説明

印刷シート、印刷シート中間体及び印刷シートの製造方法

【課題】特殊な装置などを用いることなく、印刷される溶剤型インキ層に厚みを与えて、図柄の立体感を容易に醸し出すことができる印刷シート、印刷シート中間体及び印刷シートの製造方法を提供する。
【解決手段】シート状の基材1に、厚みが15〜125μmに立設されて図柄2の輪郭を成すインキ壁層3と、前記輪郭内に充填されて図柄2を成す溶剤型インキ層4と、を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体感を有する印刷シート、印刷シート中間体及び印刷シートの製造方法に関し、詳しくは、商品名や社名等が印刷されたネームプレートやラベル、ステッカーをはじめ、様々な用途に適用可能な印刷シート、印刷シート中間体及び印刷シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、文字、図形、模様及びこれらを組み合わせた柄等(以下、「図柄」と総称する。)を基材に立体的に印刷した印刷シートを製造するための印刷方法には、様々なものがある。
【0003】
第1の印刷方法としては、凸部に形成されたパターンにインキを載せ、被印刷物にそのインキを印刷する、いわゆる凸版印刷方法である。
【0004】
第2の印刷方法としては、凸版印刷とは逆に、版の凹部にインキをつめ、パターンを形成して印刷する、いわゆる凹版印刷方法である。
【0005】
第3の印刷方法としては、被印刷物の表面にパターン孔が形成されたマスクプレートを重合し、このマスクプレートの表面からインキを供給すると共に、スキージを前記マスクプレートに対して相対移動させて、前記パターン孔内に前記インキを充填した後、前記被印刷物と前記マスクプレートとを分離させて、前記被印刷物の表面に前記パターン孔に応じた形状のインキを転写して印刷する、いわゆるスクリーン印刷方法である。
【0006】
また、これらの印刷方法以外にも、最近では、平滑な表面をもつ基材と、基材の表面に文字や図柄を形成するために設けた部分クリヤー層、及び基材と部分クリヤー層とを覆って設けた粒径5〜100μmの光反射性微粉末が5〜20重量%混合されている透明な全面クリヤー層とからなり、前記部分クリヤー層が存在する部位と存在しない部位とにおける前記光反射性微粉末の分布密度を異ならしめて該両部位間に凹凸状の風合を現出させたことを特徴とする印刷シート及び製造方法も提案されている(例えば、特許文献1、参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−89212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、これらの印刷方法や印刷シート等には、以下の課題がある。
【0009】
例えば、前記第1、第2の印刷方法では、金属製のロール表面に文字や図柄に相当する凹凸加工を彫刻する必要があり、これは大変な作業で熟練を要することになる。
【0010】
また、第3の印刷方法では、パターン孔内に充填されるインキは、薄肉のマスクプレートの厚みしか転写されないため、印刷後の図柄に立体感を出すことが困難である。
【0011】
すなわち、この第3の印刷方法では、インキに揮発性溶剤が含有された溶剤型インキが一般的に使用されるため、揮発性溶剤の表面張力によって、印刷表面を綺麗に仕上げることができる反面、マスクプレートのパターン孔に溶剤型インキを充填し、前記マスクプレートを基材から分離して図柄が転写された後、揮発性溶剤が揮発されると、印刷された図柄の肉厚が薄くなってしまい立体感を出すことが困難である。
【0012】
また、印刷された図柄の端部においては、当該端部の表面部分が揮発されて曲面となるため、エッジの利いたシャープな図柄を印刷することも困難である。
【0013】
そのため、充填されたインキに紫外線を照射して短時間に硬化させる粘性の高い紫外線硬化型インキ(以下、「UVインキ」とも呼ぶ。)を用いて、基材にスクリーン印刷する方法も知られている。
【0014】
このUVインキは、溶剤型インキに比べて、短時間で硬化されるために、転写された図柄の肉厚を分厚く印刷して、立体感を醸し出すことができるうえ、図柄の端部もシャープに印刷することが可能である。
【0015】
しかし、UVインキは、粘性が高いうえ、基材に転写された後、直ぐに硬化されるため、印刷された図柄の表面が粗面に仕上がる恐れがある。
【0016】
また、上記特許文献1の印刷シート及び製造方法でも、既存の印刷方法を用いて立体感を呈するようにしているが、上記課題に加えて、光反射性微粉末が5〜20重量%混合された透明な全面クリヤー層を表面に印刷しただけでは、全面クリヤー層に十分な厚みを形成することができず、図柄の立体感を醸し出すには不十分であった。
【0017】
本発明は、かかる課題を解決することを目的とし、特殊な装置などを用いることなく、従来から利用されているインキや印刷方法のみにより、印刷される溶剤型インキ層に厚みを与えて、図柄の立体感を容易に醸し出すことができる印刷シート、印刷シート中間体及び印刷シートの製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するために、
本発明は、シート状の基材に、厚みが15〜125μmに立設されて図柄の輪郭を成すインキ壁層と、前記インキ壁層の輪郭内に充填されて図柄を成す溶剤型インキ層と、が設けられたことを特徴とする。
【0019】
ここで、「溶剤型インキ」とは、揮発性溶剤を含むものであれば良く、主剤と硬化剤を反応させてなるニ液混合型インキや、紫外線硬化型インキに揮発性溶剤が含有されたインキも含む意味である。
【0020】
本発明において、「輪郭内」とは、無端状のインキ壁層で囲まれた内側部分だけでなく、有端状のインキ壁層同士が対峙する対向面側も含む意味である。
【0021】
すなわち、本発明は図柄の輪郭に沿って、15〜125μmのインキ壁層が立設されているので、このインキ壁層の高さにまで溶剤型インキを充填することができ、溶剤の揮発後には、インキ壁層と同様の高さ(厚み)の溶剤型インキ層を容易に形成できる。
【0022】
このように、本発明によれば、特殊な装置などを用いることなく、従来から利用されているインキや印刷方法のみにより、溶剤剤型インキ層に厚みを与えて、図柄の立体感を容易に醸し出すことができるのである。
【0023】
また、本発明においては、シート状の基材に、前記基材に形成された図柄と、前記図柄の輪郭に沿って印刷され、厚みが15〜125μmに立設されたインキ壁層と、前記輪郭内に充填された透光性を有する溶剤型インキ層と、が設けられたことを特徴とするものも挙げられる。
【0024】
ここで、「透光性を有する」とは、図柄が透けて見える程度に透明であることを意味し、無色透明だけでなく、有色透明も含む意味である。
【0025】
また、インキ壁層の厚みは、特に限定されるものではなく、分厚く形成するほど立体感が増すが、分厚すぎると透光性が減少される一方、厚みが薄過ぎると立体感を出すことができないために、製造上の限界値として15〜125μmで立設するのが好ましく、特に、30〜80μmでインキ壁層を立設するのが最も好ましい。
【0026】
前記インキ壁層としては、紫外線硬化型インキで形成されるのが特に好ましく、この紫外線硬化型インキでインキ壁層を立設すれば、溶剤型インキに比べて、粘性が高いうえに短時間で硬化されるために、印刷されたインキ壁層は、確実に立設できるうえ、溶剤型インキ層が充填されても、型崩れを生じ難いのである。
【0027】
もっとも、インキ壁層の幅は、薄く形成される程、図柄の表面に現れる粗面を少なくできるが、その幅が短かくなり過ぎると、溶剤型インキの応力によって撓む恐れが生じる一方、その幅が長くなり過ぎると、粗面部分が表出されてしまうために、製造上の限界値として0.2〜1.8mmで形成するのが良く、好ましくは、0.3〜1.5mmでインキ壁層の幅を形成するのが良いのである。
【0028】
更に、インキ壁層の外側壁は、基材の面に対して直角な垂線方向または当該垂線から±5°の範囲内に立設されるのが好ましいが、要は、インキ壁層を15〜125μmに立設できるものであれば構わない。
【0029】
このように、本発明では、溶剤型インキをインキ壁層の高さまで充填することができ、溶剤型インキに含有されている揮発性溶剤が揮発されても、揮発性溶剤の表面張力によって、印刷表面を綺麗な滑面に仕上げることができると同時に、印刷された図柄の肉厚が一定以上の厚みに分厚く形成されて、図柄の立体感を十分に醸し出すこともできる。
【0030】
また逆に、本発明の基材は、透光性を有し、インキ壁層が設けられた面の反対面に、図柄が形成されたものも挙げられる。
【0031】
そのため、図柄は、基材を透して目視されるため、当該図柄の端縁が明確な輪郭線となって、エッジが利いたシャープな図柄として目視できる。
【0032】
また、本発明のインキ壁層は、透光性を有しても良く、このインキ壁層の輪郭内に透光性を有する溶剤型インキ層が充填されることで、図柄の全体に亘って一体的な透明感及び立体感を醸し出すことができる。
【0033】
しかも、本発明のインキ壁層と溶剤型インキ層とを同色で形成することで、両者の境界が目視され難くなり、より一体感を醸し出すことができる。
【0034】
また、本発明のインキ壁層が設けられた面の反対面には、接着剤層を設けることが望ましく、この接着剤層としては、感圧性接着剤(粘着剤)や感熱性接着剤(ホットメルト)が挙げられる。
【0035】
ここで、「接着剤層」とは、接着剤だけで構成されたものに限られず、必要に応じて剥離紙を備えたもの、例えば、剥離紙を備えた両面テープなども含む意味である。
【0036】
このような接着剤層を設けておけば、商品名や社名等が印刷された図柄を、様々な商品等に簡単に貼り付けることができる。
【0037】
更に、本発明においては、上記印刷シートを製造するための印刷シート中間体も提供するものであり、当該印刷シート中間体は、シート状の基材に、厚みが15〜125μmに立設されて図柄の輪郭を成すインキ壁層が設けられている。
【0038】
この印刷シート中間体によれば、立設されたインキ壁層の輪郭内に、所望の溶剤型インキ層を充填するだけで、本発明の印刷シートを容易に製造できるのである。
【0039】
このような印刷シート及び印刷シート中間体は、図柄の輪郭に沿って、厚みが15〜125μmのインキを印刷によってインキ壁層を立設して図柄の輪郭を成し、この輪郭内に、溶剤型インキを充填して溶剤型インキ層を形成することで、容易に製造できる。
【0040】
ここで、「図柄の輪郭」は、基材に予め図柄が印刷されていても良いが、基材に図柄が予め印刷されておらず、将来において印刷される予定の図柄の輪郭であっても構わない。
【0041】
また、前記図柄が、基材に印刷されており、且つ、溶剤型インキ層が透光性を有していれば、前記図柄の輪郭を目視し易いので、更に製造を容易にできる。
【0042】
更に、透光性を有する基材の裏面に図柄を印刷する工程と、前記基材の表面にインキ壁層及び溶剤型インキ層を印刷によって形成する工程と、を有する印刷シートの製造方法によって形成することもできる。
【0043】
このようなインキ壁層及び溶剤型インキ層は、既存の印刷方法で印刷することも可能であるが、特に、スクリーン印刷によって形成すれば、安価なうえ、高速且つ容易に製造できるため好ましい。
【発明の効果】
【0044】
本発明の印刷シートによれば、溶剤型インキ層が肉厚に印刷されているので、図柄の立体感を容易に醸し出すことができる。
【0045】
また、本発明の印刷シート中間体によれば、予め立設されたインキ壁層の間に、所望の溶剤型インキ層を充填するだけで、上記印刷シートを容易に製造できる。
【0046】
更に、本発明の印刷シートの製造方法によれば、特殊な装置などを用いることなく、印刷される溶剤型インキ層に十分な厚みを与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の一実施形態を示す印刷シートAの全体斜視図である。
【図2】図1の破線で囲まれた部分Bを拡大した要部の断面図である。
【図3】(a)〜(d)は、図1、図2で示した印刷シートAの製造方法を示す工程図である。
【図4】(a)〜(c)は、本発明の他の実施形態を示す印刷シートA及び印刷シート中間体A1の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0049】
図1は、本発明の一実施形態を示す印刷シートAの全体斜視図であり、図2は、図1の破線で囲まれた部分Bを拡大した要部の断面図である。
【0050】
基材1は、透光性を有するポリカーボネート、PET、硬質ビニール、ABS、AS、等の樹脂を用いてシート状に形成されている。
【0051】
基材1の裏面(下面)には、図柄2が、既存の方法によって印刷されている。
【0052】
図柄2は、エポキシ系、酸化重合系、アクリル系、ウレタン系などのニ液混合型インキによって、基材1の裏面にスクリーン印刷されている。
【0053】
本実施形態では、透明な基材1の裏面に、図柄2を残した周囲に黒色のニ液混合型インキをスクリーン印刷して周辺部2aが形成され、図柄2部分には、金色や銀色等の光沢のあるニ液混合型インキをスクリーン印刷して図柄2を形成している。
【0054】
なお、本実施形態とは逆に、黒色系のニ液混合型インキで図柄2を印刷し、その周辺に光沢のあるニ液混合型インキを印刷して周辺部2aを形成しても構わない。
【0055】
もっとも、図柄2は、これ以外の手段で形成しても良く、例えば、図柄2を基板1の裏面にスクリーン印刷したうえで、この図柄2を含む基板1の裏面全体に黒色系のニ液混合型インキを印刷して、周辺部2aを形成することも可能である。
【0056】
何れの方法であっても、図柄2と周辺部2aとの境界が明確となるため、図柄2の端縁をくっきりと表出することができる。
【0057】
なお、図柄2は、印刷せずに、刻印のような凹凸によって描くことも可能である。
【0058】
このような図柄2が基材1の裏面に印刷された当該基材1の表面には、この場合、図柄2の輪郭に沿って、透明な紫外線硬化型インキをスクリーン印刷して、30μm程度のインキ壁層3を立設している。
【0059】
ここで、紫外線硬化型インキ(「UVインキ」とも呼ばれる。)とは、紫外線(UVを照射することによって、紫外線のエネルギーで光化学反応を起こし、液状から個体へ短時間で硬化させて、皮膜形成を行うインキである。
【0060】
この紫外線硬化型インキの主成分は、光重合性樹脂、光重合開始剤、着色料および助剤の無溶剤型インキである。
【0061】
そのため、紫外線硬化型インキは、単に速硬化性、高度の皮膜物性、脱溶剤等のみならず、粘性が高く、基板1上では乾かずに印刷後の乾燥が速い点で溶剤型インキとは異なるものである。
【0062】
本実施形態の紫外線硬化型インキにおいては、特に、硬化皮膜の硬度が高いものが良く、具体的には、硬度試験(JIS K−5400 8.4鉛筆硬度)によって3H程度を有するものが好ましい。
【0063】
インキ壁層3は、図例のように図柄2の輪郭を囲んで無端状(例えば、図1中の英文字「B」)に形成されたものだけでなく、図柄2の輪郭に沿ってインキ壁層3が有端状(例えば、図1中の英文字「C」)に形成されたもの、或いは、断続的に形成されたものでも構わない。
【0064】
このようにして設けられたインキ壁層3の輪郭内には、透光性を有する溶剤型インキが充填され、溶剤型インキ層4を形成している。
【0065】
ここで、溶剤型インキは、主剤と硬化剤を混合して使用され、具体的には、60〜80%程度の揮発性溶剤を含んだ二液反応型インキを用いている。
【0066】
また、溶剤型インキとして、紫外線硬化型インキに揮発性溶剤を含有したものを用いることも可能である。
【0067】
そのため、溶剤型インキは、立設されたインキ壁層3の高さまで充填することができ、図柄2の表面に30μm程度の分厚い溶剤型インキ層3が、基材1を介して容易に形成できる。
【0068】
このような本発明の印刷シートAによれば、基材1を介して図柄2の表面に30μm程度の分厚い溶剤型インキ層3が形成されるため、図柄2の立体感を確実に醸し出すことができる。
【0069】
本発明において、溶剤型インキ層とは、溶剤型インキが、紫外線、電子線などの照射線によって硬化されたり、溶剤の蒸発、乾燥によって流動性を失った状態のもの、すなわち、溶剤を含む印刷用インキで形成された硬化ないし乾燥状態のインキ層のことをいう。
【0070】
図3は、図1、図2で示した印刷シートAの製造方法を示す工程図である。
【0071】
ここで、図1、図2と共通する部位には、同一の符号を付して重複する説明を省略し、以下では、本実施形態の製造方法についてのみ説明する。
【0072】
先ず、既存のスクリーン印刷装置(不図示)に、透明な基材1を位置決めして設置し、この基材1の裏面に所望の図柄2をスクリーン印刷で印刷すると共に、その周辺部2aを所望の色にスクリーン印刷する〔図3(a)、参照。〕。
【0073】
次に、基材1を裏表反転させたうえで、基材1を再度位置決めし、基材1の表面から図柄2の輪郭に沿って厚さ30μm程度のパターン孔が形成されたマスクプレート(不図示)を重合し、このパターン孔に紫外線硬化型インキを充填してスクリーン印刷し、図柄2の輪郭にインキ壁層3を立設する〔図3(b)、参照。〕。
【0074】
このとき、インキ壁層3の外側壁31は、図3(d)に示すように、基材1の表面に対して、できる限り直角な垂線方向に立設するのが好ましい。
【0075】
なお、溶剤型インキ4aは、インキ壁層3の輪郭内から多少ズレて充填されても、輪郭内に充填された溶剤型インキ4aの引張力によって、インキ壁層3の外壁側に溢れることを防止できる。
【0076】
次に、この立設されたインキ壁層3の輪郭内に、図柄2に沿って厚さ30μm程度のパターン孔が形成された他のマスクプレート(不図示)を重合し、このパターン孔に透明な溶剤型インキ4aを充填してスクリーン印刷する〔図3(c)、参照。〕。
【0077】
このとき、溶剤型インキ4aに含まれる揮発性溶剤の表面張力によって、溶剤型インキ4aは、インキ壁層3よりも表面側に突出されているのが好ましい。
【0078】
そして、溶剤型インキ4aを乾燥して、含有している揮発性溶剤を揮発すれば、溶剤型インキ層4がインキ壁層3に一体化し、溶剤型インキ層4及びインキ壁層3が均一な表面状態に形成される〔図3(d)、参照。〕。
【0079】
また、必要であれば、基材1の裏面に接着材層5を更に形成することも可能である。
【0080】
このようにして印刷シートAを形成する本発明の印刷シートの製造方法によれば、特殊な装置などを用いることなく、立体感を呈する図柄2が描かれた印刷シートAを簡単且つ安価に製造することができるのである。
【0081】
図4(a)〜(c)は、本発明の他の実施形態を示す印刷シートA及び印刷シート中間体A1の要部断面図である。
【0082】
なお、図1〜図3と共通する部位には、同一の符号を付して、重複する説明は省略し、以下では、本実施形態の特徴についてのみ説明する。
【0083】
すなわち、図4(a)は、基材1の表面に図柄2及び周辺部2aをスクリーン印刷した印刷シートAを示すものであり、この図柄2の輪郭に沿ってインキ壁層3を立設したうえで、その間に溶剤型インキ層4を充填して印刷シートAを形成したものである。
【0084】
また、図4(b)は、透明な基材1の裏面に図柄2だけをスクリーン印刷した印刷シートAを示すものであり、この図柄2の輪郭に沿ってインキ壁層3を立設したうえで、その間に溶剤型インキ層4を充填して印刷シートAを形成したものである。
【0085】
更に、図4(c)は、上述した様々な印刷シートAを製造するための印刷シート中間体A1の要部断面図であって、この印刷シート中間体A1は、シート状の基材1と、この基材1の片面に描かれる図柄2の輪郭に沿って予めインキ壁層3を立設したものである。
【0086】
すなわち、この印刷シート中間体A1は、描かれる図柄2が印刷されていない基材1の片面に、将来的に描かれる図柄2の輪郭に沿って、インキ壁層3だけを立設したものである。
【0087】
このような印刷シート中間体A1であれば、この印刷シート中間体A1にインキ壁層3及び図柄2を後から印刷しても本発明の印刷シートAを容易に形成することができるものである。
【0088】
なお、本実施形態では、透明なインキ壁層3及び透明な溶剤型インキ層4を例示したが、両者を有色にしたものでも良く、要するに本発明は、基材1上に厚みが15〜125μmに立設されたインキ壁層3を立設して、その間に溶剤型インキ4aを充填して、肉厚の溶剤型インキ層4が形成されるものであれば採用できる。
【0089】
従って、本実施形態で例示した印刷シートAと印刷シート中間体A1及び印刷シートの製造方法は、特に限定されるものではなく、上記以外の製造方法によっても、種々の印刷シートAや印刷シート中間体A1を製造することができることは勿論である。
【符号の説明】
【0090】
A 印刷シート
A1 印刷シート中間体
1 基材
2 図柄
3 インキ壁層
4 溶剤型インキ層
5 接着剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の基材に、厚みが15〜125μmに立設されて図柄の輪郭を成すインキ壁層と、
前記輪郭内に充填されて図柄を成す溶剤型インキ層と、が設けられたことを特徴とする印刷シート。
【請求項2】
シート状の基材に、
前記基材に形成された図柄と、
前記図柄の輪郭に沿って印刷され、厚みが15〜125μmに立設されたインキ壁層と、
前記輪郭内に充填された透光性を有する溶剤型インキ層と、が設けられたことを特徴とする印刷シート。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の印刷シートにおいて、
インキ壁層は、紫外線硬化型インキで形成されている印刷シート。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一つの請求項に記載の印刷シートにおいて、
基材は、透光性を有し、当該基材の裏面に図柄が印刷されている印刷シート。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一つの請求項に記載の印刷シートにおいて、
インキ壁層の幅は、0.2〜1.8mmに形成されている印刷シート。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一つの請求項に記載の印刷シートにおいて、
インキ壁層は、透光性を有し、インキ壁層が設けられた面の反対面に、図柄が形成されている印刷シート。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一つの請求項に記載の印刷シートにおいて、
インキ壁層及び溶剤型インキ層は、同色で形成されている印刷シート。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一つの請求項に記載の印刷シートにおいて、
インキ壁層が設けられた面の反対面には、接着剤層が設けられている印刷シート。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一つの請求項に記載の印刷シートを製造するための印刷シート中間体であって、
前記印刷シート中間体は、シート状の基材に、厚みが15〜125μmに立設されて図柄の輪郭を成すインキ壁層が設けられていることを特徴とする印刷シート中間体。
【請求項10】
シート状の基材に図柄を形成するにあたり、前記図柄の輪郭に沿って、厚みが15〜125μmのインキ壁層を印刷により立設、形成して図柄の輪郭を成し、この輪郭内に、溶剤型インキを充填して溶剤型インキ層を形成することを特徴とする印刷シートの製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載の印刷シートの製造方法において、
図柄を基材に形成し、透光性を有する溶剤型インキを充填して、溶剤型インキ層を形成する印刷シートの製造方法。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の印刷シートの製造方法において、
透光性を有する基材の裏面に図柄を印刷する工程と、
前記基材の表面にインキ壁層及び溶剤型インキ層を印刷によって形成する工程と、を有する印刷シートの製造方法。
【請求項13】
請求項10〜12のいずれか一つの請求項に記載の印刷シートの製造方法において、
インキ壁層及び溶剤型インキ層をスクリーン印刷によって形成する印刷シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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