説明

半襟及び半襟の取付け方法

【課題】半襟のみに加工を施すだけで容易な着脱を可能にする半襟及び半襟の取付け方法を提供する。
【解決手段】縫い目Nに対し、第一折り返し部22aと第一押さえ布23との間であって幅方向中央側から、雄型スプリングホック25の先端25aを挿入するとともに雄型スプリングホック25を反転させて第一押さえ布23の表面に雄型スプリングホック25の先端25aを露出させ、さらに縫い目Nに対し、第二折り返し部22bと第二押さえ布24との間であって幅方向中央側から、雄型スプリングホック25の先端25aを挿入するとともに雄型スプリングホック25を反転させて第二押さえ布24の表面に雄型スプリングホック25の先端25aを露出させ、幅方向に略半分に折り、襦袢1の既存の糸の縫い目に対し、雄型スプリングホック25の先端25aを身頃3側から襟2側へ挿入して、襦袢1の襟2に取付け可能にしてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、襦袢の襟に被せるように着脱可能に取付けられる半襟及び半襟の取付け方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
着物を着用する場合にはその下に襦袢を着用するが、着用者の首と擦れる襟部分は襦袢の中で最も汚れ易い。このため、襦袢の襟には半分に折られた半襟が被せられるとともに縫いつけられており、半襟が汚れた場合には半襟のみを交換できるようになっている。
しかし、半襟の交換は手間が掛かるので、着物初心者は着物を着用することを躊躇してしまう。
【0003】
そこで、図6に示すような面ファスナ11によって取付ける半襟10が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−302901号公報
【0005】
図6に記載の発明は、襦袢1の襟2及び半襟10には一対の面ファスナ11が取付けられており、略半分に折られた半襟10の開口部Kを襦袢1の襟2に被せ、面ファスナ11同士を貼り合わせることで、半襟10を襦袢1の襟2に着脱可能に取付けることができる。
この発明によると、単に面ファスナ11同士を貼り合わせるだけで半襟10を襦袢1の襟2に取付けることができるので、交換するたびに半襟を襦袢1の襟2に縫いつける場合に比べて、着脱に掛かる手間が大幅に軽減され、初心者であっても容易かつ正確に半襟10を着脱することができる。
【0006】
なお、襦袢1の襟2及び半襟10に取付けられるものは一対の面ファスナ11に限らず、それぞれボタン対や紐状部材であったり、その他半襟10にはボタン,襟2にはそのボタンを通す環状部材といった取付手段も特許文献1には開示されている。これら各取付手段であっても半襟10の着脱の手間は軽減される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、引用文献1に記載の発明においては、半襟10だけでなく襦袢1の襟2にも面ファスナ11等の取付けという加工を施す必要があるので、その下準備が煩わしい。
さらに、半襟10と襦袢1の組み合わせは一つに決まっているものではなく、ある半襟10を他の襦袢1に組み合わせる場合もあるが、引用文献1に記載の発明では、その半襟10を使用する襦袢1全てに面ファスナ11等を取付ける必要があるので、非常に手間が掛かる。
【0008】
そこで、本発明の目的とするところは、半襟のみに加工を施すだけで容易な着脱を可能にする半襟及び半襟の取付け方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の半襟(20)は、幅方向に略半分に折られ開口部(K)側を襦袢(1)の襟(2)に被せるように着脱可能に取付けられる半襟(20)において、幅(W1)が前記襦袢(1)の襟(2)の幅(W2)の略二倍である襟芯(21)と、前記襟芯(21)よりも幅広で前記襟芯(21)の表側を覆うとともに幅方向一方側から前記襟芯(21)の裏側に折り返されてなる第一折り返し部(22a)と、幅方向他方側から前記襟芯(21)の裏側に折り返されてなる第二折り返し部(22b)とを有する化粧布(22)と、前記第一折り返し部(22a)の上に重ねて縫いつけられる第一押さえ布(23)と、前記第二折り返し部(22b)の上に重ねて縫いつけられる第二押さえ布(24)と、先端(25a)よりも後端(25b)が幅広で、先端(25a)が後端(25b)側へ折り返されて側面視略J字状である複数の雄型スプリングホック(25)と、を備え、前記第一押さえ布(23)を前記第一折り返し部(22a)に縫いつけた糸の縫い目(N)及び前記第二押さえ布(24)を前記第二折り返し部(22b)に縫いつけた糸の縫い目(N)は、前記雄型スプリングホック(25)の先端(25a)の幅(W3)より広くかつ前記雄型スプリングホック(25)の後端(25b)の幅(W4)より狭く、しかも、前記第一押さえ布(23)を前記第一折り返し部(22a)に縫いつけた糸の縫い目(N)に対し、前記第一折り返し部(22a)と前記第一押さえ布(23)との間であって幅方向中央側から、前記雄型スプリングホック(25)の先端(25a)を挿入するとともに前記雄型スプリングホック(25)を反転させて前記第一押さえ布(23)の表面に前記雄型スプリングホック(25)の先端(25a)を露出させ、さらに、前記第二押さえ布(24)を前記第二折り返し部(22b)に縫いつけた糸の縫い目(N)に対し、前記第二折り返し部(22b)と前記第二押さえ布(24)との間であって幅方向中央側から、前記雄型スプリングホック(25)の先端(25a)を挿入するとともに前記雄型スプリングホック(25)を反転させて前記第二押さえ布(24)の表面に前記雄型スプリングホック(25)の先端(25a)を露出させ、幅方向に略半分に折り、前記襦袢(1)の襟(2)を前記襦袢(1)の身頃(3)に縫いつけてある既存の糸の縫い目に対し、前記雄型スプリングホック(25)の先端(25a)を前記身頃(3)側から前記襟(2)側へ挿入して、前記襦袢(1)の襟(2)に取付け可能にしてなることを特徴とする。
【0010】
また、請求項2に記載の半襟(20)は、前記第二押さえ布(24)側の前記第一押さえ布(23)の端部(23a)を前記襟芯(21)の幅方向略中央に配置したことを特徴とする。
【0011】
また、請求項3に記載の半襟(20)は、前記第一折り返し部(22a)の長手方向中央に前記雄型スプリングホック(25)の一つを取付けたことを特徴とする。
【0012】
また、請求項4に記載の半襟(20)の取付け方法は、幅方向に略半分に折られ開口部(K)側を襦袢(1)の襟(2)に被せるように着脱可能に取付ける半襟(20)の取付け方法において、前記半襟(20)の幅方向両縁部に先端(25a)が幅方向中央側を向いて露出するように複数のフック(25)を取付け、前記半襟(20)を幅方向に前記フック(25)の先端(25a)側を内方にして略半分に折った後、前記襦袢(1)の襟(2)を前記襦袢(1)の身頃(3)に縫いつけてある既存の糸の縫い目に対し、前記フック(25)の先端(25a)を前記身頃(3)側から前記襟(2)側へ挿入して、前記半襟(20)を前記襦袢(1)の襟(2)に取付けることを特徴とする。
【0013】
ここで、上記括弧内の記号は、図面および後述する発明を実施するための形態に掲載された対応要素または対応事項を示す。
【発明の効果】
【0014】
本発明の請求項1に記載の半襟によれば、雄型スプリングホックを備え、第一押さえ布を第一折り返し部に縫いつけた糸の縫い目は、雄型スプリングホックの先端の幅より広いので、その縫い目に雄型スプリングホックの先端を挿入することができる。
よって、第一押さえ布を第一折り返し部に縫いつけた糸の縫い目に対し、第一折り返し部と第一押さえ布との間であって幅方向中央側から、雄型スプリングホックの先端を挿入するとともに雄型スプリングホックを反転させて第一押さえ布の表面に雄型スプリングホックの先端を露出させると、第一押さえ布で雄型スプリングホックの後端側が押さえられて安定する。このとき、雄型スプリングホックは先端が後端側へ折り返されて側面視略J字状であるので、雄型スプリングホックの先端が幅方向中央側を向く。
しかも、第一押さえ布を第一折り返し部に縫いつけた糸の縫い目は雄型スプリングホックの後端の幅より狭いので、雄型スプリングホックを第一折り返し部や第一押さえ布に縫いつけなくても、雄型スプリングホックが抜け落ちてしまうことはない。
同様に、第二押さえ布で雄型スプリングホックの後端側が押さえられて安定するとともに、雄型スプリングホックを第二折り返し部や第二押さえ布に縫いつけなくても、雄型スプリングホックが抜け落ちてしまうことはない。また、雄型スプリングホックの先端が幅方向中央側を向く。
【0015】
このように、半襟の幅方向一方側及び他方側において雄型スプリングホックの先端が幅方向中央側を向いて露出しているので、幅方向に略半分に折ると、襦袢の襟を襦袢の身頃に縫いつけてある既存の糸の縫い目に対し、雄型スプリングホックの先端を身頃側から襟側へ挿入するだけで、半襟を襦袢の襟に容易かつ正確に取付け可能である。
このとき、半襟のみにこのような加工を施すだけで済み、従来のように襦袢に加工を施す必要はないので、取付けの下準備が煩わしくなく、また一般的な襦袢の全てにその半襟を取付けることができる。
【0016】
また、請求項2に記載の半襟によれば、請求項1に記載の発明の作用効果に加え、第二押さえ布側の第一押さえ布の端部を襟芯の幅方向略中央に配置したので、その第一押さえ布の端部において半襟を幅方向に半分に折ることで、半襟を襦袢の襟に取付けたときに半襟の折り目がはっきり出て、見栄えがよい。
【0017】
また、請求項3に記載の半襟によれば、請求項1又は2に記載の発明の作用効果に加え、第一折り返し部の長手方向中央に雄型スプリングホックの一つを取付けたので、襦袢の襟の中央部分にこの雄型スプリングホックを挿入するだけで、襦袢の襟に対する半襟の長手方向の位置決めが容易にできる。
【0018】
また、請求項4に記載の半襟の取付け方法によれば、半襟の幅方向両縁部に先端が幅方向中央側を向いて露出するように複数のフックを取付け、半襟を幅方向にフックの先端側を内方にして略半分に折った後、襦袢の襟を襦袢の身頃に縫いつけてある既存の糸の縫い目に対し、フックの先端を身頃側から襟側へ挿入して、半襟を襦袢の襟に取付けるので、半襟の着脱が容易である。このフックは挿入するだけで取付けるものに限らず、縫いつけて取付けるものも使用できる。しかも、襦袢の既存の糸の縫い目を利用するので、従来のように襦袢に加工を施す必要はなく、半襟を取付けるための下準備が煩わしくない。
【0019】
なお、本発明の半襟及び半襟の取付け方法のように、雄型スプリングホックを第一折り返し部と第一押さえ布との間、及び第二折り返し部と第二押さえ布との間から縫い目に挿入し、雄型スプリングホックの先端を露出させて襦袢の襟に取付け可能にする点は、上述した特許文献1には全く記載されていない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る半襟を示す平面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る半襟を示す、図1のA−A線拡大断面図である。
【図3】図1に示す半襟における雄型スプリングホックを示す拡大斜視図である。
【図4】図1に示す半襟における糸の縫い目に対し雄型スプリングホックを挿入した状態を示す拡大平面図である。
【図5】襦袢の襟に図1に示す半襟を取付けた状態を示す平面図である。
【図6】従来例に係る半襟を襦袢の襟に取付けた状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1乃至図5を参照して、本発明の実施形態に係る半襟20及び半襟20の取付け方法を説明する。
この半襟20は、幅方向に略半分に折られ開口部K側を襦袢1の襟2に被せるように着脱可能に取付けられる半襟20であって、襟芯21と、化粧布22と、第一押さえ布23と、第二押さえ布24と、複数の雄型スプリングホック25と、を備える。
そして、特に半襟20を襦袢1の襟2に取付ける際に雄型スプリングホック25を用いることで、襦袢1の襟2には何ら加工を施さなくて済む点を特徴とするものである。
なお、従来例で示したものと同一部分には同一符号を付した。
【0022】
襟芯21は、図1に示すように緩やかに湾曲した略矩形状の布製の芯材であって、襟芯21の幅W1は襦袢1の襟2の幅W2の略二倍である。
【0023】
化粧布22は、襟芯21よりも幅広で襟芯21の表側を覆い、半襟20を襦袢1の襟2に取付けたときに外観面となる布である。
そして化粧布22は、幅方向一方側から襟芯21の裏側に折り返されてなる第一折り返し部22aと、幅方向他方側から襟芯21の裏側に折り返されてなる第二折り返し部22bとを有する。
なお、この幅方向一方側とは湾曲した襟芯21のその曲率が大きい側(図1における上側)を、幅方向他方側とは曲率が小さい側(図1における下側)をそれぞれいう。
このように化粧布22は湾曲した襟芯21を覆うものであるので、覆ったときに襟芯21の湾曲形状に沿う形状となっている。
また、化粧布22の長手方向の長さは襟芯21の長手方向の長さと略等しい。なお、半襟20を襦袢1の襟2に取付けたときに化粧布22(半襟20)の長手方向両端部は外からは見えないので、その見えない部分の化粧布22の長さは襟芯21の長さより長くても短くてもよい。
ここで、襟芯21の表側を覆う化粧布22の部分を化粧布22の本体部22c、本体部22cと第一折り返し部22aとの境界を第一端部22d、本体部22cと第二折り返し部22bとの境界を第二端部22eとそれぞれ呼ぶことにする。
【0024】
第一押さえ布23は、第一折り返し部22aの上(図2における右側)に重ねて縫いつけられる布である。襟芯21と化粧布22とを縫った後にそれに第一押さえ布23を重ねて縫いつけるのではなく、本体部22c、襟芯21、第一折り返し部22a、第一押さえ布23を一度にミシンで縫いつけている。
また、図1に示すように第二押さえ布24側(第二端部22e側)の第一押さえ布23の端部23aは襟芯21の幅方向略中央に配置されている。そして、その反対側(第一端部22d側)の第一押さえ布23の端部23bは、第一端部22dから離間している。
また、第一押さえ布23の長手方向の長さは、半襟20を襦袢1の襟2に取付けた際に、襟2の立っている部分(襦袢1の着用者の首の横から後ろに対応する部分)と同程度の長さであって、化粧布22の長手方向の長さの略二割程度である。これは第一押さえ布23を当該襟2部分の芯材とするためである。
【0025】
第二押さえ布24は、第二折り返し部22bの上(図2における右側)に重ねて縫いつけられる布である。第一押さえ布23と同様に、本体部22c、襟芯21、第二折り返し部22b、第二押さえ布24を一度に縫いつけている。
また、第一押さえ布23側(第一端部22d側)の第二押さえ布24の端部24aは、第一押さえ布23から離間している。また、第二端部22e側の第二押さえ布24の端部24bは、第二端部22eから離間している。
また、第二押さえ布24の長手方向の長さは、第二折り返し部22b(化粧布22)の長手方向の長さよりも長い。
【0026】
雄型スプリングホック25は、図3に示すように一本の針金を曲げ加工してなり、先端25aよりも後端25bが幅広で、先端25aが後端25b側へ折り返されて側面視略J字状となっている。詳細には、全長のうち後端25b側の略1/3〜1/4が幅広になっており、残りの中央部及び先端25a側の幅W3は後端25bの幅W4に比べて幅狭で一定となっている。そして、その幅狭の部分の長さを二等分するように、雄型スプリングホック25の先端25aが後端25b側へ折り返されている。
雄型スプリングホック25の幅狭の部分の幅W3は、雄型スプリングホック25を構成する針金の直径の三倍であり、第一押さえ布23を第一折り返し部22aに縫いつけた糸の縫い目N及び第二押さえ布24を折り返し部に縫いつけた糸の縫い目Nは、雄型スプリングホック25の先端25aの幅W3(幅狭の部分の幅)より広くかつ雄型スプリングホック25の後端25bの幅W4より狭く設定されている。
なお、第一押さえ布23を第一折り返し部22aに縫いつけた糸の縫い目Nと第二押さえ布24を折り返し部に縫いつけた糸の縫い目Nは同じ幅である。
【0027】
そして、図4に示すように、第一押さえ布23を第一折り返し部22aに縫いつけた糸の縫い目Nに対し、第一折り返し部22aと第一押さえ布23との間であって幅方向中央側から、雄型スプリングホック25の先端25aを挿入するとともに雄型スプリングホック25を反転させて第一押さえ布23の表面に雄型スプリングホック25の先端25aを露出させている。つまり、この露出状態では、雄型スプリングホック25の先端25aは幅方向中央側に向いている。
このとき、雄型スプリングホック25は図1に示すように、第一端部22dより幅方向外側には出ない。
このように第一押さえ布23(第一折り返し部22a)に対して雄型スプリングホック25は三つ取付けられ、そのうち一つは第一折り返し部22aの長手方向中央に取付けられている。
【0028】
通常、雄型スプリングホック25は雌型スプリングホックと一対でスカートやワンピースに取付けられるものであるが、幅広になった雄型スプリングホック25の後端25b側がスカート等の生地に縫いつけられる。
一方、本実施形態においては、縫い目Nに雄型スプリングホック25を挿入し、雄型スプリングホック25が縫い目Nを軸として揺動しないように雄型スプリングホック25の後端25b側を第一押さえ布23で第一折り返し部22aに対して押さえているだけであり、雄型スプリングホック25は第一押さえ布23や第一折り返し部22aに対して縫いつけられていない。しかも雌型スプリングホックは使用しない。
【0029】
同様に、第二押さえ布24を第二折り返し部22bに縫いつけた糸の縫い目Nに対し、第二折り返し部22bと第二押さえ布24との間であって幅方向中央側から、雄型スプリングホック25の先端25aを挿入するとともに雄型スプリングホック25を反転させて第二押さえ布24の表面に雄型スプリングホック25の先端25aを露出させている。
また、第二押さえ布24(第二折り返し部22b)に取付けられた雄型スプリングホック25は八つである。
【0030】
次に、このように構成された半襟20を襦袢1の襟2に取付ける方法を説明する。
まず、半襟20を幅方向に、雄型スプリングホック25の露出した先端25a側を内方にして略半分に折る。
次に、半分に折られた半襟20の開口部K側を襦袢1の襟2に被せる。
このとき、半襟20の第一折り返し部22aが襦袢1の襟2の内側、第二折り返し部22bが襦袢1の襟2の外側とになるようにする。
【0031】
次に、襦袢1の襟2を襦袢1の身頃3に縫いつけてある既存の糸の縫い目に対し、全ての雄型スプリングホック25の先端25aを身頃3側から襟2側へ挿入して、襦袢1の襟2に取付ける。
つまり、半襟20の第一折り返し部22a側の雄型スプリングホック25は襦袢1の内側から取付け、半襟20の第二折り返し部22b側の雄型スプリングホック25は襦袢1の外側から取付ける。図5において、印を付けた位置に雄型スプリングホック25があるが、実際には外側から雄型スプリングホック25は見えない。
【0032】
なお、通常の襦袢1の襟2を襦袢1の身頃3に縫いつけてある既存の糸の縫い目の幅は、雄型スプリングホック25の先端25aの幅W3よりも広くなっている。
【0033】
以上のように構成及び取付けられる半襟20によれば、雄型スプリングホック25を備え、第一押さえ布23を第一折り返し部22aに縫いつけた糸の縫い目Nは、雄型スプリングホック25の先端25aの幅W3より広いので、その縫い目Nに雄型スプリングホック25の先端25aを挿入することができる。
よって、第一押さえ布23を第一折り返し部22aに縫いつけた糸の縫い目Nに対し、第一折り返し部22aと第一押さえ布23との間であって幅方向中央側から、雄型スプリングホック25の先端25aを挿入するとともに雄型スプリングホック25を反転させて第一押さえ布23の表面に雄型スプリングホック25の先端25aを露出させると、第一押さえ布23で雄型スプリングホック25の後端25b側が押さえられて安定する。このとき、雄型スプリングホック25は先端25aが後端25b側へ折り返されて側面視略J字状であるので、雄型スプリングホック25の先端25aが幅方向中央側を向く。
しかも、第一押さえ布23を第一折り返し部22aに縫いつけた糸の縫い目Nは雄型スプリングホック25の後端25bの幅W4より狭いので、雄型スプリングホック25を第一折り返し部22aや第一押さえ布23に縫いつけなくても、雄型スプリングホック25が抜け落ちてしまうことはない。
同様に、第二押さえ布24で雄型スプリングホック25の後端25b側が押さえられて安定するとともに、雄型スプリングホック25を第二折り返し部22bや第二押さえ布24に縫いつけなくても、雄型スプリングホック25が抜け落ちてしまうことはない。また、雄型スプリングホック25の先端25aが幅方向中央側を向く。
【0034】
このように、半襟20の幅方向一方側及び他方側において雄型スプリングホック25の先端25aが幅方向中央側を向いて露出しているので、幅方向に略半分に折ると、襦袢1の襟2を襦袢1の身頃3に縫いつけてある既存の糸の縫い目に対し、雄型スプリングホック25の先端25aを身頃3側から襟2側へ挿入するだけで、半襟20を襦袢1の襟2に容易かつ正確に取付け可能である。
このとき、半襟20のみにこのような加工を施すだけで済み、従来のように襦袢1に加工を施す必要はないので、取付けの下準備が煩わしくなく、また一般的な襦袢1の全てにその半襟20を取付けることができる。
【0035】
また、第二押さえ布24側の第一押さえ布23の端部を襟芯21の幅方向略中央に配置したので、その第一押さえ布23の端部において半襟20を幅方向に半分に折ることで、半襟20を襦袢1の襟2に取付けたときに半襟20の折り目がはっきり出て、見栄えがよい。
さらに、第一折り返し部22aの長手方向中央に雄型スプリングホック25の一つを取付けたので、襦袢1の襟2の中央部分にこの雄型スプリングホック25を挿入するだけで、襦袢1の襟2に対する半襟20の長手方向の位置決めが容易にできる。
【0036】
なお、本実施形態において、第二押さえ布24側の第一押さえ布23の端部を襟芯21の幅方向略中央に配置したが、これに限られるものではない。
また、第一折り返し部22aの長手方向中央に雄型スプリングホック25の一つを取付けたが、これに限られるものではなく、半襟20の長手方向中央がわかれば他の目印でもよいし、目印がなくてもよい。
【0037】
また、雄型スプリングホック25は第一押さえ布23や第一折り返し部22aに対して縫いつけられていないとしたが、これに限られるものではなく、縫いつけられていてもよい。
また、雄型スプリングホック25に限られるものではなく、他のフック状のものであってもよい。つまり、本実施形態における雄型スプリングホック25のように挿入するだけで取付けるフックであっても、縫いつけて取付けるフックであってもよい。
さらには、先端25aが幅方向中央側を向いて半襟20の表面に露出し、襦袢1の既存の縫い目に対し挿入できるものであれば、他の形状であってもよい。
【0038】
また、襟芯21は緩やかに湾曲しているとしたが、これに限られるものではなく、矩形状であってもよい。
さらに、第一押さえ布23の長手方向の長さは本実施形態のものに限られるものではなく、化粧布22と同程度に長くてもよい。
【0039】
また、雄型スプリングホック25の個数や長手方向の位置は本実施形態のものに限られるものではない。
【0040】
また、本体部22c、襟芯21、第一折り返し部22a、第一押さえ布23を一度にミシンで縫いつけたが、襟芯21と化粧布22とを縫った後にそれに第一押さえ布23を重ねて縫いつけてもよい。
同様に、襟芯21と化粧布22とを縫った後にそれに第二押さえ布24を重ねて縫いつけてもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 襦袢
2 襟
3 身頃
10 半襟
11 面ファスナ
20 半襟
21 襟芯
22 化粧布
22a 第一折り返し部
22b 第二折り返し部
22c 本体部
22d 第一端部
22e 第二端部
23 第一押さえ布
23a 端部
23b 端部
24 第二押さえ布
24a 端部
24b 端部
25 雄型スプリングホック
25a 先端
25b 後端
K 開口部
N 縫い目
W1 襟芯の幅
W2 襦袢の襟の幅
W3 雄型スプリングホックの先端の幅
W4 雄型スプリングホックの後端の幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅方向に略半分に折られ開口部側を襦袢の襟に被せるように着脱可能に取付けられる半襟において、
幅が前記襦袢の襟の幅の略二倍である襟芯と、
前記襟芯よりも幅広で前記襟芯の表側を覆うとともに幅方向一方側から前記襟芯の裏側に折り返されてなる第一折り返し部と、幅方向他方側から前記襟芯の裏側に折り返されてなる第二折り返し部とを有する化粧布と、
前記第一折り返し部の上に重ねて縫いつけられる第一押さえ布と、
前記第二折り返し部の上に重ねて縫いつけられる第二押さえ布と、
先端よりも後端が幅広で、先端が後端側へ折り返されて側面視略J字状である複数の雄型スプリングホックと、を備え、
前記第一押さえ布を前記第一折り返し部に縫いつけた糸の縫い目及び前記第二押さえ布を前記第二折り返し部に縫いつけた糸の縫い目は、前記雄型スプリングホックの先端の幅より広くかつ前記雄型スプリングホックの後端の幅より狭く、
しかも、前記第一押さえ布を前記第一折り返し部に縫いつけた糸の縫い目に対し、前記第一折り返し部と前記第一押さえ布との間であって幅方向中央側から、前記雄型スプリングホックの先端を挿入するとともに前記雄型スプリングホックを反転させて前記第一押さえ布の表面に前記雄型スプリングホックの先端を露出させ、
さらに、前記第二押さえ布を前記第二折り返し部に縫いつけた糸の縫い目に対し、前記第二折り返し部と前記第二押さえ布との間であって幅方向中央側から、前記雄型スプリングホックの先端を挿入するとともに前記雄型スプリングホックを反転させて前記第二押さえ布の表面に前記雄型スプリングホックの先端を露出させ、
幅方向に略半分に折り、前記襦袢の襟を前記襦袢の身頃に縫いつけてある既存の糸の縫い目に対し、前記雄型スプリングホックの先端を前記身頃側から前記襟側へ挿入して、前記襦袢の襟に取付け可能にしてなることを特徴とする半襟。
【請求項2】
前記第二押さえ布側の前記第一押さえ布の端部を前記襟芯の幅方向略中央に配置したことを特徴とする請求項1に記載の半襟。
【請求項3】
前記第一折り返し部の長手方向中央に前記雄型スプリングホックの一つを取付けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の半襟。
【請求項4】
幅方向に略半分に折られ開口部側を襦袢の襟に被せるように着脱可能に取付ける半襟の取付け方法において、
前記半襟の幅方向両縁部に先端が幅方向中央側を向いて露出するように複数のフックを取付け、前記半襟を幅方向に前記フックの先端側を内方にして略半分に折った後、
前記襦袢の襟を前記襦袢の身頃に縫いつけてある既存の糸の縫い目に対し、前記フックの先端を前記身頃側から前記襟側へ挿入して、前記半襟を前記襦袢の襟に取付けることを特徴とする半襟の取付け方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−76191(P2013−76191A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217565(P2011−217565)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(511237829)
【Fターム(参考)】