説明

半透過型液晶ディスプレイ付きカード型デバイス、該デバイスのためのバックライト付き給電装置、並びに、該デバイス及び該給電装置を備えるシステム

【課題】小型軽量で携帯性に優れながら動作時間が長い半透過型液晶ディスプレイ付きカード型デバイス、該デバイスのためのバックライト付き給電装置、並びに、該デバイス及び該給電装置を備えるシステムを提供する。
【解決手段】半透過型液晶ディスプレイ付きカード型デバイス(10)は、回路基板(26)の開口部(34)に配置され、コントローラにより制御されてメモリに記憶されたデータを表示可能な半透過型の液晶表示ユニット(36)と、外部から供給された電力を蓄電可能であるとともに、蓄えた電力をコントローラ及び液晶表示ユニットに供給可能な電源と、回路基板(26)の一方の面に接着され、液晶表示ユニット(36)を受け入れる凹み(46)を有するとともに液晶表示ユニット(36)の受光部に重なる領域を透光性とした基材とを備え、且つ、液晶表示ユニット(36)に光を供給する発光体を備えない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半透過型液晶ディスプレイ付きカード型デバイス、該デバイスのためのバックライト付き給電装置、並びに、該デバイス及び該給電装置を備えるシステム。
【背景技術】
【0002】
カード型デバイスとして、例えばRFIDカードやICカードが知られている。カード型デバイスは、樹脂製の基材を有し、基材には回路基板が埋設されている。回路基板には、ICチップと、必要に応じてアンテナ等が設けられている。そして、カード型デバイスには、液晶表示装置等からなる表示部を有するものもある。
【0003】
例えば、特許文献1が開示するICカードは、カイラルネマティック型液晶を用いた反射型液晶表示装置を有する。反射型液晶表示装置は、バックライトを不要とでき、バッテリーレス化が出来るため、ICカードのような小型、薄型装置に搭載することができるものと考えられている。
【0004】
特許文献2が開示するICカードは、液晶表示パネルからなる表示部と太陽電池を有する。このICカードによれば、カードリーダライタに設けられた光源が太陽電池に光を照射することで、太陽電池が表示部に電力を供給する。
また、特許文献3には、ICカードに透過型液晶表示装置、及び、半透過型液晶表示装置を搭載できるという記載がある。透過型液晶表示装置及び半透過型液晶表示装置は、通常、バックライトを内蔵している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−157414号公報(例えば段落番号0010)
【特許文献2】特開2002―32728号公報(例えば要約)
【特許文献3】特開2006−323683公報(例えば請求項7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、反射型液晶表示装置では、外光を取り込み、その反射光により表示画面を発光させる機構になっている。このため、反射型液晶表示装置を用いたICカードでは、夜間など外光が弱いときには、画面を認識することが困難であった。
【0007】
また、透過型液晶表示装置を用いた場合、内蔵されているバックライトにも電力を供給する必要がある。このため、透過型液晶表示装置を用いたICカードでは、大型の電池が必要になり、カード自体が大型化してしまう。なお、太陽電池を用いたとしても、専用の光源を用いれば別として、発電量には限りがあり、透過型液晶表示装置に十分な電力を供給することは困難である。
【0008】
更に、半透過型液晶表示装置を用いた場合にも、内蔵されているバックライトに電力を供給する必要がある。このため、半透過型液晶表示装置を用いたICカードでも大型の電池が必要になり、カード自体が大型化してしまう。
【0009】
本発明は上述した事情に鑑みてなされ、その目的とするところは、小型軽量で携帯性に優れながら動作時間が長い半透過型液晶ディスプレイ付きカード型デバイス、該デバイスのためのバックライト付き給電装置、並びに、該デバイス及び該給電装置を備えるシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した目的を達成するため、本発明の一態様によれば、コントローラ、メモリ、及び、外部から前記メモリにデータを渡すためのインターフェースが設けられるとともに、開口部を有する回路基板と、前記回路基板の開口部に配置され、前記コントローラにより制御されて前記メモリに記憶されたデータを表示可能な半透過型の液晶表示ユニットと、外部から供給された電力を蓄電可能であるとともに、蓄えた電力を前記コントローラ及び前記液晶表示ユニットに供給可能な電源と、前記回路基板の一方の面に接着され、前記液晶表示ユニットを受け入れる凹みを有するとともに前記液晶表示ユニットの受光部に重なる領域を透光性とした基材とを備え、且つ、前記液晶表示ユニットに光を供給する発光体を備えないことを特徴とする半透過型液晶ディスプレイ付きカード型デバイスが提供される(請求項1)。
【0011】
請求項1の半透過型液晶ディスプレイ付きカード型デバイスによれば、発光体(バックライト)を備えないので、消費電力が抑制され、十分な動作時間が確保される。また、消費電力が抑制されることにより、大型の電池を内蔵する必要が無く、デバイス自体の大型化や重量の増大が防止される。
一方、発光体を備えていなくても、半透過型の液晶表示ユニットによれば、外光を取り込んで反射させ、反射光によって画像を表示させることで、利用者は画像を視認する。
その上、回路基板の開口部に半透過型の液晶表示ユニットが配置され、液晶表示ユニットの受光部と重なる基材の領域は透光性を有しているため、液晶表示ユニットに対し背面から光を照射すれば、透過光によって画像が更に明るくなる。つまり、この半透過型液晶ディスプレイ付きカード型デバイスによれば、外光が暗いときでも、鮮明な画像を表示することが可能である。
【0012】
好ましくは、前記液晶表示ユニットは、液晶を挟む2つのプラスチック製の基板を含む(請求項2)。
【0013】
請求項2の半透過型液晶ディスプレイ付きカード型デバイスは、前記液晶表示ユニットがプラスチック製の基板を有しているため、ガラス製の基板を有する場合に比較して軽量で柔軟性に富み、破損もし難い。
【0014】
好ましくは、前記基材は、前記回路基板側に位置し、透光性を有する第1層と、前記第1層に積層された有色の第2層と、前記第2層に積層されるとともに前記第1層と同じ材料からなり、透光性を有する第3層とを含み、前記凹みは、少なくとも前記第1層から前記第2層まで貫通している(請求項3)。
【0015】
請求項3の半透過型液晶ディスプレイ付きカード型デバイスでは、基材の第1層と第3層とが同一の材料からなるため、基材が反りがたい。このため、この半透過型液晶ディスプレイ付きカード型デバイスは長期に渡り変形し難い。
また、この半透過型液晶ディスプレイ付きカード型デバイスは、有色の第2層によって回路基板の一方の面が隠されることで、優れた意匠を有する。
【0016】
好ましくは、前記回路基板の他方の面を覆う第1の外装層と、前記第3層の表面に設けられた第2の外装層とを更に備え、前記第1の外装層及び前記第2の外装層の前記液晶表示ユニットの表示部および受光部と重なる領域は透光性材料からなる(請求項4)。
【0017】
請求項4の半透過型液晶ディスプレイ付きカード型デバイスは、第1の外装層及び第2の外装層に適当な意匠を付与することで、更に優れた意匠を有する。
【0018】
好ましくは、半透過型液晶ディスプレイ付きカード型デバイスは、非接触認証機能を更に備える(請求項5)。
【0019】
請求項5の半透過型液晶ディスプレイ付きカード型デバイスによれば、非接触認証機能によって利用者の利便性が高まる。
【0020】
好ましくは、外部から前記コントローラ及び前記液晶表示ユニットに電力を供給するための受電端子を更に備える(請求項6)。
【0021】
請求項6の半透過型液晶ディスプレイ付きカード型デバイスによれば、外部から受電端子を経由して電力が供給されるので、電源の蓄電量にかかわらず、データサイズが大きい画像であっても表示される。
【0022】
好ましくは、利用者が前記コントローラに命令を入力するためのマンマシンインターフェースを更に備える(請求項7)。
【0023】
請求項7の半透過型液晶ディスプレイ付きカード型デバイスによれば、マンマシンインターフェースを利用して、例えば表示のオンオフによる省電力化の達成や、表示させる画像を切り替えることによる利用者の利便性の更なる向上が図られる。
【0024】
本発明の他の態様によれば、請求項1乃至7の何れか一項に記載の半透過型液晶ディスプレイ付きカード型デバイスのためのバックライト付き給電装置であって、ハウジングと、前記液晶表示ユニットの受光部に光を照射するバックライトユニットと、前記コントローラ及び前記液晶表示ユニットに供給するための電力を蓄電する親電源と、前記メモリにデータを渡すとともに、前記コントローラ及び前記液晶表示ユニットに前記親電源から電力を供給するためのハードウェアインターフェースとを備えることを特徴とするバックライト付き給電装置が提供される(請求項8)。
【0025】
請求項8のバックライト付き給電装置を用いた場合、半透過型液晶ディスプレイ付きカード型デバイスの半透過型の液晶表示ユニットは、バックライトから受けた光を透過させることで、画像をより明るく表示する。
また、このバックライト付き給電装置から、コントローラ及び液晶表示ユニットに電力が供給されるので、半透過型液晶ディスプレイ付きカード型デバイスの電源の蓄電量にかかわらず、データサイズが大きい画像であっても表示される。
【0026】
更に、このバックライト付き給電装置から画像データを半透過型液晶ディスプレイ付きカード型デバイスのメモリに送信することにより、簡単な構成にて、利用者は任意の画像を液晶表示ユニットに表示させることができる。
その上、このバックライト付き給電装置は、電源を内蔵しているので、携帯が可能であり、屋外等においても、半透過型液晶ディスプレイ付きカード型デバイスとともに使用可能である。
【0027】
本発明の更に他の態様によれば、請求項1乃至7の何れか一項に記載の半透過型液晶ディスプレイ付きカード型デバイスと、請求項8に記載のバックライト付き給電装置とを備えることを特徴とする半透過型液晶ディスプレイ付きカード型デバイスシステムが提供される(請求項9)。
【0028】
請求項9の半透過型液晶ディスプレイ付きカード型デバイスシステムによれば、半透過型液晶ディスプレイ付きカード型デバイスとバックライト付き給電装置を一緒に用いることで、外部環境にかかわらず、鮮明な画像が表示される。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、小型軽量で携帯性に優れながら動作時間が長い半透過型液晶ディスプレイ付きカード型デバイス、該デバイスのためのバックライト付き給電装置、並びに、該デバイス及び該給電装置を備えるシステムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】一実施形態のICカードシステムを概略的に示す斜視図である。
【図2】図1中のICカードを概略的に示す斜視図である。
【図3】図2のICカードの裏面を概略的に示す平面図である。
【図4】図2のICカードに内蔵された回路基板を実装された電気部品とともに示す概略的な断面図である。
【図5】図2中のV−V線に沿う概略的な断面図である。
【図6】図5中の液晶表示ユニットの構成を概略的に示す断面図である。
【図7】図2のICカードの電気回路を概略的に示すブロック図である。
【図8】図1中の給電装置を固定部材が外された状態で概略的に示す斜視図である。
【図9】図8の給電装置の電気回路を概略的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、一実施形態の半透過型液晶ディスプレイ付きカード型デバイスシステム(以下、単にICカードシステムともいう)を示す概略的な斜視図である。ICカードシステムは、半透過型液晶ディスプレイ付きカード型デバイス(以下、単にICカードともいう)10とバックライト付き給電装置(以下、単に給電装置ともいう)12からなる。
【0032】
図2は、ICカード10を示す概略的な斜視図である。ICカード10は、携帯な便利なカード形状を有し、好ましくは、ISO/IEC7810によって定められた形状を有する。具体的には、ICカード10の長さは86mm、幅は54mm、そして、厚さは0.76mmであるのが好ましい。
【0033】
ICカード10の一方の面(表面)には、画像表示部14が設けられている。また、ICカード10の表面には、画像表示部14における画像表示のオンオフ、及び、表示される内容を変更するための操作部として、ボタン16が設けられている。
【0034】
図3は、ICカード10の他方の面(裏面)を概略的に示す平面図である。ICカード10の裏面には、画像表示部14に対応する位置に受光部18が設けられている。また、ICカード10の裏面には、凹み20が設けられ、凹み20内に2組の電極22,24が表出している。電極22,24は、ICカード20の裏面から突出しないよう、凹み20内に配置されている。凹み20は、矩形状の他、任意の形状を選択できる。また凹み20が無くても構わない。
【0035】
図4は、ICカード10に内蔵された回路基板26を実装された複数の電気部品とともに概略的に示す平面図である。
具体的には、回路基板26としては、例えば薄型リジッド基板又はFPC基板(フレキシブルプリント基板)を用いることができる。ICカード10の裏面側に位置する回路基板26の一方の面(裏面,実装面)には、電気部品として、電極22,24とともに、コントローラとしてのMCU(マイクロコンピュータ)28を構成するICチップ、メモリ30を構成するICチップ、LCD(液晶ディスプレイ)ドライバ32を構成するICチップ等が実装されている。
【0036】
そして、回路基板26は、画像表示部14及び受光部18に対応する位置に開口部34を有し、開口部34には、半透過型の液晶表示ユニット36が配置されており、接着剤などで固定されている。液晶表示ユニット36は、LCDドライバ32に接続されている。
また、回路基板26には電源38が搭載されている。電源38としては、例えばリチウムイオン電池等の二次電池やコンデンサを用いることができる。
【0037】
更に、好ましい態様として、回路基板26には、ループアンテナ40と、ループアンテナ40に接続された、RFID(Radio Frequency Identification)制御ユニット42を構成するICチップが実装されている。
なお、ボタン16は、回路基板26の他方の面(表面,半田面)に搭載されている。
【0038】
図5は、図2のV−V線に沿う概略的な断面図である。
回路基板26の裏面には、PET(ポリエチレンテレフタレート)等の樹脂を主成分とする基材44が接着されている。基材44には、回路基板26全体を受け容れる凹みとともに、液晶表示ユニット36を受け容れる凹み46や、他の電気部品を受け容れる凹みが形成されている。
【0039】
好ましくは、基材44は、大まかに分けて3層からなり、回路基板26側から順に、第1層48、第2層50、及び、第3層52を有する。第1層48及び第3層52は透光性を有する同一の材料からなり、より好ましくは、透明な同一材料である。第2層50は、有色の材料からなる。第2層50が有色の場合、凹み46は、少なくとも第1層48及び第2層50を貫通しているのが好ましく、液晶表示ユニット36以外の電気部品を受け入れる凹みは、第2層50を貫通していないのが好ましい。
なお、第1層48、第2層50及び第3層52の各々は、更に複数の層から構成されていてもよい。この場合も、第1層48と第3層52の構成は、第2層50を挟んで対称になるように設定される。
【0040】
好ましくは、ICカード10の表面側には、第1の外装層54が設けられ、ICカード10の裏面側には、第2の外装層56が設けられる。
第1の外装層54は、基材44の第1層48及び回路基板26の表面を覆っている。第1の外装層54は、例えば樹脂製のフィルムからなり、液晶表示ユニット36の表示部に重なる領域に透明部を有する。第1の外装層54の透明部は、画像表示部14の表面を構成している。
なお、第1の外装層54の透明部以外の領域は、回路基板26を見えなくするとともに、ICカード10の意匠を高めるために、有色であるのが好ましい。また、第1の外装層54には、反射防止機能を有するフィルムを使用してもよく、あるいは、反射防止コーティングを施してもよい。
【0041】
一方、第2の外装層56は、基材44の第3層52の表面を覆っている。第2の外装層56は、例えば、樹脂製のフィルム若しくは印刷塗布層によって構成され、液晶表示ユニット36の受光部に重なる領域に透明部を有する。第2の外装層56の透明部は、受光部18の表面を構成している。
なお、第2の外装層56の透明部以外の領域は、回路基板26を確実に見えなくするとともに、ICカード10の意匠を高めるために、有色であるのが好ましい。
【0042】
図6は、半透過型の液晶表示ユニット36の概略的な構成を示す断面図である。ICカード10の表面側から、偏光板60、位相差フィルム62、プラスチック基板64、カラーフィルタ層66、例えばITOからなる透明電極層68、液晶70を挟む一対の配向膜72,74、透明電極層76、拡散反射層78、プラスチック基板80、位相差フィルム82、及び、偏光板84を含む。
【0043】
カラーフィルタ層66、透明電極層68、配向膜72は、プラスチック基板64上に一体に設けられ、拡散反射層78、透明電極層76、及び、配向膜74は、プラスチック基板80上に一体に設けられている。
なお、液晶70は、配向膜72,74間に設けられたシール部材86によって密封され、且つ、配向膜72,74間には、間隔を確保するためのスペーサ88が設けられている。
【0044】
ここで、液晶表示ユニット36は半透過型であるため、拡散反射層78は、開口を有し、表から裏に向かう光を反射するとともに、裏から表に向かう光の透過を許容する。本実施形態では、拡散反射層78による、表から裏からに向かう光の反射率は75%であり、透過率は25%である。反射率及び透過率は、これに限定されることはないが、反射率が透過率よりも大であるのが好ましい。反射率及び透過率は、拡散反射層78の開口率を変更することによって調整可能である。
【0045】
図7は、ICカード10の電気回路を概略的に示すブロック図である。
ICカード10は、本実施形態では、大まかに分けて、表示機能部90とRFID機能部92を有する。
表示機能部90は、ボタン16、電極22,24、MCU28、メモリ30、LCDドライバ32、液晶表示ユニット36、及び、電源38を含んでいる。一方、RFID機能部92は、ループアンテナ40とRFID制御ユニット42を含んでいる。なお、本実施形態では、RFID機能部と表示機能部とが繋がっていないが、RFID機能部と表示機能部とを繋いで連係動作を可能とした構成は、より好ましい。
【0046】
図8は給電装置12を概略的に示す斜視図である。
給電装置12は、例えば樹脂製のハウジング94を有する。ハウジング94は、例えば略直方体形状を有し、ICカード10が配置される搭載面96を有する。搭載面96には、ICカード10の受光部18に対応する位置に開口98が設けられ、開口98には、バックライトユニット100の面発光部が表出している。
【0047】
また、搭載面96からは、ICカード10の電極22,24に対応する位置に、二組の電極102,104が突出している。電極102,104は、ICカード10が搭載面96に配置されたときに、電極22,24にそれぞれ当接する。
【0048】
一方、ハウジング94の一端には、ICカード10を固定するための係合部として、断面L字形状の爪106が一体に設けられている。そして、ハウジング94の他端には、分離可能にて断面L字形状の係合部材108が固定される。係合部材108は、爪106と協働して、搭載面96上のICカード10を固定する。
【0049】
なお、ハウジング94の他端には突出部110が設けられ、係合部材108には、突出部110と嵌合する孔112が形成されている。突出部110が孔112に嵌合することにより、ハウジング94に対して係合部材108が固定される。
【0050】
図9は、給電装置12の電気回路を概略的に示すブロック図である。
給電装置12は、ICカード10に光及び電力を供給するためのバックライト・給電機能部114を有する。バックライト・給電機能部114は、バックライトユニット100及び電極102,104とともに、MCU116、ボタン等の操作部118、及び、電源(親電源)120を含む。
【0051】
バックライトユニット100としては、好ましくは、発光体としてのLED(発光ダイオード)と、LEDの光を拡散させるための導光板とを含むものを用いることができる。
電源120としては、例えばリチウムイオン電池等の二次電池やコンデンサを用いることができる。好ましくは、給電装置12の電源120の蓄電容量は、ICカード10の電源38の蓄電容量よりも大である。なお、電源120には、例えば外部の100Vの商用電源から、取り外し可能な電源コードを用いて充電することができる。
【0052】
また、給電装置12は、ICカード10以外の外部の機器と通信するための無線通信機能部122を有する。無線通信機能部122は、アンテナ124と、アンテナ124に接続された無線通信ユニット126とからなる。無線通信ユニット126は、バックライト・給電機能部114と繋がっており、無線通信機能部122及びバックライト・給電機能部114は連係動作可能である。
なお、無線通信の規格としては、例えば、ZigBee(登録商標)等を採用することができる。
【0053】
以下、上述したICカード10の製造方法について説明する。
基材44の材料として、2枚の透明フィルムと1枚の着色フィルムを用意する。透明フィルムとしては、例えば、三菱樹脂株式会社製のPG−MCT(商品名)や太平化学製品株式会社製のCG030M(商品名)などのPET−Gフィルムを用いることができる。着色フィルムとしては、例えば、太平化学製品株式会社製のCG731M(商品名)のPET−Gフィルムを用いることができる。透明フィルム及び着色フィルムの厚さは、それぞれ例えば150〜200μmである。
【0054】
用意した2枚の透明フィルムの間に、1枚の着色フィルムを挟んで、これら3枚のフィルムを熱融着により接着し、積層体を得る。得られた積層体を適当な寸法に裁断した後、裁断された積層体に、回路基板26、液晶表示ユニット36、及び、回路基板26に実装された電気部品を受け容れるための凹みを形成し、基材44を得る。
【0055】
得られた基材44に、接着剤又は両面テープを用いて、電気部品が実装された回路基板26を接着する。なお、LCDドライバ32及び液晶表示ユニット36は、例えばACF(異方性導電接着フィルム)にて回路基板26に実装されている。
【0056】
一方、第1の外装層54及び第2の外装層56の材料として透明なフィルムを用意し、用意したフィルムに、画像表示部14及び受光部18となる部分を除き、裏刷りによって所望のデザインをシルク印刷する。シルク印刷されたフィルムを裁断し、第1の外装層54及び第2の外装層56を得る。
シルク印刷によれば、他の印刷方式に比べてインクを厚く塗ることができ、遮光性が高くなる。なおシルク印刷の前に他の方式でより細かいデザインを印刷してから、シルク印刷により遮光層を設けてもよい。
【0057】
得られた第1の外装層54を、基材44の第1層48及び回路基板26の裏面(半田面)に接着剤若しくは両面テープを用いて接着するとともに、第2の外装層56を基材の第3層52に接着剤若しくは両面テープを用いて接着し、ICカード10が作製される。
【0058】
以下、上述したICカード10及び給電装置12の動作及び使用方法について説明する。ICカード10は、単独で携帯して使用可能であるばかりでなく、給電装置12と併用も可能である。
ICカード10を単独で使用する場合、ICカード10の使用に先立ち電源38に充電するとともに、メモリ30に画像データを記憶させる。そのために、ICカード10を給電装置12に設置し、アンテナ124及び無線通信ユニット126を通じて外部から受信した画像データを、電極104,24を通じてメモリ30に記憶させる。
【0059】
充電及び画像データの記憶後、ICカード10を給電装置12から取り外し、ボタン16を操作して液晶表示ユニット36にメモリ30内の画像データを表示させる。具体的には、ボタン16の操作に従って、MCU28は、LCDドライバ32を介して、メモリ30に記憶された画像データを液晶表示ユニット36に表示させる。
【0060】
ICカード10を単独で使用している場合、液晶表示ユニット36は、画像表示部14から外光を取り込んで反射し、反射光によって画像データを表示するとともに、受光部18からも外光を取り込んで透過させ、透過光によっても画像データを表示する。
表示させる画像は特には限定されないが、例えば利用者の顔写真を表示することにより、社員証や入館証等の身分証明書としてICカード10を使用することが可能である。
【0061】
次にICカード10を給電装置12と共に使用する場合について説明する。
ICカード10を給電装置12に設置した状態で、給電装置12の操作部118を操作し、バックライトユニット100を点灯させる。そして、ICカード10のボタン16を操作することによって、液晶表示ユニット36にメモリ30内の画像データを表示させる。
【0062】
ICカード10を給電装置12とともに使用している場合、液晶表示ユニット36は、画像表示部14から外光を取り込んで反射し、反射光によって画像データを表示するとともに、受光部18からバックライトユニット100の光(バックライト)を取り込んで透過させ、透過光によっても画像データを表示する。
なお、この表示の際、電極22を通じて給電装置12の電源120から供給された電力によってMCU28、LCDドライバ32及び液晶表示ユニット36は動作し、より好ましくは同時に、電源38が充電される。
【0063】
上述した一実施形態のICカード10によれば、ICカード10が液晶表示ユニット36に光を供給する発光体を備えないので、消費電力が抑制され、十分な動作時間が確保される。また、消費電力が抑制されることにより、ICカード10は大型の電池を内蔵する必要が無く、ICカード10自体の大型化や重量の増大が防止される。
【0064】
一方、発光体を備えていなくても、半透過型の液晶表示ユニット36によれば、外光を取り込んで反射させ、反射光によって画像を表示させることで、利用者は画像を視認する。
その上、回路基板26の開口部34に半透過型の液晶表示ユニット36が配置され、液晶表示ユニット36の受光部に重なる基材44の領域は透光性を有しているため、液晶表示ユニット36に対し背面から光を照射すれば、透過光によって画像が更に明るくなる。つまり、このICカード10によれば、外光が暗いときでも、鮮明な画像を表示することが可能である。
【0065】
上述した一実施形態のICカード10は、前記液晶表示ユニット36がプラスチック製の基板64,80を有しているため、ガラス製の基板を有する場合に比較して軽量で柔軟性に富み、破損もし難い。
【0066】
上述した一実施形態のICカード10では、基材44の第1層48と第3層52とが同一の材料からなるため、基材44が反りがたい。このため、このICカード10は長期に渡り変形し難い。
また、このICカード10は、有色の第2層50によって回路基板26の一方の面、及び、当該一方の面に実装された液晶表示ユニット36以外の電気部品が隠されることで、優れた意匠を有する。なお、第2層50が有色であっても、凹み46が少なくとも第1層48及び第2層50を貫通し、第3層52が透光性を有しているので、液晶表示ユニット36の表示部の視認性が低下することはない。
【0067】
上述した一実施形態のICカード10は、第1の外装層54及び第2の外装層56に適当な意匠を付与することで、更に優れた意匠を有する。
上述した一実施形態のICカード10によれば、RFID機能部92によって非接触認証が行われ、利用者の利便性が高まる。
【0068】
上述した一実施形態のICカード10によれば、外部から電極22を経由して電力が供給されるので、電源38の蓄電量にかかわらず、データサイズが大きい画像であっても表示される。
【0069】
上述した一実施形態のICカード10によれば、マンマシンインターフェースとしてのボタン16を利用することにより、表示のオンオフによる省電力化の達成や、表示させる画像を切り替えることによる利用者の利便性の更なる向上が図られる。
【0070】
上述した一実施形態の給電装置12を用いた場合、ICカード10の半透過型の液晶表示ユニット36は、バックライトユニット100から受けた光を透過させることで、画像をより明るく表示する。
また、この給電装置12から、MCU28及び液晶表示ユニット36に電力が供給されるので、ICカード10の電源38の蓄電量にかかわらず、データサイズが大きい画像、例えば動画であっても表示できる。
【0071】
更に、給電装置12から画像データをICカード10のメモリ30に送信することにより、簡単な構成にて、利用者は任意の画像を液晶表示ユニット36に表示させることができる。また、給電装置12からメモリ30を介在させずに、直接に画像を液晶表示ユニット36に表示させることも可能である。
その上、給電装置12は、電源120を内蔵しているので、携帯が可能であり、屋外等においても、ICカード10とともに使用可能である。
【0072】
本発明は、上述した一実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に種々の変更を加えた形態も含み、また、上述した一実施形態と公知技術とを組み合わせた形態も含む。
【0073】
例えば、上述した一実施形態では、給電装置12は、外部から受信した画像データをICカード10に直接渡したが、画像データを記憶するメモリを備えていてもよい。また、給電装置12は、外部から無線を通じて画像データを受信したが、有線で受信してもよい。
【0074】
上述した一実施形態では、給電装置12は、送受信端子としての電極104及び送受信端子としての電極24を通じて、有線により画像データをICカード10に送信したが、無線によって送信してもよい。また更に、給電装置12は、給電端子としての電極102及び受電端子としての電極22を通じて有線により電力をICカード10に供給したが、無線により電力をICカード10に供給してもよい。
【0075】
つまり、ICカード10と給電装置12との間のハードウェアインターフェースとしては、無線及び有線のいずれを採用してもよい。ただし、無線によりICカード10への画像データの送信又は電力の供給を行う場合、ICカード10の大型化を招く。このため、ICカード10の小型化という観点からは、ICカード10への画像データの送信及び電力の供給を有線により行うのが好ましい。
【0076】
上述した一実施形態では、ICカード10の電極22,24が裏面に設けられていたが、電極22,24は表面に設けられていてもよい。また、ICカードに搭載される液晶表示ユニット36の構成は、半透過型であれば、特に限定されることはない。
更に、ICカード10の固定手段として、給電装置12は爪106と固定部材108を有するが、固定手段はこれらに限定されることはない。
【0077】
最後に、本発明のICカード10の利用方法は特には限定されず、RFIDカードの他、キャッシュカードやクレジットカードにも適用可能であるのは勿論である。
【符号の説明】
【0078】
10 ICカード(半透過型液晶ディスプレイ付きカード型デバイス)
12 給電装置(バックライト付き給電装置)
14 画像表示部
16 ボタン(操作部(マンマシンインターフェース))
18 受光部
22 電極(受電端子,ハードウェアインターフェース)
24 電極(送受信端子,ハードウェアインターフェース)
26 回路基板
28 MCU(コントローラ)
30 メモリ
32 LCDドライバ
34 開口部
36 液晶表示ユニット
38 電源
40 ループアンテナ
42 RFID制御ユニット
44 基材
46 凹み
48 第1層
50 第2層
52 第3層
54 第1の外装層
56 第2の外装層
60,84 偏光板
62,82 位相差フィルム
64,80 プラスチック基板
66 カラーフィルタ層
68,76 透明電極層
70 液晶
72,74 配向膜
94 ハウジング
96 搭載面
98 開口
100 バックライトユニット
102 電極(給電端子,ハードウェアインターフェース)
104 電極(送受信端子,ハードウェアインターフェース)
106 爪
108 係合部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コントローラ、メモリ、及び、外部から前記メモリにデータを渡すためのインターフェースが設けられるとともに、開口部を有する回路基板と、
前記回路基板の開口部に配置され、前記コントローラにより制御されて前記メモリに記憶されたデータを表示可能な半透過型の液晶表示ユニットと、
外部から供給された電力を蓄電可能であるとともに、蓄えた電力を前記コントローラ及び前記液晶表示ユニットに供給可能な電源と、
前記回路基板の一方の面に接着され、前記液晶表示ユニットを受け入れる凹みを有するとともに前記液晶表示ユニットの受光部に重なる領域を透光性とした基材とを備え、且つ、
前記液晶表示ユニットに光を供給する発光体を備えない
ことを特徴とする半透過型液晶ディスプレイ付きカード型デバイス。
【請求項2】
前記液晶表示ユニットは、液晶を挟む2つのプラスチック製の基板を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の半透過型液晶ディスプレイ付きカード型デバイス。
【請求項3】
前記基材は、
前記回路基板側に位置し、透光性を有する第1層と、
前記第1層に積層された有色の第2層と、
前記第2層に積層されるとともに前記第1層と同じ材料からなり、透光性を有する第3層とを含み、
前記凹みは、少なくとも前記第1層から前記第2層まで貫通している
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の半透過型液晶ディスプレイ付きカード型デバイス。
【請求項4】
前記回路基板の他方の面を覆う第1の外装層と、
前記第3層の表面に設けられた第2の外装層とを更に備え、
前記第1の外装層及び前記第2の外装層の前記液晶表示ユニットの表示部および受光部に重なる領域は透光性材料からなる
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の半透過型液晶ディスプレイ付きカード型デバイス。
【請求項5】
非接触認証機能を更に備えることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の半透過型液晶ディスプレイ付きカード型デバイス。
【請求項6】
外部から前記コントローラ及び前記液晶表示ユニットに電力を供給するための受電端子を更に備えることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の半透過型液晶ディスプレイ付きカード型デバイス。
【請求項7】
利用者が前記コントローラに命令を入力するためのマンマシンインターフェースを更に備えることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の半透過型液晶ディスプレイ付きカード型デバイス。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか一項に記載の半透過型液晶ディスプレイ付きカード型デバイスのためのバックライト付き給電装置であって、
ハウジングと、
前記液晶表示ユニットの受光部に光を照射するバックライトユニットと、
前記コントローラ及び前記液晶表示ユニットに供給するための電力を蓄電する親電源と、
前記メモリにデータを渡すとともに、前記コントローラ及び前記液晶表示ユニットに前記親電源から電力を供給するためのハードウェアインターフェースとを備えることを特徴とするバックライト付き給電装置。
【請求項9】
請求項1乃至7の何れか一項に記載の半透過型液晶ディスプレイ付きカード型デバイスと、
請求項8に記載のバックライト付き給電装置と
を備えることを特徴とする半透過型液晶ディスプレイ付きカード型デバイスシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−170150(P2011−170150A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−34425(P2010−34425)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(000162113)共同印刷株式会社 (488)
【Fターム(参考)】