説明

半田合金

【課題】 半田ごてのこて先の劣化を防止する半田合金を提供する。
【解決手段】 Cuが0.3〜3重量%、Feが0.01〜0.1重量%、Gaが0.001〜0.004重量%、残部がSnおよび不可避不純物より成ることを特徴とする半田合金。 さらに、この半田合金に、Agが0.1〜4.5重量%、Niが0.05〜0.5重量%、Biが0.1〜3.0重量%、Mnが0.001〜0.01重量%の少なくとも一種以上が添加され、機械的特性が改善される。
なし

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半田ごてのこて先の劣化を防止する半田合金に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特開2002−18589号公報(特許文献1)で、Sn 主成分にGa を0.005〜0.2質量%添加した鉛フリーはんだ合金、またSn主成分にGa を0.005〜0.2質量%添加した鉛フリーはんだ
合金、さらに、これらの鉛フリーはんだの機械的特性を向上させるためにCu 、Sb、Ni、Co、Fe 、Mn、Cr、Mo等を添加したり、融点を低下させるためにBi、In、Zn等を添加したり、また酸化を防止するためにP、Ge等を添加したりすることもできる濡れ性を向上させたSn主成分の鉛フリーはんだが提案されている。
【特許文献1】特開2002−18589号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、本発明は、半田ごてのこて先の劣化を防止する半田合金を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、Cuが0.3〜3重量%、Feが0.01〜0.1重量%、Gaが0.001〜0.004重量%、残部がSnおよび不可避不純物より成ることを特徴とする半田合金である。
さらに、本発明は、Agが0.1〜4.5重量%、Niが0.05〜0.5重量%、Biが0.1〜3.0重量%、Mnが0.001〜0.01重量%の少なくとも一種以上が添加され、機械的特性が改善される請求項1の半田合金である。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、鉛フリー半田合金の主成分であるSnにCu、Fe、およびGaの3種類の元素を所定の濃度で同時に添加したため、半田ごてのこて先の劣化を防止する。このこて先の劣化とはこて先の食われと酸化を意味し、こて先の食われはCu及びFeを添加することにより改善され、こて先の酸化はGaを添加することにより改善される。
Cu単独、Fe単独、およびGa単独での添加では、こて先の食われ防止効果及び酸化防止効果は極めて低いが、Cu、Fe、およびGaを所定の濃度で同時に添加することで、こて先の食われが防止され、半田付性を損なうことなく、酸化が防止される。
同時に添加するCuの添加量が0.3重量%未満、Feの添加量が0.01重量%未満、およびGaの添加量が0.001重量%未満であると、こて先の劣化防止効果は、ほとんど無い。
さらに、同時に添加するCuの添加量が3重量%超、Feの添加量が0.1重量%超であると、半田合金の液相線温度が上昇、および半田合金の流動性が低下することにより、半田付性の低下を招いてしまうために不適である。
また、Gaの添加量が0.004重量%超であると、半田付後に半田合金の表面が白く光沢を放ってしまう場合がある。 この白い光沢は、一般に行われている半田付後の目視による外観検査を行う上で、濡れ不足、微小な亀裂などのいわゆる、半田付不良を発見できない恐れがあり好ましくない。
このため、請求項1の本発明は、Cuが0.3〜3重量%、Feが0.01〜0.1重量%、Gaが0.001〜0.004重量%、残部がSnおよび不可避不純物より成る半田合金であり、この半田合金は、半田付性を損なうことなく、半田ごてのこて先の劣化に対して、優れた防止効果を有する。

【0006】
さらに、本発明によれば、半田付を行う部品や基板によっては、機械的特性が必ずしも十分ではないが、請求項1の上記半田合金に、Agが0.1〜4.5重量%、Niが0.05〜0.5重量%、Biが0.1〜3.0重量%、Mnが0.001〜0.01重量%の少なくとも一種以上が添加され、機械的特性が改善され、半田付部に十分な機械的特性を与える。
Agの添加量が0.1重量%未満、Niの添加量が0.05重量%未満、Biの添加量が0.1重量%未満、およびMnの添加量が0.001重量%未満であると、半田付部の機械的強度の改善にほとんど効果はなく、Agの添加量が4.5重量%超、Niの添加量が0.5重量%超、およびMnの添加量が0.01重量%超であると、半田合金の液相線温度が上昇し、半田付性の低下を招いてしまうために不適である。
また、Biの添加量が3.0重量%超であると、半田合金中にSn−Biの低融点化合物が形成される場合があり、低融点化合物は140℃程度の低温で一部の半田合金が溶融する場合があり、強度低下の原因となりうるために好ましくない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明をその実施例に基づいて説明する。
SnにCu、Fe、およびGaの3種類の元素を同時に添加した、半田合金を用いて、こて先の劣化確認試験を実施した。
Cuが、0.1重量%、0.3重量%、0.7重量%、3.0重量%、Feが0.005重量%、0.01重量%、0.05重量%、0.1重量%、Gaが0.001重量%、0.004重量%含有し、残部がSnおよび不可避不純物よりからなる半田合金を作製した。
作製した半田合金をやに入り半田(やに入り半田のフラックスはJIS Z 3283:2001によるA級品、フラックス含有量3.5%、線径0.8mm)に加工し、半田付ロボットを用いて、こて先にやに入り半田を供給した。
なお、試験温度は350±3℃、1ショットにつき、やに入り半田を5mm供給し、20000ショットまで連続供給した後、こて先の外観観察を実施し、こて先の劣化状態の評価を行った。 このときの試験結果を表1に示す。
【0008】
【表1】

【0009】
Cuが0.7重量%、残部がSn、Cuが3.0重量%、残部がSn、Agが3.0重量%、Cuが0.5重量%、残部がSn、Agが3.5重量%、Cuが0.7重量%、残部がSn、Feが0.1重量%、残部がSn、Gaが0.004重量%、残部がSnの各やに入り半田合金の比較例は、20000ショット後のこて先の劣化が顕著であった。
また、Cuが0.1重量%、Feが0.005重量%が添加されたやに入り半田も、20000ショット後のこて先の劣化が一部で確認された。
その一方で、SnにCuが0.3重量%〜3.0重量%、Feが0.01重量%〜0.1重量%、およびGaが0.001重量%〜0.004重量%を同時に添加したやに入り半田合金の実施例は、20000ショット後においてもこて先の劣化がほとんど無かった。
以上の結果、Cuが0.3重量%〜3.0重量%、Feが0.01重量%〜0.1重量%、およびGaが0.001重量%〜0.004重量%、残部がSnおよび不可避不純物よりなる半田合金は、こて先の劣化に対して優れた酸化防止効果を持つことが明らかとなった。
【0010】
次に、SnにCu、Fe、およびGaの3種類の元素を同時に添加した上途の半田合金に、さらに機械的特性改善元素を添加した、半田合金の機械的特性を調査するために、半田付部の接合強度試験を実施した。
Cuが0.3重量%、0.5重量%、0.7重量%、3.0重量%、Feが0.01重量%、0.03重量%、0.05重量%、0.1重量%、Gaが0.001重量%、0.003重量%、0.004重量%、Agが0.1重量%、1.0重量%、3.0重量%、4.5重量%、Niが0.05重量%、0.1重量%、0.5重量%、Biが0.1重量%、0.5重量%、3.0重量%、Mnが0.001重量%、0.01重量%含有し、残部がSnおよび不可避不純物からなる半田合金を作製した。
片面基板(材質:紙フェノール、厚さ:1.6mm、銅パターン、ランド外径:3.5mm)にφ1.6mmのCu線のピンを差し込み、箔状に加工した半田合金を巻きつけ、こて付による半田付を行った。
フラックスは液状フラックスを用いた(液状フラックスはJIS Z 3283:2001に相当するA級品)。
半田付を行った試験片は、熱応力を除去するために、100℃恒温槽にて1時間放置した後、引張試験機を用いて最大接合強度を測定し、半田付部の機械的特性を評価した。
なお、接合強度測定は、常温にて、引張速度10mm/minで実施した。このときの試験結果を表2に示す。

【0011】
【表2】







【0012】
機械的特性改善元素であるAg、Ni、Bi、およびMnを添加した半田合金は、機械的特性改善元素を添加していない半田合金と比較して、最大接合強度が約5%から20%上昇した。
以上の結果、こて先の劣化に対して、優れた防止効果を持つ半田合金に、Agが0.1〜4.5重量%、Niが0.05〜0.5重量%、Biが0.1〜3.0重量%、Mnが0.001〜0.01重量%から選ばれる少なくとも一種以上を添加することにより、半田付部に十分な機械的特性を与えることが可能となることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0013】
本発明は、主に、鉛フリー半田を用いて半田付けを行う場合に用いられる半田ごてのこて先の劣化を防止する場合に使用される。
本発明は、さらに、噴流半田槽にも使用される場合もある。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
Cuが0.3〜3重量%、Feが0.01〜0.1重量%、Gaが0.001〜0.004重量%、残部がSnおよび不可避不純物より成ることを特徴とする半田合金。
【請求項2】
Agが0.1〜4.5重量%、Niが0.05〜0.5重量%、Biが0.1〜3.0重量%、Mnが0.001〜0.01重量%の少なくとも一種以上が添加され、機械的特性が改善される請求項1の半田合金。