説明

単離クリティア・グレガリア由来蛍光タンパク質(CGFP)およびその使用

本発明は、蛍光タンパク質CGFP(クリティア・グレガリア由来蛍光タンパク質)の活性および使用ならびにそのヌクレオチドおよびアミノ酸配列に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光タンパク質CGFP(クリティア・グレガリア(Clytia gregaria)の蛍光タンパク質)のヌクレオチドおよびアミノ酸配列ならびにその活性および使用に関する。
【発明の開示】
【0002】
蛍光タンパク質
多数の腔腸動物は生物発光性であり(Morin et al., 1974)、青色または緑色光を放射する。1962年に最初の発光タンパク質として同定されたエクオリア・ヴィクトリア(Aequoria victoria)のエクオリン(aequorin)(Shimomura et al., 1962)は、表現型的に観察されるエクオリア・ヴィクトリアの緑色光ではなく、単離タンパク質として、青色光を放射した。後に、緑色蛍光タンパク質(GFP)がエクオリア・ヴィクトリアから単離され、これは、エクオリンによる励起のためにこのクラゲを表現型的に緑色に見せるものであった(Johnson et al, 1962; Hastings et al., 1969; Inouye et al, 1994)。
【0003】
緑色蛍光タンパク質は様々な生物から単離されている。それらには、ヒドロ虫類(aequoria, halistaura obelia)および節足動物(acanthotilum, sea cactus, cavernularia, renila, ptilosarcus, stylatula) (Morin et al., 1971; Morin et al., 1971 II, Wampler et al., 1971, Wampler et al., 1973, Cormier et al., 1973, Cormier et al., 1974, Levine et al., 1982)が含まれる。
【0004】
いくつかの蛍光タンパク質を表1にまとめる:
表1:
いくつかの蛍光タンパク質の概要。名称、タンパク質が単離された生物およびデータベースエントリーの登録番号(Acc. No.)を示す。
【表1】

【0005】
蛍光タンパク質はそのヌクレオチドおよびアミノ酸配列によって異なるだけでなく、生化学的および物理的特性によっても異なる。蛍光タンパク質のスペクトル特性は、励起側と発光側の両方で異なりうる。蛍光スペクトルおよび励起波長の概要を表2に示す。
【0006】
表2:
いくつかの蛍光タンパク質の概要。タンパク質が単離された生物、スペクトル分析によって測定された励起波長および発光波長を示す。
【表2】

【0007】
蛍光タンパク質の使用は以前に記載されている。概要を表3に示す:
表3:
いくつかの蛍光タンパク質の概要。タンパク質が単離された生物、蛍光タンパク質の名称および特許または特許出願の選択を示す。
【表3】

【0008】
アミノ酸配列を変化させることによって蛍光タンパク質の物理的および生化学的特性を変えることが出来ることが示された。突然変異蛍光タンパク質の例が文献に記載されている(Delagrave et al., 1995; Ehrig et al., 1995; Heim et al., 1996)。
【0009】
蛍光タンパク質は広範な分野で既に用いられている。蛍光共鳴エネルギー転移「Fluorecence Resonance Energy Transfer(FRET)」、「生物発光共鳴エネルギー転移(Bioluminescence Resonance Energy Transfer (BRET))」およびその他のエネルギー転移方法における蛍光タンパク質の使用が文献に記載されている(Mitra et al., 1996; Ward et al., 1978; Cardullo et al, 1988; 米国特許第4777128号; 米国特許第5126508号; 米国特許第4927923号; 米国特許第5279943号)。GFPによるエネルギー転移のさらなる非放射性の方法が以前に記載されている(PCT国際出願WO 98/02571およびWO97/28261)。
【0010】
レポーター系
レポーター遺伝子またはインジケーター遺伝子とは一般に、その遺伝子産物が簡単な生化学または組織化学方法によって容易に検出できる遺伝子をいう。少なくとも2タイプのレポーター遺伝子が識別されている。
1.抵抗性遺伝子。抵抗性遺伝子は、その培地における存在が抵抗性遺伝子がない場合には細胞死を導く抗生物質またはその他の物質に対してその発現が細胞に抵抗性を付与する遺伝子をいう。
2.レポーター遺伝子。レポーター遺伝子の産物は遺伝子操作において融合または非融合インジケーターとして用いられる。もっとも一般的に使用されるレポーター遺伝子としては、ベータガラクトシダーゼ (Alam et al., 1990)、アルカリホスファターゼ (Yang et al., 1997; Cullen et al., 1992)、ルシフェラーゼおよびその他の発光タンパク質 (Shinomura, 1985; Phillips GN, 1997; Snowdowne et al., 1984)が挙げられる。
【0011】
ルミネセンスとは可視スペクトル範囲における光子の発光をいい、該発光は励起したエミッター分子によって行われる。蛍光とは対照的に、エネルギーは、外部から供給されるわけではなく、放射の形態はより短い波長である。
【0012】
化学ルミネセンスと生物ルネセンスとは区別される。化学ルミネセンスは、励起電子が基底状態に戻るとそれ自体で発光する、励起された分子を生じる化学反応をいう。この反応が酵素によって触媒される場合、この工程は生物ルネセンスと呼ばれる。かかる反応に関与する酵素は一般にルシフェラーゼと称される。
【0013】
種クリティア・グレガリアの分類
刺胞動物→軟膜クラゲ(Leptomedusae)→カンパニュラリダエ(Campanulariidae)→クリティア・グレガリア
【0014】
種クリティア・グレガリアは刺胞動物、特にクラゲ(medusae)に属する。生物発光または蛍光表現型については1998年に記載されている(Ward et al., 1998)。
【0015】
cDNAの単離
種クリティア・グレガリアの蛍光活性を研究するために、標本をWashington State のFriday Harbor (USA)で採取し、液体窒素中で保存した。cDNAライブラリーを1つのクラゲ標本の生物発光環をもっぱら用いて調製した。クリティア・グレガリアcDNAライブラリー はKrieg (Krieg et al., 1996)の方法にしたがってイソチオシアナートによってRNAを単離することにより作成した。
【0016】
RT-PCRを行うことによってcDNAを調製した。この目的のために、10μgのRNAを以下の計画に従って逆転写酵素 (Superscribt Gold II)とともにインキュベートした:
【表4】

工程3の後、工程4、17サイクル
【0017】
ポリメラーゼを不活化させるために、反応産物をプロテイナーゼ Kとともに30分間37℃でインキュベートし、cDNAをエタノールで沈殿させた。cDNAを水に溶解し、SfiIとともに37℃で1時間インキュベートした。小さい断片を除くために反応産物をゲルろ過した。分画したcDNAをSfiI-切断し脱リン酸したλTriplEx2 ベクターにライゲーションした。λ-ファージ発現ライブラリーを、インビトロパッケージングシステムSMART cDNAライブラリー構築キット(Clontech)によってλファージにクローニングしたcDNA断片をパッケージすることによって調製した。
【0018】
cDNAインサートを含み、蛍光タンパク質を発現することが出来る組換えファージを「ライブラリースクリーニング」を行うことによって同定した。
【0019】
この目的のため形質転換大腸菌 XL1-Blueの細菌ローン(lawns)を90 mm 培養皿に播き、31℃で12-15時間インキュベートした。タンパク質発現の誘導は、プレートに60 μlの20 mM IPTG (イソプロピルチオガラクトシド)溶液を添加することによって開始した。室温で24時間のインキュベーションの後、プレートを4℃で72時間保存した。この後蛍光を測定した。
【0020】
この目的のため、細菌をアルゴンレーザー (LGN502)、(100 mV、488 nmまたは366 nm) (UVL21))で照射した。蛍光を510 nm ZSVフィルターを用いて測定した。
【0021】
クローンの単離とスペクトル分析のために、蛍光-陽性クローンのバイオマスを培養プレートから取り出し、PBS (リン酸緩衝食塩水)に再懸濁した。細胞を超音波によって破砕した。遠心分離によって可溶化液を清澄にした後、上清の蛍光を蛍光光度計にて測定した。
【0022】
蛍光タンパク質が同定された。該蛍光タンパク質をCGFP(クリティア・グレガリア蛍光タンパク質)と命名した。蛍光タンパク質CGFPを以下に詳細に説明する。
【0023】
CGFP
蛍光タンパク質CGFPはアミノ酸レベルで、エクオリア GFPと44%の同一性という最高の相同性を示す(実施例8;図5参照)。核酸レベルでは同一性は30%未満である(実施例9;図6参照)。BLAST法を用いて配列を比較した(Altschul et al., 1997)。
【0024】
本発明はまた、CGFPの機能的同等体にも関する。機能的同等体とは、対応する生理化学特性を有し、少なくとも70%相同性のタンパク質をいう。相同性80%または90%が好ましい。特に相同性95%が好ましい。
【0025】
蛍光タンパク質CGFPは、細胞システム、特にレセプター、イオンチャンネル、トランスポーター、転写因子または誘導性システムのためのレポーター遺伝子として好適である。
【0026】
蛍光タンパク質CGFPは細菌および真核生物系、特に、哺乳類細胞、細菌、酵母、バキュロ(baculo)、植物におけるレポーター遺伝子として好適である。
【0027】
蛍光タンパク質CGFPは、生物発光または化学発光システム、特にルシフェラーゼ、オキシゲナーゼ、ホスファターゼを用いたシステムと組み合わせた細胞システムのためのレポーター遺伝子として好適である。
【0028】
蛍光タンパク質CGFPは、特にFACS (蛍光表示式細胞分取基)ソーティングにおけるマーカータンパク質として好適である。
【0029】
蛍光タンパク質CGFPは、特にレセプター、イオンチャンネル、トランスポーター、転写因子、プロテイナーゼ、キナーゼ、ホスホジエステラーゼ、ヒドロリアーゼ、ペプチダーゼ、トランスフェラーゼ、膜タンパク質、糖タンパク質のための融合タンパク質として好適である。
【0030】
蛍光タンパク質CGFPは固定化、特に、抗体、ビオチン、磁性または磁化できる担体による固定化に好適である。
【0031】
蛍光タンパク質CGFPはエネルギー転移システムのため、特に、FRET (蛍光共鳴エネルギー転移)、BRET (生物ルネセンス共鳴エネルギー転移)、FET (電界効果トランジスタ)、FP (蛍光偏光)、HTRF (均一時間分解蛍光)システムのためのタンパク質として好適である。
【0032】
蛍光タンパク質CGFPは、特に、プロテアーゼ、キナーゼ、トランスフェラーゼの基質またはリガンドの標識として好適である。
【0033】
蛍光タンパク質CGFPは細菌系における発現に、特に力価測定のために生化学系、特にプロテイナーゼおよびキナーゼの基質として好適である。
【0034】
蛍光タンパク質CGFPは特に抗体と結合した、酵素と結合した、レセプターと結合した、イオンチャンネルおよびその他のタンパク質と結合したマーカーとして好適である。
【0035】
蛍光タンパク質CGFPは薬剤スクリーニング、特にHTS (ハイスループットスクリーニング)におけるレポーター遺伝子として好適である。
【0036】
蛍光タンパク質CGFPは検出システム、特に、ELISA (酵素結合免疫吸着検定法)、免疫組織化学、ウェスタンブロッティング、共焦点顕微鏡の要素として好適である。
【0037】
蛍光タンパク質CGFPは相互作用、特に、タンパク質-タンパク質相互作用、DNA-タンパク質相互作用、DNA-RNA 相互作用、RNA-RNA 相互作用、RNA-タンパク質相互作用(DNA : デオキシリボ核酸; RNA : リボ核酸)の分析のためのマーカーとして好適である。
【0038】
蛍光タンパク質CGFPは、トランスジェニック生物、特に マウス、ラット、ハムスターおよびその他の哺乳類、霊長類、魚類、虫類、植物における発現のためのマーカーまたは融合タンパク質として好適である。
【0039】
蛍光タンパク質CGFPは胚発生の分析のためのマーカーまたは融合タンパク質として好適である。
【0040】
蛍光タンパク質CGFPは、カップリング媒介物質、特にビオチン、NHS (N-ヒドロキシスルホスクシンイミド)、CN-Brを介したマーカーとして好適である。
【0041】
蛍光タンパク質CGFPは、核酸、特にDNA、RNAと結合したレポーターとして好適である。
【0042】
蛍光タンパク質CGFPは、タンパク質またはペプチドに結合したレポーターとして好適である。
【0043】
核酸またはペプチドと結合した蛍光タンパク質CGFPは、特にノザンブロット、サザンブロット、ウェスタンブロット、ELISA、核酸配列決定、タンパク質分析、チップ分析のためのプローブとして好適である。
【0044】
蛍光タンパク質CGFPは、特に感染性薬剤、抗体、低分子などの医薬製剤の標識として好適である。
【0045】
蛍光タンパク質CGFPは地質調査、特に海流、地下水流および河川流の調査に好適である。
【0046】
蛍光タンパク質CGFPは、発現系、特にインビトロ翻訳系、細菌系、酵母系、バキュロ系、ウイルス系、真核生物系における発現に好適である。
【0047】
蛍光タンパク質CGFPは、外科手順、特に侵襲的、非侵襲的、最小侵襲的手順における組織または細胞の可視化に好適である。
【0048】
蛍光タンパク質CGFPは、腫瘍組織の標識に好適であり、またその他の表現型が変化した組織の標識、特に組織調査、外科手術における標識に好適である。
【0049】
本発明はまた、特に野生型タンパク質、融合タンパク質、突然変異タンパク質としての蛍光タンパク質CGFPの精製にも関する。
【0050】
本発明はまた、蛍光タンパク質CGFPの化粧品分野、特に入浴剤、ローション、ソープ、ボディーペイント、歯磨き、ボディーパウダーでの使用にも関する。
【0051】
本発明はまた、特に、食品、入浴剤、インク、繊維製品、プラスティックの着色のための蛍光タンパク質CGFPの使用にも関する。
【0052】
本発明はまた、蛍光タンパク質CGFPの、紙の着色、特にグリーティングカード、紙製品、壁紙、手芸製品の着色のための使用にも関する。
【0053】
本発明はまた、蛍光タンパク質CGFPの液体の着色、特に、水鉄砲、噴水、飲料、アイスクリームの着色のための使用に関する。
【0054】
本発明はまた玩具、特にフィンガーペイント、フェイスペイントの生産のための蛍光タンパク質CGFPの使用にも関する。
【0055】
本発明はさらに以下からなる群から選択される核酸分子に関する:
a) 配列番号2に開示のポリペプチドをコードする核酸分子;
b) 配列番号1に示す配列を含む核酸分子;
c)その相補鎖がストリンジェントな条件下でa)またはb)の核酸分子とハイブリダイズし、蛍光タンパク質の生理機能を有する核酸分子;
d) 遺伝コードの縮重によりc)と異なる核酸分子;
e)その配列が配列番号1と少なくとも95%相同的であり、蛍光タンパク質の生理機能を有する核酸分子;および、
f)その配列が配列番号1と少なくとも65%相同的であり、蛍光タンパク質の生理機能を有する核酸分子。
【0056】
本発明は、その配列が配列の5’側に機能性プロモーターを含む上記の核酸分子に関する。
【0057】
本発明はまた、組換え DNA またはRNA ベクターの一部である上記核酸分子にも関する。
【0058】
本発明は、かかるベクターを含む生物に関する。
【0059】
本発明は、CGFP 分子のDNAまたはRNA 配列と同一または相補的な10を超える連続するヌクレオチドを有するオリゴヌクレオチドに関する。
【0060】
本発明は、上記ヌクレオチド配列によってコードされる蛍光タンパク質に関する。
【0061】
本発明は細菌、真核細胞またはインビトロ発現系における本発明による蛍光ポリペプチドを発現させる方法にも関する。
【0062】
本発明は、本発明による蛍光ポリペプチドの精製/単離方法にも関する。
【0063】
本発明は本発明による蛍光タンパク質に対する抗体によって免疫学的に認識される5を超える連続アミノ酸を有するペプチドにも関する。
【0064】
本発明は、マーカー遺伝子およびレポーター遺伝子として、特に薬剤スクリーニングおよび診断のための本発明による蛍光タンパク質の使用に関する。
【0065】
本発明による蛍光タンパク質の発現
発現とは遺伝子の好適な宿主細胞への導入後の分子の産生であり、これによって発現ベクターにクローニングされた外来遺伝子が転写および翻訳される。発現ベクターは原核生物または真核生物の細胞における遺伝子の発現に必要とされる制御シグナルを含む。
【0066】
発現ベクターは原則として2種類の方法で構築されうる。「転写融合」の場合、クローニングされた外来遺伝子にコードされるタンパク質は、真正の、生理活性タンパク質として合成される。この目的のために、発現ベクターは発現に必要なすべての5’および3’制御シグナルを有する。
【0067】
「翻訳融合」の場合、クローニングされた外来遺伝子にコードされるタンパク質は、容易に検出できる別のタンパク質とのハイブリッドタンパク質として発現される。発現に必要な5’および3’制御シグナル(開始コドンおよび形成すべきハイブリッドタンパク質のN末端領域をコードする配列の一部をおそらく含む)はベクターに由来する。さらなる導入されるタンパク質部分は、多くの場合、クローニングされた外来遺伝子によってコードされるタンパク質を細胞プロテアーゼによる分解から保護するだけでなく、形成されたハイブリッドタンパク質の検出と単離にも利用できる。発現は一過性でも安定でもよい。好適な宿主生物は、細菌、酵母、ウイルスおよび真核系である。
【0068】
本発明による蛍光タンパク質の精製
タンパク質の単離(過剰発現の後)はしばしばタンパク質精製とよばれる。多数の確立された方法および手順がタンパク質精製に利用できる。
【0069】
固液分離はタンパク質単離手順の基本操作である。この工程は、沈降後の沈殿を取り出しにおいて、培地からの細胞の取り出し、および、細胞を破壊して、細胞破片を除いた後の、粗抽出物の清澄化の両方に必要である。それは遠心分離およびろ過によって行われる。
【0070】
細胞内タンパク質を得るためには、細胞壁の破壊または透過性化が必要である。規模と生物に応じて、高圧ホモジナイザーまたは撹拌ボールミルまたはガラスビーズミルがこのために使用される。実験室規模では、とりわけ機械的細胞収集および超音波処理が用いられる。
【0071】
塩(特に硫酸アンモニウム)または有機溶媒(アルコール、アセトン)を伴う様々な沈降方法が細胞外および細胞内タンパク質(細胞破砕後)の両方のための迅速かつ不完全なタンパク質濃縮方法である。細胞内タンパク質を精製する場合、可溶性の核酸の除去が望ましい (例えば、ストレプトマイシンまたは硫酸プロタミンによる沈降)。細胞外タンパク質の回収にはしばしば沈降剤の付加の前に担体の付加を伴い(例えば、デンプン、珪藻土)、それによってより扱いやすい沈殿が得られる。
【0072】
多数のクロマトグラフィーおよび分離方法が微精製に利用できる(吸着クロマトグラフィーおよびイオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過、アフィニティークロマトグラフィー、電気泳動)。カラムクロマトグラフィーは工業規模にも適用できる。数百/工程もの精製因子を可能とする、アフィニティークロマトグラフィーは特に実験室規模で重要である。
【0073】
細胞外タンパク質は比較的薄い溶液中に得られる。細胞外タンパク質と同様に、それらはさらに使用する前に濃縮しなければならない。先に記載した方法に加えて、限外ろ過がよい方法であり、工業規模にも利用できる。
【0074】
無機塩類は特定の用途においてしばしばタンパク質に伴う望ましくない物質である。それらはとりわけ、ゲルろ過、透析およびダイアフィルトレーションによって除くとよい。
【0075】
多数のタンパク質が乾燥調製物として用いられている。重要な乾燥工程は真空乾燥、凍結乾燥および噴霧乾燥である。
【0076】
ヌクレオチドおよびアミノ酸配列
蛍光タンパク質CGFPは以下のヌクレオチド配列(配列番号1)によってコードされる:
5’-atgactgcacttaccgaaggagcaaaactgttcgagaaagaaattccctacattacagagttggaaggagacgttgaaggaatgaaattcatcatcaaaggtgaaggtactggcgacgctactactggcaccatcaaagcgaaatatatttgcacaactggtgaccttcctgtaccatgggctaccatcttgagtagtttgtcgtatggtgttttctgtttcgctaagtatccacgccacattgccgactttttcaagagcacacaaccagatggttattcacaagacagaatcattagttttgacaatgatggacaatacgatgtcaaagccaaggttacttatgaaaacggaacactttataatagagtcacagtcaaaggtactggcttcaaatcaaacggcaacatccttggtatgagagttctctaccattcaccaccacacgctgtctacatccttcctgaccgtaaaaatggtggcatgaaaattgaatacaataaggctttcgacgttatgggcggtggtcaccaaatggcgcgtcacgcccaattcaataaaccactaggagcctgggaagaagattatccgttgtatcatcatcttaccgtatggacttctttcggaaaagatccggatgatgatgaaactgaccatttgaccatcgtcgaagtcatcaaagctgttgatttggaaacataccgttga-3’
【0077】
この結果アミノ酸配列(配列番号2)が得られる:
MTALTEGAKLFEKEIPYITELEGDVEGMKFIIKGEGTGDATTGTIKAKYICTTGDLPVPWATILSSLSYGVFCFAKYPRHIADFFKSTQPDGYSQDRIISFDNDGQYDVKAKVTYENGTLYNRVTVKGTGFKSNGNILGMRVLYHSPPHAVYILPDRKNGGMKIEYNKAFDVMGGGHQMARHAQFNKPLGAWEEDYPLYHHLTVWTSFGKDPDDDETDHLTIVEVIKAVDLETYR
【0078】
これら配列は配列表にも示される。
【0079】
図面の説明
図1はpTriplEX2-CGFP ベクターのプラスミド地図を示す。
図2はpcDNA3-CGFP ベクターのプラスミド地図を示す。
図3はCHO細胞におけるpcDNA3-CGFP 発現ベクター中のCGFPの一過性発現を示す。図は励起480 nm、発光520 nmでの一過性に形質移入された細胞の顕微鏡画像を示す。
図4はCGFPとコントロール溶解液の励起を示す。
図5はCGFPとコントロール溶解液の発光を示す。
図6はアミノ酸レベルでのCFGP、GFP (Aquoria)およびGFP (Renilla)のアラインメントを示す。
CGFP_Cly :クリティア・グレガリア由来CGFP
GFP_Ren : Renilla由来GFP
GFP_Aeq .エクオリア由来GFP
図7は核酸レベルでのCFGP、GFP (Aquoria)およびGFP (Renilla)のアラインメントを示す。
CGFP_Cly :クリティア・グレガリア由来CGFP
GFP_Ren : Renilla由来GFP
GFP_Aeq .エクオリア由来GFP
【実施例】
【0080】
実施例1
以下に示すコンストラクトの作成に用いたベクターはプラスミドpTriplEx2(Clontech)であった。該ベクターの誘導体をpTriplEx2-CGFPと命名した。pTriplEx2-CGFP ベクター はCGFPの細菌系での発現に用いた。
【0081】
図1はpTriplEX2-CGFP ベクターのプラスミド地図を示す。
【0082】
実施例2
以下に示すコンストラクトの作成に用いたベクターはプラスミドpcDNA3.1(+)(Clontech)であった。該ベクターの誘導体をpcDNA3-CGFPと命名した。pcDNA3-CGFP ベクターを真核生物系でのCGFPの発現に用いた。
【0083】
図2はpcDNA3-CGFP ベクターのプラスミド地図を示す。
【0084】
実施例3
細菌発現
細菌発現は細菌を発現プラスミド、pTriplEX2-CGFP およびpTriplEX2で形質転換することにより大腸菌株 BL21(DE3)において行った。形質転換細菌をLB培地で37℃で3時間インキュベートし、発現を終濃度1 mMのIPTGの添加により4時間誘導した。誘導した細菌を遠心分離により回収し、PBSに再懸濁し、超音波処理した。蛍光を蛍光光度計によって測定した。
【0085】
実施例4
真核生物発現
構成的真核生物発現をCHO細胞を発現プラスミドpcDNA3-CGFP およびpcDNA3.1(+)で一過性実験にて形質移入することによりCHO細胞にて行った。この目的のため、ウェル当たり10000細胞を96ウェルマイクロタイタープレート上のDMEM-F12培地に播き、37℃で一晩インキュベートした。形質移入をFugene 6キット(Roche)を用いて製造業者の指示に従って行った。形質移入細胞をDMEM-F12培地中、37℃で一晩インキュベートした。蛍光は室温で蛍光光度計にて測定した。
【0086】
図3はCHO細胞におけるCGFPの発現を示す。
【0087】
実施例5
蛍光タンパク質CGFPのスペクトル
発光スペクトルを測定するために、大腸菌 BL21(DE3) をプラスミドpTriplEX2-CGFPおよびpTriplEX2で形質転換した。誘導は 1 mM IPTGの添加により行い、37℃で4時間インキュベートした。細菌を次いで収集し、PBSに再懸濁した。溶解を超音波を用いて行った。次いで、蛍光を蛍光光度計にて測定した。
【0088】
図4はCGFPとコントロール溶解液の励起を示す。
【0089】
図5はCGFPとコントロール溶解液の発光を示す。
【0090】
実施例6
BLAST
アミノ酸レベルでのCFGPのBLAST分析の結果
【表5】

【0091】
実施例7
BLAST
核酸レベルでのCFGPのBLAST分析の結果
【表6】

【0092】
実施例8
図6は核酸レベルでのCFGP、GFP (Aquoria)およびGFP (Renilla)のアラインメントを示す。
【0093】
実施例9
図7はアミノ酸ベルでの CFGP、GFP (Aquoria)およびGFP (Renilla) のアラインメントを示す。
【0094】
文献/特許
米国特許第4777128号
米国特許第4927923号
米国特許第5162508号
米国特許第5279943号
米国特許第5958713号
米国特許第6172188号
米国特許第6232107号
米国特許第6436682号
WO199623898
WO199711094
WO 199728261
WO1998/02571
WO199949019
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WO200134824
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WO200257451
【0095】
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【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】図1はpTriplEX2-CGFP ベクターのプラスミド地図を示す。
【図2】図2はpcDNA3-CGFP ベクターのプラスミド地図を示す。
【図3】図3はCHO細胞におけるpcDNA3-CGFP 発現ベクター中のCGFPの一過性発現を示す。
【図4】図4はCGFPとコントロール溶解液の励起を示す。
【図5】図5はCGFPとコントロール溶解液の発光を示す。
【図6】図6はアミノ酸レベルでのCFGP、GFP (Aquoria)およびGFP (Renilla)のアラインメントを示す。
【図7】図7は核酸レベルでのCFGP、GFP (Aquoria)およびGFP (Renilla)のアラインメントを示す。
【配列表】



【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下からなる群から選択される核酸分子:
a) 配列番号2に示すポリペプチドをコードする核酸分子;
b) 配列番号1に示す配列を含む核酸分子;
c)その相補鎖がストリンジェントな条件下でa)またはb)の核酸分子とハイブリダイズし、かつ、蛍光タンパク質の生理機能を有する核酸分子;
d) c)と遺伝コードの縮重によって異なる核酸分子;
e)その配列が配列番号1と少なくとも95%相同的であり、かつ蛍光タンパク質の生理機能を有する核酸分子;および
f) その配列が配列番号1と少なくとも65%相同的であり、かつ蛍光タンパク質の生理機能を有する核酸分子。
【請求項2】
その配列が配列の5’側に機能性プロモーターを含む請求項1の分子。
【請求項3】
組換え DNA または RNA ベクターの一部である請求項2の分子。
【請求項4】
請求項3に記載のベクターを含む生物。
【請求項5】
請求項1のDNAまたはRNA 配列と同一または相補的な10 を超える連続ヌクレオチドを有するオリゴヌクレオチド。
【請求項6】
請求項1のヌクレオチド配列によってコードされるペプチド。
【請求項7】
細菌、真核細胞またはインビトロ発現系において請求項6のCGFP ポリペプチドを発現させる方法。
【請求項8】
請求項6のCGFP ポリペプチドの精製/単離方法。
【請求項9】
5を超える連続するアミノ酸を有し、蛍光タンパク質CGFPに対する抗体によって免疫学的に認識されるペプチド。
【請求項10】
マーカー遺伝子およびレポーター遺伝子としての請求項1〜7のいずれかの蛍光タンパク質CGFPの使用。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下からなる群から選択される核酸分子:
a)配列番号2に示すポリペプチドをコードする核酸分子;
b)配列番号1に示す配列を含む核酸分子;
c)その相補鎖がストリンジェントな条件下でa)またはb)の核酸分子とハイブリダイズし、かつ、蛍光タンパク質の生理機能を有するタンパク質をコードする核酸分子;
d)遺伝暗号の縮重によりc)の核酸分子と異なる核酸分子;
e)その配列が配列番号1と少なくとも95%相同的であり、かつ、蛍光タンパク質の生理機能を有するタンパク質をコードする核酸分子;および、
f) その配列が配列番号1と少なくとも65%相同的であり、かつ、蛍光タンパク質の生理機能を有するタンパク質をコードする核酸分子。
【請求項2】
その配列が配列の5’側に機能性プロモーターを含む請求項1の分子。
【請求項3】
組換えDNAまたはRNAベクターの一部である請求項2の分子。
【請求項4】
請求項3のベクターを含む生物。
【請求項5】
請求項1のDNAまたはRNA配列と同一または相補的な10を超える連続するヌクレオチドを有するオリゴヌクレオチド。
【請求項6】
請求項1のヌクレオチド配列によってコードされる蛍光タンパク質
【請求項7】
細菌、真核細胞またはインビトロ発現系において請求項6の蛍光タンパク質を発現させる方法。
【請求項8】
請求項6の蛍光タンパク質に対する抗体によって免疫学的に認識される5を超える連続するアミノ酸を有するペプチド
【請求項9】
マーカー遺伝子またはレポーター遺伝子としての請求項1〜3いずれかの核酸分子の使用
【請求項10】
請求項6の蛍光タンパク質のマーカーまたはレポーターとしての使用

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2006−520582(P2006−520582A)
【公表日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−557934(P2004−557934)
【出願日】平成15年11月26日(2003.11.26)
【国際出願番号】PCT/EP2003/013281
【国際公開番号】WO2004/052926
【国際公開日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(503412148)バイエル・ヘルスケア・アクチェンゲゼルシャフト (206)
【氏名又は名称原語表記】Bayer HealthCare AG
【Fターム(参考)】