説明

単層カーボンナノチューブの分離方法、分離装置、分離済単層カーボンナノチューブ含有ミセル分散溶液

【課題】本発明における目的は、半導体性・金属性の混合した単層カーボンナノチューブからなる材料から、半導体性・金属性のそれぞれを工業的に大量、簡便、高効率に分離選別する手法、分離選別する装置、分離選別した分散溶液を提供することにある。
【解決手段】単層カーボンナノチューブを非イオン性界面活性剤溶液中へ分散した単層カーボンナノチューブ含有ミセル分散溶液に対して直流電圧を印加し、各ミセルが全体として正電荷を有する金属性単層カーボンナノチューブの濃縮されている単層カーボンナノチューブ含有ミセル分散液層と、各ミセルが全体としては極めて弱い電荷しか有しない半導体性単層カーボンナノチューブ含有ミセル分散液の層との、少なくとも2層に分離する工程を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は単層カーボンナノチューブの分離方法、分離装置、分離済単層カーボンナノチューブ含有ミセル分散溶液に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ナノメートル領域における炭素材料は、それらが持つ機械的・電気的・化学的特性により様々な新規材料として利用する事が期待されている。
【0003】
そのような材料の一つにカーボンナノチューブがある。カーボンナノチューブは、炭素原子からなる円筒状の物質である。特に、円筒形の層が1層のものを単層カーボンナノチューブと呼ぶ。単層カーボンナノチューブは優れた電気的特性を持つナノカーボン材料であり、次世代の電子材料として期待されている。この単層カーボンナノチューブは、チューブの直径、巻き具合によって金属性と半導体性という2つの異なる性質に分かれることが知られている。すなわち、現在知られている製造方法を用いて単層カーボンナノチューブを合成すると、金属的な性質を有する単層カーボンナノチューブと半導体的な性質を有する単層カーボンナノチューブが統計的にはおよそ1:2の割合で含まれる単層カーボンナノチューブの混合材料として得られる。
【0004】
一方、半導体装置の分野では、半導体膜としてアモルファスまたは多結晶のシリコンを用いた薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)が知られており、アクティブマトリックス液晶ディスプレイ等のスイッチング素子として実用化されている。
【0005】
近年、TFT用の半導体膜の材料として単層カーボンナノチューブの利用が検討されている。例えば、単層カーボンナノチューブを含む薄膜を用いて作製したTFTの一例があげられる。このような単層カーボンナノチューブを用いたTFTには、アモルファスまたは多結晶のシリコンを用いたTFTに比べ、製造プロセスの低温化が図れるという利点がある。そのため、プラスチック基板上への回路の形成が可能になり、装置の軽量化、低コスト化が図れるなど、多くの効果が期待されている。
【0006】
前述したように、単層カーボンナノチューブには半導体性と金属性のそれぞれ異なる性質を持つ単層カーボンナノチューブが統計的に2:1の割合で含まれている。このことは電子材料として利用した場合、特性の低下といった問題の原因となる。例えば、TFT用の半導体膜の材料として単層カーボンナノチューブを用いた場合、金属的な性質を持つ単層カーボンナノチューブによって、短絡やOn/Off性能の低下といった性能の低下が生じる。
【0007】
この性能の低下が発生するという課題を解決するため、限りなく100%に近い分離効率を目指して半導体性・金属性単層カーボンナノチューブの個別分離手法が、様々なグループにより提案されてきた。例えば、(1)直流電気泳動法を用いた分離手法(特許文献1)、(2)誘電泳動法を用いた半導体性単層カーボンナノチューブの分離手法(非特許文献1)、(3)密度遠心勾配法を用いた分離手法(非特許文献2)、(4)DNA Wrappingによるイオン吸着クロマトグラフィーを利用した分離手法(非特許文献3)、(5)ゲル電気泳動を用いた分離手法(特許文献2)、(6)ゲルへの吸着を用いた半導体性・金属性単層カーボンナノチューブの分離手法(非特許文献4)という分離手法がある。また、発明者は(7)改良型無担体電気泳動法を用いる半導体性・金属性単層カーボンナノチューブの分離手法(特許文献3)を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−55375号公報
【特許文献2】特表2008−285387号公報
【特許文献3】特願2009−148861号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Advanced Materials 18,(2006) pp. 1468-1470.
【非特許文献2】Nature Nanotechnology 1, (2006) pp. 60-65.
【非特許文献3】Science 302, (2003) pp. 1545-1548.
【非特許文献4】Nano Letters 9, (2009) pp. 1497-1500.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述した分離方法(1)では、選別された単層カーボンナノチューブの半導体性・金属性の分離効率が80%〜90%と低いという問題がある。また、分離方法(2)〜(5)では、単層カーボンナノチューブを簡便かつ大量に分離することが難しく工業的な応用に困難がある。さらに、分離方法(2)〜(5)では、分離時における界面活性剤にはイオン性の界面活性剤を用いることが多く、電気的応用時に短絡等の原因となり得るという課題も存在する。
【0011】
また、上述した分離方法(7)は、単層カーボンナノチューブ含有ミセル分散溶液を保持溶液上に配置し、分散溶液と保持溶液の比重差と電界により生じるクーロン力との合力により単層カーボンナノチューブを各群に分離するという手法であるが、保持溶液と単層カーボンナノチューブ含有ミセル分散溶液との界面付近において溶液の拡散が発生するという問題点がある。
【0012】
さらに、すべての分離手法において、分離用の単層カーボンナノチューブ含有ミセル分散溶液について超遠心分離を行い単層カーボンナノチューブ溶液の精製を行う必要がある。この分散溶液精製時における超遠心分離過程は、量産化を妨げ、コストを高くする要因となっている。
【0013】
本発明における目的は、半導体性及び金属性の単層カーボンナノチューブを混合した材料から、半導体性及び金属性の単層カーボンナノチューブそれぞれを工業的に大量、簡便、高効率に分離選別する手法、分離選別する装置、分離選別した分散溶液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上述した課題を解決するために検討を重ねた結果、(1)非イオン系の界面活性剤を用いて適切な濃度に調整した界面活性剤溶液に、適切な量の単層カーボンナノチューブを分散した単層カーボンナノチューブ含有ミセル分散溶液(以下、分離用溶液ともいう)を調製し、(2)前記分離用溶液へ重力とおよそ平行方向(鉛直方向)に直流電圧を印加することにより、半導体性及び金属性の単層カーボンナノチューブがそれぞれ層を形成し極めて効率よく分離する、という現象を見出した。
【0015】
特に(1)における界面活性剤と単層カーボンナノチューブの調製条件を適切に調整することにより、超遠心分離を用いた精製を行わない単層カーボンナノチューブ含有ミセル分散溶液においても、半導体性及び金属性の単層カーボンナノチューブがそれぞれ異なる層を形成して分離出来ることを発見した。
【0016】
以上のような経緯から、本発明へと到達した。すなわち、本発明は、以下の(1)から(3)に示す上記手法を用いた単層カーボンナノチューブ試料の半導体性及び金属性単層カーボンナノチューブ分離法と(4)から(8)に示す単層カーボンナノチューブ分離装置、ならびに該分離法で分離された半導体性単層カーボンナノチューブ含有ミセル分散液及び金属性単層カーボンナノチューブ含有ミセル分散液に関するものである。
(1) 単層カーボンナノチューブを非イオン性界面活性剤溶液中へ分散した単層カーボンナノチューブ含有ミセル分散溶液に対して直流電圧を印加し、各ミセルが全体として正電荷を有する金属性単層カーボンナノチューブの濃縮されている単層カーボンナノチューブ含有ミセル分散液層と、各ミセルが全体としては極めて弱い電荷しか有しない半導体性単層カーボンナノチューブ含有ミセル分散液の層との、少なくとも2層に分離する工程を有することを特徴とする単層カーボンナノチューブ分離方法。
(2) 前記の非イオン性界面活性剤がポリオキシエチレン(n)アルキルエーテル(nが20以上100以下、アルキル鎖長がC12以上C18以下)であることを特徴とする(1)に記載の分離方法。
(3) 前記の非イオン性界面活性剤濃度が4 wt%以下となるように単層カーボンナノチューブ含有ミセル分散溶液を調製することを特徴とする(1)又は(2)に記載の分離方法。
(4) 単層カーボンナノチューブを非イオン性界面活性剤溶液中へ分散した単層カーボンナノチューブ含有ミセル分散溶液を収納した分離槽を有し、該単層カーボンナノチューブ含有ミセル分散溶液に直流電圧を印加する少なくとも2個以上の電極を該分離槽に設けたことを特徴とする単層カーボンナノチューブ分離装置。
(5) 前記分離槽の分離流路が縦に設置され、且つ電界の方向が分離流路内で上を向いていることを特徴とする、(4)に記載の分離装置。
(6) 前記分離装置において出発原料となる単層カーボンナノチューブ含有ミセル分散液を電極間へ連続的に導入する導入口と、分離された少なくとも2層の単層カーボンナノチューブ含有ミセル分散液の各層をそれぞれ別々に分取する分取口を有することを特徴とする(4)又は(5)に記載の分離装置。
(7) (1)又は(2)に記載の方法によって分離された、半導体性単層カーボンナノチューブの割合が90%以上100%以下である単層カーボンナノチューブ含有ミセル分散液。
(8) (1)又は(2)に記載の方法によって分離された、金属性単層カーボンナノチューブの割合が50%以上100%以下の単層カーボンナノチューブ含有ミセル分散液。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、半導体性及び金属性単層カーボンナノチューブの混合試料から高純度の半導体性単層カーボンナノチューブと金属性単層カーボンナノチューブに分離することができる。
【0018】
また、本発明は簡便な方法であることから、スケールアップして大容量に分離することが行うことができ、さらに分離条件の選択次第では、既存の金属性・半導体性単層カーボンナノチューブ分離手法に必要である超遠心分離操作を行わずに分離する事が可能であり、大幅な低コスト化を実現可能となる。また、繰り返して実施することにより、さらなる高純度化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】連続式及びバッチ式分離用単層カーボンナノチューブ分離装置
【図2】バッチ式分離用単層カーボンナノチューブ分離装置
【図3】連続式分離用単層カーボンナノチューブ分離装置
【図4】中心直径1 nmの単層カーボンナノチューブ分離前後における流路内の溶液挙動と吸光分析結果
【図5】中心直径1 nmの単層カーボンナノチューブ分離前後における流路内の溶液挙動と吸光分析結果
【図6】中心直径1.3 nmの単層カーボンナノチューブ分離前後における流路内の溶液挙動と吸光分析結果
【図7】中心直径1.7 nmの単層カーボンナノチューブ分離前後における流路内の溶液挙動と吸光分析結果
【図8】中心直径1 nmの単層カーボンナノチューブ分離前後における流路内の溶液挙動と吸光分析結果
【図9】中心直径1 nmの単層カーボンナノチューブ分離前後における流路内の溶液挙動
【図10】中心直径1 nmの単層カーボンナノチューブ分離前後における流路内の溶液挙動
【図11】中心直径1 nmの単層カーボンナノチューブ分離前後における流路内の溶液挙動
【図12】中心直径1 nmの単層カーボンナノチューブ分離前後における流路内の溶液挙動
【図13】中心直径1 nmの単層カーボンナノチューブ分離前後における流路内の溶液挙動
【図14】中心直径1 nmの単層カーボンナノチューブ分離前後における流路内の溶液挙動
【図15】中心直径1 nmの単層カーボンナノチューブ分離前後における流路(大型)内の溶液挙動と吸光分光解析
【図16】中心直径1 nmの単層カーボンナノチューブ連続分離中の流路の溶液挙動
【図17】実施例4における分離装置
【図18】実施例4における単層カーボンナノチューブの分離挙動
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態について説明する。
【0021】
本発明では、まず、単層カーボンナノチューブ含有ミセル分散溶液を調製する。
【0022】
本明細書における単層カーボンナノチューブとは、純炭素により構成されていても良いし、単層カーボンナノチューブを水系の溶媒に対する可溶性を発現させるために任意の適切な官能基で置換されていても良い、一重の壁を持つ筒状の炭素材料である。
【0023】
また、単層カーボンナノチューブ含有ミセル分散溶液とは、分離時間相当の間、単層カーボンナノチューブが溶媒中へ分散浮遊している溶液のことをいう。
以下に具体的な実施の形態の例を示すが、この他の実施形態について制限するものではない。
【0024】
まず、単層カーボンナノチューブ混合物を準備する。前記単層カーボンナノチューブ混合物は、金属性単層カーボンナノチューブと半導体性単層カーボンナノチューブとを含むものであれば特に制限されない。すなわち、従来公知の単層カーボンナノチューブ合成法により合成してもよく、また、市販のものであってもよい。
【0025】
次に、単層カーボンナノチューブ混合物を溶媒及び界面活性剤を含む液体に分散させた単層カーボンナノチューブ含有ミセル分散溶液を調製する。溶媒には水もしくは重水を用いることが好適であるが、単層カーボンナノチューブを分散浮遊することができる溶媒であれば水、重水、有機溶媒、イオン液体など他の溶媒を用いても良い。
【0026】
前記界面活性剤としては単層カーボンナノチューブに対してナトリウムイオンなどイオン性の不純物が混入することを防ぐために非イオン性界面活性剤を用いることが好ましいが、不純物混入を避ける必要がなければ陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤を用いることもできる。
【0027】
前記非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系に代表されるポリエチレングリコール構造を有する非イオン性界面活性剤や、アルキルグルコシド系非イオン性界面活性剤など、イオン化しない親水性部位とアルキル鎖など疎水性部位で構成されている非イオン性界面活性剤を1種類もしくは複数組み合わせて用いることができるが、本発明ではポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル(Brij35[商品名])、ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル(Brij58[商品名])、ポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテル(Brij78[商品名])、ポリオキシエチレン(10)オレイルエーテル(Brij97[商品名])、ポリオキシエチレン(10)セチルエーテル(Brij56[商品名])、ポリオキシエチレン(10)ステアリルエーテル(Brij76[商品名])、ポリオキシエチレン(20)オレイルエーテル(Brij98[商品名])、ポリオキシエチレン(100)ステアリルエーテル(Brij700[商品名])などポリオキシエチレン(n)アルキルエーテル(nが20以上100以下、アルキル鎖長がC12以上C18以下)で規定される非イオン性界面活性剤が好ましく用いられる。
【0028】
前記分散溶液を得る方法は特に制限されず、従来公知の方法を適用できる。例えば、単層カーボンナノチューブ混合物、重水または水、及び非イオン性界面活性剤を混合して超音波処理することで単層カーボンナノチューブを分散させる。前記超音波処理に代え、機械的な剪断力による単層カーボンナノチューブ分散手法を用いてもよい。前記単層カーボンナノチューブ含有ミセル分散溶液において単層カーボンナノチューブは孤立した状態であることが好ましい。そのため、必要に応じて、超遠心分離処理を用いてバンドルの除去を行ってもよい。
【0029】
また、前記重水または水、及び非イオン性界面活性剤を含む液体における界面活性剤の濃度は、前記単層カーボンナノチューブ混合物を分散できる範囲であれば特に制限されない。また、当該技術分野の当業者であれば適宜設定可能である。前記界面活性剤の濃度の一例としては、臨界ミセル濃度以上10wt%以下である。
【0030】
分離を行う分散溶液は溶液中の界面活性剤の濃度を分離に適するように調整する必要がある。分離を妨げない界面活性剤濃度としては、臨界ミセル濃度〜10 wt%の範囲であり、好ましくは0.1 wt%以上4 wt%以下の範囲であり、より好ましくは0.15 wt%以上1.51 wt%以下の範囲である。濃度が前記範囲より低い場合には、分離操作中において単層カーボンナノチューブを溶液中に安定的に分散することが困難となる場合がある。また濃度が前記範囲より高い場合には効率的な分離が妨げられる場合があるが、この原因としては分散溶液の高粘度化や単層カーボンナノチューブ含有ミセルの比重において金属性と半導体性で優位な差がなくなることなど考えられる。
【0031】
前記の範囲に界面活性剤濃度を調整する方法としては、分散溶液の調製時に調整してもよいし、あらかじめ単層カーボンナノチューブの分散に適する任意の界面活性剤濃度で分散操作を行った後で界面活性剤のみを溶解した溶液(以下、調整溶液ともいう)と混合することによって前記の範囲に界面活性剤濃度を調整してもよく、前記の範囲に濃度が調整されれば特に制限されないが、超遠心分離精製を行う場合には界面活性剤濃度が精製前後でわずかに変化するため、後者の方法で界面活性剤濃度調整を行うことが好ましい。
【0032】
また、前記分散溶液に求められる単層カーボンナノチューブ濃度の条件としては、分離操作時に金属性単層カーボンナノチューブが複合体を形成し沈降しなくなる濃度以下にすることである。例えば、好ましくは溶媒に対し単層カーボンナノチューブの濃度が1mg/mL以下となる範囲である。
【0033】
次に、前記調製した分散溶液に対して、分離操作を行う。
【0034】
前記単層カーボンナノチューブ含有ミセル分散溶液に電界を印加して両者を分離する操作方法として、金属性単層カーボンナノチューブ含有ミセルと半導体性単層カーボンナノチューブ含有ミセル及び溶液内の単層カーボンナノチューブを含まない界面活性剤ミセルとが異なる電荷量を持つことによる移動流と、溶液内の金属性単層カーボンナノチューブ含有ミセルと半導体性単層カーボンナノチューブ含有ミセル及び界面活性剤ミセルの比重差により生じる移動流の双方に基づくものであれば、特に制限はない。印加する電界は直流電界または直流のパルス状電界を用いる。非イオン性界面活性剤を用いている場合、金属性の単層カーボンナノチューブ含有ミセルは溶液中においてミセル全体として正電荷を帯び、半導体性単層カーボンナノチューブ含有ミセルはミセル全体として主に極めて弱い負電荷を持つ。また、電圧印加後には、半導体性単層カーボンナノチューブ含有ミセルは金属性単層カーボンナノチューブ含有ミセルに比べ比重が大きくなる傾向にある。以上の二点を踏まえれば、適宜条件を設定した公知技術を用いることにより、当業者による両者の分離が可能である。また、分離装置中の分離槽は単層カーボンナノチューブ含有ミセル分散溶液が充填されている部分であり、分離流路を含む。当該分離流路は、比重と電荷の双方を用いて効率的に分離を行うために縦方向(上下方向又は鉛直方向ともいう)に形成されている流路を含むことが望ましい。本明細書における上下の定義を、下とは比重の大きな粒子が移動する方向である重力もしくは慣性力に対して下方のことを言い、上とは比重の小さな粒子が移動する方向である重力もしくは慣性力方向に対して上方のことを言うこととする。電界の方向は上方向に向かっていることが好ましいが、逆の方向に設定することも可能である。また分離装置は、バッチ式であっても連続式であってもよい。
【0035】
前記分離装置について、本発明における単層カーボンナノチューブ分離装置の実施形態の例を図1〜3に示す。
【0036】
図1は連続式又はバッチ式操作双方に利用可能な分離装置である。分離装置100は重力方向101と平行になるように形成された分離流路102を有する分離槽と、分離流路102の上部と下部に対向して設置された一対の電極103、104とを備えている。分離槽は上部開口部107を備えるとともに、分離流路102の上部と下部にそれぞれ分取口105、106を備えており、また分離流路102の鉛直方向の略中央部分に連続導入口108を備えている。
【0037】
分離装置100を利用したバッチ式分離操作は以下のようになる。上部開口部107より単層カーボンナノチューブ含有ミセル分散溶液を投入し流路102を満たす。そして、電極103、電極104の電極間へ直流電圧を印加する。その後、分離相当の時間経過後に、電極103及び104近辺にそれぞれ異なる単層カーボンナノチューブが多く含まれる領域が層状に形成される。分取は、上部開口部107より領域ごとに吸引分取することにより、それぞれの領域の単層カーボンナノチューブ含有ミセル分散溶液を回収することが可能である。また、分取口105、106から回収することも可能である。本発明において電極数及び分取口数は制限されず、多数の電極と分取口を用いる場合には、より細かく分離することも可能である。
【0038】
分離装置100を利用した連続式分離操作は以下の通りである。まず、単層カーボンナノチューブ含有ミセル分散溶液を流路1へと充填する。その後、電極103及び104の電極間へ直流電圧を印加する。電圧を印加している状態において、連続導入口108から連続的に分離用溶液を導入する。また、分取口105,106から連続的に分取を行う。以上の操作により連続的な分離を行うことが可能である。
【0039】
図2はバッチ式の分離手法を用いる分離装置である。分離装置200は重力方向201と平行になるように形成された分離流路202を有する分離槽と、分離流路202の上部と下部に対向して設置された一対の電極203、204とを備えており、分離槽は上部開口部205を備えている。流路202内部に調製した単層カーボンナノチューブ含有ミセル分散溶液を満たし、電極203、204の電極間に直流電圧を印加する。分離操作終了後、上部開口部205より、ピペットを用いて各層ごとに分取を行うことにより分離済み分散溶液を得る。
【0040】
図3は連続式の分離手法を用いる分離装置である。分離装置300は重力方向301と平行になるように形成された分離流路302を有する分離槽と、分離流路302の上部と下部に対向して設置された一対の電極303、304とを備えており、分離槽は上部開口部305と、分離流路302内に単層カーボンナノチューブ含有ミセル分散溶液等を導入するための導入口306とを備えている。分離流路302内部に調製した単層カーボンナノチューブ含有ミセル分散溶液を満たし、電極303、304間へ直流電圧を印加する。その後、電圧を印加した状態で単層カーボンナノチューブ含有ミセル分散溶液を導入口306より少量ずつ連続的に試料導入する。上部開口部305より、ピペットを用いて分取を行うことにより分離済み分散溶液を得る。
【0041】
これらの形態は実施の一例であり、分離装置はこれらの記述に制限されない。
【0042】
電界の印加方法は特に制限されず、直流電界を発生させる少なくとも一対の電極を用いて行うことができる。電極は前記単層カーボンナノチューブ含有ミセル分散溶液に直接接触させてもよいし、電界が前記単層カーボンナノチューブ含有ミセル分散溶液に印加されるならば直接接触させなくてもよい。前記電極の材質は、特に制限されず適宜選択可能であるが、白金電極が好ましい。分離操作時に印加する電圧は、特に制限されず適宜調節可能であるが、例えば、水もしくは重水を溶媒として電極を直接接触した場合には、電界強度が10V/cm以下であることが好ましい。
【0043】
最後に、分離後の溶液を分画し分取を行う。分取はそれぞれの試料を拡散混合しないならば、どのような手段を用いても良い。例えば、電圧の印加をやめ、静かにピペットにより1 mL毎に吸い出す方法がある。また、流路に対して仕切り板を導入し各ブロックの溶液を分取する方法や、流路中の各電極付近に吸出し口を設置し電圧を印加したまま連続的に導入・吸出しを行う方法などを用いることができる。もちろん、これ以外の手法により試料を分取してもよい。分離分取された試料は、再び単層カーボンナノチューブの濃度と界面活性剤濃度の調製を行い、繰り返し分離を実施することにより純度の向上が可能である。
【0044】
分画分取した試料の分離効率は、次に述べる各手法により評価を行うことができる。すなわち、顕微Raman分光分析法(Radial Breathing Mode領域のRamanスペクトルの変化、BWF領域のRamanスペクトル形状の変化)、及び紫外可視近赤外吸光光度分析法(吸収スペクトルのピーク形状の変化)である。また、単層カーボンナノチューブの電気的特性について評価することによっても分離効率を評価することが可能である。例えば、電界効果トランジスタを作製して、そのトランジスタ特性を測定することによって試料の評価を行うことができる。
【0045】
本発明の分離方法を用い、前記の評価方法による純度が90%以上となる半導体性単層カーボンナノチューブが得られる。また繰り返し実施することにより、前記の評価方法による純度が限りなく100%へ近づいた高純度な半導体性単層カーボンナノチューブを得ることもできる。また、本発明の分離方法を用い、前記の評価方法による純度が50%以上となる金属性単層カーボンナノチューブが得られる。また繰り返し実施することにより、前記の評価方法による純度が限りなく100%へ近づいた高純度な金属性単層カーボンナノチューブを得ることもできる。
【0046】
以下に、実施例を示す。
【実施例1】
【0047】
[a] 単層カーボンナノチューブ含有ミセル分散溶液の調製
まず、表1番号1〜10に示すそれぞれの単層カーボンナノチューブについて単層カーボンナノチューブ含有ミセル分散溶液を調製した。
【0048】
分散に用いる界面活性剤としてポリオキシエチレン(100)ステアリルエーテル(商品名:Brij700)を用いた。界面活性剤が濃度1 wt% となるように重水中へ溶解した。次に、単層カーボンナノチューブを表1に示す濃度となるようそれぞれ秤量を行い、界面活性剤-重水溶液中へと投入した。
【0049】
単層カーボンナノチューブを分散させるため、ホーン型超音波破砕機による超音波分散処理を行った。出力は約300Wとし、30分間処理を行った。
【0050】
その後、表1の超遠心分離強度欄に示すように超遠心分離操作を行った。一部の試料については、超遠心分離を実施しなかった。超遠心分離を実施した試料については、遠心加速度は250000×gとし、摂氏10度を遠心条件とした。また、遠心時間は60分間とした。遠心処理後、上澄み50%を分散溶液として分取した。
【0051】
さらに、単層カーボンナノチューブ含有ミセル分散溶液に対し、Brij700 界面活性剤-重水溶液を添加することにより界面活性剤濃度及び単層カーボンナノチューブ濃度を調整した。添加する溶液の界面活性剤濃度を0、0.3、0.6、1.0、1.5、2.0、10%にそれぞれ調製した。前述した単層カーボンナノチューブ含有ミセル分散溶液に調製した界面活性剤溶液を表1に示す濃度と体積比によってそれぞれの試料を混合し、界面活性剤濃度、単層カーボンナノチューブ濃度を制御した分離用の単層カーボンナノチューブ含有ミセル分散溶液を調製した。
[b]分離装置および分離操作
実施の形態において前述した図2のバッチ式分離装置を用いて分離を行った。条件として、流路202の直径を1cmに、電極間の距離は5cmとし、白金線の一重ループとした電極を用いた。
【0052】
[a]において調製した単層カーボンナノチューブ含有ミセル分散溶液をそれぞれ流路202へと充填した。その後、分離装置に対して直流電圧を印加した。印加した電界の方向、印加電圧と印加時間は表1に示す通りである。
【0053】
印加時間経過後の分離流路中における単層カーボンナノチューブの層形成について、それぞれの条件における結果を表1に記す。表中結果には3層形成、混合領域形成、層形成せずの三種類の結果が存在する。
【0054】
3層形成とは金属性単層カーボンナノチューブが多く含まれる領域と透明な領域、半導体性単層カーボンナノチューブが多く含まれる領域の3層を形成する結果を意味している。一例を示すと、図4(a2)に示す分離結果写真における、終状態において、金属性単層カーボンナノチューブが多く含まれる領域(401)と透明な領域(402)、半導体性単層カーボンナノチューブが多く含まれる領域(403)を形成したような状態のことである。
【0055】
混合領域形成とは、金属性単層カーボンナノチューブと半導体性単層カーボンナノチューブの領域がそれぞれ形成され、層が完全に分離せず混合している領域を形成していることを表している。一例を示すと、図13(a2)に示す分離結果写真における、半導体性単層カーボンナノチューブが多く含まれる領域(1301)、半導体性単層カーボンナノチューブ及び金属性単層カーボンナノチューブが混合した領域(1302)、及び金属性単層カーボンナノチューブが多く含まれる領域(1303)のように分離した結果を意味している。
【0056】
層形成せずとは、層が形成されなかったことを示している。一例を示すと、図14(a2)のような分離結果を意味している。領域1401は均一な単層カーボンナノチューブ含有ミセル分散溶液が流路全体にわたって存在している。
【0057】
電圧印加終了後、分離流路における層の形成について確認を行った。各条件における層形成については、表1に記す。また、各条件における分離操作前後の分離流路の写真を図4〜図14の(a1)および(a2)に示す。
【0058】
その後、上部開口部205よりピペットを用いて各層ごとに分取を行った。条件ごとに、紫外可視近赤外吸光分析法により分光測定を実施し分離傾向を確認した。中心直径が1 nm, 1.3nm, 1.7 nmの単層カーボンナノチューブに対する典型的な分離結果について、紫外可視近赤外吸光スペクトルをそれぞれ図4〜図8中の(b)へと図示した。吸光スペクトル図中には分取した単層カーボンナノチューブ含有ミセル分散溶液のスペクトルを、それぞれ上から、陰極側、分離前、陽極側となるように図示した。図中のS22は半導体性単層カーボンナノチューブ由来の吸収ピークであり、図中のM11は金属性単層カーボンナノチューブ由来の吸収ピークである。それぞれ半導体性及び金属性単層カーボンナノチューブ由来のピークにおける面積から、半導体性及び金属性単層カーボンナノチューブの含有率を計算することが可能である。1 nmの単層カーボンナノチューブ分離に関しては、代表的な図のみを記した。表1には、分離結果について半導体性単層カーボンナノチューブにおいて95%以上の良い分離を示すものについて◎、90%以上の分離傾向を示すものを○、ある程度の分離傾向を示すものを△、層形成しないものを×として示した。それぞれの条件において、半導体性及び金属性単層カーボンナノチューブの分離を確認することができた。
【0059】
【表1】

<比較例1>
【0060】
表1の番号11に示すように、分離時に用いる単層カーボンナノチューブ含有ミセル分散溶液の界面活性剤濃度が4 wt%を超えている場合、図14にも明らかなように分離しないことが確認された。
<比較例2>
【0061】
また、界面活性剤としてイオン性界面活性剤であるドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を用い、それ以外は実施例1と同様の条件にして分離操作を行ったところ、分離しないことが確認された。
【実施例2】
【0062】
[a] 単層カーボンナノチューブ含有ミセル分散溶液の調製
界面活性剤としてポリオキシエチレン(100)ステアリルエーテル(商品名:Brij700)を用いた。界面活性剤濃度が1 wt% となるように重水中へ溶解した。次に、直径が1 nmである単層カーボンナノチューブ試料を1mg/mLとなるように秤量し、界面活性剤-重水溶液中へと導入した。単層カーボンナノチューブを分散させるため、ホーン型超音波破砕機による超音波分散処理を行った。出力は約300Wとし、30分間処理を実行した。分散処理後に溶液中のバンドルを取り除くため、超遠心分離操作を行った。分離操作時の遠心加速度は250000×gとし、摂氏10度、60分間の遠心処理を行った。遠心処理後の溶液の上澄み50%を分取した。
【0063】
さらに、界面活性剤及び単層カーボンナノチューブの溶液中における濃度を調整するため、界面活性剤濃度を1.5wt%としたBrij700界面活性剤重水溶液を体積比1:1となるように混合し、単層カーボンナノチューブ含有ミセル分散溶液とした。
[b]分離装置および分離操作
実施の形態において前述した図2のバッチ式分離装置を用いて分離を行った。条件として、流路202の直径を2cmに、電極間の距離は5cmとし、白金線の一重ループとした電極を用いた。
【0064】
[a]において調製した単層カーボンナノチューブ含有ミセル分散溶液を流路202へと充填した。その後、分離装置に対して直流電圧を印加した。下部電極を陽極、上部電極を陰極とし、印加電圧を30Vとした。
【0065】
分離操作後、分離流路内部の溶液は図15(a2)に示すように、3層の領域を形成していた。上部開口部205より、ピペットを用いて各層ごとに分取を行った。それぞれの層について、紫外可視近赤外吸光分析法により分光測定を実施し分離を確認した。その結果を図15(b)に示す。
【実施例3】
【0066】
[a] 単層カーボンナノチューブ含有ミセル分散溶液の調製
界面活性剤としてポリオキシエチレン(100)ステアリルエーテル(使用品名:Brij700)を用いた。界面活性剤濃度が1 wt% となるように重水中へ溶解した。次に、直径が1 nmである単層カーボンナノチューブ試料を1mg/mLとなるように秤量し、界面活性剤-重水溶液中へと導入した。単層カーボンナノチューブを分散させるため、ホーン型超音波破砕機による超音波分散処理を行った。出力は約300Wとし、30分間処理を実行した。分散処理後に溶液中のバンドル試料を取り除くため、超遠心分離操作を行った。分離操作時の遠心加速度は250000×gとし、摂氏10度、60分間の遠心処理を行った。遠心処理後の溶液の上澄み50%を分取した。
【0067】
さらに、界面活性剤及び単層カーボンナノチューブの溶液中における濃度を調製するため、界面活性剤濃度を1.5wt%としたBrij700界面活性剤重水溶液を体積比1:1となるように混合し、単層カーボンナノチューブ含有ミセル分散溶液とした。
[b] 分離装置および分離操作
実施の形態において前述した連続式分離装置を用いて分離を行った。図16に利用した装置を示す。流路の直径を2cmとした。電極1601,1602の電極間の距離は5cmとし、それぞれ白金線の一重ループとした電極を用いた。下部電極1602を陽極、上部電極1601を陰極とし、印加電圧を30Vとした。
【0068】
まず、界面活性剤溶液を流路へと充填後、導入口1603から[a]において調製した単層カーボンナノチューブ含有ミセル分散溶液を一滴ずつ導入した。その間、分離装置に対して直流電圧を印加し続けた。図16に示す通り、流路中において単層カーボンナノチューブは金属性単層カーボンナノチューブが多く含まれる領域である赤色領域1604である層と、導入する単層カーボンナノチューブと同等の半導体性単層カーボンナノチューブ及び金属背単層カーボンナノチューブ比率を持つ層1605と、金属性単層カーボンナノチューブが多く含まれる領域である緑色領域1606の形成を確認し、分離が行われていることを確認した。
【実施例4】
【0069】
[a] 単層カーボンナノチューブ含有ミセル分散溶液の調製
界面活性剤としてポリオキシエチレン(100)ステアリルエーテル(使用品名:Brij700)を用いた。界面活性剤濃度が1 wt% となるように重水中へ溶解した。次に、直径が1 nmである単層カーボンナノチューブ試料を1mg/mLとなるように秤量し、界面活性剤-重水溶液中へと導入した。単層カーボンナノチューブを分散させるため、ホーン型超音波破砕機による超音波分散処理を行った。出力は約300Wとし、30分間処理を実行した。分散処理後に溶液中のバンドル試料を取り除くため、超遠心分離操作を行った。分離操作時の遠心加速度は250000×gとし、摂氏10度、60分間の遠心処理を行った。遠心処理後の溶液の上澄み50%を分取した。
【0070】
さらに、界面活性剤及び単層カーボンナノチューブの溶液中における濃度を調製するため、界面活性剤濃度を1.5wt%としたBrij700界面活性剤重水溶液を体積比1:1となるように混合し、単層カーボンナノチューブ含有ミセル分散溶液とした。
[b]分離装置および分離操作
用いた分離装置を図17に示す。分離装置1700は、コ字形状に形成され両端が上方に開口して開口部1705、1706が形成されている分離流路1702を有する分離槽と、分離流路1702の両端の開放端の近傍にそれぞれ設けられた一対の電極1703、電極1704を備えている。。鉛直方向に延びる分離流路1702の左右両側の流路の電極から底面までの長さを3cm、左右両側の流路を結ぶ水平方向に延びる平行流路の長さを5cmとした。また、電極には白金線を用い、その形状は半径5mmのループとした。印加電圧を80Vとし、電圧の印加を16時間実施した。
【0071】
まず、図18(a)に示すように、分離装置中に[a]において調製した単層カーボンナノチューブ含有ミセル分散溶液(分離前溶液1800)を流路中へ充填し、直流電圧を印加した。分離操作後、分離流路内部の溶液は図18(b)に示すような領域を形成していた。陽極電極1801から底面付近まで薄い緑色の領域(半導体性単層カーボンナノチューブが多く含まれる領域)1803を形成していた。さらに、陽極電極1801の直下底面付近にもっとも濃い緑色の領域(半導体性単層カーボンナノチューブが多く含まれる領域)1804を形成し、平行流路中の領域1805には、上部に透明な溶液領域があり下部に緑色領域が存在する混合領域1805が広がった。また、陰極電極1802の周辺には赤褐色の領域(金属性単層カーボンナノチューブが多く含まれる領域)1806を形成した。領域1803と領域1806において半導体性単層カーボンナノチューブと金属性単層カーボンナノチューブが分離されたことを確認した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単層カーボンナノチューブを非イオン性界面活性剤溶液中へ分散した単層カーボンナノチューブ含有ミセル分散溶液に対して直流電圧を印加し、各ミセルが全体として正電荷を有する金属性単層カーボンナノチューブの濃縮されている単層カーボンナノチューブ含有ミセル分散液層と、各ミセルが全体としては極めて弱い電荷しか有しない半導体性単層カーボンナノチューブ含有ミセル分散液の層との、少なくとも2層に分離する工程を有することを特徴とする単層カーボンナノチューブ分離方法。
【請求項2】
前記の非イオン性界面活性剤がポリオキシエチレン(n)アルキルエーテル(nが20以上100以下、アルキル鎖長がC12以上C18以下)であることを特徴とする請求項1に記載の分離方法。
【請求項3】
前記の非イオン性界面活性剤濃度が4 wt%以下となるように単層カーボンナノチューブ含有ミセル分散溶液を調製することを特徴とする請求項1又は2に記載の分離方法。
【請求項4】
単層カーボンナノチューブを非イオン性界面活性剤溶液中へ分散した単層カーボンナノチューブ含有ミセル分散溶液を収納した分離槽を有し、該単層カーボンナノチューブ含有ミセル分散溶液に直流電圧を印加する少なくとも2個以上の電極を該分離槽に設けたことを特徴とする単層カーボンナノチューブ分離装置。
【請求項5】
前記分離槽の分離流路が縦に設置され、且つ電界の方向が分離流路内で上を向いていることを特徴とする、請求項4に記載の分離装置。
【請求項6】
前記分離装置において出発原料となる単層カーボンナノチューブ含有ミセル分散液を電極間へ連続的に導入する導入口と、分離された少なくとも2層の単層カーボンナノチューブ含有ミセル分散液の各層をそれぞれ別々に分取する分取口を有することを特徴とする請求項4又は5に記載の分離装置。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の方法によって分離された、半導体性単層カーボンナノチューブの割合が90%以上100%以下である単層カーボンナノチューブ含有ミセル分散液。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の方法によって分離された、金属性単層カーボンナノチューブの割合が50%以上100%以下の単層カーボンナノチューブ含有ミセル分散液。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図17】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−168417(P2011−168417A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−31845(P2010−31845)
【出願日】平成22年2月16日(2010.2.16)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】