単磁区ナノ粒子の磁気共鳴イメージング
単磁区粒子を含む物体に関する情報を収集するための方法およびシステムが記載される。こうした単磁区粒子は、約5nm〜80nmの範囲の直径を有する。情報を収集する方法は、物体に印加される約0.1テスラ未満の静磁場の発生と、単磁区粒子の電子常磁性共鳴を生じさせる周波数で、パルスまたは連続波のRFエネルギーの発生とを含む。該方法は、単磁区粒子の電子常磁性共鳴を物体の画像の形態で検出することを含む。代替として、単磁区粒子は、所定の直径および所定の飽和磁化を有してもよく、印加された磁場は、単磁区粒子が飽和磁化の少なくとも約10%、好ましくはそれ以上の磁化に到達するようにしてもよい。他の実施形態では、本発明の原理は、物体中のタグを検出し、タグを活性化するために用いられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続波またはパルスの高周波エネルギーを用いて磁気共鳴応答を検出する検出システム、こうしたシステムのための受信機、対応する方法、該方法を実行するためのソフトウエア、連続波またはパルスの高周波エネルギーを用いて磁気共鳴応答を有するタグを活性化する方法、およびこうした応用および方法のためのタグに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージング(MRI)は、人体内部の高品質の断層画像(2Dスライスまたは3D画像)を生成する周知の手法である。MRIは、核磁気共鳴(NMR)の原理に基づいている。MRIは、核を磁化するために、通常、1テスラ(T)〜3テスラ(T)のDC磁界を使用する。狭帯域の周波数範囲の電磁波が、特定の核の共鳴特性(周波数、緩和時間)を識別するために選択される。例えば、体内の高濃度のH2Oに起因して、人間の臓器の画像化のためには、通常、プロトンが用いられ、1Tで42MHz近傍の典型的な共鳴周波数を用いる。
【0003】
他の核ラーモア(Larmor)周波数が、50KHz〜100KHzの範囲にあり、この画像化応用で関心のある全体の周波数スペクトルは、10KHz〜1MHzのオーダーである。これは、極端に狭い帯域であり、ハードウエアは、この単一の周波数を発生し受信するように、例えば、ソースの周波数帯域と整合したヘテロダイン検出器として最適化される。幾つかのMRI実験では、狭帯域RF波の複雑なパルスシーケンスを用いて、核の位相を操作して、特定のタイプのNMR信号を生成している。パルスは、核のスピンを正確に90度または180度回転して、核共鳴と同調させる必要があり、1〜2000マイクロ秒程度である。
【0004】
任意の組織がMRI画像において視認できるためには、目標の組織と近接する組織において、放出される核の信号(振幅/位相/周波数)でのコントラストが存在する必要がある。このコントラストは、核スピン緩和時間、核の濃度または密度の差に由来する。造影剤がしばしば体内に導入され、差分取り込みによって組織間のコントラストを増強する。常磁性または単磁区(single domain)(超常磁性粒子など)の粒子が、水の環境で宙返りする際、振動する場を生成する造影剤としてしばしば用いられ、これにより、関心のある核の近傍に揺らぎ磁界をランダムに導入することによって組織の緩和時間(T1とT2)を変化させ、例えば、腫瘍細胞は周囲組織より多くのGd取り込み量を有することがあり、これによりT1を減少させて、MRIスキャンにおいて高い腫瘍のコントラストが得られる。
【0005】
強磁性共鳴(FMR)画像法は、強磁性材料を画像化するために用いられる手法である。米国特許第6924150号において、狭帯域の高周波FMR画像法のための手法が提案されている。人体は、本来、こうした特性を備えていないため、FMR画像法は生物医学的応用として考慮されなかった。強磁性材料では、極めて高いスピン密度および強いスピン間交換結合(exchange coupling)に起因して、強磁性共鳴(FMR)信号がNMRや他の共鳴よりもかなり強い。同じ交換結合は、スピン−スピン緩和の抑制を生じさせ、スピン−格子緩和が全体の緩和時間を支配するようになる。
【0006】
強磁性およびフェリ磁性のナノ粒子が、MR(磁気共鳴)画像応用(低い周波数)およびFMR画像法(米国特許第6924150号)における造影剤の使用で知られている。
【0007】
文献(Nature 435 (2005) 1214)において、Gleich とWeizeneckerが強磁性材料の磁化曲線の非線形性に基づく磁気粒子画像法を直接使用する方法、および粒子の磁化がある磁界強度で飽和することを説明している。画像化手法は、中央で消滅し、エッジで大きさが増加する時間非依存の場を使用しており、その結果、中央位置にいる粒子だけが飽和せずに、第2の刺激に応答する。関心のある空間を通る時間非依存の場の中心点を操作することによって、画像が得られる。
【0008】
従来のMRI手法を使用するリスクは、文献("Magentic Resonance Procedures: Health Effects and Society", Ed. F. G. Shellock, CRC Press, 2001. )に開示されている。識別タグとして機能する磁気媒体の使用は、これが付着された物品が、50Hz〜100KHzの狭帯域の呼掛け(interrogation)交流磁界を放出する検出システムを通過するときに検出される磁気媒体で構成されたRF−IDタグにおいて既に応用されている。
【0009】
幾つかの特許(例えば、米国特許第4940966号)は、識別できる物理パラメータ(例えば、形状、磁性材料、他のタグに対する距離および配向)に基づいた、発明性のある磁気バーコード化またはタグ化原理を説明する。UWBレーダー技術は、大きな物品の位置決め(例えば、車の識別、スルーウォールビジョン(through wall vision))および動き検知用に知られている。磁気RF−IDタグが、米国特許第4940966号 において知られており、インダクタ内に磁性材料を含む埋込式共振回路(LCタンク)が米国特許公開US2004138554号、US2005179552号に示されている。
【0010】
特定のナノ粒子の取り込みおよび約1MHz未満のAC磁界を用いた選択的な加熱によるマグネトサーミア(Magnetothermia)(細胞の加熱/破壊)が知られている。強磁性共鳴周波数(1〜300GHz)での電磁放射による基板の加熱は、米国特許公開US2004026028号および文献(John Moreland, et al., Rev. of Sci. Instr., Vol 71 p 3088)に示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、共鳴テクニックを用いて物体に関する情報を収集するための良好な方法およびシステムを提供することである。本発明に係る実施形態の利点は、検出または画像化を可能にするために、粒子と物体との間での反応が必要とされないことである。本発明に係る実施形態の利点は、検出が得られることである。本発明に係る実施形態の利点は、単磁区粒子の電子常磁性共鳴の検出に基づいた画像化手法を用いて、正確な画像化が得られることである。本発明に係る実施形態の利点は、単磁区粒子の電子常磁性共鳴の検出に基づいた手法を用いて、高速な画像化が得られることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の実施形態のある発明態様は、連続波またはパルスの高周波エネルギーを用いた検出のための、改善した装置または方法に関するものであり、こうしたシステムのための受信機、及び/又は、対応する方法、該方法を実行するためのソフトウエアを提供する。本発明の実施形態のある発明態様は、連続波またはパルスの高周波エネルギーを用いて、タグ及び/又は、こうした装置および方法のためのタグを活性化する方法に関する。
【0013】
上記目的は、本発明に係る方法および装置によって達成される。
【0014】
第1の発明態様は、物体に関する情報を収集する方法に関するもので、物体は、約5nm〜80nmの範囲、例えば、5nm〜80nmの範囲の直径を有する単磁区粒子を含む。該方法は、物体に、約0.1テスラ未満の、例えば、0.1テスラ未満の静磁場を印加することと、高周波(RF)エネルギーを物体に印加して、単磁区粒子の電子常磁性共鳴(EPR)を発生することと、単磁区粒子のEPRを検出することとを含む。
【0015】
本発明はまた、物体に関する情報を収集する方法に関するもので、物体は、5nm〜80nmの範囲の直径を有する単磁区粒子を含む。該方法は、物体と、0.1テスラ未満の静磁場およびある周波数のRFエネルギーとの相互作用で単磁区粒子のEPRを発生する際、単磁区粒子の電子常磁性共鳴(EPR)を検出することを含む。物体と、磁界またはRFエネルギーとの相互作用は、この方法の一部ではないが、該方法は、物体に約0.1テスラ未満の静磁場を印加することを含んでもよく、該方法はまた、ある周波数のRFエネルギーを物体に印加して、単磁区粒子の電子常磁性共鳴を発生することを含む。
【0016】
単磁区粒子のEPRを検出することは、単磁区粒子のEPRを、物体の画像の形態で検出することによって実施してもよい。こうした画像は、シングル画素の画像またはマルチ画素の画像でもよい。画像の形態で検出することは、物体のボリューム像の形態で検出することでもよい。
【0017】
物体のボリューム像の場合、2次元(2D)および3次元の画像を想定してもよい。該方法は、少なくとも2次元画像を得るために適合してもよい。
【0018】
ある実施形態において、単磁区粒子は、5nm〜100nm、例えば、約5nm〜80nm、例えば、5nm〜80nmの範囲、約5nm〜60nm、例えば、5nm〜60nmの範囲、約10nm〜30nm、例えば、5nm〜30nmの範囲、40nm〜60nm、例えば、40nm〜60nmの範囲の粒子直径を有することができる。第1態様の任意の実施形態において、単磁区粒子が都合よく単分散である方法が開示される。更なる実施形態において、単磁区粒子は超常磁性でもよい。超常磁性粒子は球体にできる。
【0019】
特定の実施形態において、単磁区粒子が酸化鉄を含む方法が開示される。特定の実施形態において、単磁区粒子は、Fe3O4(マグネタイト)を含むことができる。その直径は、5nm〜100nm、例えば、約5nm〜60nmにできる。他の実施形態において、単磁区粒子は、Fe2O3を含むことができる。その直径は、5nm〜100nm、例えば、約5nm〜80nmにできる。
【0020】
他の実施形態において、RFエネルギーが連続波として印加される方法が記載される。別の実施形態では、RFエネルギーがパルスとして、例えば、これに限定されないが、超広帯域(UWB: ultra wide bandwidth)パルスとして印加される。パルスは、サブギガUWBパルスでもよい。UWB、特にサブギガUWBパルスは、低磁場かつ低い周波数での有利な測定の可能性があり、身体(body)または走査ボリュームへの良好な信号浸透をもたらす。UWBは、アンテナからの伝送の観点で、放射信号幅が500MHzまたは中心周波数の20%の小さい方を超えるものとして定義されよう。従って、サブギガUWBパルスでは、中心周波数は1GHzより低く、信号幅は中心周波数の少なくとも20%である。使用可能なUWBパルスでの周波数の下限は、1MHzであろう。一例として、中心周波数は約300MHzでもよい。
【0021】
更なる発明態様は、物体に関する情報を収集するためのシステムに関する。物体は、5nm〜100nmの範囲、例えば、約5nm〜80nm、例えば、5nm〜80nmの範囲の直径を有する単磁区粒子を含む。該システムは、物体について、約0.1テスラ、例えば、0.1テスラ未満の静磁場を発生するようにした第1磁場発生器、例えば、こうした静磁場を物体に印加するための発生器と、物体についてRFエネルギーを、単磁区粒子の電子常磁性共鳴(EPR)を生じさせる周波数で発生するようにした第2磁場発生器、例えば、こうしたRFエネルギーを物体に印加して単磁区粒子のEPRを発生するための発生器と、単磁区粒子のEPRを物体の画像、例えば、物体のボリューム画像の形態で検出するようにした検出ユニットとを備える。
【0022】
第2態様の実施形態において、単磁区粒子は、5nm〜100nm、例えば、約5nm〜60nm、約10〜30nm、約40〜60nmの粒子直径を有することができる。第2態様の実施形態において、単磁区粒子が単分散であるシステムが開示される。更なる実施形態において、単磁区粒子は超常磁性でもよい。超常磁性粒子は球体にできる。
【0023】
特定の実施形態において、単磁区粒子が酸化鉄を含むシステムが開示される。特定の実施形態において、単磁区粒子は、Fe3O4またはマグネタイトを含むことができる。その直径は、5nm〜100nm、例えば、約5nm〜60nmにできる。
【0024】
他の実施形態において、RFエネルギーが連続波として印加されるシステムが記載される。更なる実施形態では、RFエネルギーがパルスとして、例えば、これに限定されないが、UWBパルスとして印加される。
【0025】
他の実施形態において、何れの上記実施形態で記載したようなシステムが開示され、RF周波数は約1GHz未満である。
【0026】
他の実施形態において、何れの上記実施形態で記載したようなシステムが開示され、静磁場は、約0.05テスラ未満、あるいは約0.01テスラ未満である。
【0027】
他の発明態様は、物体に関する情報を収集するための方法に関する。物体は、所定の飽和磁化または所定の縦緩和時間を有する単磁区粒子を含む。該方法は、単磁区粒子を含む物体を選択することと、物体に、約0.1テスラ未満、例えば、0.1テスラ未満の静磁場を印加することと、物体に、RFエネルギーを単磁区粒子の電子常磁性共鳴(EPR)を発生する周波数で印加することと、単磁区粒子のEPRを検出することとを含む。
【0028】
本発明はまた、物体に関する情報を収集するための方法に関する。物体は、所定の飽和磁化または所定の緩和時間を有する単磁区粒子を含む。該方法は、0.1テスラ未満の静磁場および単磁区粒子の電子常磁性共鳴(EPR)を発生する周波数でのRFエネルギーと物体との相互作用の際に、単磁区粒子の電子常磁性共鳴(EPR)を検出することを含む。磁場またはRFエネルギーと物体との相互作用が該方法の一部でなくてもよいが、該方法は、物体に約0.1テスラ未満の静磁場を印加することを含んでもよく、該方法は、RFエネルギーを単磁区粒子の電子常磁性共鳴(EPR)を発生する周波数で物体に印加することを含んでもよい。
【0029】
こうした検出は、幾つかの実施形態において単磁区粒子のEPRを画像化すること、幾つかの実施形態において物体のボリューム画像の形態で画像化することを含んでもよく、単磁区粒子を含む物体は、単磁区粒子の磁化飽和がほぼ生じない磁場で単磁区粒子が電子常磁性共鳴(EPR)を示すように選択される。第3態様の実施形態において、物体の選択は、所定の直径を持つ単磁区粒子を選択することを含む。さらに、他の実施形態において、粒子の化学組成が選択される。
【0030】
他の実施形態において、単磁区粒子の飽和磁化の約95%の最大値が得られる方法が開示される。他の実施形態において、単磁区粒子の飽和磁化の約90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%の最大値が得られる。有利な実施形態では、単磁区粒子の飽和磁化の少なくとも95%が得られる方法が開示される。他の有利な実施形態では、単磁区粒子の飽和磁化の少なくとも約90%、少なくとも約80%、少なくとも約70%、少なくとも約60%、少なくとも約50%、少なくとも約40%、少なくとも約30%、少なくとも約20%、少なくとも約10%が得られる。
【0031】
有利な一実施形態では、飽和磁化の80%と同程度、60%と同程度、40%と同程度、または20%と同程度の磁化を有する単磁区粒子について画像化が得られる方法が開示される。
【0032】
更なる実施形態において、単磁区粒子は、超常磁性でもよい。超常磁性粒子は球体にできる。
【0033】
更なる実施形態において、物体の選択は、約5nm〜100nmの範囲、例えば、5nm〜100nmの範囲、約5nm〜80nm、または約5nm〜60nmの範囲の所定の直径を持つ単磁区粒子を選択することを含む。
【0034】
特定の実施形態において、単磁区粒子が酸化鉄を含む方法が開示される。特定の実施形態において、単磁区粒子は、Fe3O4(マグネタイト)を含むことができる。その直径は、5nm〜100nm、例えば、約5nm〜60nmにできる。特定の実施形態において、単磁区粒子は、Fe2O3を含むことができる。その直径は、5nm〜100nmにできる。幾つかの実施形態において、80nmより大きい、あるいは100nmより大きい臨界(critical)単磁区粒子を有する粒子を用いてもよく、80nmより大きい、あるいは100nmより大きい粒子を用いてもよく、例えば、1μmまでのサイズを持つ粒子がより大きくてもよい。1つの例は、例えば、γ−Fe2O3粒子でもよい。
【0035】
他の実施形態において、静磁場は、約0.05テスラ未満、例えば、0.05テスラ未満、あるいは約0.01テスラ未満、例えば、0.01テスラ未満である。
【0036】
他の実施形態において、RFエネルギーが連続波として印加される方法が記載される。更なる実施形態では、RFエネルギーがパルスとして、例えば、これに限定されないが、UWBパルスとして印加される。
【0037】
他の発明態様は、物体に関する情報を収集する方法に関する。物体は、所定の直径と、所定の飽和磁化または所定の縦緩和時間を有する単磁区粒子を含む。該方法は、単磁区粒子を含む物体を選択することと、物体に、約0.1テスラ未満、例えば、0.1テスラ未満の静磁場を印加することと、物体に、RFエネルギーを単磁区粒子の電子常磁性共鳴(EPR)を発生する周波数で印加することと、単磁区粒子のEPRを検出することとを含む。
【0038】
本発明はまた、物体に関する情報を収集するための方法に関する。物体は、所定の直径と、所定の飽和磁化または所定の縦緩和時間を有する単磁区粒子を含む。該方法は、0.1テスラ未満の静磁場および単磁区粒子のEPRを発生する周波数でのRFエネルギーと物体との相互作用の際に、単磁区粒子の電子常磁性共鳴(EPR)を検出することを含む。磁場またはRFエネルギーと物体との相互作用が該方法の一部でなくてもよいが、該方法は、物体に約0.1テスラ未満の静磁場を印加することを含んでもよく、該方法は、RFエネルギーを単磁区粒子の電子常磁性共鳴(EPR)を発生する周波数で物体に印加することを含んでもよい。
【0039】
こうした検出は、幾つかの実施形態において単磁区粒子のEPRを画像化すること、幾つかの実施形態において物体のボリューム画像の形態で画像化することを含んでもよく、単磁区粒子を含む物体は、単磁区粒子が飽和磁化の少なくとも約10%、例えば、飽和磁化の少なくとも10%である磁化を示すように選択される。特定の実施形態では、単磁区粒子は、飽和磁化の少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約50%、少なくとも約80%、少なくとも約90%である粒子の磁化を示す。
【0040】
追加の特徴の何れもが共に組合せ可能であり、何れの態様も共に組合せ可能である。さらに、本発明の特定及び/又は好都合な態様は、添付の独立および従属の請求項で記述されている。従属請求項からの特徴は、適当に、請求項に明示されているものだけでなく、独立請求項の特徴および他の従属請求項の特徴と組み合わせてもよい。他の利点は、当業者に明らかとなろう。記載した実施形態の範囲から逸脱することなく多数の変形および変更が可能である。従って、この説明の形態は例示的に過ぎず、本発明の範囲を限定することは意図していないことは明確に理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】約3テスラのプロトンの磁化と比較して、約100ガウスでのFe3O4ナノ粒子の磁化のグラフを粒子直径の関数として示す。
【図2】約3テスラのプロトンの磁化と比較して、10nm(三角)および40nm(菱形)のFe3O4粒子の磁化のグラフを静磁場の関数として示す。
【図3】Fe3O4ナノ粒子の連続波EPRのグラフを示す。
【図4】約10nmのFe3O4ナノ粒子および約60nmのFe2O3ナノ粒子のEPR共鳴の一次導関数を示すグラフである。
【図5】低磁場、ν=740MHzでのヘキサン中の約10nmのFe3O4ナノ粒子のEPRのグラフと、ν=740MHzでの対応する背景信号のグラフと、低磁場、ν=480MHzでの約10nmのFe3O4ナノ粒子のEPRのグラフと、ν=480MHzでの対応する背景信号のグラフである。
【図6A】480MHzで約10nmのFe3O4についての非特異吸収を示す。
【図6B】740MHz(〜1mg Fe3O4/ml)についての非特異吸収を示す。
【図6C】480MHz(38.6mg Fe3O4/ml)で、5nmのFe3O4コアを有するリゾビスト(Resovist)についての非特異吸収を示す。
【図6D】480MHz(80mg 粒子/ml)で、ポリマーマトリクス500nm中にある10〜20nmのγ−Fe2O3コアを持つケミセル(Chemicell)からSiMAG/T−基本粒子についての非特異吸収を示す。
【図7】常磁性ナノラベルに印加されるUWBパルスを示す。
【図8】約3Tのプロトンの磁化と比較して、100ガウスで約10nm(三角)、100ガウスで40nm(菱形)、50ガウスで40nm(四角)のFe3O4粒子の磁化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明は、特定の実施形態について特定の図面を参照しながら説明するが、本発明はこれらに限定されない。記載した図面は概略的なものに過ぎず、非限定的である。図面において、幾つかの要素のサイズは、説明目的のため、誇張してスケールどおり描いていないことがある。寸法および相対寸法は、本発明の実際の実用化と対応していない。
【0043】
さらに、説明での用語「第1」「第2」などは、類似の要素を区別するための使用しており、必ずしも連続した順または時間順を記述するためではない。こうした用語は、適切な状況下で交換可能であり、本発明の実施形態は、ここで説明したり図示したものとは別の順番で動作可能であると理解すべきである。
【0044】
さらに、説明での用語「上(top)」、「下(bottom)」、「の上に(over)」、「の下に(under)」等は、説明目的で使用しており、必ずしも相対的な位置を記述するためのものでない。こうして用いた用語は、適切な状況下で交換可能であって、ここで説明した実施形態がここで説明または図示した以外の他の向きで動作可能であると理解すべきである。
【0045】
請求項で用いた用語「備える、含む(comprising)」は、それ以降に列挙された手段に限定されるものと解釈すべきでなく、他の要素またはステップを除外していない。記述した特徴、整数、ステップまたは構成要素の存在を、参照したように特定するように解釈する必要があるが、1つ又はそれ以上の他の特徴、整数、ステップまたは構成要素、あるいはこれらのグループの存在または追加を除外していない。そして「手段A,Bを備えるデバイス」という表現の範囲は、構成要素A,Bだけからなるデバイスに限定すべきでない。本開示に関して、デバイスの関連した構成要素だけがA,Bであることを意味する。
【0046】
本願の実施形態において、用語「ナノ粒子」を用いた場合、1nm〜1000nmの範囲の限界寸法、例えば、直径を有する粒子を参照している。多くの実施形態では、粒子サイズは、提示したような範囲内にさらに特定されている。
【0047】
ある実施形態は、単磁区(single domain)粒子の磁化を利用している。単磁区粒子の定義は、 http://www.irm.umn.edu/hg2m/hg2m_d/hg2m_d.html において見つけられる。
【0048】
単磁区粒子は、その単磁区範囲内で生ずる所定の材料についての最大保磁力(coercivity)を有する粒子として定義される。より大きな粒径を有する場合、粒が磁区に再分割されるにつれて、保磁力は減少する。より小さな粒径では、保磁力は再び減少するが、このとき熱エネルギーのランダム化効果に起因している。単磁区挙動の限界サイズは、飽和磁化、粒の形状など、幾つかの要因に依存する。
【0049】
単磁区粒子において、局所磁化は飽和するが、必ずしも平行でない。磁区は、原子間距離より大きく、典型的には1〜100ナノメータの範囲である。
【0050】
超常磁性粒子は、特定クラスの単磁区粒子である。粒子サイズが単磁区範囲内に減少し続けると、残留磁気(remanence)および保磁力はゼロになる。これが発生すると、粒は超常磁性になる。
【0051】
体積vの単粒子は、磁化容易軸に沿った配向した均一な磁化を有する。vが充分小さい場合、または温度が充分高い場合、熱エネルギー(kT)が、(+)と(−)の磁化状態を分離する異方性エネルギーに打ち勝って自発磁化反転を生じさせるのに充分となる。単粒子は、充分に長い縦緩和時間、例えば、検出ユニットの不感時間より長い緩和時間を有する粒子でもよい。こうした単磁区共鳴粒子の測定信号は、磁化に比例する。従って、磁化が可能な限り大きく、好都合には飽和磁化と同程度に大きいような電子常磁性共鳴(EPR)を示す化合物からなる粒子を使用することが有益である。後者により、測定信号の最大振幅を得ることが可能になる。直径は、低い静磁場で全ての粒子の最大アライメントが可能になるように選択できる。小さい静磁場は、低い共鳴周波数を意味し、よってRF磁界のより大きな侵入深さと、人体または小動物への低い熱放散を意味する。
【0052】
【数1】
【0053】
ランジュバンの常磁性理論(式1)は、静磁場、粒子の直径、単位体積に含まれる粒子の数、化合物の飽和磁化、および温度の関数として、全体磁化を与える。ランジュバン理論に基づいたシミュレーションは、Fe3O4超常磁性粒子、例えば、超常磁性ナノ粒子の磁化と、伝統的なMRIでのエコー信号に関与するプロトンの磁化との比較を可能にする。約40〜60nmの酸化鉄粒子の磁化は、室温、3テスラのプロトンの磁化より約17000倍高い。
【0054】
図1は、室温、3テスラのプロトンの磁化に対する磁化を粒子直径の関数として示す。同じ粒子直径では、電子スピンの全体アライメントが約50ガウスで少なくとも10ns、好都合には少なくとも20nsの縦緩和時間で達成される。図2は、磁化を静磁場の関数として示し、約10nmのサイズを持つ粒子(菱形)および約40nmのサイズを持つ粒子(三角)について示しており、静磁場飽和が得られている。
【0055】
本発明の実施形態において、約5nm〜80nmの範囲、例えば、5nm〜80nmの範囲の直径を有する単磁区粒子を含む物体に関する情報を収集するための方法およびシステムが提供される。
【0056】
本発明の実施形態において、システムは、物体について約0.1テスラ未満の静磁場を発生するようにした第1磁場発生器と、物体についてRFエネルギーを、単磁区粒子の電子常磁性共鳴(EPR)を発生する周波数で発生するようにした第2磁場発生器と、単磁区粒子の電子常磁性共鳴を検出するようにした検出ユニットとを備える。こうした検出ユニットは、こうした粒子の存在についての単なる検出でもよく、こうした粒子の存在または不存在を示すシングル画素イメージングとも称される。検出ユニットは、単磁区粒子の電子常磁性共鳴を画像の形態で検出するようにしてもよい。画像は、シングル画素またはマルチ画素でもよい。好都合な実施形態では、使用する検出は、単磁区粒子の電子常磁性共鳴を物体のボリューム画像の形態で検出するようにしてもよい。こうしたボリューム画像は、2次元または3次元の画像でもよい。このシステムは、イメージングシステムとも称される。
【0057】
同様に、対応する方法は、物体について、例えば、物体に印加される0.1テスラ未満の静磁場を発生するステップと、物体中の単磁区粒子の電子常磁性共鳴(EPR)を発生する周波数で、物体についてRFエネルギーを発生するステップと、単磁区粒子の電子常磁性共鳴(EPR)を物体のボリューム画像の形態で検出するステップとを含む。こうした方法は、イメージング法とも称される。本発明の実施形態にとって標準または任意の更なる特徴および利点は、例示の実施形態で例としてさらに後述している。
【0058】
本発明の実施形態において、該方法および装置は、連続波での単磁区ナノ粒子の電子常磁性共鳴(EPR)を可能にしている。単磁区粒子は、5nm〜100nmの範囲でもよく、好ましくは約5〜80nmの範囲であり、例えば、粒子の直径は5〜80nmの範囲でもよい。幾つかの実施形態では、粒子の直径は、約10nm〜30nmの範囲または約40nm〜60nmの範囲でもよい。単磁区粒子は、超常磁性でもよい。
【0059】
粒子は、好ましくは、単磁区マグネタイトFe3O4粒子などの単磁区粒子である。単磁区粒子の他の例は、ヘマタイト(hematite)であり、超常磁性であっても、そうでなくてもよい。単磁区粒子のさらに他の例は、マグヘマイト(maghemite)である。
【0060】
粒子は、好ましくは、球形で単分散であり、高い飽和磁化を可能にする結晶構造を持つ。静磁場Bの中に組み込まれた常磁性体の電子スピンは、この磁場方向と平行に整列するようになり、特定の周波数ν、ラーモア周波数を持つ磁場の周りで歳差運動をするようになる。本発明の実施形態に従って印加される静磁場は、約0.1テスラまたはそれ以下、例えば、0.1テスラまたはそれ以下、または、約0.01テスラまたはそれ以下、例えば、0.01テスラまたはそれ以下にできる。連続RF磁界が常磁性体粒子に印加され、このRF磁界の周波数がラーモア周波数と等しい場合、共鳴条件が成立し、スピンの方向は逆平行状態に反転して元に戻る。電子スピンのエネルギー状態の集団は混合し、RF磁界のパワーの吸収を生じさせる(図3)。これらの粒子の磁気共鳴は、MRIイメージングで周知の手法に基づいて検出できる。特に、本実施形態では、同軸の全身用コイル(body coil)(傾斜コイルおよびRFコイル)と磁気巻き線(例えば、外部低温シールド付)を備えた装置を使用して、連続した静磁場およびRF磁界を印加してもよい。粒子サイズの選択は、一方では、低い磁場で飽和磁化に可能な限り近い磁化および充分に長い縦緩和時間を得ようとして、より大きな粒子サイズを選択することと、他方では、極めて狭く高い振幅の共鳴信号を有するための著しく小さな粒子を選択することとの間のトレードオフであろう。
【0061】
連続波での電子常磁性共鳴(EPR)の実験から、Fe3O4についてはg=2.0624、Fe2O3についてはg=2.207のgファクタが得られている(図4)。両方の測定では、磁化を飽和させるために、9.18GHzのRF周波数と約3000ガウスの高い磁場で実施した。測定により、γ−Fe2O3(MS=380kA/m)およびα−Fe2O3(MS=2.5kA/m)と比べて、Fe3O4はより大きな飽和磁化(MS=480kA/m)を有することを確認した。Fe2O3の共鳴は、Fe3O4よりブロードである。約480MHzと約740MHzの低い周波数でEPR実験を行って、RF磁界の非特異吸収を示した(図5)。データ510は480MHzで記録したFe3O4粒子を示し、データ520は対応するバックグラウンドを示し、データ530は740MHzで記録したFe3O4粒子を示し、データ540は対応するバックグラウンドを示す。600ガウスより上で10nmのFe3O4粒子の磁化が飽和し、全ての電子スピンが静磁場に対して整列し、サンプルはRF磁界にとって透明になる。本発明の実施形態は、1GHz未満の範囲で低い周波数を使用している。
【0062】
非特異吸収は、ランジュバン理論によって理解できる。極めて低い磁場では、磁化が飽和する前は、全てのスピンは静磁場に対して整列していない。RF磁界が集団(ensemble)に加わると、静磁場に対して整列していない電子スピンの一部は、RF磁界とともに回転し、RFパワーの吸収をもたらす。磁場が高くなるほど、その割合が低くなり、非特異吸収は低くなる。この非特異吸収の上部において、静磁場に対して整列した集団の一部によって共鳴吸収が生ずる。その部分は共鳴条件下でRFパワーを吸収するようになり、減少する非特異吸収の上部にガウス形状を生じさせる。
【0063】
いろいろな直径を持つFe3O4およびγ−Fe2O3のEPR実験は、非特異吸収の典型的な挙動を示す(図6A〜図6D)。図6Aと図6Bは、480MHzと740MHzの周波数でそれぞれ測定したFe3O4の吸収パワースペクトルおよびバックグラウンド減算パワースペクトルを示す。図6Cは、480MHzの周波数で測定した、5nmのFe3O4コアを持つリゾビスト(Resovist)磁性粒子の吸収パワースペクトルおよびバックグラウンド減算パワースペクトルを示す。図6Dは、ポリマーマトリクス500nm中にある10〜20nmのγ−Fe2O3コアを持つケミセル(Chemicell)からSiMAG/T−基本粒子の吸収パワースペクトルおよびバックグラウンド減算パワースペクトルを示す。
【0064】
本発明の他の実施形態によれば、方法および装置が、パルスモードでの単磁区ナノ粒子のEPRを可能にする。単磁区ナノ粒子のEPRを行って、低い磁場で最大飽和磁化を達成する場合、プロトンの共鳴信号をベースとしたMRIの場合のように、共鳴信号の振幅はこの低い磁場で最大になり、感度も低い磁場で最大になり、より高感度を得るためにより高い静磁場を印加する必要性を排除する。
【0065】
単磁区ナノ粒子は、フリーラジカル、または酸化鉄ラベルを用いたイメージングを可能にする他の常磁性体の電子スピン共鳴(ESR)と比較して、極めて大きな磁化を有する。
【0066】
従って、本発明の第2の特定の実施形態において、超広帯域(UWB)パルスを用いた単磁区ナノ粒子のEPRを可能にする方法および装置が提供される。
【0067】
単磁区酸化鉄ナノ粒子の吸収スペクトルを図4、図5、図6a〜図6dに示すように、単磁区ナノ粒子の磁気共鳴が極めてブロードで、中心周波数の約20%より広いことが判る。
【0068】
ブロードバンド周波数スペクトルを含む超広帯域パルスをナノ粒子常磁性体に加えた場合、集団の電子スピンの全てまたはある選択部分は、静磁場に対して特定の角度αだけ同時に傾斜する。これは、方向αに集団の全体磁化を生じさせることになる。最も有利な場合、超広帯域RFパルスまたはパルスシーケンスは、静磁場に対して垂直に配向するまでスピンを反転させる。歳差運動するスピンの磁気双極子モーメント、回転磁界は、集団の磁化に比例した最大振幅を有し、伝送された超広帯域パルスの同じ周波数を有するRF磁界を誘起し、これが粒子のエコー信号である(図7)。
【0069】
図8は、100ガウスでの約10nmのFe3O4の粒子の磁化(三角)、100ガウスでの約10nmのFe3O4の粒子の磁化(三角)、100ガウスでの約40nmのFe3O4の粒子の磁化(菱形)、50ガウスでの約40nmのFe3O4の粒子の磁化(四角)を、3Tでのプロトンの磁化と比較、即ち、従来のMRIと比較して示す。UWB−MRI法の感度を従来のMRIと比較して見積もるために、広帯域ピックアップアンテナの信号対ノイズ比、SNR〜Δν*ν、を考慮に入れるべきである。また、小さな静磁場は、低い共鳴周波数と、より低いSNR比を意味する。
【0070】
広帯域信号をコイルアンテナを通じて送信する場合、特性伝達関数を考慮に入れるべきである。広帯域信号は、コイル自体によって変形するようになる。典型的には、パワースペクトルの側方でのパワーは減衰するが、周波数領域でフラットなパワースペクトルが電子スピンの全体集団またはその選択部分を同時に共鳴させるのに有利である。アンテナの入力信号は、スペクトルの側方でアンテナの反射および不整合に起因したパワー損失を補償するように整形してもよい。
【0071】
粒子の局所化(localization)および画像化は、例えば、異なる共鳴条件、例えば、磁場傾斜を備えた静磁場の変動の下でエコー信号によって得てもよい。また、局所化は、例えば、UWBレーダーを用いて得てもよい。局所化は、ラドン変換(Radon Transform)を実施するときに得てもよい。他の例では、局所化は、上述した3つの手法の組合せで実施してもよい。
【0072】
ナノ粒子の識別を、ラベルの共鳴痕跡(signature)によって実施してもよい。
【0073】
ナノ粒子の活性化が、連続RF磁界を印加、またはRFパルスシーケンスを印加することによって可能である。
【0074】
パルスのRFエネルギー発生を採用した実施形態によれば、UWBを用いた検出のための改善した装置または方法が提供され、さらに、こうしたシステムのための受信機、及び/又は、該方法を実行するための対応する方法およびソフトウエア、及び/又は、UWBパルスを使用してタグ及び/又はこうした装置および方法のためのタグを活性化する方法が提供される。
【0075】
例えば、検出システムが提供され、UWB電磁放射の一連のパルスを送信するための送信機と、パルス列のエコーパルスを識別するために、エコーパルスに付与された痕跡を識別するようにした少なくとも1つの受信機とを備え、約5〜50nmの直径を有する単磁区粒子をさらに備え、痕跡は、パルス列によって誘起された磁気共鳴を示す約5〜50nmの直径を有する単磁区粒子を示すものである。
【0076】
本実施形態の他の態様は、UWB電磁放射の一連のパルスのエコーを受信するための受信機であり、エコーパルスに付与された痕跡を識別する手段を備え、痕跡は、パルス列によって誘起された磁気共鳴を示す約5〜50nmの直径を有する単磁区粒子からの反射を示すものである。
【0077】
他の態様は、パルス列からのエコーパルスを識別し、痕跡を識別するための相関回路を有する受信機である。
【0078】
他の態様は、UWB電磁放射パルスによる照射に対する磁気共鳴応答を有する約5〜50nmの直径を有する単磁区粒子を検出するための受信機であり、約5〜50nmの直径を有する単磁区粒子と相互作用した後にパルスを検出するための検出器と、検出したパルスにおいて、約5〜50nmの直径を有する単磁区粒子の磁気共鳴応答を識別するようにした弁別器(discriminator)とを有する。
【0079】
他の態様は、磁気共鳴応答を有する材料を有するタグが付与された物品(item)を走査する方法を提供する。該方法は、物品をUWB電磁放射パルスで照射することと、約5〜50nmの直径を有する単磁区粒子と相互作用した後にパルスを検出することと、約5〜50nmの直径を有する単磁区粒子の磁気共鳴応答を識別することとを含む。こうした方法は、物体の情報を取得するための方法を採用してもよい。
【0080】
他の態様は、物品にあるタグを活性化する方法を提供するものであり、タグは、約5〜50nmの直径を有する単磁区粒子を有し、磁気共鳴応答を有する。該方法は、物品をUWB電磁放射パルスで照射することを含み、または連続波の電磁放射を印加することによって、タグの磁気共鳴応答がタグの活性化を生じさせる。パルスRFエネルギーを用いた実施形態の利点は、活性化によって熱放散を制御することが可能になることである。活性化は、細胞内標的(cellular targeting)を含むことができる。活性化の他の例は、温熱療法(hyperthermia)および熱焼灼(thermoablation)である。
【0081】
他の態様は、該システム、受信機または方法で使用されるタグを提供する。タグは、約5〜80nm、例えば、約5〜50nmの直径を有する単磁区粒子を有し、UWB放射パルスまたは連続波の電磁放射による照射に対して識別可能な磁気共鳴痕跡応答を提供する磁気共鳴応答を示すものであり、その結果、異なるタグが識別可能であり、これらの痕跡によって区別される。
【0082】
使用可能なタグの例は、MRI造影剤であり、例えば、Resovist(Schering社)、Endorem(Guerbet社)、5nmの平均直径を持つ酸化鉄コアでCarbotran(φ60nm)およびDextran(φ80−150nm)のコーティングを備える。他の例は、Ocean nanotech社酸化鉄ナノ粒子(www.oceannanotech.com)、または、reade社酸化鉄ナノ粒子(www.reade.com)である。幾つかの例では、酸化鉄コアを使用してもよく、常磁性体ラベルとして適した粒子の製作を可能にするが、これらの粒子のコーティングは、関心のある生体分子と選択的に結合するために適合している必要がある。
【0083】
例として、本発明はこれに限定されないが、EPR検出の使用及び/又は単磁区粒子を用いた画像化の例について以下に示す。
【0084】
一例では、ナノ粒子は、生物の体内、例えば、動物または人間の体での生物学的プロセスを視覚化するラベルとして機能する。視覚化は、生きた生物の体内のプロセスについて可能である。しかし、本発明はこれに限定されない。投与前、ナノ粒子はコートして(例えば、デキストランを用いて)、生体適合性にできる(例えば、これがその場合でなければ)。粒子のサイズおよびコーティングは、動物または人間の体内での最終の生体内分布を決定するようになる。粒子は、特定の組織または体液に蓄積され、ラベルの視覚化(例えば、灌流テスト、肝臓の監視)によって監視可能になる。
【0085】
さらに、コーティング上の特定の官能基が、関心のある生体分子(例えば、抗体/抗原)または薬剤との特異結合を可能にする。特別な例によれば、関心のある特定ターゲットと結合するように、プローブを表面に設けてもよい。特定ターゲットを見つけるために用いるプローブは、オリゴヌクレオチド鎖、DNA、RNAまたはPNA(部分的)、原子、分子、官能基、抗体、抗原などを含んでもよい。一例として、こうした特異結合は、投与前に生じることがある。この場合、ナノ粒子が、体内の生成物を追跡するためのラベルとして機能する。
【0086】
代替として、特異結合は、身体の特定の組織または体液にある生体分子の存在を検出するために、体内投与後に生じることがある。
【0087】
一例として、存在の検出が(シングル画素イメージングとも称される)実施可能である。結合したナノ粒子ラベルが特定の箇所に蓄積する。体内(in-vivo)検出器を、特定の組織または体液の存在、例えば、転移についてラベル経由で検出のために使用してもよい。1つの特定の例の応用は、例えば、手術の際、悪質な細胞が除去されたか否かをテストすることでもよい。
【0088】
他の例では、生体分子へのラベル結合をチェックするために、存在の検出を実施してもよい。
【0089】
更なる例では、マルチ画素イメージング、例えば、機能的イメージングまたは分子イメージング、診断および治療の監視のための体内(in-vivo)イメージングを行う。ラベリングによって生物学的プロセス、組織および体液が監視可能である。応用の特定の例は、腫瘍成長の検出または追跡や、抗体などの存在をチェックすることでもよい。
【0090】
体内(in-vivo)検出またはイメージングでは、特徴付けのためのシステムが都合よくコンパクトになるため、携帯装置として使用可能である。
【0091】
上述の説明は、本発明のある実施形態を詳細に説明する。しかしながら、前述の内容が文章中でどれぐらい詳細であっても、本発明は多くの手法で実用化できることは理解されよう。本発明のある特徴または態様を記述する場合、特定の用語の使用が、その用語がここで再定義され、用語と関連した本発明の特徴または態様の何れかの特定の特徴を含むことに限定されると意味することと理解すべきでないことに留意すべきである。
【0092】
一態様では、本発明の実施形態は、共鳴テクニックを用いて直接画像化するため、または物体に関する情報を収集するため、または上述のようなタグを識別したり活性化するための方法の少なくとも一部を実行するためのコンピュータ関連の方法、あるいは対応するコンピュータプログラム製品に関係する。こうした方法は、コンピュータシステム、例えば、汎用コンピュータで実施してもよい。コンピュータシステムは、データを受けるための入力手段を備えてもよい。システムは、データ、例えば、単磁区粒子の電子常磁性共鳴データを処理するためのデータプロセッサであっても、これを含んでもよい。
【0093】
コンピュータシステムは、プロセッサ、ROMやRAMなどを含むメモリシステム、CD−ROMやDVDドライブなどの出力システム、あるいはネットワークに情報を出力するための手段を含んでもよい。従来のコンピュータコンポーネント、例えば、キーボード、ディスプレイ、ポインティングデバイス、入出力ポートなどを含んでもよい。データ輸送は、データバスをベースとして設けてもよい。コンピュータシステムのメモリは、命令セットを含んでもよく、コンピュータシステム上で実行した場合、上述のような方法の標準ステップおよび、必要に応じて上述のような任意のステップの一部または全部の実行が得られる。従って、共鳴テクニックを用いて直接画像化するため、または物体に関する情報を収集するため、または得られた情報を相応に処理するタグを識別したり活性化するための方法の一部または全部を実行するための命令を含むコンピュータシステムは、先行技術の一部ではない。
【0094】
本発明の実施形態の更なる態様は、コンピュータ装置上で実行するための機械読み取り可能なコードを運ぶキャリア媒体に埋め込まれたコンピュータプログラム製品を包含する。コンピュータプログラム製品自体は、データキャリア、例えば、DVDまたはCD−ROMまたはメモリ装置などである。従って、実施形態の態様は、コンピュータプログラム製品、およびそれに対応する伝送信号を、ネットワーク、例えば、ローカルネットワークまたはワイドエリアネットワークなどを通じて送信することも包含する。
【0095】
本発明に係る方法の実施形態において、物体と磁界またはRFエネルギーとの間の相互作用は、該方法の一部でなくてもよい。本発明に係る方法の実施形態は、相互作用時の検出ステップだけを包含してもよい。
【0096】
上記詳細な説明は、種々の実施形態へ応用されるような本発明の新規な特徴を示し、記述し指摘したが、本発明の精神から逸脱することなく、装置またはプロセスの形式および詳細についての種々の省略、置換、変化が当業者により可能であることはと理解されよう。
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続波またはパルスの高周波エネルギーを用いて磁気共鳴応答を検出する検出システム、こうしたシステムのための受信機、対応する方法、該方法を実行するためのソフトウエア、連続波またはパルスの高周波エネルギーを用いて磁気共鳴応答を有するタグを活性化する方法、およびこうした応用および方法のためのタグに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージング(MRI)は、人体内部の高品質の断層画像(2Dスライスまたは3D画像)を生成する周知の手法である。MRIは、核磁気共鳴(NMR)の原理に基づいている。MRIは、核を磁化するために、通常、1テスラ(T)〜3テスラ(T)のDC磁界を使用する。狭帯域の周波数範囲の電磁波が、特定の核の共鳴特性(周波数、緩和時間)を識別するために選択される。例えば、体内の高濃度のH2Oに起因して、人間の臓器の画像化のためには、通常、プロトンが用いられ、1Tで42MHz近傍の典型的な共鳴周波数を用いる。
【0003】
他の核ラーモア(Larmor)周波数が、50KHz〜100KHzの範囲にあり、この画像化応用で関心のある全体の周波数スペクトルは、10KHz〜1MHzのオーダーである。これは、極端に狭い帯域であり、ハードウエアは、この単一の周波数を発生し受信するように、例えば、ソースの周波数帯域と整合したヘテロダイン検出器として最適化される。幾つかのMRI実験では、狭帯域RF波の複雑なパルスシーケンスを用いて、核の位相を操作して、特定のタイプのNMR信号を生成している。パルスは、核のスピンを正確に90度または180度回転して、核共鳴と同調させる必要があり、1〜2000マイクロ秒程度である。
【0004】
任意の組織がMRI画像において視認できるためには、目標の組織と近接する組織において、放出される核の信号(振幅/位相/周波数)でのコントラストが存在する必要がある。このコントラストは、核スピン緩和時間、核の濃度または密度の差に由来する。造影剤がしばしば体内に導入され、差分取り込みによって組織間のコントラストを増強する。常磁性または単磁区(single domain)(超常磁性粒子など)の粒子が、水の環境で宙返りする際、振動する場を生成する造影剤としてしばしば用いられ、これにより、関心のある核の近傍に揺らぎ磁界をランダムに導入することによって組織の緩和時間(T1とT2)を変化させ、例えば、腫瘍細胞は周囲組織より多くのGd取り込み量を有することがあり、これによりT1を減少させて、MRIスキャンにおいて高い腫瘍のコントラストが得られる。
【0005】
強磁性共鳴(FMR)画像法は、強磁性材料を画像化するために用いられる手法である。米国特許第6924150号において、狭帯域の高周波FMR画像法のための手法が提案されている。人体は、本来、こうした特性を備えていないため、FMR画像法は生物医学的応用として考慮されなかった。強磁性材料では、極めて高いスピン密度および強いスピン間交換結合(exchange coupling)に起因して、強磁性共鳴(FMR)信号がNMRや他の共鳴よりもかなり強い。同じ交換結合は、スピン−スピン緩和の抑制を生じさせ、スピン−格子緩和が全体の緩和時間を支配するようになる。
【0006】
強磁性およびフェリ磁性のナノ粒子が、MR(磁気共鳴)画像応用(低い周波数)およびFMR画像法(米国特許第6924150号)における造影剤の使用で知られている。
【0007】
文献(Nature 435 (2005) 1214)において、Gleich とWeizeneckerが強磁性材料の磁化曲線の非線形性に基づく磁気粒子画像法を直接使用する方法、および粒子の磁化がある磁界強度で飽和することを説明している。画像化手法は、中央で消滅し、エッジで大きさが増加する時間非依存の場を使用しており、その結果、中央位置にいる粒子だけが飽和せずに、第2の刺激に応答する。関心のある空間を通る時間非依存の場の中心点を操作することによって、画像が得られる。
【0008】
従来のMRI手法を使用するリスクは、文献("Magentic Resonance Procedures: Health Effects and Society", Ed. F. G. Shellock, CRC Press, 2001. )に開示されている。識別タグとして機能する磁気媒体の使用は、これが付着された物品が、50Hz〜100KHzの狭帯域の呼掛け(interrogation)交流磁界を放出する検出システムを通過するときに検出される磁気媒体で構成されたRF−IDタグにおいて既に応用されている。
【0009】
幾つかの特許(例えば、米国特許第4940966号)は、識別できる物理パラメータ(例えば、形状、磁性材料、他のタグに対する距離および配向)に基づいた、発明性のある磁気バーコード化またはタグ化原理を説明する。UWBレーダー技術は、大きな物品の位置決め(例えば、車の識別、スルーウォールビジョン(through wall vision))および動き検知用に知られている。磁気RF−IDタグが、米国特許第4940966号 において知られており、インダクタ内に磁性材料を含む埋込式共振回路(LCタンク)が米国特許公開US2004138554号、US2005179552号に示されている。
【0010】
特定のナノ粒子の取り込みおよび約1MHz未満のAC磁界を用いた選択的な加熱によるマグネトサーミア(Magnetothermia)(細胞の加熱/破壊)が知られている。強磁性共鳴周波数(1〜300GHz)での電磁放射による基板の加熱は、米国特許公開US2004026028号および文献(John Moreland, et al., Rev. of Sci. Instr., Vol 71 p 3088)に示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、共鳴テクニックを用いて物体に関する情報を収集するための良好な方法およびシステムを提供することである。本発明に係る実施形態の利点は、検出または画像化を可能にするために、粒子と物体との間での反応が必要とされないことである。本発明に係る実施形態の利点は、検出が得られることである。本発明に係る実施形態の利点は、単磁区粒子の電子常磁性共鳴の検出に基づいた画像化手法を用いて、正確な画像化が得られることである。本発明に係る実施形態の利点は、単磁区粒子の電子常磁性共鳴の検出に基づいた手法を用いて、高速な画像化が得られることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の実施形態のある発明態様は、連続波またはパルスの高周波エネルギーを用いた検出のための、改善した装置または方法に関するものであり、こうしたシステムのための受信機、及び/又は、対応する方法、該方法を実行するためのソフトウエアを提供する。本発明の実施形態のある発明態様は、連続波またはパルスの高周波エネルギーを用いて、タグ及び/又は、こうした装置および方法のためのタグを活性化する方法に関する。
【0013】
上記目的は、本発明に係る方法および装置によって達成される。
【0014】
第1の発明態様は、物体に関する情報を収集する方法に関するもので、物体は、約5nm〜80nmの範囲、例えば、5nm〜80nmの範囲の直径を有する単磁区粒子を含む。該方法は、物体に、約0.1テスラ未満の、例えば、0.1テスラ未満の静磁場を印加することと、高周波(RF)エネルギーを物体に印加して、単磁区粒子の電子常磁性共鳴(EPR)を発生することと、単磁区粒子のEPRを検出することとを含む。
【0015】
本発明はまた、物体に関する情報を収集する方法に関するもので、物体は、5nm〜80nmの範囲の直径を有する単磁区粒子を含む。該方法は、物体と、0.1テスラ未満の静磁場およびある周波数のRFエネルギーとの相互作用で単磁区粒子のEPRを発生する際、単磁区粒子の電子常磁性共鳴(EPR)を検出することを含む。物体と、磁界またはRFエネルギーとの相互作用は、この方法の一部ではないが、該方法は、物体に約0.1テスラ未満の静磁場を印加することを含んでもよく、該方法はまた、ある周波数のRFエネルギーを物体に印加して、単磁区粒子の電子常磁性共鳴を発生することを含む。
【0016】
単磁区粒子のEPRを検出することは、単磁区粒子のEPRを、物体の画像の形態で検出することによって実施してもよい。こうした画像は、シングル画素の画像またはマルチ画素の画像でもよい。画像の形態で検出することは、物体のボリューム像の形態で検出することでもよい。
【0017】
物体のボリューム像の場合、2次元(2D)および3次元の画像を想定してもよい。該方法は、少なくとも2次元画像を得るために適合してもよい。
【0018】
ある実施形態において、単磁区粒子は、5nm〜100nm、例えば、約5nm〜80nm、例えば、5nm〜80nmの範囲、約5nm〜60nm、例えば、5nm〜60nmの範囲、約10nm〜30nm、例えば、5nm〜30nmの範囲、40nm〜60nm、例えば、40nm〜60nmの範囲の粒子直径を有することができる。第1態様の任意の実施形態において、単磁区粒子が都合よく単分散である方法が開示される。更なる実施形態において、単磁区粒子は超常磁性でもよい。超常磁性粒子は球体にできる。
【0019】
特定の実施形態において、単磁区粒子が酸化鉄を含む方法が開示される。特定の実施形態において、単磁区粒子は、Fe3O4(マグネタイト)を含むことができる。その直径は、5nm〜100nm、例えば、約5nm〜60nmにできる。他の実施形態において、単磁区粒子は、Fe2O3を含むことができる。その直径は、5nm〜100nm、例えば、約5nm〜80nmにできる。
【0020】
他の実施形態において、RFエネルギーが連続波として印加される方法が記載される。別の実施形態では、RFエネルギーがパルスとして、例えば、これに限定されないが、超広帯域(UWB: ultra wide bandwidth)パルスとして印加される。パルスは、サブギガUWBパルスでもよい。UWB、特にサブギガUWBパルスは、低磁場かつ低い周波数での有利な測定の可能性があり、身体(body)または走査ボリュームへの良好な信号浸透をもたらす。UWBは、アンテナからの伝送の観点で、放射信号幅が500MHzまたは中心周波数の20%の小さい方を超えるものとして定義されよう。従って、サブギガUWBパルスでは、中心周波数は1GHzより低く、信号幅は中心周波数の少なくとも20%である。使用可能なUWBパルスでの周波数の下限は、1MHzであろう。一例として、中心周波数は約300MHzでもよい。
【0021】
更なる発明態様は、物体に関する情報を収集するためのシステムに関する。物体は、5nm〜100nmの範囲、例えば、約5nm〜80nm、例えば、5nm〜80nmの範囲の直径を有する単磁区粒子を含む。該システムは、物体について、約0.1テスラ、例えば、0.1テスラ未満の静磁場を発生するようにした第1磁場発生器、例えば、こうした静磁場を物体に印加するための発生器と、物体についてRFエネルギーを、単磁区粒子の電子常磁性共鳴(EPR)を生じさせる周波数で発生するようにした第2磁場発生器、例えば、こうしたRFエネルギーを物体に印加して単磁区粒子のEPRを発生するための発生器と、単磁区粒子のEPRを物体の画像、例えば、物体のボリューム画像の形態で検出するようにした検出ユニットとを備える。
【0022】
第2態様の実施形態において、単磁区粒子は、5nm〜100nm、例えば、約5nm〜60nm、約10〜30nm、約40〜60nmの粒子直径を有することができる。第2態様の実施形態において、単磁区粒子が単分散であるシステムが開示される。更なる実施形態において、単磁区粒子は超常磁性でもよい。超常磁性粒子は球体にできる。
【0023】
特定の実施形態において、単磁区粒子が酸化鉄を含むシステムが開示される。特定の実施形態において、単磁区粒子は、Fe3O4またはマグネタイトを含むことができる。その直径は、5nm〜100nm、例えば、約5nm〜60nmにできる。
【0024】
他の実施形態において、RFエネルギーが連続波として印加されるシステムが記載される。更なる実施形態では、RFエネルギーがパルスとして、例えば、これに限定されないが、UWBパルスとして印加される。
【0025】
他の実施形態において、何れの上記実施形態で記載したようなシステムが開示され、RF周波数は約1GHz未満である。
【0026】
他の実施形態において、何れの上記実施形態で記載したようなシステムが開示され、静磁場は、約0.05テスラ未満、あるいは約0.01テスラ未満である。
【0027】
他の発明態様は、物体に関する情報を収集するための方法に関する。物体は、所定の飽和磁化または所定の縦緩和時間を有する単磁区粒子を含む。該方法は、単磁区粒子を含む物体を選択することと、物体に、約0.1テスラ未満、例えば、0.1テスラ未満の静磁場を印加することと、物体に、RFエネルギーを単磁区粒子の電子常磁性共鳴(EPR)を発生する周波数で印加することと、単磁区粒子のEPRを検出することとを含む。
【0028】
本発明はまた、物体に関する情報を収集するための方法に関する。物体は、所定の飽和磁化または所定の緩和時間を有する単磁区粒子を含む。該方法は、0.1テスラ未満の静磁場および単磁区粒子の電子常磁性共鳴(EPR)を発生する周波数でのRFエネルギーと物体との相互作用の際に、単磁区粒子の電子常磁性共鳴(EPR)を検出することを含む。磁場またはRFエネルギーと物体との相互作用が該方法の一部でなくてもよいが、該方法は、物体に約0.1テスラ未満の静磁場を印加することを含んでもよく、該方法は、RFエネルギーを単磁区粒子の電子常磁性共鳴(EPR)を発生する周波数で物体に印加することを含んでもよい。
【0029】
こうした検出は、幾つかの実施形態において単磁区粒子のEPRを画像化すること、幾つかの実施形態において物体のボリューム画像の形態で画像化することを含んでもよく、単磁区粒子を含む物体は、単磁区粒子の磁化飽和がほぼ生じない磁場で単磁区粒子が電子常磁性共鳴(EPR)を示すように選択される。第3態様の実施形態において、物体の選択は、所定の直径を持つ単磁区粒子を選択することを含む。さらに、他の実施形態において、粒子の化学組成が選択される。
【0030】
他の実施形態において、単磁区粒子の飽和磁化の約95%の最大値が得られる方法が開示される。他の実施形態において、単磁区粒子の飽和磁化の約90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%の最大値が得られる。有利な実施形態では、単磁区粒子の飽和磁化の少なくとも95%が得られる方法が開示される。他の有利な実施形態では、単磁区粒子の飽和磁化の少なくとも約90%、少なくとも約80%、少なくとも約70%、少なくとも約60%、少なくとも約50%、少なくとも約40%、少なくとも約30%、少なくとも約20%、少なくとも約10%が得られる。
【0031】
有利な一実施形態では、飽和磁化の80%と同程度、60%と同程度、40%と同程度、または20%と同程度の磁化を有する単磁区粒子について画像化が得られる方法が開示される。
【0032】
更なる実施形態において、単磁区粒子は、超常磁性でもよい。超常磁性粒子は球体にできる。
【0033】
更なる実施形態において、物体の選択は、約5nm〜100nmの範囲、例えば、5nm〜100nmの範囲、約5nm〜80nm、または約5nm〜60nmの範囲の所定の直径を持つ単磁区粒子を選択することを含む。
【0034】
特定の実施形態において、単磁区粒子が酸化鉄を含む方法が開示される。特定の実施形態において、単磁区粒子は、Fe3O4(マグネタイト)を含むことができる。その直径は、5nm〜100nm、例えば、約5nm〜60nmにできる。特定の実施形態において、単磁区粒子は、Fe2O3を含むことができる。その直径は、5nm〜100nmにできる。幾つかの実施形態において、80nmより大きい、あるいは100nmより大きい臨界(critical)単磁区粒子を有する粒子を用いてもよく、80nmより大きい、あるいは100nmより大きい粒子を用いてもよく、例えば、1μmまでのサイズを持つ粒子がより大きくてもよい。1つの例は、例えば、γ−Fe2O3粒子でもよい。
【0035】
他の実施形態において、静磁場は、約0.05テスラ未満、例えば、0.05テスラ未満、あるいは約0.01テスラ未満、例えば、0.01テスラ未満である。
【0036】
他の実施形態において、RFエネルギーが連続波として印加される方法が記載される。更なる実施形態では、RFエネルギーがパルスとして、例えば、これに限定されないが、UWBパルスとして印加される。
【0037】
他の発明態様は、物体に関する情報を収集する方法に関する。物体は、所定の直径と、所定の飽和磁化または所定の縦緩和時間を有する単磁区粒子を含む。該方法は、単磁区粒子を含む物体を選択することと、物体に、約0.1テスラ未満、例えば、0.1テスラ未満の静磁場を印加することと、物体に、RFエネルギーを単磁区粒子の電子常磁性共鳴(EPR)を発生する周波数で印加することと、単磁区粒子のEPRを検出することとを含む。
【0038】
本発明はまた、物体に関する情報を収集するための方法に関する。物体は、所定の直径と、所定の飽和磁化または所定の縦緩和時間を有する単磁区粒子を含む。該方法は、0.1テスラ未満の静磁場および単磁区粒子のEPRを発生する周波数でのRFエネルギーと物体との相互作用の際に、単磁区粒子の電子常磁性共鳴(EPR)を検出することを含む。磁場またはRFエネルギーと物体との相互作用が該方法の一部でなくてもよいが、該方法は、物体に約0.1テスラ未満の静磁場を印加することを含んでもよく、該方法は、RFエネルギーを単磁区粒子の電子常磁性共鳴(EPR)を発生する周波数で物体に印加することを含んでもよい。
【0039】
こうした検出は、幾つかの実施形態において単磁区粒子のEPRを画像化すること、幾つかの実施形態において物体のボリューム画像の形態で画像化することを含んでもよく、単磁区粒子を含む物体は、単磁区粒子が飽和磁化の少なくとも約10%、例えば、飽和磁化の少なくとも10%である磁化を示すように選択される。特定の実施形態では、単磁区粒子は、飽和磁化の少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約50%、少なくとも約80%、少なくとも約90%である粒子の磁化を示す。
【0040】
追加の特徴の何れもが共に組合せ可能であり、何れの態様も共に組合せ可能である。さらに、本発明の特定及び/又は好都合な態様は、添付の独立および従属の請求項で記述されている。従属請求項からの特徴は、適当に、請求項に明示されているものだけでなく、独立請求項の特徴および他の従属請求項の特徴と組み合わせてもよい。他の利点は、当業者に明らかとなろう。記載した実施形態の範囲から逸脱することなく多数の変形および変更が可能である。従って、この説明の形態は例示的に過ぎず、本発明の範囲を限定することは意図していないことは明確に理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】約3テスラのプロトンの磁化と比較して、約100ガウスでのFe3O4ナノ粒子の磁化のグラフを粒子直径の関数として示す。
【図2】約3テスラのプロトンの磁化と比較して、10nm(三角)および40nm(菱形)のFe3O4粒子の磁化のグラフを静磁場の関数として示す。
【図3】Fe3O4ナノ粒子の連続波EPRのグラフを示す。
【図4】約10nmのFe3O4ナノ粒子および約60nmのFe2O3ナノ粒子のEPR共鳴の一次導関数を示すグラフである。
【図5】低磁場、ν=740MHzでのヘキサン中の約10nmのFe3O4ナノ粒子のEPRのグラフと、ν=740MHzでの対応する背景信号のグラフと、低磁場、ν=480MHzでの約10nmのFe3O4ナノ粒子のEPRのグラフと、ν=480MHzでの対応する背景信号のグラフである。
【図6A】480MHzで約10nmのFe3O4についての非特異吸収を示す。
【図6B】740MHz(〜1mg Fe3O4/ml)についての非特異吸収を示す。
【図6C】480MHz(38.6mg Fe3O4/ml)で、5nmのFe3O4コアを有するリゾビスト(Resovist)についての非特異吸収を示す。
【図6D】480MHz(80mg 粒子/ml)で、ポリマーマトリクス500nm中にある10〜20nmのγ−Fe2O3コアを持つケミセル(Chemicell)からSiMAG/T−基本粒子についての非特異吸収を示す。
【図7】常磁性ナノラベルに印加されるUWBパルスを示す。
【図8】約3Tのプロトンの磁化と比較して、100ガウスで約10nm(三角)、100ガウスで40nm(菱形)、50ガウスで40nm(四角)のFe3O4粒子の磁化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明は、特定の実施形態について特定の図面を参照しながら説明するが、本発明はこれらに限定されない。記載した図面は概略的なものに過ぎず、非限定的である。図面において、幾つかの要素のサイズは、説明目的のため、誇張してスケールどおり描いていないことがある。寸法および相対寸法は、本発明の実際の実用化と対応していない。
【0043】
さらに、説明での用語「第1」「第2」などは、類似の要素を区別するための使用しており、必ずしも連続した順または時間順を記述するためではない。こうした用語は、適切な状況下で交換可能であり、本発明の実施形態は、ここで説明したり図示したものとは別の順番で動作可能であると理解すべきである。
【0044】
さらに、説明での用語「上(top)」、「下(bottom)」、「の上に(over)」、「の下に(under)」等は、説明目的で使用しており、必ずしも相対的な位置を記述するためのものでない。こうして用いた用語は、適切な状況下で交換可能であって、ここで説明した実施形態がここで説明または図示した以外の他の向きで動作可能であると理解すべきである。
【0045】
請求項で用いた用語「備える、含む(comprising)」は、それ以降に列挙された手段に限定されるものと解釈すべきでなく、他の要素またはステップを除外していない。記述した特徴、整数、ステップまたは構成要素の存在を、参照したように特定するように解釈する必要があるが、1つ又はそれ以上の他の特徴、整数、ステップまたは構成要素、あるいはこれらのグループの存在または追加を除外していない。そして「手段A,Bを備えるデバイス」という表現の範囲は、構成要素A,Bだけからなるデバイスに限定すべきでない。本開示に関して、デバイスの関連した構成要素だけがA,Bであることを意味する。
【0046】
本願の実施形態において、用語「ナノ粒子」を用いた場合、1nm〜1000nmの範囲の限界寸法、例えば、直径を有する粒子を参照している。多くの実施形態では、粒子サイズは、提示したような範囲内にさらに特定されている。
【0047】
ある実施形態は、単磁区(single domain)粒子の磁化を利用している。単磁区粒子の定義は、 http://www.irm.umn.edu/hg2m/hg2m_d/hg2m_d.html において見つけられる。
【0048】
単磁区粒子は、その単磁区範囲内で生ずる所定の材料についての最大保磁力(coercivity)を有する粒子として定義される。より大きな粒径を有する場合、粒が磁区に再分割されるにつれて、保磁力は減少する。より小さな粒径では、保磁力は再び減少するが、このとき熱エネルギーのランダム化効果に起因している。単磁区挙動の限界サイズは、飽和磁化、粒の形状など、幾つかの要因に依存する。
【0049】
単磁区粒子において、局所磁化は飽和するが、必ずしも平行でない。磁区は、原子間距離より大きく、典型的には1〜100ナノメータの範囲である。
【0050】
超常磁性粒子は、特定クラスの単磁区粒子である。粒子サイズが単磁区範囲内に減少し続けると、残留磁気(remanence)および保磁力はゼロになる。これが発生すると、粒は超常磁性になる。
【0051】
体積vの単粒子は、磁化容易軸に沿った配向した均一な磁化を有する。vが充分小さい場合、または温度が充分高い場合、熱エネルギー(kT)が、(+)と(−)の磁化状態を分離する異方性エネルギーに打ち勝って自発磁化反転を生じさせるのに充分となる。単粒子は、充分に長い縦緩和時間、例えば、検出ユニットの不感時間より長い緩和時間を有する粒子でもよい。こうした単磁区共鳴粒子の測定信号は、磁化に比例する。従って、磁化が可能な限り大きく、好都合には飽和磁化と同程度に大きいような電子常磁性共鳴(EPR)を示す化合物からなる粒子を使用することが有益である。後者により、測定信号の最大振幅を得ることが可能になる。直径は、低い静磁場で全ての粒子の最大アライメントが可能になるように選択できる。小さい静磁場は、低い共鳴周波数を意味し、よってRF磁界のより大きな侵入深さと、人体または小動物への低い熱放散を意味する。
【0052】
【数1】
【0053】
ランジュバンの常磁性理論(式1)は、静磁場、粒子の直径、単位体積に含まれる粒子の数、化合物の飽和磁化、および温度の関数として、全体磁化を与える。ランジュバン理論に基づいたシミュレーションは、Fe3O4超常磁性粒子、例えば、超常磁性ナノ粒子の磁化と、伝統的なMRIでのエコー信号に関与するプロトンの磁化との比較を可能にする。約40〜60nmの酸化鉄粒子の磁化は、室温、3テスラのプロトンの磁化より約17000倍高い。
【0054】
図1は、室温、3テスラのプロトンの磁化に対する磁化を粒子直径の関数として示す。同じ粒子直径では、電子スピンの全体アライメントが約50ガウスで少なくとも10ns、好都合には少なくとも20nsの縦緩和時間で達成される。図2は、磁化を静磁場の関数として示し、約10nmのサイズを持つ粒子(菱形)および約40nmのサイズを持つ粒子(三角)について示しており、静磁場飽和が得られている。
【0055】
本発明の実施形態において、約5nm〜80nmの範囲、例えば、5nm〜80nmの範囲の直径を有する単磁区粒子を含む物体に関する情報を収集するための方法およびシステムが提供される。
【0056】
本発明の実施形態において、システムは、物体について約0.1テスラ未満の静磁場を発生するようにした第1磁場発生器と、物体についてRFエネルギーを、単磁区粒子の電子常磁性共鳴(EPR)を発生する周波数で発生するようにした第2磁場発生器と、単磁区粒子の電子常磁性共鳴を検出するようにした検出ユニットとを備える。こうした検出ユニットは、こうした粒子の存在についての単なる検出でもよく、こうした粒子の存在または不存在を示すシングル画素イメージングとも称される。検出ユニットは、単磁区粒子の電子常磁性共鳴を画像の形態で検出するようにしてもよい。画像は、シングル画素またはマルチ画素でもよい。好都合な実施形態では、使用する検出は、単磁区粒子の電子常磁性共鳴を物体のボリューム画像の形態で検出するようにしてもよい。こうしたボリューム画像は、2次元または3次元の画像でもよい。このシステムは、イメージングシステムとも称される。
【0057】
同様に、対応する方法は、物体について、例えば、物体に印加される0.1テスラ未満の静磁場を発生するステップと、物体中の単磁区粒子の電子常磁性共鳴(EPR)を発生する周波数で、物体についてRFエネルギーを発生するステップと、単磁区粒子の電子常磁性共鳴(EPR)を物体のボリューム画像の形態で検出するステップとを含む。こうした方法は、イメージング法とも称される。本発明の実施形態にとって標準または任意の更なる特徴および利点は、例示の実施形態で例としてさらに後述している。
【0058】
本発明の実施形態において、該方法および装置は、連続波での単磁区ナノ粒子の電子常磁性共鳴(EPR)を可能にしている。単磁区粒子は、5nm〜100nmの範囲でもよく、好ましくは約5〜80nmの範囲であり、例えば、粒子の直径は5〜80nmの範囲でもよい。幾つかの実施形態では、粒子の直径は、約10nm〜30nmの範囲または約40nm〜60nmの範囲でもよい。単磁区粒子は、超常磁性でもよい。
【0059】
粒子は、好ましくは、単磁区マグネタイトFe3O4粒子などの単磁区粒子である。単磁区粒子の他の例は、ヘマタイト(hematite)であり、超常磁性であっても、そうでなくてもよい。単磁区粒子のさらに他の例は、マグヘマイト(maghemite)である。
【0060】
粒子は、好ましくは、球形で単分散であり、高い飽和磁化を可能にする結晶構造を持つ。静磁場Bの中に組み込まれた常磁性体の電子スピンは、この磁場方向と平行に整列するようになり、特定の周波数ν、ラーモア周波数を持つ磁場の周りで歳差運動をするようになる。本発明の実施形態に従って印加される静磁場は、約0.1テスラまたはそれ以下、例えば、0.1テスラまたはそれ以下、または、約0.01テスラまたはそれ以下、例えば、0.01テスラまたはそれ以下にできる。連続RF磁界が常磁性体粒子に印加され、このRF磁界の周波数がラーモア周波数と等しい場合、共鳴条件が成立し、スピンの方向は逆平行状態に反転して元に戻る。電子スピンのエネルギー状態の集団は混合し、RF磁界のパワーの吸収を生じさせる(図3)。これらの粒子の磁気共鳴は、MRIイメージングで周知の手法に基づいて検出できる。特に、本実施形態では、同軸の全身用コイル(body coil)(傾斜コイルおよびRFコイル)と磁気巻き線(例えば、外部低温シールド付)を備えた装置を使用して、連続した静磁場およびRF磁界を印加してもよい。粒子サイズの選択は、一方では、低い磁場で飽和磁化に可能な限り近い磁化および充分に長い縦緩和時間を得ようとして、より大きな粒子サイズを選択することと、他方では、極めて狭く高い振幅の共鳴信号を有するための著しく小さな粒子を選択することとの間のトレードオフであろう。
【0061】
連続波での電子常磁性共鳴(EPR)の実験から、Fe3O4についてはg=2.0624、Fe2O3についてはg=2.207のgファクタが得られている(図4)。両方の測定では、磁化を飽和させるために、9.18GHzのRF周波数と約3000ガウスの高い磁場で実施した。測定により、γ−Fe2O3(MS=380kA/m)およびα−Fe2O3(MS=2.5kA/m)と比べて、Fe3O4はより大きな飽和磁化(MS=480kA/m)を有することを確認した。Fe2O3の共鳴は、Fe3O4よりブロードである。約480MHzと約740MHzの低い周波数でEPR実験を行って、RF磁界の非特異吸収を示した(図5)。データ510は480MHzで記録したFe3O4粒子を示し、データ520は対応するバックグラウンドを示し、データ530は740MHzで記録したFe3O4粒子を示し、データ540は対応するバックグラウンドを示す。600ガウスより上で10nmのFe3O4粒子の磁化が飽和し、全ての電子スピンが静磁場に対して整列し、サンプルはRF磁界にとって透明になる。本発明の実施形態は、1GHz未満の範囲で低い周波数を使用している。
【0062】
非特異吸収は、ランジュバン理論によって理解できる。極めて低い磁場では、磁化が飽和する前は、全てのスピンは静磁場に対して整列していない。RF磁界が集団(ensemble)に加わると、静磁場に対して整列していない電子スピンの一部は、RF磁界とともに回転し、RFパワーの吸収をもたらす。磁場が高くなるほど、その割合が低くなり、非特異吸収は低くなる。この非特異吸収の上部において、静磁場に対して整列した集団の一部によって共鳴吸収が生ずる。その部分は共鳴条件下でRFパワーを吸収するようになり、減少する非特異吸収の上部にガウス形状を生じさせる。
【0063】
いろいろな直径を持つFe3O4およびγ−Fe2O3のEPR実験は、非特異吸収の典型的な挙動を示す(図6A〜図6D)。図6Aと図6Bは、480MHzと740MHzの周波数でそれぞれ測定したFe3O4の吸収パワースペクトルおよびバックグラウンド減算パワースペクトルを示す。図6Cは、480MHzの周波数で測定した、5nmのFe3O4コアを持つリゾビスト(Resovist)磁性粒子の吸収パワースペクトルおよびバックグラウンド減算パワースペクトルを示す。図6Dは、ポリマーマトリクス500nm中にある10〜20nmのγ−Fe2O3コアを持つケミセル(Chemicell)からSiMAG/T−基本粒子の吸収パワースペクトルおよびバックグラウンド減算パワースペクトルを示す。
【0064】
本発明の他の実施形態によれば、方法および装置が、パルスモードでの単磁区ナノ粒子のEPRを可能にする。単磁区ナノ粒子のEPRを行って、低い磁場で最大飽和磁化を達成する場合、プロトンの共鳴信号をベースとしたMRIの場合のように、共鳴信号の振幅はこの低い磁場で最大になり、感度も低い磁場で最大になり、より高感度を得るためにより高い静磁場を印加する必要性を排除する。
【0065】
単磁区ナノ粒子は、フリーラジカル、または酸化鉄ラベルを用いたイメージングを可能にする他の常磁性体の電子スピン共鳴(ESR)と比較して、極めて大きな磁化を有する。
【0066】
従って、本発明の第2の特定の実施形態において、超広帯域(UWB)パルスを用いた単磁区ナノ粒子のEPRを可能にする方法および装置が提供される。
【0067】
単磁区酸化鉄ナノ粒子の吸収スペクトルを図4、図5、図6a〜図6dに示すように、単磁区ナノ粒子の磁気共鳴が極めてブロードで、中心周波数の約20%より広いことが判る。
【0068】
ブロードバンド周波数スペクトルを含む超広帯域パルスをナノ粒子常磁性体に加えた場合、集団の電子スピンの全てまたはある選択部分は、静磁場に対して特定の角度αだけ同時に傾斜する。これは、方向αに集団の全体磁化を生じさせることになる。最も有利な場合、超広帯域RFパルスまたはパルスシーケンスは、静磁場に対して垂直に配向するまでスピンを反転させる。歳差運動するスピンの磁気双極子モーメント、回転磁界は、集団の磁化に比例した最大振幅を有し、伝送された超広帯域パルスの同じ周波数を有するRF磁界を誘起し、これが粒子のエコー信号である(図7)。
【0069】
図8は、100ガウスでの約10nmのFe3O4の粒子の磁化(三角)、100ガウスでの約10nmのFe3O4の粒子の磁化(三角)、100ガウスでの約40nmのFe3O4の粒子の磁化(菱形)、50ガウスでの約40nmのFe3O4の粒子の磁化(四角)を、3Tでのプロトンの磁化と比較、即ち、従来のMRIと比較して示す。UWB−MRI法の感度を従来のMRIと比較して見積もるために、広帯域ピックアップアンテナの信号対ノイズ比、SNR〜Δν*ν、を考慮に入れるべきである。また、小さな静磁場は、低い共鳴周波数と、より低いSNR比を意味する。
【0070】
広帯域信号をコイルアンテナを通じて送信する場合、特性伝達関数を考慮に入れるべきである。広帯域信号は、コイル自体によって変形するようになる。典型的には、パワースペクトルの側方でのパワーは減衰するが、周波数領域でフラットなパワースペクトルが電子スピンの全体集団またはその選択部分を同時に共鳴させるのに有利である。アンテナの入力信号は、スペクトルの側方でアンテナの反射および不整合に起因したパワー損失を補償するように整形してもよい。
【0071】
粒子の局所化(localization)および画像化は、例えば、異なる共鳴条件、例えば、磁場傾斜を備えた静磁場の変動の下でエコー信号によって得てもよい。また、局所化は、例えば、UWBレーダーを用いて得てもよい。局所化は、ラドン変換(Radon Transform)を実施するときに得てもよい。他の例では、局所化は、上述した3つの手法の組合せで実施してもよい。
【0072】
ナノ粒子の識別を、ラベルの共鳴痕跡(signature)によって実施してもよい。
【0073】
ナノ粒子の活性化が、連続RF磁界を印加、またはRFパルスシーケンスを印加することによって可能である。
【0074】
パルスのRFエネルギー発生を採用した実施形態によれば、UWBを用いた検出のための改善した装置または方法が提供され、さらに、こうしたシステムのための受信機、及び/又は、該方法を実行するための対応する方法およびソフトウエア、及び/又は、UWBパルスを使用してタグ及び/又はこうした装置および方法のためのタグを活性化する方法が提供される。
【0075】
例えば、検出システムが提供され、UWB電磁放射の一連のパルスを送信するための送信機と、パルス列のエコーパルスを識別するために、エコーパルスに付与された痕跡を識別するようにした少なくとも1つの受信機とを備え、約5〜50nmの直径を有する単磁区粒子をさらに備え、痕跡は、パルス列によって誘起された磁気共鳴を示す約5〜50nmの直径を有する単磁区粒子を示すものである。
【0076】
本実施形態の他の態様は、UWB電磁放射の一連のパルスのエコーを受信するための受信機であり、エコーパルスに付与された痕跡を識別する手段を備え、痕跡は、パルス列によって誘起された磁気共鳴を示す約5〜50nmの直径を有する単磁区粒子からの反射を示すものである。
【0077】
他の態様は、パルス列からのエコーパルスを識別し、痕跡を識別するための相関回路を有する受信機である。
【0078】
他の態様は、UWB電磁放射パルスによる照射に対する磁気共鳴応答を有する約5〜50nmの直径を有する単磁区粒子を検出するための受信機であり、約5〜50nmの直径を有する単磁区粒子と相互作用した後にパルスを検出するための検出器と、検出したパルスにおいて、約5〜50nmの直径を有する単磁区粒子の磁気共鳴応答を識別するようにした弁別器(discriminator)とを有する。
【0079】
他の態様は、磁気共鳴応答を有する材料を有するタグが付与された物品(item)を走査する方法を提供する。該方法は、物品をUWB電磁放射パルスで照射することと、約5〜50nmの直径を有する単磁区粒子と相互作用した後にパルスを検出することと、約5〜50nmの直径を有する単磁区粒子の磁気共鳴応答を識別することとを含む。こうした方法は、物体の情報を取得するための方法を採用してもよい。
【0080】
他の態様は、物品にあるタグを活性化する方法を提供するものであり、タグは、約5〜50nmの直径を有する単磁区粒子を有し、磁気共鳴応答を有する。該方法は、物品をUWB電磁放射パルスで照射することを含み、または連続波の電磁放射を印加することによって、タグの磁気共鳴応答がタグの活性化を生じさせる。パルスRFエネルギーを用いた実施形態の利点は、活性化によって熱放散を制御することが可能になることである。活性化は、細胞内標的(cellular targeting)を含むことができる。活性化の他の例は、温熱療法(hyperthermia)および熱焼灼(thermoablation)である。
【0081】
他の態様は、該システム、受信機または方法で使用されるタグを提供する。タグは、約5〜80nm、例えば、約5〜50nmの直径を有する単磁区粒子を有し、UWB放射パルスまたは連続波の電磁放射による照射に対して識別可能な磁気共鳴痕跡応答を提供する磁気共鳴応答を示すものであり、その結果、異なるタグが識別可能であり、これらの痕跡によって区別される。
【0082】
使用可能なタグの例は、MRI造影剤であり、例えば、Resovist(Schering社)、Endorem(Guerbet社)、5nmの平均直径を持つ酸化鉄コアでCarbotran(φ60nm)およびDextran(φ80−150nm)のコーティングを備える。他の例は、Ocean nanotech社酸化鉄ナノ粒子(www.oceannanotech.com)、または、reade社酸化鉄ナノ粒子(www.reade.com)である。幾つかの例では、酸化鉄コアを使用してもよく、常磁性体ラベルとして適した粒子の製作を可能にするが、これらの粒子のコーティングは、関心のある生体分子と選択的に結合するために適合している必要がある。
【0083】
例として、本発明はこれに限定されないが、EPR検出の使用及び/又は単磁区粒子を用いた画像化の例について以下に示す。
【0084】
一例では、ナノ粒子は、生物の体内、例えば、動物または人間の体での生物学的プロセスを視覚化するラベルとして機能する。視覚化は、生きた生物の体内のプロセスについて可能である。しかし、本発明はこれに限定されない。投与前、ナノ粒子はコートして(例えば、デキストランを用いて)、生体適合性にできる(例えば、これがその場合でなければ)。粒子のサイズおよびコーティングは、動物または人間の体内での最終の生体内分布を決定するようになる。粒子は、特定の組織または体液に蓄積され、ラベルの視覚化(例えば、灌流テスト、肝臓の監視)によって監視可能になる。
【0085】
さらに、コーティング上の特定の官能基が、関心のある生体分子(例えば、抗体/抗原)または薬剤との特異結合を可能にする。特別な例によれば、関心のある特定ターゲットと結合するように、プローブを表面に設けてもよい。特定ターゲットを見つけるために用いるプローブは、オリゴヌクレオチド鎖、DNA、RNAまたはPNA(部分的)、原子、分子、官能基、抗体、抗原などを含んでもよい。一例として、こうした特異結合は、投与前に生じることがある。この場合、ナノ粒子が、体内の生成物を追跡するためのラベルとして機能する。
【0086】
代替として、特異結合は、身体の特定の組織または体液にある生体分子の存在を検出するために、体内投与後に生じることがある。
【0087】
一例として、存在の検出が(シングル画素イメージングとも称される)実施可能である。結合したナノ粒子ラベルが特定の箇所に蓄積する。体内(in-vivo)検出器を、特定の組織または体液の存在、例えば、転移についてラベル経由で検出のために使用してもよい。1つの特定の例の応用は、例えば、手術の際、悪質な細胞が除去されたか否かをテストすることでもよい。
【0088】
他の例では、生体分子へのラベル結合をチェックするために、存在の検出を実施してもよい。
【0089】
更なる例では、マルチ画素イメージング、例えば、機能的イメージングまたは分子イメージング、診断および治療の監視のための体内(in-vivo)イメージングを行う。ラベリングによって生物学的プロセス、組織および体液が監視可能である。応用の特定の例は、腫瘍成長の検出または追跡や、抗体などの存在をチェックすることでもよい。
【0090】
体内(in-vivo)検出またはイメージングでは、特徴付けのためのシステムが都合よくコンパクトになるため、携帯装置として使用可能である。
【0091】
上述の説明は、本発明のある実施形態を詳細に説明する。しかしながら、前述の内容が文章中でどれぐらい詳細であっても、本発明は多くの手法で実用化できることは理解されよう。本発明のある特徴または態様を記述する場合、特定の用語の使用が、その用語がここで再定義され、用語と関連した本発明の特徴または態様の何れかの特定の特徴を含むことに限定されると意味することと理解すべきでないことに留意すべきである。
【0092】
一態様では、本発明の実施形態は、共鳴テクニックを用いて直接画像化するため、または物体に関する情報を収集するため、または上述のようなタグを識別したり活性化するための方法の少なくとも一部を実行するためのコンピュータ関連の方法、あるいは対応するコンピュータプログラム製品に関係する。こうした方法は、コンピュータシステム、例えば、汎用コンピュータで実施してもよい。コンピュータシステムは、データを受けるための入力手段を備えてもよい。システムは、データ、例えば、単磁区粒子の電子常磁性共鳴データを処理するためのデータプロセッサであっても、これを含んでもよい。
【0093】
コンピュータシステムは、プロセッサ、ROMやRAMなどを含むメモリシステム、CD−ROMやDVDドライブなどの出力システム、あるいはネットワークに情報を出力するための手段を含んでもよい。従来のコンピュータコンポーネント、例えば、キーボード、ディスプレイ、ポインティングデバイス、入出力ポートなどを含んでもよい。データ輸送は、データバスをベースとして設けてもよい。コンピュータシステムのメモリは、命令セットを含んでもよく、コンピュータシステム上で実行した場合、上述のような方法の標準ステップおよび、必要に応じて上述のような任意のステップの一部または全部の実行が得られる。従って、共鳴テクニックを用いて直接画像化するため、または物体に関する情報を収集するため、または得られた情報を相応に処理するタグを識別したり活性化するための方法の一部または全部を実行するための命令を含むコンピュータシステムは、先行技術の一部ではない。
【0094】
本発明の実施形態の更なる態様は、コンピュータ装置上で実行するための機械読み取り可能なコードを運ぶキャリア媒体に埋め込まれたコンピュータプログラム製品を包含する。コンピュータプログラム製品自体は、データキャリア、例えば、DVDまたはCD−ROMまたはメモリ装置などである。従って、実施形態の態様は、コンピュータプログラム製品、およびそれに対応する伝送信号を、ネットワーク、例えば、ローカルネットワークまたはワイドエリアネットワークなどを通じて送信することも包含する。
【0095】
本発明に係る方法の実施形態において、物体と磁界またはRFエネルギーとの間の相互作用は、該方法の一部でなくてもよい。本発明に係る方法の実施形態は、相互作用時の検出ステップだけを包含してもよい。
【0096】
上記詳細な説明は、種々の実施形態へ応用されるような本発明の新規な特徴を示し、記述し指摘したが、本発明の精神から逸脱することなく、装置またはプロセスの形式および詳細についての種々の省略、置換、変化が当業者により可能であることはと理解されよう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体に関する情報を収集するシステムであって、
物体は、約5nm〜80nmの範囲の直径を有する単磁区粒子を含むものであり、
物体について、約0.1テスラ未満の静磁場を発生するようにした第1磁場発生器と、
物体について、単磁区粒子の電子常磁性共鳴(EPR)を生じさせる周波数でRFエネルギーを発生するようにした第2磁場発生器と、
単磁区粒子の電子常磁性共鳴を検出するようにした検出ユニットとを備えるシステム。
【請求項2】
検出ユニットは、単磁区粒子の電子常磁性共鳴を、物体の画像の形態で検出するようにした請求項1記載のシステム。
【請求項3】
検出ユニットは、単磁区粒子の電子常磁性共鳴を、物体のボリューム画像の形態で検出するようにした請求項2記載のシステム。
【請求項4】
第2磁場発生器は、約1GHzより低いRF周波数でRFエネルギーを発生するようにした請求項1〜3のいずれかに記載のシステム。
【請求項5】
第1磁場発生器は、約0.05テスラ未満の静磁場を発生するようにした請求項1〜4のいずれかに記載のシステム。
【請求項6】
第2磁場発生器は、RFエネルギーをパルスとして発生するようにした請求項1〜5のいずれかに記載のシステム。
【請求項7】
第2磁場発生器は、RFエネルギーを超広帯域パルスとして発生するようにした請求項1〜6のいずれかに記載のシステム。
【請求項8】
検出ユニットは、パルスとして発生したRFエネルギーへの応答を識別するように、そして、単磁区粒子が示す電子常磁性共鳴を表す、応答に付与された痕跡を識別するようにした受信機を含む請求項6〜7のいずれかに記載のシステム。
【請求項9】
応答は、パルスとして発生したRFエネルギーまたは、単磁区粒子と相互作用した後のパルス自体に答えるエコーパルスを含む請求項1〜8のいずれかに記載のシステム。
【請求項10】
第2磁場発生器は、RFエネルギーを連続波として発生するようにした請求項1〜5のいずれかに記載のシステム。
【請求項11】
物体に関する情報を収集する方法であって、
物体は、約5nm〜80nmの範囲の直径を有する単磁区粒子を含むものであり、
物体と、0.1テスラ未満の静磁場および、単磁区粒子のEPRを生じさせる周波数のRFエネルギーとの相互作用の際、単磁区粒子の電子常磁性共鳴(EPR)を検出することを含む方法。
【請求項12】
物体について、0.1テスラ未満の静磁場を発生することと、
物体について、物体中の単磁区粒子の電子常磁性共鳴(EPR)を生じさせる周波数でRFエネルギーを発生することと、をさらに含む請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記検出は、物体の画像の形態で検出することを含む請求項11〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記検出は、物体のボリューム画像の形態で検出することを含む請求項13記載の方法。
【請求項15】
単磁区粒子は、単分散である請求項11〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
単磁区粒子は、超常磁性粒子である請求項11〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
単磁区粒子は、酸化鉄を含む請求項11〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
単磁区粒子は、マグネタイトを含む請求項11〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
RFエネルギーを発生することは、約1GHzより低いRF周波数でRFエネルギーを発生することを含む請求項11〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
静磁場を発生することは、約0.05テスラ未満の静磁場を発生することを含む請求項11〜19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
RFエネルギーを発生することは、RFエネルギーをパルスとして発生することを含む請求項11〜20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
RFエネルギーを発生することは、RFエネルギーを超広帯域パルスとして発生することを含む請求項11〜21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
電子常磁性共鳴を検出することは、パルスとして発生したRFエネルギーへの応答を識別し、そして、単磁区粒子が示す電子常磁性共鳴を表す、応答に付与された痕跡を識別することを含む請求項21〜22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
RFエネルギーを発生することは、RFエネルギーを連続波として発生することを含む請求項11〜23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
単磁区粒子は、所定の飽和磁化を有し、
静磁場は、飽和磁化の少なくとも約10%の単磁区粒子の磁化に到達するように選択される請求項11〜24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
物体に関する情報を収集する方法であって、
物体は、所定の直径および所定の飽和磁化を有する単磁区粒子を含むものであり、
物体と、0.1テスラ未満の静磁場および、単磁区粒子のEPRを生じさせる周波数のRFエネルギーとの相互作用の際、単磁区粒子の電子常磁性共鳴(EPR)を検出することを含み、
静磁場は、飽和磁化の少なくとも約10%の単磁区粒子の磁化に到達するように選択されている方法。
【請求項27】
物体に関する情報を収集する方法であって、
物体は、少なくとも所定の縦緩和時間を有する単磁区粒子を含むものであり、
物体と、0.1テスラ未満の静磁場および、単磁区粒子のEPRを生じさせる周波数のRFエネルギーとの相互作用の際、単磁区粒子の電子常磁性共鳴(EPR)を検出することを含む方法。
【請求項28】
約5〜80nmの範囲の直径を有する単磁区粒子であって、物体について印加された約0.1テスラ未満の静磁場および印加されたRFエネルギーに対する電子常磁性応答を有する単磁区粒子を検出するための受信機であり、
印加されたRFエネルギーに答える単磁区粒子の応答を検出するための検出器と、
検出した応答において、単磁区粒子の電子常磁性応答を識別するようにした弁別器とを備える受信機。
【請求項29】
コンピュータ上で実行した場合、請求項11〜27のいずれかに記載の方法のステップを実施するためのコンピュータプログラム製品。
【請求項30】
請求項29に係るコンピュータプログラム製品を含むデータキャリア。
【請求項31】
請求項29に係るコンピュータプログラム製品のネットワークでの伝送。
【請求項32】
タグが付与された物品を走査する方法であって、
請求項11〜27のいずれかに記載の、物体に関する情報を収集する方法を実施することによって、タグに関する情報を収集することを含む方法。
【請求項33】
物品にあるタグを活性化する方法であって、
タグは、約5〜80nmの範囲の直径を有する単磁区粒子を含むものであり、
物体について、0.1テスラ未満の静磁場を発生することと、
物体について、物体中の単磁区粒子の電子常磁性共鳴(EPR)を生じさせる周波数でRFエネルギーを発生し、前記電子常磁性共鳴によってタグの活性化を生じさせることと、を含む方法。
【請求項34】
請求項32〜33のいずれかに記載の方法で使用されるタグであって、
タグは、5〜80nmの範囲の直径を有する単磁区粒子を有し、RFエネルギーに対して電子常磁性共鳴痕跡応答を示すことが可能であり、
タグは、その痕跡によって識別および区別可能であるようにしたタグ。
【請求項1】
物体に関する情報を収集するシステムであって、
物体は、約5nm〜80nmの範囲の直径を有する単磁区粒子を含むものであり、
物体について、約0.1テスラ未満の静磁場を発生するようにした第1磁場発生器と、
物体について、単磁区粒子の電子常磁性共鳴(EPR)を生じさせる周波数でRFエネルギーを発生するようにした第2磁場発生器と、
単磁区粒子の電子常磁性共鳴を検出するようにした検出ユニットとを備えるシステム。
【請求項2】
検出ユニットは、単磁区粒子の電子常磁性共鳴を、物体の画像の形態で検出するようにした請求項1記載のシステム。
【請求項3】
検出ユニットは、単磁区粒子の電子常磁性共鳴を、物体のボリューム画像の形態で検出するようにした請求項2記載のシステム。
【請求項4】
第2磁場発生器は、約1GHzより低いRF周波数でRFエネルギーを発生するようにした請求項1〜3のいずれかに記載のシステム。
【請求項5】
第1磁場発生器は、約0.05テスラ未満の静磁場を発生するようにした請求項1〜4のいずれかに記載のシステム。
【請求項6】
第2磁場発生器は、RFエネルギーをパルスとして発生するようにした請求項1〜5のいずれかに記載のシステム。
【請求項7】
第2磁場発生器は、RFエネルギーを超広帯域パルスとして発生するようにした請求項1〜6のいずれかに記載のシステム。
【請求項8】
検出ユニットは、パルスとして発生したRFエネルギーへの応答を識別するように、そして、単磁区粒子が示す電子常磁性共鳴を表す、応答に付与された痕跡を識別するようにした受信機を含む請求項6〜7のいずれかに記載のシステム。
【請求項9】
応答は、パルスとして発生したRFエネルギーまたは、単磁区粒子と相互作用した後のパルス自体に答えるエコーパルスを含む請求項1〜8のいずれかに記載のシステム。
【請求項10】
第2磁場発生器は、RFエネルギーを連続波として発生するようにした請求項1〜5のいずれかに記載のシステム。
【請求項11】
物体に関する情報を収集する方法であって、
物体は、約5nm〜80nmの範囲の直径を有する単磁区粒子を含むものであり、
物体と、0.1テスラ未満の静磁場および、単磁区粒子のEPRを生じさせる周波数のRFエネルギーとの相互作用の際、単磁区粒子の電子常磁性共鳴(EPR)を検出することを含む方法。
【請求項12】
物体について、0.1テスラ未満の静磁場を発生することと、
物体について、物体中の単磁区粒子の電子常磁性共鳴(EPR)を生じさせる周波数でRFエネルギーを発生することと、をさらに含む請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記検出は、物体の画像の形態で検出することを含む請求項11〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記検出は、物体のボリューム画像の形態で検出することを含む請求項13記載の方法。
【請求項15】
単磁区粒子は、単分散である請求項11〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
単磁区粒子は、超常磁性粒子である請求項11〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
単磁区粒子は、酸化鉄を含む請求項11〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
単磁区粒子は、マグネタイトを含む請求項11〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
RFエネルギーを発生することは、約1GHzより低いRF周波数でRFエネルギーを発生することを含む請求項11〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
静磁場を発生することは、約0.05テスラ未満の静磁場を発生することを含む請求項11〜19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
RFエネルギーを発生することは、RFエネルギーをパルスとして発生することを含む請求項11〜20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
RFエネルギーを発生することは、RFエネルギーを超広帯域パルスとして発生することを含む請求項11〜21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
電子常磁性共鳴を検出することは、パルスとして発生したRFエネルギーへの応答を識別し、そして、単磁区粒子が示す電子常磁性共鳴を表す、応答に付与された痕跡を識別することを含む請求項21〜22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
RFエネルギーを発生することは、RFエネルギーを連続波として発生することを含む請求項11〜23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
単磁区粒子は、所定の飽和磁化を有し、
静磁場は、飽和磁化の少なくとも約10%の単磁区粒子の磁化に到達するように選択される請求項11〜24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
物体に関する情報を収集する方法であって、
物体は、所定の直径および所定の飽和磁化を有する単磁区粒子を含むものであり、
物体と、0.1テスラ未満の静磁場および、単磁区粒子のEPRを生じさせる周波数のRFエネルギーとの相互作用の際、単磁区粒子の電子常磁性共鳴(EPR)を検出することを含み、
静磁場は、飽和磁化の少なくとも約10%の単磁区粒子の磁化に到達するように選択されている方法。
【請求項27】
物体に関する情報を収集する方法であって、
物体は、少なくとも所定の縦緩和時間を有する単磁区粒子を含むものであり、
物体と、0.1テスラ未満の静磁場および、単磁区粒子のEPRを生じさせる周波数のRFエネルギーとの相互作用の際、単磁区粒子の電子常磁性共鳴(EPR)を検出することを含む方法。
【請求項28】
約5〜80nmの範囲の直径を有する単磁区粒子であって、物体について印加された約0.1テスラ未満の静磁場および印加されたRFエネルギーに対する電子常磁性応答を有する単磁区粒子を検出するための受信機であり、
印加されたRFエネルギーに答える単磁区粒子の応答を検出するための検出器と、
検出した応答において、単磁区粒子の電子常磁性応答を識別するようにした弁別器とを備える受信機。
【請求項29】
コンピュータ上で実行した場合、請求項11〜27のいずれかに記載の方法のステップを実施するためのコンピュータプログラム製品。
【請求項30】
請求項29に係るコンピュータプログラム製品を含むデータキャリア。
【請求項31】
請求項29に係るコンピュータプログラム製品のネットワークでの伝送。
【請求項32】
タグが付与された物品を走査する方法であって、
請求項11〜27のいずれかに記載の、物体に関する情報を収集する方法を実施することによって、タグに関する情報を収集することを含む方法。
【請求項33】
物品にあるタグを活性化する方法であって、
タグは、約5〜80nmの範囲の直径を有する単磁区粒子を含むものであり、
物体について、0.1テスラ未満の静磁場を発生することと、
物体について、物体中の単磁区粒子の電子常磁性共鳴(EPR)を生じさせる周波数でRFエネルギーを発生し、前記電子常磁性共鳴によってタグの活性化を生じさせることと、を含む方法。
【請求項34】
請求項32〜33のいずれかに記載の方法で使用されるタグであって、
タグは、5〜80nmの範囲の直径を有する単磁区粒子を有し、RFエネルギーに対して電子常磁性共鳴痕跡応答を示すことが可能であり、
タグは、その痕跡によって識別および区別可能であるようにしたタグ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7】
【図8】
【公表番号】特表2012−504231(P2012−504231A)
【公表日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−528370(P2011−528370)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【国際出願番号】PCT/EP2009/062722
【国際公開番号】WO2010/037800
【国際公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(591060898)アイメック (302)
【氏名又は名称原語表記】IMEC
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【国際出願番号】PCT/EP2009/062722
【国際公開番号】WO2010/037800
【国際公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(591060898)アイメック (302)
【氏名又は名称原語表記】IMEC
【Fターム(参考)】
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