状変化を抑制できるため、縦型半導体装置5を安定して保持できる。
【0022】
実施の形態2.
図3は、本発明の実施の形態2に係る半導体試験治具を示す断面図である。説明の簡略化のため、基台1と枠部2からなる搬送トレイのみ示している。
【0023】
縦型半導体装置5が例えばシリコンウエハからダイシングして作製した半導体チップである場合、縦型半導体装置5の端部からシリコン屑などの異物が生じやすい。また、枠部2の傾斜面を滑らすように縦型半導体装置5を設置する場合、摩擦等によって、付着していたシリコン屑などの落下や新たなシリコン屑などの異物が生じやすい。そこで、図3の治具では、枠部2の傾斜面近傍において基台1に溝部12を設けている。その他の構成は実施の形態1と同様である。
【0024】
縦型半導体装置5の端部の下方に配置される溝部12内に異物を収めることで、縦型半導体装置5の下面電極3と基台1との間に異物が入り込むのを防いで、不良発生を低減することができる。
【0025】
実施の形態3.
図4は、本発明の実施の形態3に係る半導体試験治具を示す断面図である。説明の簡略化のため、基台1と枠部2からなる搬送トレイのみ示している。
【0026】
枠部2は、縦型半導体装置5に対向する側面が傾斜面である枠本体13と、枠本体13の下に設けられ枠本体13よりも広い幅を持つ土台部14とを有する。枠部2の断面は略L字型である。基台1に凹部15が設けられている。この基台1の凹部15内に枠部2の土台部14が設置されている。その他の構成は実施の形態1と同様である。
【0027】
これにより、基台1と枠部2の接触面積が増加するため、両者の接着力が増加する。これに伴って、高温下や低温下の試験において枠部2の変形や剥離等の形状変化を抑制できるため、縦型半導体装置5を安定して保持できる。また、近隣の縦型半導体装置5との沿面距離を増加して放電を抑制できるため、測定精度を向上することもできる。
【0028】
実施の形態4.
図5は、本発明の実施の形態4に係る半導体試験治具を示す断面図である。説明の簡略化のため、基台1と枠部2からなる搬送トレイのみ示している。
【0029】
枠部2の傾斜面近傍において枠部2の土台部14に溝部16が設けられている。その他の構成は変形例2と同様である。これにより、変形例2と同様の効果が得られるだけでなく、不良発生を低減することもできる。
【0030】
実施の形態5.
図6は、本発明の実施の形態5に係る半導体試験治具を示す上面図である。図7は図6のI−IIに沿った断面図である。実施の形態1と異なる構成についてのみ説明する。
【0031】
複数の設置部6にそれぞれ開口部17が設けられている。開口部17は、設置部6に設置された縦型半導体装置5の下面電極3の少なくとも一部を露出させる。熱電対などの温度センサ18が基台1に設けられている。
【0032】
導電性のプローブ19が、設置部6に設置された縦型半導体装置5の下面電極3に開口部17を介して接触する。導電性のプローブ10が、縦型半導体装置5の上面電極4に接触する。縦型半導体装置5が設置部6に設置された状態で、試験装置11がプローブ10,19を介して縦型半導体装置5の試験を行う。
【0033】
基台1を貫通する開口部17を介して縦型半導体装置5の下面電極3に直接コンタクトをとるため、基台1と縦型半導体装置5の接触抵抗を考慮する必要がない。よって、実施の形態1よりも試験精度が向上する。
【0034】
また、基台1に温度センサ18を設置することで、高温、低温テストにおける正確な試験温度を得ることができる。なお、搬送トレイを位置決めして設置する際に、温度センサ18の出力部を試験装置11に接続して温度情報を得るが、これに限られない。実施の形態1〜4の構成に温度センサ18を追加してもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 基台
2 枠部
3 下面電極
4 上面電極
5 縦型半導体装置
6 設置部
7,8 位置決め部
9 ステージ
10 プローブ(第2のプローブ)
11 試験装置
12,16 溝部
13 枠本体
14 土台部
15 凹部
17 開口部
18 温度センサ
19 プローブ(第1のプローブ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下面電極と上面電極を有する複数の縦型半導体装置を試験するための半導体試験治具であって、
前記下面電極が接触した状態で前記複数の縦型半導体装置がそれぞれ個別に設置される複数の設置部を有する導電性の基台と、
前記基台上に設けられ、前記複数の設置部をそれぞれ囲う格子状の絶縁性の枠部とを備えることを特徴とする半導体試験治具。
【請求項2】
前記基台の裏面が接触した状態で前記基台が設置される導電性のステージと、
前記縦型半導体装置の前記上面電極に接触する導電性のプローブと、
前記縦型半導体装置が前記設置部に設置された状態で、前記基台、前記ステージ及び前記プローブを介して前記縦型半導体装置の試験を行う試験装置とを更に備えることを特徴とする請求項1に記載の半導体試験治具。
【請求項3】
下面電極と上面電極を有する複数の縦型半導体装置を試験するための半導体試験治具であって、
前記複数の縦型半導体装置がそれぞれ個別に設置される複数の設置部と、前記複数の設置部にそれぞれ設けられ、前記設置部に設置された前記縦型半導体装置の前記下面電極の少なくとも一部を露出させる開口部とを有する基台と、
前記基台上に設けられ、前記複数の設置部をそれぞれ囲う格子状の絶縁性の枠部とを備えることを特徴とする半導体試験治具。
【請求項4】
前記設置部に設置された前記縦型半導体装置の前記下面電極に前記開口部を介して接触する導電性の第1のプローブと、
前記縦型半導体装置の前記上面電極に接触する導電性の第2のプローブと、
前記縦型半導体装置が前記設置部に設置された状態で、前記第1及び第2のプローブを介して前記縦型半導体装置の試験を行う試験装置とを更に備えることを特徴とする請求項3に記載の半導体試験治具。
【請求項5】
前記縦型半導体装置に対向する前記枠部の側面が傾斜面であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の半導体試験治具。
【請求項6】
前記枠部の傾斜面近傍において前記基台に溝部が設けられていることを特徴とする請求項5に記載の半導体試験治具。
【請求項7】
前記枠部は、前記縦型半導体装置に対向する側面が傾斜面である枠本体と、前記枠本体の下に設けられ前記枠本体よりも広い幅を持つ土台部とを有し、
前記基台に凹部が設けられ、
前記基台の前記凹部内に前記枠部の前記土台部が設置されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の半導体試験治具。
【請求項8】
前記枠部の前記傾斜面近傍において前記枠部の前記土台部に溝部が設けられていることを特徴とする請求項7に記載の半導体試験治具。
【請求項9】
前記基台は、少なくとも1つの位置決め部を有することを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の半導体試験治具。
【請求項10】
前記基台に設けられた温度センサを更に備えることを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載の半導体試験治具。
【請求項11】
請求項1〜10の何れか1項に記載の半導体試験治具を製造する方法であって、
前記基台の表面に多孔質形状を形成する工程と、
結晶性の絶縁性樹脂を前記基台の前記多孔質形状に充填させて前記枠部を形成する工程とを備えることを特徴とする半導体試験治具の製造方法。
【請求項12】
前記枠部を形成する前に、超臨界媒質中に溶解させた媒体を前記多孔質形状内に塗布する工程を更に備えることを特徴とする請求項11に記載の半導体試験治具の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−53898(P2013−53898A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191466(P2011−191466)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】