説明

単分散形態のリフォールディングされた膜タンパク質

本発明は、遺伝子組換えにより発現され、又は化学的に合成され、且つリフォールディングされた真核生物の膜タンパク質の単分散形態の溶液を調製する方法、遺伝子組換えにより発現された又は化学的に合成された膜タンパク質の結晶体を調製する方法、遺伝子組換えにより発現された又は化学的に合成された真核生物の膜タンパク質の結晶体、及び、遺伝子組換えにより発現された又は化学的に合成された真核生物の膜タンパク質と助剤との複合体の結晶体に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子組換えにより発現され、又は化学的に合成され、且つリフォールディング(再折りたたみ)された真核生物の膜タンパク質の単分散形態の溶液を調製する方法、遺伝子組換えにより発現された、又は化学的に合成された膜タンパク質の結晶体を調製する方法、遺伝子組換えにより発現された、又は化学的に合成された真核生物の膜タンパク質の結晶体、及び、遺伝子組換えにより発現された、又は化学的に合成された真核生物の膜タンパク質と助剤との複合体の結晶体に関する。
【0002】
この種の方法及びタンパク質の結晶形は、この技術分野において一般的に知られている。
【背景技術】
【0003】
膜タンパク質は、治療上及び/又は診断上のターゲットとして重要であるため、薬理学的に多大な関心の対象となっている。膜タンパク質の中で最も重要な典型的なものは、Gタンパク質結合受容体(GPCRs)、イオンチャネル及び輸送タンパク質である。
【0004】
ヒトゲノムが解読されて以来、嗅覚と味覚の受容体を含まないで、約350種のGPCRsが存在することが知られている。これまでに詳しく分析されたGPCRsは、ほとんど全てが大変重要な薬理学上のターゲットとなっている。例えば、ノシセプチン受容体は、疼痛治療に大いに関連がある。多くの企業が、効力の強い鎮痛剤を開発するためにノシセプチン受容体のアンタゴニストの研究をしている。麻酔剤受容体に関するものについても、同様のことが言える。
【0005】
非常によく研究されている他の受容体は、β−アドレナリン受容体に関するものである。この受容体に対するアンタゴニストは、血圧の調節に関与している。
【0006】
多くのサイトカイン受容体は、炎症とアレルギーに関して重要な役割を果たしている。ここで注目されているのは、CXCR1受容体である。
【0007】
あまりよく研究されていない別の受容体のグループに、いわゆるfrizzled受容体がある。とりわけ胚形成に関与する10の受容体が、このグループに含まれる。
【0008】
また眼に存在するロドプシンも、最も広い意味においてGPCRsに属するが、ロドプシンは、天然に大量に存在する唯一の膜受容体である。他の全ての受容体は、細胞膜に少量存在するに過ぎない。
【0009】
機能障害のイオンチャネルは、嚢胞性繊維症、糖尿病、筋緊張症、てんかん等の多くの疾患との関連が報告されてきた。
【0010】
膜タンパク質の薬理学的な重要性は非常に大きいため、膜タンパク質と相互作用することができる物質を見出すこと、例えばGPCRの阻害剤又は活性化剤としてこのような物質を使用することに対する要請が大きい。
【0011】
公知のハイスループットスクリーニング(HTS)法によっては、例えばGPCRsなどの膜タンパク質のための/に対するアゴニスト、アンタゴニスト又は逆アゴニストを、満足するほどに時間を節約し且つ効率的な態様で見出すことはできない。化合物により可能なバリエーションの数は、約1060である。現在のHTS法を用いると、利用可能な化学の空間を消尽することは不可能である。このことは、革新的な新規構造に基づく医薬であって、ここ数年来登録された医薬が非常に少ないことから実証されている。
【0012】
いわゆるインシリコスクリーニング(in silico−screening)や、
“合理的な医薬設計(rational drug design:RDD)のような新しい方法により、HTS法における場合よりも一層効率的にしかも迅速に膜タンパク質の新しいリガンドを見出すことが可能となっている。
【0013】
インシリコスクリーニングやRDDを行う必須要件は、タンパク質の三次元構造が利用できること、従って、このような膜タンパク質を単分散形態で大量に入手・利用できることである。本願明細書において、“単分散(monodisperse)”なる用語は、ある物質、例えば膜タンパク質が精製されて、粒子サイズが均一で且つ適当な溶媒に溶解している状態の意味として理解されるべきものとする。更には、このようなタンパク質は、結晶化工程のために特に適した出発材料を供給するために、翻訳後修飾を一切受けることなく、正確に折りたたまれている必要がある。
【0014】
可溶性の非膜タンパク質に関しては、後に結晶化させて三次元構造を解明することが出来るように、単分散形態のタンパク質の大量の溶液を得ることがしばしば可能である。事実、現在のところ、可溶性タンパク質の結晶化は、多かれ少なかれ、標準的な操作手順となっている。
【0015】
バクテリアの膜タンパク質は、天然型で発現させ、精製し且つ場合によっては結晶化させることができるので、多かれ少なかれ同様のことがあてはまる。Ostermeier C.,and Michel H.(1997), “Crystallization of membrane proteins”, Current Opinion in Structural Biology,7:697−701を参照。
【0016】
このような状況は、GPCRsのような真核生物の膜タンパク質においては全く異なる。膜タンパク質を組換えタンパク質として、例えば大腸菌で発現させて生産する場合は、この膜タンパク質は、通常は、いわゆる封入体(inclusion bodies)として得られる。これらの封入体は、不溶性の、折りたたまれていないか又は誤って折りたたまれた膜タンパク質の凝集体である。ごくわずかに、天然型に折りたたまれたタンパク質として得られるに過ぎず、及び/又は単分散タンパク質の溶液として存在するに過ぎないであろう。従って、通常の方法を用いる限り、単分散の膜タンパク質の収量は非常に少ない。結晶化のための膜タンパク質の精製に関する問題については、例えば、上記に引用したOstermeier C.,and Michel H.の文献に記載されている。
【0017】
特殊な種類の膜タンパク質、即ちチトクロームP450モノオキシゲナーゼの一部分を調製する方法が、WO 03/035693号公報に記載されている。それによると、上記一部分は膜の裏側に局在しており、従って実際には膜タンパク質ではない。Buchanen S. K.(1999)“β−barrel proteins from bacterial outer membranes:structure, function and refolding”,9:455−461においても、極めて特殊な種類のβ−バレルタンパク質の調製法が記載されている。これらの膜タンパク質は、β−プリーツシート(ひだ付キシート)の含有量が高いため非常に安定である。しかしながら、これらのいずれの文献に開示された方法も、GPCRsやイオンチャネルのような、広範囲に存在する他の種類の膜タンパク質の調製に転用することはできない。その理由は、これらのタンパク質はα−へリックス部分の割合が高いためである。
【0018】
文献Urbani A.,(2001)“Properties of detergent solubilized cytochrome c oxidase(cytochrome cbb)purified from Pseudomonas stutzeri”, FEBS Letters 508:29−35には、ある特殊な種類のバクテリア膜タンパク質の調製方法が開示されている。バクテリアの膜タンパク質cbbを少量調製するために、この公知方法が適用されているが、この方法は、最も薬理学的に興味深いヒトの膜タンパク質、例えば、GPCRsの調製に使用することはできず、特に、後の結晶化を行うに充分なほど大量の膜タンパク質を調製するために用いることはできない。なぜなら、このような公知方法においては、タンパク質は、牛の網膜から選択的に抽出されていたからである。
【0019】
文献Okada T.et al.(2000),“X−ray diffraction analysis of three−dimensional crystals of bovine rhodopsin obtained from mixed micelles”, Journal of Structural Biology 130:73−80では、光受容体膜タンパク質ロドプシンの調製方法が開示されている。この公知の方法によると、当該タンパク質は、ウシの網膜から選択的に抽出され、その後結晶化される。この方法は、特定の種類のタンパク質、つまり大量に網膜中に埋め込まれて存在する公知のGPCRだけに適用される。しかし、全ての他の公知のGPCRsは、生体膜中にごく少量だけ存在する。そのため、この公知の方法は、興味深いGPCRsの大半を大量に製造するには有用ではない。
【0020】
特許公報DE 199 39 246 A1には、天然型又は活性型のある構造に折りたたまれた異なる種類の膜タンパク質を大量に製造することができる方法が開示されている。この方法を用いると、膜タンパク質は第一の界面活性剤中で可溶化された状態で供給され、第一の界面活性剤は次に第二の界面活性剤と交換される。こうすることによって、封入体の問題に関する上記の問題は、リフォールディング(再折りたたみ)操作手順を経て解決される。この公知の方法の問題点は、リフォールディングされた膜タンパク質の単分散形態での溶液が得られないこと及びこのような膜タンパク質が充分に均質な状態で存在しないことである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
従って、本発明の目的の一つは、リフォールディングされた真核生物の膜タンパク質を単分散形態で大量に含む溶液を得ることができ、しかも取り扱い操作が簡単である、信頼性のある方法を提供することである。また、この新規な方法は、特殊な種類の膜タンパク質の調製に限定されず、GPCRsのような広範囲に存在する膜タンパク質に適用可能である。更に、この方法は、充分な量の膜タンパク質を得るために、バクテリア発現系を使うべきである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明によると、この目的は、(a)第一の界面活性剤中に可溶化された膜タンパク質を供給する工程、(b)上記膜タンパク質を天然型又は活性型へリフォールディングさせることを誘導する工程、及び(c)上記リフォールディングされた膜タンパク質の溶液についてサイズ排除クロマトグラフィーを行う工程とを含んで成る、リフォールディングされた、遺伝子組換えにより発現された、又は化学的に合成された真核生物の膜タンパク質の単分散形態の溶液を調製する方法を提供することにより達成される。
【0023】
このような方法によって、本発明の根底となった課題は、完全に解決されるのである。
【0024】
本発明者らは、このような方法を用いることによって、供給された膜タンパク質が単分散形態として得られることが確実であることを見出した。特に、工程(a)〜(c)を用いることによって、活性型にリフォールディングされた膜タンパク質の均質な溶液が得られることは驚くべきことであった。むしろ、所望する活性タンパク質から不要な不活性タンパク質を分離するために更なる方法を行う必要があるものと考えるはずであろう。ところが本発明によれば、リフォールディングに加えて必要とされる唯一の工程は、工程(c)における、例えばスーパーデックス(Superdex)200カラムを用いるサイズ排除クロマトグラフィーだけであり、この工程によって大きさと形状とが均質であるタンパク質、例えば、単量体タンパク質が、例えば非単量体タンパク質などの大きさの異なるタンパク質から分離される。このようなサイズ排除クロマトグラフィーによって、二量体タンパク質もまた、例えば単量体、三量体、四量体、五量体、六量体のタンパク質から分離される。イオンチャネルタンパク質の場合、その多くが数個のサブユニットから構成されているので、完全に集合・組立てられたチャンネル、例えば、四量体又は五量体タンパク質を個々のサブユニット又は部分的に集合・組立てられたイオンチャネルから分離することが望ましくなる場合が大半である。
【0025】
この方法の更なる利点は、興味の対象であるタンパク質を生体膜から分離する必要がないことである。というのも、生体膜は、出発材料として大量の生物学的原料を準備する必要があるにも拘わらず、膜タンパク質の収量は非常に低い。それとは逆に、遺伝子組換えにより発現された、又は化学的に合成されたタンパク質を用いることにより、例えばその後に行う結晶化に必要とされる充分な量の膜タンパク質を製造することが可能である、十分に確立された分子発現系及び化学合成法を適用することができる。
【0026】
本発明により産生される膜タンパク質は、例えばそれらの三次元構造の解明のための結晶化操作手順に引き続いて使用するのに充分に均一であり且つ単分散状である。
【0027】
更に本発明の方法は、GPCRsのような広範囲に存在する、薬理学的に重要な真核生物の膜タンパク質を大量に得ることができ、即ち、例えばバクテリアの膜タンパク質やβ−バレルタンパク質のような典型的でなく、関心の少ない種類のタンパク質の調製に限定されるものではない。
【0028】
“サイズ排除クロマトグラフィー”なる包括的用語は、例えば膜タンパク質などの物質を異なるサイズに応じて相互に分離することができる全ての物理化学的な分離方法を包含する。このようなクロマトグラフィー法の例としては、ろ過、ゲルろ過/クロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、メタルキレートアフィニティークロマトグラフィーを含む吸着/アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、等電点クロマトグラフィー及び当該技術分野においてよく知られているその他の技術が挙げられる。
【0029】
本発明においては、工程(a)と工程(b)との間に、更に上記膜タンパク質の溶液に脂質を添加する追加工程(a′)を行うことが好ましい。
【0030】
本発明者らは、第一の界面活性剤を含む溶液に脂質を加えると、リフォールディング過程が有利に進み、リフォールディングされたタンパク質の長期安定性が向上すること、すなわち、脂質が膜タンパク質の機能的なコンフォメーションを安定化することを見出した。
【0031】
上記新規な方法において、工程(b)は、上記第一の界面活性剤を第二の界面活性剤に交換する工程(b′)を含むことが好ましい。
【0032】
この手法は、界面活性剤の交換によって、例えば強い変性作用をもつ第一の界面活性剤をマイルドな第二の界面活性剤に交換することによって、可溶化した膜タンパク質が、封入体調製品から得られる可能性が高く、効率的にその天然型又は活性型に変換されることができる、という利点がある。この手順は、DE 199 39 246 A1において詳細に記載されており、その記載内容はここに引用参照することにより本願明細書に取り込まれる。
【0033】
本発明に従った別の代替操作手順は、上記第一の界面活性剤を適当な低濃度まで希釈する工程(b′′)を含んで成る工程(b)に関する。
【0034】
この手順もまた、可溶化した変性膜タンパク質が、その天然型又は活性型に効率的に変換されることを確実にするものであり、また他方では、これにより例えば、リフォールディングの進行を誘導するための第二の界面活性剤の使用を省くことができる。
【0035】
この新規な方法においては、上記膜タンパク質が、受容体、好ましくはGタンパク質結合受容体ファミリー(GPCRs)、イオンチャンネル、輸送タンパク質、並びに、上記の群のメンバーの部分配列、相同配列、突然変異配列及び派生配列からなる群より選択されるものであることが好ましく、上記膜タンパク質は、哺乳類の、例えば、ヒトのタンパク質であることがより好ましい。
【0036】
この方法は、これによって多くの疾患に関与する薬理学的に最も重要な膜タンパク質が、カバーされることになるであろう、という利点を有する。本発明によって初めて、化学合成により及び/又は遺伝子組換えにより製造された、活性GPCRsを大量に調製することが可能である。
【0037】
本発明の一つの好ましい実施態様によれば、上記膜タンパク質は、ヒスチジン−タグ付加融合タンパク質として産生される。
【0038】
発現されたヒスチジン−タグ付加膜タンパク質は、メタルキレートクロマトグラフィー、例えば、NiNTAカラムを使用することにより簡単に精製できるという利点を有する。更に、このようなタグ付けしたタンパク質は変性状態でさえ精製することができる。ヒスチジン−タグ付加融合タンパク質の調製、精製及び取り扱い方法は、この技術分野においてよく知られており且つ確立されている。
【0039】
更に好ましい方法に従えば、上記膜タンパク質は、封入体の形態として、好ましくはバクテリアで発現されたタンパク質として、更に好ましくは大腸菌で発現されたタンパク質として提供される。
【0040】
関心のある膜タンパク質を封入体として供給できることには、幾つかの利点がある。封入体は生物学的に不活性で且つ正確に折りたたまれていないタンパク質から成る不溶性タンパク質凝集体である。封入体は、含有タンパク質については比較的、均質でありまた精製されており、簡単に取り扱いができ、また例えば、更に精製することができる。更に、封入体は、リフォールディング過程に付すことができるタンパク質を大量に含む。バクテリア又は大腸菌の発現系を使用することによって、多くの分子生物学実験室で十分に確立されている技術的に成熟した手段を適用することができる。更に、上記した封入体に関する不溶性の問題はかくして簡単に、即ち、工程(b)におけるように凝集したタンパク質をリフォールディングさせることによって処理される。
【0041】
上記膜タンパク質はまた、無細胞発現系、好ましくはRapid Translation System(RTS)により合成された封入体の形態として提供されることが好ましい。
【0042】
このような手段によれば、適当な無細胞in vitro発現系、例えば、いわゆる“Rapid Translation System”(RTS、Roche Diagnostics社製)が使用され、これによって、5mgまでの目的のタンパク質を24時間以内に合成することができる。RTSを使用することは、伝統的な細胞を用いた発現系に比べてはるかに多くの組換え膜タンパク質を製造することができるため、特に有利である。
【0043】
本発明の方法においては、上記脂質は、天然の抽出リン脂質及び合成リン脂質からなる群、特に、脳由来極性脂質抽出物、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、コレステロール、リン脂質、エルゴステロール、アゾレクチン、スフィンゴミエリン、DOPAからなる群より選択されるものであることが好ましい。好ましくは、上記脂質は、工程(b)において、最終濃度が約0.01〜5mg/ml、より好ましくは約0.05〜2mg/ml、更に好ましくは約1mg/mlとなるように添加される。
【0044】
本発明者らが実現したように、上記した脂質の一つを用いると、リフォールディングされた単分散の膜タンパク質の調製において、最も優れた結果が得られるであろう。ホスホコリンは、大豆又はニワトリの卵由来のものでよく、またリン脂質は大豆由来のものでよく、脳由来極性脂質抽出物は豚由来のものでよく、更にホスファチジルエタノールアミンは羊の脳由来のものでよい。更に、本発明者らは、上記した濃度によって収量が更に最適化されるであろうことを確かめている。
【0045】
本発明によれば、上記第一の界面活性剤は、FOS−コリン−8(N−オクチルホスホコリン)、FOS−コリン−9(N−ノニルホスホコリン)、FOS−コリン−10(N−デシルホスホコリン)、FOS−コリン−11(N−ウンデシルホスホコリン)、FOS−コリン−12(N−ドデシルホスホコリン)、FOS−コリン−13(N−トリデシルホスホコリン)、FOS−コリン−14(N−テトラデシルホスホコリン)、FOS−コリン−15(N−ペンタデシルホスホコリン)、FOS−コリン−16(N−ヘキサデシルホスホコリン)及びN−ラロイルサルコシンからなる群より選択されるものであることが好ましい。好ましくは、上記第一の界面活性剤は、最終濃度が約0.1〜5%(w/v)、より好ましくは約0.5〜4%(w/v)、更に好ましくは約1%(w/v)で供給される。
【0046】
本発明者らは、驚くべきことに、このような強い界面活性剤を使用すると、単分散のタンパク質調製品を効果的に得るために有利であることを見出した。上記した濃度とすることにより、工程(b)及び(c)において、膜タンパク質を活性で且つ単分散の形態に変換するために、工程(a)で供給された膜タンパク質は完全にアンフォールディングな状態にあることを確実なものとする。これらの界面活性剤は、例えば、Anatrace社、Maumee、USAで入手することができる。
【0047】
工程(b)においては、更にSDS及び/又は尿素を膜タンパク質溶液に添加することが更に好ましい。
【0048】
強力な合成アニオン性界面活性剤であるSDS(ドデシル硫酸ナトリウム)及び/又は別の強力な界面活性剤である尿素(カルバミド)の添加によって、混入しているタンパク質、例えば、当該タンパク質の融合部分を切断するために場合によっては用いられたトロンビンを確実に除くことができる。もちろん、膜タンパク質を天然型又は活性型にするために、SDS及び/又は尿素はその後、取り除くことができる。
【0049】
この新規な方法においてはまた、上記第二の界面活性剤は、マルトシド類;C8〜C16の鎖長を有するアルキルホスホコリン類;胆汁酸類及び誘導体;アルキル−N,N−ジメチルグリシン(アルキル=C8〜C16);アルキルグリコシド類(アルキル=C5〜C12);グルカミド類;糖脂肪酸エステル類から成る群から選択されることが好ましい。また、上記第二の界面活性剤は、最終濃度が好ましくは約0.01〜5%(w/v)、より好ましくは約0.05〜1%(w/v)、更に好ましくは約0.1%(w/v)で使用される。
【0050】
本発明者らは驚くべきことに、これらの主としてマイルドな界面活性剤を用いると、可溶化したタンパク質は、リフォールディング工程に供することによって、結果的に天然型にリフォールディングされた単分散の膜タンパク質を充分な量、産生させることができることを確かめた。これに関連して、上記した濃度は、この結果を更に最適化する。マルトシドの例としては、DDM(n−ドデシル−β−D−マルトシド、ラウリルマルトシド)及びTDM(トリデシルマルトシド)が挙げられ、胆汁酸類の例としては、コール酸塩及びデオキシコール酸塩が挙げられ、胆汁酸誘導体の例としては、CHAPS((3−〔(3−コラミドプロピル)−ジメチルアンモニオ〕−1−プロパンスルホネート)、CAPSO(C3258S)、BIG CHAP(N,N−ビス−(3−D−グルコンアミドプロピル)コールアミド)が挙げられる。アルキルグリコシド類は、全ての単糖類及び二糖類を含む。グルカミド類の例としては、MEGA−8(オクタノイル−N−メチルグルカミド)、MEGA−9(ノナノイル−N−メチルグルカミド)、MEGA−10(デカノイル−N−メチルグルカミド)、HEGA(デカノイル−N−ヒドロキシエチルグルカミド)が挙げられる。糖脂肪酸エステル類の例としては、スクロースモノドデカネート、Tx100(Triton X)100c、OG(オクチルグリコシド)、OTG(オクチルチオグリコシド)、C8E5(ペンタエチレングリコールオクチルエーテル)、C12E9(POE 9 ドデシルエーテル)、CYMAL(登録商標)−5(5−シクロヘキシル−1−ペンチル−(登録商標)−D−マルトシド)、CYMAL(登録商標)−6(6−シクロヘキシル−1−ヘキシル−(登録商標)−D−マルトシド)、CYMAL(登録商標)−7(7−シクロヘキシル−1−ヘプチル−(登録商標)−D−マルトシド)、C12 DAO(ドデシルジメチルアミノN−オキシド)、C10 DAO(DDA;デシルジメチルアミノN−オキシド)及びAnzergent3−14(テトラデシル−N,N−ジメチル−3−アンモニオ−1−プロパンスルホナート)が挙げられる。
【0051】
上記新規の方法の範囲内においては、工程(b)での上記界面活性剤の交換は、クロマトグラフィー法により行われることが好ましく、ニッケル−NTAカラム、及び/又は、イオン交換カラム、及び/又は、アフィニティーカラム、及び/又は、メタルキレートカラムを使用することにより好ましく行われる。
【0052】
クロマトグラフィー法を利用することにより、特に、上記した適切な特性を有し有効に機能するカラムを用いることによって、界面活性剤の交換を単純で容易な操作方法により行うことができる。クロマトグラフィーカラム材を試料溶液に添加した後、アンフォールディングされて可溶化した膜タンパク質は、この材料に結合し、次いで遠心分離処理によりペレット化される。生成した上澄み液、即ち上記第一の界面活性剤及び該当する場合の上記脂質とは、次に除去されて上記第二の界面活性剤に交換される。その他の方法として、界面活性剤を交換するために透析を行うこともできる。
【0053】
上記新規の方法の更なる展開に従えば、工程(c)において上記第二の界面活性剤は第三の界面活性剤に交換される。この際上記交換は、クロマトグラフィー法により行われることが好ましく、ニッケル−NTAカラム、及び/又はイオン交換カラム、及び/又はアフィニティーカラム、及び/又はメタルキレートカラム、及び/又はスーパーデックス200カラムの使用により行うのが好ましい。この第三の界面活性剤は、マルトシド類;C8〜C16の鎖長を有するアルキルホスホコリン類;胆汁酸類及びその誘導体;アルキル−N,N−ジメチルグリシン(アルキル=C8〜C16);アルキルグリコシド類(アルキル=C5〜C12);グルカミド類;糖脂肪酸エステル類からなる群より選択されることが好ましい。
【0054】
個々の膜タンパク質に依存するが、リフォールディングされたタンパク質を第三の界面活性剤の存在下でインキュベートすることが好都合な場合がある。本発明者らは、上記した界面活性剤が特に適していることを確認した。第三の界面活性剤を添加すると、恐らくは必要とする膜タンパク質の結晶の成長に有利な環境が形成されるため、結晶の成長に好都合となる。
【0055】
本発明における一つの好ましい実施態様に従えば、工程(b)の後に、下記の更なる工程(b′′′′)を実施する:即ち、上記リフォールディングされた膜タンパク質をプロテオリポソームに再構成する工程。
【0056】
プロテオリポソームへの再構成は、標準的な方法に従って行われる。本発明者らが見出したように、プロテオリポソームへの再構成は、膜タンパク質に特に好適である。なぜなら、これによって、このような膜タンパク質の生理的な環境が模倣されるからである。この結果、イオンチャネルのような複数のサブユニットから構成される膜タンパク質については、複数のサブユニットの集合化、即ちオリゴマー化して一つの完全なイオンチャネルを構成するのを観察することができる。この場合、この再構成工程を行った後に活性なタンパク質が得られることになる。Gタンパク質結合受容体のような単量体タンパク質では、工程(b)によるリフォールディングの誘導の後、既に活性型になっているが、上記プロテオリポソームへの再構成により安定性や活性が更に向上する。このような再構成によって、単量体Gタンパク質結合受容体が、累積して機能性二量体となることも観察される。
【0057】
工程(b′′′′)の後に、下記の更なる工程(b′′′′′)を実施することが好ましい:即ち、上記再構成した膜タンパク質をプロテオリポソームから再可溶化する工程(b′′′′′)。
【0058】
この手順には、再可溶化した膜タンパク質は、溶液中で安定性が極めて高いという驚くべき利点がある。もしイオンチャンネルのように複数のサブユニットから構成される集合体に適用できる場合には、再可溶化した膜タンパク質は、その結晶体の調製のための方法に用いるのに特に好適である。
【0059】
本発明によれば、工程(b′′′′)の前に、下記の工程(b′′′)を行うことが好ましい:即ち、上記リフォールディングされた膜タンパク質の溶液を用いてサイズ排除クロマトグラフィーを行う工程(b′′′)。
【0060】
この更なる手順によって、単量体タンパク質が得られること、非特異的なタンパク質の集合体や混入物は除去されること、単量体フラクションが次のプロテオリポソームへの再構成に供給されることが確実となる。サイズ排除クロマトグラフィーは、この技術分野で公知の条件に従って行われる。例えば、カラムの種類は膜タンパク質やその単量体サブユニットそれぞれの分子サイズに合わせればよい。
【0061】
本発明の別の目的は、遺伝子組換えで発現された、又は化学的に合成された真核生物の膜タンパク質、好ましくは受容体からなる群、好ましくはGタンパク質結合受容体ファミリー、イオンチャンネル、輸送タンパク質、並びに、上記の群のメンバーの部分配列、相同配列、突然変異配列及び派生配列、組換え型からなる群より選択される膜タンパク質の結晶体を調製する方法であって、(a)上記膜タンパク質の単分散形態の溶液を提供する工程、及び(b)膜タンパク質の結晶を成長させるため、該溶液をインキュベートする工程を含み、工程(a)は、上記した新規な方法により行われる、膜タンパク質の結晶体を調製する方法に関する。工程(a)から工程(b)への移行は、天然型又は活性型に折りたたまれたタンパク質を、天然型又は活性型に折りたたまれていないタンパク質から分離する分離工程を介在させることなく行われることが好ましい。
【0062】
更なる上記した新しい方法を実施することによって、天然型又は活性型にリフォールディングされた膜タンパク質の均一且つ単分散状である溶液を得ることができ、しかも次にこの溶液を直接結晶化操作に供することができることは、当業者の観点からすれば全く驚くべきことであり、またタンパク質結晶化分野の現在の知識に反するものである。これとは全く逆に、一般の人は、まず、正確に折りたたまれた、即ち活性膜タンパク質をスクリーニングすることが必須であり、このようなタンパク質は他方では誤って折りたたまれたタンパク質から分離しなければならず、またその後に初めて結晶化工程を開始することができると予期するであろう。
【0063】
上記の方法においては、工程(a)において助剤が上記溶液に添加されることが好ましく、この助剤は、膜受容体のリガンド、受容体、ペプチド、抗体、ハプテンを含むタンパク質;アプタマーを含む核酸;膜受容体のリガンド、脂質、糖を含む有機化合物;無機化合物;薬剤;プロドラッグからなる群から選択されるのが好ましい。
【0064】
この手順は、いわゆる“共結晶化”が可能になるという利点を有する。これにより、複合体、例えば、受容体とそのリガンドとの複合体の構造を解析することが可能となる。この場合、リガンドは、助剤に相当し、天然に存在するリガンド、例えば受容体に対して高度な親和性を有する修飾されたリガンド、薬物等であればよい。この結果、リガンドの結合部位を発見することができ、例えば受容体に対する親和性など種々の特性に関して、リガンドを修飾・変性させることができる。
【0065】
更に多くの場合、膜タンパク質の安定性は、助剤、例えば抗体を添加することによって向上し、その結果、これによって膜タンパク質の結晶の成長が容易となり、又は可能となる。
【0066】
この方法のより好ましい成果によれば、工程(b)は、“ハンギングドロップ”及び/又は“シッティングドロップ”蒸気拡散法、及び/又は、マイクロバッチ、及び/又は、マイクロ透析、及び/又は、自由界面拡散技術による標準的な結晶化スクリーニングにより行われるが、上記標準的な結晶化スクリーニングは、ハンプトンチサーチ社のクリスタルスクリーン(Hampton Research Crystal screens)、モレキュラージメンジョン社のスクリーン(Molecular Dimensions screens)、エメラルドバイオストラクチャー社のスクリーン(Emerald Biostructures screens)及びジェナバイオ サイエンス社のスクリーン(Jena BioScience screens)から成る群から好ましく選択される。
【0067】
本発明者らは、膜タンパク質の結晶を得るため、現在使用されている標準的な結晶化操作手法を適用できることを見出した。特に、上記した方法は、この新規な方法に関連して優れた結果をもたらす。タンパク質の結晶化分野における主な問題の一つは、興味の対象であるタンパク質個々に適合する結晶化プロトコールを確立することに係わるものであるため、この知見は有利である。これは、非常に時間がかかる、自動化が困難な問題解決への取り組み(アプローチ)であることを意味する。反対に、本発明は、現行のスクリーニング方法がよく適合しているので、このような個別に作成されたプロトコールの実施を回避するものである。
【0068】
上記標準的なスクリーニングに関して、“シッティング”又は“ハンギングドロップ”は、濃度が約1〜100mg/ml、好ましくは10mg/mlである膜タンパク質溶液約200nl及び約1nl〜10ml、好ましくは200nlの沈殿剤溶液とから構成され、リザーバーが沈殿剤溶液を約10μl〜100ml、好ましくは100μl含むことが好ましい。
【0069】
上記した範囲であれば、本発明者らが認めたように、良好に形成された膜タンパク質の結晶にとっての条件は、特に最適である。溶液の体積と濃度とが、こうすることによって良好に統合調整されている。
【0070】
更には、上記沈殿剤溶液は、pHが約6.5〜10であり、また上記したpHにおいて約0〜0.5M、好ましくは0.1MのTris/HCl、及び/又は、Hepes/NaOH、及び/又は、NaK リン酸塩;分子量が約1000〜10000、好ましくは2000〜6000、より好ましくは4000であるポリエチレングリコール(PEG)、及び/又は、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(PEG MME)約5〜40%(w/v)を含むことが好ましい。
【0071】
この手順によって、結晶の大きさと回折の質に関して膜タンパク質の結晶を成長させるための最適な条件が、提供される。
【0072】
本発明の更なる目的は、好ましくは下記から成る群から選択された、遺伝子組換えにより発現れた、又は化学的に合成された真核生物の結晶形態の膜タンパク質受容体に係わる:即ち、好ましくはGタンパク質結合受容体ファミリーに属する受容体、イオンチャネル、輸送タンパク質、並びに上記の群の構成タンパク質の部分的な配列、相同の配列、突然変異配列及び派生配列である。
【0073】
本発明者らは、遺伝子組換えにより発現された、又は化学的に合成された真核生物の膜タンパク質の結晶体の製造に初めて成功した。本願明細書の冒頭で説明したように、新たに提供されるタンパク質の結晶は、新薬の開発において、例えば、インシリコスクリーニングの手法により薬剤を開発する際に非常に重要な手段である。
【0074】
本発明に従った上記したこのような主題は、例えば酵母、CHO又は昆虫細胞発現系を利用して遺伝子組換えにより元々製造され、従って活性型又は天然型で直接結晶化操作に供された結晶化膜タンパク質を包含するものであり、即ち活性であり且つ正しく折りたたまれたタンパク質を産生させるための追加のリフォールディング工程の実施を必要としなくなった。また、例えば大腸菌発現系などの古典的なバクテリア発現系をまた使用して、遺伝子組換え型膜タンパク質を充分な量だけ製造することができることも理解されるべきである。
【0075】
現在までのところ、この技術分野では、遺伝子組換えによって製造された膜タンパク質から膜タンパク質の結晶の調製に成功した例は全くなかった。しかしながら、組換えタンパク質から製造される結晶には、幾つかの利点がある。まず第一に、例えば、Okadaらにより記載された方法ではGPCRsを生体膜から分離する必要があるが、この方法とは異なって、この種のタンパク質を大量に製造し得ることである。更に、遺伝子組換え発現系を使用することによって、膜タンパク質のセレン変異体も得ることができる。結晶化操作の見地からすると、例えば、多波長異常分散法(HAD)による構造決定が、非常に容易になり且つ加速される。更に、伝統的な手法、例えば、多重重原子同型置換法(MIR)と比べてデータの質が向上する。
【0076】
本発明によれば、上記結晶化された膜タンパク質は、上記した方法により調製されることが好ましい。
【0077】
本発明者らは、簡単に操作できるアプローチに関する上記方法を開発することに成功したのであるが、このアプローチを用いることによって、上記した膜タンパク質を、引続いて行う結晶化操作のために大量に製造することができる。更に、正確にリフォールディングされた単量体タンパク質を信頼性よく産生供給することにより、実際の結晶化操作を標準的なプロトコールに従って行うことができるので、その結果、好適な結晶化条件を開発するため、コストが高くしかも時間を要する試験をもはや必要とはしない。このような結晶化方法は、直接活性型として製造された、即ち、リフォールディング工程を必要とすることなく製造された膜タンパク質に適用することができる。
【0078】
本発明の他の目的は、遺伝子組換えにより発現された、又は化学的に合成された、好ましくは下記からなる群から選択された真核生物の膜タンパク質と、助剤との複合体の結晶である:即ち、受容体、好ましくはGタンパク質結合受容体ファミリーに属する受容体、イオンチャネル、輸送タンパク質、並びに上記の群のメンバーの部分配列、相同配列、突然変異配列及び派生配列である。なお、上記複合体は、助剤の添加に関する上記した方法の好ましい実施態様に従って調製されることが好ましい。
【発明の効果】
【0079】
上記したように、このような結晶状複合体は、例えば、天然に存在するリガンドと比べて、変性した特性を有する受容体の新規なリガンド、例えば、薬剤として利用できるリガンドを開発するために非常に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0080】
更なる利点及び変型が、下記の実施態様から明らかとなるであろう。
【0081】
実施例1: 膜タンパク質のcDNAを有する発現ベクターの製造
数種の膜タンパク質のDNA配列は、EMBLデータベースに掲載されているが、多くの場合、それらはイントロンを持たない。プライマーを用いて、ゲノムDNAからPCRによって、又はmRNAからRT−PCRによって、必要なDNAを作成することができる。
【0082】
このDNAは次に、融合タンパク質の発現のために構築された発現ベクターにクローンニングする。タグ部分のタンパク質は、先行文献Sambrook, J. and Russell D.W.(2001),“Molecular cloning−A laboratory Manual”, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New Yorkに記載されているように、例えば、ヒスチジンテイル(his)とすることができる。この文献は、出典明示により本願明細書の一部に取り込まれる。
【0083】
ヒスチジン−タグ付加グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)融合タンパク質として、スフィンゴシン−1−リン酸受容体(gpr3)とカンナビノイド受容体1(CB1)を発現させるためのベクターを作製した。この発現ベクターは、融合タンパク質を発現した細胞株に形質転換された。この操作において、これらのタンパク質は、膜に組み込まれていないが、細胞質中に封入体の形態で少なくとも部分的に集合した状態で存在し、従って正確に折りたたまれていない。
【0084】
実施例2:封入体の形態の組換え膜タンパク質の発現
上記した膜タンパク質のcDNAは、それぞれインフレームでベクターpGEX2a−c−His内に挿入された。このベクターは、Tac−プロモーターの下流にグルタチオン−S−トランスフェラーゼをコードする配列とその後のトロンビン切断サイト、次いでポリリンカー配列が続き、最後に6つのヒスチジンコドンと終止コドンを含む。
【0085】
これらのベクターは、菌株K12、例えば、BL21又はBLR由来の大腸菌の菌株に形質転換された。タンパク質の発現は、IPTGを添加することにより誘導され、細胞は更に3時間後に採取された。リゾチーム処理及び超音波によるホモジネーション処理を行った後、細胞膜と封入体は、遠心分離により可溶性タンパク質から分離された。
【0086】
実施例3:封入体の可溶化とトロンビン切断
各膜タンパク質について、50mlの封入体を10分間、4℃、最高速度で遠心分離した。各ペレット(沈殿)を、450mlの下記バッファー;即ち、25mM Tris/HCl、pH8.5、250mM NaCl、1mM DTTに再懸濁し、15分間氷の上に置いた。
【0087】
次に、氷冷した各試料を、ロゼッタセルを用いて、Bandelin社製のSonoplus microsonicator(超音波細胞破砕機)で50%の負荷サイクル及び80%の動力で3分間超音波処理した。試料は、必ず冷やしておかなければならない。
【0088】
その後、以下の第一の界面活性剤と脂質を含むバッファー溶液50mlを各試料に添加した:0.1mg/mlの脳由来極性脂質抽出物(Aranti Polar Lipids社製、Alabaster、米国;Cat. No.14110)を含むTBS(pH8.5)中における10% L−ラウロイル−サルコシン(LS)。膜タンパク質は、これによって可溶化された。
【0089】
GST融合部分を切断するため、各試料に12500Uのトロンビンを添加した。各試料を、ゆっくりと20℃で一夜撹拌した。その後、膜タンパク質は可溶化した。試料を、4℃、≧20000gで20分間遠心分離した。
【0090】
実施例4:膜タンパク質のリフォールディングの誘導
50mM Hepes/NaOH pH7.5、250mM NaClで平衡化した25mlのNiNTAカラム材及び1%のLSを、500mlの可溶化した膜タンパク質、例えば、gpr3又はCB1に添加した。試料は、30〜60分間インキュベートし、その後固定化された膜タンパク質を含むカラム材は、空のカラム又はXK26/30カラム(Amersham社製、Buckinghamshire、英国)に移した。下記の工程は4℃で行い、使用された全てのバッファーは氷上で貯蔵した。
【0091】
カラムは、10カラム容積(CV)の50mM Hepes/NaOH pH7.5、250mM NaCl、0.1mg/mlの脳由来極性脂質抽出溶液、1mM GSH、1mM GSSG、1% LSで洗浄した。次いで、10CVの50mM Hepes/NaOH pH7.5、250mM NaCl、1%FOS−コリン−14(C14、N−テトラデシルホスホコリン;第二の界面活性剤)で洗浄した。
【0092】
溶出は、3CVの溶出バッファー、即ち50mM Hepes/NaOH pH7.5、500mM NaCl、300mM イミダゾール(pH7.0)、0.1% C14を用いて行われた。そのために、カラムは、インキュベーションバッファーで室温、15分間インキュベートされた。次いで、各8mlのフラクションを溶出させた。可溶化した膜タンパク質の分画、フロースルー、洗浄及び溶出フラクションは、SDS PAGEにより分離され、次いで純度と収量を調べるためクーマシーブルー染色された。
【0093】
最初の3つの溶出フラクションがプールされた。典型的な収量は、タンパク質、すなわちgpr3又はCB1約22mgで、1.45mg/mlに濃縮されていた。この溶液は、Amicon Ultra 15ml 30kD ultrafiltration concentrator(限外濾過濃縮器)を用いて10〜15mg/mlに濃縮された。
【0094】
実施例5:プロテオリポソームへの再構成
(a)単量体膜タンパク質の調製
プールしたフラクションを、サイズ排除クロマトグラフィー、すなわち分取ゲルろ過にかけるが、Gタンパク質結合受容体の再構成においては、スパーデックス200 26/60カラム(Amersham Biosciences社製、Buckinghamshire、英国)を用いて行うことができる。このカラムを、50mM Tris pH7.5、250mM NaCl、0.5%FOS−コリン−14を含むバッファーを用いて平衡化した。溶出した単量体のフラクションは、次いで再構成プロセスに供した。
【0095】
(b)プロテオリポソームへの再構成
膜タンパク質の各1mgに対して、脂質25mgを用いた。再構成バッファーは、50mM Tris pH7.5、250mM NaClを含んで成る。
【0096】
各試料の体積は、50mlである。10×再構成バッファー3mlに、5mlのリポソーム(10mg/ml)を添加した。この混合物を、2回蒸留水を加えて35mlにした。0.01%のFOS−コリン−14を添加した。試料を充分に混合した。約0.2mg/mlの濃度のタンパク質10mlを添加し、試料を充分に、しかし慎重に混合し、泡立たないようにした。試料を、回転装置内で18℃で6時間インキュベートした。
【0097】
過剰の界面活性剤を除去するために、10mlのCalbiosorb(Calbiochem、EMD Biosciences社製、San Diego、米国)を各試料に添加した。試料を、再度回転装置内で18℃で一夜インキュベートした。Calbiosorb材料を10mlのMOBITECカラムに加え、平衡化した。試料を添加し、分離し、流出液を、Ti−45ローターの超遠心分離のバイアルに集めた。
【0098】
Ti−45ローターを使用した超遠心分離機により、その後の遠心分離が40000rpmで60分間行われた。生じた上澄み液を除去し、ペレットを冷却した再構成バッファー5mlに再懸濁した。その後、試料を60mlにフィルアップした。二回目の遠心分離工程は、Ti−45ローターを使用した超遠心分離機において、40000rpmで60分間行われた。ペレットを冷却再構成バッファー2mlに再懸濁した。
【0099】
(c)再構成した膜タンパク質の再可溶化
再構成したタンパク質は、20mM Hepes pH7.0、200mM NaClを含む、氷冷(4℃)バッファーで希釈して5mlとした。FOS−コリン−16の10%ストック溶液を直接添加した:膜タンパク質は、300mg(6×50mg)の脂質中に再構成された。従って、過剰のFOS−コリン−16、すなわち600mgのFOS−コリン−16、10%ストック溶液6mlが余分に添加される必要がある。5つの各試料を希釈して4mlとし、次に10%FOS−コリン−16ストック溶液1mlを添加し、その結果5ml中のFOS−コリン−16の最終濃度は2%となった。試料を、ローラー内で4℃で終夜インキュベートした。
【0100】
試料を、5ml超遠心分離バイアルを用いて50000rpmで50分、4℃で遠心分離した。この上澄み液をプールした。Tris NaCl、pH7.5で平衡化した後、3mlのNiNTAをプールした上澄み液に添加した。膜タンパク質をNiNTAに結合させるために、全試料を回転装置内で4℃で1時間インキュベートした。試料を5mlのプラスチックカラムに移した。カラムを20mM Hepes pH7.0、200mM NaCl、0.2mg/ml イモリ(molch)脂質、0.05%FOS−コリン−16を含むバッファー30mlで洗浄した。20mM Hepes pH7.0、200mM NaCl、0.2mg/ml イモリ脂質、300mM イミダゾール、0.05%FOS−コリン−16を含む溶出バッファー20mlを用いて、各1mlのフラクションを溶出させた。
【0101】
これらのフラクションのUV測定を行った。陽性を示したフラクションは、ミリポア社製の超遠心分離管を用いて約2.5mlに濃縮した。この容積の液を、PD10カラム(Amersham Bioscience社製のクロマトグラフィーカラム)に負荷した。従って、PD10カラムは、20mM Hepes pH7.0、200mM NaClを含むバッファー20mlで平衡化し、次いで、20mM Hepes pH7.0、200mM NaCl、0.1%FOS−コリン−16を含むバッファー5mlで平衡化した。このカラムに、2.5mlの再可溶化された膜タンパク質を負荷した。その後の溶出は、20mM Hepes pH7.0、200mM NaCl、0.05%FOS−コリン−16を含むバッファー3.5mlを用いて行った。
【0102】
約3.5mlの溶出液は、ミリポア社製の超遠心分離管を用いて10mg/mlに濃縮した。
【0103】
実施例6:サイズ排除クロマトグラフィー
スフィンゴシン−1−リン酸受容体(gpr3)
スーパーデックス200 10/300 GLカラム(Amersham Bioscience社製、Buckinghamshire、英国)を、1.5カラム容積(CV)の20mM Hepes/NaOH pH7.0、200mM NaCl、0.1% C14を用いて平衡化した。100μlの濃縮タンパク質溶液を8回、すなわち、約0.8mgを、このカラムに添加した。溶出は、1.5CVの上記した溶出バッファーを用いて行った。各200μlのフラクションを集めた。集めたフラクションについて、280nmのUV吸光度測定とSDS PAGE、次いでクーマシーブルー染色を行って解析を行った。
【0104】
別法として、スーパーデックス200 26/60 prep gradeカラムを使用したが、この場合、約50mgのタンパク質をカラムに添加した。各5mlのフラクションを集めた。
【0105】
単量体のフラクションをプールした。このプールした試料を、Amicon Ultra 10ml 30kDa装置を用いて10mg/mlに濃縮した。代表的な収量はタンパク質3mgであった。試料が精製されているか、すなわち全く単量体膜タンパク質のみからなるものであるかを確かめるために、濃縮したタンパク質溶液10μlについて、スパーデックス200 10/300 GLカラム、20mM Hepes/NaOH pH7.0、200mM NaCl、0.1% C14を用いて、分析的ゲルろ過を行った。
【0106】
別法として、第二の界面活性剤C14を、以下の操作を行うことにより第三の界面活性剤と交換した:スーパーデックス200 10/300 GLカラムを、1.5CVの20mM Hepes/NaOH pH7.0、200mM NaClと第三の界面活性剤(例えば、0.01%FOS−コリン−16又は0.01%テトラデシルマルトシド)で平衡化した。各試料のタンパク質1mgを、上記したのと同様にサイズ排除クロマトグラフィーに付した。単量体のフラクションをプールし、その溶液をAmicon Ultra 15ml 30kDa装置を用いて10mg/mlに濃縮した。
【0107】
カンナビノイド受容体(CB1)
スーパーデックス200 26/60 prep gradeカラムを、1.5CVの20mM Hepes/NaOH pH7.0、200mM NaCl、0.1%C14を用いて平衡化した。5mlの濃縮したタンパク質溶液、すなわち約50mgをカラムにかけた。溶出は、1.2CVの上記した溶出バッファーを用いて行った。各5mlのフラクションを集めた。
【0108】
単量体のフラクションをプールした。このプールした試料を、Millipore ULTRA 100kDa装置を用いて10mg/mlに濃縮した。プールした試料を20mM Hepes/NaOH pH7.0、200mM NaCl、0.1%C14を用いて、スーパーデックス200 HR 10/30カラムによりチェックした。
【0109】
別法として、スーパーデックス200 10/300 GLカラムを用いた。この場合、約1〜2mgのタンパク質を100μlの容量でカラムに添加した。各0.2mlのフラクションを集めた。
【0110】
単量体のフラクションをプールした。プールした試料をAmicon Ultra 15ml 100kDa装置を用いて10mg/mlに濃縮した。代表的な収量はタンパク質5〜15mgであった。試料が均一であるか、すなわち全く単量体膜タンパク質のみからなるものであるかを確かめるために、濃縮したタンパク質溶液10μlについて、スーパーデックス200 10/300 GLカラムを用い、20mM Hepes/NaOH pH7.0、200mM NaCl、0.1%C14をランニングバッファーとして用いて、分析ゲルろ過を行った。
【0111】
また、第二の界面活性剤C14を、以下の手順を行うことにより第三の界面活性剤に交換した:スーパーデックス200 26/60 prep gradeカラムを、1.5CVの20mM Hepes/NaOH pH7.0、200mM NaClと第三の界面活性剤(例えば、0.01%FOS−コリン−16、0.01%テトラデシルマルトシド又は0.1%ラウリルジメチルアミン N−オキシド(LDAO))とを用いて平衡化した。タンパク質1mgを、上記と同様にサイズ排除クロマトグラフィーに供した。単量体のフラクションをプールし、その溶液をAmicon Ultra 15ml 100kDa装置を用いて10mg/mlに濃縮した。
【0112】
実施例7:結晶化のセットアップ
スフィンゴシン−1−リン酸受容体(gpr3)
結晶化は、“シッティングドロップ”蒸気拡散法に従って行った。そのために、円形のウェルを有するCrystalQuick 288 プレート(Greiner社製、ドイツ)を用いた。
【0113】
リザーバー溶液は、0.1M Tris/HCl、pH8.5;24%ポリエチレングリコール(PEG)4000であった。
【0114】
各液滴は、実施例5のタンパク質溶液200nlとリザーバー溶液200nlから成るものであった。
【0115】
結晶のスクリーニングは、標準的なスクリーニング手順、例えば、スパースマトリックスサンプリングテクノロジー(sparse matrix sampling technology)に従って行われた。対応する市販のスクリーンは、Hampton Research社、Aliso Viejo、米国で見つけることができる(http://www.hamptonresearch.com/hrproducts/xtalscreens.html; http://www.hamptonresearch.com)。
【0116】
結晶は図1に示すように10日後に生成した。
【0117】
カンナビノイド受容体1(CB1)
結晶化は、“シッティングドロップ”蒸気拡散法に従って行った。結晶化のスクリーニングは、市販のスパースマトリックススクリーン(sparse matrix screens)を用いて行った。対応するスクリーンは、Hampton Research社、Aliso Viejo, USAで見つけることができる(http://www.hamptonresearch.com/hrproducts/xtalscreens.html; http://www.hamptonresearch.com)。
【0118】
リザーバー溶液は、0.1M Hepes/NaOH、pH7.0、40%ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(PEGMME)であった。
【0119】
各液滴は、実施例5のタンパク質溶液100〜200nlと、リザーバー溶液100〜200nlから成るものであった。
【0120】
結晶は図2に示すように18℃で10〜14日後に成長した。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】実施例7で得られたスフィンゴシン−1−リン酸受容体(gpr3)の結晶である。
【図2】実施例7で得られたカンナビノイド受容体1(CB1)の結晶である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程を含んで成る、リフォールディングされた、遺伝子組換えにより発現された、又は化学的に合成された真核生物の膜タンパク質の単分散形態の溶液を調製する方法:
(a)第一の界面活性剤で可溶化された膜タンパク質を提供する工程、
(b)上記膜タンパク質を、天然型又は活性型にリフォールディングさせることを誘導する工程、及び、
(c)上記リフォールディングされた膜タンパク質の溶液についてサイズ排除クロマトグラフィーを実施する工程。
【請求項2】
工程(a)と工程(b)との間において、下記の更なる工程を含んで成る、請求項1に記載の方法:
(a′) 上記膜タンパク質の溶液に脂質を添加する工程。
【請求項3】
工程(b)が、下記の工程を含んで成ることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法:
(b′) 上記第一の界面活性剤を第二の界面活性剤に交換する工程。
【請求項4】
工程(b)が下記の工程を含んで成ることを特徴とする、請求項1又は2に記載された方法:
(b′′) 上記第一の界面活性剤を充分低い濃度にまで希釈する工程。
【請求項5】
上記膜タンパク質が、下記から成る群から選択されることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法:
受容体、好ましくはGタンパク質結合受容体ファミリーに属する受容体、イオンチャネル、輸送タンパク質並びに上記群の部分的配列、相同配列、突然変異配列及び派生配列。
【請求項6】
上記膜タンパク質が、哺乳類の、好ましくはヒトのタンパク質であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
上記膜タンパク質が、ヒスチジン−タグ付加融合タンパク質であることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
上記膜タンパク質が、封入体の形態で、好ましくはバクテリアで発現されたタンパク質として、より好ましくは大腸菌で発現されたタンパク質として提供されることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
上記膜タンパク質が、無細胞発現系、好ましくはRapid Translation System(RTS)により合成された封入体の形態で提供されることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
上記脂質が、下記から成る群から選択されることを特徴とする請求項2乃至9の内のいずれか一項に記載の方法:
天然抽出リン脂質類及び合成リン脂質類;特に脳由来極性脂質抽出物、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、コレステロール、リン脂質、エルゴステロール、アゾレクチン、スフィンゴミエリン、DOPA。
【請求項11】
上記脂質が、最終濃度が約0.01〜5mg/ml、好ましくは約0.05〜2mg/ml、より好ましくは約1mg/mlとなるように添加されることを特徴とする、請求項2乃至10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
上記第一の界面活性剤が、FOS−コリン−8、FOS−コリン−9、FOS−コリン−10、FOS−コリン−11、FOS−コリン−12、FOS−コリン−13、FOS−コリン−14、FOS−コリン−15、FOS−コリン−16及びN−ラロイルサルコシンから成る群より選択されることを特徴とする、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
上記第一の界面活性剤が、約0.1〜5%(w/v)、好ましくは約0.5〜4%(w/v)、より好ましくは約1%(w/v)の最終濃度で提供されることを特徴とする、請求項1乃至12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
工程(b)において、更にSDS及び/又は尿素を膜タンパク質溶液に添加することを特徴とする、請求項1乃至13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
上記第二の界面活性剤が、電荷を有するか又は電荷を有しない界面活性剤からなる群、好ましくは下記から成る群から選択されることを特徴とする、請求項3乃至14の内のいずれか一項に記載の方法:
マルトシド;C8〜C16の鎖長を有するアルキルホスホコリン類;胆汁酸類及び誘導体;アルキル−N,N−ジメチルグリシン(アルキル=C8〜C16);アルキルグリコシド類(アルキル=C5〜C12);グルカミド類;糖脂肪酸エステル類。
【請求項16】
上記第二の界面活性剤が、約0.01〜5%(w/v)、好ましくは約0.05〜1%(w/v)、より好ましくは約0.1%(w/v)の最終濃度で提供されることを特徴とする、請求項3、5乃至15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
工程(b′)において、上記交換が、クロマトグラフィー法により、好ましくはニッケル−NTAカラム、及び/又はイオン交換カラム、及び/又はアフィニティーカラム、及び/又はメタルキレートカラムを使用して行われることを特徴とする、請求項3乃至16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
工程(c)において、上記第二の界面活性剤が、第三の界面活性剤と交換されることを特徴とする、請求項3乃至17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
上記交換が、クロマトグラフィー法により、好ましくはニッケル−NTAカラム、及び/又はイオン交換カラム、及び/又はアフィニティーカラム、及び/又はメタルキレートカラム、及び/又はスーパーデックス(Superdex)200カラムを使用して行われることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
上記第三の界面活性剤が、マルトシド類;C8〜C16の鎖長を有するアルキルホスホコリン類;胆汁酸類及び誘導体;アルキル−N,N−ジメチルグリシン(アルキル=C8〜C16);アルキルグリコシド類(アルキル=C5〜C12);グルカミド類;糖脂肪酸エステル類から成る群から選択されることを特徴とする、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
工程(b)の後において、下記の更なる工程(b′′′′)を実施することを特徴とする、請求項1乃至20の内のいずれか1項に記載の方法:
(b′′′′):上記リフォールディングされた膜タンパク質をプロテオリポソームに再構成する工程。
【請求項22】
工程(b′′′′)の後において、下記の更なる工程(b′′′′′)を実施することを特徴とする、請求項21に記載の方法:
(b′′′′′):上記再構成した膜タンパク質をプロテオリポソームから再可溶化する工程。
【請求項23】
工程(b′′′′)の前において、下記の工程(b′′′)を実施することを特徴とする、請求項21又は22に記載の方法:
(b′′′):上記リフォールディングされた膜タンパク質の溶液についてサイズ排除クロマトグラフィーを行う工程。
【請求項24】
組換え型で発現された、又は化学的に合成された真核生物の膜タンパク質、好ましくは受容体からなる群、好ましくはGタンパク質結合受容体ファミリー、イオンチャネル、輸送タンパク質、並びに、上記の群のメンバーの部分配列、相同配列、突然変異配列及び派生配列、組換え型からなる群より選択される膜タンパク質の結晶体を調製する方法であって、
(a)上記膜タンパク質の単分散形態の溶液を提供する工程、及び、
(b)膜タンパク質の結晶を成長させるため、該溶液をインキュベートする工程
を含み、工程(a)は、請求項1〜23のいずれか一項に記載の方法により行われることを特徴とする、膜タンパク質の結晶体を調製する方法。
【請求項25】
工程(a)から工程(b)への移行が、天然型又は活性型にフォールディングされたタンパク質を、天然型又は活性型にフォールディングされていないタンパク質から分離する分離工程を介在させることなく行われることを特徴とする、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
工程(a)において、助剤が上記溶液に添加され、
上記助剤は、好ましくは、膜受容体のリガンド、受容体、ペプチド、抗体、ハプテンを含むタンパク質;アプタマーを含む核酸;膜受容体のリガンド、脂質、糖を含む有機化合物;無機化合物;薬剤;プロドラッグからなる群より選択されるものであることを特徴とする、請求項24又は25記載の方法。
【請求項27】
工程(b)が、“ハンギングドロップ”及び/又は“シッティングドロップ”蒸気拡散法、及び/又はマイクロバッチ、及び/又はマイクロ透析、及び/又は自由界面拡散技術による標準的結晶化スクリーニングに従って実施され、その際、上記標準的結晶化スクリーニングが、好ましくはハンプトンチサーチ社のクリスタルスクリーン(Hampton Research Crystal screens)、モレキュラージメンジョン社のスクリーン(Molecular Dimensions screens)、エメラルドバイオストラクチャー社のスクリーン(Emerald Biostructures screens)及びジェナバイオ サイエンス社のスクリーン(Jena BioScience screens)から成る群から選択されることを特徴とする、請求項24乃至26の内のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
“シッティング”又は“ハンギングドロップ”が、約1〜100mg/ml、好ましくは10mg/mlのタンパク質濃度の膜タンパク質溶液約200nlと沈殿剤溶液約1nl〜10ml、好ましくは200nlとから構成されること、及びリザーバーが沈殿剤溶液を約10μl〜100ml、好ましくは100μl含むことを特徴とする、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
上記沈殿剤溶液が、pH値約6.5〜10であり、また上記pH値において約0〜0.5M、好ましくは0.1MのTris/HCl、及び/又はHepes/NaOH及び/又はNaKリン酸塩;分子量約1000〜10000、好ましくは2000〜6000、より好ましくは4000のポリエチレングリコール(PEG)、及び/又はポリエチレングリコールモノメチルエーテル(PEG MME)を約5〜40%(w/v)含んで成ることを特徴とする、請求項28に記載された方法。
【請求項30】
遺伝子組換えにより発現された、又は化学的に合成された真核生物の膜タンパク質、好ましくは、受容体、好ましくはGタンパク質結合受容体ファミリー、イオンチャネル、輸送タンパク質、並びに、上記の群のメンバーの部分配列、相同配列、突然変異配列及び派生配列からなる群より選択される膜タンパク質の結晶体。
【請求項31】
遺伝子組換えにより発現された、又は化学的に合成された真核生物の膜タンパク質、好ましくは受容体、好ましくはGタンパク質結合受容体ファミリー、イオンチャネル、輸送タンパク質、並びに、上記の群のメンバーの部分配列、相同配列、突然変異配列及び派生配列からなる群より選択される膜タンパク質の結晶体であって、
上記結晶化された膜タンパク質が、請求項24乃至29のいずれか一項に記載の方法により調製されることを特徴とする膜タンパク質の結晶体。
【請求項32】
遺伝子組換えにより発現された、又は化学的に合成された真核生物の膜タンパク質、好ましくは受容体、好ましくはGタンパク質結合受容体ファミリー、イオンチャネル、輸送タンパク質、並びに、上記の群のメンバーの部分配列、相同配列、突然変異配列及び派生配列からなる群より選択される膜タンパク質と、助剤との複合体の結晶体。
【請求項33】
遺伝子組換えにより発現された、又は化学的に合成された真核生物の膜タンパク質、好ましくは受容体、好ましくはGタンパク質結合受容体ファミリー、イオンチャネル、輸送タンパク質、並びに、上記の群のメンバーの部分配列、相同配列、突然変異配列及び派生配列からなる群より選択される膜タンパク質と、助剤との複合体の結晶体であって、
上記複合体が、請求項26乃至29の内のいずれか一項に記載の方法により調製されることを特徴とする複合体の結晶体。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−537139(P2007−537139A)
【公表日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−543514(P2006−543514)
【出願日】平成16年12月13日(2004.12.13)
【国際出願番号】PCT/EP2004/014188
【国際公開番号】WO2005/058942
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(505126160)エム−ファシス ゲー・エム・ベー・ハー (2)
【Fターム(参考)】