説明

半透過型反射スクリーン、及び、半透過型反射スクリーンの製造方法

【課題】前方からの映像光を反射面により反射させて観察可能としながらも、裏面側の背景を前方から観察可能な半透過型反射スクリーン、及び、半透過型反射スクリーンの製造方法を提供する。
【解決手段】光を透過可能な単位プリズム形状12と、単位プリズム形状12が並ぶ間に形成され、光を吸収する光吸収部14と、単位プリズム形状12の裏面側に設けられ、単位プリズム形状12を通過した映像光を反射し、かつ、映像光が投影される投影側とは反対側である裏面側からの光を透過可能な反射透過層13を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前方からの映像光を反射面により反射させて観察可能な半透過型反射スクリーン、及び、半透過型反射スクリーンの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、反射型のスクリーンとして、透明シートの前面側に光透過拡散層、裏面側に光反射用のリニアフレネルレンズ面が設けられたものが知られていた(例えば、特許文献1)。また、特許文献2には、外光によるコントラストの低下を抑え、好適な視野角を得ることを可能にする反射スクリーンの構成が開示されている。さらに、特許文献3には、レンチキュラーレンズと反射部を設けた裏面の直交方向に配列されたリニアフレネルレンズの組み合わせによるスクリーンについて記載されている。
【0003】
しかし、これらの反射型のスクリーンは、投影される映像光を観察可能とすることを目的としており、スクリーンを透してその背面側の状態を観察することはできない。したがって、このようなスクリーンを設置可能な場所が限られてしまう。特に、大型のスクリーンとなると、大きな壁を設置したような状態となり、常設するには向かない場合が多かった。
【0004】
特許文献4には、透過型、反射型の両方に使用することができるスクリーンが提案されており、このスクリーンでは、背面側からの光を透過することが可能である。しかし、特許文献4に記載のスクリーンでは、表面に微細な凹凸が形成されていることから、透過して観察される裏面側の背景が滲んでしまい、背景を具体的に認識できるような状態で観察することが困難であり、単に光が透過するだけのものであった。なお、特許文献4に記載のスクリーンは、先にも述べたように、透過型と反射型の兼用である。したがって、透過型として使用したときに映像を観察可能とするために、拡散要素(表面の微細な凹凸)が必須であり、特許文献4に記載のスクリーンでは、背景を観察可能とすることは不可能であった。
【特許文献1】特開平8−29875号公報
【特許文献2】特開平10−62870号公報
【特許文献3】特開2002−311507号公報
【特許文献4】特開平9−114003号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、前方からの映像光を反射面により反射させて観察可能としながらも、裏面側の背景を前方から観察可能な半透過型反射スクリーン、及び、半透過型反射スクリーンの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施例に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
請求項1の発明は、映像源から投影された映像光を反射させて観察可能にするスクリーンであって、スクリーン面に沿って1次元又は2次元方向に多数並べて配列され、光を透過可能な単位形状(12,22,32,42)と、前記単位形状が並ぶ間に形成され、光を吸収する光吸収部(14,24,34,44)と、少なくとも前記単位形状の裏面側に設けられ、前記単位形状を通過した前記映像光を反射し、かつ、前記映像光が投影される投影側とは反対側である裏面側からの光を透過可能な反射透過層(13,23,33,43)と、を備える半透過型反射スクリーン(10,20,30,40)である。
請求項2の発明は、請求項1に記載の半透過型反射スクリーンにおいて、前記単位形状(12,22,32,42)は、スクリーン面に対して直交する断面における裏面側の幅より前記映像源側の幅が広い略楔形状であってスクリーン面に沿って多数並べて形成された単位プリズム形状であること、を特徴とする半透過型反射スクリーン(10,20,30,40)である。
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の半透過型反射スクリーンにおいて、前記単位形状(12,22,32,42)よりも前記映像源側に設けられた前面層(11)のHaze値は、25%未満であること、を特徴とする半透過型反射スクリーン(10,20,30,40)である。
請求項4の発明は、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の半透過型反射スクリーンにおいて、前記光吸収部(14,24,34,44)は、前記単位形状(12,22,32,42)を形成する材料の屈折率よりも屈折率が低いこと、を特徴とする半透過型反射スクリーン(10,20,30,40)である。
請求項5の発明は、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の半透過型反射スクリーンにおいて、前記光吸収部(14,24,34,44)は、光を吸収する微小ビーズを含むこと、を特徴とする半透過型反射スクリーン(10,20,30,40)である。
請求項6の発明は、請求項5に記載の半透過型反射スクリーンにおいて、前記光吸収部(14,24,34,44)は、前記単位形状(12,22,32,42)を形成する材料の屈折率よりも屈折率が低い樹脂に前記微小ビーズを混練することにより形成されていること、を特徴とする半透過型反射スクリーン(10,20,30,40)である。
請求項7の発明は、請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の半透過型反射スクリーンにおいて、前記反射透過層(13,23,33,43)は、前記単位形状の裏面側に反射透過性を有したシート状の部材を貼り合わせることにより形成されていること、を特徴とする半透過型反射スクリーン(10,20,30,40)である。
請求項8の発明は、請求項2から請求項7までのいずれか1項に記載の半透過型反射スクリーンにおいて、前記単位プリズム形状(12,22,32,42)は、その並ぶ方向において非対称な第1のプリズム面(42a)及び第2のプリズム面(42b)を有していること、を特徴とする半透過型反射スクリーン(10,20,30,40)である。
請求項9の発明は、請求項8に記載の半透過型反射スクリーンにおいて、前記第1のプリズム面(42a)は、1種類の面により形成されており、前記第2のプリズム面(42b)は、少なくとも2種類の面(42b−1,42b−2)により形成されていること、を特徴とする半透過型反射スクリーン(10,20,30,40)である。
請求項10の発明は、請求項8又は請求項9に記載の半透過型反射スクリーンにおいて、前記第1のプリズム面(42a)は、1つの平面により形成されており、前記第2のプリズム面(42b)は、裏面に近い位置に形成された第1の平面(42b−1)と、前記第1の平面よりも映像源側に形成された第2の平面(42b−2)との2種類の平面を有しており、前記第1の平面は、前記第1のプリズム面と対称な平面により形成されており、前記第2の平面がスクリーン面の法線と成す角度は、前記第1の平面がスクリーン面の法線と成す角度よりも大きいこと、を特徴とする半透過型反射スクリーン(10,20,30,40)である。
請求項11の発明は、請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載の半透過型反射スクリーンにおいて、不使用時には、巻き上げることが可能であること、を特徴とする半透過型反射スクリーン(10,20,30,40)である。
請求項12の発明は、請求項1から請求項11までのいずれか1項に記載の半透過型反射スクリーン(10,20,30,40)の製造方法であって、前記単位形状(12,22,32,42)を樹脂により賦型する単位形状賦型工程と、形成された前記単位形状の間に前記光吸収部(14,24,34,44)を形成する光吸収部形成工程と、前記光吸収部を形成した後に前記反射透過層(13,23,33,43)を形成する反射透過層形成工程と、を備える半透過型反射スクリーンの製造方法である。
請求項13の発明は、請求項12に記載の半透過型反射スクリーン(10,20,30,40)の製造方法において、前記光吸収部形成工程は、ワイピングにより前記光吸収部(14,24,34,44)を形成する材料を前記単位形状(12,22,32,42)の間に充填すること、を特徴とする半透過型反射スクリーンの製造方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)光を透過可能な単位形状と、光を吸収する光吸収部と、単位形状を通過した映像光を反射し、かつ、映像光が投影される投影側とは反対側である裏面側からの光を透過可能な反射透過層とを備えるので、投影される映像光により映し出される映像を観察可能であって、さらに、裏面側の背景についても観察することができる。また、不要な外光の影響を抑えて、映像及び背景を見やすくできる。
【0008】
(2)単位形状は、スクリーン面に対して直交する断面における裏面側の幅より映像源側の幅が広い略楔形状であってスクリーン面に沿って多数並べて形成された単位プリズム形状であるので、光吸収部に遮られる映像光を少なくし、映像光を効率よく反射することができる。また、型抜けがよく製造を容易にすることができる。
【0009】
(3)単位形状よりも映像源側に設けられた前面層のHaze値は、25%未満であるので、背景を鮮明に観察できる。
【0010】
(4)光吸収部は、単位形状を形成する材料の屈折率よりも屈折率が低いので、単位形状と光吸収部との境界面において、映像光を全反射することができ、反射損失を最小限とし、明るい映像を表示することができる。
【0011】
(5)光吸収部は、光を吸収する微小ビーズを含むので、簡単かつ確実に外光の吸収作用を得ることができる。
【0012】
(6)光吸収部は、単位形状を形成する材料の屈折率よりも屈折率が低い樹脂に微小ビーズを混練することにより形成されているので、微小ビーズを容易に固定することができ、製造を容易に行える。
【0013】
(7)反射透過層は、単位形状の裏面側に反射透過性を有したシート状の部材を貼り合わせることにより形成されているので、製造を容易に行うことができる。
【0014】
(8)単位プリズム形状は、その並ぶ方向において非対称な第1のプリズム面及び第2のプリズム面を有しているので、映像光又は外光の予定される方向に応じて、最適な形状とすることができる。したがって、映像光をより効率よく反射し、外光をより効率よく吸収させることができる。
【0015】
(9)第1のプリズム面は、1種類の面により形成されており、第2のプリズム面は、少なくとも2種類の面により形成されているので、映像光をより効率よく反射し、外光をより効率よく吸収させるためにより都合のよい形状とすることができる。
【0016】
(10)第1のプリズム面は、1つの平面により形成されており、第2のプリズム面は、裏面に近い位置に形成された第1の平面と、第1の平面よりも映像源側に形成された第2の平面との2種類の平面を有しており、第1の平面は、第1のプリズム面と対称な平面により形成されており、第2の平面がスクリーン面の法線と成す角度は、第1の平面がスクリーン面の法線と成す角度よりも大きいので、第2の平面に対する外光の入射角度を小さくすることができ、より多くの外光を吸収することができる。また、下方に対する間口が広がることから、映像光をより確実に単位プリズム形状に取り入れることができる。
【0017】
(11)不使用時には、巻き上げることが可能であるので、背景を観察可能、かつ、外光の影響を受けにくいことと合わせて、より多くの場面で使用可能な反射スクリーンとすることができる。
【0018】
(12)単位形状を樹脂により賦型する単位形状賦型工程と、形成された単位形状の間に光吸収部を形成する光吸収部形成工程と、光吸収部を形成した後に反射透過層を形成する反射透過層形成工程とを備えるので、反射透過層の形成は、裏面の全面に反射透過層を形成するだけでよく、反射スクリーンの製造を簡単に行うことができる。
【0019】
(13)光吸収部形成工程は、ワイピングにより光吸収部を形成する材料を単位形状の間に充填するので、確実に充填することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
前方からの映像光を反射面により反射させて観察可能としながらも、裏面側の背景を前方から観察可能にするという目的を、外光の影響を排除してコントラストの高い鮮明な映像を観察可能な形態で実現した。
【実施例1】
【0021】
図1は、実施例1における半透過型反射スクリーン10を有した投影システムを裏面上方から見た斜視図である。なお、図1を含め、以下に示す各図は、説明のため各部寸法、形状等を適宜誇張して示している。
本実施例における半透過型反射スクリーン10は、映像光を投影するプロジェクター光学エンジン部(映像源)Lをスクリーン10の中心に対して下方に設置し、映像光を上方斜めに投射させる配置として利用するスクリーンである。そして、映像光は、効率よく観察者側へ反射し、不要な外光は、選択的に後述の光吸収部により吸収させることで、非常にコントラストの高いフロントプロジェクタ用反射スクリーンとしたものである。
半透過型反射スクリーン10は、ベース部11,単位プリズム形状12,反射層13,光吸収部14等を備えている。
【0022】
図2は、実施例1における半透過型反射スクリーン10の使用状態を示す垂直断面図である。
なお、図2では、室内照明G,映像源L,半透過型反射スクリーン10をまとめて模式的に示しているので、実際とは配置関係が異なり、各光線の入射角度等が後述の説明における大小関係と異なる部分が含まれている。
ベース部11は、単位プリズム形状12を形成するときに必要な基材となる部分であり、アクリル、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂製のシート又はフィルムから形成される光透過性のある前面層であり、本実施例では、ポリエチレンテレフタレートを使用しており、Haze値は、20%である。なお、本実施例では、ベース部11が前面層である例を示したが、ベース部11よりも観察側にさらに反射防止層、帯電防止層、防汚層、ハードコート層等の別層が積層されていてもよい。また、この前面層となるベース部11のHaze値は、25%未満であることが、画像と同時に背景を鮮明に見せるために望ましい。また、このベース部11には、必要に応じて所定の透過率に減じさせるようなグレー等の染料、顔料等で着色(ティント)が施されていてもよい。
【0023】
単位プリズム形状12は、図2の断面において、裏面側における幅より映像源側における幅が広い略楔形状となっている。単位プリズム形状12は、スクリーン面に沿って(図2では上下方向に)多数並べて形成されている。また、単位プリズム形状12は、上下方向において上下対称な形状となっており、上方、及び、下方の斜面がスクリーン面の法線となす角度は、5°であり、頂部の幅が40μm、谷底から頂部までの高さが200μmとなっている。また、単位プリズム形状12は、屈折率1.56の紫外線硬化樹脂により形成されている。ここで、スクリーン面とは、スクリーン全体として見たときにおけるスクリーンの平面方向となる面を示すものであり、以下の説明中、及び、特許請求の範囲においても同一の定義として用いている。
【0024】
反射層13は、裏面側の全面に設けられ、映像光を反射して前面側(映像源側)へ戻すとともに、裏面側の背景を前面側から観察可能なように透過する反射透過層である。
本実施例における反射層13は、光の一部を反射し、その他の光の一部を透過する反射透過性を有したシート状の部材であるアルミ蒸着PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムをラミネートして形成した。アルミ蒸着PETフィルムとしては、アルミニウムの蒸着膜を薄めに付け、透過光と反射光とを略1:1になるようにした。蒸着後のアルミ蒸着PETフィルムは、反射率約40%、透過率約40%になり、所望の比を得ることができた。
【0025】
光吸収部14は、単位プリズム形状12が並ぶ間に形成され、光を吸収する作用を有した部分である。本実施例における光吸収部14は、不図示の黒色ビーズを屈折率1.50の紫外線硬化樹脂100重量%に対して25重量%混入させ、この紫外線硬化樹脂を単位プリズム形状12が並ぶ間に満遍なく充填するようにワイピングして形成されている。この黒色ビーズは、光を吸収する作用を有した微小ビーズである。
【0026】
次に、本実施例における半透過型反射スクリーン10の製造方法について説明する。
(単位形状賦型工程)
まず、電離放射線硬化性樹脂をベース部11上に塗布して、型を当てつけた状態において電離放射線を照射して硬化させることにより単位プリズム形状12を賦型する。この単位プリズム形状賦型工程に使用する電離放射線硬化性樹脂は、紫外線、及び、電子線硬化性の樹脂、アクリレート、エポキシアクリレート、シリコンアクリレート、シロキサン等の多官能単量体を主成分とする光架橋型のものを用いるのがよい。ここで電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち分子を重合、架橋し得るエネルギ量子を有するものを意味し、通常、紫外線、電子線が用いられる。
なお、単位プリズム形状12の形成は、電離放射線硬化による形成ではなく、アクリル樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂等を用いた熱溶融押出し成型により行ってもよい。
【0027】
(光吸収部形成工程)
単位形状賦型工程に続いて、黒色ビーズを屈折率1.50の紫外線硬化樹脂100重量%に対して25重量%混入させ、この紫外線硬化樹脂を単位プリズム形状12が並ぶ間に満遍なく充填するようにワイピング(スキージング)したのち、これに紫外線を照射して硬化させることにより光吸収部14を形成した。この光吸収部形成工程により外光を十分に遮断することができる光吸収部14が得られた。
【0028】
(反射透過層形成工程)
光吸収部14を形成した後、単位プリズム形状12の楔形状の頂部に先に説明したアルミ蒸着PETフィルムをラミネートして形成した。
【0029】
以上説明した半透過型反射スクリーン10では、図2に示すように映像源Lから投影される映像光線L1,L2は、単位プリズム形状12内を導波して光吸収部14との境界面で全反射を行う。光吸収部14の屈折率は、単位プリズム形状12の屈折率よりも低いので、この境界面において臨界角よりも大きな角度で入射する光は、全反射する。
そして、単位プリズム形状12と光吸収部14との境界面で全反射した映像光は、反射層13に到達して反射され、その後さらに全反射する等して観察可能な光線として観察者方向へ戻される。
ここで、反射層13は、反射率が40%であるから、投影された映像光の略40%を観察者側へ反射する。
【0030】
一方、半透過型反射スクリーン10の上方に設けられた室内照明G等からの外光G1,G2は、半透過型反射スクリーン10に対する入射角度が大きいことから、単位プリズム形状12と光吸収部14との境界面における入射角度が小さくなり、臨界角を超えない成分が多く、全反射をすることなく光吸収部14に入射して、黒色ビーズにより吸収される。したがって、外光が観察位置に到達する割合を非常に少なくすることができる。
【0031】
さらに、反射層13は、約40%の透過率があるので、裏面側の背景からの光の40%が透過して観察位置に到達する。したがって、観察位置からは、投影された映像に加えて、裏面側の背景も観察できる。
半透過型反射スクリーン10に実際に映像光を投影すると、投影画像については、上下方向からの外光の影響を受けることなく観察することができ、さらに、裏面側の背景についても、はっきりと背景の形状が認識できた。
このように、本実施例によれば、前方からの映像光を反射面により反射させて観察可能としながらも、裏面側の背景を前方から同時に観察可能にできる。また、この半透過型反射スクリーン10は、上述したように容易に製造することができる。
【実施例2】
【0032】
図3は、実施例2における半透過型反射スクリーン20を有した投影システムを裏面上方から見た斜視図である。
実施例2は、単位形状をシート面に沿って2次元方向に配置した他は、実施例1と同様な形態をしている。したがって、前述した実施例1と同様の機能を果たす部分には、末尾に同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
半透過型反射スクリーン20は、ベース部21,単位プリズム形状22,反射層23,光吸収部24等を備えている。
単位プリズム形状22は、光を透過可能な樹脂によってベース部21の裏面側に凸状に形成されており、裏面側の方がベース部21側よりも尖っている四角錐台形状であり、スクリーン面に沿って2次元方向に多数並べて配列されている。
【0033】
図4は、単位プリズム形状22を裏面側からスクリーン面の法線方向に沿って見た図である。
単位プリズム形状22のスクリーン面に対して平行な断面形状は、半透過型反射スクリーン20の使用状態における上下(垂直)方向寸法の方が左右(水平)方向寸法よりも大きくなっている。本実施例では、単位プリズム形状22の上底部分の寸法a=0.040mm,b=0.080mm,下底部分の寸法A=0.100mm,B=0.140mmであり、その高さh(図3参照)=0.200mmとなっている。
【0034】
光吸収部24は、単位プリズム形状22が並ぶ間に形成された光を吸収する作用を有した部分である。単位プリズム形状22がスクリーン面に沿って2次元方向に多数並べて配列されているので、光吸収部24についても、同様に2次元方向に格子状に配列された形態となっている。
【0035】
先に述べたように、単位プリズム形状22のスクリーン面に対して平行な断面形状は、半透過型反射スクリーンの使用状態における垂直方向寸法の方が水平方向寸法よりも大きくなっている。よって、単位プリズム形状22と光吸収部24との界面部分により形成される全反射面の存在する密度は、水平方向の方が垂直方向よりも多くなっている。従って、水平方向の方が垂直方向よりも映像光線が全反射面により全反射させられる確率が高くなり、大きな出射角度で半透過型反射スクリーン20から出射する映像光が多くなる。投影される映像光を反射するスクリーンでは、水平方向の視野角度を広くする方が、一般的な用途では好ましいとされ、一方、垂直方向の視野角度は、水平方向ほど広くする必要はない。そこで、本実施例では、水平方向の視野角度をより大きくするために、単位プリズム形状22のスクリーン面に対して平行な断面形状を、半透過型反射スクリーンの使用状態における垂直方向寸法の方が水平方向寸法よりも大きくなるようにしているのである。
【0036】
半透過型反射スクリーン20に実際に映像光を投影すると、投影画像については上下左右いずれの方向からの外光の影響を受けることなく観察することができ、さらに、裏面側の背景についても、はっきりと背景の形状が認識できた。
【実施例3】
【0037】
図5は、実施例3における半透過型反射スクリーン30を有した投影システムを裏面上方から見た斜視図である。
実施例3の半透過型反射スクリーン30は、実施例2における単位プリズム形状22の形状を変更した単位プリズム形状32とした他は、実施例2の半透過型反射スクリーン20と同様な形態をしている。従って、前述した実施例2と同様の機能を果たす部分には、末尾に同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
半透過型反射スクリーン30は、ベース部31,単位プリズム形状32,反射層33,光吸収部34等を備えている。
【0038】
単位プリズム形状32は、光を透過可能な樹脂によってベース部31の裏面側に凸状に形成されており、裏面側の方がベース部31側よりも尖っている錐台形状であり、スクリーン面に沿って2次元方向に多数並べて配列されている。
図6は、単位プリズム形状32を裏面側からスクリーン面の法線方向に沿って見た図である。
単位プリズム形状32のスクリーン面に対して平行な断面形状は、ベース部31に近い位置では長方形であって、裏面側に近くなるに従い略楕円形状となっており、半透過型反射スクリーンの使用状態における上下(垂直)方向寸法の方が左右(水平)方向寸法よりも大きくなっている。本実施例では、単位プリズム形状32の上底部分では短半径c=0.020mm,長半径d=0.040mmの楕円形状であり、下底部分では、寸法C=0.100mm,D=0.140mmの長方形であり、その高さh2(図5参照)=0.200mmとなっている。また、単位プリズム形状32は、屈折率1.56の紫外線硬化樹脂により形成されている。
【0039】
本実施例では、単位プリズム形状32の形状に上述のような楕円錐台部分を含むようにしたので、垂直及び水平方向に加えて、これら以外の斜め方向に向いている全反射面を有することとなる。従って、この斜め方向に出射する映像光線についても制御することができる。また、裏面側の背景についても観察することができる。
【実施例4】
【0040】
図7は、実施例4における反射スクリーン40を示した断面図である。
実施例4は、実施例1における単位プリズム形状12の形状を改良して単位プリズム形状42とした例である。したがって、前述した実施例1と同様の機能を果たす部分には、末尾に同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
図8は、単位プリズム形状42の具体的な形状を示す図である。
単位プリズム形状42は、その並ぶ方向(使用状態における上下方向)において非対称な形状となっており、上方に位置する第1のプリズム面42aと、下方に位置する第2のプリズム面42bを有している。
【0041】
第1のプリズム面42aは、1つの平面により形成されており、スクリーン面に対する法線との成す角度が5°である。
第2のプリズム面42bは、裏面に近い位置に形成された第1の平面42b−1と、第1の平面42b−1よりも映像源側に形成された第2の平面42b−2との2種類の平面を有している。
第1の平面42b−1は、第1のプリズム面42aと対称な平面の一部により形成されており、スクリーン面に対する法線との成す角度が5°である。
第2の平面42b−2がスクリーン面の法線と成す角度は、15°であり、第1の平面42b−1がスクリーン面の法線と成す角度よりも大きくなっている。
また、単位プリズム形状42は、頂部の幅が40μmであり、谷底から頂部までの高さが200μm、前面側の幅が100μmとなっている。
【0042】
本実施例では、第2の平面42b−2がスクリーン面の法線と成す角度をより大きくしたことにより、第2の平面42b−2に対する外光の入射角度が小さくなるようにして、外光がこの第2の平面42b−2で全反射することなく光吸収部44に到達しやすくしている。また、下方への間口が広がることにより、下方からの映像光が単位プリズム形状42に入射し易くなっている。
【0043】
図9は、実施例4における反射スクリーン40に対して入射角度30度で下方から映像光が投影された場合を示す図である。
図10は、実施例4における反射スクリーン40に対して入射角度10度で下方から映像光が投影された場合を示す図である。
図11は、実施例4における反射スクリーン40に対して入射角度30度で上方から外光が到達した場合を示す図である。
なお、図9〜図11では、簡単のためにベース部41は別層として示していない。
下方からの映像光は、適度に拡散されながら観察方向へ反射されている(図9,10)のに対して、上方からの外光については、その大部分が吸収されて出射しないことが分かる(図11)。
【0044】
本実施例によれば、第2の平面42b−2をさらに設けたことにより、上方からの外光の反射を防ぎながら、映像光を反射するという効果をより高めることができる。したがって、裏面側の背景を観察可能としながらも、よりコントラストが高く、高輝度であって映り込みのない画像を観察することが可能となる。
【0045】
(変形例)
以上説明した実施例に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の均等の範囲内である。
各実施例において、光吸収部は、黒色ビーズを混練した樹脂により形成した例を示したが、これに限らず、例えば、黒色ビーズをそのまま充填することにより形成してもよい。
【0046】
また、各実施例において、固定式の反射スクリーンの例を挙げて説明したが、これに限らず、例えば、不使用時に巻き上げて収納可能な巻き上げ式としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】実施例1における半透過型反射スクリーン10を有した投影システムを裏面上方から見た斜視図である。
【図2】実施例1における半透過型反射スクリーン10の使用状態を示す垂直断面図である。
【図3】実施例2における半透過型反射スクリーン20を有した投影システムを裏面上方から見た斜視図である。
【図4】単位プリズム形状22を裏面側からスクリーン面の法線方向に沿って見た図である。
【図5】実施例3における半透過型反射スクリーン30を有した投影システムを裏面上方から見た斜視図である。
【図6】単位プリズム形状32を裏面側からスクリーン面の法線方向に沿って見た図である。
【図7】実施例4における反射スクリーン40を示した断面図である。
【図8】単位プリズム形状42の具体的な形状を示す図である。
【図9】実施例4における反射スクリーン40に対して入射角度30度で下方から映像光が投影された場合を示す図である。
【図10】実施例4における反射スクリーン40に対して入射角度10度で下方から映像光が投影された場合を示す図である。
【図11】実施例4における反射スクリーン40に対して入射角度30度で上方から外光が到達した場合を示す図である。
【符号の説明】
【0048】
10,20,30,40 半透過型反射スクリーン
11,21,31,41 ベース部
12,22,32,42 単位プリズム形状
42a 第1のプリズム面
42b 第2のプリズム面
42b−1 第1の平面
42b−2 第2の平面
13,23,33,43 反射層
14,24,34,44 光吸収部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像源から投影された映像光を反射させて観察可能にするスクリーンであって、
スクリーン面に沿って1次元又は2次元方向に多数並べて配列され、光を透過可能な単位形状と、
前記単位形状が並ぶ間に形成され、光を吸収する光吸収部と、
少なくとも前記単位形状の裏面側に設けられ、前記単位形状を通過した前記映像光を反射し、かつ、前記映像光が投影される投影側とは反対側である裏面側からの光を透過可能な反射透過層と、
を備える半透過型反射スクリーン。
【請求項2】
請求項1に記載の半透過型反射スクリーンにおいて、
前記単位形状は、スクリーン面に対して直交する断面における裏面側の幅より前記映像源側の幅が広い略楔形状であってスクリーン面に沿って多数並べて形成された単位プリズム形状であること、
を特徴とする半透過型反射スクリーン。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の半透過型反射スクリーンにおいて、
前記単位形状よりも前記映像源側に設けられた前面層のHaze値は、25%未満であること、
を特徴とする半透過型反射スクリーン。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の半透過型反射スクリーンにおいて、
前記光吸収部は、前記単位形状を形成する材料の屈折率よりも屈折率が低いこと、
を特徴とする半透過型反射スクリーン。
【請求項5】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の半透過型反射スクリーンにおいて、
前記光吸収部は、光を吸収する微小ビーズを含むこと、
を特徴とする半透過型反射スクリーン。
【請求項6】
請求項5に記載の半透過型反射スクリーンにおいて、
前記光吸収部は、前記単位形状を形成する材料の屈折率よりも屈折率が低い樹脂に前記微小ビーズを混練することにより形成されていること、
を特徴とする半透過型反射スクリーン。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の半透過型反射スクリーンにおいて、
前記反射透過層は、前記単位形状の裏面側に反射透過性を有したシート状の部材を貼り合わせることにより形成されていること、
を特徴とする半透過型反射スクリーン。
【請求項8】
請求項2から請求項7までのいずれか1項に記載の半透過型反射スクリーンにおいて、
前記単位プリズム形状は、その並ぶ方向において非対称な第1のプリズム面及び第2のプリズム面を有していること、
を特徴とする半透過型反射スクリーン。
【請求項9】
請求項8に記載の半透過型反射スクリーンにおいて、
前記第1のプリズム面は、1種類の面により形成されており、
前記第2のプリズム面は、少なくとも2種類の面により形成されていること、
を特徴とする半透過型反射スクリーン。
【請求項10】
請求項8又は請求項9に記載の半透過型反射スクリーンにおいて、
前記第1のプリズム面は、1つの平面により形成されており、
前記第2のプリズム面は、裏面に近い位置に形成された第1の平面と、前記第1の平面よりも映像源側に形成された第2の平面との2種類の平面を有しており、
前記第1の平面は、前記第1のプリズム面と対称な平面により形成されており、
前記第2の平面がスクリーン面の法線と成す角度は、前記第1の平面がスクリーン面の法線と成す角度よりも大きいこと、
を特徴とする半透過型反射スクリーン。
【請求項11】
請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載の半透過型反射スクリーンにおいて、
不使用時には、巻き上げることが可能であること、
を特徴とする半透過型反射スクリーン。
【請求項12】
請求項1から請求項11までのいずれか1項に記載の半透過型反射スクリーンの製造方法であって、
前記単位形状を樹脂により賦型する単位形状賦型工程と、
形成された前記単位形状の間に前記光吸収部を形成する光吸収部形成工程と、
前記光吸収部を形成した後に前記反射透過層を形成する反射透過層形成工程と、
を備える半透過型反射スクリーンの製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の半透過型反射スクリーンの製造方法において、
前記光吸収部形成工程は、ワイピングにより前記光吸収部を形成する材料を前記単位形状の間に充填すること、
を特徴とする半透過型反射スクリーンの製造方法。

【図2】
image rotate

【図4】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図1】
image rotate

【図3】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−243693(P2006−243693A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−166004(P2005−166004)
【出願日】平成17年6月6日(2005.6.6)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】