説明

単純ヘルペスウイルス2型に対するワクチン:免疫応答を誘発する組成物および方法

単純ヘルペスウイルス−2(HSV−2)感染は、大きな健康上の懸案事項である。本開示は、特に、HSV−2に対して一定の高い効果があるワクチンおよび免疫原性組成物を提供する。抗原は、治療または予防に使用することができる。一態様では、本開示は、薬学的に許容され得るキャリア、ならびに配列番号2、3、4、および5からなる少なくとも1つのポリペプチドまたはその免疫原性断片を含み、必要に応じて、配列番号1またはその免疫原性断片をさらに含むワクチン製剤を記載する。ワクチン製剤は、上記の配列番号の1つからなる第1のポリペプチドおよび上記の配列番号の別の1つからなる第2のポリペプチドを含み得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2009年5月22日に出願された米国仮特許出願第61/180,784号、2009年8月20日に出願された米国仮特許出願第61/235,628号、2009年9月8日に出願された米国仮特許出願第61/240,587号、2009年9月8日に出願された米国仮特許出願第61/240,626号、および2010年2月18日に出願された米国仮特許出願第61/305,918号の出願日の利益を主張する。これらの米国仮特許出願の全体の教示は、本明細書中に明確に参考として援用される。
【背景技術】
【0002】
背景
単純ヘルペスウイルス2型(HSV−2)は、性器ヘルペスの主な原因である。HSV−2は、性的接触によって伝染される場合が最も多く、ウイルスの感染は、典型的には、生殖器および肛門周辺部における病変の再発性の発症をもたらすと同時に、ウイルス粒子を生殖管内に排出する。ウイルス排出は、病変または他の症状が存在しなくても起こり得る。HSV−2はまた、知覚神経節で潜伏を確立する。HSV−2感染は、感染患者に身体的不快感を与え、性的罹患を引き起こし、さらなる健康上のリスクをもたらす。具体的には、HSV−2に感染した患者は、HIVに感染するリスクが上昇し、HSV−2に感染した妊婦は、最終的にHSV−2を胎児に感染させ得る。免疫不全個体または新生児では、HSV−2感染は、致命的であり得る。現在、HSV−2感染の治癒法が存在しない。
【0003】
HSV−2感染は、蔓延しており、ある研究によると、世界人口のほぼ20%が感染していると推定される(非特許文献1)。男性よりも女性の方が多く感染し、年齢と共に罹患率が上昇する。HSV−2と診断された若者の患者数が多いことは、HSV−2感染が生涯にわたるため、人口に対する罹患率が上昇し続けることを示唆している。
【0004】
HSV−2の症状に対する処置の選択肢は限られている。ファムシクロビル、バラシクロビル、またはアシクロビルなどの化合物を用いる抗ウイルス治療は、症状の期間を限定し、場合によっては、病変の治癒を速め、ウイルス排出の発生を低減する。しかしながら、抗ウイルス薬は、治癒法ではなく、発症の再発を防止するのものでも、ウイルスを完全に除去するものでもない。加えて、抗ウイルス薬の使用では、患者がHSV−2感染の症状を認識し、確実な診断を受け、最終的に抗ウイルス療法に従う必要がある。これらの要件は、抗ウイルス薬が入手しにくい世界の地域では支持され得ない。加えて、患者は、症状が出ていないため、または初期感染の症状が鎮静したために、疾患から回復したと推測して、感染していることに気付かない場合が多い。
【0005】
HSV−2に関連した医療問題および社会問題に取り組むために、HSV−2の感染を抑制または妨げるための医薬組成物の開発が強く望まれている。有効な組成物を使用して、HSV−2に対する免疫応答を増大させて、初期感染を防止し、ウイルスが視覚神経節で潜伏を確立する能力を阻害し、発症の再発を排除し、かつ/またはウイルス排出を防止することができる。免疫系は、再感染の場合には症状が少なくて弱く、時間と共に頻度が低下することから明らかなように、HSV−2に対する防御を開始することが知られている。
【0006】
HSVワクチンの最終目標は、ウイルス感染から長期間防御することであろうが、疾患の症状の抑制も、健康に著しい恩恵をもたらすであろう。予防用または治療用ワクチンのいずれかの現在の目標の1つは、一次感染および潜伏感染による臨床症状およびウイルス排出を低減することである。予防用ワクチンの3つのカテゴリー、(i)全ウイルス、(ii)サブユニットタンパク質、および(iii)遺伝子をベースとしたサブユニットワクチン(非特許文献2)を臨床試験で試験したが不本意な結果となった。1970年代に、多数の死滅ウイルスワクチンが開発されたが、いずれも効果がなかった。近年、免疫原性の低い弱毒化HSVが見出された。2つの組換え糖タンパク質に基づいたサブユニットワクチンが、様々なアジュバント製剤と組み合わせられて臨床評価された。Chironによって開発された1つのワクチンは、トランスフェクト・チャイニーズ・ハムスター卵巣(CHO)細胞から精製されてアジュバントMF50で製剤された、HSV−2の糖タンパク質D(gD2)および糖タンパク質B(gB2)の両方の切断型を含む。Glaxo−Smithkline(GSK)によって開発された別のワクチンは、アジュバントミョウバンおよび3−O−脱アシル化モノホスホリルリピッドA(MPL)で製剤された切断型gD2を含む。両方のワクチンは、第1相/第2相試験において免疫原性であり、耐容性が良好であった。しかしながら、第3相分析では、Chironワクチンは、HSV−2セロコンバージョンに対して全体的な有効性を示さなかったため、研究が中止された。GSKワクチンは、HSV−1、HSV−2血清陰性女性ボランティアではかなりの有効性(73〜74%)を示したが、男性では全く有効性を示さなかった。
【0007】
たとえ限定されたワクチン有効性が、HSV患者には有用な効果を与えようが、これらの試験は、少数のワクチンの実現性のみを試験している。これは、ワクチンの発見が系統的ではないためである。全ウイルスワクチンの追跡は、免疫系への病原体自体の提示が最適な免疫をもたらすことを前提としている。実際、全病原体ワクチンに対する免疫応答の広さと期間は、歴史的に見てサブユニットワクチンよりも優れていた。しかしながら、ワクチン株の病原性も考慮しなければならない。サブユニットワクチンは、これまで、疾患原因および感染中の免疫原性における推定重要性に基づいてワクチン試験用に選択されてきた。これらの手法は、一部の製剤で限られた有効性を有する、HSVに対する1つの候補を同定したが、他の製剤では有効性がなかった。したがって、ヘルペス疾患を防ぐためにはヘルペスウイルスワクチン発見の新たな改善された方法論が必要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Lookerら、2008、Bulletin of the World Health Organization、October 2008、86(10)
【非特許文献2】Stanberryら、Clinical Infect.Dis.、30(3):549−566、2000
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
HSV−2の感染および伝染は、大きな健康上の懸案事項である。本開示は、特に、HSV−2に対して一定の高い効果があるワクチンを提供する。このようなワクチンは、治療用または予防用に使用することができる。本開示は、特定の抗原、およびこれらの抗原を用いてHSV−2に対する免疫応答を誘導する方法も提供する。
【0010】
一態様では、本開示は、薬学的に許容され得るキャリア、ならびに配列番号2、3、4、および5からなる少なくとも1つのポリペプチドまたはその免疫原性断片を含み、必要に応じて、配列番号1またはその免疫原性断片をさらに含むワクチン製剤を記載する。ワクチン製剤は、上記の配列番号の1つからなる第1のポリペプチドおよび上記の配列番号の別の1つからなる第2のポリペプチドを含み得る。
【0011】
本発明の別の態様は、薬学的に許容され得るキャリア、キラヤサポニンの1つ以上の精製画分を含むアジュバント、ならびに配列番号2、3、4、および5のいずれかを含む少なくとも1つのポリペプチドまたはその免疫原性断片を含み、必要に応じて、配列番号1またはその免疫原性断片をさらに含むワクチン製剤を提供する。
【0012】
本発明のさらなる態様は、薬学的に許容され得るキャリアおよび配列番号2からなるポリペプチドまたはその免疫原性断片を含むワクチン製剤を提供する。残基を、配列番号2から切断することができる。このポリペプチドは、グリコシル化しても良いし、または非グリコシル化しても良い。
【0013】
なおさらなる態様では、本発明は、薬学的に許容され得るキャリアおよび配列番号5を含むポリペプチドを含むワクチン製剤を提供し、このポリペプチドは、膜貫通ドメインの貫通残基341〜363のうちすべてまたは少なくとも8つの連続したアミノ酸残基が欠失している。したがって、本発明の一態様は、薬学的に許容され得るキャリアおよび配列番号4を含むポリペプチドを含むワクチン製剤を提供する。このポリペプチドは、グリコシル化されても良いし、または非グリコシル化されても良い。
【0014】
本発明のなお別の態様は、薬学的に許容され得るキャリアおよび配列番号5を含むポリペプチドを含むワクチン製剤を提供する。このポリペプチドは、グリコシル化されても良いし、または非グリコシル化されても良い。
【0015】
本発明のさらに別の態様は、薬学的に許容され得るキャリアおよび配列番号3を含むポリペプチドを含むワクチン製剤を提供する。このポリペプチドは、グリコシル化されても良いし、または非グリコシル化されても良い。
【0016】
一部の実施形態では、ワクチン製剤中のポリペプチドは、免疫原性キャリア、例えば、キーホールリンペットヘモシアニンにコンジュゲートしても良い。他の実施形態では、ワクチン製剤は、アジュバントをさらに含む。アジュバントは、キラヤサポニンの1つ以上の精製画分とすることができる。
【0017】
本発明は、本明細書に開示される有効量のワクチン製剤を投与することによってHSV−2に感染している、またはHSV−2に感染しやすい被験体を処置する方法を提供する。一部の実施形態では、この方法は、例えば、ヘルペス性病変の数の低減、被験体がヘルペス性病変を患う日数の低減、未感染被験体のHSV−2感染の低減、1つ以上のHSV−2抗原に対するIgG力価および/またはT細胞応答の増大、および/またはHSV−2の感染の発症時のヘルペス病変の数の低減によってHSV−2の症状を抑制する。
【0018】
別の態様では、本開示は、有効なT細胞のライブラリーをin vitroでスクリーニングしてHSV−2の完全なプロテオームからT細胞の特異的な標的抗原を同定するハイスループットのシステムの結果を記載する。この技術は、個々の抗原の同定を可能にし、予防用または治療用組成物としてin vivoで有効である可能性が高い。一態様では、本明細書では、免疫応答を誘導するタンパク質をベースとした組成物に含めることができるいくつかの重要な防御T細胞抗原を提供する。
【0019】
本発明の一態様は、配列番号1〜38の少なくとも1つのアミノ酸配列を有するポリペプチドから選択される2つ以上の単離されたポリペプチドまたはその免疫原性断片を含む医薬組成物を提供する。
【0020】
別の態様では、本発明は、薬学的に許容され得るキャリアおよび配列番号1〜38の少なくとも1つを含むポリペプチドまたはその免疫原性断片を含むワクチン製剤を提供する。ある実施形態では、ポリペプチドは、配列番号1〜38の少なくとも1つからなる。
【0021】
本発明の別の態様は、被験体における免疫応答を誘導する方法であって、配列番号1〜38の少なくとも1つのアミノ酸配列を有するポリペプチドから選択される2つ以上の単離されたポリペプチドまたはその免疫原性断片を有効量含む有効量のワクチン製剤または医薬組成物を前記被験体に投与するステップを含む、方法を提供する。
【0022】
本発明のさらに別の態様は、被験体におけるHSV−2感染の1つ以上の症状を軽減する方法であって、配列番号1〜38の少なくとも1つのアミノ酸配列を有するポリペプチドから選択される2つ以上の単離されたポリペプチドまたはその免疫原性断片を含む有効量のワクチン製剤または医薬組成物を前記被験体に投与するステップを含む、方法を提供する。一部の実施形態では、HSV−2感染の症状には、病変形成、痛み、刺激、かゆみ、発熱、倦怠感、頭痛、ウイルス排出、および前駆症状の1つ以上が含まれる。
【0023】
本発明のさらなる態様は、HSV−2感染の発現を抑制する方法であって、配列番号1〜38の少なくとも1つのアミノ酸配列を有するポリペプチドから選択される2つ以上の単離されたHSVポリペプチドまたはその免疫原性断片を含む有効量のワクチン製剤または組成物を投与するステップを含む、方法を提供する。
【0024】
本出願者らは、本発明の別の態様を開示し、この態様は、HSV−2に曝露された被験体における潜伏HSV−2感染の確立を抑制する方法であって、配列番号1〜38の少なくとも1つのアミノ酸配列を有するポリペプチドから選択される2つ以上の単離されたHSV−2ポリペプチドまたはその免疫原性断片を含む有効量のワクチン製剤または組成物を投与するステップを含む、方法を提供する。
【0025】
関連した態様では、本発明は、HSV−2に感染した被験体におけるウイルス排出を低減する方法であって、配列番号1〜38の少なくとも1つのアミノ酸配列を有するポリペプチドから選択される2つ以上の単離されたHSV−2ポリペプチドまたはその免疫原性断片を含む有効量のワクチン製剤または組成物を投与するステップを含む、方法を提供する。
【0026】
さらに、本発明の一態様は、HSV−2に感染した被験体における発症の再発を低減する方法であって、配列番号1〜38の少なくとも1つのアミノ酸配列を有するポリペプチドから選択される2つ以上の単離されたHSV−2ポリペプチドまたはその免疫原性断片を含む有効量のワクチン製剤または組成物を投与するステップを含む、方法を提供する。
【0027】
本発明のさらなる態様は、上記の任意の医薬組成物を生産する方法であって、前記2つ以上のポリペプチドを発現させるステップと、前記2つ以上のポリペプチドを単離するステップとを含む、方法を提供する。
【0028】
本出願者らは、本発明の一態様をさらに開示し、この態様は、HSV−2に感染した被験体における症状の重症度を診断する方法であって、(i)配列番号1〜38に示されているポリペプチドから選択される1つ以上の単離されたHSV−2ポリペプチドまたはその免疫原性断片でパルス処理された自己抗原提示細胞(APC)に応答したT細胞の活性化を測定するステップと、(ii)前記レベルを、頻繁に発症する感染被験体から得た基準レベルと比較するステップであって、基準レベルに対する前記応答における有意な増加が、前記被験体が、軽度の症状を有する(例えば、被験体が無症状である)ことを示す、ステップとを含む、方法を提供する。応答における有意な増加は、例えば、1.5倍以上、2倍以上、3倍以上、5倍以上、10倍以上、または実に20倍以上の増加を含み得る。
【0029】
本発明の別の態様は、HSV−2に感染した被験体における症状の重症度を診断する方法であって、(i)配列番号1〜38に示されているポリペプチドから選択される1つ以上の単離されたHSV−2ポリペプチドまたはその免疫原性断片を提示するAPCに応答した、自然感染したまたはウイルスに曝露された被験体からのT細胞の活性化を測定するステップと、(ii)前記レベルを、頻繁に発症する感染被験体から得た基準レベルと比較するステップであって、基準レベルに対する前記活性化における有意な減少が、前記被験体が、より重度の症状(例えば、頻繁な発症)を有することを示す、ステップとを含む、方法を提供する。
【0030】
本発明の別の態様は、配列番号1〜38からなるリストから選択される1つ以上の単離されたHSVポリペプチドまたはその免疫原性断片に結合する抗体を含む医薬組成物を提供する。
【0031】
さらに、本発明の異なる態様は、配列番号1〜38のいずれか1つのアミノ酸配列を有するポリペプチドから選択される2つ以上のポリペプチドまたはその免疫原性断片を、哺乳動物T細胞におけるサイトカインの産生を促進する能力について試験することによって、HSV−2に対する免疫原性組成物を同定する方法であって、免疫原性組成物が、サイトカインのレベルを、未感作哺乳動物T細胞によって産生されるサイトカインのレベルよりも有意に高いレベルに上昇させる組成物である、方法を提供する。サイトカインのレベルにおける有意な上昇は、典型的には、未感作細胞によって産生されるレベルの少なくとも1.5倍、2倍、3倍、5倍、10倍、または実に20倍の上昇である。
【0032】
本発明のなお別の態様は、被験体からのサンプルにおいてHSV−2を検出する方法であって、(i)配列番号1〜38のアミノ酸配列を有する1つ以上のポリペプチドまたはその免疫原性断片に対して産生される1つ以上の抗体に前記サンプルを接触させるステップと、(ii)サンプルからの前記1つ以上のHSV−2ポリペプチドに結合した前記1つ以上の抗体を検出するステップとを含む、方法を提供する。
【0033】
最後に、本発明の一態様は、ヌクレオチド配列番号1〜38から選択される2つ以上の単離されたポリヌクレオチドまたはその免疫原性ペプチドをコードする断片を含む医薬組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1A】図1Aおよび図1Bはそれぞれ、gD2完全長タンパク質、gD2ΔTMR、または膜貫通ドメイン(306tとして示されている)のすぐ上流で切断されたgD2での免疫化後のCD4T細胞およびCD8T細胞の応答を示すグラフである。
【図1B】図1Aおよび図1Bはそれぞれ、gD2完全長タンパク質、gD2ΔTMR、または膜貫通ドメイン(306tとして示されている)のすぐ上流で切断されたgD2での免疫化後のCD4T細胞およびCD8T細胞の応答を示すグラフである。
【図2A】図2Aおよび図2Bはそれぞれ、gL2、ICP4.1、またはRS1.1、RS1.3.1、およびRS1.3.2によってコードされるICP4断片に跨る重複ペプチドのプールでの免疫化後のCD4T細胞およびCD8T細胞の応答を示すグラフである。
【図2B】図2Aおよび図2Bはそれぞれ、gL2、ICP4.1、またはRS1.1、RS1.3.1、およびRS1.3.2によってコードされるICP4断片に跨る重複ペプチドのプールでの免疫化後のCD4T細胞およびCD8T細胞の応答を示すグラフである。
【図3A】図3Aおよび図3Bはそれぞれ、gD2ΔTMRまたはgD2ΔTMRとICP4.2での免疫化後のCD4T細胞およびCD8T細胞の応答を示すグラフである。
【図3B】図3Aおよび図3Bはそれぞれ、gD2ΔTMRまたはgD2ΔTMRとICP4.2での免疫化後のCD4T細胞およびCD8T細胞の応答を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本願は、HSV−2に対するワクチンおよび免疫原性組成物を記載する。ワクチン製剤は、表1の配列を含むポリペプチドもしくはその免疫原性断片、または表1の配列を含む少なくとも2つのポリペプチドの組み合わせもしくはその免疫原性断片を含み得る。ある実施形態では、ワクチンのポリペプチド(複数可)は、配列番号1〜26の少なくとも1つの全配列を含む、または配列番号1〜26のいずれか1つの全配列からなる。免疫原性組成物は、表1もしくは表2の配列を含むポリペプチドもしくはその免疫原性断片、または表1もしくは表2の配列を含む少なくとも2つのポリペプチドの組み合わせもしくはその免疫原性断片を含み得る。ある実施形態では、免疫原性組成物のポリペプチド(複数可)は、配列番号1〜38のいずれか1つの全配列を含む、または配列番号1〜38の全配列からなる。表1または表2におけるポリペプチドは、配列表に示されている配列番号39〜46および117〜134および/またはhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrezから公的に入手可能なcDNA配列によってコードされ得る。cDNAおよびタンパク質配列は、HG52、333、およびStrain Gを含むHSV−2の任意の既知の株からも得ることができる。したがって、cDNA配列は、NC_001798.1のゲノム配列の遺伝子名またはタンパク質名によってアクセスすることができ、NC_001798.1に開示されている配列に対して約97%保存されているであろう。本明細書に記載されるように、ポリペプチドは、タンパク質名、配列番号、および/またはタンパク質をコードするゲノム名で呼ぶことができる。
【0036】
ポリペプチドは、様々な発現系で調製することができる。適切な発現系には、大腸菌、およびバキュロウイルスを使用した発現系(例えば、昆虫細胞における)が含まれる。大腸菌を用いて調製されたポリペプチドは、典型的には、完全長であり、非グリコシル化されているが、切断型変異体も調製することができる。ある実施形態では、これらの切断型変異体は、シグナルドメインのすべてまたは一部を維持する。バキュロウイルス系を用いて調製されたポリペプチドは、典型的には、N末端シグナル配列が欠失しているが、完全または部分的にグリコシル化されている。
【0037】
【表1−1】

【0038】
【表1−2】

【0039】
【表1−3】

【0040】
【表2−1】

【0041】
【表2−2】

A.免疫原性HSV−2ポリペプチド
表1および/または表2に示されている免疫原性ポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、医薬組成物に使用することができる。本発明は、免疫原性ポリペプチドまたはこれらの免疫原性ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと共に医薬キャリアを含む医薬組成物を提供する。HSV−2に対する抗原は、HSV−2に感染した患者からの免疫細胞をスクリーニングすることによって同定することができる。簡単に述べると、HSV−2抗原のライブラリーは、細菌によって発現され、抗原提示細胞(APC)と混合された。次いで、APCが、HSV−2由来ポリペプチドをプロセシングして、HSV−2に感染したヒト患者から単離されたリンパ球に提示した。患者は、いくつかの集団:(1)HSV−2に曝露されたが感染に対して血清陰性、(2)HSV−2に感染したが無症状、(3)HSV−2に感染し、低頻度で発症する、(4)HSV−2に感染し、頻繁に発症する、(5)未感作、(6)HSV−2(HSV−2)に対して血清陰性であるが、HSV−1(HSV−1)に対しては血清反応陽性、に属した。各集団のリンパ球応答を、HSV−2由来ポリペプチドに対する反応性について比較し、スクリーニングにより、他の患者集団と比較してある患者集団でより頻繁に反応性リンパ球を誘導した抗原を検出した。感染したが無症状である患者および曝露されたが血清陰性である患者は、頻繁に発症する患者が活性化できない防御免疫応答を活性化させることができ;特に、曝露されたが血清陰性である患者は、HSV−2感染に対する殺菌免疫を開始すると推測される。ポリペプチドの固有のセットが、これらの患者集団のリンパ球を活性化すると考えられる。したがって、本発明は、感染したが無症状である患者または曝露されたが血清陰性である患者のリンパ球を活性化する特定のHSV−2ポリペプチドの組成物、またはHSV−2による感染を抑制または妨げるこれらのポリペプチドの組み合わせも企図する。
【0042】
感染したが無症状である患者または曝露されたが血清陰性である患者における免疫原性に基づいて同定された抗原は、同様に、あらゆる被験体で免疫原性であると予想される。
【0043】
一部の実施形態では、ポリペプチドは、先天性免疫応答、体液性免疫応答、または細胞性免疫応答を誘導し得る。細胞性免疫応答は、T1細胞が関与し得、ある実施形態では、T1細胞が関与する免疫応答は、T1細胞が活性化される免疫応答である。一部の実施形態では、免疫原性ポリペプチドは、T2サイトカインの誘導を回避する。一部の実施形態では、細胞性免疫応答は、T17細胞に関与し得、ある実施形態では、T17細胞が関与する免疫応答は、T17細胞が活性化される免疫応答である。
【0044】
本発明の組成物中のポリペプチド(またはその免疫原性断片)は、個体のHLAハプロタイプに関係なく、多数の個体でT細胞応答を誘導し得る。具体的には、ポリペプチド上のエピトープは、次のHLAスーパータイプ:HLA−A2、−A3、−A24、−A1、−B7、−B8、−B27、−B44、−B58、およびB62、ならびにHLA−DQB01、−DQB02、−DQB03、−DQB−04、および−DQB05の1つ以上をもつ個体でT細胞応答を誘導し得る。
【0045】
一部の実施形態では、表1および/または表2の1つ以上、例えば、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上のポリペプチド(またはその免疫原性断片)が、本発明の組成物に含められる。一部の実施形態では、表1および/または表2の2つのポリペプチドが、本発明の組成物に含められる。他の実施形態では、表1および/または表2の3つのポリペプチドが、本発明の組成物に含められる。
【0046】
一部の実施形態では、表1および/または表2の2つ、3つ、4つ、またはそれ以上のポリペプチド(またはその免疫原性断片)が、コンジュゲート体として共に提供される。一部の実施形態では、表1および/または表2の2つのポリペプチド、または表1および/または表2の3つのポリペプチドが、コンジュゲート体として提供される。一部の実施形態では、表1および/または表2の2つ、3つ、4つ、またはそれ以上のポリペプチドが、例えば、融合タンパク質として、互いに共有結合している。一部の実施形態では、一部の実施形態では、表1および/または表2の2つ、3つ、4つ、またはそれ以上のポリペプチドが、例えば、融合タンパク質として、互いに共有結合している。一部の実施形態では、表1および/または表2の2つのポリペプチド、または表1および/または表2の3つのポリペプチドが、例えば、融合タンパク質として、互いに共有結合している。
【0047】
一部の実施形態では、組成物は、配列番号1〜38からなる群から選択される2つ以上のポリペプチドを含み、任意の他のHSV−2ポリペプチドを含んでも良いし、または含まなくても良い。
【0048】
ある実施形態では、本出願者らは、表1および/または表2の遺伝子によってコードされるポリペプチドに対して少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるポリペプチド、または前記ポリペプチドの一部を提供する。ある実施形態では、相同ポリペプチドは、少なとも8、10、15、20、30、40、50、60、80、100、120、140、160、180、200、220、240、260、280、300、350、400、450、または500のアミノ酸長である。一部の実施形態では、すぐ上に記載されたポリペプチドのように、ポリペプチドは、300以下、350以下、400以下、450以下、または500以下のアミノ酸長である。
【0049】
免疫原性組成物は、前記ポリペプチドおよび遺伝子の一部、例えば、欠失突然変異体、切断突然変異体、オリゴヌクレオチド、およびペプチド断片も含み得る。一部の実施形態では、前記タンパク質の一部は、免疫原性である。
【0050】
タンパク質の一部またはその相同体の免疫原性は、完全長タンパク質の免疫原性を決定するために使用されるアッセイと同じアッセイで容易に決定することができる。一部の実施形態では、タンパク質の一部は、完全長タンパク質と実質的に同じ免疫原性を有する。一部の実施形態では、免疫原性は、完全長タンパク質の免疫原性の10%以下、20%以下、30%以下、40%以下、または50%以下である。タンパク質断片は、例えば、線形、環状、または分岐型であり得る。一部の実施形態では、タンパク質またはタンパク質断片は、1つ以上の非天然アミノ酸(例えば、天然のタンパク質で典型的に見られる20以外のアミノ酸)を含む。非天然アミノ酸は、非定型側鎖を有し得る。加えて、ペプチド模倣物を使用することもできる:これらは、ペプチド主鎖の変更を含み得る。
【0051】
本明細書に記載されるポリペプチド組成物の一部の実施形態は、免疫原性ポリペプチドの哺乳動物細胞への導入および続く細胞性免疫応答の刺激を促進するために膜輸送配列(membrane translocating sequence)(MTS)を含む免疫原性ポリペプチドを含む。例示的な膜輸送配列には、カポジ線維芽細胞成長因子のシグナル配列における疎水性領域、αシヌクレイン、βシヌクレイン、またはγシヌクレインのMTS、アンテナペディアホメオドメインの第3のへリックス、SN50、インテグリンβ3 h領域、HIV Tat、pAntp、PR−39、アバエシン(abaecin)、アピダエシン(apidaecin)、Bac5、Bac7、P.berghei CSタンパク質、ならびに米国特許第6,248,558号、同第6,432,680号、および同第6,248,558に記載されているMTSが含まれる。
【0052】
ある実施形態では、免疫原性ポリペプチドは、別の分子にコンジュゲートしている(すなわち、共有結合している)。これは、例えば、抗原の半減期、可溶性、バイオアベイラビリティ、または免疫原性を増加させ得る。免疫原性ポリペプチドにコンジュゲートし得る分子には、炭水化物、ビオチオン、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリシアル酸、N−プロピオニル化ポリシアル酸、核酸、多糖、およびPLGAが含まれる。300g/モル未満〜10,000,000g/モルを超える分子量範囲の多様なタイプのPEGが存在する。PEG鎖は、直鎖、分岐鎖、または櫛型もしくは星型の形状であり得る。
【0053】
B.ワクチンに使用される免疫原性HSV−2ポリペプチドおよび核酸
ある実施形態では、1つ以上、例えば、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上の免疫原性断片またはその変異体が、混合物に含められる。例えば、ワクチン製剤は、配列番号1〜26のいずれか1つ以上を含み得る。
【0054】
ある実施形態では、ワクチン製剤は、ICP4、ICP4.2、gL2、gD2ΔTMR、およびgD2(配列番号1〜5)のいずれか1つ、2つ、もしくは3つ、またはこれらの免疫原性断片(複数可)を含み得る。ある実施形態では、組み合わせは、ICP4(配列番号1)またはICP4.2(配列番号2)の一方のみのポリペプチドまたは免疫原性断片を含む。他の実施形態では、組み合わせは、gD2ΔTMR(配列番号4)およびgD2(配列番号5)の一方のみのポリペプチドまたは免疫原性断片を含む。
【0055】
ICP4、ICP4.2、gL2、gD2ΔTMR、およびgD2の例示的な組み合わせは、以下を含む。
【0056】
【化1】

上記の個々の抗原および組み合わせは、配列番号6〜26から選択される配列を含むポリペプチドまたはその免疫原性断片などのHSV−2の、またはHSV−2に由来する追加のペプチドも含み得る。
【0057】
1.RS1によってコードされるICP4(配列番号1)
RS1は、基本転写機構の特定の成分と相互作用してその成分をウイルスプロモータに動員し、転写開始のために構造を安定させ得る転写トランス活性化因子であるICP4をコードする。ICP4は、トランス活性化/リン酸化ドメイン(配列番号1のアミノ酸残基150〜200にほぼ跨っている)、DNA結合ドメイン(配列番号1の残基380〜540にほぼ跨っている)、核局在ドメイン(配列番号1の残基630〜730にほぼ跨っている)、および遅発制御性トランス活性化ドメイン(配列番号1の残基1220〜1319にほぼ跨っている)の異なるドメインを含む。RS1のDNA配列およびタンパク質配列は、ヒトヘルペスウイルス2完全ゲノムにおいて、公的に利用可能なデータベース、Entrez Gene(NCBI NIHのウェブサイトに掲載されている:www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez?db=gene)でのRS1の検索によって確認することができる。
【0058】
一部の実施形態では、HSV−2に対するワクチンは、ICP4(配列番号1)の1000以下のアミノ酸である、ICP4(配列番号1)の残基383〜766から選択される少なくとも20の連続したアミノ酸残基を有するポリペプチドを含む。このポリペプチドは、少なくとも20の残基の断片の変異体でも良い。
【0059】
ある実施形態では、このポリペプチドは、ICP4の950以下、900以下、850以下、800以下、750以下、700以下、650以下、600以下、550以下、500以下、450以下、または400以下の連続したアミノ酸を含む。完全長ICP4のアミノ酸残基にほぼ相当する例示的なポリペプチドは次の通りである:383〜766(RS1.2);1〜400(RS1.1);750〜1024(RS1.3.1);1008〜1319(RS1.3.2);750〜1319(RS1.3);280〜785(全DNA結合領域を含むRS1.4);680〜1319(グリコシラーゼ/C末端領域を含むRS1.5);208〜1319(N末端のMet残基も含み得るRS1.6);1〜380と545〜1319(残基381〜544にほぼ跨る領域が欠失して、DNA結合領域が除去されたRS1.7);1〜785と870〜1319(残基786〜869にほぼ跨る領域が欠失して、核局在ドメインが除去されたRS1.8)、またはICP4(配列番号1)の1〜766、383〜1318、100〜750、400〜1300、250〜766、383〜900など。
【0060】
2.RS1.2によってコードされるICP4内部断片ICP4.2(配列番号2)
RS1.2は、ICP4.2と示されるICP4の残基383〜766(またはRS1配列のヌクレオチド1150〜2398)に相当する384のアミノ酸断片をコードする。RS1.2のDNA配列およびタンパク質配列は、ヒトヘルペスウイルス2完全ゲノムにおいて、公的に利用可能なデータベース、Entrez Gene(NCBI NIHのウェブサイトに掲載されている:www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez?db=gene)でのRS1の検索によって確認することができる。
【0061】
特定の実施形態では、HSV−2に対するワクチンは、残基100〜384、200〜384、または250〜350などのICP4.2(配列番号2)の50〜全384のアミノ酸残基を有するポリペプチドを含む。一定の実施形態では、このポリペプチドは、ICP4.2(配列番号2)のすべてを含む、またはICP4.2(配列番号2)自体である。これらのポリペプチドは、例えば、本明細書に記載されているICP4.2(配列番号2)の完全長または断片を含み、ICP4(配列番号1)のアミノ酸残基1〜382もしくは767〜1318またはその断片が、ある実施形態では、使用されるICP4.2のアミノ酸残基と連続している。配列番号2の残基を配列番号1の1〜382または767〜1318の選択残基に結合する例示的な断片を上記に記載する。
【0062】
ICP4.2の免疫原性断片は、実験的に測定された、またはアルゴリズムによって同定された少なくとも1つの免疫原性部分を含む。このような方法によって同定されたペプチドは、以下を含む。
【0063】
【化2】

【0064】
【化3】

したがって、一部の態様では、本出願は、ICP4.2の免疫原性断片を提供する。これらの断片は、場合によっては、サイズが完全長ポリペプチドに近い。例えば、これらの断片は、一方または両方の末端から多くても1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、10、または20のアミノ酸が欠失し得る。他の実施形態では、断片は、100〜384のアミノ酸長、または150〜384、または200〜384、または250〜384のアミノ酸長である。他の例示的な断片は、アミノ酸残基1〜350、1〜300、1〜250、1〜200、1〜150、1〜100、1〜50、50〜384、50〜350、50〜300、50〜250、50〜200、50〜150、50〜100、100〜384、100〜350、100〜300、100〜250、100〜200、100〜150、150〜383、150〜350、150〜300、150〜250、150〜200、200〜383、200〜350、200〜300、200〜250、250〜383、250〜350、250〜300、300〜383、および350〜383である。上記の断片またはその部分断片(例えば、8〜50、8〜30、または8〜20のアミノ酸残基の断片)は、好ましくは、T細胞応答を少なくとも1.5倍または2倍に増加させるなどの、後述する生物学的活性の1つを有する。断片は、本明細書に記載されるワクチン中のポリペプチドとして使用しても良いし、または別のタンパク質、タンパク質断片、またはポリペプチドに融合させても良い。
【0065】
ある態様では、本出願は、IPC4.2に対して少なくとも90%、95%、97%、98%、99%、または99.5%の同一性を有する免疫原性ポリペプチドまたはその免疫原性断片を提供する。
【0066】
3.UL1によってコードされる糖タンパク質L−2(配列番号3)
UL1は、ウイルスと細胞膜の融合に必要であり、かつウイルスの宿主細胞への侵入を可能にするヘテロ二量体糖タンパク質である糖タンパク質L−2(gL2)をコードする。UL1のDNA配列およびタンパク質配列は、ヒトヘルペスウイルス2完全ゲノムにおいて、公的に利用可能なデータベース、Entrez Gene(NCBI NIHのウェブサイトに掲載されている:www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez?db=gene)での検索によって確認することができる。
【0067】
一部の実施形態では、HSV−2に対するワクチンは、gL2(配列番号3)の224以下のアミノ酸である、gL2(配列番号3)の残基1〜224から選択される少なくとも20の連続したアミノ酸残基を有するポリペプチドを含む。このポリペプチドは、少なくとも20の残基の断片の変異体でもあり得る。
【0068】
一部の実施形態では、このポリペプチドは、配列番号3の200〜250のアミノ酸の断片に対して少なくとも85%同一である。
【0069】
ある実施形態では、このポリペプチドは、gL2からの200以下または100以下の連続したアミノ酸を含む。例示的なポリペプチドは、gL2(配列番号3)のアミノ酸残基1〜20、21〜40、41〜60、61〜80、81〜100、101〜120、121〜140、141〜160、161〜180、181〜200、201〜221などである。
【0070】
他の態様では、本出願は、gL2の免疫原性断片を提供する。gL2の免疫原性断片は、実験的に測定された、またはアルゴリズムによって同定された少なくとも1つの免疫原性部分を含む。このような方法によって同定されたペプチドは、以下を含む。
【0071】
【化4】

【0072】
【化5】

4.US6によってコードされる糖タンパク質D−2(配列番号118)およびUS6ΔTMRによってコードされる内部欠失糖タンパク質D−2(配列番号4)
US6は、宿主細胞侵入受容体に結合して、ウイルスと宿主膜の融合を引き起こし得るエンベロープ糖タンパク質であるエンベロープ糖タンパク質D−2(gD2)をコードする。gD2タンパク質は、成熟タンパク質から切断されたシグナルドメイン(アミノ酸残基1〜25)および膜貫通ドメイン(アミノ酸残基340〜363にほぼ跨る)を含む、いくつかの異なるドメインを有する。US6のDNA配列およびタンパク質配列は、ヒトヘルペスウイルス2完全ゲノムにおいて、公的に利用可能なデータベース、Entrez Gene(NCBI NIHのウェブサイトに掲載されている:www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez?db=gene)での検索によって確認することができる。
【0073】
一部の実施形態では、HSV−2に対するワクチンは、膜貫通ドメイン(アミノ酸残基340〜363にほぼ跨り、これらの残基を含む)のすべてまたは一部およびシグナル配列が欠失しているgD2を有するポリペプチドを含む。他の実施形態では、欠失領域は、膜貫通ドメインに隣接する配列の5〜10のアミノ酸をさらに含み得る。欠失した領域は、膜貫通ドメインの一部、例えば、残基340〜363の間の少なくとも3つのアミノ酸も含み得る。一部の実施形態では、膜貫通ドメインの少なくとも1つの残基が、修飾、欠失、または置換されて、膜貫通ドメインが機能しなくなっている。例えば、変異体は、アミノ酸残基336、337、338、339、340、341、342、343、344、345、または346で始まり、アミノ酸残基358、359、360、361、362、363、364、365、366、367、または368で終わる内部欠失を有し得る。
【0074】
アミノ酸残基341〜363(膜貫通ドメイン)が欠失しているgD2をコードする構築物は、US6ΔTMR(配列番号40)と呼ばれる。対応するタンパク質は、gD2ΔTMR(配列番号4)と呼ばれる。他の実施形態では、gD2またはgD2ΔTMRの免疫原性断片は、膜貫通ドメインの一部における欠失を含み得、かつ/または膜貫通ドメインの外部の隣接配列における欠失を含み得る。
【0075】
他の態様では、本出願は、gD2またはgD2ΔTMRの免疫原性断片を提供する。gD2またはgD2ΔTMRの免疫原性断片は、実験的に測定された、またはアルゴリズムによって同定された少なくとも1つの免疫原性部分を含む。このような方法によって同定されたペプチドは、以下を含む。
【0076】
【化6】

【0077】
【化7】

したがって、一部の態様では、本出願は、gD2(配列番号5)またはgD2ΔTMR(配列番号4)の免疫原性断片を提供する。断片は、場合によっては、サイズが完全長ポリペプチドに近い。例えば、これらの断片は、一方または両方の末端から多くても1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、10、または20のアミノ酸が欠失し得る。他の実施形態では、断片は、100〜384のアミノ酸長、または150〜384、または200〜384、または250〜384のアミノ酸長である。他の例示的な断片は、アミノ酸残基1〜350、1〜300、1〜250、1〜200、1〜150、1〜100、1〜50、50〜384、50〜350、50〜300、50〜250、50〜200、50〜150、50〜100、100〜384、100〜350、100〜300、100〜250、100〜200、100〜150、150〜383、150〜350、150〜300、150〜250、150〜200、200〜383、200〜350、200〜300、200〜250、250〜383、250〜350、250〜300、300〜383、および350〜383である。上記の断片またはその部分断片(例えば、8〜50、8〜30、または8〜20のアミノ酸残基の断片)は、好ましくは、T細胞応答を少なくとも1.5倍または2倍に増加させるなどの、後述する生物学的活性の1つを有する。断片は、本明細書に記載されるワクチン中のポリペプチドとして使用しても良いし、または別のタンパク質、タンパク質断片、またはポリペプチドに融合させても良い。
【0078】
他の実施形態では、ポリペプチドは、配列番号4または配列番号5の全配列を含む、または配列番号4または配列番号5の全配列からなる。ある実施形態では、gD2の免疫原性断片は、シグナルドメイン(アミノ酸残基1〜25)のすべてもしくは一部および/または膜貫通ドメイン(アミノ酸残基339〜363)を維持している。
【0079】
ある実施形態では、ポリペプチドは、ヒト自己抗原に対して20%未満、30%未満、40%未満、50%未満、60%未満、または70%未満の相同性を有する。このような自己抗原の例には、HSV−1からのUL6またはHSV−2からのgKまたはUL53が含まれる。
【0080】
ある態様では、本出願は、gDΔTMRに対して少なくとも90%、95%、97%、98%、99%、または99.5%の同一性を有する免疫原性ポリペプチドまたはその免疫原性断片を提供する。
【0081】
C.HSV−2ポリペプチドの追加の特色
典型的には、本明細書に記載されるワクチン製剤または医薬組成物中に存在するポリペプチドは、単独で、または変異体として免疫原性であり、この変異体は、別のポリペプチドに融合したポリペプチド、またはアジュバントと混合されたもしくは複合体を形成したポリペプチドを含む。変異体は、本明細書に記載されているように、配列同一性が100%未満の配列も含む。加えて、適切な免疫原性を有する断片、前駆体、および類似体を使用しても良い。
【0082】
これらのポリペプチドは、哺乳動物、例えば、マウス、モルモット、またはヒトで免疫原性であり得る。免疫原性ポリペプチドは、典型的には、アッセイで、または被験体で有意な免疫応答を引き起こすことができるポリペプチドである。別法では、免疫原性ポリペプチドは、(i)抗体、例えば、ポリペプチドに結合する中和抗体の産生を誘導し得る、(ii)T1免疫を誘導し得る、(iii)例えば、CD8+T細胞の増加および/またはCD8+T細胞の感染または再感染部位への局在の増加によってCD8+CTL応答を活性化させ得る、(iv)T17免疫を誘導し得る、かつ/または(v)先天性免疫を活性化させ得る。一部の実施形態では、免疫原性ポリペプチドは、その抗原に特異的な抗体の検出可能な量の産生をもたらす。
【0083】
ある実施形態では、ポリペプチドは、ヒト自己抗原に対して20%未満、30%未満、40%未満、50%未満、60%未満、または70%未満の相同性を有する。
【0084】
ポリペプチドは、1つ以上の免疫原性部分および1つ以上の非免疫原性部分を含み得る。免疫原性部分は、タンパク質マイクロアレイ、ELISPOT/ELISA技術、および/またはこのポリペプチドの様々な欠失変異体(例えば、断片)に対する特有のアッセイを含め、様々な方法によって同定することができる。免疫原性部分は、コンピュータアルゴリズムによって同定することもできる。EpiMatrix(EpiVaxが開発)のような一部のこのようなアルゴリズムは、計算マトリックス手法を使用する。抗原エピトープを同定するための他の計算ツールには、PEPVAC(Dana Farber Cancer Instituteのウェブサイト:immunax.dfci.harvard.edu/PEPVACに掲載されているPromiscuous EPitope−based VACcine)、MHCPred(部分最小二乗法を使用し、ワールド・ワイド・ウェブ:www.jenner.ac.uk/MHCPredのThe Jenner Instituteに掲載されている)、およびウェブサイト:www.syfpeithi.de/に掲載されているSyfpeithiが含まれる。
【0085】
一部の実施形態では、ワクチンまたは医薬組成物は、融合タンパク質および/または融合DNA構築物を含み得る。上記の基本的なDNA配列は、タンパク質産物の配列に影響を与えないように改変され得る。例えば、DNA配列は、コドンを最適化して、大腸菌などの宿主、昆虫細胞系(例えば、バキュロウイルス発現系を使用)、または哺乳動物(チャイニーズハムスター卵巣)細胞系での発現を改善することができる。一定の実施形態では、約5,000ダルトン未満、例えば、1,500〜5,000ダルトンの分子量を有するポリペプチドなどを含む、低分子量の関連ポリペプチドが使用される場合は、改変が、望ましい免疫応答を誘導するのに有用であり得る。例えば、低分子量ポリペプチドは、他の病原体またはウイルス(例えば、破傷風トキシド)からのタンパク質、または高分子量タンパク質(例えば、キーホールリンペットヘモシアニン)などの適切な免疫原性キャリアにコンジュゲートし得る。コンジュゲートは、直接でも良いし、または間接的(例えば、リンカーを介して)でも良い。他の一定の実施形態では、融合タンパク質は、上記のポリペプチドまたはその免疫原性断片もしくは変異体およびタグを含み得る。タグは、N末端またはC末端とすることができる。例えば、タグは、核酸またはポリペプチドに付加して、精製、検出、可溶性を促進することができる、またはタンパク質もしくは核酸に対する他の望ましい特徴を付与することができる。例えば、精製タグは、親和性精製に使用できるペプチド、オリゴペプチド、またはポリペプチドとすることができる。例として、His、GST、TAP、FLAG、myc、HA、MBP、VSV−G、チオレドキシン、V5、アビジン、ストレプトアビジン、BCCP、カルモジュリン、Nus、Sタグ、リポタンパク質D、およびβガラクトシダーゼが挙げられる。一部の実施形態では、融合タンパク質は短鎖である。したがって、場合によっては、融合タンパク質は、上記のポリペプチドの一方または両方の末端に、表1のいずれかのポリペプチドの連続したアミノ酸などの1つ以下、2つ以下、3つ以下、4つ以下、5つ以下、10以下、20以下、または50以下の追加のアミノ酸を含む。
【0086】
一部の実施形態では、タグ、分泌シグナル、または他のシグナル配列を、ポリペプチドのC末端および/またはN末端に付加することができる。タグは、発現ポリペプチドの精製を容易にするために使用することができる。例示的なタグには、HHHHHH(配列番号130)およびMSYYHHHHHH(配列番号131)が含まれる。分泌シグナルは、昆虫細胞などの非哺乳動物細胞に使用するために最適化することができる。例示的な分泌シグナルは、MKFLVNVALVFMVVYISYIYA(配列番号132)である。
【0087】
検出タグを使用して、タグを検出し、続いてタグに融合したあらゆるアミノ酸配列を検出することができる。検出タグには、蛍光タンパク質、蛍光標識に結合するタンパク質、および高電子密度部分に結合するタンパク質が含まれる。蛍光タンパク質の例には、dsRed、mRFP、YFP、GFP、CFP、BFP、およびVenusが含まれる。蛍光標識または高電子密度標識に結合するタンパク質の一例として、FlAsHが挙げられる。
【0088】
本明細書に開示される別の態様は、本発明の組成物(例えば、表1に列記された1つ以上または2つ以上のポリペプチドを含む組成物)に対して生産される抗体調製物である。様々なあらゆる抗体が含まれる。このような抗体の例には、例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、組換え抗体、ヒト化または部分ヒト化抗体、1本鎖抗体、Fab抗体、およびこれらの断片などが含まれる。抗体は、あらゆるアイソタイプ、例えば、IgA、IgG、様々なIgGアイソタイプ、例えば、IgG、IgG、IgG2a、IgG2b、IgG、IgGなどであり;抗体は、ヤギ、ウサギ、マウス、またはニワトリなどを含む、抗体を産生する任意の動物種に由来し得る。一部の実施形態では、Fab分子は、大腸菌のような遺伝的に形質転換された宿主で発現され、構築される。したがって、λベクター系を、前駆抗体を産生する対象と同等またはそれ以上の潜在的多様性をもつFab’sの集団を発現させるために利用可能である。Huseら、(1989)、Science 246、1275−81を参照されたい。
【0089】
D.ワクチンおよび医薬組成物の成分
ある実施形態では、ワクチンおよび医薬組成物は、上記の1つ以上のポリペプチドおよび核酸、ならびに次の1つ以上:アジュバント、安定剤、緩衝剤、界面活性剤、徐放成分、塩、保存剤、および前記抗原に特異的な抗体を含む。
【0090】
1.アジュバント
上記のワクチン製剤および医薬組成物はそれぞれ、アジュバントを含み得る。アジュバントは、作用の主な機序に基づいて2つのクラス:ワクチン送達系および免疫賦活性アジュバント(例えば、Singhら、Curr.HIV Res.、1:309−20、2003を参照されたい)に大きく分類される。ワクチン送達系は、粒子状製剤、例えば、エマルジョン、微粒子、粒子および/またはマトリックスなどであり得る免疫刺激複合体(ISCOM)、およびリポソームの場合が多い。対照的に、免疫賦活性アジュバントは、時には病原体に由来し、先天性免疫系の細胞を活性化させる病原体関連分子パターン(PAMP)、例えば、リポ多糖(LPS)、モノホスホリルリピッド(MPL)、またはCpG含有DNAであり得る。
【0091】
別法では、アジュバントは、有機および無機として分類することができる。無機アジュバントには、ヒトワクチンに一般に使用されるミョウバン塩、例えば、リン酸アルミニウム、水酸化リン酸非晶質アルミニウム硫酸塩(amorphous aluminum hydroxyphosphate sulfate)、および水酸化アルミニウムが含まれる。有機アジュバントには、巨大分子を含む有機分子が含まれる。有機アジュバントの一例には、コレラ毒素が挙げられる。
【0092】
アジュバントは、アジュバントが誘導する応答によっても分類することができ、アジュバントは、2つ以上のタイプの応答を活性化することができる。一部の実施形態では、アジュバントは、CD4+T細胞の活性化を誘導する。アジュバントは、T1細胞の活性化および/またはT17細胞の活性化および/またはT2細胞の活性化を誘導し得る。別法では、アジュバントは、T1細胞および/またはT17細胞の活性化を誘導し得るが、T2細胞の活性化を誘導し得ない、またはこの逆である。一部の実施形態では、アジュバントは、CD8+T細胞の活性化を誘導する。さらなる実施形態では、アジュバントは、ナチュラルキラーT(NKT)細胞の活性化を誘導し得る。一部の実施形態では、アジュバントは、T1細胞、T17細胞、またはT2細胞の活性化を誘導する。他の実施形態では、アジュバントは、B細胞の活性化を誘導する。さらに他の実施形態では、アジュバントは、抗原提示細胞の活性化を誘導する。これらの区分は、相互に排他的ではなく;場合によっては、アジュバントは、2つ以上のタイプの細胞を活性化する。
【0093】
ある実施形態では、アジュバントは、樹状細胞などの抗原提示細胞の数または活性を増大させる物質である。ある実施形態では、アジュバントは、樹状細胞などの抗原提示細胞の成熟を促進する。一部の実施形態では、アジュバントは、サポニンであるか、またはサポニンを含む。典型的には、サポニンは、トリテルペングリコシド、例えば、キラヤ樹の樹皮から単離されたトリテルペングリコシドである。生物学的起源からのサポニン抽出物は、さらに分画して(例えば、クロマトグラフィーによって)、最適なアジュバント活性および許容され得る毒性をもつ抽出物の部分を単離することができる。アジュバントとして使用されるキラヤ樹からの抽出物の典型的な画分は、画分Aおよび画分Cとして知られている。例示的なサポニンアジュバントは、Antigenicsから入手可能なQS−21である。QS−21は、オリゴ糖接合小分子である。必要に応じて、QS−21は、3D−MPLまたはコレステロールなどの脂質と混合することができる。
【0094】
本明細書に記載されるワクチン製剤に使用できるサポニンの特定の形態は、免疫刺激複合体(ISCOM)である。ISCOMは、一般にQuillajaサポニン画分および脂質(例えば、コレステロールおよびリン脂質、例えば、ホスファチジルコリンなど)を含む、当技術分野で知られているアジュバントのクラスである。ある実施形態では、ISCOMは、目的のポリペプチドまたは核酸と一緒に構築される。しかしながら、様々なサポニン画分を、様々な割合で使用することができる。加えて、様々なサポニン画分は、同じ粒子内に一緒に存在するか、または1つの粒子に実質的に1つの画分のみを有し得る(画分Aと画分Cの指定された割合が、様々な割合で粒子を互いに混合することによって達成されるように)。この文脈では、「実質的に」は、20%未満、15%未満、10%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、または1%未満さえも指す。このようなアジュバントは、70〜95A:30〜5C、例えば、70A:30C〜75A:5C、75A:5C〜80A:20C、80A:20C〜85A:15C、85A:15C〜90A:10C、90A:10C〜95A:5C、または95A:5C〜99A:1Cなどの割合に混合された画分Aおよび画分Cを含み得る。CSLが生産するISCOMマトリックス、ならびにIsconovaが生産するAbISCO100および300は、典型的には直径が40〜50nmのケージ状構造をなす、サポニン、コレステロール、およびリン脂質(細胞膜からの脂質)を含むISCOMマトリックスである。Nordic Vaccinesが生産するPosintroは、多種多様な機序、例えば、電荷の変更による静電相互作用、キレート化基の取り込み、または直接結合によって免疫原が粒子に結合されているISCOMマトリックスである。
【0095】
一部の実施形態では、アジュバントは、TLRリガンドである。TLRは、白血球膜で見られるタンパク質であり、外来抗原(微生物抗原を含む)を認識する。例示的なTLRリガンドは、Interecellから入手可能なIC−31である。IC31は、抗微生物ペプチド、KLK、および免疫賦活性オリゴデオキシヌクレオチド、ODN1aを含む。IC31は、TLR9アゴニスト活性を有する。別の例として、CpG含有DNAが挙げられ、多種多様なCpG含有DNAは、Prizer(Coley)から入手可能であり:VaxImmuneは、CpG7909((CpG)含有オリゴデオキシヌクレオチド)であり、Actilonは、TLR9アゴニスト、CpG10101((CpG)含有オリゴデオキシヌクレオチド)である。
【0096】
一部の実施形態では、アジュバントは、ナノエマルジョンである。1つの例示的なナノエマルジョンは、Nanobioが生産するNanostat Vaccineである。このナノエマルジョンは、高エネルギー水中油型エマルジョンである。このナノエマルジョンは、典型的には、150〜400ナノメートルのサイズであり、安定性を与える界面活性剤を含む。Nanostatについてのさらなる情報は、米国特許第6,015,832号、同第6,506,803号、同第6,559,189号、同第6,635,676号、および同第7,314,624号に記載されている。
【0097】
アジュバントは、抗原(例えば、上記のポリペプチド)に共有結合し得る。一部の実施形態では、アジュバントは、抗原提示細胞(APC)の活性化によって炎症応答を誘導するタンパク質であり得る。一部の実施形態では、1つ以上のこれらのタンパク質は、最適な抗原と組換え技術で融合させることができ、得られる融合分子は、樹状細胞の成熟を促進し、樹状細胞を活性化させてサイトカインおよびケモカインを産生させ、最終的に、T細胞への抗原の提示およびT細胞の応答の開始を促進する(Wuら、Cancer Res、2005;65(11)、pp4947−4954を参照されたい)。抗原に共有結合し得る他の例示的なアジュバントには、多糖、合成ペプチド、リポペプチド、および核酸が含まれ得る。
【0098】
アジュバントは、単独で使用しても、または2種類以上組み合わせて使用しても良い。アジュバントは、抗原に直接コンジュゲートし得る。アジュバントを組み合わせて、抗原に対する免疫応答を増大させることもできる。典型的には、同じアジュバントまたはアジュバントの混合物が、ワクチンの各用量中に存在する。しかしながら、必要に応じて、アジュバントは、ワクチンの最初の投与量に含めて投与しても良いが、続く投与量(すなわち、追加免疫)には含めない。別法では、強いアジュバントを、ワクチンの最初の投与量に含めて投与しても良く、弱いアジュバントまたは低用量の強いアジュバントを、次の投与量にも含めて投与しても良い。アジュバントは、抗原の投与の前、抗原の投与と同時、または抗原の投与の後(ある時は、1時間、2時間、6時間、または12時間以内、別のときは、1日、2日、または5日以内)に被験体に投与することができる。あるアジュバントは、ヒト患者、非ヒト患者、または両方に適している。
【0099】
2.ワクチンおよび医薬組成物の追加の成分
本明細書に記載される抗原およびアジュバントに加えて、ワクチン製剤または医薬組成物は、1つ以上の追加の成分を含み得る。
【0100】
ある実施形態では、ワクチン製剤または医薬組成物は、1つ以上の安定剤、例えば、糖(例えば、スクロース、グルコース、またはフルクトース)、リン酸塩(例えば、第2リン酸ナトリウム、第1リン酸カリウム、第2リン酸カリウム、または第1ナトリウムリン酸塩)、グルタミン酸塩(例えば、L−グルタミン酸一ナトリウム)、ゼラチン(例えば、処理ゼラチン、加水分解ゼラチン、またはブタゼラチン)、アミノ酸(例えば、アルギニン、アスパラギン、ヒスチジン、L−ヒスチジン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、リシン、フェニルアラニン、チロシン、およびこれらのアルキルエステル)、イノシン、またはホウ酸ナトリウムを含み得る。
【0101】
ある実施形態では、ワクチン製剤または医薬組成物は、1つ以上の緩衝剤、例えば、重炭酸ナトリウムとアスコルビン酸との混合物などを含む。一部の実施形態では、ワクチン製剤は、生理食塩水、例えば、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、または蒸留水に溶解して投与しても良い。
【0102】
ある実施形態では、ワクチン製剤または医薬組成物は、1つ以上の界面活性剤、例えば、ポリソルベート80(Tween80)、TritonX−100、ポリエチレングリコール−tert−オクチルフェニルエーテル−t−オクチルフェノキシポリエトキシエタノール4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル−ポリエチレングリコール(TRITON X−100);ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートポリエチレングリコールソルビタンモノラウレート(TWEEN20);ならびにホルムアルデヒドおよびオキシランを伴う4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールポリマー(TYLOXAPOL)を含む。界面活性剤は、イオン性または非イオン性であり得る。
【0103】
ある実施形態では、ワクチン製剤または医薬組成物は、1つ以上の塩、例えば、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム、塩化カルシウム、または塩化カリウムを含む。
【0104】
ある実施形態では、保存剤がワクチンに含められる。他の実施形態では、保存剤は使用されない。保存剤は、複数回投与ワクチンバイアルで最も良く使用され、単回投与ワクチンバイアルではそれほど使用されない。ある実施形態では、保存剤は、2−フェノキシエタノール、メチルおよびプロピルパラベン、ベンジルアルコール、および/またはソルビン酸である。
【0105】
ある実施形態では、ワクチン製剤または医薬組成物は徐放製剤である。
【0106】
E.DNAワクチン
ある態様では、ワクチンは、本明細書に開示される核酸の1つを含む。核酸ワクチンが患者に投与されると、対応する遺伝子産物(例えば、望ましい抗原)が患者の体内で生産される。一部の実施形態では、最適化された組換えポリヌクレオチドを含む核酸ワクチンベクターを哺乳動物(ヒトを含む)に送達して、治療または予防免疫応答を誘導することができる。核酸は、例えば、DNA、RNA、または合成核酸でも良い。核酸は、1本鎖でも2本鎖でも良い。
【0107】
核酸ワクチンベクター(例えば、アデノウイルス、リポソーム、パピローマウイルス、レトロウイルスなど)を、in vivoでの細胞の形質導入のために哺乳動物に直接投与することができる。核酸ワクチンは、非経口投与を含む任意の適切な方式で投与するために医薬組成物として製剤することができる。
【0108】
感染または他の症状の処置または予防で投与されるベクターの有効量の決定では、医師は、ベクターの毒性、疾患の進行度、および抗ベクター抗体の産生(存在する場合)を評価する。多くの場合、ベクターからの裸核酸に等しい用量は、典型的な70kgの患者では、約1μg〜1mgであり、核酸を送達するために使用されるベクターの用量は、等量の治療用核酸が産生されるように計算する。投与は、単回投与または分割投与によって達成することができる。核酸ワクチンベクターの毒性および治療効果は、細胞培養または実験動物での標準薬学手順で決定することができる。
【0109】
核酸ワクチンは、DNA、RNA、改変核酸、またはこれらの組み合わせを含み得る。一部の実施形態では、ワクチンは、1つ以上のクローニングベクターまたは発現ベクター含む;例えば、ワクチンは、それぞれが哺乳動物細胞でヌクレオチドコード領域を自律発現して少なくとも1つの免疫原性ポリペプチドを産生できる複数の発現ベクターを含み得る。発現ベクターは、真核生物プロモーター配列、例えば、1つ以上のコード領域に機能的に連結された強い真核生物プロモーターのヌクレオチド配列などを含む場合が多い。本明細書に記載される組成物および方法は、任意の特定の真核生物プロモーターの使用を伴うこともあり得、CMVまたはRSVプロモーターなどの多種多様なプロモーターが周知である。プロモーターは、宿主細胞に対して異種性であるのが良いが、必ずしも異種性である必要はない。使用されるプロモーターは、構成的プロモーターとすることができる。
【0110】
本組成物および本方法に有用なベクターは、環状または線形、1本鎖または2本鎖とすることができ、プラスミド、コスミド、またはエピソームとすることができる。適切な実施形態では、各ヌクレオチドコード領域は、別個のベクター上にある;しかしながら、1つ以上のコード領域が1つのベクター上に存在することができ、これらのコード領域を、1つまたは複数のプロモーターの制御下とすることができることを理解されたい。
【0111】
多数のプラスミドを、核酸ワクチンの生産に使用することができる。核酸ワクチンの適切な実施形態は、プラスミドVR1012(Vical Inc.、San Diego Calif.)、pCMVI.UBF3/2(S.Johnston、University of Texas)、またはpcDNA3.1(InVitrogen Corporation、Carlsbad,Calif.)をベクターとして用いる構築物を利用する。加えて、ベクター構築物は、動物の免疫系を刺激する、非メチル化dCpGモチーフなどの免疫賦活性配列(ISS)を含み得る。核酸ワクチンは、免疫原性ポリペプチドを含む融合産物もコードし得る。プラスミドDNAは、送達システムとして弱毒化細菌を用いて送達することもでき、これは、経口投与されるDNAワクチンに適した方法である。細菌を、自己複製プラスミドで形質転換し、自己複製プラスミドが、宿主細胞で弱毒化細菌が死んだ後で宿主細胞の細胞質内に放出される。
【0112】
核酸を動物に送達する別の手法では、ウイルスベクターまたは細菌ベクターを使用する。適切なウイルスベクターの例には、アデノウイルス、ポリオウイルス、ポックスウイルス、例えば、αウイルス、ワクシニア、カナリア痘、および鶏痘、ナマズ・ヘルペス・ウイルスを含むヘルペスウイルス、アデノウイルス関連ベクター、およびレトロウイルスが含まれる。ウイルス様ベクターには、ビロゾームおよびウイルス様粒子が含まれる。例示的な細菌ベクターには、弱毒型のサルモネラ菌、赤痢菌、Edwardsiella ictaluri、Yersinia ruckerii、およびListeria monocytogeneが含まれる。一部の実施形態では、核酸は、免疫原性ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を自己発現できるプラスミドなどのベクターである。
【0113】
F.ワクチンの使用
本明細書に記載されるワクチンは、HSV−1および特にHSV−2を含むヘルペスの予防および/または治療処置に使用することができる。ワクチン接種を受ける被験体は、男性でも女性でも良く、子供でも成人でも良い。一部の実施形態では、処置される被験体はヒトである。他の実施形態では、被験体は、非ヒト動物である。
【0114】
1.予防的使用
予防の実施形態では、HSV−2ワクチンを、HSV−2の確立の防止に役立ち得る免疫応答を誘導するために被験体に投与する。
【0115】
一部の実施形態では、本発明のワクチン組成物は、防御免疫を付与し、ワクチン接種をされた個体が、その個体のワクチンへの曝露の結果として(例えば、メモリー応答)、症状の発現を遅らせる、または症状の重症度を軽減することができる(例えば、感染の発現時の病変の数を減少させる)。ある実施形態では、症状の重症度の軽減は、少なくとも25%、40%、50%、60%、70%、80%、または実に90%である。ワクチン接種をされた一部の個体は、HSV−2との接触時に症状を全く示さない、またはHSV−2の感染さえも示さないこともあり得る。防御免疫は、典型的には、次の1つ以上の機序:粘膜免疫、体液性免疫、または細胞性免疫によって達成される。粘膜免疫は主に、気道、胃腸管、および泌尿生殖器の粘膜表面におけるIgA(sIGA)抗体の分泌の結果である。sIGA抗体は、抗原処理細胞、BおよびTリンパ球によって媒介される一連の事象の後に産生され、体の粘膜に覆われた組織におけるBリンパ球によるsIGAの産生がもたらされる。体液性免疫は、典型的には、血清中のIgG抗体およびIgM抗体の結果である。例えば、IgG力価は、本明細書に記載されるワクチン製剤の投与後に1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、20倍、50倍、または実に100倍以上まで上昇し得る。細胞性免疫は、細胞障害性Tリンパ球によって、またはマクロファージおよびTリンパ球が関与する遅延型過感受性によって達成され得る他、抗体を必要としないT細胞が関与する他の機序によっても達成され得る。具体的には、細胞性免疫は、T1細胞またはT17細胞によって活性化され得る。T1細胞の活性化は、免疫応答を引き起こさないポリペプチドに応答して放出されるIFN−γのレベルに対するIFN−γの分泌によって測定することができる。ある実施形態では、放出されるIFN−γの量は、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、20倍、50倍、または実に100倍以上である。防御免疫の主な結果は、HSV−2ウイルス粒子の破壊またはHSV−2の複製能力の阻害である。一部の実施形態では、HSV−2への曝露前の抗原提示によって付与される防御免疫は、HSV−2陽性状態へのセロコンバージョンの可能性を低減する。
【0116】
防御免疫の期間は、可能な限り長いのが好ましい。ある実施形態では、ワクチン製剤は、6ヶ月、1年、2年、5年、10年、20年、または実に一生涯続く防御免疫を確立する。
【0117】
2.治療での使用
治療への適用では、本発明のポリペプチドまたは核酸を含むワクチンを、HSV−2に罹患している患者に患者の処置に十分な量投与することができる。患者の処置は、この場合、感染した個体におけるHSV−2の症状を遅延させる、または軽減することが該当し得る。一部の実施形態では、患者の処置は、病変の期間を低減すること、病変の数を低減すること、1回の発症における症状の期間を低減すること、および/またはそれら以外の、1回の発症における症状の強さを低減することが該当する。ある実施形態では、ワクチンは、軽度の症状の期間または重症度を低減し;ある実施形態では、ワクチンは、重度の症状の期間または重症度を低減する。一部の実施形態では、ワクチンは、ウイルス排出を低減し、これによりワクチン接種された患者からのHSV−2の伝染性を低減する。ある実施形態では、上記の低減は、少なくとも25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または実に90%である。ある実施形態では、上記の低減は、症状、ウイルス排出、および/または将来の発症の完全な阻止を含む(例えば、知覚神経節での潜伏を確立するウイルスの能力を阻害することによって)。
【0118】
治療の実施形態では、HSV−2ワクチンを、感染後に患者に投与する。HSV−2ワクチンは、感染の直後、例えば、症状の顕在化の前に投与しても良いし、または症状の顕在化の最中または後で投与しても良い。一部の実施形態では、HSV−2ワクチンは、初期の感染の内因性の再活性化を防止することができる。一部の実施形態では、感染後ワクチンを、高リスク群の患者に投与することができる。
【0119】
本明細書に開示されるワクチン製剤の治療効果の期間は、可能な限り長いのが好ましい。ある実施形態では、ワクチン製剤は、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、1年、2年、5年、10年、20年、または実に一生涯続く治療効果をもたらす。
【0120】
3.ワクチン接種の有効性のアッセイ
本明細書に開示されるワクチンでのワクチン接種の有効性を多数の方式で決定することができる。
【0121】
ワクチンの有効性は、様々なモデル系でアッセイすることができる。HSV−2の研究に使用される適切なモデル系には、以下の実施例に記載されるようにモルモットモデルおよびマウスモデルが含まれる。簡単に述べると、動物にワクチン接種してからHSV−2を曝露する、または既に感染している動物にワクチンを投与する。HSV−2暴露またはワクチンに対する動物の応答を、上記の測定の1つを用いてコントロール動物と比較する。同様のアッセイを、ヒトの臨床試験に使用することができる。上記の処置および予防効果は、ワクチンの有効性を決定するさらなる手段を表している。
【0122】
加えて、有効性は、未感作ヒト末梢血単核細胞(PBMC)のin vitroでの免疫化によって評価することができ、APCをワクチンに曝露してから、APCを同じドナーからの未感作T細胞と共培養して、試験管での免疫化に対する一次応答を評価する。ワクチンに曝露されなかったAPCを用いたT細胞の活性に対して1.5倍、2倍、5倍、10倍、20倍、50倍、または100倍以上のT細胞の活性化は、ある実施形態では、十分な応答と見なされる。
【0123】
ワクチンの有効性は、ウイルス中和アッセイによってさらに決定することができる。簡単に述べると、動物を免疫化し、血清を、免疫化後の様々な日に収集した。血清の連続希釈液を、ウイルスと共に事前にインキュベートし、このインキュベート中に、ウイルスに特異的な血清中の抗体がウイルスに結合する。次いで、ウイルス/血清混合物を許容細胞に添加して、プラークアッセイによって感染力を決定する。血清中の抗体がウイルスを中和すると、コントロール群と比較して存在するプラークが少ない。
【0124】
G.医薬組成物の使用
1.HSV感染に対する防御
本開示の医薬組成物は、HSV−2に対して免疫応答を惹起するようにデザインされている。本明細書に記載される組成物は、これらの組成物が投与された被験体において、先天性免疫応答、抗体応答、細胞性免疫応答、またはこれらの応答の組み合わせを刺激し得る。一部の実施形態では、本組成物は、好中球、マクロファージ、およびNK細胞などの免疫細胞を、感染の末梢部位または知覚神経節で刺激する。組成物は、マクロファージによる浸潤;好中球による一酸化窒素、TNF−α、インターフェロン(IFN)、およびインターロイキン12(IL−12)などを含む抗ウイルス化合物の産生;および/またはNK細胞の刺激によるIFN−γの産生を刺激することができる。IL−2、IFN−α、およびIFN−βの産生は、本組成物のポリペプチドによっても開始させることでき、感染の制御に役立つと考えられる。
【0125】
一部の実施形態では、本組成物は、中和抗体の産生を刺激する抗原を含む。中和抗体は、ウイルスエンベロープの糖タンパク質を標的とすることができ、この糖タンパク質は、ウイルス粒子と宿主細胞の相互作用を媒介し、HSV−2の細胞への付着、結合、および侵入に関与する。したがって、例示的な組成物は、上記の1つ以上の糖タンパク質、または上記の核酸によってコードされる1つ以上の糖タンパク質を含む。本明細書に記載される免疫原性抗原および/またはエピトープは、互いに別個に連続してまたは組み合わせて投与することができる。
【0126】
一部の実施形態では、本組成物は、細胞性応答を惹起し、この細胞性応答は、CD4+T細胞、CD8+T細胞、および/または抗ウイルスサイトカインの産生に関与し得る。本組成物は、例えば、先天性免疫応答の活性化によってIFN−γの分泌を引き起こし、CD8+T細胞のウイルス除去を媒介することができる。IFN−γは、T1細胞、(T17細胞?)T細胞、樹状細胞、およびNK細胞によっても分泌され、本組成物は、任意のこれらの細胞型によるIFN−γの分泌を引き起こすことができる。CD8+T細胞のこのような活性は、細胞溶解性であり得る、あるいは、ニューロンの死滅を防止するニューロン表面の阻害分子によって制御され得る。CD4+および/またはCD8+T細胞は、ウイルスの潜伏期の持続に役立ち、ウイルスの再活性化を防止し得る。一部の実施形態では、本組成物は、ウイルスの潜伏状態からの再活性化を防止するCD4+T細胞応答および/またはCD8+T細胞応答を増強する。
【0127】
一部の実施形態では、本組成物は、HSVの宿主免疫応答を回避する能力を阻害する、あるいは通常はHSVによって回避される免疫応答を増強する。一部の実施形態では、本組成物は、HSV−2がHSV抗原の寛容に向かって免疫バランスを変化するのを抑制する。HSV−2は、T2細胞による寛容を媒介する。まず、HSV−2は、IL−10、T2サイトカインを分泌するCD4+CD25+細胞およびTr1細胞などのサプレッサーT細胞を誘導し得る。T2サイトカインは、同時刺激分子を下方制御し、抗原提示樹状細胞の成熟および機能を抑制する。加えて、HSV−2の感染は、効率的なCTL刺激に必須である樹状細胞の成熟および遊走を抑制する。注目すべきことに、T2サイトカインは、再発しない症状の発現中に産生されるT1サイトカインとは対照的に、HSV−2感染の再発中に産生される。したがって、ある実施形態では、本発明の組成物は、サプレッサーT細胞を抑制し、かつ/または樹状細胞の成熟もしくは遊走または両方を誘導する。
【0128】
一部の実施形態では、HSV−2に対する免疫応答を哺乳動物で誘導する方法は、上記の組成物を投与するステップを含む。組成物は、異なる時点、例えば、HSV−2への曝露の前、HSV−2の初期感染の後、HSV−2が潜伏を確立する前または後、HSV−2の排出が起こる前または後、および/または発症の再発が起こる前または後などで免疫応答を誘導するために用いることができる。一部の実施形態では、HSV−2に対する免疫応答は、上記の1つ以上の時点で誘導することができる。組成物は、T2応答は誘導できないが、T1応答および/またはT17応答を誘導できる、または同時もしくは異なる時点で応答を活性化することができる。
【0129】
一部の実施形態では、組成物の投与により、HSVの初期感染、潜伏期、または再感染に関連した症状を低減する。このような組成物は、HSV感染もしくは発症に関連した病変、ただれ、痛み、刺激、かゆみ、発熱、倦怠感、頭痛、ウイルス排出、または前駆症状の発生率および/または重症度を低減し得る。
【0130】
一部の実施形態では、HSV−2の抗原に対する1つ以上の抗体を、受動免疫を引き起こすために個体に投与することができる。受動免疫は、既存の抗体の形態である活性な体液性免疫のある個体から別の個体への移動によって生じる。受動免疫は、高い感染リスクがあり、かつ体が自己の免疫応答を起こすのに十分な時間がない、または進行中もしくは免疫抑制疾患の症状を軽減するのに十分な時間がない場合に用いることができる。T細胞の養子免疫伝達は、患者のHSV−2抗原に対する免疫応答を惹起する別の方法を提供し得る。一実施形態では、自己T細胞は、上記のポリペプチドに由来する抗原を提示するAPCで増大させることができる。続いて、増大したHSV−2特異的T細胞を、このT細胞が由来する患者に戻す。
【0131】
2.診断での使用
本出願は、患者におけるHSV−2の検出のための、とりわけ迅速かつ安価で精度の高い特殊な方法を提供する。これに関連して、病院および医師が、HSV−2に感染している、または感染のリスクのある患者を検査し処置することが有用なはずである。本明細書で使用される場合、「患者」は、HSV−2に感染しているか、またはHSV−2に感染する可能性のある個体(例えば、ヒト)を指す。
【0132】
一部の実施形態では、個体におけるHSV−2を検出するために、表1および/または表2のポリペプチドなどの本明細書に記載されるポリペプチドの1つに対する抗体を使用することができる。本開示は、HSV−2感染の疑いのある患者からの生物学的サンプルのフェノタイピングの方法であって、(a)必要に応じて、生物学的サンプルをイムノアッセイしやすくするステップと、(b)HSV−2のエピトープへの抗体または抗原結合部分の結合を可能にする条件下で、このサンプルを、適切なHSV−2特異的抗体またはその抗原結合部分に接触させるステップと、(c)このサンプルが、コントロール組織と比較してHSV−2の存在を示すか否かを決定するステップであって;試験組織がHSV−2の存在を示す場合は、患者が、HSV−2に感染している可能性が高いと認定される、ステップとを含む、方法も提供する。
【0133】
別法では、個体における抗HSV−2抗体を検出するために上記のポリペプチドを使用することができる。本開示は、HSV−2感染の疑いのある患者からの生物学的サンプルのフェノタイピングの方法であって、(a)必要に応じて、生物学的サンプルを、ELISAなどの親和性アッセイをしやすくするステップと、(b)サンプル中に存在する任意の宿主抗体への抗原の結合を可能にする条件下で、このサンプルを、HSV−2特異的抗原またはその一部に接触させるステップと、(c)このサンプルが、コントロール組織と比較してHSV−2の存在を示すか否かを決定するステップであって;試験組織がHSV−2の存在を示す場合は、患者が、HSV−2に感染している可能性が高いと認定される、ステップとを含む、方法も提供する。上記の試験は、他のウイルス感染を検出するために、例えば、表1および/または表2に示されているような上記のタンパク質の相同体(別のウイルス種由来)を用いることによって適切に調整することができる。
【0134】
ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、ウエスタンブロット法、競合アッセイ、およびスポットブロットを含め、抗体と抗原の結合を測定する多数の方法が、当技術分野で周知である。検出ステップは、例えば、化学発光法、蛍光法、または比色分析とすることができる。抗体とタンパク質の結合を測定する1つの適切な方法は、ペプチドが色素含有マイクロスフィアにコンジュゲートするLuminex xMAPシステムである。xMAPシステムを含むあるシステムは、いくつかの異なるマーカーを多重測定しやすく、抗体のレベルを即座に測定するために使用することができる。一部の実施形態では、他のシステムを使用して、複数のマーカーを多重アッセイする。例えば、次のシステム:抗原マイクロアレイ、ビーズマイクロアレイ、ナノバーコード粒子技術、cDNA発現ライブラリーからの整列されたタンパク質、タンパク質のin situアレイ、生きた形質転換体のタンパク質アレイ、ユニバーサルタンパク質アレイ、ラブ・オン・チップ・マイクロ流体工学、およびペプチドピン(peptides on pins)のいずれかを用いてプロファイリングを行うことができる。臨床アッセイの別のタイプは、抗体の結合を検出する化学発光アッセイである。VITROS Eci 抗HCVアッセイを含め、一部のこのようなアッセイでは、抗体が、液体懸濁液中の微小粒子からなる固相支持体に結合し、表面蛍光光度計を用いて、酵素による蛍光産物の産生を定量する。
【0135】
他の実施形態では、HSV−2に特異的なT細胞を検出するために、表1および/または表2のポリペプチドなどの上記のポリペプチドを使用することができる。本開示は、HSV−2感染の疑いのある患者からの生物学的サンプルのフェノタイピングの方法であって、(a)必要に応じて、生物学的サンプルを、T細胞の活性化についてのアッセイをしやすくするステップと、(b)APCがHSV−2特異的ポリペプチドを処理できる条件下で、このサンプルを、HSV−2特異的ポリペプチドまたはその一部に接触させるステップと、(c)HSV−2特異的ポリペプチドに応答したT細胞の活性化を決定するステップであって;非感染患者に対するT細胞活性化の上昇がHSV−2感染を示唆する、ステップとを含む、方法を提供する。この診断アッセイは、HSV−2に曝露されてもセロコンバージョンされずに検出可能なレベルの抗HSV−2抗体を産生しない患者を含め、あらゆる患者におけるHSV−2特異的T細胞の存在を検出することを目的とする。
【0136】
T細胞活性化は、サイトカイン特異的ELISA、トリチウム化チミジン取り込みまたは膜介在(PKH−67)もしくは細胞質(CFSE)色素によって測定される細胞増殖、ELISPOT、フローサイトメトリー、およびビーズアレイを含む様々な増殖アッセイを用いて測定することができる。加えて、抗原に特異的であるマウスまたはヒトからのT細胞系またはT細胞ハイブリドーマにおけるT細胞応答を測定することができる。活性化T細胞の読み取りは、T細胞またはT細胞ハイブリドーマが抗原に応答して活性化されたときに誘導されるT細胞ハイブリドーマによって発現された代理酵素の増殖、サイトカイン産生、または読み取りが含まれる。例えば、T細胞応答の活性化は、β−ガラクトシダーゼを産生するように操作されたT細胞ハイブリドーマによって検出することができる。β−ガラクトシダーゼは、クロロフェニルレッドβ−Dガラクトピラノシド(CPRG)などの発色β−ガラクトシダーゼ基質の使用によって検出することができる。
【0137】
HSV−2感染は、急性または潜伏性であり得る。一部の実施形態では、生物学的サンプルが、HSV−2の存在を示す場合は、本明細書に記載される治療有効量の組成物および治療を患者に施すことができる。生物学的サンプルには、例えば、血液、精液、尿、膣液、粘液、唾液、便、尿、脳脊髄液、または組織サンプルが含まれ得る。一部の実施形態では、生物学的サンプルは、植え込み用の器官である。ある実施形態では、検出ステップの前に、生物学的サンプルを、HSV−2の増殖を促進する培養条件で培養する。
【0138】
本明細書に記載される診断試験を用いて、患者から得たサンプルおよび他の供給源から得たサンプルを含む様々なサンプルでHSV−2を検出することができる。例えば、診断試験を用いて、医療器具などの物体におけるHSV−2を検出することができる。一部の実施形態では、本明細書に記載される試験は、家畜(ウシ、ブタ、ニワトリ、ヤギ、およびウマなど)、ペット動物(イヌ、ネコ、およびトリなど)、または野生動物などの動物から得たサンプルに対して行うことができる。ある実施形態では、本明細書に記載される試験は、治療用タンパク質を産生するヒト細胞の培養物、有用な生物学的分子の産生用の細菌の培養物、または研究目的で増殖される細胞の培養物などの細胞培養物から得たサンプルに対して行うことができる。
【0139】
本発明は、患者におけるHSV−2感染の位置を決定する方法であって、(a)標識HSV−2抗体またはその抗原結合部分を含む医薬組成物を患者に投与するステップと、(b)標識を検出するステップと、(c)患者がコントロールと比較してHSV−2を有するか否かを決定するステップとを含む、方法も包含する。ある実施形態では、この方法は、患者がHSV−2に感染している場合に、本明細書に記載される治療有効量の組成物を患者に投与するステップをさらに含む。この方法は、患者における感染細胞型および/またはHSV−2の量を決定するステップをさらに含み得る。この方法を用いて、患者におけるHSV−2の拡散を評価して、局所治療が適切であるか否かを決定することができる。
【0140】
一部の実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドを用いて、感染経路の診断を行うことができる。一部の実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドに特異的なT細胞または抗体の応答を、患者から得たサンプルで検出することができる。抗体またはT細胞が通常のレベルで存在する場合は、患者が、病原体に対する有効な免疫応答を引き起こしたことを示唆する。抗体またはT細胞が存在しない、または低レベルで存在する場合は、患者が病原体に対する十分な応答を引き起こせなかったことを示唆し、より積極的な処置が推奨される。一部の実施形態では、低レベルで存在する抗体またはT細胞とは、防御免疫応答での患者の典型的なレベルの50%、20%、10%、5%、2%、または1%で存在する応答を指す。T細胞応答は、T細胞増殖、ELISPOT、またはELISAなどの当技術分野で周知の方法によって検出することができ、抗体は、ELISAなどの当技術分野で周知の方法を用いて、本明細書に記載される任意の抗原の親和性によって検出することができる。
【0141】
一部の実施形態では、HSV−2抗原に特異的なT細胞の検出を用いて、患者におけるHSV−2感染の進行および症状を予測することができる。HSV−2に感染した後、一部の患者は、無症状のままであるが、ウイルスは潜伏を確立し得る。他の患者は、HSV−2感染の症状を示し、発症を再発し得る。無症状の患者に見られるHSV−2抗原は、症状および/または発症の再発を示す患者に見られる抗原とは異なり得る。したがって、本発明の検出方法を用いて、HSV−2に感染した患者の集団内の亜群を区別することができる。亜群は、発症が頻繁に起きる患者および発症がまれに起きるかもしくは決して起きない患者、またはウイルスを高レベルで排出する患者およびウイルスを低レベルで排出するかもしくは排出しない患者にさらに分類することができる。他の抗原ではなくあるHSV−2抗原に対するT細胞応答の存在およびレベルに基づいた患者の分類は、医療従事者が適切な処置計画を決定するのに役立ち得る。同様に、T細胞応答の程度の差および/またはT細胞によって産生されるサイトカインの組み合わせおよびレベルにおける差を用いて、患者のHSV−2感染の進行および症状を予測することもできる。したがって、T細胞が応答するHSV−2抗原の補体が、重度の症状、頻繁な発症、および/または高レベルのウイルス排出を予測する感染患者は、HSV−2抗原の補体が無症状感染を予測する患者よりも集中的な抗ウイルス治療および/または期間の長い治療処置を必要とし得る。
【0142】
当業者であれば、本明細書に記載される方法がHSV−2の検出に限定されるものではないことを理解できよう。他の実施形態は、表1および/または表2に示されているような上記のタンパク質に相同なタンパク質をもつウイルスを含む近縁ウイルスの検出を含む。このような近縁ウイルスには、例えば、ヘルペスウイルスファミリーの他のメンバーも含まれる。相同性によって、これらの近縁ウイルスは、ヘルペスウイルスファミリーのメンバーではないウイルスも含まれ得る。
【0143】
3.HSV−2の感染リスクが高い群での使用
本質的にあらゆる個体は、HSV−2に対してある感染リスクがある。しかしながら、ある亜母集団は、感染リスクが高い。一部の実施形態では、HSV−2に対する組成物が投与される患者は、免疫不全である。
【0144】
医療処置によって生じる免疫不全状態は、その個体を高い感染リスクにさらす可能性が高い。免疫不全状態をもたらすことが知られている処置の前または最中に、免疫不全状態である個体の感染を予防的に処置することが可能である。このような状態をもたらすことが知られている処置の前または最中に抗原で予防的に処置することにより、後の感染を防止する、または免疫不全状態のために個体が感染するリスクを低減することが可能である。個体が、例えば、免疫不全状態をもたらす処置の後に感染した場合、個体に抗原組成物を投与することによって感染を処置することも可能である。
【0145】
ある実施形態では、本組成物を子供または成人患者に投与する。他の実施形態では、組成物は、胎児または乳児の感染の防止などで、妊娠前に感染した妊婦または妊娠中に感染した妊婦に適切である。組成物は、子宮で、または出産中に感染した新生児または乳児に投与することもできる。
【0146】
H.投与の量および経路
1.投与量およびタイミング
各ワクチン投与量における抗原の量は、単回投与または複数回投与で、上記のように予防または治療応答を誘導する有効量として選択される。好ましくは、この投与量は、典型的なワクチン接種で有意な有害副作用がない。このような量は、どの特異的抗原が利用されるかによって異なる。一般に、投与量は、1〜1,000μg、場合によっては、2〜100μg、例えば、4〜40μgのタンパク質を含むと思われる。一定のワクチンの最適な量は、抗体力価、T細胞の活性化レベル、および被験体における他の応答の観察を含む標準的な研究によって確定することができる。一部の実施形態では、送達される抗原の適切な量は、被験体の年齢、体重、および健康状態(例えば、免疫不全状態など)によって異なる。存在する場合は、アジュバントは、典型的には、1回の投与量に付き1μg〜250μg、例えば、50〜150μg、75〜125μg、または100μgの量で存在する。
【0147】
一部の実施形態では、上記の結果を得るために1回投与量のワクチンのみが投与される。他の実施形態では、最初のワクチン接種の後、1回以上のブーストワクチン接種、例えば、合計で2回、3回、4回、または5回、被験体がワクチン接種される。3回以下の回数が有利である。1回のワクチン接種療法が、0ヶ月、0.5〜2ヶ月、および4〜8ヶ月で行われるように、ブーストワクチン接種を、例えば、最初のワクチン接種から約1ヵ月後、2ヵ月後、4ヵ月後、6ヵ月後、または12ヵ月後に行うことができる。同じまたは異なる経路で投与できるワクチンは、分割投与すると有利であろう。
【0148】
本明細書に記載される医薬組成物は、様々な剤形とすることができる。ある実施形態では、医薬組成物は、固体または粉末(例えば、凍結乾燥)形態で提供される:または溶液形態でも提供され得る。ある実施形態では、剤形は、1回投与量の凍結乾燥組成物と少なくとも1つの別個の希釈剤の滅菌容器として提供される。
【0149】
一部の実施形態では、抗原は、1回の投与量当たり1μモルの量で患者に送達される。一部の実施形態では、抗原は、1回の投与量当たり10nモル〜100nモルの範囲の量で送達される。送達される抗原の適切な量は、当業者が決定することができる。一部の実施形態では、送達される抗原の適切な量は、被験体の年齢、体重、および健康状態(例えば、免疫不全状態)によって異なる。
【0150】
本明細書に開示される医薬組成物は、(一部の実施形態では)免疫応答の一部として抗体の産生を誘導するのに十分な量で投与される。一部の実施形態では、医薬組成物は、5mcg/0.5mL、または10mcg/1mL〜200mcg/1mLの抗原を含むように製剤することができる。他の実施形態では、医薬組成物は、抗原の組み合わせを含み得る。複数の抗原はそれぞれ、同じ濃度でも良いし、または異なる濃度でも良い。
【0151】
一部の実施形態では、組成物は、組成物の次の投与が前の投与よりも高濃度の組成物を含むように、段階的に増大する投与量で投与される。一部の実施形態では、組成物は、組成物の次の投与が前の投与よりも低濃度の組成物を含むように投与される。
【0152】
治療への適用では、組成物は、疾患を患う患者に、疾患およびその合併症を治癒する、または少なくとも部分的に抑止するのに十分な量で投与される。
【0153】
本明細書に記載される組成物の治療への適用は、例えば、組成物で処置されていない個体で起こるレベルの90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、または10%に、HSV−2に感染した患者において伝染性を低減する、疾患の進行を遅らせる、ウイルス排出を低減する、または再感染を排除することを含む。組成物は、例えば、組成物で処置されていない個体で起こるレベルの90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、または10%に、感染した個体によるHSV−2排出の量を低減する、感染した患者の潜伏段階からのHSV−2の再活性化に必要なタンパク質の発現を抑制する、および/または感染した患者のニューロンにおけるHSV−2の複製を抑制することもできる。
【0154】
予防の実施形態では、組成物は、感染性疾患または他の症状の確立を抑制できる免疫応答を誘導するためにヒトまたは他の哺乳動物に投与される。一部の実施形態では、組成物は、ウイルスが潜伏を確立するのを部分的に阻止する、または潜伏が確立される効率を低減することができる。
【0155】
一部の実施形態では、1回の投与量(投与)のみの組成物が与えられる。他の実施形態では、組成物は、複数回投与で投与される。様々な実施形態では、組成物は、1回、2回、3回、または4回以上投与される。被験体に投与される投与回数は、抗原、疾患の程度または予想される疾患への曝露、および被験体の組成物に対する応答によって異なる。
【0156】
一部の実施形態では、組成物は、抗菌分子と組み合わせて投与される。抗菌分子には、抗ウイルス分子が含まれ得る。多数の抗ウイルス分子が、現在、当技術分野で周知であり、ウイルスの宿主細胞への付着、ウイルス遺伝子および/または酵素の宿主細胞内への放出、宿主細胞機構を用いたウイルス成分の複製、ウイルス成分の完全ウイルス粒子への組み込み、および新たな宿主に感染するためのウイルス粒子の放出を含むウイルスのライフサイクルの1つ以上の段階を標的とする。
【0157】
2.投与の経路
本明細書に記載されるワクチン製剤および医薬組成物は、個体への投与、典型的には、全身投与(例えば、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮内、皮下、経皮、真皮下、頭蓋内、鼻腔内、粘膜、肛門、膣、経口、舌下、頬経路、または吸引され得る)によって送達することができ、または局所適用によって投与することができる。
【0158】
一部の実施形態では、組成物は、感染の可能性がある部位に直接投与することができる。女性患者では、組成物は、粘膜に局所適用する、または当技術分野で周知の装置および方法を用いて経膣的または経直腸的に送達することができる。膣および直腸の送達経路は、長期、連続的、またはパルス送達を可能にし、組成物の使用が予防用かまたは治療用かによって、HSVへの曝露の前または後で投与することができる。男性患者では、組成物は、皮膚または粘膜に局所適用する、または経直腸的に送達することができる。両方の患者集団では、組成物は、知覚神経節を標的とすることもできる。
【0159】
HSV−2ワクチンまたは医薬組成物は、筋肉内経路を介して投与される場合が多い。典型的には、この経路では、ワクチンは、粘膜組織のアクセス可能な領域に注射される。筋肉内注射は、一部の実施形態では、三角筋、外側広筋、腹側または背側殿筋に行われる。注射は、典型的には、ワクチンが筋肉に達するように皮膚の表面に対して約90度の角度で行われる。
【0160】
HSV−2ワクチンは、皮下投与することができる。注射は、典型的には、ワクチンが筋肉ではなく皮下組織に投与されるように皮膚の表面に対して45度の角度で行われる。
【0161】
一部の実施形態では、HSV−2ワクチンは皮内投与される。皮内投与は、皮下投与に類似しているが、注射は、それほど深くなく、標的とする皮膚層は、真皮である。注射は、典型的には、ワクチンが表皮のすぐ下側に送達されるように皮膚の表面に対して10〜15度の角度で行われる。
【0162】
3.製剤
ワクチン製剤は、ヒト患者に投与するのに適し得、ワクチン調製物は、USFDAのガイドラインに適合し得る。一部の実施形態では、ワクチン製剤は、非ヒト動物に投与するのに適している。一部の実施形態では、ワクチンは、エンドトキシンもエキソトキシンも実質的に含まない。エンドトキシンは、リポ多糖(LPS)分子などの発熱物質を含む。ワクチンは、不活性なタンパク質断片も実質的に含み得ない。一部の実施形態では、ワクチンは、工業用水、水道水、または蒸留水よりも低いレベルの発熱物質を有する。他のワクチン成分を、当技術分野で周知の方法、例えば、イオン交換クロマトグラフィー、限外ろ過、または蒸留などで精製することができる。他の実施形態では、発熱物質は、患者に投与する前に不活化または破壊することができる。ワクチンの原料、例えば、水、緩衝剤、塩、および他の化学物質を、スクリーニングして脱発熱化することもできる。ワクチン中のすべての物質を滅菌して、ワクチンの各ロットを滅菌性について試験することができる。したがって、ある実施形態では、ワクチン中のエンドトキシンのレベルが、USFDAによって規定されたレベル、例えば、くも膜下注入組成物の場合は、製品1kg当たり0.2エンドトキシン(EU)、非くも膜下注入組成物の場合は、製品1kg当たり5EU、そして滅菌水が1mL当たり0.25〜0.5EUよりも低くなる。
【0163】
一部の実施形態では、ポリペプチドを含むワクチンは、望ましいポリペプチドの量に対して、5%、2%、1%、0.5%、0.2%、0.1%の他の望ましくない非ポリペプチドを含む。一部の実施形態では、ワクチンは、5%未満、2%未満、1%未満、0.5%未満、0.2%未満、または0.1%未満のDNAおよび/またはRNAを含む。
【0164】
ワクチンは、妥当なリスク便益比の範囲内で低い毒性を有するか、または毒性を有していないことが好ましい。
【0165】
医薬組成物の導入に適した製剤は、投与経路によって異なる。例えば、関節内(関節の内部)、静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内、鼻腔内、および皮下経路などによる非経口投与に適した製剤には、目的のレシピエントの血液で製剤を等張性にする溶質、酸化防止剤、緩衝剤、および静菌剤を含み得る水性および非水性の等張性滅菌注射液、ならびに懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤、および保存剤を含み得る水性および非水性滅菌懸濁液が含まれる。製剤は、アンプルおよびバイアルなどの単位用量または複数回用量の密封容器内に入れて提供することができる。
【0166】
注射用の溶液および懸濁液は、既に記載された種類の滅菌された粉末、顆粒、およびタブレットから調製することができる。パッケージ核酸が形質導入された細胞も、静脈内投与または非経口投与することができる。
【0167】
経口投与に適した製剤は、(a)水、生理食塩水、またはPEG400などの希釈液に懸濁された有効量のポリペプチドまたはパッケージ核酸などの液体溶液;(b)液体、固体、顆粒、またはゼラチンとして所定量の活性剤をそれぞれ含むカプセル、小袋、またはタブレット;(c)適切な液体に懸濁された懸濁液;および(d)適切なエマルジョンからなり得る。タブレット形態は、ラクトース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、リン酸カルシウム、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、トラガカント、微結晶性セルロース、アカシア、ゼラチン、コロイド状二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、および他の賦形剤、着色剤、充填材、結合剤、希釈剤、緩衝剤、湿潤剤、保存剤、香料、染料、崩壊剤、および薬学的に適合され得るキャリアの1つ以上を含み得る。トローチ形態は、通常はスクロースおよびアカシアまたはトラガカントである香料中の活性成分を含み得、同様に芳香錠は、不活性基剤、例えば、ゼラチンおよびグリセリンまたはスクロースおよびアカシアエマルジョン、およびゲルなどの中に活性成分を含み、活性成分に加えて当技術分野で周知のキャリアも含む。医薬組成物は、例えば、リポソーム中に、または活性成分を徐放する製剤中に封入することができる。
【0168】
抗原は、単独で、または他の適切な成分と組み合わせて、吸入によって投与されるエアロゾル製剤(例えば、「噴霧状」にされ得る)にすることができる。エアロゾル製剤は、ジクロロジルオロメタン、プロパン、および窒素などの許容され得る加圧推進剤の中に入れることができる。
【0169】
膣または直腸投与に適切な製剤には、例えば、ポリペプチドまたはパッケージ核酸と座薬基剤からなる坐薬が含まれる。適切な座薬基剤には、天然または合成のトリグリセリドまたはパラフィン炭化水素が含まれる。加えて、例えば、液体トリグリセリド、ポリエチレグリコール、およびパラフィン炭化水素を含む基剤とポリペプチドまたはパッケージ核酸の組み合わせからなるゼラチン直腸カプセルを使用することも可能である。製剤は、ヒト患者に投与するのに適し得、この調製物は、USFDAガイドラインに適合し得る。一部の実施形態では、製剤は、非ヒト動物に投与するのに適している。一部の実施形態では、組成物は、エンドトキシンもエキソトキシンも実質的に含まない。エンドトキシンは、リポ多糖(LPS)分子などの発熱物質を含み得る。組成物は、発熱または他の副作用を引き起こし得る不活性なタンパク質断片も実質的に含み得ない。一部の実施形態では、組成物は、1%未満、0.1%未満、0.01%未満、0.001%未満、または0.0001%未満のエンドトキシン、エキソトキシン、および/または不活性なタンパク質断片を含む。一部の実施形態では、組成物は、工業用水、水道水、または蒸留水よりも低いレベルの発熱物質を有する。他の成分を、当技術分野で周知の方法、例えば、イオン交換クロマトグラフィー、限外ろ過、または蒸留などで精製することができる。他の実施形態では、発熱物質は、患者に投与する前に不活化または破壊することができる。組成物の原料、例えば、水、緩衝剤、塩、および他の化学物質を、スクリーニングして脱発熱化することもできる。組成物中のすべての物質を滅菌して、組成物の各ロットを滅菌性について試験することができる。したがって、ある実施形態では、組成物中のエンドトキシンのレベルが、USFDAによって規定されたレベル:くも膜下注入組成物の場合は、製品1kg当たり0.2エンドトキシン(EU);非くも膜下注入組成物の場合は、製品1kg当たり5EU;滅菌水が1mL当たり0.25〜0.5EUよりも低くなる。
【0170】
ある実施形態では、調製物は、50%未満、20%未満、10%未満、または5%未満(乾燥重量で)の汚染タンパク質を含む。ある実施形態では、望ましい分子は、他の生物学的巨大分子、例えば、他のタンパク質(特に、精製された調製物としてまたは対象の再構成混合物中でのその機能に関して成分タンパク質の特徴を実質的に覆い隠す、減弱する、あいまいにする、または変更することができる他のタンパク質)などが実質的に存在しない中で存在する。ある実施形態では、同じ種類の生物学的巨大分子の少なくとも80%、90%、95%、99%、または99.8%(乾燥重量で)存在する(しかしながら、水、緩衝剤、および他の小分子、特に分子量が5,000未満の分子も存在し得る)。
【0171】
組成物は、妥当なリスク便益比の範囲内の低い毒性を有するか、毒性を有していないのが好ましい。ある実施形態では、組成物は、組成物で処置された動物のLD50測定値未満の濃度で成分を含む。LD50測定値は、マウスまたは他の実験動物系で得て、ヒトおよび他の動物に対して推定することができる。ヒトおよび他の動物における化合物のLD50を推定する方法は、当技術分野で周知である。組成物および組成物中のどの成分も、100g/kgを超える、50g/kgを超える、20g/kgを超える、10g/kgを超える、5g/kgを超える、2g/kgを超える、1g/kgを超える、500mg/kgを超える、200mg/kgを超える、100mg/kgを超える、50mg/kgを超える、20mg/kgを超える、または10mg/kgを超えるラットでのLD50値を有し得る。一部の実施形態では、組成物の治療指数(集団の50%にとって中毒である量(TD50)を集団の50%にとって有効な最少量(ED50)で除して得る)は、1よりも大きい、10よりも大きい、または100よりも大きい。
【0172】
I.ワクチン製剤および免疫原性組成物の調製および貯蔵
本明細書に記載されるHSV−2ワクチンは、様々な技術を用いて生産することができる。例えば、ポリペプチドを、組換えDNA技術を用いて適切な宿主細胞で産生させることができる。適切な宿主細胞は、細菌、酵母、哺乳動物、または他の種類の細胞とすることができる。宿主細胞は、関連ポリペプチド遺伝子の1つの外来性コピーを発現するように改変することができる。典型的には、遺伝子は、強いプロモーターおよびポリアデニル化配列などの適切な制御配列に機能的に連結される。一部の実施形態では、プロモーターは、誘導性または抑制性である。他の制御配列は、ポリペプチドをどのように精製したいかによって、細胞質または膜における目的のポリペプチドの分泌もしくは排出または目的のポリペプチドの保持を行うことができる。遺伝子は、染色体外プラスミドに存在しても良いし、または宿主ゲノムに組み込まれても良い。当業者であれば、天然配列と100%同一の核酸を使用する必要はないことを理解できよう。むしろ、これらの配列に対するある程度の改変は許容され、望ましい場合もある。例えば、核酸を変更して、コードされたポリペプチドが同じままであるように遺伝子コードの縮重を利用することができる。一部の実施形態では、遺伝子は、特定の宿主における発現を改善するためにコドンが最適化される。核酸は、例えば、PCRまたは化学合成によって作製することができる。
【0173】
組換え細胞系が作製されたら、ポリペプチドを組換え細胞系から単離することができる。この単離は、例えば、親和性精製技術または物理的分離技術(例えば、サイズカラム)によって行うことができる。
【0174】
本開示のさらなる態様では、1つ以上のポリペプチドまたはその免疫原性断片もしくは変異体をキャリアおよび/またはアジュバントと混合するステップを含む製造方法が提供される。一部の実施形態では、アジュバントは、T1細胞応答を刺激するアジュバントである。
【0175】
一部の実施形態では、本発明の組成物に含める抗原を、細胞培養で生産することができる。1つの方法は、1つ以上の哺乳動物発現ベクターを用意するステップ、配列番号1〜38のいずれか1つのアミノ酸配列を有するポリペプチドから選択される2つ以上のポリペプチドをコードするヌクレオチドをクローニングするステップ、次いでこのポリペプチドを発現させて単離するステップを含む。
【0176】
本明細書に記載される免疫原性ポリペプチド、およびこのポリペプチドを発現する核酸組成物を、核酸組成物を哺乳動物に投与するためのパック、ディスペンサー装置、およびキットにパッケージングすることができる。例えば、1つ以上の単位剤形を含むパックまたはディスペンサー装置が提供される。典型的には、化合物の投与の取扱説明書がパッケージングに設けられると共に、本明細書に開示されている状態などの示された状態の処置に化合物が適しているという適切な表示がラベルに設けられる。
【実施例】
【0177】
V.実施例
実施例1、HSV−2抗原の同定
HSV−2抗原のライブラリー(HSV−2 Strain G、ロット番号7C0013、Advanced Biotechnologies Inc、Maryland)を用意し、ヒトドナーからの末梢血単核細胞(PBMC)でスクリーニングした。簡単に述べると、HSV抗原のライブラリーを細菌によって発現させ、抗原提示細胞(APC)と混合した。次いで、APCが、HSV−2に感染したヒト患者から単離されたリンパ球にHSV由来ペプチドを提示した。患者は、後述されるように、いくつかの集団に属した。各集団からのリンパ球の応答を、発現された各タンパク質に対する反応性について比較し、スクリーニングにより、他の患者集団と比較してある患者集団でより頻繁に反応性リンパ球を誘導した抗原を検出した。感染したが無症状の患者および曝露されても血清陰性の患者は、頻繁に発症した患者が活性化しない防御免疫応答を活性化することができる;特に、曝露されたが血清陰性の患者は、HSV−2感染に対して殺菌免疫を開始したと推測される。ポリペプチドの固有のセットが、これらの患者集団からのリンパ球を活性化させると考えられる。
【0178】
各集団に由来するCD4T細胞およびCD8T細胞からのIFN−γの放出を、候補抗原に対する曝露の後にELISAによって測定した。抗原を、1年に5回以上発症した高頻度再発者によって放出されたIFN−γのレベルに対する、放出されたIFN−γの増加倍率に基づいて選択した。
【0179】
A.UL10、UL19、UL40、US4、US6、RS1(RS1.1、RS1.2、RS1.3)、UL36(UL36.3、UL36.4、UL36.5)、UL32、およびRL2によってコードされる抗原の同定
リンパ球を、いくつかの集団:無症状(n=40)、曝露(n=40)、1年に4回以上発症した高頻度再発者(n=43)、1年に4回未満しか発症しない低頻度再発者(n=19)、未感作(n=10)、およびHSV−2/HSV−1(n=10)に属する患者から単離した。表3は、1年に2回以上の再発者と比較した、曝露された患者コホートにおけるUL10、UL19、UL40、US4、US6、RS1(RS1.1、RS1.2、RS1.3)、UL36(UL36.3、UL36.4、UL36.5)、UL32、およびRL2によってコードされる13のHSV−2抗原についての頻度分析を示す。
【0180】
【表3】

B.UL1、UL49.5、およびUL54によってコードされる抗原の同定
リンパ球を、いくつかの集団:無症状(n=40)、曝露(n=40)、1年に4回以上発症した高頻度再発者(n=43)、1年に4回未満しか発症しない低頻度再発者(n=19)、未感作(n=10)、およびHSV−2/HSV−1(n=10)に属する患者から単離した。
【0181】
表4は、1年に2回以上の再発者と比較した、曝露された患者コホートにおけるUL1、UL49.5、およびUL54によってコードされる3つのHSV−2抗原についての頻度分析を示す。
【0182】
【表4】

C.RL1、UI1、およびUL11によってコードされる抗原の同定
リンパ球を、いくつかの集団:無症状(n=40)、曝露(n=40)、1年に4回以上発症した高頻度再発者(n=43)、1年に4回未満しか発症しない低頻度再発者(n=19)、未感作(n=10)、およびHSV−2/HSV−1(n=10)に属する患者から単離した。
【0183】
表5は、1年に2回以上の再発者と比較した、曝露された患者コホートにおけるRL1、UI1、およびUL11によってコードされる3つのHSV−2抗原についての頻度分析を示す。
【0184】
【表5】

実施例2.in vivoでのデータ
A.[プロトコルA]モルモット治療ワクチン接種プロトコル
雌ハートレイ系モルモットに、生殖器感染を確立するために5×10pfuでHSV−2株MSを経膣的に曝露した。動物を、感染後第1日目に膣用スワブによって感染を監視し、感染後第3日目〜第14日目に急性疾患を観察した。第14日目に、原発性疾患の回復後、動物を12の群に無作為に分け、抗原(15μgの用量のHSV−2ポリペプチド)とアジュバント(50μgの用量のISCOMマトリックスとQuillajaサポニン画分AとCが91:9の混合物)を用いて皮下免疫した。各群に、感染後第14日目、第21日目、および第34日目に合計3回のワクチン接種を行った。生殖器用スワブをワクチン接種期間中に回収して、ウイルス排出を監視し、観察結果を毎日記録した。症状を、重症度に基づいた0〜4のスコア:0=無症状、1=赤みまたは腫れ、2=少数の小水疱、3=いくつかの大きな小水泡、4=浸軟を伴ういくつかの大きな小水泡、でスコアを付けた。加えて、症状が上記のスコア間の中間の病変をもつ動物には、0.5、1.5、2.5、または3.5のスコアを付けた。
【0185】
1.ICP4.2、gD2ΔTMR、およびgD2を用いた治療ワクチン接種研究の結果
研究の結果が、以下の表6〜表10に示されている。IgG力価を、各群の12匹の動物のうちの4匹の平均を用いて、感染後第41日目および第3の免疫化の7日後に決定した。平均再発病変スコアおよび平均病変日数をそれぞれ、感染後第15日目〜第63日目に決定した。病変スコアは、第15日目〜第60日目の各群に対する合計病変数を表し、平均を計算した。平均病変日数は、免疫化または非免疫化動物にヘルペス性病変が現れるまでの感染してからの平均日数である。膣用スワブサンプルを、感染後第20日目〜第59日目の間の12日間にすべての動物から回収し、量的リアルタイムPCRによるウイルス排出力価についてのアッセイまで−80℃で保存した。
【0186】
【表6】

【0187】
【表7】

【0188】
【表8】

【0189】
【表9】

【0190】
【表10】

B.[プロトコルB]マウスの予防ワクチン接種のプロトコル
第0日目および第9日目に、6〜8週齢の雌C57BL/6マウスを、抗原(HSV−2ポリペプチド)とアジュバント(12μgの用量のISCOMマトリックスとQuillajaサポニン画分AとCが82:18の混合物)を用いて皮下免疫した。第11日目に、発情周期をデポプロベラと同期させ、次いで第16日目に、マウスに、麻酔下でLD50値の10倍量のHSV−2株333を膣内沈着により曝露した。すべての動物を、罹患率(臨床スコア)、死亡率、および体重について監視し、膣用スワブを感染後第17日目〜第28日目の間に回収した。臨床スコアを、次のスコア:0=無症状、1=膣の紅斑、2=膣の紅斑および浮腫、3=膣のヘルペス性病変、4=片側性麻痺または重度の陰部潰瘍、および5=両側性麻痺または死亡、を用いて記録した。
【0191】
1.ICP4.2、VP5、gD2ΔTMR、およびgD2ΔTMRとICP4.2を用いたマウスの予防ワクチン接種の研究結果
実験群では、第0日目および第9日目に、マウスを、5μgまたは10μgの抗原とアジュバント(12μgの用量のISCOMマトリックスとQuillajaサポニン画分AとCが82:18の混合物)を用いて皮下免疫した。コントロール動物に、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)のみまたはアジュバントのみを投与した。
【0192】
PBSのみまたはアジュバントのみが投与されたマウスはすべて、曝露後第9日目までに死亡した(生存マウス無し)。対照的に、抗原が投与されたマウスは、多くが第9日目まで生存し、20〜75%が曝露後第12日目までに生存した。疾患(生殖器疾患および神経疾患)の症状の重症度にも、曝露後第9日目または第10日目にスコアを付けた。ICP4.2、VP5、gD2ΔTMR、またはgD2ΔTMRとICP4.2に加えてISCOMアジュバントで免疫化したマウスは、PBSのみまたはアジュバントのみの群と比較して疾患の症状の有意な低減を示した。
【0193】
【表11】

C.[プロトコルC]モルモットの予防ワクチン接種のプロトコル
250〜350g(体重)の雌ハートレイ系モルモットに、第0日目および第14日目〜第21日目に、15μgの抗原とアジュバント(50μgの用量のISCOMマトリックスとQuillajaサポニン画分AとCが91:9の混合物)を用いて皮下免疫した。ブーストワクチン接種の2〜3週間後に足の爪クリップで血清を採取し、次いでモルモットに、膣沈着により5×10PFUのHSV−2株MSを曝露した。膣用スワブサンプルを、第30日目および第32日目にすべての動物から回収し、量的リアルタイムPCRによるウイルス力価についてのアッセイまで−80℃で保存した。モルモットは、毎日(第1日目〜第14日目)評価し、原発性性器皮膚疾患を、1〜4の病変重症度スコアで表した。数字スコアを、次の通り特定の疾患症状に割り当てた:0、無疾患;1、赤みまたは腫れ;2、少数の小水疱;3、いくつかの大きな水泡;4、浸軟を伴ういくつかの大きな水泡。研究の最後で、モルモットを安楽死させ、後根神経節(DRG)を採取し、量的リアルタイムPCR分析のための処理まで−80℃で保存した。
【0194】
【表12】

D.[プロトコルD]免疫原性アッセイI(標準)
マウスを、生理食塩水に溶解した5μgの抗原とアジュバント(12μgの用量のISCOMマトリックスとQuillajaサポニン画分AとCが82:18の混合物)を100μl、首根に注射して皮下免疫した。マウスに、1回または2回(7日間空けて)注射した。注射の免疫原性の分析を、最後の注射から7日後に行った。
【0195】
免疫原性アッセイを、ex vivoでIFN−γELISPOTで行った。CD4およびCD8T細胞を脾臓から濃縮し、別個に分析した。ELISPOTアッセイのために、膜プレートを捕捉抗体で一晩コーティングし、続いて37℃で少なくとも2時間、添加培地でブロッキングして、膜プレートを用意した。マウスを安楽死させ、マウスの脾臓を回収した。次いで、T細胞を、磁気ビーズを用いてCD4およびCD8T細胞を脾細胞から選別することによって用意した。ブロッキング溶液を、ELISPOTプレートから洗い流して、T細胞を、ブロッキングされたプレートに播種した。プレートをインキュベーターに戻して、T細胞を落ち着かせた。APCを、未感作T枯渇脾細胞を37℃で2時間、抗原でパルス処理することによって用意した。CD4ELISPOTの場合は、APCを全タンパク質でパルス処理した。CD8ELISPOTの場合は、APCを、タンパク質を発現する大腸菌とcLLOでパルス処理した。培地コントロールを、抗原を追加しないで37℃2時間、APCと共にインキュベートした。パルス処理されたAPCを放射線照射し、洗浄し、2×10細胞/mlに調整した。APCを、T細胞を含むプレートの適切ウェルに添加した。次いで、ホルボールミリスチン酸アセテート(PMA)およびイオノマイシンを、陽性コントロールとしてコントロールウェルに添加した。プレートを、5%CO下、37℃で18時間インキュベートした。次いで、二次ビオチン化抗体、西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)、および3−アミノ−9−エチルカルバゾール(AEC)基質を用いてプレートを展開した。
【0196】
1.ICP4.2を用いた免疫原性アッセイIの結果
免疫原性アッセイIは、ICP4.2を用いた1回および2回の注射療法の両方で強い免疫原性応答を示した。1回の注射療法の場合は、200,000のT細胞当たりのIFN−γスポットの数は、CD4およびCD8細胞のそれぞれで8および101であった。2回の注射療法の場合は、スポットの数がそれぞれ50および70であった。対照的に、15未満のスポットが、培地またはアジュバントのみで、CD4またはCD8細胞で観察された。
【0197】
2.gD2ΔTMRおよびgD2を用いた免疫原性アッセイIの結果
免疫原性アッセイIの結果が、図1Aおよび図1Bに示されている。強いCD4およびCD8T細胞応答が、完全長gD2およびgD2ΔTMRの両方で得られた。対照的に、膜貫通ドメイン(図1に306tとして示されている)のすぐ上流で切断されたgD2抗原は、有意に低い応答を示した。
【0198】
E.[プロトコルE]免疫原性アッセイII(迅速)
HSV−2 orfeomeのGenocea所有のライブラリーからの組換え大腸菌を、gL2またはICP4タンパク質の断片(ICP4.2、ならびにRS1.1、RS1.3.1、およびRS1.3.2によってコードされるポリペプチド)を発現するように作製した。タンパク質は、細菌細胞内で維持される。次いで、細菌をPFAで固定し、PBSで広範囲に洗浄し、免疫化に使用するまで−80℃で保存した。
【0199】
1群に付き3匹のマウスを、腹腔内注射によって、1マウス当たり1×10のPBSに溶解した細菌で免疫化した。マウスに、1週間の間隔で1〜2回の追加免疫を行った。最後の追加免疫から7日後に、血清を採取し、HSV−2中和アッセイで分析した。96ウェル丸底プレートの血漿または血清サンプルに対し5倍の連続希釈液を行い、次いで各ウェルに50PFU HSV−2(株333)を添加した。プレートを覆い、37℃で1時間インキュベートした。200μlのウイルス血清希釈液を、48ウェル組織培養プレートで増殖されたベロ細胞の2つのウェルに入れ、37℃1時間インキュベートした。300μlの2%FBS含有DMEMを各ウェルに添加し、プレートを37℃48時間インキュベートした。ウイルスプラークを視覚化するために、プレートをクリスタルバイオレットで染色した。
【0200】
【表13】

F.[プロトコルF]免疫原性アッセイIII(重複ペプチドのプール)
マウスを、gL2、ICP4、ならびにRS1.3.1およびRS1.3.2によってコードされるICP4断片の全配列に跨る重複ペプチドのプール(OLP)を2μg/マウスで免疫化した。OLPは、1マウス当たり100μlの総量にTiterMaxアジュバント(Alexis Biochemical)と配合し、アジュバントは、皮下投与量の1/3を占めた。マウスを、第0日目に免疫化し、第6日目に追加免疫し、脾臓および血液を第11日目に採取した。1つの細胞懸濁液を脾臓から調製し、赤血球を溶解した。次いで、脾細胞懸濁液を半分に分けた。初めの半分を、抗原提示細胞、CD4T細胞、およびCD8T細胞に分け;IFN−γELISPOTプレートの1ウェルに付き200,000のT細胞を播種し、100,000のAPCと、免疫化、無関係のペプチド、陽性コントロール、および陰性コントロールに対応するOLPプールとで刺激した。細胞を、プレートで一晩インキュベートしてから、プレートを展開し、ウェルごとにスポットをカウントした。各脾細胞懸濁液の次の半分を、分けられていない脾細胞(400,000/ウェル)として行い、ペプチドでパルス処理し、上記のようにアッセイした。
【0201】
結果は、免疫化群ごとの応答の大きさとして図2Aおよび図2Bに示されている。
【0202】
G.[プロトコルG]少なくとも2つの抗原を用いたワクチン接種
実施例1.C57BL/6マウスにおけるgD2ΔTMRおよびICP4またはICP4.2の免疫原性
精製タンパク質をアジュバントと混合し、未感作マウスを免疫化して、CD4およびCD8T細胞をタンパク質抗原に対して応答させる能力を評価した。簡単に述べると、抗原のみ(gD2ΔTMR(5μg))または抗原の組み合わせ(gD2ΔTMRおよびICP4.2(10μg))をアジュバント(12μgの用量のISCOMマトリックスとQuillajaサポニン画分AとCが82:18の混合物)と混合し、9日間の間隔で2回、マウスに皮下投与した。第2の免疫化から7日後に、マウスを安楽死させ、ex vivoでのIFNγELISPOTアッセイのために脾臓を回収した。CD4およびCD8T細胞を、抗体被覆磁気ビーズを用いて脾細胞集団から選別し、次いで、特異的または非特異的抗原(上記)でパルス処理されてX線照射器でX線照射された未感作脾細胞と共に、96ウェルプレート内のIFNγ特異的抗体被覆膜上で共培養した。インキュベーションから18時間後に、捕捉したIFNγをビオチン化二次IFNγ特異的抗体で検出し、西洋わさびペルオキシダーゼおよび3−アミノ−9−エチルカルバゾール基質で可視化した。データは、各群に付き3匹のマウスの、2×10のT細胞当たりのIFN−γスポット形成単位数±標準偏差として記録した。図3は、各群に付き3匹のマウスの、2×10のCD4またはCD8T細胞当たりのIFN−γスポット形成単位数±標準偏差を示す。図3Aおよび図3Bに示されているように、CD4T細胞またはCD8T細胞当たりのIFN−γスポット形成単位数は、gD2ΔTMR抗原のみと比較すると、ICP4.2と組み合わせたgD2ΔTMR抗原で免疫化されたマウスで増加した。
【0203】
実施例2.gD2およびICP4.2の組み合わせとアジュバントでの免疫化によるマウスにおける疾患の症状および死亡率の低減
gD2と組み合わせたICP4.2タンパク質とアジュバントでの免疫化後に防御免疫を引き起こす能力を、致死HSV−2曝露マウスモデルで評価した。簡単に述べると、1群に付き8匹のC57BL/6マウスを、gD2(2μg)またはICP4.2(10μg)とアジュバントで個々に、または両方の抗原を互いに混合したものとアジュバントで免疫化した。製剤を、9日の間隔で2回、首根に皮下投与した。ウイルス感染の5日前に発情周期をデポプロベラと同期させ、二次免疫化の7日後に動物に、LD50値の20倍量のHSV−2株333を経膣的に曝露した。疾患の症状を、感染後にスコアを付け、生存動物を監視した。疾患の重症度のスコアは、次の通りとした:0=無症状、1=赤み、2=赤みおよび腫れ、3=ヘルペス性病変、4=重度の潰瘍または片側性麻痺、および5=両側性麻痺または死亡。
【0204】
【表14】

実施例3.gD2ΔTMRとICP4.2の組み合わせとアジュバントの免疫化によるマウスにおける疾患の症状および死亡率の低減
gD2ΔTMRとICP4.2抗原の組み合わせでのマウスの免疫化は、個々の抗原とアジュバントが曝露された動物と比較して、ウイルス曝露から10日後の平均疾患スコアが低いことを示した。
【0205】
【表15】

実施例4.gD2とICP4.2の組み合わせとアジュバントでの免疫化による、HSV−2感染モルモットに治療として投与したときの再発病変の重症度の軽減
抗原とアジュバントでの治療免疫後の感染モルモットでHSV−2を再活性化する能力を評価した。簡単に述べると、モルモットを、5×10pfuのHSV−2株MSで経膣的に感染させ、14日間にわたって原発性疾患を監視し、次いで無作為に免疫化群(n=15)に分けた。動物を、抗原(15μg)とアジュバント(50μg)またはアジュバントのみ、または賦形剤コントロールでの感染後第14日目、第21日目、および第35日目の3回、皮下免疫し、局所疾患の重症度について毎日スコアを付けた。スコア付けの方法は、次の通りとした:0=無症状、1=赤み、2=1つの病変、3=大きい病変または融合病変、4=重度の潰瘍または片側性麻痺、および5=両側性麻痺または死亡。
【0206】
表16は、モルモットが急性疾患から回復した後の各週の平均再発病変スコアとしてデータを示している。gD2およびICP4.2抗原の組み合わせで処置されたモルモットは、個々の抗原とアジュバントに曝露された動物と比較して、最後の免疫化から7日目(第42日目)および14日目(第49日目)の平均病変スコアが低いことを示した。
【0207】
【表16】

【0208】
【化8】

【0209】
【化9】

【0210】
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【0212】
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【0220】
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【0222】
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【0229】
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【0230】
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【0231】
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【0232】
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【0233】
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【0234】
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【0239】
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【0240】
【化40】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬学的に許容され得るキャリア、ならびに配列番号2、3、4、および5からなる少なくとも1つのポリペプチドまたはその免疫原性断片を含み、必要に応じて、配列番号1またはその免疫原性断片をさらに含むワクチン製剤。
【請求項2】
配列番号1からなる第1のポリペプチドおよび配列番号3または配列番号4からなる第2のポリペプチドを含む、請求項1に記載のワクチン製剤。
【請求項3】
配列番号2からなる第1のポリペプチドおよび配列番号3または配列番号4からなる第2のポリペプチドを含む、請求項1に記載のワクチン製剤。
【請求項4】
配列番号3からなる第1のポリペプチドおよび配列番号4からなる第2のポリペプチドを含む、請求項1に記載のワクチン製剤。
【請求項5】
配列番号1からなる第1のポリペプチド、配列番号3からなる第2のポリペプチド、および配列番号4からなる第3のポリペプチドを含む、請求項1に記載のワクチン製剤。
【請求項6】
配列番号2からなる第1のポリペプチド、配列番号3からなる第2のポリペプチド、および配列番号4からなる第3のポリペプチドを含む、請求項1に記載のワクチン製剤。
【請求項7】
薬学的に許容され得るキャリア、キラヤサポニンの1つ以上の精製画分を含むアジュバント、ならびに配列番号2、3、4、および5のいずれかを含む少なくとも1つのポリペプチドまたはその免疫原性断片を含み、必要に応じて、配列番号1またはその免疫原性断片をさらに含む、ワクチン製剤。
【請求項8】
薬学的に許容され得るキャリアおよび配列番号2からなるポリペプチドまたはその免疫原性断片を含むワクチン製剤。
【請求項9】
前記断片が、配列番号2の切断断片であり、1〜20のアミノ酸残基がそのN末端、C末端、または両末端から除去されている、請求項8に記載のワクチン製剤。
【請求項10】
前記断片が、配列番号2の切断断片であり、1〜10のアミノ酸残基がそのN末端、C末端、または両末端から除去されている、請求項9に記載のワクチン製剤。
【請求項11】
薬学的に許容され得るキャリア、および配列番号5を含むポリペプチドを含むワクチン製剤であって、前記ポリペプチドが、膜貫通ドメインの貫通残基341〜363のうちすべてまたは少なくとも8つの連続したアミノ酸残基が欠失している、ワクチン製剤。
【請求項12】
薬学的に許容され得るキャリアおよび配列番号4を含むポリペプチドを含むワクチン製剤。
【請求項13】
薬学的に許容され得るキャリアおよび配列番号5を含むポリペプチドを含むワクチン製剤。
【請求項14】
前記ポリペプチドが非グリコシル化されている、請求項13に記載のワクチン製剤。
【請求項15】
薬学的に許容され得るキャリアおよび配列番号3を含むポリペプチドを含むワクチン製剤。
【請求項16】
前記少なくとも1つのポリペプチドが、免疫原性キャリアにコンジュゲートしている、請求項1、8、11、13、または15のいずれか1項に記載のワクチン製剤。
【請求項17】
さらにアジュバントを含む、請求項1、8、11、13、または15のいずれか1項に記載のワクチン製剤。
【請求項18】
前記アジュバントが、キラヤサポニンの1つ以上の精製画分である、請求項17に記載のワクチン製剤。
【請求項19】
前記アジュバントが、サポニン画分Aおよびサポニン画分Cを含む、請求項18に記載のワクチン製剤。
【請求項20】
前記アジュバントが、コレステロール、ホスファチジルコリン、サポニン画分A、およびサポニン画分Cを含む、請求項19に記載のワクチン製剤。
【請求項21】
前記アジュバントが粒子の形態である、請求項20に記載のワクチン製剤。
【請求項22】
サポニン画分Aを含む粒子が、サポニン画分Cを実質的に含まず、サポニン画分Cを含む粒子が、サポニン画分Aを実質的に含まない、請求項21に記載のワクチン製剤。
【請求項23】
前記ワクチン製剤が、5〜200μgの前記少なくとも1つのポリペプチドおよび5〜200μgの前記アジュバントを含む、請求項1、8、11、13、または15のいずれか1項に記載のワクチン製剤。
【請求項24】
前記ポリペプチドが、さらにタグを含む融合タンパク質である、請求項1、7、8、11、13、または15のいずれか1項に記載のワクチン製剤。
【請求項25】
前記ワクチン製剤がHSV−2の症状を抑制する、請求項1〜24のいずれか1項に記載のワクチン製剤。
【請求項26】
前記ワクチン製剤が、ヘルペス性病変の数を低減する、請求項25に記載のワクチン製剤。
【請求項27】
前記ワクチン製剤が、被験体が患うヘルペス性病変の日数を低減する、請求項25に記載のワクチン製剤。
【請求項28】
前記ワクチン製剤が、未感染被験体のHSV−2感染を抑制する、請求項1〜24のいずれか1項に記載のワクチン製剤。
【請求項29】
前記ワクチン製剤が、1つ以上のHSV−2抗原に対するIgG力価を上昇させる、請求項28に記載のワクチン製剤。
【請求項30】
前記ワクチン製剤が、1つ以上のHSV−2抗原に対してT細胞応答を増強する、請求項28に記載のワクチン製剤。
【請求項31】
前記ワクチン製剤が、HSV−2感染の発症時のヘルペス性病変の数を低減する、請求項28に記載のワクチン製剤。
【請求項32】
前記ワクチン製剤が、3回以下の投与でHSV−2の症状を抑制する、またはHSV−2による感染を抑制する、請求項1〜24のいずれか1項に記載のワクチン製剤。
【請求項33】
HSV−2に感染している、またはHSV−2に感染しやすい被験体を処置する方法であって、請求項1〜24に記載の有効量のワクチン製剤を投与するステップを含む、方法。
【請求項34】
前記方法が、HSV−2の症状を抑制する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記方法が、ヘルペス性病変の数を低減する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記方法が、被験体がヘルペス性病変を患う日数を低減する、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記方法が、未感染被験体のHSV−2感染を抑制する、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
前記方法が、1つ以上のHSV−2抗原に対してIgG力価を上昇させる、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記方法が、1つ以上のHSV−2抗原に対してT細胞応答を増強させる、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記方法が、HSV−2感染の発症時のヘルペス性病変の数を低減する、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
前記方法が、3回以内の投薬計画で被験体を処置する、請求項33に記載の方法。
【請求項42】
前記被験体がヒトである、請求項33に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【公表番号】特表2012−527486(P2012−527486A)
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−512087(P2012−512087)
【出願日】平成22年5月24日(2010.5.24)
【国際出願番号】PCT/US2010/035998
【国際公開番号】WO2010/135747
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(511146071)ジェノセア バイオサイエンシーズ, インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】